fc2ブログ

RSS
Admin
Archives

隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 軍事ライターの文谷です
 コミケでは隅田金属ででています。評論情報です。

連絡先:[email protected] (新)
旧  :[email protected] (旧)

メールアドレスは、新旧で切り替え中です


→ サークルMS「隅田金属」

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 軍事ライターの文谷です
 コミケでは隅田金属ででています。評論情報です。

連絡先:[email protected] (新)
旧  :[email protected] (旧)

メールアドレスは、新旧で切り替え中です


→ サークルMS「隅田金属」

Powered by fc2 blog  |  Designed by sebek
2013.09
02
CM:0
TB:0
12:00
Category : 雑誌読み
 マルミミゾウの象牙はあらかじめ抜けないものか? 可能であれば象牙のないゾウとなる。そうすれば密猟はなくなるのではないか。

 岩波『科学』の今月号に、マルミミゾウについての記事があった。西原智昭さんの「森のゾウが消える -マルミミゾウの頭数激減と象牙需要」※ がそれである。

 マルミミゾウはアフリカに住むゾウであるが、サバンナで暮らすアフリカゾウとはことなり、密林に生息する別種とされている。ジャングルで果実を食べ、遠くでタネを含む糞をする。糞はタネの発芽や成長を助ける。ジャングルの生物多様性を保つ鍵であるとされている。また、水浴びをするためか穴を掘ることによって、ジャングルが極相に至ることが防止されるともいう。動植物がジャングル内を移動する際にも、マルミミゾウがつくったゾウ道、ケモノ道が必須であるともいう。

 そのマルミミゾウが絶滅に瀕しているという。アフリカゾウは数が増えた話があるが、マルミミゾウは増えていない。マルミミゾウはむしろ密猟圧によって数を減じているという。

 密猟の目的は、象牙である。象牙を抜くためだけに、ゾウが殺されているという。

 ならば、あらかじめ象牙を抜くか、切ってしまうという方法はないものだろうか?

 この方法は、既にサイで行われている。密猟者が狙うサイの角をあらかじめ切除することで、密猟を防ぐというものだ。ゾウにも同じ方法が使えるのではないか。

 もちろん、密林に住むマルミミゾウについて、悉皆あつめて象牙を抜くことは難しい。しかし、国際機関や信頼できる政府機関による公然作業は、密猟よりも容易であるはずだ。密猟者よりも先に象牙を抜く、あるいは切除することにより、マルミミゾウを保護できるのではないか。

 また、三味線のバチについて、象牙を使わないことを業界で申し合わせることも有効ではないか?

 ちなみに、象牙需要の多くは日本と中国(と華僑圏)であるという。そして日本の象牙需要のうち、少なくない部分が三味線のバチに使われている。しかも在庫ではなく新品が求められていることが、西原さんの記事には示唆されている。

 三味線のバチは大型材からしかとれない。バチを取り出すには、20kgを越える大型な象牙が必要と述べている。象牙1本からは、バチは1本しかとれない。この点で、余剰材で作れる印鑑材とは異なっている。規制以前の象牙のストックが何トンあっても根本がなければダメである。つまり、三味線のバチの需要があるかぎり新規の大型材への需要もあるということだ。

 この伝でいえば、マルミミゾウを保護する(アフリカゾウもアジアゾウも同じだが)ためには、三味線業界が象牙を使わないという取り決めも効果があるように見える。象牙を使わないと音が弱くなる云々の話も、三味線奏者がみんなで仲良く音が弱くなればさしたる問題もないだろう。別に象牙なしでも三味線は鳴らせる。象牙バチとマルミミゾウとどちらが大事であるかとすれば、間違いなく後者である。

 地球環境の変化といった話ならばともかく、象牙狙いでゾウが密猟され、絶滅するのはマヌケな話である。象牙が儲かるから問題なのであり、各種手段で象牙の価値を無くせば密猟は大きく減少する。保護啓発活動や法的規制も重要だとは思うが、同時に経済性を喪失させる手段を講じた方が良いだろう。
2013.06
05
CM:10
TB:0
12:00
Category : 雑誌読み
 前にも書いたけどさ。いざという時を考えても、日本に兵器級プルトニウムは1t、2tあればいいよ。30tも持っているといろいろ言われて不愉快だから、9割方は処分してもいいんじゃないの?



 また、香港誌『鏡報』の記事なのだが。

 鍾健さんの「国際伝媒看天下」に紹介された外報に「日本密謀擁核令美国警惕」がある。「日本時報によると」となっているで『THE JAPAN TIMES』あたりに掲載された記事らしいのだが、残念ながらググっても出てこない。

 鍾さんは、日本は核兵器を作る可能性があることに焦点があてている。
・ 日本は核兵器級プルトニウム(武器級钚)を年間9トン生産している
・ 日本外務省は核兵器開発を外交上の切り札であると見ている
・ 日本の政治家には核武装を主張する人が多い
鍾さんは日本は核兵器を作る可能性があるという方向で外報を紹介しているわけだ。

 外務省云々の話は、突飛な話に聞こえるが、根拠のないことではない。日本政府は非核三原則を国是であるとしているが、将来的に拘束されるものとはしていない。国会での政府答弁をみても、憲法上は核を禁止していないとか、情勢変化によっては変わるかもしれないと言っている。核兵器は作らない。だが、核兵器を作ることができる。それは日本にとっての切り札と言う話だ。

 そもそも、日本は「核兵器開発はしない」で一貫していたわけではない。核兵器開発論議もあった。佐藤内閣になるまでは、核兵器開発については右往左往していた。左右双方で「核兵器はまず作る必要はない」というコンセンサスができたのは1980年代から後の話である。それでも、将来を縛るものではないよという発言は常に繰り返され、政府もまた、将来の核開発を否定するものではない、と留保している。そもそも、60年代以降に原子力発電を推進したのは、いざというときにという発想が含まれている。

 このあたりを見ると、周辺国も、日本は核兵器開発から遠いとは考えない。日本は状況次第では核兵器開発をする。だいたい核兵器級プルトニウム生産能力をもっているので、やる気になれば直ぐなんじゃないといったところだろう。

 だいたい、日本人にしても、作る気になれば直ぐだと考える。日本は原発とロケットと潜水艦を持っている。核実験場はないけどどうにかなる。実際に、本当にヤバくなったときには、世論なんか直ぐにひっくり返るだろう。

 まあ、周辺国と日本の認識は一致しているわけだ。周辺国は、前々から日本は持つ可能性はあるよなと思っている。日本も、持つ気になれば持てると思っている。

 現時点は、外人も日本人も、日本政府の言う「今のところは作っていない」ことを信じているといった程度の話だ。日本は作らないよと名言して、作る素振りもみせず、必要に応じでIAEAの査察も受け、国内でも作るというと国内世論が大変なことになりますよという情勢も外国に見せている。

 もちろん、日本は核兵器を作らないと主張すると同時に、核兵器を製造する基盤的技術を延々と積み上げている。その辺りは、平和利用開発といった理屈もあったので、周辺国も今までは見て見ぬフリをしてもらえた。

 ただし、北朝鮮の核開発が問題になってからは、国内技術集積も厳しい眼でみられるようになった。『日本時報』の元記事にアクセス出来ないのでなんだが、鍾さんによると「オバマ大統領が安倍晋三に『核兵器を作ってくれるなよ』と再三再四、重く申し入れた」とのこと。日米中韓で北朝鮮を非難するから、日本も今以上に身奇麗にしておけといったものだろう。



 いざという時に核を製造するにしても、プルトニウムはチョビっとあればいいよ。日本は兵器級プルトニウムを30t、5000発分も保有している※※ という。そこでも書いたけど、必要になっても、直ぐに100発も作る必要はない。それなら、1-2トンも手許においておけば間にあう。現政権も、仲が悪いままで放置している周辺国に非難されたり、大旦那様のアメリカにチクチク文句言われる前に、余剰プルトニウムの量を一気に削減したほうがいい。


※ 鍾健「日本密謀擁核令美国警惕」『鏡報』431(鏡報文化企業有限公司,香港,2013.6)p.104
※※ 「何かあっても5000発分は要らないだろう」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-564.html
2011.11
16
CM:0
TB:0
13:00
Category : 雑誌読み
 香港誌で「以台制華」という珍しい語句を見つけたので、まあちょっと。

 『鏡報』11月号に朗然さんの台湾総統選挙関連記事がある。「台湾大選的美日因素」※で、総統選挙と日米の関係についての観測記事になっている。
 その中で興味ふかいのが、日本が採るだろう台湾政策への見通しである。

 朗然さんは、日本は「以台制華」するだろうと見ている。台湾を自陣営による中国牽制である。これは面白い指摘である。潜在的であるが、実際に日本人はそのように考えているからである。

 実際に、日本人が説く台湾重視は、中国への牽制である。

 日本人による台湾防衛力への期待は、一種「以台制華」を期待したものだ。日本人が台湾独立に期待する点は、中国を台湾海峡に拘束できるだろう点である。台湾に中国と対峙し続けることを期待する点である。実際に、台湾防衛について語られる言論には、台湾での自由と民主主義の維持や、市場としての台湾といった観点はない。

 日本が台湾に抱く好意的感情も、概ね中国への、大陸への否定的感情を裏返したものである。※※ 台湾との友好や、ある種の台湾への賛美は、中国との関係や中国体制への裏返しになっている。台湾における民主主義体制の賛美は、常に中国における共産党一党独裁への批判とセットとして語られているのである。もちろん旧植民地への追憶や、一種勢力圏としての日本文化圏への帰属もあるが、政治的言論としては主流ではない。

 台湾独立運動への心情的肩入れも「以台制華」とする発想が影響している。台湾独立を積極的に応援する言論は、しばしばチベットやウイグル独立運動と平行して語られている。つまり中国への打撃を狙っての、独立運動支援である。台湾独立運動を応援する人々は、その理念として民族自立を訴えている。しかし、フィリピンでのイスラム教徒独立運動は支援しない。また、ビルマの民主化も支援しない。チベットやウイグル独立運動を応援する立場とは好対象である。

 日本には「以台制華」とする発想はある。もちろん、それ自体は発想として当然である。すでにここ10年来、日本は中国と対立するゲームを行なっている。日中対立ゲームでは、台湾が中国を対立してもらえてば、日本はゲームで立場を有利にできる。また、日本には台湾との関係強化を図ることにより、中国を制約するカードもある。

 ただし今の段階では、中国を牽制するカードとして、台湾は露骨に実用できない。台湾カードを振り回すと、中国との対立がエスカレーションする可能性が高い。新中国、中華人民共和国は、抗日戦の結果、誕生した国である。日本の侵略と中国人民の抵抗は、建国神話として国民が共有している。ゲームではなく、冷戦になることは望ましくない。

 日本が露骨に「以台制華」を実施すれば、中国人は傀儡国家「偽満州国」を通じた中国侵略を想起させる。そうなると、日中関係は収拾がつかなくなる。極端な話、台湾独立運動が高まったとする。日本にとってはゲームで非常に都合が良い。しかし、日本がそれを露骨に支援したとすれば全てはおジャンとなる。中国人は当然「偽台湾国」と呼ぶ。中国は面子にかけて台湾を回収しなければならない。§

 日中対立はゲームの範囲に留めなければならない。冷戦のような全面的な政治・軍事的対立や、その先にある熱戦一歩手前の状況は、日本にとって耐えることができない負担である。ゲームのカードとして「以台制華」は適当ではない。効果に較べて副作用が強すぎる。

 台湾カードを利用するしても、実際に可能な範囲は相当限定される。非政治、非軍事交流や、米国による台湾維持への協力程度が限界だろう。日本にとって「台湾独立」志向は好ましい。だが、非公式であっても、その志向に近い民進党・蔡英文を支援することも難しい。それにより国民党・馬英九を中国側に置いやってしまう。台湾世論も、尖閣諸島での小競り合いもあり、日本には厳しい。親日派のレッテルが致命的になる可能性もある。

 まあ、台湾カードで実現できるのって、台湾政府関係者への入国許可くらいかね。蔡さん、馬さん、どっちが勝っても日本に来てもらえれば、ゲームで中国に大打撃を与えることができる。別にどの段階の政府関係者であっても、台湾から来てもらえるなら、来てもらえばそれなりの嫌がらせにはなる。§§ それにより引き起こされる摩擦も、ゲームの範囲にとどまる。同じ程度の打撃だけど、日中関係冷却化や経済交流縮小程度で済むでしょう。でもねえ、ゲームで相手の威信を落す程度で、実益もあまりないね。

 台湾カードは触れずに、防衛力と外交で中国膨張主義をコンテインメントするほうが無難だね。日本は海軍力で対中アドバンテージを持つ。地道に防衛力を東シナ海方面にシフトさせたり、日中建艦競争をやる。中国が強引に海洋進出を図る状況では、周辺国もまとまりやすい。なんとなくの対中包囲網風、まあ、中国にとっての日米印越包囲網もどき(まあ、各国とも同床異夢だけど)をイメージ付けたりするほうがいいだろうね。実効では台湾カードによりも効く。また、中国が持ち始めた大国としての面子も(台湾カードに比較すれば)潰れにくい。

 ちなみに、記事中には「所以日本近年已開始加大過密日台間的政治、軍事交流。」とあるが、軍事交流やっていたのかねえ。日台軍事交流でググってみると、2007年の富士火力演習で民国陸軍(台湾陸軍)司令官、胡鎮埔さん(当時)が来たことくらいしか引っかからない。花火大会に呼んだ程度だと軍事交流でもないし、過密とも言えないのだろうがね。まあ相当警戒しているのかねえ。


※ 朗然「台湾大選的美日因素」『鏡報』412(2011.11,鏡報文化出版)

※※ 1980年代、対ソ同盟として日米と中国が協調関係にあった時期には、中国での「非民主的体制」への批判はほとんどなかった点に注意すべきである。台湾への支持(青嵐会)にしても、中華民国を見捨てたことへの道義的な負い目に基づいていた。もちろん、国民党独裁政権であり「台湾は中国ではない」言説はありえなかった。

§ 中国にとって、「中国の一部である台湾」が「中国人である台湾人」に支配されている限りは、何の問題もない。中国の一地方が言うことを聞かないだけの話である。しかし、外国人により台湾が切り取られた、となると話は別である。神聖な国土を外国に奪われた事を意味する。どれほど血を流しても取り戻さなければならない。

§§ ダライ・ラマさんが日本に入国して、それなりの政治発言をする程度の嫌がらせにはなるだろう。
2010.12
16
CM:0
TB:0
12:19
Category : 雑誌読み
 『季刊民族学』をちょい読み。「広東省の豊かな台所事情」(1985年 通号32号)で発見。中国、広東省での犬肉食(香肉料理)では、黒犬が珍重されるとのこと。日本での、赤犬がおいしいとは異なっている、残念ながら犬肉を食べたこともないから(個体識別できる犬は食いにくいだろうね)、どちらがうまいか断ずることはできないけれども。ちなみに、食肉として一番効果な動物はハクビシン。以前SARSの要因として疑われた動物である。
 ついでにいっておくと、この号には書いていないことだけれども、中国人に「何でも食べるのだろう」というと結構反発する。特に華北や東北の連中曰く「なんでも食べるのは南方の連中だけ」とのこと。チワン族自治区にいる少数民族の中には、調味料として「糞便汁」、牛の大腸の中身を濾した調味料を用いる例(選書メチエ『嗜好品の文化人類学』)がある、というと露骨に嫌な顔をした。

 話もそれたけど。この「広東省の豊かな台所事情」では、市場で流通する食べ物だけを紹介するのではなく、広州付近の農業も紹介している。珠江デルタ地帯での農業形態の特色として養殖池を上げている。珠江デルタでは、養殖池を中心に据えた農業のサイクルが成立しているらしい。

・ 現地では家畜・家禽に加えて家魚というカテゴリーがある。
 - 家魚は養殖が容易なコイ科の養殖魚を指す
 - 家魚養殖が農業の中心にある
・ 養殖池には養分として豚の排泄物をそのまま入れる
・ 養殖池は定期的に浚い、浚渫土を畑に入れて地力を上げる
・ 浚渫土は有害菌が多いので、石灰で消毒する
 - 水を抜いたあとの池にも石灰を撒く
・ 養殖池の堤防には、砂糖黍と桑を1~2年交代で植える
 - 桑は1~2年で抜根し、桑の皮を製紙に使う
・ 砂糖黍の絞り滓(ガバス)は豚の飼料にする

 養殖池を中心とした農業サイクルとは直接関係しないが、

・ 粉炭と豚糞を混ぜあわせて練炭を作る

 という記述がある。北方とか高地では糞を燃料に使う例はあるが、暑くて湿気も多い亜熱帯で実施するには、脱水工程も面倒だろう。


 同号には「ニューファウンランドのタラ漁」も載っていた。実際にはカナダ全体の漁業についてのレポート。

・ タラの顎、2cm四方は「コッド・タン:cod tongues」といって美味・高価
 (鮭のハラスみたいなものか?)
・ かつてはタラの肝から肝油を取っていた
・ 鯨が湾内に入ると「昔なら大喜びで…」
・ ノバ・スコシアでは日本人がマグロ蓄養をやっている
・ 太平洋岸フレーザー川では海苔を食べる習慣がある

 また、前号の31号には、モルジブの鰹一本釣の記事がある。なんでも三食がカツオ料理らしいのだが、当地のことなので調理法はカレーオンリーらしい。モルジブ人に醤油とわさびを教えて刺身調理とか、油の青臭さを落とすための「たたき」を教えたらどうなるのだろうね。


割と年末まで仕事が詰まっているので、古いMIXIの日記からお手軽に転載。
MIXI日記 2010年05月07日 より転載