■ 日本でもっとも地味な県の1つ2014年の天皇杯が開幕。7月5日(土)と6日(日)に1回戦が行われて、2回戦からはJリーグのクラブが登場する。1回戦を勝ち抜いたアマチュアのクラブでプレーする選手にとっては憧れのJリーガーと対戦できる夢のステージと言えるが、福井県代表で北信越リーグ1部に所属するサウルコス福井は1回戦を突破して、2回戦でJ1のアルビレックス新潟と対戦することになった。
サウルコス(Saurcos)とは、英語で恐竜を意味する「ディノサウルス」と、軍団を意味する「コープス」を組み合わせた造語である。母体となったのはFC金津で、2007年にサウルコス福井となった。2008年から北信越1部に所属しており、2012年と2013年は連続優勝を果たした。2年連続で全国地域サッカーリーグ決勝大会に出場したが、1次リーグで敗退してJFL昇格はならなかった。
福井県(主に勝山市)というのは恐竜の化石がたくさん出ることで知られている。勝山市にある「福井県立恐竜博物館」は県の観光名所の1つになっているが、なぜ恐竜の化石がたくさん見つかるのか?その理由は「恐竜が生きていた頃に陸(川や湖など)でたまった地層が分布しているから。」と説明されている。「恐竜」にちなんだクラブ名になっているのが、サウルコス福井である。
福井県の人口は約79.5万人であるが、これは都道府県別で全国43位に相当する。福井県よりも下に位置するのは44位の徳島県(約77.0万人)、45位の高知県(約74.5万人)、46位の島根県(約70.2万人)、47位の鳥取県(約57.8万人)の4つだけ。サウルコス福井は「日本でもっとも地味な県の1つ」と言われている福井県初のJリーグクラブを目指して活動しているクラブである。
#1 JR福井駅

#2 JR福井駅前
■ 「サッカー不毛の地」の1つ福井県は位置を間違えられるケースが多いが、石川県と滋賀県と岐阜県と京都府の4つに隣接しており、北部(=嶺北地方)は金沢の影響を受けていて、南部(=嶺南地方)は京都の影響を強く受けている。県庁のある福井市は嶺北地方で、敦賀原発や大飯原発など原子力発電所が乱立しているのは嶺南地方である。昔は、北部が越前で、南部は若狭と呼ばれていた。
サッカーに関しては「不毛の地」と言われても仕方がない。丸岡高校は全国大会の常連と言えるが、サッカーに関して目立つのは丸岡高校くらいである。そのハイライトは小阪監督の下、ベスト4に進出した1997年の冬の全国高校サッカー選手権で、準決勝でMF本山(現鹿島)率いる東福岡高校に敗れたが快進撃を見せた。(※ この年の決勝戦は東福岡vs帝京だった。)
戦国時代にこの地を統治したのは柴田勝家で、当時は「北ノ庄」と言われた。1583年に賤ヶ岳の戦いで柴田勝家が敗れて、妻の市と共に自害して、茶々・初・江の3姉妹は救出されるという悲劇の舞台となったが、このときに城内に火が放たれて建造物のほとんどが焼失した。よって、現在の福井駅前で見られるのは5人(柴田勝家・市・茶々・初・江)の像と北ノ庄城の復元模型である。
#3 越前鉄道の福井駅

#4 北ノ庄城 (福井駅前)
■ 福井県出身のJリーガーって誰がいるのか?「(元も含めた)福井県出身のJリーガーの名前を挙げてください。」と言われたとき、1人でも名前を挙げることができたとしたら、かなりのサッカー通と言える。そして、3人の名前を挙げることができたらマニアの領域で、5人以上となると各都道府県に1人いるか、どうかのレベルになるだろう。それくらい福井県出身のJリーガーというのはほとんどいなくて、非常に珍しいと言える。
具体的に名前を挙げていくと、消滅前の横浜Fに入団して大宮で活躍したDF奥野、市原に入団して山形で活躍したCBのDF鷲田、昨シーズンまで大宮でプレーしたレフティのMF橋本、JFL時代のYKKでエースストライカーとして大活躍してカターレ富山のJ2昇格に大きく貢献したFW長谷川がいるが、クラブに名前を残すことが出来たと言えるのはこの4人くらいである。
他には山形や松本山雅でプレーしたMF鈴木亮、190センチを超える長身CBで将来を嘱望されて横浜FMに入団したDF梅井、川崎Fや山形でプレーしたDF木村誠、開花が期待されるFW棗(現松本山雅)がいるが、精一杯、名前を挙げてもこれくらいが限界である。ここまで人材が出て来ない都道府県は他になかったと思う。丸岡高校出身者でもプロの世界で活躍できた選手は少ない。
県内にプロチームが無かったので、選手育成という点では大きく遅れを取っていた。しかしながら、ようやくサウルコスが「もう少し頑張ったらJFL(=4部相当)に昇格できる。」というところまで力を付けてきた。J1の新潟を相手にどういう戦いができるのか?福井のサッカーは盛り上がっているのか?などなど、いくつかの部分に興味があったので、テクノポート福井スタジアムに向かった。
#5 浅井3姉妹とお市の方さまの像 (福井駅前)

#6 柴田勝家公の像 (福井駅前)
■ アクセスは日本屈指の悪さ会場のテクノポート福井は坂井市にある。2006年に三国町と丸岡町と春江町と坂井町の4つが合併してできた新しい市で、福井県の北西部にあって、福井市から見ると北西の方角にある。○○の名所として知られる東尋坊、大きなプールがあって子どもたちの遊び場として知られている「芝政ワールド」、国の重要文化財になっている丸岡城などは全て坂井市にある。
「テクノポート(technoport)」という言葉から連想されるとおりで、港の近くにあって、福井臨海工業地帯の中にスタジアムがある。1994年にオープンして、福井県内では最大規模のフットボール専用の球技場である。収容人数は21,000人と記されているので、それなりにキャパシティーの大きいスタジアムで、過去に何度かJリーグの公式戦が開催されている。
「フットボール専用の球技場がある。」というのは大きな魅力と言えるが、アクセスに関しては文句なしで最低レベルである。これまでに日本各地にある50以上のサッカー場を訪問しているが、「ワースト1位候補」に推薦できるレベルで、ここまで不便だと逆にすっきりするほどである。本当に新潟のサポーターはきちんとキックオフ時間までにたどり着くことができたのか?と心配になる。
一応、「JRの福井駅からバスで40分」となっているが、福井臨海工業地帯の中にある会社を訪問する人をメイン客と想定しているのだろう。福井駅からテクノポートまで定期便が走っているのは平日のみである。スタジアムの最寄り駅はえちぜん鉄道の三国駅となるが、三国駅から直でスタジアムに向かうバスは無くて、シャトルバス(=臨時バス)も用意されていない。
三国駅からスタジアムまでは約4.4キロあるので普通に歩くと1時間ほどかかる。自家用車を用いる以外では、三国駅からタクシーを利用するのがベストである。「(1キロ以上の距離はあるが)バスで付近まで行って、残りは歩く。」という手段もあるが、バス自体が2時間に1本程度で、アテにすることはできない。今回はバスのタイミングも合わなかったので、三国駅から歩くことにした。
#7 越前鉄道の三国駅

#8 九頭竜川にかかる橋

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