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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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Author:文谷数重
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2012.05
30
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13:00
Category : ミリタリー
 海自の学生が作る試験対策等を「申し送り」という。学生は申し送り作りに精を出し、秘密の類まで悉皆書きこむ。昔は、手で筆写していたので他所に漏れることも少なかった。しかし、当節はコピーのし放題。しかもいつの間にやらデジタル化されたのでなので、秘密は駄々漏れになってしまう。

 自衛隊内学校の試験は模範解答の丸暗記。試験問題は秘密にされているが、学生側で作った申し送りが出回っている。そもそも試験問題・用紙も2種類、よくても3種類しかない。前の課程で出た問題用紙がタイプAなら、次の過程はタイプBがでる。教官課程の教官をやってた己が言うのも何だけど、筆記試験には何の分別力もない。

 逆に、回答集を見ないと、試験によっては赤点を撮りまくる。己は幹部中級の時、面白半分で申し送り・問題集なしで試験を受けてみた。「別に序列最低でも困らない」と考えてのことだけれども。授業でやった内容をなぞる問題ならば、特に赤点はとらないで済んだ。でも、数字を丸暗記させる問題は盛大に赤点を取りまくったよ。

 特に陸警※ が数字丸暗記問題だった。「中隊本部の編制をすべて述べよ」「海上自衛隊での陸戦分隊定数は」みたいな丸暗記問題が連続でね。これは秘密でもないから書けるけど、中隊は3単位で、本部には中隊長と副中隊長、中隊海曹と係が何人か。その係の名前を正確に書けとかねえ。小隊も3ヶ分隊+機関銃分隊(たしか)なんだが、陸戦中隊なんて臨時に編成される。分隊人数が定数通りになるもんか。

 陸警は、数字丸暗記問題ばかりだから、漠然と正しい回答はダメだった。申し送り持っていないから、適当に係をでっち上げたり、分隊人数を8人から12人程度の適当な人数かいといたんだが、それだと赤点になる。まあ「機関銃(BARとかM1919ね)の数にあわせて分隊作るだろ」と考えていたから、真面目に数字を覚えてなかったからねえ。でも逆に、中隊本部の編制、分隊の定数を暗記しておけば、機関銃操作に要する人数とか想像できない学生でもOKになる仕組。

 赤点とったあとで、陸警の課程主任や科長も困っていたよ。後で教官やって分かったのだけれども、再試験は面倒ごと。再試験そのものも厄介だけれども、成績報告で学校長(将補)や部長連(だいたい1佐)から「キチンと教えたのか」「授業方法に問題があるのではないか」と絞られる。申し訳ないことをしたものだ。

 不健全な申し送りが生き残っているのは、こういった背景がある。教官も試験で躓かれるのが嫌だから、見て見ぬふり。学校長以下も、昔自分が利用しているので承知。しかし、申し送り問題集がないと学校の実績も落ちるので、口にはできない。修業した学生に問題がないのに、寝た子を起こすこともないとする考え。学校も人手不足が著しい、解決しなければならない問題も山積している。後ろ向きな問題に対処する余裕もない。

 申し送り回答集には弊害が大きい。回答集の回答しか覚えない、試験問題もまともに読まないといった問題はまだ可愛い方。申し送り回答集に、解説として、一種データベースがついていることがある。エリート課程の◯◯課程は、表紙が赤い本を勝手に電子化して渡していた。◯◯綱領や◯◯に関するデータなのだが、それをCD-ROMで申し送る。その中に、件のイージス関連情報があったらしい。

 コピー厳禁の秘密を申し送るのは、試験に対応だが、そんなものを持っているから情報が漏洩する。海曹士まで伝播したのは、イージス関連情報・技術も入っていたためだろう。勉強熱心な海曹に渡すことはあり得る。ただ、一回海曹まで下がれば、エロデータと一緒に無関係な職域まで出廻ることになる。関係ない職域なのにイージス関連情報を持っていた海曹士連は、◯◯要綱や◯◯に関するデータまで持っていたのだろう。なんにしても、◯◯綱領なんかどうでもいい内容なんだけれども。電子戦とか対潜戦とか通信とかのリアルな内容はマズイね。

 分別力のない試験のために作ったデータというのが情けない。何クラスか後、例の事件があって、芋づる式に調査が行われた。己は不浄CD-ROMは貰わなかったのが怪我の功名だった。「申し送り・問題集があったことは知っている。しかし、そんなものを持っていたら、あの成績はないだろう」と答えたら、すぐに放免された。聞き取り調査も一回だけで済んだよ。

 中級当時は、赤点王としてアレな課程主任に説教を受けたけどね。「何故、回答集を読んで丸暗記しない」って怒鳴られたよ。CS課程出たことだけが自慢だが、箸棒にもかからない鉄砲屋さん。言動風采ともパッとしないのに競争意識だけは高い自称エリートさん、要は、自分が受持った課程の成績が下がること、赤点に関する説明をすることを危惧していた。もちろん、説教だから金も命も取られない。むしろアレ課程主任は、職域マークが鉄砲だから、後のイージス漏洩調査で徹底マークされたんだろうけどね。



※ でも、陸警授業や教官には悪い印象もない。リアル陸警が仕事なのは砲雷科か地上救難、それ以外はお手伝いでやる程度。とはいえ、9.11の時に横監勤務とかしてたら、メインでやらされるけどね。そういう幹部を除けば、一生縁もない。薬剤幹部の某女史は、機関銃と短機関銃の区別がつかなかった。機関銃分隊を「小銃が足りないので、なつかしのトンプソンで武装する」と考えていた。「候補生の時、文谷が整備受け持っていた小さいやつでしょ」と言っていたから強心臓。
 授業と試験に欠陥があったのは後方関連ね。後方関連は赤取らなかったけど、結構ひどかった。まず授業で教える内容に誤りがあった。試験もすべて正解になってしまう問題がある。どれが正解とも言えないが、一般的にはこれが正解という答えと、試験の正解が異なるものがあった。その仕事をやってた本職マークのヤツが「教科書のここ間違い」「試験の問題が間違い」といっているのだが、教官は無謬性を決め込んでいた。
 まあ、一番ひどかったのが、情報と戦史だったけどね。

※※ イージス騒動から、申し送り、特にデジタルデータはご法度になったのだけれども。後にCSを強制受験させられたときに、やはり申し送り資料を持ち込んでいる奴がいた。まあ、CSは行きたい人を合格させる試験だから、ヤル気があるのはいいことなんだろうけど。
2012.05
28
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13:00
Category : 昭和の新聞
 90年代に、ロシアから電力を買う話があった。

 ロシアは電力が余っている。水力発電が豊富なこともあるが、火力発電も相当の余裕がある。火力発電所は、セントラルヒーティングでの熱源供給も担っていた。コンビナートでの工業用の蒸気や工場・家庭への暖房用スチームを担っていた。

 特に夏季に電力が余った。火力発電所の実態は、熱供給ステーションであり、発電はやもすると2次的な目的である。暖房需要がない夏には、発電余力が相当にある。

 この余った電力を日本に輸出する話があった。日本の電力需要期にある夏に大電力を提供できる点は、メリットである。送電ロスも実用レベルに留まる。もともと、ロシアは直流超高圧送電の先進国である。

 しかし、ロシアからの電力購入は拒否された。北海道電力の社長が、蛇口論を唱え、安全保証上も問題であると論陣を張っていた。蛇口論とは、ロシアが蛇口を閉めれば、日本は困るとする理屈である。

 実態は、安い電力持って来られると困るってとこだったのだろうね。電力料金は高ければ高いほど利益が増える。そういう構造で、だから原発に力を入れていたわけだ。安い電力は大迷惑ということだ。

 蛇口論とやらも、対策はあった。発電機と燃料備蓄があれば、蛇口を閉められてもすぐに対抗できる。発電機がガスタービンであれば、発停も自在である。もちろん、買電時には無駄な設備かもしれないが、維持するだけなら燃料代はかからない。大した投資でもない。

 電力輸入を再検討してもいいのではないか。原発は再稼働するかどうかもわからない。仮に再稼働を決めたとしても、世論は原発を嫌っている。動かせても最低限となる。とはいえ、いつまでも火力だと燃料代とCO2がバカにならない。太陽光、風力、地熱発電も飛躍的に伸びるだろうけど、それだけで電力を賄うには10年20年かかりそうだ。それまでのつなぎで、電力輸入をやってもいいんじゃないの。

 ロシアから電力は買える。ロシアには電力に余裕がある。向こうも火力発電をやっているが、電力だけ作る目的ではない。天然ガス買うよりも安いだろう。すでにロシアから電力買ってる中国とのとりあいになるかもしれないが。
2012.05
26
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13:00
Category : ミリタリー
 C-130RのエンジンがJP-5用云々という話は考えすぎだ。海自がC-130の中古買うが、なぜ-Rが選ばれたかとする理由に、エンジン云々を挙げる人、例えばこうおっしゃる方がいらっしゃる。しかし、それは考えすぎだ。

 海自の航空機職域は、JP-4/5に大差を感じない。艦載ヘリはJP-5を使う建前だが、JP-4を使っている陸上基地(まだあるだろう)や他自衛隊に行くと、当然JP-4が給油される。タンクの中でJP-4になるのではなく、コンタミする。しかし、誰も気にしない。問題も起きていない。JET-A/Bが混じっても気にしないだろう。

 そもそもガスタービン、大きく言えばジェット・エンジンは燃料を選ばない。問題になるのは、カロリーベースと粘性くらい。それもバイオ・フューエルで、アルコールや植物油を使うかどうかで問題になる。普段使いの燃料であれば、JP-4/5いずれであるかは問題にならない。上で取り上げた方は「JP-4/5/8燃料関係は[中略]課題山盛り」とおっしゃっている。技術畑を自称されているのだが、些細な差にとらわれて、全般を見失った発言である。

 C-130Rを購入した理由は、まず、買えるものがあったので飛びついたあたりだ。海幕は機会主義である。「C-130Jや-Hよりも-Rが優れる」なんて信念はない。まあ、節操もないので「なんで-Rであるか」と精査されれば、真面目ヅラで「JP-5に適合」と答える。もちろん、コンタミするので意味が無いことは、承知の上である。

 海自は、昔、C-130を欲しがっていた。エンジンやローター・ブレードといった嵩高貨物や多量の弾薬輸送、硫黄島往復、当時はホットだった航空機雷敷設があり、C-130導入を目指していた。実際に日本のC-130整備は、空自が濫觴ではない。海自が予算要求を決めた時に、空自が面子が潰れるとやらで、空自に譲った話である。

 そのC-130の出物があり、予算がどうにかなりそうなら、飛びつかないわけがない。まあ、案外「硫黄島往復で床に座らせないで済む」とかそこら辺が最初の評価ではないかな。P-3Cで人員輸送するとなると、便乗者は床や入り口ステップに座らせる。そのためのシートベルトもあるが、それだけやっても23人しか載せられない。

 C-130は、硫黄島、マーカス往復や、演習等臨時輸送に大活躍する。硫黄島やマーカス向けであれば、人員や整備器材輸送だけでもない。それまでは、空自に依頼したり、艦艇や民間船を仕立てたりしていた物資のうち、急送を要するものは自前で運べるようになる。演習で飛行隊や器材を丸々運ぶときにも役立つだろう。部隊ごとの航空輸送は、これまで空自はできたが、海自にはできなかった。どうしようもない輸送だと、海上自衛隊演芸大会(あるかないか知らない)での応援団送りが1機で済むとかね。例えば、厚木チームが残れば、会場まで応援団60名を送るとか。

 ただ、普段使い、本土での定期便だと持て余すだろうね。運ぶ荷物もそれほどはない。旅客機ではないので、乗り心地もあまり良くない。余裕が増えたので、昔のYS定期便みたいに特産品でも運ぶんじゃないか。アエロフロートで行商人がジャガイモ運んでたみたいにね。下総から岩国に、資料と書いた箱にいれて梨を送るとか。沖縄から整備器材在中と札つけたソノブイ用段ボールに、サトウキビを厚木に送るとか。そのサトウキビから糖蜜が流れでて乗員に怒られるんじゃないの。各基地は贈答に返答する、大湊から北の幸でお返しとか、鹿屋から焼酎とかね。硫黄島の謎魚、刺身用切り身はデフォか。アリガトと電話したら「食べられたか、美味しかったか、じゃあ、俺達も食べる」はお約束だった。
 
2012.05
26
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12:59
Category : 有職故実
 「松型の機関圧力、何PSIだろ」と松型駆逐艦のWIKIPEDIA記事。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%9E%8B%E9%A7%86%E9%80%90%E8%89%A6 を見ていたのだけれども。興味深い間違いを発見。

機関配置
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%9E%8B%E9%A7%86%E9%80%90%E8%89%A6 2012年5月26日午後0時45分、プリントスクリーンにより取得)

>機関配置 [編集]
[中略]
>鵜来型水雷艇搭載と同型のタービンを鵜来型同様に2基2軸搭載(19000馬力)

 鴻型水雷艇と、鵜来型海防艦を混同していることは明らかなんだけどね。水雷艇と海防艦を間違えていることに興味があるわけじゃなくてね。

 「鴻」と「鵜」の音と字義を混同している。おそらく、両者の漢字を区別できない。音・字義を把握しないで、なんとなく字型が似ているので混同したのではないかといったところが推測できるのがね。もちろん両者は別の字なんだが、漢字として、その区別がつかないのかなと思う。※ 普段使わない字だし。

 両者は全然違う。少なくとも、漢字としたときには、漢字文化圏では全く別物として扱われる。鴻は「鴻鵠」の「こう」で「大きなとり」、せめて「鴻巣」との混同で「こうのとり(間違いだよ)」。鵜は「鵜飼いの『う』」で「かわう」あるいは「うみう」を指す。ぜんぜん違う。しかも、「鵜来」は島名なんだけれども。

 書いた人は「鴻」と「鵜」の字を艦艇名、クラス名でしか見ない、使わないのではないかな。本来の音も字義もあまり頓着しない。艦艇名としては、似たような大きさで、実際にも似たような仕事をした小型艦艇(水雷艇も護衛艦艇として運用されたから)ということで、そこら辺を完全に混同しているんじゃないかと。



※ 駆逐艦の雷(いかづち)と電(いなづま)も紛らわしいよね。雷鳴=いかづち、電光=いなづま。今の字義で言えば、雷はカミナリで音と光を含有するけど、原義は確か雷鳴がメインだったはず。『大漢和』か『説文解字』で確認しないといけないけど。
2012.05
23
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13:00
Category : ミリタリー
 中国とのゲームには、陸自はあんま出番がない。出番こさえるとすれば、与那国島への展開くらいじゃないかな。

 でも、与那国島配備に軍事的な意味もない。中国が口にする「核心的利益」つまり、中国が領有権を主張してるけど、認められていない地域。それに与那国島は入っていない。与那国島そのものを守るため、軍隊を置く必要はないということ。

 艦隊の通り道でもない。中国が有事に艦隊を通すにしても、与那国島の脇を通るわけでもない。そもそも、艦隊通すために琉球弧の島を占領するのも無駄な話。日本の海空戦力を排除して、島とって飛行場こさえて航空部隊展開するまで待てない。その間に叩くべき日米海空戦力が東シナ海になだれ込んでくる。航空戦力で海空戦力を拘束している間に艦隊出した方が合理的。

 ただね、中国の眼鼻の先、目立つところに駒を貼った効果はあるでしょう。大陸から350km、中国の一部である台湾から100kmのところに、軍隊置いとけばそれなりに注目するでしょう。中国の膨張主義志向、先方にいわせれば海洋進出を、邪魔する駒が貼られた程度の意味を持たせることもできるでしょう。台湾回収の時にも気になる駒になるだろうし。

 ただ、海軍力にとって邪魔になる戦力でなければ、与えられるインパクトは少ないでしょう。小銃もった兵隊置いても意味はない。歩兵は艦隊通航にとって何の邪魔にもならない。対艦ミサイルあたりを持って行かせなければ、あんま意味はないです。いまのところ誰も狙っていない領土を保全の役には立つでしょうけど。

 対艦ミサイルも、見えるように並べとくのがいいんじゃないの。特に海から見えるように置いとけば、見るたびに意識してくれる。OD色もやめて、昔のSFチックなミサイルですという色に塗っといたほうがいい。

 持って行きたければ、10式戦車とか99式自走砲も持って行っていいんじゃないの。4両づつでも、海っペリに見えるように置いとけば、精鋭部隊がいるようにも見える。訓練場所がないというような些細な問題はどうでもいい。整備とか訓練も1日1回、エンジン掛けて砲塔を廻しておけばそれで十分。

 まあ、与那国島においとくならイミテーションでいいんだけどね。対艦ミサイルは本物のキャニスターに発泡モルタルでも詰めて、本物のトラックに積んどきゃ偽物と気付かないだろ。戦車とか大砲も、映画撮影用でいいんじゃね。軟鋼で作った車体・砲塔に、主砲同寸のパイプつけて、あとは本物の外回りをくっつけりゃわからないよ。三菱あたりに頼めば1/1スケールを作ってくれるだろ。
2012.05
21
CM:0
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13:00
Category : 有職故実
 南極観測船しらせの御土産は、南極の氷。元手不要なので、大量に持ってくる。駆動部にオリーブオイルを挿したチェーンソーで切りだすらしい。その氷だけれども。横須賀についた時に、横須賀各所から作業員を出して運び出す。

 横須賀Y桟橋でしらせから下ろした時には、その大きさは20×20×60センチ。少々重いが、バケツリレーの要領で、各所に分配する。しかし、配るには大きすぎる。手軽な大きさに分割しないと運ぶのに苦労する。

 総監部が貰った分は、上屋の下で分割作業をやった。艦補所と2術校の間に上屋がある。そこで氷を分割していた。毎年のことであるので、所属部署には氷屋のノコギリを1本用意してあった。それで適当な大きさに切り分ける。

 ただし、所属部署の海曹連はノコギリを使ったこともない。要領がよろしくないのでなかなか切れない。すぐに食い込んでのくり返し。アレならタガネとハンマーで割ったほうが速い。その間に氷はドンドン降ろされる。5月の陽気なので溶けていくのも速い。

 仕方がないので、己が交代するのだけれども。ノコギリを引くのはともかく、氷の保持が難しい。氷には保温用の新聞紙が掛かっていて滑りやすい。その上から短靴で踏んでも氷は安定しない。短靴は、靴底も事実上ノッペラボウだから氷が逃げて仕方がない。だから、新聞紙を剥いで、靴と靴下を脱いだ生足にして踏み込む。

 南極の氷は、多く飲食用になるらしい。他自衛隊、各省庁、自治体、民間諸団体に配布する。ロックやら水割りに浮かべて、南極の味がするとかやる。
 
 当時、足は伝染性の職業病にかかっていたのだが、自分で食べるわけでもない。経口感染するものでもないので気にしない。実際には、それまでにも表面は溶け落ちる。己の足がついた部分を飲み込むわけでもないので安心なのだけれどもね

 で、作業が終わると、おむすび大以下の欠片が残る。作業員の役得で貰って帰ったのだけれども。どうするものか考えてしまう。

 まず、清潔感に欠ける。コンクリのタタキの上で、己の生足で押さえている。足は自分の体だけれども、砂やホコリも一杯ついている。そのまま食用するのは気が引ける。

 それに、休日作業員に引っぱり出された恨みがある。苦労させられた、たかが氷を珍味美味として大事に使うことにも抵抗がある。

 最初は茹で卵にする屈辱をあたえようかと思った。しかし「南極の氷で作った茹で卵」で、八百善風の格式を与えてしまうのも癪に触る。

 結果として、南極の氷でボンカレーを作ることにした。融かして湯にしてボンカレーを放り込み、カレーを作った。まあ、南極味のボンカレーであったことだよ。
2012.05
19
CM:7
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13:00
Category : ミリタリー
 ロシアは北海道に攻め込んでこない。北海道に大戦力を集中しても意味はない。日本側にも利益はない。北海道に注ぎ込む防衛費、人員、装備は、ロシア正面よりも重要な中国とのゲームに注ぎ込むべきである。

 ロシアは北海道に攻め込んでこない。まず、北海道に攻めこむ能力はない。また、北海道に攻めこむ必要性もない。そして、リスクが大きすぎる。

 ロシアには、北海道に攻めこむ能力はない。極東ロシアに所在する陸軍力は7万5000人に過ぎない。ロシア太平洋艦隊が持つ大型水上艦は15隻であり、揚陸艦も4隻に過ぎない。航空戦力も、極東空軍は戦闘機等は250機程度にすぎない。 自衛隊を排除できる戦力ではない。

 ロシアは北海道に攻めこむ必要性がない。ロシアが北海道を獲得したとして、どのような利益があるだろうか? 北海道を獲得しても、ロシアの戦略環境は好転しない。
 冷戦末期であれば、宗谷海峡確保は戦略原潜保護に寄与する。いわゆるオホーツク聖域化である。しかし、今のロシアにとって、オホーツク海はそれほど重要ではない。潜水艦発射弾道弾の射程延伸があり、戦略原潜はバレンツ海方面に下がっている。
 宗谷海峡を通じたオホーツク海諸都市やカムチャッカへの海上連絡路確保も、実益はない。貧弱な海軍力や輸送力は戦争で失われてしまう。宗谷海峡を保持できても、利用できないので意味はない。

 そもそも、対日戦はリスクが大きすぎる。ロシアには、北方領土や樺太、千島列島を喪うリスクも負う。
 北海道周辺は、日本側が強力である。極東、なかでも沿海州から東は、ロシア輸送力からみれば輸送の限界になっている。全力をつぎ込むこともできない。対して、日本は本土領域であり、輸送に難はない。北方領土、樺太、千島列島は、日本側が制海権・制空権を握る可能性が高い。
 また、日本は北方領土を固有の領土と主張している。樺太南部、千島列島も、領土としての帰属は未確定としている。

 日本側も、北海道に大戦力を集中する利益はない。オホーツク海に、樺太や北方領土に楔を打ち込んでも、日本に利益はない。

 80年代には、ソ連軍を拘束することに利益があった。北海道に集中配置された戦力は、同時にアメリカの世界戦略への協力にもなった。北海道に配置された陸上戦力は、オホーツク海聖域化を阻止する効果を持っていた。当時、アメリカはオホーツク海聖域化を妨害する意図があり、対ソ戦略として、オホーツク海攻撃、攻略も視野に入れていた。アメリカへの軍事協力にもなっていた。アメリカへの軍事協力は、同時に貿易摩擦で緊張していた日米関係を緩和する材料ともなった。

 しかし、今日となっては、北海道に大戦力を集中しても利益は得られない。まず、ロシアは北海道に攻め込んでこない。ロシア侵攻に備えるため、大戦力を集中しておく必要もない。また、対岸に配備されたロシア軍を拘束しする必要もない。ロシア艦船のオホーツク交通を制約する必要性もない。それによって日本は利益を得るわけではない。強いて言えば、北方領土返還への圧力になっているかもしれない。しかし、日本には武力で回収する意図もない。あまり必要のない圧力である。

 北海道には、警備程度の戦力で充分である。北海道防衛のために、師団×3、旅団×1を置いておく必要はない。師団×1も置いておけばよい。戦争中も、ほとんどの時期、北海道は第七師団だけが配置されていたが、それで困ったこともない。広大な土地や演習場が利用できる点から、予備的な部隊を置くにしても、かつての師団×4や、師団×2、旅団×2は多すぎる。大きく減らしてよい戦力である。

 北海道に注ぎ込んている防衛費、人員、装備は、無駄である。不要不急なロシア正面は削減し、余裕を中国とのゲームに注ぎ込むべき時期にある。中国とのゲームで役立つのは、海空戦力だけである。陸兵や戦車、野砲は中国とのゲームで役立つコマではない。※※ 北方には大きく削減する余地がある。節約した資源は、海空戦力での対中アドバンテージ維持に使うべきである。



※ 航空戦力だけは、ロシア本土からスイングできるだろう。しかし、基地での支援能力も輸送能力によって制限される。沿海州以東への増勢は容易ではない。
※※ 地対艦ミサイルや地対空ミサイル、対戦車ヘリ、輸送ヘリは島嶼防衛で役に立つかもしれないが、それでも副次的な役割にとどまる。



----------以下、2012年5月20日午後8時15分追記----------

ロシア海軍専門家のシアさんから
1 ロシアはまだデルタ×3をオホーツクに展開している
http://twitter.com/#!/rybachii/status/204155401510469633
2 ロシア太平洋艦隊の大型水上艦は10隻
http://twitter.com/#!/rybachii/status/204156863443513344
とするご指摘を頂戴しましたので、追記します。

有難いご指摘ですが、結論は変わりません。

 1について説明しましょう。
 かつて太平洋艦隊は、SSBNとしてデルタ×15、ヤンキー×9を運用していました。特にオホーツクで運用できるデルタは、ソ連SSBNの主力を構成していました。しかし、現在は主力ではありません。SSBNはバレンツ海方面の集中しています。核戦力保持の上では、すでにオホーツクは重要不可欠ではありません。

 2については、ざっくりとCG×1、DDG×5(予備艦+3)、FF/FFG×9と見てます。
 差異はFF/FFGをどう数えるかですね。おそらく、専門家のシアさんの数字がヨリ正しいとおもいます。
 しかし、日米中海軍と較べれば、積極的行動ができる戦力ではない。日本の安全保障では、無視してよい数です。
 また、大型水上艦×15、シアさんの仰る数字大型水上艦×10としても、彼らはオホーツク海を聖域化できる数ではない。ソ連太平洋艦隊が水上戦闘艦×80、潜水艦×100をもっていた時代とは違うのです。ロシアがオホーツクへのトランジットのため、北海道を攻めることはありえません。

 いずれにせよ、ロシアは無視してよいのです。
2012.05
17
CM:0
TB:1
13:00
Category : ミリタリー
 アメリカが大好きな航空掃海を邪魔する方法なのだけれども。繋維掃海に限れば、オブストラクター(Obstructor:妨掃具とも)混用に対して相当に困るんじゃないかな。イランあたりが使ったら、大混乱するかもねえ。



 アメリカは航空掃海を活用している。大型ヘリで掃海具を曳航する方法である。掃海具は、感応掃海具だけではなく、繋維掃海具も曳航される。繋維掃海具とは、水中でギロチンワイヤを引っ張る仕組みだと考えればよい。繋留索で繋がれた繋留機雷、海底からロープやワイヤで繋がれた種類の機雷を掃海する仕組みである。繋留部分を切断された機雷は浮き上がり、そこで銃撃処分される。

 繋維掃海具はギロチンワイヤのようなものである。戦前には文字通りワイヤで引き切る方式もあった。特殊鋼で作ったワイヤ・ソーを曳航することもあった。今、主要されるのは、ワイヤ各所にカッターを取り付けたタイプ。カッターは釣り針のような、ひらがなの「し」の形をしており、その内側が歯になっている。物によっては、火薬で動作するノミが取り付けられている。機雷繋留索は拘束されてから切断される。

 この繋維掃海具には、対抗方法がある。オブストラクターがそれだ。オブストラクターは繋維掃海を妨害する。簡単なものでは、極太ワイヤーやチェーンを使ったブイがある。太く強度が高いため、繋維掃海具では切断できない。繋維掃海を中断させ、水中作業を強要する効果が見込める。積極的なものでは、繋維掃海具切断を狙うタイプもある。繋維掃海で使われるカッターをブイや機雷に取り付けるタイプである。繋維掃海具破壊と、面倒な交換・再投入を強要できる。珍しいものでは、機雷下部にスリ抜け機構をつけようとしたものもある。海自掃海関係者は「知恵の輪オブストラクター」と呼称していた。「実在するかどうかは知らない」とのことであるが、"America's Use of Sea Mine"に機構が出ている。

 実際にオブストラクターは多用されている。ドイツは第二次世界大戦で25万個機雷を使用した。そしてオブストラクター5万個を投入している。ドイツだけではなく、日本も戦前に各種を製造している。今日も、オブストラクター対策を謳った繋維掃海具やカッターが存在する。既述した爆破カッターそのものが、ある程度までチェーン切断を狙ったものである。

 このオブストラクター投入により、特に航空繋維掃海は阻害される。繋維掃海具が切断した場合、ヘリ側では対処はできない。掃海母艦に戻ってからの作業が必要になる。拘束された場合でも、ヘリや舟艇から水中処分員を回復に投入する必要がある。厄介さは掃海艇の比ではない。

 アメリカによる航空掃海は、面倒な機雷やオブストラクターを意識していない。大面積を急速掃海することを目的にしている。米海軍による対機雷戦そのものが、上陸戦準備に特化している。現在開発している航空掃討や、LCS等による掃討も同様である。大面積を急速に清掃できるものの、対象は比較的単純な機雷原であり、仕上がりも粗くてよいとされている。複雑巧緻に構成された機雷原に立ち向かいものではない。繋維機雷に関しては、オブストラクターが多数混用された状態には向いていない。



 実際のとこ、繋維掃海具で切れないヒモで、浮きとオモリを結ぶだけでもいい。丈夫なヒモで発泡スチロールとコンクリート塊に結んで、機雷原に混ぜて沈めれば航空掃海は相当にメンドくなる。ドイツの高性能爆破カッターが「チェーンは20mm、ワイヤは25mm、合繊ロープは40mmまで切れるよ」と謳っている。だから、25mmのチェーンとか、径30mmのワイヤとか、50mmの合繊ロープを結んでおけば、米軍は面白いことになるカモ。
 新型爆破カッター対策? そのカッターを繋留索に取り付ければいいんじゃね? もともとアメリカは対機雷戦に真面目じゃないから、てんやわんやじゃないのかな。
2012.05
14
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Category : 有職故実
 東京の地下鉄は東西で違っている。市内東側、皇居を中心に12時から6時の部分では地下鉄は網目状に走っている。でも西側、6時から12時では、皇居を中心に放射状に走っている。

 西側だと乗り換えがすごく不便。たまたま交差しない限りは乗換ができない。

 営団が止まって振替となったとき、エライ遠回りをさせられた。その中途、ホーム地下鉄を待っているとき、貼ってある営団の地図を見て気づいたのが、「東京西部では、台地が多く、地下鉄は台地を避け谷地を通っている」という点。

 南から時計回りに、高輪・広尾・原宿・新宿・戸山・目白台・豊島岡-小日向・白山・上野の台地があるが、地下鉄はその間にある「谷」を選んで走っている。台地を横断して走っている地下鉄は大江戸線くらい。

 なんでそうなったかについては、地形(a)と土地利用・所有(b)を考えついたのだけれども、そもそもbもaの結果のような気がする。

a-1 台地では浅く掘れば線形(勾配)が悪くなる
a-2 深く掘ると掘削量やズリの処理で高価になる

b-1 地下鉄工事がしやすい街道は、線形の関係から谷地に沿っている
b-2 地下鉄工事がしやすい河川敷(お堀とか溜池とか神田川とか)も低地にある

 対して、東京東部には台地も谷地もない。線形も気にしないでよい。さらに大震災と空襲で2回ほど丸焼けして、都市計画もしっかりしているので道路も碁盤状に整備されている。その下に地下鉄を通すことは容易である。だから地形の制約を受けず、利便性を追求した、乗換しやすい路線網になっているのだろう。

2010年07月02日 MIXI日記より
2012.05
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 チベット国境はレーダ網も粗いだろうから、中国への航空侵入は難しくないんじゃないかな。



 『鏡報』今月号に、梁天仞さんが「中国建成全天域空軍」を載せている。「人民解放軍がついにチベット上空を掌握した」とする内容である。しかし、実態としては、それほどは掌握していないのではないか。

 随筆風であるので曖昧ではあるが、記事趣旨は「中国はチベット高原での制空権を掌握した」となるだろう。

 梁さんによる記事は、概ね2つで構成されている。チベットでの空軍演習と、参加した殲10戦闘機である。前者は2012年2月に行われた演習についてである。『中国軍網』と『印度時報』に掲載された記事を元にしている。後者は殲10開発経緯※※とエンジンに関する内容である。

 概要としては、中印国境に沿った航空基地と、高原での運用に適した新型機が配備された。空気希薄な高原地帯での航空機運用は容易ではないと述べ、チベット高原では中国空軍のみ制空権を掌握する。(解放軍已牢牢掌控了全天域制空権)と結論づける内容である。

 しかし、中国は果たして制空権を掌握できるのだろうか。

 もちろん、チベット高原での空中戦であれば、中国戦闘機は優位に立てる。仮想敵のインド機に対して、殲10は劣るものではないだろう。侵入側に較べて、邀撃側は優位に立つ。燃料には余裕がある。パイロットも疲労は少ない。飛行場周辺であれば、ある程度、レーダ等から支援を見込むこともできる。

 だが、制空権が掌握できるかどうかになると、難しい。中国だけがチベット上空を独占利用できるわけではない。他国であっても、中国国境を超えること、チベット上空で飛行することは不可能ではない。

 中国は、充分な対空監視網を持っていない。中国防空網は緻密とは考えられない。人口希薄であり、国境線も長大なインド・中央アジア・シベリア方面にレーダ網を建設することは難しい。現況を窺う資料はないが、レーダは重要地点に点在する程度だろう。

 日本のように、隙間なくレーダ監視できる国は例外である。北米であっても、一部はレーダ覆域に収まっていない。旧ソ連、おそらく今のロシアも、極東・北極海方面はザルになっている。米ソとも、不足するレーダ覆域をカバーするために、代替としてOTHレーダを開発している。

 米露同様に、中国でのレーダ網も濃密とは考えがたい。優先するとしても海側である。最大の仮想敵である米国、その海空軍力に直面する海岸部はそれなりにレーダ網を整備しなければならない。内陸側国境は後回しである。そもそもチベット、ウイグルには開発度が低く、エリアとして守るべき人口稠密地ではない。

 チベット上空に侵入することは、極端に困難ではない。レーダ網は濃密ではない。もちろん、レーダや対空監視等で捕捉され、邀撃を受ければ大変なことになる。だが、人口希薄であり、面積に較べ、駐屯する軍隊も少ない。その可能性は高くはない。

 冷戦期にU2は中央アジアからソ連に侵入している。この時にはパキスタンから新中国に入り、そこからカザフスタンに侵入している。※※※ チベットやウイグル防空網は、いまでも似たようなものだろう。



 まあねえ、梁さんの言う「チベット上空を掌握」は、空白ではなくなったよ程度のニュアンスなんじゃないかな。事実上、航空戦力でカバーされていなかったチベットに、「実戦部隊が展開したよ」程度ではないけど。逆に言えば「これまでは飛んできたのを見つけても、対処できなかったんじゃないの?」ということも窺えるけどね。

※ 梁天仞「中国建成全天域空軍」『鏡報』418(鏡報文化企業有限公司,香港,2012.5)pp.82-85.
※※ 「殲10は、クフィール国産計画が起源」としており、興味深い。
※※※ (著者、記事名はメモを忘れた)Prologue(National Archive and Records Administration, Washington 2009 winter)p.21
2012.05
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Category : 有職故実
 繁華街で宮廷料理云々って看板見た時に思いついたことなんだが。本当の宮廷料理は旨いものかね。実際のとこは微妙な味じゃないかな。本当に旨い料理って、市中のブルジョアが食ってたあたりじゃないの。「宮廷料理」のお店、実際にはそういった市中料理を牽強付会で宮廷云々を称して出してるんじゃないかと。

 少なくとも、日本の宮廷料理は食うものでもなかった様子。

 宮中儀礼で出てくる御膳は食べるものではなかった。生の蕪だの、火を通していないスルメだのです。幕末の公家も「食べても構いませんが、食べた人は見たことありませんな」(下橋敬長『幕末の宮廷』)と言うくらい。餅だか饅頭だかの「おあさ」は、「これは眺めるだけで食べるものではありませぬ」。宮中御用達がつくる饅頭も「昔の砂糖が入っていない饅頭なんて食えたものではないですね」とか…まあ、下橋さんは「これもこれで昔を思い出していいものだ」とかも言ってますけど

 畏き辺りも、実際に食べるものは、市中と大差のないです。食中毒でダメとか忌みも多いからアレですが、基本は市中と大差はない様子。料理上手のお炊さんが作ってくれた膳のものを、好きなお酒と一緒に深夜まで召し上がっていたとかいいます。これは宮廷料理とは呼ばないでしょう。

 日常食は将軍も、似たような感じです。『江戸のファーストフード』(だったか?)でも、結構、禁忌食材があって、料理法もお上品なのであまりねえ。鶴の吸い物とか、豪華だけど、おいしいものではないと思うのですけどねえ(食べたことないけどさ)
 
 満漢全席も宮中料理とは異なるとか。まあ、中国は贅を尽くしそうだけれども。でも、清朝にできた満漢全席も、実際には清滅亡以降に、清朝をイメージして作られたとも言われています。実際には、市中の美味いものを統合したんじゃないかなあ。

 宮廷料理は上品や由緒が重視される。だからあまり美味しくないんじゃないかと。

 仮に今日、宮廷料理屋さんが、真に宮廷が出したそれを出しても、垂涎の味が出てくるとも思えないね。
 実際には、お国風の、市中のブルジョア食をだすのだろうけれども。それでも、看板に宮廷料理なんてかいてあると、上品な味(薄味とか量も少ない)で雰囲気で金を取られそうな気がする。

 己は、小汚い店で安くて旨いものを食いたいから、まず行かないけどね。


2011年07月30日MIXI日記より
2012.05
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 海自哨戒機は平時からガンガン飛んで中露ほか周辺国艦船を監視している。従来は「そこに船が居るとしか分からない」と見られてきたけど。実際には、レーダ画像だけで軍艦か否か、何級であるか、識別されているのかもね。



 防衛省が公表しているとおり、P-3CとSH-60KにはISARが搭載されている。ISARとは、逆合成開口レーダを略したものであり、長距離から船体形状を確認する能力を持っている。
 艦船は航海中に動揺する。ピッチング(縦揺れ)、ローリング(横揺れ)、ヨーイング(方向揺れ)がある。その時、重心から離れた位置にある、マスト、艦橋、煙突、艦首艦尾は円運動をする。

 動揺で生じる円運動は、航空機に搭載したレーダから見れば、距離方向への前後運動としての成分を持つ。

 レーダに対して前後運動は、ドップラー・シフトを起こす。近づく救急車が出すサイレンが高く聞こえる。遠ざかるときには低く聞こえる。それと同じ理屈がレーダでも起きる。

 ISARはドップラー・シフトを利用して船体形状を識別する。艦首、艦橋、マスト、煙突、艦尾が動揺で起こす前後運動で形状が判明する。

 具体的に例を挙げると、理解しやすい。ISARを搭載した飛行機の真正面から衝突コースで進んでくる※艦船があるとして説明する。

 ISARは、距離方向での分解能力も高い。雑誌記事に掲載された写真からすれば、分解能は距離10mとか5m※※といったものだろう。ISARで真正面から観察した場合、艦船は全長が判明する。艦首から跳ね返った反射波が最初に到達し、艦尾から跳ね返ってきた反射波が終わるまでの時間から計算できる。

 この時に受波したレーダ反射波を、仮に10m刻みでスライスして周波数変化を分析する。重心から離れるほど、前後運動が大きくなり、ドップラー・シフトも大きくなる。つまり、周波数変化量が高さを示す。高さは相対的であるものの、

 概略ではあるが、ISARで船体形状が判明する。レーダに真正面であれば艦首から艦橋・マスト、煙突、艦尾までの距離は正確にわかる。また、相対的ではあるものの、高さも判明する。もちろん誤差を減らすために、何回も繰り返す。成果として、ピンぼけ写真風ではあるにせよ、船体のシルエットを得ることができる。

 ただし、レーダに対して船体が斜めであると、不正確になる。まず全長は縮んで見える。見かけ上で全長方向のスライスも甘くなる。ピッチングによる前後運動も見かけ上では、小さくなる。

 しかし、プロポーションは変化しない。シルエット中で、艦首、艦橋、マスト、煙突、艦尾が示す比率は変わらない。艦船針路からある程度は船体はどの向きであるかも推測できるので、それなりに補正もできる。

 ピッチングが起こす周波数変化も、ある程度はヨーイング、ローリングで代替できる。横から見た艦船イメージがわかるピッチング利用に対して、ヨーイングは上からみたイメージ、ローリングは正面から見たイメージなる。イメージとして使いにくいものの、ないよりはマシである。

 実用的には、常に艦船がレーダに正体しているわけではない。ISAR画像で識別するためには、斜め位置から得られたピンぼけ写真を見て、船体プロポーションでの比率で判断することになる。

 初期には、人間が識別していた。ン年前にP-3CでISAR画像を見たことがある。その時には、画像にディバイダー(両方が針のコンパス)を当てて、全長と、艦橋、マスト、煙突位置の比率を見て判断していた。もちろん、煙突が2本とかそういった特徴も加味するが、人間が判断していた。

 しかし、現在では機械が行っている様子である。

 まず、SH-60KにもISARが搭載されていることがその証拠である。これが船体イメージ取得用であり、機上で解析もできるISARだとすれば、自動で識別しているということになる。ヘリ機上で、ピンぼけ写真で比率だけ見て判断は無理であるからだ。

 また、ISARでの軍艦画像識別に関し、自衛艦シルエットを用いた論文が存在する※※※ことも証拠である。河原ほか「一部欠損のあるISAR画像における白色化部分空間法を用いた船舶の自動識別」では、検証モデルとして、自衛艦である「ちよだ」「こんごう」「むらさめ」「むろと」「しらね」が利用されている。艦首、艦尾がちぎれた画像でも、それなりに似ている「こんごう」と「むらさめ」を識別できると主張している。

 論文著者に東芝の肩書きもある。P-3C、SH-60Kのいずれか、あるいは両者には、東芝製識別機構が搭載されていると推測できる。

 実際にどの程度まで識別できるかは不明である。器械による類識別機能が実用に達しているか、いないかを伺うことができる話は出ていない。

 自動識別が実用水準にあれば、ISARだけで、リアルタイムでの類識別が可能ということになる。洋上で発見した目標が軍艦であるか否か、軍艦であるとしたら、何級であるかが判明する。ISAR搭載機は水上目標捜索で今まで以上に優位に立てる。

 もちろん実運用によるデータ蓄積やフィードバックが重要であるが、日本にとっては難しい話ではない。日本はP-3C、EP-3、OP-3を約100機ほど保有している。P-3Cはそのうち60機分が飛び回っている。日中双方での新聞報道によれば、日中中間線から先にあるガス田監視は毎日行われている。冬季にはオホーツクでの流氷観測も毎日実施されている。実哨戒頻度、機数、方面、コースは公表されていないが、相当に高頻度で飛行している。

 平時であれば、じきに精度はあがる。ISARでイメージ取得し、その後に目標を目視、光学で観察ができる。また、ESMとの連接もできるだろう。



 ISAR装備は、海上戦力での日本側アドバンテージになるんじゃないのかな。

 ま、そのうち、中露ほか大型水上艦は、港を出た段階で識別されるようになるのではないかな。艦隊を組んでも、大遠距離から、その構成が丸裸になる。有事には相当、不利になるのではないかな。

 「中国やロシアも導入するから、チャラ」っていうのは違うと思う。中国やロシアがISAR技術だけをもってもどうしようもない。そもそも実用までの試行錯誤も難しい。海上哨戒機も数が少なく、専用機でもない。中国哨戒機は日本の太平洋側までまず飛んでこない。ロシア哨戒機も滅多にとんでこない。ISARによる識別以前に、単なる水上監視も難しいからねえ。



※ レーダに衝突コースである必要はなく、どの角度でもいい。飛行機側からみて、正面あるいは背後であれば理想的である。ピッチングの揺れがそのまま前後運動になる。

※※ Hewish,Mark,The eyes and ears of maritime patrol,Jane's Internatinal Defence Review,(Jane's,London,1996.10)p.p.28-35

※※※ 河原智一ほか「一部欠損のあるISAR画像における白色化部分空間法を用いた船舶の自動識別」『電子情報通信学会技術研究報告』(電子情報通信学会、2011.7)pp31-36 で認識させたモデル画像として「ちよだ、こんごう、むらさめ、むろと、しらね」が挙げられている。
2012.05
07
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13:00
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 コミケ作業でソ連/ロシアの極東航路を調べようとしたのだけれども。※(※2007年夏コミ合わせね)

 グーグルで検索しても「最狭幅5マイル、航路幅500m?、水深4-20m?」としか分からない。

 海図3512『オホーツク海』でも、間宮海峡の水深は全然書いていない。海図は軍事上にある秘密で、水深がブランクだったり、わざと肝心なところをボカす場合がある。ソ連潜水艦(ウイスキー級)がスウェーデン領海内でが座礁した「ウイスキー・オン・ザ・ロック」事件も、海図上で水深を秘密にしたせい。

 単に「水深測量していません」とか「アムール河口なんで、堆積が変化が著しくて、水深も航路幅も変動します。浚渫する意思もないので、航路幅は保証しません。」 かもしれませんけどね。

 しかたがないので、旧日本海軍が昭和16年に作った軍機海図を見てきたのです。実際には最狭部は埋まる寸前で、その中に1本だけ極浅い航路がある。ふつうの船舶は通れません。商船や潜水艦が通れるようにするにしても、浚渫土量は膨大にすぎる。さらに堆積防止のため、アムール河の付け替えもしなきゃいけません。

 ソ連やロシアでは春節は無理。近所で施工可能なのは、日本のマリコンだけでしょう。

 間宮海峡は、海としてつながっているだけで、南北を連絡する航路としては使えないでしょう。



2007年6月30日 MIXI日記より転載



※ 2007年夏コミ合わせね
2012.05
06
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 回覧板なんかをまわず板バサミ。紙板にクリップを取り付けたクリップボード。アレ、裏に返却元が書いてあるのだけれども、律儀に返却されることはほとんどない。

 同一部隊内は、混交があたりまえ。基地内でも混ざる。命令系統全く別の部隊の板バサミが混じっている。横須賀総監部なら、当直でオペ室に詰めると試験艦の板ハサミがあったりする。近隣地区で命令系統も異なる「誘訓隊」(船越地区にある)とか書いてある板バサミがあったり。あるいは、命令系統は同じだけど、はるか館山にある「しらせ飛行科」とかあって、誰も気にしないで使っている。

 これが航空部隊になると、全国的に混交する。P-3CやUS-1は旅客機みたいなものだから。航空機用のバインダーだけではなく、板バサミも日常的に乗っかってくる。航空部隊や航空基地内にある機関なんかだと、鹿屋(だったと思う)のASWOCとか、2整補の武器(光学ショップだったか?)とか、裏に書いてある板バサミが流通している。

 83空と書いてあるものがあって「岩国かねえ」と話をしていると「8番台は81空で終わり、空自だろうな」という。調べてみると那覇の空自83空。海空で一緒の那覇で混ざって、それがここまで来たのだろうと。

 板ハサミの裏書きにはあまり意味はないね。なんせ「行ったまま帰ってこない」「足りなくなった」といって総務に行くと「適当に持っていけ」と顎で示される。それで済んでしまう。「持ってたら返せ」と電話やメールが来るのって、3年に1回もない。天下の廻りものなんだろう。

 小出庫(基地内にある、消耗品が補充できるコンビニみたいなもの)から持ってきたばかりの板バサミに部署名を書いたり、ボールペン透明な軸に返却元の紙を入れたりするのは、無駄なあがきだなと思う。
2012.05
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 米軍基地開放行事の体験談を拝見すると、食い物が大雑把だなとする観想がある。確かに大味だよねと。

 米海軍士官室も将校クラブも微妙な味なんだよねえ。もちろん、終戦後の日本人なら垂涎モノなんでしょうけど。舌が肥えて、外食も高水準にある今の日本人からすれば大味。もちろん、不味いわけではないのだけれども。

 肉料理は決して不味くはない。盛り合わせが雑なのも、気にしなければいいのだけれども。付け合せとかサラダとかが、味のついていない玉ねぎだけとか、じゃがいもだけとか、そこらへんは大味だなと。一番アレなのは、デザートのケーキが、砂糖と小麦粉と着色料の混合物に、糖蜜掛けた感じで、どーも食べる気がしない。

 米海軍の食事よりも、日本艦の食堂(士官室も、CPO部屋も、科員食堂も料理そのものは同じ)とか、大湊や八戸基地での給養(なんせ「蟹まるごと1杯」とか出る)の方が質は間違いなく高い。米将校クラブよりも、基地の外に食いにいった方が質が高いと思う。

 海兵隊の食事にも招かれたこともあった。質素な感じで、味も「まあねえ」だった。王城寺での15榴実弾射撃でLOとして現地詰めしてた時、特に昼食に招かれた(こっちも作業服じゃなくて常装で行った)ので、それなりに頑張ったと思うんだけどね。お世話になった陸自業務隊の食事の方が質が高い※と思った。

 しかし、英蘭留学組に言わせると、両国海軍はもっと酷いらしい。もともと普段の食事もアレな上に、レセプションでさえも、具の少ないサンドイッチしか出てこない※※とか。日本式の、寿司、蕎麦、天ぷらの屋台(経補要員がやる)とか、餅つきと搗きたて辛み餅とかああいったハレな雰囲気はない。そりゃ、日本レセプションは好評になるでしょう。

 英国海軍が酷いだろうなと想像できる節はある。国際観艦式で乗員遠足と指揮官遠足の企画・実施を担当したことがあった。そんときに拝見したニュージーランド海軍の昼食がエライ質素で驚いた。サンドイッチを2個で、バケットみたいなパンに薄いハム1枚挟んだだけ、味は…だろうねえ。後は皮を剥いていないリンゴを一つ齧るだけ。飲み物は非保温水筒。

 近場に座ったマレーシア海軍と交歓してたけど、オカズもらっていて喜んでいたもの。英国海軍もあんなものだろうなあと。

 そう、同じ英連邦海軍でも、マレーシアはお弁当に彩りがあったのよね。件の屋台料理詰め合わせだけど、確かに美味しそうだった。正午には礼拝前に足をすすいで※※、それから適当な単位でキャフフしながらのお弁当だった。

 アジアの軍隊は結構いいもの食ってんじゃないかな。タイ海軍もモコモコみたな目玉焼きがついたお弁当持っていた。シンガポール※※※も、キチンとお弁当だったと思う。




※ マズイマズイといわける陸自だけれども、学校なんかだと、海自よりも味も工夫もしている。麺類の日はラーメン、うどん、蕎麦から選べるとかね。

※※「イラン海軍はもっと酷い、酒は出てこないで、オレンジジュースと甘いお菓子」というのはイスラム国に酷な評価。まず彼が酒飲みだからだけども。

※※※ シンガポールの艦艇には、中国人民解放陸軍-海軍部の留学生さんが乗艦していて、遠足にも参加していたよ。シンガポールの立ち位置も微妙だからね。
2012.05
05
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12:59
Category : 有職故実
 昭和44年の朝日新聞縮刷版をパラパラめくると、東京12チャンネルのプロレスに「原爆男スナイダー」と「重戦車カールソン」なんてあるのに時代を感じるものです。

 ドラマ『遊撃戦』紹介を探してテレビ欄を覗いていたのです。件のプロレスもそうですが、『鉄道公安36号』とか、三国一朗の『私の昭和史』(高木惣吉さんのインタビューとかあるのです)とか出てくると、まぁそっちのけになる。記憶にあたらしいところでは、『ゲバゲバ90分』、『8時だよ全員集合』もすでに始まっている。

 編成上面白いのは『魔法使いサリー』の再放送のあと、15分のニュースを挟んで新番組『秘密のアッコちゃん』につないでいる点ですか。それぞれ原作が横山光輝と赤塚不二夫で、後には魔法少女とは縁もゆかりもない作風に思えるのですけどね。

 気になるのは『東京バイパス指令』。タイトルが秀逸ですよ。名前からしてシリアスものっぽく、またWIKIPEDIAでみると「アクションドラマ」「太陽にほえろの前身」とある。ただ、「バイパス」の意味がよくわからない。潜入捜査だからなんですかね。

 もちろん、普通の記事でも気になることもあるんですけどね。「沖縄で風疹大流行、琉球政府を援助」とか「コメコン首脳会議が行われる」とか。

 なかでも面白いのが「ニクソン大統領英国訪問、ユニオンジャックの天地を間違える」ですかねえ。何が面白いといって、記事によれば「ユニオンジャックの天地をひっくり返すのは、海軍艦艇が救助を求めるとき」だそうです。でも、あの国旗は遠目に見て天地は分らないでしょう。

 そもそも艦尾に常時掲揚する軍艦旗はホワイト・エンサインです。ユニオンジャックではありません。停泊中に艦首に上げたり、外国に入る時、当該国旗と一緒にヤードに揚げたりはするんでしょうけど、そこで救助を求めてもねえ。
2012.05
02
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Category : ミリタリー
 ルノーFTは歩兵にとって脅威じゃないが、ヴィーゼルやBMDになれば脅威だと言いはるんだろうね。

 「ルノーFTは歩兵にとって脅威ではない」という人がいる。「キャタピラと大砲があれば戦車だろうと思うけどね」に対する感情的反発なのだろうけど。「ルノーFTなら,相手が重機関銃を持っていたら,制圧されますね.装甲を貫通されるので.」という御趣旨。

 でもねえ、あまりにモノを考えていないよね。これ「重機関銃で対抗できるから、歩兵の脅威ではない」という意見になるわけだから。正確に言えば、歩兵に限らない、生身の兵隊やソフトスキン車両って意味になんだろうけど。重機関銃で制圧できるから脅威ではないとするのもね。

 反論以前にさ、言い返されたらどうするかね?。例えば「『重機関銃で制圧できるので、機関銃は兵隊の脅威ではない』と主張するのね」とか。もともとが「重機関銃があれば、機関銃は脅威ではない。射撃を受けても、兵隊は口笛を吹きながら行進できる」って主張なのだから一溜まりもないでしょ。

 味方に重機関銃があっても、敵機関銃が生身の兵隊に脅威なのは変わらない。射程で、威力で超越する味方重機関銃が断続的に射撃をしてくれてもさ、敵機関銃に狙われればまず逃げられない。当たれば兵隊は死ぬ。重機関銃の支援があっても、機関銃は脅威に変わりはないわけです。

 ルノーFTは、機関銃よりも強い。小銃弾は貫通しない、迫撃砲弾くらいなら至近距離で破裂しても抗堪できる。一応は戦車砲があるので、装甲車程度ならば撃破できる。機銃があれば、兵隊は容易に殺せる。ルノーFTであっても、兵隊や海岸作業部隊は殺され、上陸作業は混乱する。重機関銃で貫通するかもしれないが、上陸部隊にとっては脅威だね。

 また、彼らは重機関銃で云々と主張するが、重機関銃はお手軽な兵器ではない。分隊に1丁とか配備されているわけではない。

 ある軍事史研究家(後難を避けるため名を秘す)は、この発言を次のように評した。
 相手に重機があればって簡単に言ってくれますな。車載重機のイメージなのかどの戦場にもフランクに投入されるかのごとく語っていますが、重機が歩兵の個人携行火器になった事がない以上、そうそう着上陸部隊側が持ち込める装備じゃないのにね。無駄に重いし。なんかファンタジーですね。


 キャリバー50はとにかく重い。後方で、天秤担ぎでも一人はまず無理。本体も重いが、三脚も同じくらい重い。その上、弾丸も重い。50口径弾を運ぼうとして、箱取り落として指を潰した海曹もいた。それを身軽が信条の上陸戦で兵隊に携行させるのは無理がある。もちろん欲しいだろうが、重くて使い難い。

 重機関銃をソフトスキンに載せても、脆弱であることには変わりない。キャリバー50や搭載したソフトスキンは、ルノーFTに較べれば相当に脆弱です。機関銃や迫撃砲で撃破できる。ソフトスキンにしても、兵隊が携行するにしても、露天ですので、迫なり砲なりで叩いているうちは余裕もありません。



 なんにしても、彼らは見た目のイメージだけで判断しているわけです。旧式戦車はカッコ悪いので役に立たない。そう判断をしています。

 逆に見た目でしか判断できないので、新型車両であれば脅威と認定するでしょう。ルノーFT同等の水準でも、新型車両あるいはエリート部隊が装備する車両は、掌を返して高く評価します。例えば、ヴィーゼルやBMDといった空挺車両なら脅威だと言いはるでしょう。部位や角度に依りますが、どちらも12.7mm弾、あるいは14.5mm弾に抗堪できない。でも、新型+エリート部隊っぽいから脅威だと言い張りますよ。

 特にBMDは脅威認定しますね。エリート部隊がもつ新型装備ですから。実際に着上陸の話では「上陸部隊が少なかったとしても、ロシアには空挺軍がある」と豪語してました。

 また、重機関銃に抗堪できないBTRでも、脅威認定するでしょう。BTR-60※ は、7.62mmNATO弾も貫通する部位があったといいます。BTR-70もBTR-80も、装甲は極端に向上していません。重機関銃に抗堪できませんが、大好きなロシア軍が使っているので「脅威ではない」と言わないでしょうね

 逆に旧式なら重機関銃に抗堪できても「脅威ではない」と強弁します。ある旧軍研究家(後難を避けるため名を秘す)も 
逆にキャリバー50に堪えられる戦車を探すと、97式チハ車あたりならおおむね堪えるとができる。でも『ルノーのかわりにチハならイインダネ』って言っても、彼らは納得してくれないでしょうねぇ」
と評しています。旧式っぽくて、外見でカッコ悪い戦車、97式やオーストラリアの間に合わせ戦車センチネルなんかだと「脅威ではない」と言い出すでしょう。



 「ルノーFTは兵隊にとって脅威ではない」とする人は、具体的なイメージに引きずられて捨象できないんでしょう。ルノーFTのイメージに囚われて、古いとしか評価できない。生身の兵隊には装甲と機関銃だけで脅威なのにね。小銃弾に抗堪し、機関銃を装備する新しい装備と比較もできない。

 ルノーFTは対上陸戦に全く役に立たないと主張する人もいる。「ルノーFTの能力をどう吟味してもその構成要素は[対]着上陸には全く役に立たない」としか言いようがない。」 ([ ]内は筆者捕捉)ってあるんだけど、これも不思議な発想。この人もイメージに引きづられているんだろうね。軽装甲で小口径砲では戦車に対抗することは難しいかもしれない、しかし、歩兵やソフトスキンには脅威になるのにね。

 「対上陸戦で、ルノーFTが役に立たない」のであれば、自衛隊装備だと「対上陸戦で87式警戒車が役に立たない」と言っているのと同じになる。ヴィーゼル、BMDと同等品だと、87式だろうけどね。今度はイメージ的に新型っぽいから、それはそれで許せなくなって、怒ると思うよ。

 ま、もっと不思議なのは「ルノーFTでも出てくりゃ脅威だろ」って話を「ルノーFTを生産しろ」って認識する意見だね。ここここだけどさ。己は「ルノーFTを整備しろ」なんて一言も言っていないのだけれども。まず例示したイメージから逃れられなのだろうね。



※ タイヤハウス内部に7.62mmNATO弾が貫通する部位があり、ちょうど運転手の頭の位置だと言われていた。