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石田明生

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田中は田中でも今度は田中実
 田中好子さんの死を悼んで、冥福を祈っていると、今度は俳優の田中実の訃報が続いた。冗談じゃない。なんで田中実が、スーちゃんの告別式の日に、首くくらねばならないのだ。
 NHKの朝の連続ドラマ『凛々と』が放映されたのは何年前だろう。20年は経つだろうか。そのとき、日本初のテレビを制作する技師を田中実が演じていた(と思う)。大物新人の登場と思われたが、その後、残念ながら、いい役にめぐまれなかった。2時間ドラマにたまに出ても、犯人役しかまわってこなかった。『温泉に行こう』は、おそらく彼にとって朝の連続ドラマ以来の大役だったかも知れない。
 僕は、彼が無名塾出身ということもあり、ずっと応援していた。特に、彼が時代劇に出演したときの彼の容姿の美しさに感銘を受けて以来、おもしろい時代劇にめぐまれればよいのに、とずっと思っていた。が、時代は美青年を求めていなかった。
 何が彼を死に追いやったのだろう。仄聞するところによると、ついこの間、水谷豊と演劇論などをたたかわして、意気軒昂だったと言うではないか。
 いやいや、やはり彼が自殺したことを受け入れることができない。どうしても、田中実と「自殺」が結びつかないのだ。サスペンスではないが、遺書もないらしいし、他殺だったのではないか。そう思いたくなる、田中実氏の訃報だった。
 冥福を祈ります。


雑感 | 07:00:03 | Trackback(0) | Comments(0)
スーちゃんこと田中好子さんの美しさ
 先週、奈良に旅をした。
 と、ここまで書いて、そのまま放っておいたら、「スーちゃん」こと田中好子さんが亡くなった。55歳という、男でも女でも円熟を迎えるいわば盛りとでも言うのだろうか、そんな早すぎる、惜しまれる死だった。
 僕自身は、キャンディーズやそのヒット曲にそれほど関心があるわけではないし、スーちゃんもランちゃんもミキちゃんも見分けがつく程度で、まあどうでもよい存在だった。ただ、ほかのふたりと違って、スーちゃんは今村昌平の『黒い雨』に出演したので、ちょっと際立った存在ではあったが・・・その後は、お茶の間のテレビドラマにおさまり、いわゆるドラマ俳優レベルで終わろうとしていたし、きっと終わっていただろう。あくもなく、強烈な存在感もなく、それだけに嫌みのないおばあちゃん女優を演じ切ったかもしれない。でもそんな人生は彼女に許されなかった。僕たち部外者には知られていなかったが、乳癌を長く患い、辛い闘病生活のすえの死であったと言う。
 でも、彼女は死して敢然と光り輝いた。告別式で流れたあの感動的なメッセージは、どんな詩歌やエッセーをも超えて、聞くものの心を揺り動かしたのではないだろうか。死の床で発せられ、ひとつひとつ紡ぎ合わされた言葉の織物は、人に温かい人間になれることを、温かい人間であり続けることができることを示している。死を目前にしても好子さんは、まずは遠いところの人たち、被災地の人たちへの思いを語り、次に友人への感謝の気持ちを述べて、最期に夫君への言葉、ご自分の無念を語った。
 死後を演出しようとするナルシストの最期の演技とは到底言えない彼女のメッセージだった。そんなものではない。また、誰かに強要されたわけでも、誰かに入れ知恵を授けられたわけでもないメッセージ、推敲さえもろくにされていないメッセージだったのだろう。その訥々とした語りは、どんな詩人の朗読をも凌いだ。
 彼女は、もちろん容姿も美しいが、本当に心の美しい人だったのだ。
 冥福を祈ります。そして、あの世で被災した人たちを支援してください。


雑感 | 09:49:12 | Trackback(0) | Comments(0)
岸田美人姉妹
 昨日の夕刊を見ていたら、いつものように地震・避難・放射能関連の文字が踊っている紙面の左下に、慎ましやかに岸田衿子の死亡記事が載っていた。82歳だった。
 とここまで書いたが、時間がなくなったので続きは旅行から帰った後に。

 奈良旅行から帰って来ても、不幸な事件で新聞の紙面が彩られる。通学する小学生の列にクレーン車が突っ込んだのだ。 言葉を失う。

 そうは言っても、岸田衿子のことをちょっとだけ書いておこう。
 この詩人・童話作家は、岸田國男を父に持つ、大変な知的ハイレベルの家庭で育った。妹は先頃物故した女優の岸田今日子だった。僕の学生時代の先生は、酒席ででいつも、この知的なご家庭の話をなさったものだ。

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雑感 | 05:18:48 | Trackback(0) | Comments(0)
ロマン派の勝利、『エルナニ』
 ユゴーの『エルナニ』を読んだ。恥ずかしいことに今の今まで、このロマン主義の記念碑的な作品をじっくりと読んだことがなかった。もちろん、劇も見たことがない。文学史のなかで、ほとんど丸暗記するほどに、1830年2月25日の『エルナニ』上演の模様を知っているのに・・・テオフィル・ゴーティエを中心としたユゴー親衛隊とも言うべき若者たちの歓声、古典派の連中の野次怒号、ロマン派の勝利・・・いやそれだけではない。スタンダールの傑作『赤と黒』にも言及されていたほどの事件だったのに、肝心要の作品を読んだことがなかった。

 主要人物は4人だ。題名にもなっているエルナニは、スペイン王国に反旗を翻す山賊の首領だが、王国の重鎮ドン・リュイ・ゴメスの姪ドニャ・ソルと相思相愛の仲となっている。こともあろうに、この初老の伯父は、美しい姪との結婚を画策している。ドニャ・ソルはエルナニと結ばれなければ、自害しようと覚悟を決めている。そこに、スペイン国王にして後の神聖ローマ帝国皇帝のドン・カルロスが絡む。というのも、彼もまたドニャ・ソルにぞっこんなのだ。

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文学雑感 | 00:08:24 | Trackback(0) | Comments(0)