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石田明生

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原田マハ『楽園のカンヴァス』
11月27日(日) 『楽園のカンヴァス』原田マハ著(新潮文庫)を読む。

 小説は、大原美術館の展示室から始まる。この美術館の監視員をしている43歳の早川織絵は、ある時館長から特別の用事で呼び出しを受ける。ニューヨークのMoma美術館が休館するので、その間にアンリ・ルソーの『夢』を中心にMomaコレクション展を開きたいという。実は、織絵はかつてアンリ・ルソーの『夢』とさらにMoma美術館のチーフ・キュレーター、ティム・ブラウンと深い関わりを待っていたのだ。
 物語は、17年前にタイムスリップし、スイスのバーゼルで繰り広げられる。ルソー研究家早川織絵とMoma美術館のアシスタント・キュレーター、ティム・ブラウンは、ある美術収集家の富豪に呼ばれて、彼の所有するアンリ・ルソーの絵『夢を見た』の真贋検査の依頼を受けることになった。その方法は、ある作家が書いたアンリ・ルソーの伝記を少しずつ紐解きながら、真贋を見極めるというものだった。二人のどちらがルソーに対する研究と愛情が優っているか、一種の決闘でもあった。
 小説は、アンリ・ルソーとピカソの交友関係を含めた、絵画にまつわるミステリーの様相を呈する。ただし、死体も殺人もない、一種の知的ゲームのミステリーだ。
 原田マハ氏の小説を初めて読んだが、その筆力に驚いた。面白い小説を書くものだ。ついでに彼女の名前「マハ」はもしかしてゴヤの作品の「マハ」から取ったペンネームではないかと思い、Wikipédia を見ると、やはりそうだった。が、本名が載っていないので、本名はわからない。もしかしたら、本名は「まは」で「マハ」とカタカナ表記がペンネームということだろうか。とするなら、彼女の両親がゴヤに思いがあったということか。
 かつて、1日バーゼルに遊んだことがある。もちろん小説にも登場する美術館で数時間を過ごした。そして、なによりもライン河を挟む町の風景が懐かしかった。
 小説の解説を、かつて大原美術館の館長だった高階秀爾氏が書いている。これまた懐かしいお名前だ。

書評 | 11:20:36 | Trackback(0) | Comments(2)
誕生日と胃痛
 ハロウィーン騒ぎはおさまり、日本では無事に「万聖節」を迎えることができた。対して、お隣の韓国ではなんという悲惨な事故が起こったのだろう。もしこの他山の石がなければ、日本で起こっても不思議ではない。
 韓国もそうだろうが、なぜ渋谷のような一点に若者たちは集まるのだろうか。それとも、地方の町のハロウィーン騒ぎは報道されていないのだろうか。それとも、騒ぐ人の総数や場所は限定されているのだろうか。
 そんなことをテレビで見ながら「万聖節」を過ごして、明くる今日は「死者の日」だ。そして、僕の74回目の誕生日だ。もし僕にとって74歳という誕生日に意味があるとすれば、それは母親の亡くなった歳を超えたということだろう(父親は僕が学生の頃だった)。何となく目安にしていたので、軽い感慨がある。
 毎年誕生日に、子供の時は母が、所帯を持ってからは妻が赤飯を炊いてくれた。が、今年の誕生日は赤飯を諦めねばならないだろう。というのも、10月初頭から腹痛に悩まされて何度か医者に相談し、「胃炎」らしいと診断されて来たが、一昨日、内視鏡検査の結果、十二指腸潰瘍と判明したからだ。赤飯に関しては病名がわからなくとも、どうせ食べることはできなかったから、同じことだが、赤飯のない誕生日は寂しい。

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日常スケッチ | 09:19:01 | Trackback(0) | Comments(0)