投稿日:2020-10-16 Fri
10月11日の日曜日に、コロナ騒ぎ以来初めて東京まで出向いた。赤坂の草月ホールで、友人の野村眞里子氏がフラメンコの引退公演をしたからだった。1987年にアトリエ・エルスールを設立して、30年以上が経った。特に、2002年にフラメンコ舞踊団を旗揚げしてからは、精力的に文学とフラメンコの完全なマリアージュとでもいうような舞台を見せてくださった。夫君は現代詩の先端を行く野村喜和夫氏だから、もちろん現代詩とフラメンコの共演ということだ。特に、詩人は朗読ということに重きを置いているので、壮絶なフラメンコのストーリーと前衛的な詩(この度の詩は『骨のカントー、肉のカントー』という題名)はピタリとマッチする。今回は、最後の公演ということで、眞理子氏はずっと追求している母と子のテーマ、ギリシャ悲劇の『フェードル(バイドラ)』を元にタイトル『michiyuki』のストーリーを作り上げた。息子を愛しすぎた母親の死と悲しみは舞台上で遺憾無く発揮される。相方の息子役中原潤氏の踊りも感動的だった。また、久々聴いたフラメンコギターと歌(スペイン語)も、今流行りの表現を使えば「鳥肌がたつ」ほど、素晴らしかった。
ちなみに、「michiyuki」は近松の心中物が思い出されるが、ここでは、母親の息子への溺愛と誘惑の悪魔に惹かれ、母から離れる息子の感情との相克のことと思われる。
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