中山七里さんの岬洋介シリーズ第4作、「どこかでベートーヴェン」を読み終えました。
今回は今までと趣向を変えて、岬洋介がまだ高校生の頃のお話でした。物語の語り手となるのは、洋介の級友の鷹村亮です。岐阜県にある加茂北高校の音楽科に、岬洋介が転校してきました。しかし洋介の転校をきっかけに、音楽科の抱えている暗部が次第に表面化してきます。そして洋介が、他の生徒にはできない卓越したピアノ演奏をしたことで、洋介はクラスの中で浮いた存在になりました。
圧倒的な実力を持つ存在への憧れと妬み。凡人がどんなに努力しても絶対に手が届かない、天才と凡人の間にある大きな溝。洋介が転校してくるまでは、それほどの実力を持った生徒がいなかったために、目を背けて入られた現実に、生徒たちは否応なく直視させられることになりました。
そして文化祭での発表会のために、音楽科の生徒たちが夏休みに登校した時に事件は起きました。豪雨によって土砂崩れが起こり、学校が周囲から孤立してしまいました。直前に土砂崩れの危険に気がついた洋介は、学校からの脱出に成功して助けを求めます。そのおかげで、学校に取り残された生徒たちは無事に救助されたのでした。
しかし、この時もう1つの事件が起きていました。岩倉という音楽科の生徒が、何者かに殺害されていたのです。そして、才能を妬んだ岩倉から洋介が暴力を振るわれていたことから、洋介は容疑者として疑われることになってしまいました。周囲が急速に洋介への態度を変える中、亮は洋介に協力して事件の真相を明らかにしようとすることになります。
シリーズの他の作品でもそうですが、この作品でも推理よりも音楽描写に力が入っていました。今回のテーマは、ベートーヴェンのピアノソナタでした。作中に登場したのは、「月光」と「悲愴」でしたが、どちらも何度も聴いている曲なので、演奏シーンでは自然に頭の中に曲が再現されました。この圧倒的な音楽描写が、このシリーズの魅力ですね。(^^)
事件の真相は途中でほぼ予想がついてしまいましたが、物語本編の面白さもあって、それは気になりませんでした。
特に青春時代の自分自身に対する根拠のない自信と潔癖さは、現時点で学生である読者よりも、すでに社会人となった読者の方が、若き日の自分の痛さを思い出して恥ずかしさに悶絶しそうになると思います。(^^;
誰しも若い頃には、いろいろな夢を持つと思います。そして普通に生きる人たちを、見下してしまうこともあります。
しかし社会に出て様々な経験をしてはじめて、ようやく普通に生きることのたいへんさに気がつきます。誰だってそれなりに努力はしているのです。でも、突出した特別な存在になれるのは選ばれたごく一部だけです。
今回この本を読んだことで、若気の至りを思い出したり^^;、普通に生きるのだってけっこうたいへんだということを思い出しました。
今回は今までと趣向を変えて、岬洋介がまだ高校生の頃のお話でした。物語の語り手となるのは、洋介の級友の鷹村亮です。岐阜県にある加茂北高校の音楽科に、岬洋介が転校してきました。しかし洋介の転校をきっかけに、音楽科の抱えている暗部が次第に表面化してきます。そして洋介が、他の生徒にはできない卓越したピアノ演奏をしたことで、洋介はクラスの中で浮いた存在になりました。
圧倒的な実力を持つ存在への憧れと妬み。凡人がどんなに努力しても絶対に手が届かない、天才と凡人の間にある大きな溝。洋介が転校してくるまでは、それほどの実力を持った生徒がいなかったために、目を背けて入られた現実に、生徒たちは否応なく直視させられることになりました。
そして文化祭での発表会のために、音楽科の生徒たちが夏休みに登校した時に事件は起きました。豪雨によって土砂崩れが起こり、学校が周囲から孤立してしまいました。直前に土砂崩れの危険に気がついた洋介は、学校からの脱出に成功して助けを求めます。そのおかげで、学校に取り残された生徒たちは無事に救助されたのでした。
しかし、この時もう1つの事件が起きていました。岩倉という音楽科の生徒が、何者かに殺害されていたのです。そして、才能を妬んだ岩倉から洋介が暴力を振るわれていたことから、洋介は容疑者として疑われることになってしまいました。周囲が急速に洋介への態度を変える中、亮は洋介に協力して事件の真相を明らかにしようとすることになります。
シリーズの他の作品でもそうですが、この作品でも推理よりも音楽描写に力が入っていました。今回のテーマは、ベートーヴェンのピアノソナタでした。作中に登場したのは、「月光」と「悲愴」でしたが、どちらも何度も聴いている曲なので、演奏シーンでは自然に頭の中に曲が再現されました。この圧倒的な音楽描写が、このシリーズの魅力ですね。(^^)
事件の真相は途中でほぼ予想がついてしまいましたが、物語本編の面白さもあって、それは気になりませんでした。
特に青春時代の自分自身に対する根拠のない自信と潔癖さは、現時点で学生である読者よりも、すでに社会人となった読者の方が、若き日の自分の痛さを思い出して恥ずかしさに悶絶しそうになると思います。(^^;
誰しも若い頃には、いろいろな夢を持つと思います。そして普通に生きる人たちを、見下してしまうこともあります。
しかし社会に出て様々な経験をしてはじめて、ようやく普通に生きることのたいへんさに気がつきます。誰だってそれなりに努力はしているのです。でも、突出した特別な存在になれるのは選ばれたごく一部だけです。
今回この本を読んだことで、若気の至りを思い出したり^^;、普通に生きるのだってけっこうたいへんだということを思い出しました。
最終更新日 : 2022-10-30
著者:中山七里 数年前に開校したばかりの加茂北高校の音楽科に一人の転校生がやってきた。他を圧倒するような圧倒的な実力を持ったその転校生・岬洋介は、クラスの中で様々な思いを振りまきつつ、9月に行われる文化祭へ向けての練習が本格化する。だが、そんなときに起きた豪雨による土砂崩れ災害。校内に取り残されたクラスメイトを守るため、決死の覚悟で脱出した岬だったが、学校外でクラスの問題児・岩... …
2017/01/07 15:01 新・たこの感想文