海外駐在してると、日本から来たお客を空港に送迎したり、ホテルに連れていったり、仕事先に連れていったり、食事に連れていったりするのも、大事な仕事のひとつ。これらの業務を総称して「アテンド」と称する。Flight Attendantの「Attend=お世話する」ですな。
米国駐在も通算で8年になるが、不思議なのは、VIPをアテンドする時に限って、色んな失敗が起こったり、不幸な出来事が起こったりすること。私自身が経験した失敗、あるいは諸先輩が体験して伝承した、VIPアテンドにまつわる失敗やトラブルを思い出すままに挙げてみよう。
・フライト到着が早まり、予想外に早く客が出て来て、空港での出向えに遅刻
・到着したとたん、「昨日の為替(株式)相場どうなった」、といきなり聞かれて立ち往生
・到着したとたん、トイレどっちだと言われ、場所分からずアタフタ
・カギを閉めこんでしまい、空港の駐車場で立ち往生(まあ、最近の車では起こらないが)
・さあ、出発と思ったらバッテリー上がりでエンジンがかからない
・自分の車でお客の送迎途中に自動車事故
・予約したはずの、ホテル・レストラン・ゴルフ場の予約がなぜか入ってない(昔は、やたら多かった)
・禁煙ルームを手配したのに、部屋がなぜかタバコ臭い
・ホテルの部屋に関するクレームあり(エアコン効きすぎ、うるさい、水・冷蔵庫が置いてない等)
・選んだレストランがお客の気に沿わない(前日もステーキだった、アメリカで日本食など食べたくないなど)
・料理について質問され、これはこうこうと講釈したら、まったく違うのが出てきた
・みやげ物を買いたいと言われて連れていったら、店が定休日
・空港にお連れしたら、帰りのフライトがキャンセルになっている
・お客を見送った後、やれやれと車に戻ると、トランクに忘れ物の荷物が
これらの現象は、偉くないのをアテンドする場合にはあまり起こらないのだが、なぜか不思議なことに、VIPをアテンドする時に頻発する。マーフィーの法則ですな。
偉い人というのは、人格も陶冶されて、細かいことに目くじらたてない紳士が多いから、笑って許してくれる場合がほとんどなのだが、そうでもない場合も、中にはやはりある訳で。まして、自分の失敗が先方の記憶に残るのは、人間誰しも嫌なものだ。
昔は、水やスリッパ等をホテルの部屋に事前に準備したりもしたものだが、最近はここまではやらない。最初から備わってるホテルも多いし、部屋にスリッパが無いと騒ぐような日本人も少なくなってきた。アメリカのホテルでは、どこも歯ブラシは置いてないということも、ほぼ常識として浸透してきたのではないか。もう農協の人がJALパックで団体旅行するような時代じゃないものなあ。
オンラインによる予約が浸透して、ホテルやレストラン、ゴルフ場などでのトラブルが激減したのも助かる。まあ、全般的に、昔に比べればアテンドは楽になった感あり。
しかしなお、様々なトラブルが想定される訳で、これらを乗り越えて行くのも仕事。
フライトの状況は到着前も出発前も何度も確認するし、出発地と到着地の天気予報もチェックする。時事の話題、地元のニュースも、質問されてもすぐ答えられるよう準備。レストランには事前に下見に行っておく。車は洗ってピカピカにしてガスも満タン。普段の整備も忘れない。長い距離の移動はプロのリムジンを手配。直前には必ず電話で再確認。ホテルの部屋は可能な限り事前にチェックインして点検。お酒飲む飲まない、食事の好みはどうなのかも事前に情報入手しておく。
そう、アテンドとは準備なり。しかし、いくら準備しても、失敗する時は失敗する。そうして、時として、社内で伝承されてゆく、珍失敗談が新たに生まれるのであった(笑)。
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