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2021-12-31 (Fri) 17:59

終わりの感覚/ジュリアン・バーンズ


ジュリアン・バーンズさんの「終わりの感覚」を読み終えました。ジュリアン・バーンズさんの作品は、かって「フロベールの鸚鵡」や「101/2章で書かれた世界の歴史」に手を出したことがありますが、どちらも途中で挫折してしまいました。(^^;

この本は2部構成になっていて、第1部では物語の語り手トニーが、高校時代にエイドリアンと知り合い親友になったこと、やがてトニーにベロニカという彼女ができましたが、ベロニカはトニーを捨ててエイドリアンと結ばれます。やがてエイドリアンが自殺したことをトニーは知りますが、その原因はわからないままです。

その後も、トニーは何人かの女性と知り合いますが、マーガレットと結婚してスージーという娘が生まれます。しかし、トニーとマーガレットはやがて離婚してしまいました。離婚後も2人の関係は悪くなく、娘とも時には顔を合わせています。
やがて老年に入ったトニーは、ボランティア活動などをしながら独りで暮らしています。

第2部では、そんなトニーのところにベロニカの母親から500ポンドの遺産が残されたという知らせが届きます。しかしトニーは、なぜベロニカの母親が自分に遺産をくれたのか理解できません。お金以外にもエイドリアンの日記が、トニーに託されました。

ところが、その日記はベロニカが所持していて、弁護士を通じて頼んでもトニーに日記を渡そうとはしません。かって別れた時からトニーとベロニカの関係は最悪でしたが、トニーは彼女の兄からメールアドレスを聞いてベロニカに連絡を取ります。最終的にトニーは、苦い真実と向き合うことになります。

第1部は、それなりの夢や希望もあったトニーが、年を経るにつれ現状を肯定してゆき、現実と妥協した人生を送るまでが描かれました。第2部は、なぜベロニカの母がトニーに遺産を残したのか、エイドリアンの日記には何が書かれていたのか、なぜベロニカは日記を渡すことを拒んだのかが、推理小説のような雰囲気で描かれます。

全体的に軽い語り口で、それほどボリュームのある作品ではありませんが、読み終えた後に心にトゲが引っかかっているような気持ちになりました。誰もが若い頃に思い描いた夢を実現できるわけではありませんが、現実に妥協しながら生きるトニーの姿はどこか自分と重なる部分があるように思いました。

最終更新日 : 2022-10-30

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