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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち」
中国全人代が薄熙来氏の代表資格取り消し、起訴の可能性高まる

重慶市の元トップで失脚した薄熙来はを全人代から追放。政治局員で更に上を狙う野心満々の人だったらしいが、奥さんの殺人罪などで地位を追われることに。ちょっと前に読んだ、「チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち」でも、薄熙来追放はすでに中国の権力核心を握る「チャイナ・ナイン」の間で合意されていたとの観測が書かれていた。

この本は、中国生まれの日本人で文革を中国で体験し、中国政府高官との太いパイフを持つ著者が解説する中国の権力構造とこれから将来にわたってその権力がどうなるかの予測。

私自身は、中国とは仕事でもプライベートでもまったく関係が無いので、そもそもあまり予備知識がなかったが、実に興味深いエピソードと明快な背景解説が実に面白い。

中国は確かに共産党が一党支配しているのだが、総書記である胡錦濤が独裁しているのではない。中国を動かしているのは中国共産党政治局常務委員の9人で、これが「チャイナ・ナイン」。すべての党の重要な決定は、胡錦濤が決めるのではなくこの「チャイナ・ナイン」の合議と多数決という民主的手続きで決まるのだという解説がまず驚き。

この「チャイナ・ナイン」をウォッチすると、中国の今後の方向性が見えるのだという。

また、この9名には改選時に68歳を超えていれば再選されないという厳格なルールも存在しており、この秋に行われる全人代では9名のうち7名が退任するのは既定路線。残る2人のうち習近平が総書記、国家主席になるのも既に決定している。

権力基盤である党内序列は厳格で、現在首相である温家宝は党内序列ナンバー2ではなくナンバー3。ナンバー2はほとんど外国には報じられないが中国国内メディアではかならず胡錦濤の次に動静が伝えられるのだなど、チャイナ・ウォッチャーには常識なのかもしれないが、初めて聞くと実に面白い話ばかり。

「チャイナ・ナイン」そのものには定年があるが、そこに自分の息のかかったものを送り込めば自分の勢力維持が図れる。中国権力中枢では、胡錦濤が代表する団派と、前の総書記である江沢民を中心とする太子党の権力争いが暗然と続いており、現在の「ナイン」は江沢民が自らの勢力を維持するために送り込んだメンバーが多数を占めているのだという。

この秋の全人代でどの7名が新たに「チャイナ・ナイン」になるか、あるいは常務委員の定数そのものに変更があることも考えられる。習近平の次を狙う若手が抜擢されて常務委員入りすることも考えられるとか。中国の権力闘争は実に人間臭いドラマが満ち満ちている。中国人は極めて政治的な民族で、共産党の奥の院で行われている権力闘争であっても、いつの間にか真相は巷に噂として広まってくる。

もうちょっと他の中国政治関係の本も読んでみたくなった。