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石田明生

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Pさんへ
 P様、「パリ・オリンピック開会式(1)~(6)」を読んでくださり、その上紹介までしてくださり、ありがとうございます。
 オリンピックにあまりご興味はお持ちではなかったようでしたが、実は私もそれほど強い関心はありませんでした。ただ開会式だけは、どこの国が開催してもその国の歴史、文化、社会観、国家観が出てくるものと思い、真夜中過ぎにもかかわらず見始めました(東京オリンピックの開会式にはこれという主張が見られなかった)。一応録画しておいたのは、途中で眠ってしまうだろうと思ったからです。ところがマリー=アントワネットと思しき女性がおのれの生首を両手で抱え、革命時の歌を歌った映像を見て驚嘆してしまいました(翌日、目にした日本のコメントでもっとも悪評だった場面です。が、フランス人は「やっぱりな」と思ったことでしょう)。また、国立図書館での「愛」の本の紹介では、日本人にはわからなかったかもしれませんが、「純愛」とか「恋愛」とか普通想像される類の小説ではなく背徳的あるいは肉体的な恋愛の本が主でした(フランス人はニヤニヤまたはゲラゲラ笑っていたでしょう。対してNHKのアナウンサーは嬉しそうに「これがパリの愛ですね」と説明していました。たぶん後で本の内容を知ったらびっくりしたでしょう)。こう見ると、この開会式はストレートな見方ではまったく理解できない、ある種難解な作りになっていると思い、解説を書こうと思ったのです(実際多くの人のコメントを見ると誤解/曲解が多数見られました)。


 昨日(9/28)ネットのニュースで(TBS NEWS DIG Powered by JNN)、パリ・オリンピック、パラリンピックが成功裡に終わったこと、特に二酸化炭素の排出量が過去のそれと比べて半分以下になったことが報告されていました。例えば、いたるところで飲料水が汲めること(街のあちこちに給水スポットがあります。1200か所と言われています。無料ですし、google地図にスポットが記載されています)。これは素晴らしいアイディアですが、おそらく日本では難しいかもしれません。町のあちこちにある自動販売機やコンビニにとってはおもしろくないでしょう(売れなくなる)。
 ここでやっと、Pさんの「文明の進歩に対する懐疑」に近づいてまいりました。ご存じのように、今回のオリンピックでフランスが世界にアピールしたい最も大きな狙いに「サステナブル」であること、「二酸化炭素を可能な限り排出しない」を実践することでした。それは、上記のニュースを見れば成功したと言えるかもしれません。
 フランスに行くと、いろいろ日本と違う風景を見ることがあります。例えば二酸化炭素に対する認知度です。ネットで乗換案内を見ると、目的地に行くのにどれほど二酸化炭素を使うか表記されていたり(例えばパリ中心からヴェルサイユまでCO2を電車で175gというように)、今は知りませんがTGVの切符にも目的地に着くまでの炭素の排出量が記載されていました(「あなたはどれだけ炭素を使うか」を示すためでしょう。今は、たぶん紙の切符は使っていないと思います)。
 また、田舎の道路を車で走っていると(友人に乗せてもらって)、ほとんどノンストップでドライブできることに感心してしまいます。それは、交差点が信号機ではなくロン・ポワン方式(英語ではラウンド・アバウト方式)になっているからです。この度の総裁選(自民党でも立憲でも)で、誰一人具体的な温暖化対策を表明した者はいませんでした。その対策の一つとして、ロン・ポワン方式を日本も導入すべきだと思うからです。この方式は便利というだけではありません。大切なことは、電気を使わないからです。考えてみてください。日本全国にある田舎の道路についている信号機が赤緑黄の電気をつけっぱなしであることを。しかも交通量もたいしてないままにです。全国でどれだけの電気を使っているのでしょう。また、災害の多い日本では停電しても問題のないこの方式の交差点は強い力を発揮します。日本はどれだけ非効率的にエネルギーを無駄遣いしているか。しかも高い電気料金を払っているのです。
 もう一つ、政治家に提案したいのは、と言っても資本主義や経済に対立するので政治家は絶対に言えないでしょうが、至る所にある自動販売機を廃止は無理でも規制して減らすこと、さらに難しいですが、一晩中店を開いているコンビニを禁止することです。Pさんがおっしゃる通り世界中で飢餓や貧困で苦しむ人がいます。それなのに、日本だけ(いわゆる先進国だけ)地球温暖化に背を向けて、便利をむさぼっているのは私には許しがたいことと思います。今80億の人たちがこの地球上にいるそうです。多数の人たちが地球温暖化のために干ばつや洪水に苦しんでいるとしたら、またこれから誕生してくる人類を含めた生き物たちを考えたら、スェーデンのグレタさんではありませんがいたたまれなくなるのは当然です。
 こんなことを考えていても、空想の域を脱することはできないでしょう。かなり悲観的になっています。その最大の原因は、この夏もそうでしたが猛暑のために事あるごとに言われるフレーズ「特にお年寄りの方は、就寝中も冷房をしっかりつけてお休みください」を耳にするからです。これを聞くと心は萎えてしまいます。猛暑であれ、極寒であれ老人が温暖化の原因となる貴重なエネルギーを「特に」利用してよいのか、大矛盾の中に陥るからです。年寄りが増えれば当然、若者の負担は大きくなります。時代は常に若者のものであり、子をなしていくもので、それはあらゆる生物の遺伝子、生物=遺伝子の摂理だからです。
 またオリンピックの話になりますが、この度、パリの選手村には冷房装置がないことが、ネットで話題というより非難の対象になりました。フランスはケチっているとか、選手のことを考えていないとか、もっともひどいのはフランスの選手の入る部屋だけ冷房があるとか、書きたい放題でした。日本の選手は簡易クーラーを持参するだろうとも言っていました。ところで、年によっては猛暑のこともありますが、パリの真夏の一日の平均気温は最高で24度、最低で14度、一日平均20度です(「パリの気候、月別の気象、平均気温」より)。ですから、一般家庭はもちろん、ホテルも冷房のないのが普通です(少なくとも私が泊まるようなホテルは)。もちろん、直射日光を受けた部屋は温室効果で暑いかもしれませんが、夏は乾燥しているので日陰は涼しいです。残念ながら、開会式の日は珍しく雨が降りました。おそらく15・6度だったかも、選手たちはむしろ寒かったに違いありません。そんな選手村非難の中で、「もし選手が暑くて体を壊したり、調整に失敗したらどうする」というもっともらしい意見がありました。でも私に言わせれば、「アスリートなら自己の体調管理はしっかりせよ。まして、コーチ等の人もいることだし」となります。この選手村はそれでも住宅の床下に水を流して、パリ当局に言わせれば6度下げたと豪語していましたが、どうでしたか。オリンピック後、一般の住宅になるそうです。ちなみに、パリの緯度はサハリン中央部と同じくらいですが、その割に冬は寒くありません。東京の緯度は、チュニジアのチュニスの南、モロッコのカサブランカより少し北になります。ドイツやフランスから見るとずいぶんと南にあるのですね。そういう見方をすれば、今年の夏の猛暑はいよいよ熱帯地方並みになったということでしょうか。日本は、それなのに暑さに慣れようとせず、大変な負荷をかけて周りの環境を変えて温暖地帯の快適さを作り出そうとしているのです。
 妻に申し訳ないが、私はそういうわけで就寝中は冷房をつけていません。部屋は南向きなので真夏は窓を開けても32度から34度はあります。妻に「危ない」と言われますが、「目を覚ました時に死んでいたらうれしい」と言って取り合いません(そんな楽で愉快な死に方、いいですね)。また、自動販売機はかつて数回使ったことはありますが、今や使い方もわからないでしょう。コンビニは名前の通り便利かもしれませんが、年数回しか行きません(夏入った時のあの冷房のすごさ、どうしてもなじめません)。一人でこんなことをしても意味はありませんが、「こんなこと」をしているわけではありません。利用しないと利用するのが億劫になって、文字通り敷居が高くなってしまったのです。
 Pさんのおっしゃる3S政策は、オリンピックに引き寄せれば、古代ローマの「パンと見世物」ということになります。見世物とはまさに競技場での競技や剣闘士の試合のことで、ローマ市民なら誰でも無償で見ることができ、パンも与えられたそうです。そういう市民は毎日食べる苦労もなく、今で言うスポーツ観戦を楽しんでいたので、怠惰に陥っていったそうですね。アメリカのは分かりませんが、古代ローマのほうは何世紀も続いたのだから大いに効き目があったのでしょう。現代なら、愚民政策にはスマホのゲームが最も効果的かもしれませんね。オリンピックの開会式は、私の子供の頃を思い出すと、様々な国の旗と肌の色、何よりも初めて聞く国名に胸が高鳴りました。それは世界中を間近に見た瞬間でした。伝承によると紀元前8世紀に始まったオリンピックは紀元後392年、帝国がキリスト教になったために終焉を迎えたそうです。近代オリンピックはまだ百年ちょっと、2千年前と現代では時間の流れはまったく別個の感があります。この地球で人類がこれから千年続くなんて、考えられませんよね。
雑感 | 15:11:40 | Trackback(0) | Comments(0)
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