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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
内閣審議官のTweet
過去日記で書いた福島事故の民間調査委員会報告だが、あちこちのメディアでツマミ食いのような形で断片が報道されているのだが、メディアによってずいぶん着眼点が違って、自説に都合のよい部分だけ引用してるような印象。

前の日曜のTV番組、「サンデーモーニング」では、この報告書には、事故収束に必要なバッテリーのサイズや運搬方法まで自分で電話で問い合わせて克明にメモする菅首相を見て側近が、「首相がこんなことまでする事にゾッとした」と放送され、今週の週刊文春の記事にも同様の記事が。

しかし、取材に応じた当の側近、内閣審議官の下村健一氏の「民間事故調」報告書に関する呟き を読むとこんな風に違う事が書いてある。
私は、そんな事まで自分でする菅直人に対し「ぞっとした」のではない。そんな事まで一国の総理がやらざるを得ないほど、この事態下に地蔵のように動かない居合わせた技術系トップ達の有様に、「国としてどうなのかとぞっとした」のが真相。
この審議官は菅首相寄りの人であるから、もちろん幾分か割り引いて聞く必要はあるが、東電の首脳、安全・保安院、安全委員会が、未曾有の原子力災害に際して、いかに機能していなかったことがよく分かるエピソード。目の前にいる専門家と称する面々にいくら訊いても、情報も判断も出て来ないなら、首相が自分で動くのも理解できないでもない。原災法はそもそも首相に全ての権限が集中する立法なのだから。

事故当初から官邸と官僚が真実を隠蔽しているという陰謀説がネットでは多々語られたが、真相は要するに対策本部では情報収集がまったく機能せず、何の判断もできずに、福一現場の対応まかせであったということなのでは。国民に真実を知らせないようにする陰謀など、ここに描かれたお粗末な状況下で成立するはずがない。発表すべき情報など、そもそも対策本部でも把握してなかったのだ。

菅が原発に視察に行ったからベントが遅れたというのも、当時あちこちで見てきたように語られたが、これも疑わしい。上記の審議官の発言を見るならば、福一原発の現場は戦場のような混乱と悲惨にまみれており、首相の来訪など気にしてたように思えない。火急であることは分かっている。もし可能ならば菅のヘリが上空にいたとしてもベントしただろう。

菅首相の判断や言動が事故対応に全て役に立ったとは思わないが、福一現場からの撤退を申し出た東電首脳を東電本社に乗り込んで怒鳴りつけた事だけは誉めるべきという気がする。当時は、菅が現場を混乱させている証拠のように取り上げているメディアもあったが、あのまま対応を放り出していたら、炉のメルトダウンは更に進み、使用済燃料プール冷却水も全て干上がり燃料損傷して放射性物質大放出。放射能汚染の拡大は今の何十倍にもなってたのでは。首相が鳩山だったらもっとエライことになっていたかも。まあ、今でももうエライことになってる訳ではありますが。

ひとつ民間版事故調査委員会に文句つけるなら、調査報告書電子版は1,000円也でも既に書いた通り、webにフリーで報告書のpdfを上げないこと。アメリカでは911の報告書もwebではフリーで公開され、書籍版だけが有料。なぜ電子版で金取るのだろうか。

批判が相次いだからか、電子版の実費除いた剰余金は海外での報告書発行などの諸費用に使われるとWebには書いてある。しかしこれもまた、海外で紙で出版せんでも、英語版をWebにフリーで上げればそれで済む話なのだが。この委員会も、ネットの進展を知らない相当お年を召した人々がやってるのかねえ。