Covid-19との戦いで東欧諸国は西欧諸国に先んじているが、西側諸国はそれを認めない。冷戦時代の「優等生コンプレックス」のせいで。
Eastern Europe beats West in Covid-19 fight, but West can’t acknowledge it because of Cold War SUPERIORITY complex
RT-Oped ニール・クラーク
2020年4月23日
Neil Clark is a journalist, writer, broadcaster and blogger. His award winning blog can be found at www.neilclark66.blogspot.com. He tweets on politics and world affairs @NeilClark66
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2020年5月16日

客観的に見れば、ヨーロッパの東半分にある国々の政府は、西側諸国の多くの政府よりもCovid-19の発生にうまく対処している。それでも、根深い優越心が原因で、「そのとおりだ」と認めている人はほとんどいない。
ヨーロッパは再び分割されているが、今回は壁によってではない。
4月22日現在の、Covid-19による人口100万人あたりの死亡数を国別に比較せよ。
トップはベルギーで、100万人あたり525.12人。次にスペイン(445.49)、イタリア(407.87)、フランス(310.45)、イギリス(261.37)、オランダ(227.26)、スイス(173.54)、スウェーデン(173.33)、そしてアイルランド(150.41)が続く。気づくことはないか?そう、すべて西欧の国々だ。
中央ヨーロッパまたは東欧の国々にたどり着くには、かなり下まで画面をスクロールしないといけない。
ルーマニアでは100万人あたり25.57人。ハンガリー(23.03)、チェコ(18.92)、セルビア(17.9)、クロアチア(11.74)、ポーランド(10.6)、ブルガリア(7.02)、 ベラルーシ(5.8)、ラトビア(4.67)、ウクライナ(3.61)、ロシア(3.16)、アルバニア(2.87)、そしてスロバキア(2.57人、死者数でいうとわずか14人)。
Why is nobody discussing truly staggering differences in death rates between Eastern and Western Europe? In the @FT graphs none of EE countries is even included. The gap is just striking. (Worldometer, 22 April). pic.twitter.com/pwz7FCv57P
— Branko Milanovic (@BrankoMilan) April 22, 2020
ヨーロッパにおけるこの新しい分断をどう説明したらいいだろう?地理的要因が大きいことは明らかだ。Covid-19が流行する主な要因は、人の移動であり、特に問題になるのは国際便だ。東欧よりも西欧を訪れる人が多い。より多くの行き来がある。Covid-19はグローバリゼーションによって勢力を増すウイルスであるといって間違いない。西欧諸国は東欧諸国よりもグローバリゼーションが進んでいる。もう一つの理由は、西欧諸国の方が、人口密度が高いことだ。大都市は、ウイルスが好む場所であり、より流行は広まりやすい。
東欧にはこういった多くの「もともとある」利点があるが、これがすべての理由にはならない。一般的に言えば、東欧諸国の政府は、西側諸国の政府よりも常識的な政策を示してきた。東欧諸国の政府は、ウイルスがウォーキングブーツをはき、リュックサックをしょってやってくるとき、絶対すべきことを実行したのだ。そう、国境閉鎖だ。
3月12日、チェコ共和国は緊急事態宣言をし、新型コロナウイルスに襲われたイラン、イタリア、中国、英国など15か国からの渡航を禁止した。それから、「ロックダウン」態勢に入った。同日、スロバキアは非居住者の入国を禁止し、海外からの帰国者には強制的な隔離を課した。
ポーランドは3月15日に国境を閉め、1日後ハンガリーが続いた。ロシアは、極東における中国との国境を1月末時点ですでに閉鎖していた。
東欧諸国の「跳ね橋を引き上げた決断力」と、西側諸国の「ためらい」を比較してみて。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、3月12日、「このウイルスはパスポートを持っていない」と宣言した。その時点で、私はこう書いた。「公衆衛生よりも、リベラルなイデオロギーや美徳のみせびらかしが、優先されている」
Also on RT. COM

Liberal ideology & virtue signaling put before people’s HEALTH, as Macron, Merkel defend open borders amid Covid-19 spread
ウイルスはパスポートを持っていないかもしれないが、中国やイタリアから来た人は、間違いなくパスポートを持っていた、大多数の人達が!3月17日になってやっとのことで、西欧諸国は、隣人の東欧諸国がすでにしていたことをやり始めたようだ。
「移動を控えれば控えるほど、ウイルスは封じ込められます」と述べたのは、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長だった。えー!本当に!
少なくとも大陸側の西側諸国では、1週間ほど遅すぎたとしても、国境で何らかの行動を起こした。対照的に、英国は国内市民に「封鎖」を課すいっぽうで、ニューヨーク、イラン、中国を含む世界中からの入国をノーチェックで許可し続けた。
しかし、東欧諸国が正しかったのは、国境を封鎖し厳格な隔離措置を課したことだけではない。
一般的に言って、東側は西側よりも対応が早い。政府の流儀のちがいが果たした役割は大きい。
私は1990年代に数年間ハンガリーに住んでいたが、私が「行政階級」と呼んでいる人達に感銘を受けた。政府のために働く人たち、公務員たち、もっと言えばみなさんおなじみの古き良き共産主義の「官僚」たちのことだ。こういった「行政階級」は、非常に有能だった。彼らは最小限の手間で仕事をやり遂げた。この効率的な行政システムと非常に高いレベルの普通教育と専門教育のおかげで、東欧諸国は、実は、多くの点で西側諸国、とくに英国に比べて優れた行政運営を行っている。英国では、行政の無能さが大きな問題につながっているようだ。政府に「5年計画」という文化があった国が、なかった国よりも上手に計画を立てているというのは別に驚くべきことではない。古いことわざにあるように、「計画なくして、成功なし」だ。
非常に悪評高い社会主義時代のもう1つの遺産も、東ヨーロッパにおけるCovid-19の影響を最小限に抑える上で大きな役割を果たした可能性がある。RTが3月の初めに報告したように、BCG結核ワクチンがCovid-19に対して効果的であるかもしれないことを示す「注目すべき」証拠が明らかになった。
Also on RT. Com

‘Striking’ evidence emerges that TB vaccine may be effective against Covid-19 — countries that use it have TEN TIMES fewer cases
結核ワクチンの集団接種は、1950年代に社会主義圏の国々が熱心に取り組み、共産主義が終わった後も、多くの国で義務化され続けている。例えばロシアでは、現在においても、生後3日~5日の赤ちゃんたちに接種されている。対照的に、米国とイタリアでは、国民全体に行き渡るBCG接種プログラムが行われたことは一度もない。スペインにもそのようなプログラムはないが、隣国のポルトガルでは、現在も行われている。100万にあたりのCovid-19による死者数は、スペインの455.49人に対して、ポルトガルは、74.11人だった。
BCG接種の有無が、コロナウイルスによる死者数の違いの少なくとも一つの理由になっているもう一つの例は、ドイツにある。以前東ドイツ領だった州におけるCovid-19による死者数は、元西ドイツ領だった地域よりも低い。
ドイツは、領内に「以前社会主義だった」地域を半分抱えた西欧で唯一の国だ。ドイツの一人当たりの死亡率を下げるのに貢献したのは、その「以前社会主義だった」半分の地域だ。
Covid-19による死亡率が低いことで、東欧諸国を適切に評価しないのは、スポーツマンシップに乗っ取っていない。
一例を挙げよう。4月20日の夜、私は、Covid-19による死者が、英国では16,000人いることに対して、ハンガリーは220人にも満たなかったとツイートした。客観的にどう見ても、ハンガリーは英国よりも優れている。
Hungary gets a bad press because of Orban, the ´Viktator’ but compare their Covid stats to the UK’s . Still less than 200 deaths in Hun compared to UK’s 16K. UK population 6-7 times bigger Hungary’s done better per cap. They took it more seriously, quarantined & stopped flights.
— Neil Clark (@NeilClark66) April 20, 2020
I guess that settles it, Orban is actually okay then and we were wrong to oppose fascism all along...? https://t.co/I8YodREaL6
— Order of the Coif (@JusticeTyrwhit) April 20, 2020
優越心で固まった一部の西欧人から見れば、東欧諸国の政府は決して善をなさないのだ。東欧諸国の政府がうまく対応したなどと言うものなら、「犬笛ふき(特定の人にしか分からない言葉で話す政治的立場のこと)」とか、「ファシズムや共産主義の支持者」呼ばわりされる。
西欧諸国における厳格なCovid-19ロックダウン措置は「賢明」であり、警察が監視を強化することは見逃されているのに、東欧諸国における厳格なCovid-19ロックダウン措置は、これらの国が「独裁者」によって支配され、「長期にわたる独裁主義の伝統」があった証拠だとされてしまう。
Also on RT. Com

This is how UK media covers Britain’s Covid-19 response & that is how it covers Russia’s (is this FAIR journalism?)
今は、冷戦時代の「優等生協会(米国の法律学校卒業生による会)」的目線で東欧を見下すことはやめ、もう少し謙虚さを示すべき時だ。というのも、Covid-19への対処を見れば、「後進国」である東欧諸国の政府のほうが、「先進国」である西欧諸国の政府よりも、国民に良いサービスを提供しているからだ。
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