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佐藤正久さんは、実際には起きてもいない「中国による領空侵犯は激増」を紹介している。
これは佐藤さんのブログ「退役将官に聞く、日本の国防」* でのものだ。
■ 領空侵犯とスクランブルの混同
だが、「中国による領空侵犯は激増し」た例はない。
そもそも、中国による領空侵犯そのものの実例がないといってよい。日本政府の立場としては12年の一件だけであるが、これは係争地帯の尖閣上空通過である。機体も政府機関には属するが、軍隊に属さない非武装の輸送機によるものである。
あっても1件切りであった領空侵犯が、この3年間で激増したとする主張はどのようなものか?**
強いて言えば、スクランブルは増えただろう。
だが、これは日中中間線の向こうにまで広がる日本防空識別圏に入っただけの話だ。そこで南東に移動する機体を確認したものにすぎない。
もちろんそれなりの数は琉球列島線を通過し太平洋に進出しただろう。
しかし、その機体は全て公海部上空を通過しており、日本領空に侵入していない。これは領空侵犯事件が起きていないことからも明らかである。
ある意味、平穏に日本近傍を通過した証拠でもあり非難するには及ばないものだ。
■ 無知あるいは承知の上か
それであるのに、佐藤さんが「中国による領空侵犯は激増し」た内容記事をを上げたのは何故か?
考えられるのは、無知あるいは承知の上といったものだ。
まずは、佐藤さん本人(スタッフを含め)が無知であるため、領空侵犯とおそらくスクランブルの区別がついていないといった可能性だ。
だが、それは考え難い。安全保障を表芸にしている以上、その辺りの混同には注意を払うはずであるためだ。流石に「熊本大震災にも領空侵犯でスクランブル多数」といい出すネトウヨほどに無知であるはずはない。
おそらくは、承知尽くなのだろう。宮下寿広の発言だから、佐藤さんは自分は責任は負わないで済むといったものだ。
「西部方面総監を経験した宮下寿広」さんは当然陸である。領空侵犯とスクランブルの差は聞いたことがあっても、注意は払っていない。そしてライト・イズ・ライトの発想から自分で考えず「中国の脅威を煽ればいい」と思い込みから「中国による領空侵犯は激増し」たと述べた。
佐藤さんはそれを奇貨として利用したものに見える。「将官がそう言っている」と掲示した上で
と述べ、権威に弱く頭も弱い支持者、「熊本大震災にも領空侵犯でスクランブル多数」といいだすネトウヨ層に媚びようとしている。そう見えるものだ。
まあ、そこに集まって「中国による領空侵犯は激増し」たことを聞かされて苦笑いもしない自民党国防議員連盟もどんなものかとも思うし、そのような内容のために「インターネット 佐藤学校」に本入校して金払う連中もおめでたいと思うけどね。
* 佐藤正久「退役将官に聞く、日本の国防」『佐藤正久オフィシャルブログ』(2016.4.28)http://ameblo.jp/satomasahisa/entry-12154772220.html
** 同様に中国艦船の領海内への進入も、尖閣でのゲームを除けば2004年の潜水艦1件切りだけであり、しかも海自に防遏されている。
これは佐藤さんのブログ「退役将官に聞く、日本の国防」* でのものだ。
佐藤が事務局長を務める自民党国防議員連盟主催の勉強会が開催された。[中略]講師は、熊本を拠点とする西部方面総監を経験した宮下寿広氏。中国の拡張主義には長年、人一倍の注意を払ってきた。わずか3年前に退官したにも関わらず、現役時代と比べても現在の中国による領空侵犯は激増している[赤字部は文谷]という。
「退役将官に聞く、日本の国防」
http://ameblo.jp/satomasahisa/entry-12154772220.html
■ 領空侵犯とスクランブルの混同
だが、「中国による領空侵犯は激増し」た例はない。
そもそも、中国による領空侵犯そのものの実例がないといってよい。日本政府の立場としては12年の一件だけであるが、これは係争地帯の尖閣上空通過である。機体も政府機関には属するが、軍隊に属さない非武装の輸送機によるものである。
あっても1件切りであった領空侵犯が、この3年間で激増したとする主張はどのようなものか?**
強いて言えば、スクランブルは増えただろう。
だが、これは日中中間線の向こうにまで広がる日本防空識別圏に入っただけの話だ。そこで南東に移動する機体を確認したものにすぎない。
もちろんそれなりの数は琉球列島線を通過し太平洋に進出しただろう。
しかし、その機体は全て公海部上空を通過しており、日本領空に侵入していない。これは領空侵犯事件が起きていないことからも明らかである。
ある意味、平穏に日本近傍を通過した証拠でもあり非難するには及ばないものだ。
■ 無知あるいは承知の上か
それであるのに、佐藤さんが「中国による領空侵犯は激増し」た内容記事をを上げたのは何故か?
考えられるのは、無知あるいは承知の上といったものだ。
まずは、佐藤さん本人(スタッフを含め)が無知であるため、領空侵犯とおそらくスクランブルの区別がついていないといった可能性だ。
だが、それは考え難い。安全保障を表芸にしている以上、その辺りの混同には注意を払うはずであるためだ。流石に「熊本大震災にも領空侵犯でスクランブル多数」といい出すネトウヨほどに無知であるはずはない。
おそらくは、承知尽くなのだろう。宮下寿広の発言だから、佐藤さんは自分は責任は負わないで済むといったものだ。
「西部方面総監を経験した宮下寿広」さんは当然陸である。領空侵犯とスクランブルの差は聞いたことがあっても、注意は払っていない。そしてライト・イズ・ライトの発想から自分で考えず「中国の脅威を煽ればいい」と思い込みから「中国による領空侵犯は激増し」たと述べた。
佐藤さんはそれを奇貨として利用したものに見える。「将官がそう言っている」と掲示した上で
佐藤としては、我が国の領域が日常的に侵されている現実は非常に深刻であるとの問題意識を、世論のみならず国会議員の同僚たちにも共有してもらいたいと考えている。(赤字部は文谷)
同上
と述べ、権威に弱く頭も弱い支持者、「熊本大震災にも領空侵犯でスクランブル多数」といいだすネトウヨ層に媚びようとしている。そう見えるものだ。
まあ、そこに集まって「中国による領空侵犯は激増し」たことを聞かされて苦笑いもしない自民党国防議員連盟もどんなものかとも思うし、そのような内容のために「インターネット 佐藤学校」に本入校して金払う連中もおめでたいと思うけどね。
* 佐藤正久「退役将官に聞く、日本の国防」『佐藤正久オフィシャルブログ』(2016.4.28)http://ameblo.jp/satomasahisa/entry-12154772220.html
** 同様に中国艦船の領海内への進入も、尖閣でのゲームを除けば2004年の潜水艦1件切りだけであり、しかも海自に防遏されている。
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■ SM-6を空中発射すればAWACSが殺せるのではないか
AWACSにSM-6を積むと面白いのではないか。「AWACSキラーとして運用」とでも書いて積んどけば、中国AWACSは対日線であまり前にでられないのではないかね。
搭載発射は難しくない。昔、米国はSM-1ミサイルを対レーダ用として戦闘機や攻撃機に積んだ例もある。それを発展させた空対空型のシークバットの計画もあった。SM-6の搭載発射には特段の困難はない。
SM-6そのものをAWACSで誘導することも難しくない。今でもE-2Dで誘導できる見込がある。それよりもAWACSは偉く大きいので、同じ誘導システムを積めば別段の問題はない。
その射程は、おそらくAWACSの探知距離をカバーできる。SM-6は水上発射で250kmから400kmの有効射程があるとされる。飛行機で高いところから発射すれば多少は射程も伸びる。射程600kmとすれば、日本AWACS(高度8000m)から中華AWACS(高度8000m)がほぼ見通しとなる距離でなる。
AWACSの探知も難しくもない。同じ所をぐるぐる回ったり、往復していればおそらくそれ。加えて、相手のレーダー波をES探知できればそれだ。
SM-6を搭載しておいて、それに向かってぶっ放せばどうかね?
もちろん、600kmの例では、中国側が早期探知すれば急降下で水平線の下に逃げられる可能性がある。
だが、450kmくらいで日本側がヨリ高い高度を取ったら、まず逃げられないだろうけど。
もちろん、搭載機は別にF-15でもF-2でもよい。だが、自分で目標を見分けられるわけでもないし、自機で誘導するのも大変だろう。それならAWACSに直積みしたほうがよい。
■ Mig-25がダッシュしてきても逃げきれる
発射母体のAWACSについては、まずは安全だろう。450kmも離れていれば、中国AWACSの護衛機が突っ込んできても逃げきれるためだ。
仮に、Su-27が護衛機についており、中華AWACSから100km日本側にいたとしよう。
だが、日本のAWACSを射点に収められるかは怪しい。仮にSu-27でマッハ2、雑に秒速600mで突っ込んでくるとする。だが、日本側AWACSが静止していてもアムラームスキーの射程(仮に100km、ただし搭載状態でマッハ2でるかは知らない)に収めるまでには400秒はかかる。日本側が秒速200m(400ノット)で逃げれば、射程におさめるまで600秒かかる。アフターバーナーは燃料をどか食いするので、おそらく燃料は持たない。
SM-6とAWACSが射程600kmを実現すれば、Mig-25がマッハ3でダッシュしてきても大丈夫だろう。冷戦期、開戦初頭にライン河上空のE-3に対し、東西ドイツ境界付近のMig-25がダッシュしてくるのではないかといった話があった。距離200kmなのでそれは可能だっただろう。だが、AWACS間で600km離れ、MIG-25が日本側に100kmにいて、マッハ3で飛んできても射点に収めるまでやはり400秒、日本が逃げれば570秒かかる。
もちろん、SM-6で返り討ちにしてもいい。仮に中国がAWACS殺しといわれたAA-13を買っても、たぶんAM-6のほうが射程が長いのでアウトレンジできるだろう。
■ Y-8Qは「なぶり殺しにされる」と考えるだろう
もちろん「中国AWACSを落とすぜ」以外の脅し方もある。より弱いものいじめ的に使うとすれば、中国哨戒機キラーとして見せつける使いみちもある。
例えば、P-3やP-1に積んで「Y-8Qを落とす」というものだ。戦時にバシーを迂回して太平洋に入ろうとしても、日本哨戒機がそれを待ち構えているのではないかと不安にさせるやり方である。
問題は、哨戒機が哨戒機を遠距離探知できるかと、遠距離探知した目標がY-8Qを識別でき、旅客機ではないと確信できる方法がないことだ。
だが、それは些細な問題にすぎない。ES探知でそれができるとでも嘯いておけば、あまりバシー迂回での太平洋進入に積極的とはなれないだろう。
実際は、見える距離まで行って確認して、サイドワインダーの-9Xなりアムラームで攻撃すればいいんだけどね。
まあ、その時は中国も「あたるどうかは知らないけど、日米のAWACSやMPAがビビるだろう」と同じようにHQ-9あたりをKJ-2000やY-8Qに積むような気もするけどね
AWACSにSM-6を積むと面白いのではないか。「AWACSキラーとして運用」とでも書いて積んどけば、中国AWACSは対日線であまり前にでられないのではないかね。
搭載発射は難しくない。昔、米国はSM-1ミサイルを対レーダ用として戦闘機や攻撃機に積んだ例もある。それを発展させた空対空型のシークバットの計画もあった。SM-6の搭載発射には特段の困難はない。
SM-6そのものをAWACSで誘導することも難しくない。今でもE-2Dで誘導できる見込がある。それよりもAWACSは偉く大きいので、同じ誘導システムを積めば別段の問題はない。
その射程は、おそらくAWACSの探知距離をカバーできる。SM-6は水上発射で250kmから400kmの有効射程があるとされる。飛行機で高いところから発射すれば多少は射程も伸びる。射程600kmとすれば、日本AWACS(高度8000m)から中華AWACS(高度8000m)がほぼ見通しとなる距離でなる。
AWACSの探知も難しくもない。同じ所をぐるぐる回ったり、往復していればおそらくそれ。加えて、相手のレーダー波をES探知できればそれだ。
SM-6を搭載しておいて、それに向かってぶっ放せばどうかね?
もちろん、600kmの例では、中国側が早期探知すれば急降下で水平線の下に逃げられる可能性がある。
だが、450kmくらいで日本側がヨリ高い高度を取ったら、まず逃げられないだろうけど。
もちろん、搭載機は別にF-15でもF-2でもよい。だが、自分で目標を見分けられるわけでもないし、自機で誘導するのも大変だろう。それならAWACSに直積みしたほうがよい。
■ Mig-25がダッシュしてきても逃げきれる
発射母体のAWACSについては、まずは安全だろう。450kmも離れていれば、中国AWACSの護衛機が突っ込んできても逃げきれるためだ。
仮に、Su-27が護衛機についており、中華AWACSから100km日本側にいたとしよう。
だが、日本のAWACSを射点に収められるかは怪しい。仮にSu-27でマッハ2、雑に秒速600mで突っ込んでくるとする。だが、日本側AWACSが静止していてもアムラームスキーの射程(仮に100km、ただし搭載状態でマッハ2でるかは知らない)に収めるまでには400秒はかかる。日本側が秒速200m(400ノット)で逃げれば、射程におさめるまで600秒かかる。アフターバーナーは燃料をどか食いするので、おそらく燃料は持たない。
SM-6とAWACSが射程600kmを実現すれば、Mig-25がマッハ3でダッシュしてきても大丈夫だろう。冷戦期、開戦初頭にライン河上空のE-3に対し、東西ドイツ境界付近のMig-25がダッシュしてくるのではないかといった話があった。距離200kmなのでそれは可能だっただろう。だが、AWACS間で600km離れ、MIG-25が日本側に100kmにいて、マッハ3で飛んできても射点に収めるまでやはり400秒、日本が逃げれば570秒かかる。
もちろん、SM-6で返り討ちにしてもいい。仮に中国がAWACS殺しといわれたAA-13を買っても、たぶんAM-6のほうが射程が長いのでアウトレンジできるだろう。
■ Y-8Qは「なぶり殺しにされる」と考えるだろう
もちろん「中国AWACSを落とすぜ」以外の脅し方もある。より弱いものいじめ的に使うとすれば、中国哨戒機キラーとして見せつける使いみちもある。
例えば、P-3やP-1に積んで「Y-8Qを落とす」というものだ。戦時にバシーを迂回して太平洋に入ろうとしても、日本哨戒機がそれを待ち構えているのではないかと不安にさせるやり方である。
問題は、哨戒機が哨戒機を遠距離探知できるかと、遠距離探知した目標がY-8Qを識別でき、旅客機ではないと確信できる方法がないことだ。
だが、それは些細な問題にすぎない。ES探知でそれができるとでも嘯いておけば、あまりバシー迂回での太平洋進入に積極的とはなれないだろう。
実際は、見える距離まで行って確認して、サイドワインダーの-9Xなりアムラームで攻撃すればいいんだけどね。
まあ、その時は中国も「あたるどうかは知らないけど、日米のAWACSやMPAがビビるだろう」と同じようにHQ-9あたりをKJ-2000やY-8Qに積むような気もするけどね
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サウジが増産凍結で合意しても、原油価格つり上げはできなかったのではないか。
藤和彦さんはJBPress「ドーハ会合が決裂、世界が手を焼くサウジの身勝手」で「サウジのせいでOPEC・ロシアの増産凍結ができなかった」と述べている。
この記事は、原油価格低迷がサウジの体制を揺らがすことを示すものであり、興味深い内容である。読むべき価値のある記事である。
だが、サウジが合意したとしてもOPEC・ロシアの会議が実効性を上げ、原油価格を上げられたかどうかは怪しい。
■ 北米の原油増産は止められない
まず、北米やイランの原油生産が抜け駆けするためだ。これらはざっと2014年ベースで原油採掘量の25%を占めている。イランを除くOPEC(+ロシア)が増産をやめて価格上昇を図っても、これらの国はそれを奇貨として増産するだろう。
アメリカ、カナダ、メキシコでも原油は生産されている。シェールオイル革命以降、アメリカは世界第一位の原油生産国となっており、カナダもサンドオイルにより世界シェアの5%を握っている。両者は高コストといわれている。だが、条件の良い所は安くバレル40ドルでも価格競争力はある。特にカナダは長期的立場から市況と関係なくサンドオイル増産を進める方針にある。
また、イランは増産する気が満々である。経済封鎖が解かれた状況であり、従来のシェアを取り戻すまで増産するとも言っている。社会の不満を解消するため、経済を安定化させるには現金が必要といった背景もある。
■ 安値の石炭や天然ガスで代替される
また、原油生産が滞っても、天然ガスや石炭での代替が進む構図もある。このため、増産凍結により石油価格を釣り上げようとしても上手くいかないだろう。
もちろん石油はエネルギー資源として死活的な重要性を持つが、その死活性はかつて程ではない。エネルギー資源のうち石油の占めるシェアは31%まで低下している。これは非石油エネルギーの伸展によるものである。具体的には石炭29%、天然ガス22%、バイオエネルギー10%が挙げられる。
石油の値段が上がれば、同じく安値となっている石炭や天然ガスで代替する動きもでてくることになるのである。
■ 不景気なので値段も上がらない
そして、最後に不景気の影響も挙げられる。世界銀行の見通しも、世界経済の成長率は下方修正されている。つまり実需が伸びず、同様に投機的な資金流入も見込めない現況にある。そこで原油価格が釣り上げられる見込みはない。
なによりも中国の石油需要は旺盛ではない。中国自体が「新常態」と称する低成長に対応しようとしており、第13次5カ年計画も環境重視にシフトしている。さらにロシア、中央アジア(以前はロシアに買い叩かれていた)からの天然ガス輸入も進んでいる。石油需要は伸び悩み、あるいは縮小するだろう。
■ 構造的に原油価格は上がらない
原油価格は構造的に上がらない。短期的な上下があるとしても、その範囲は大したものではないということだ。
この状況でOPECとロシアが何をしようとしてもダメのダメ押しでしかない。
OPECの価格支配力は三〇年前から弱まりつつあるといわれていた。当時の北海石油程度でそうなったとも言われていたが、今ではそれ以上に米国とカナダが生産シェアを占めており、石炭・天然ガスの活用も進んだ。その上、不景気では原油価格は上がるものではない。
つまり、サウジがわがままを言わなくとも、石油価格のつり上げはできなかったということだ。
書いたあとで思いついたけど、この状況が続けばMRJは売れないね。他社機との価格差を燃費で回収できるかどうか怪しいし、できてもその時間が長いと話にもならないから。まあ、C-2とは違って「なんで作ったの?」バカにしてはいない飛行機だけどね。
* 藤和彦「ドーハ会合が決裂、世界が手を焼くサウジの身勝手」『JBPress』(JBPress,2016.4.25)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46684
藤和彦さんはJBPress「ドーハ会合が決裂、世界が手を焼くサウジの身勝手」で「サウジのせいでOPEC・ロシアの増産凍結ができなかった」と述べている。
この記事は、原油価格低迷がサウジの体制を揺らがすことを示すものであり、興味深い内容である。読むべき価値のある記事である。
だが、サウジが合意したとしてもOPEC・ロシアの会議が実効性を上げ、原油価格を上げられたかどうかは怪しい。
■ 北米の原油増産は止められない
まず、北米やイランの原油生産が抜け駆けするためだ。これらはざっと2014年ベースで原油採掘量の25%を占めている。イランを除くOPEC(+ロシア)が増産をやめて価格上昇を図っても、これらの国はそれを奇貨として増産するだろう。
アメリカ、カナダ、メキシコでも原油は生産されている。シェールオイル革命以降、アメリカは世界第一位の原油生産国となっており、カナダもサンドオイルにより世界シェアの5%を握っている。両者は高コストといわれている。だが、条件の良い所は安くバレル40ドルでも価格競争力はある。特にカナダは長期的立場から市況と関係なくサンドオイル増産を進める方針にある。
また、イランは増産する気が満々である。経済封鎖が解かれた状況であり、従来のシェアを取り戻すまで増産するとも言っている。社会の不満を解消するため、経済を安定化させるには現金が必要といった背景もある。
■ 安値の石炭や天然ガスで代替される
また、原油生産が滞っても、天然ガスや石炭での代替が進む構図もある。このため、増産凍結により石油価格を釣り上げようとしても上手くいかないだろう。
もちろん石油はエネルギー資源として死活的な重要性を持つが、その死活性はかつて程ではない。エネルギー資源のうち石油の占めるシェアは31%まで低下している。これは非石油エネルギーの伸展によるものである。具体的には石炭29%、天然ガス22%、バイオエネルギー10%が挙げられる。
石油の値段が上がれば、同じく安値となっている石炭や天然ガスで代替する動きもでてくることになるのである。
■ 不景気なので値段も上がらない
そして、最後に不景気の影響も挙げられる。世界銀行の見通しも、世界経済の成長率は下方修正されている。つまり実需が伸びず、同様に投機的な資金流入も見込めない現況にある。そこで原油価格が釣り上げられる見込みはない。
なによりも中国の石油需要は旺盛ではない。中国自体が「新常態」と称する低成長に対応しようとしており、第13次5カ年計画も環境重視にシフトしている。さらにロシア、中央アジア(以前はロシアに買い叩かれていた)からの天然ガス輸入も進んでいる。石油需要は伸び悩み、あるいは縮小するだろう。
■ 構造的に原油価格は上がらない
原油価格は構造的に上がらない。短期的な上下があるとしても、その範囲は大したものではないということだ。
この状況でOPECとロシアが何をしようとしてもダメのダメ押しでしかない。
OPECの価格支配力は三〇年前から弱まりつつあるといわれていた。当時の北海石油程度でそうなったとも言われていたが、今ではそれ以上に米国とカナダが生産シェアを占めており、石炭・天然ガスの活用も進んだ。その上、不景気では原油価格は上がるものではない。
つまり、サウジがわがままを言わなくとも、石油価格のつり上げはできなかったということだ。
書いたあとで思いついたけど、この状況が続けばMRJは売れないね。他社機との価格差を燃費で回収できるかどうか怪しいし、できてもその時間が長いと話にもならないから。まあ、C-2とは違って「なんで作ったの?」バカにしてはいない飛行機だけどね。
* 藤和彦「ドーハ会合が決裂、世界が手を焼くサウジの身勝手」『JBPress』(JBPress,2016.4.25)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46684
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『緑はよみがえる』は結構な映画なのでしょう。昨日19時の回に観てきました。当日飲まず食わず、図書館に6時間超を詰めたあとでもなお緊張が持続しました。この点だけでも岩波ホールの映画としては結構いい感じの映画でしょう。
『西部戦線異状なし』の南欧版で、墺・独との戦争です。第一次世界大戦、イタリア戦線、山岳地帯でのイタリアからみた塹壕戦です。17年でスペイン風邪があり、戦争後半、どちらかというと末期に近い状況です。
戦争は膠着しており、戦闘にもあまり意味はない時分です。映画の細部はバラすものではありませんが、意義の見いだせない命令、抗命があり、そしてクライマックスもオチもついたものとなっております。クライマックスとカタルシス(ああっという感じですが)がある点で、普通の映画としても面白いものです。
マイニングの恐怖がよろしいものでした。地下で穴を掘る音がする、オレは鉱夫だからわかるといった兵隊の意見から、初任の士官がことある度に地下の音を聞こうとするあたりです。もちろんふっ飛ばされたら終わりだから、そうなのでしょう。このあたり、ロシア側から見た『二百三高地』といえるかもしれません。アレも旅順艦隊を沈めたあと、オマケ部分で佐藤允が坑道を掘って爆薬を填埋してロシア側のトーチカを吹き飛ばしています。
でも、順番がよろしくない。オルミ監督が父の経験談を元にしたとしていますが、おそらくは手記のとおり、事実関係に従って構成したので、カタルシスが先に来ている。それまでは狙撃や砲撃、マイニングの恐怖に晒されながら「いまさら師団司令部は何を言っていやがる」は最後の最後に持ってくるべきでしょう。もちろん、純商業的な映画ではないのでそうしなかったのでしょうけど。
ただ、最初に主人公にあたる監督の親爺が朗々を歌を歌い、敵陣営から喝采ともっとやれをもらうあたりは、戦争末期塹壕戦の実相ではないですかね。
末期戦とか言っているマヌケはいますが、戦争末期なんて実際にはどっちもやる気はない。敵味方あわせ、とにかく人死がでないようにする。上からの命令や、現場同士が暗黙のルールで確立した防衛線を超えない限りはなにもしない。そんなものでしょう。
でも、ま「なんだかな」といった戦争だねえ。
舞台はアジアーゴ周辺の山岳地帯だけど、そこは北イタリアの低地地帯から20km、ベネチアから70kmでしかない。そこまで攻め込まれるイタリアもイタリア。
そして攻め込んでも低地まで押し込めない以上は墺・独もなんの利益もない。山岳地帯といった交通不便な一種の無人地帯を、相手の戦力と拮抗するまで進んだだけ。自分で兵站の負担を多くしただけで意味はないものでしょう。トリエステ湾方面での作戦が上手く行かないから迂回したんだろうけど、なまじアジアーゴまでいってしまえた。もう少しで行けそうなのと、引くとそこで拘束されていたイタリア軍がトリエステ方面に来るといった頭なんでしょうかねえ。
予告映像だと『シアター・プノンペン』もね。娘が映画館で古い映画を見ていると、おっ母さんが出ている恋愛映画を見つける。その映画に惚れた映写技師のいうことには、映画はポルポト支配で焼かれて後半部がない。それなら後半部を今作って上映しようといった話。それだけでワクワクするでしょ?
『西部戦線異状なし』の南欧版で、墺・独との戦争です。第一次世界大戦、イタリア戦線、山岳地帯でのイタリアからみた塹壕戦です。17年でスペイン風邪があり、戦争後半、どちらかというと末期に近い状況です。
戦争は膠着しており、戦闘にもあまり意味はない時分です。映画の細部はバラすものではありませんが、意義の見いだせない命令、抗命があり、そしてクライマックスもオチもついたものとなっております。クライマックスとカタルシス(ああっという感じですが)がある点で、普通の映画としても面白いものです。
マイニングの恐怖がよろしいものでした。地下で穴を掘る音がする、オレは鉱夫だからわかるといった兵隊の意見から、初任の士官がことある度に地下の音を聞こうとするあたりです。もちろんふっ飛ばされたら終わりだから、そうなのでしょう。このあたり、ロシア側から見た『二百三高地』といえるかもしれません。アレも旅順艦隊を沈めたあと、オマケ部分で佐藤允が坑道を掘って爆薬を填埋してロシア側のトーチカを吹き飛ばしています。
でも、順番がよろしくない。オルミ監督が父の経験談を元にしたとしていますが、おそらくは手記のとおり、事実関係に従って構成したので、カタルシスが先に来ている。それまでは狙撃や砲撃、マイニングの恐怖に晒されながら「いまさら師団司令部は何を言っていやがる」は最後の最後に持ってくるべきでしょう。もちろん、純商業的な映画ではないのでそうしなかったのでしょうけど。
ただ、最初に主人公にあたる監督の親爺が朗々を歌を歌い、敵陣営から喝采ともっとやれをもらうあたりは、戦争末期塹壕戦の実相ではないですかね。
末期戦とか言っているマヌケはいますが、戦争末期なんて実際にはどっちもやる気はない。敵味方あわせ、とにかく人死がでないようにする。上からの命令や、現場同士が暗黙のルールで確立した防衛線を超えない限りはなにもしない。そんなものでしょう。
でも、ま「なんだかな」といった戦争だねえ。
舞台はアジアーゴ周辺の山岳地帯だけど、そこは北イタリアの低地地帯から20km、ベネチアから70kmでしかない。そこまで攻め込まれるイタリアもイタリア。
そして攻め込んでも低地まで押し込めない以上は墺・独もなんの利益もない。山岳地帯といった交通不便な一種の無人地帯を、相手の戦力と拮抗するまで進んだだけ。自分で兵站の負担を多くしただけで意味はないものでしょう。トリエステ湾方面での作戦が上手く行かないから迂回したんだろうけど、なまじアジアーゴまでいってしまえた。もう少しで行けそうなのと、引くとそこで拘束されていたイタリア軍がトリエステ方面に来るといった頭なんでしょうかねえ。
予告映像だと『シアター・プノンペン』もね。娘が映画館で古い映画を見ていると、おっ母さんが出ている恋愛映画を見つける。その映画に惚れた映写技師のいうことには、映画はポルポト支配で焼かれて後半部がない。それなら後半部を今作って上映しようといった話。それだけでワクワクするでしょ?
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「沖縄問題には中国脅威論は逆効果」いった指摘は面白い。
これは、去年12月の『群像』に白井聡さんの対談が載っていたのだ。件のごとく、アレ右派は「中国が沖縄を侵略しようとしている」と中国の脅威を煽っている。だが、沖縄県民の歴史的記憶からすれば、旧日本軍や米軍政のほうがリアルではないかというもの。
具体的には白井聡、島口雅彦さんの「国家の自殺を食い止められるか」の一節である。
その伝でいえば「海兵隊がいなければ中国が侵略してくる」は確かに逆効果でしかない。
もちろん、尖閣や中間線問題には敏感である。領土問題は身体感覚に近いものであるためだ。尖閣は自分たちのものであると信じ込んでいるので、そこでの領土問題から対中感情はよいものではない。
だが「中国が沖縄本島に侵攻して、過酷な軍政を云々、だから辺野古を、海兵隊を」と守旧派や米軍の幇間が言い出せば反感しか浮かばないだろう。沖縄では、旧日本軍隊や米軍政への歴史的記憶があるためだ。戦車で自動車ごと轢かれても「避けなかったオマエが悪いので賠償なし」とか「沖縄の自治は神話」といった記憶だ。
実際のところは、中国が直接沖縄の島嶼は攻める理由も考え難いものだがね。
まず、彼らが現在力を注いでいるのは南シナ海であって東シナ海ではない。
また、沖縄方面には台湾の問題もある。台湾を回収できないのに沖縄に手を出すと、日米は敵の敵は味方で、台湾地区の台北政権に手助けをしてしまうので損となる。
そして、戦時の列島線通過なら別に島を占領する必要はない。琉球列島の海空戦力を無効化すればよい。そこで上陸まですると、肝心の列島線を通過させる艦隊戦力を消耗させてしまう問題もある。そもそも、対日米戦でそこまででられるかは怪しい。実際は第一列島線以内に焦点をあてたA2ADではないかな。
沖縄基地問題については、せめては交換条件でのお願いだと思うよ。「中国との対峙があるので、嘉手納だけは置かせてくれ、だが何の役にも立たず評判の悪い海兵隊はアメリカに帰らせるから」あたりが落としどころなのだが。肝心の政府もそれを言い出せないあたりが沖縄問題で一番まずい所に見えるものだ。
なんにしても「中国の侵略が間近い」は新興宗教っぽさが一杯なんだよね。あの手の御宗旨は神仏キリスト系を問わず、たいがいが国難を主張する。そしてそれを真顔で他人に説くものだ。信仰はそういうものだからしかたがないが、それに雷同するネトウヨは相当に頭が悪いもんだ。
このあたり、宗教ではないが、宗教的的情熱からのアレ発言「原発停めると被災地が停電」と、それに雷同するネトウヨの構図と同じ話だ。
まあなんつーのかな、雷同するあたりで頭の中身が窺われるけどね。兵隊でも車と野球とサッカーの話しかできない奴は、産経や夕刊フジあたりを真に受ける。自称現実派としてこの種の宗教的発言を得として発言する。「中国の侵略が間近い」とか「原発停めると被災地が停電」とかね。海士や3曹ならばまだいいんだけどねえ。
白井聡、島口雅彦「国家の自殺を食い止められるか」『群像』2015.12月号(講談社,2015.12)pp.124-136.
これは、去年12月の『群像』に白井聡さんの対談が載っていたのだ。件のごとく、アレ右派は「中国が沖縄を侵略しようとしている」と中国の脅威を煽っている。だが、沖縄県民の歴史的記憶からすれば、旧日本軍や米軍政のほうがリアルではないかというもの。
具体的には白井聡、島口雅彦さんの「国家の自殺を食い止められるか」の一節である。
ちなみに、保守は沖縄で中国脅威論をふりまいているわけですが、これ全く逆効果なんですね。沖縄の人の目で歴史を振り返ってみると日本人にやられたという記憶はあるし、アメリカ人にやられた記憶もある。しかし、中国人に支配されてという記憶はないわけですね。彼らにとって中国脅威論は全くの多くじゃないかということがリアルにわかるわけです
(白井)白井聡、島口雅彦「国家の自殺を食い止められるか」『群像』2015.12月号(講談社,2015.12)
その伝でいえば「海兵隊がいなければ中国が侵略してくる」は確かに逆効果でしかない。
もちろん、尖閣や中間線問題には敏感である。領土問題は身体感覚に近いものであるためだ。尖閣は自分たちのものであると信じ込んでいるので、そこでの領土問題から対中感情はよいものではない。
だが「中国が沖縄本島に侵攻して、過酷な軍政を云々、だから辺野古を、海兵隊を」と守旧派や米軍の幇間が言い出せば反感しか浮かばないだろう。沖縄では、旧日本軍隊や米軍政への歴史的記憶があるためだ。戦車で自動車ごと轢かれても「避けなかったオマエが悪いので賠償なし」とか「沖縄の自治は神話」といった記憶だ。
実際のところは、中国が直接沖縄の島嶼は攻める理由も考え難いものだがね。
まず、彼らが現在力を注いでいるのは南シナ海であって東シナ海ではない。
また、沖縄方面には台湾の問題もある。台湾を回収できないのに沖縄に手を出すと、日米は敵の敵は味方で、台湾地区の台北政権に手助けをしてしまうので損となる。
そして、戦時の列島線通過なら別に島を占領する必要はない。琉球列島の海空戦力を無効化すればよい。そこで上陸まですると、肝心の列島線を通過させる艦隊戦力を消耗させてしまう問題もある。そもそも、対日米戦でそこまででられるかは怪しい。実際は第一列島線以内に焦点をあてたA2ADではないかな。
沖縄基地問題については、せめては交換条件でのお願いだと思うよ。「中国との対峙があるので、嘉手納だけは置かせてくれ、だが何の役にも立たず評判の悪い海兵隊はアメリカに帰らせるから」あたりが落としどころなのだが。肝心の政府もそれを言い出せないあたりが沖縄問題で一番まずい所に見えるものだ。
なんにしても「中国の侵略が間近い」は新興宗教っぽさが一杯なんだよね。あの手の御宗旨は神仏キリスト系を問わず、たいがいが国難を主張する。そしてそれを真顔で他人に説くものだ。信仰はそういうものだからしかたがないが、それに雷同するネトウヨは相当に頭が悪いもんだ。
このあたり、宗教ではないが、宗教的的情熱からのアレ発言「原発停めると被災地が停電」と、それに雷同するネトウヨの構図と同じ話だ。
まあなんつーのかな、雷同するあたりで頭の中身が窺われるけどね。兵隊でも車と野球とサッカーの話しかできない奴は、産経や夕刊フジあたりを真に受ける。自称現実派としてこの種の宗教的発言を得として発言する。「中国の侵略が間近い」とか「原発停めると被災地が停電」とかね。海士や3曹ならばまだいいんだけどねえ。
白井聡、島口雅彦「国家の自殺を食い止められるか」『群像』2015.12月号(講談社,2015.12)pp.124-136.
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教科書問題は結構古い。今の自民党は戦後まもなくから内容に文句をつけている。
このあたりは先にも書いたことだ。昭和37年に朝日新聞に「現代教科書批判」* として貝塚茂樹さんが批判したというものだ。教科書問題から遠い貝塚さんのところに、いきなり『うれうべき教科書の問題』といったパンフが送られて来て、読んだ所唖然としたというものだ。
■ 卑弥呼は貢物を送っていない
そしてその大元となったパンフ、今の自民党が作った『うれうべき教科書の問題』** にはもっと露骨な内容がある。
「中国の歴史書の記述を日本の歴史教科書に載せるな」とあり、さらにそれは「ソ連中共を礼賛する」行為であるとしている。
たとえば、小学校6年生用の歴史教科書での記述である。
この部分を「ソ連中共を礼賛する」ものとして断じている。
要は、卑弥呼が貢物をしたことが、中国への隷属を示すもので気に食わないらしい。
だが、卑弥呼が奴隷を献じたことを示す偽書の記録を覆すまでの根拠はどこにもない。逆に卑弥呼が魏と敵礼(対等の礼儀)を示す根拠もない。そもそも、それでなければ聖徳太子が敵礼の国書を送ったことが、従来と違って対等を要求した点でトピックたりえないのだがね。
■ 律令も都市計画も日本オリジナル
ちなみに、その飛鳥時代以降にも『うれうべき教科書』は今では理解に苦しむ内容が続いている。
批判する点としては、つぎのような事例を挙げている
実際のところ、江戸中期までは中国は日本の手本であった。政治的な手本であることは徂徠が品川に引っ越した時、これで中華の地に近くなったと喜んだエピソードや、江戸期の刑法典の多くは中国の律を転用しているあたりで伺える。経済・文化的にも日本が追いつくべき先進地帯であった。
それを全部なかったことにして「日本は中国からの影響は受けていない」と言い出すのは不思議なものだ。
日本が、中国と並び追い抜くのは日清戦争以降のことだ。それはこの『うれうべき教科書』が書かれた60年ほど前のことに過ぎない。
その60年の経験と教育だけで、日本は中国よりも進んでいると思い込むのは、夜郎自大でしかない。
■ 神話を載せる歴史教科書
これらは歴史について、自分たちに心地よい記述以外は拒否する発想である。
そして、それは今でも続いている。アレ保守の教科書の偏向といった批判があるが、その中身をみると、自分たちにとって不都合なことは書くなというものだ。育鵬社の歴史教科書は全くそれだ。
だが、それを本統と思いこんでしまうとバカを見ることになる。
かつて、ソ連では飛行機は、テレビはロシア人が発明したと教科書に載っていたという。それを信じこんでしまうと、外に出て恥を書くだけの話だ。
いずれ育鵬社あたりもも、最初にグライダーを発明したのは岡山の幸吉とかいいだすのではないかね。あるいは土器は日本人の発明とかね。
で、それを採用しない教科書は売国的だと云い出すのだろう。
まあ、昔の自民は左右のバランスが取れていた。この手のことは守旧派がいいだすが、実務派は「本気で言い出すと馬鹿にされる」こと承知しているので無理押しはしない。現実的な必要性から教育二法は必要として推した。だが、そこから先の部分、神がかり教科書は推しもしなかった。
だが、今の自民には宗教右派しかいない。まず、昔以上にそういうことを言い出し、押し付けるのだろう。日本の前途と歴史教育を考える議員の会あたりの面子をみると、そう云い出すのも目に見えるものだ。例えば、今の義家副大臣は八重山教科書問題で石垣市をそそのかし、竹富町に育鵬社教科書を押し付けようとした張本人とも言われている。
* 貝塚茂樹「現代教科書批判」『朝日新聞』(朝日新聞,1962.12.21)朝刊p.9
** 『うれうべき教科書の問題』(日本民主党,1955.9)
このあたりは先にも書いたことだ。昭和37年に朝日新聞に「現代教科書批判」* として貝塚茂樹さんが批判したというものだ。教科書問題から遠い貝塚さんのところに、いきなり『うれうべき教科書の問題』といったパンフが送られて来て、読んだ所唖然としたというものだ。
■ 卑弥呼は貢物を送っていない
そしてその大元となったパンフ、今の自民党が作った『うれうべき教科書の問題』** にはもっと露骨な内容がある。
「中国の歴史書の記述を日本の歴史教科書に載せるな」とあり、さらにそれは「ソ連中共を礼賛する」行為であるとしている。
たとえば、小学校6年生用の歴史教科書での記述である。
まず、この『あかるい社会』[小学校6年、社会科用教科書]の日本歴史に関する記述は、中国の史書『魏史』にもとをおいて書き始めている。そして「三世紀のはじめにも、まだたくさんの国々がありましたが、そのなかで「ひみこ」という女王は、つかいを中国に送つて、どれいや織物をみつぎものにしました」(上刊一三ページ)と記している。
この教科書は、中国を正しいとしようとする現実の政治的意図から、中国の史書をもそのまま、正しいもののように取り扱い、あまつさえ、「ひみこ」が、中国にどれいや織物をみつぎものにしたと、断定的なものにして、わが国をえがいているのである。
『うれうべき教科書の問題』(1950.9)p.24
この部分を「ソ連中共を礼賛する」ものとして断じている。
要は、卑弥呼が貢物をしたことが、中国への隷属を示すもので気に食わないらしい。
だが、卑弥呼が奴隷を献じたことを示す偽書の記録を覆すまでの根拠はどこにもない。逆に卑弥呼が魏と敵礼(対等の礼儀)を示す根拠もない。そもそも、それでなければ聖徳太子が敵礼の国書を送ったことが、従来と違って対等を要求した点でトピックたりえないのだがね。
■ 律令も都市計画も日本オリジナル
ちなみに、その飛鳥時代以降にも『うれうべき教科書』は今では理解に苦しむ内容が続いている。
批判する点としては、つぎのような事例を挙げている
「代々の天皇の氏のかしらは、日本の王として、中国の皇帝にたびたびつかいを送って、みつぎものを差し出しました」(一六ページ)、「はじめて中国のやりかたをまねて」(二一ページ)、「中国の唐の都をまねて」(二三ページ)、「中国のすすんだ文化」(二三ページ)等々一連の記述を通じて[中共礼賛の態度が]あますところなく、いいあらわされているのである。
『うれうべき教科書の問題』(1950.9)p.24
実際のところ、江戸中期までは中国は日本の手本であった。政治的な手本であることは徂徠が品川に引っ越した時、これで中華の地に近くなったと喜んだエピソードや、江戸期の刑法典の多くは中国の律を転用しているあたりで伺える。経済・文化的にも日本が追いつくべき先進地帯であった。
それを全部なかったことにして「日本は中国からの影響は受けていない」と言い出すのは不思議なものだ。
日本が、中国と並び追い抜くのは日清戦争以降のことだ。それはこの『うれうべき教科書』が書かれた60年ほど前のことに過ぎない。
その60年の経験と教育だけで、日本は中国よりも進んでいると思い込むのは、夜郎自大でしかない。
■ 神話を載せる歴史教科書
これらは歴史について、自分たちに心地よい記述以外は拒否する発想である。
そして、それは今でも続いている。アレ保守の教科書の偏向といった批判があるが、その中身をみると、自分たちにとって不都合なことは書くなというものだ。育鵬社の歴史教科書は全くそれだ。
だが、それを本統と思いこんでしまうとバカを見ることになる。
かつて、ソ連では飛行機は、テレビはロシア人が発明したと教科書に載っていたという。それを信じこんでしまうと、外に出て恥を書くだけの話だ。
いずれ育鵬社あたりもも、最初にグライダーを発明したのは岡山の幸吉とかいいだすのではないかね。あるいは土器は日本人の発明とかね。
で、それを採用しない教科書は売国的だと云い出すのだろう。
まあ、昔の自民は左右のバランスが取れていた。この手のことは守旧派がいいだすが、実務派は「本気で言い出すと馬鹿にされる」こと承知しているので無理押しはしない。現実的な必要性から教育二法は必要として推した。だが、そこから先の部分、神がかり教科書は推しもしなかった。
だが、今の自民には宗教右派しかいない。まず、昔以上にそういうことを言い出し、押し付けるのだろう。日本の前途と歴史教育を考える議員の会あたりの面子をみると、そう云い出すのも目に見えるものだ。例えば、今の義家副大臣は八重山教科書問題で石垣市をそそのかし、竹富町に育鵬社教科書を押し付けようとした張本人とも言われている。
* 貝塚茂樹「現代教科書批判」『朝日新聞』(朝日新聞,1962.12.21)朝刊p.9
** 『うれうべき教科書の問題』(日本民主党,1955.9)
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昨日20日は第三水曜日で国立マンガ図書館は休み。汽車に乗って東京市内に入ったあとで気づいたので、営業のついでに大学図書館に行った。
相当久しぶりに「ワーカーズ・ヴァンガード」を読んだのだが、まあなかなかのもの。どんな新聞かというと、2面にレーニンの言葉とマルクスの言葉がいつも載っているようなアメリカのガチ左翼の新聞。
そこに「キューバでオバマは反革命に与した」との見出し。左派だから「キューバとの関係改善を評価する」立場かと思っていたら、さらに左。甘言を弄して資本主義の毒を注入する、ウエスタン・ポイズンみたいな中身だった。「キューバの新生児死亡率は米国よりも低い」のあとにあった記事だから、好意的かと思ったのだけどねえ。
大学図書館は書庫にも入れるし、市販され難い雑誌も開架展示されている。その点で国立マンガ図書館よりも便利で、特に古い雑誌もデジタル・コレクションとは異なり直接読めるのは便利でもある。もちろん蔵書数は少ないけれども。
それで見ていると、不断は読まないものが読める。食品関係だと、マレーシアではミロが長寿飲料だと考えれており、世界最大の消費国であるとか、沖縄では体の悪い部分にあわせた豚の部位を食べるとか、サルの丸焼きの写真とか、チンパンジーはサル食が強いみたいなやつね。
最初は、シンガポールのストレート・タイムスと星洲日報の読み比べでもしようと思っていたのだが。『ワーカーズ・ヴァンガード』読んで、食品関係の雑誌読んで、中文雑誌読んでいたらそれで終わった・
当日、飯田橋から神保町まで歩き、なんとなく神保町から早稲田まで歩き、せっかくだから早稲田から池袋まで歩いた。まあ10kmくらいだが、その分、食うからやせるものでもない。
相当久しぶりに「ワーカーズ・ヴァンガード」を読んだのだが、まあなかなかのもの。どんな新聞かというと、2面にレーニンの言葉とマルクスの言葉がいつも載っているようなアメリカのガチ左翼の新聞。
そこに「キューバでオバマは反革命に与した」との見出し。左派だから「キューバとの関係改善を評価する」立場かと思っていたら、さらに左。甘言を弄して資本主義の毒を注入する、ウエスタン・ポイズンみたいな中身だった。「キューバの新生児死亡率は米国よりも低い」のあとにあった記事だから、好意的かと思ったのだけどねえ。
大学図書館は書庫にも入れるし、市販され難い雑誌も開架展示されている。その点で国立マンガ図書館よりも便利で、特に古い雑誌もデジタル・コレクションとは異なり直接読めるのは便利でもある。もちろん蔵書数は少ないけれども。
それで見ていると、不断は読まないものが読める。食品関係だと、マレーシアではミロが長寿飲料だと考えれており、世界最大の消費国であるとか、沖縄では体の悪い部分にあわせた豚の部位を食べるとか、サルの丸焼きの写真とか、チンパンジーはサル食が強いみたいなやつね。
最初は、シンガポールのストレート・タイムスと星洲日報の読み比べでもしようと思っていたのだが。『ワーカーズ・ヴァンガード』読んで、食品関係の雑誌読んで、中文雑誌読んでいたらそれで終わった・
当日、飯田橋から神保町まで歩き、なんとなく神保町から早稲田まで歩き、せっかくだから早稲田から池袋まで歩いた。まあ10kmくらいだが、その分、食うからやせるものでもない。
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三重水素水を海洋放出・蒸発する話がでているのだが、本統にできるものかね?
経産も海洋放出・蒸発に話を持って行こうとしている様子にある。朝日新聞「トリチウム除去は困難、海放出が最短と評価 経産省部会」 からは、いつもの露骨に小さい数字を見せるアレが伺える。
「海洋放出は34億、蒸発は349億でできる、他の3884億-1000億は非現実的」と提示するアレだ。
そうすれば「海洋放出か、蒸発か」その二者選択に持って行きやすいためだ。
どうせ検討価格の操作をしている。海洋放出と蒸気を安めにして、地層注入やセメント固化を高めにしているのだろう。実際に価格をみても、おそらく海洋放出や蒸発放出はほぼ直接工事費だけで見積もっていて、それ以外は高めに間接工事費をみているのではないか。
■ 反対を加味すると、実現は困難
だが、実際に海洋放出や蒸発ができるものだろうか?
役人や職業政治家はそれで騙せるし、承知しつつ騙されてもくれる。政府レベルでの方針までにはできるだろう。
だが実行する段になると、政府外の抵抗は小さいものではない。対して漁民や国民、外国政府、海外を含むNGO等が納得するかどうかは相当に怪しい。このあたりは騙せないし、なかなか騙されてもくれないので、実行できるかは怪しい。
特に漁協は強く反対する。うち現地漁協や県漁連は補償できるが、茨城宮城千葉の漁協への保障は難しい。
外国の反対は厳しいだろう。以前、太平洋への汚染水垂れ流しはロシア、中国、韓国に苦情を言われた。米国もカナダもいい顔はしていなかった。蒸発でも大規模にやれば同じように怒るだろう。
昔、日本も怒っている。ロシアが不要になった原子炉を日本海に捨てたことがあるが、その時、日本がどういう反応をしたのかを思い出せばいいだろう。
それを考えれば、結局はどちらもできまいといった塩梅となる。それを無理に進めようとしても、その費用は34億(海洋放出)や349億(蒸発)では収まらないし、しかも金を出しても実現するかどうかも怪しい。
■ もう一つの選択肢「保管継続」
その点からすれば、表外選択肢を選ぶしかないのではないか。
具体的には保管継続がそれだ。5年で80万トンなら40年で640万トン、危険物でもないので別に保管できない数字ではない。
そして40年も貯めれば、最初の分は半減期を3回超える。そうすれば三重水素は1/8まで減る。汚染水のうち、相当量を占める低濃度分はそれで処理できる。レベルが自然放射線まで落ち着けば普通の水と同じだ。普通に海洋に捨てられるだろうし、あるいは敷地内に散水しても問題はない。
海流放出も蒸発も、保管継続には勝てないのではないか。実現性では保管がずば抜けて優位にあり、おそらくコストも大差はない。電力会社と経産省といった関係者のフラストレーションは溜まる話だが、今まで原発で甘い汁を吸った報いでもある。それは国民の知ったことではない。
経産も海洋放出・蒸発に話を持って行こうとしている様子にある。朝日新聞「トリチウム除去は困難、海放出が最短と評価 経産省部会」 からは、いつもの露骨に小さい数字を見せるアレが伺える。
「海洋放出は34億、蒸発は349億でできる、他の3884億-1000億は非現実的」と提示するアレだ。
そうすれば「海洋放出か、蒸発か」その二者選択に持って行きやすいためだ。
どうせ検討価格の操作をしている。海洋放出と蒸気を安めにして、地層注入やセメント固化を高めにしているのだろう。実際に価格をみても、おそらく海洋放出や蒸発放出はほぼ直接工事費だけで見積もっていて、それ以外は高めに間接工事費をみているのではないか。
■ 反対を加味すると、実現は困難
だが、実際に海洋放出や蒸発ができるものだろうか?
役人や職業政治家はそれで騙せるし、承知しつつ騙されてもくれる。政府レベルでの方針までにはできるだろう。
だが実行する段になると、政府外の抵抗は小さいものではない。対して漁民や国民、外国政府、海外を含むNGO等が納得するかどうかは相当に怪しい。このあたりは騙せないし、なかなか騙されてもくれないので、実行できるかは怪しい。
特に漁協は強く反対する。うち現地漁協や県漁連は補償できるが、茨城宮城千葉の漁協への保障は難しい。
外国の反対は厳しいだろう。以前、太平洋への汚染水垂れ流しはロシア、中国、韓国に苦情を言われた。米国もカナダもいい顔はしていなかった。蒸発でも大規模にやれば同じように怒るだろう。
昔、日本も怒っている。ロシアが不要になった原子炉を日本海に捨てたことがあるが、その時、日本がどういう反応をしたのかを思い出せばいいだろう。
それを考えれば、結局はどちらもできまいといった塩梅となる。それを無理に進めようとしても、その費用は34億(海洋放出)や349億(蒸発)では収まらないし、しかも金を出しても実現するかどうかも怪しい。
■ もう一つの選択肢「保管継続」
その点からすれば、表外選択肢を選ぶしかないのではないか。
具体的には保管継続がそれだ。5年で80万トンなら40年で640万トン、危険物でもないので別に保管できない数字ではない。
そして40年も貯めれば、最初の分は半減期を3回超える。そうすれば三重水素は1/8まで減る。汚染水のうち、相当量を占める低濃度分はそれで処理できる。レベルが自然放射線まで落ち着けば普通の水と同じだ。普通に海洋に捨てられるだろうし、あるいは敷地内に散水しても問題はない。
海流放出も蒸発も、保管継続には勝てないのではないか。実現性では保管がずば抜けて優位にあり、おそらくコストも大差はない。電力会社と経産省といった関係者のフラストレーションは溜まる話だが、今まで原発で甘い汁を吸った報いでもある。それは国民の知ったことではない。
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北村淳さんのJBPress記事「決定間近、オーストラリアは日本の潜水艦を選ぶのか」だが、最大静粛速力があがってもディーゼル潜では敵艦は追尾できないのではないか。
北村さんの記事は、豪新型潜水艦の選定についての良記事となっている。いつものような商業的理由からの過剰な安全保障重視の姿勢もなく、読み物としても面白いものだ。
だが、仏潜水艦の評価については引っかかるところがある。
の部分だ。
■ 水中全速は1時間がいいところ
まず、在来潜は水中全速ではおそらく1時間走れるかどうかである。その点から高速目標の追尾は現実的には不可能である。
水中航続距離は電池容量で決まるが、それで走れる距離は速力を増やせば増やすほど短くなる。水中抵抗は速力の自乗に応じて増加するためだ。
つまり、最大速力を出すとすぐに電池は尽きる。古い潜水艦では「水中16ktを出せるのは20分」といった話があった。
仮に今の潜水艦がフル充電で6倍の電池容量があったとしても、今の水中ダッシュ速力20kt(アップホルダー型)では1時間を走るのがせいぜいといったところだ。
電池容量が昔の10倍でも、電池充電が6割であればそれと変わらない。8割充電でも、実際には追いついた後の事を考えなければならない。まず水中最高速力1時間からそれほど進歩するものでもない。
仮に、ポンプジェット推進で水中静粛速力24ktを出せても、30分や40分で電池が切れるだろう。ポンプジェットは水中静粛性は上がるが、推進効率は大径のスクリューには劣る。燃費の悪い推進方法であるためだ。
これでは追尾ができる状態とはならない。
■ 距離も速力も分からない
また、潜水艦からは敵艦の速力やその距離が分かりがたい。このため足の短い在来潜ではため、全速追尾はしがたいといった問題もある。
潜水艦からは目標の距離はよくわからない。基本パッシブ探知であり、目標方位はわかるが距離は漠然としたものであり、長時間観測してある程度推測できるものに過ぎないためだ。
また、速力も分からない。低速であるか、高速を出しているかどうかくらいは分かるだろう。だが、それが何ノットかまでは断言しがたい。
つまり、距離や速力が分からない「高速の水上戦闘艦」(北村)の場合、仮に水中静粛速力24kt程度で追いつけるかどうかは全くわからないのである。目標が20ノット以上の目標については、2マイル以上離れていれば追いつけない。そこで全速出して追尾はしないというころだ。
逆に言えば、目の前を通り過ぎた「高速の水上戦闘艦」を30分追いかけられるかどうかといったものだ。もちろん距離が近いので、アクティブ/パッシブ探知される可能性も高い。
この点でも、追尾できるといった主張はあまり意味は無いのである。
■ 旧ソ連でも作れる
そして最後が、ポンプジェットは大した技術ではないということだ。
北村さんは「原子力潜水艦に比べて小型の通常動力潜水艦にポンプジェット推進システムを搭載できる技術力を持っているのはDCNSだけである。」(北村)と述べている。
だが、在来潜へのポンプジェット推進適用については、ソ連/ロシアのキロ級に前例がある。初期型の1隻がポンプジェット推進となっている。
この点でも、フランス潜水艦への評価については疑問を覚えるものだ。
もちろん「フランスは実用できるといっている」と意見するかもしれないが、そのフランスも実際にポンプジェット推進の在来潜は作っていない。
そして、日独もポンプジェットを作れと言われれば作るだろう。この辺り、イギリスから技術を買えば済む話であるためだ。ただ、推進効率の低下により、水中航続距離が短くなるからやりたくないだけの話である。
■ いつものお約束
以上が、仏潜水艦の評価については引っかかる点だ。
他にも、豪潜水艦の使い方についても踏み込みが悪い点も、ちょっと物足りない部分ではある。*
だが、今回の記事が良記事であることを否定するものではない。
北村さんの記事ついて書く時のお約束だが、北村さんの記事は、読む価値はある記事ではある。調べることや、言及するべきことはしっかり踏んでいる。その中で媒体への適応があり、商業的なバイアスがかかっているのが残念といったものだ。(今回、そのようなバイアスはない)
この点、井上和彦さんや桜林美佐さんのような、愛国エンターテインメント読み物とはぜんぜん違う。中身もなければ志もない上、全く調べ物もしないものとは一線を画している。その点で褒めるし、一読すべきと勧めるものである。
* もちろん、「EEZを守るために潜水艦を買うのです」のようなアレに較べれば相当にしっかりした書きぶりではある。
北村さんの記事は、豪新型潜水艦の選定についての良記事となっている。いつものような商業的理由からの過剰な安全保障重視の姿勢もなく、読み物としても面白いものだ。
だが、仏潜水艦の評価については引っかかるところがある。
もし、追尾する目標が原子力潜水艦や高速の水上戦闘艦であった場合、「そうりゅう」や「タイプ216」はいくら高精度のソナーを備えており静粛性や潜航深度が優れていたとしても、プロペラ推進潜水艦である以上、絶対に追尾することはできない。
しかしながら、DCNSは小型原子力潜水艦建造で培ったポンプジェット推進(ウォータージェット推進)技術を「ショートフィン・バラクーダ」に導入することができる。このため、通常動力潜水艦とはいえ海中でも高速で敵艦を追尾攻撃することが可能である。原子力潜水艦に比べて小型の通常動力潜水艦にポンプジェット推進システムを搭載できる技術力を持っているのはDCNSだけである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46571?page=4
の部分だ。
■ 水中全速は1時間がいいところ
まず、在来潜は水中全速ではおそらく1時間走れるかどうかである。その点から高速目標の追尾は現実的には不可能である。
水中航続距離は電池容量で決まるが、それで走れる距離は速力を増やせば増やすほど短くなる。水中抵抗は速力の自乗に応じて増加するためだ。
つまり、最大速力を出すとすぐに電池は尽きる。古い潜水艦では「水中16ktを出せるのは20分」といった話があった。
仮に今の潜水艦がフル充電で6倍の電池容量があったとしても、今の水中ダッシュ速力20kt(アップホルダー型)では1時間を走るのがせいぜいといったところだ。
電池容量が昔の10倍でも、電池充電が6割であればそれと変わらない。8割充電でも、実際には追いついた後の事を考えなければならない。まず水中最高速力1時間からそれほど進歩するものでもない。
仮に、ポンプジェット推進で水中静粛速力24ktを出せても、30分や40分で電池が切れるだろう。ポンプジェットは水中静粛性は上がるが、推進効率は大径のスクリューには劣る。燃費の悪い推進方法であるためだ。
これでは追尾ができる状態とはならない。
■ 距離も速力も分からない
また、潜水艦からは敵艦の速力やその距離が分かりがたい。このため足の短い在来潜ではため、全速追尾はしがたいといった問題もある。
潜水艦からは目標の距離はよくわからない。基本パッシブ探知であり、目標方位はわかるが距離は漠然としたものであり、長時間観測してある程度推測できるものに過ぎないためだ。
また、速力も分からない。低速であるか、高速を出しているかどうかくらいは分かるだろう。だが、それが何ノットかまでは断言しがたい。
つまり、距離や速力が分からない「高速の水上戦闘艦」(北村)の場合、仮に水中静粛速力24kt程度で追いつけるかどうかは全くわからないのである。目標が20ノット以上の目標については、2マイル以上離れていれば追いつけない。そこで全速出して追尾はしないというころだ。
逆に言えば、目の前を通り過ぎた「高速の水上戦闘艦」を30分追いかけられるかどうかといったものだ。もちろん距離が近いので、アクティブ/パッシブ探知される可能性も高い。
この点でも、追尾できるといった主張はあまり意味は無いのである。
■ 旧ソ連でも作れる
そして最後が、ポンプジェットは大した技術ではないということだ。
北村さんは「原子力潜水艦に比べて小型の通常動力潜水艦にポンプジェット推進システムを搭載できる技術力を持っているのはDCNSだけである。」(北村)と述べている。
だが、在来潜へのポンプジェット推進適用については、ソ連/ロシアのキロ級に前例がある。初期型の1隻がポンプジェット推進となっている。
この点でも、フランス潜水艦への評価については疑問を覚えるものだ。
もちろん「フランスは実用できるといっている」と意見するかもしれないが、そのフランスも実際にポンプジェット推進の在来潜は作っていない。
そして、日独もポンプジェットを作れと言われれば作るだろう。この辺り、イギリスから技術を買えば済む話であるためだ。ただ、推進効率の低下により、水中航続距離が短くなるからやりたくないだけの話である。
■ いつものお約束
以上が、仏潜水艦の評価については引っかかる点だ。
他にも、豪潜水艦の使い方についても踏み込みが悪い点も、ちょっと物足りない部分ではある。*
だが、今回の記事が良記事であることを否定するものではない。
北村さんの記事ついて書く時のお約束だが、北村さんの記事は、読む価値はある記事ではある。調べることや、言及するべきことはしっかり踏んでいる。その中で媒体への適応があり、商業的なバイアスがかかっているのが残念といったものだ。(今回、そのようなバイアスはない)
この点、井上和彦さんや桜林美佐さんのような、愛国エンターテインメント読み物とはぜんぜん違う。中身もなければ志もない上、全く調べ物もしないものとは一線を画している。その点で褒めるし、一読すべきと勧めるものである。
* もちろん、「EEZを守るために潜水艦を買うのです」のようなアレに較べれば相当にしっかりした書きぶりではある。
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いまさら「核燃料そのものが危険だから、運転を停止しても安全にならない」と言い出すのは何事だろうか。
件の原発擁護主張では、仲間内で誰かが思いついたことを皆でオウム返しにする傾向がある。ここ1-2日でも誰かが思いついだだろう屁理屈を再生産している。「原発が操業停止しても、核燃料は崩壊熱を出し続けるから危険なことは変わらない」として「だから川内を止める必要はない」がそれだ。
オウム返しの好例は、これだ。五年前から原発擁護のポップであるRyoko174さんの発言である。
だが「原発停止さえすれば核燃料があっても安全」(Ryoko174)、つまり「運転を止めても安全にならない」は詭弁でしかない。安全性の裏の概念である危険性でみれば、桁違いに下がるためだ。
操業中で一次系統が高圧である状態と、冷温停止が達成されて大気圧の状態、どちらが安全だろうか? 間違いなく後者だ。
操業中に地震を食らえば、大惨事につながるおそれは大きい。一次系の配管等が破断すれば周りの補機や安全機構をふっ飛ばし、あるいは放射能を含んだ蒸気が発電所の建築物から外に漏れるといった事態が起こりえるためだ。そもそも、大地震でキチンと制御棒が降りるかといった問題もある。さらには管理している電力会社が逃げる可能性もあってアテにならない。
停止状態であれば、危険度は2-3桁は小さくなる。冷温停止はほぼ大気圧である。仮に配管破断があっても水が流れるだけであり、遠隔監視・操作の計装関連も生き残る。さらに蒸気火災のおそれもない。緩慢な崩壊熱にだけ対応できれば、気体も含めた放射能は建物内で食い止めることもできるだろう。
操業状態と停止状態の危険性を天秤にかけず「どちらも危険なので同じ」と言い出すのは相当にどうかしている。
薬でラリって運転している状態に対して「薬物だけでも危険なのだから、薬物運転をやめさせても意味はない」(Ryoko174)というようなものだ。
その後の「原発に関する法律やルールは破ってもよし」(Ryoko174)という言いがかりもいやらしさにあふれている。
Ryoko174さんはその後にもこのように述べている。
このあたりは田舎の小学校の女教師の言い分に似ている。「ルールを破ることへの罪悪感あるいは忌避感」を無理やり想起させようとするアレだ。
だが、そのルールは運転条件として電力会社が縛られるだけものに過ぎない。
それ以上でもないし、それ以下でもない。
当然だが、それをもって反対者を封じ込められるルールではない。「漁業規則に従って産卵期のマグロをとっている」と主張し、そこから「その『マグロ漁をやめろ』という反対意見は、漁業規則で決まったことへのルール違反だ」というようなものでしかない。
そもそも、法律どころか、省令や施行規則以下のルールを振り回して正当化しようとするあたりがおかしなものだ。
その点で、ryoko174さんの主張は「ユダヤ人をガス室に送るのは組織のルールだったから、ボク無罪」(アイヒマン)の主張と同レベルにある。
おそらくryoko174さんは次の事故の時にもいけしゃあしゃあというのだろう「原子力は国策であって運転はルールで認められていた。だから、停止するなといった発言は誤りではない、私は道義的に無罪」とかね。まあ、小役人というか、小学校の女教師の言い分や振る舞いに似ていることだよ。
件の原発擁護主張では、仲間内で誰かが思いついたことを皆でオウム返しにする傾向がある。ここ1-2日でも誰かが思いついだだろう屁理屈を再生産している。「原発が操業停止しても、核燃料は崩壊熱を出し続けるから危険なことは変わらない」として「だから川内を止める必要はない」がそれだ。
オウム返しの好例は、これだ。五年前から原発擁護のポップであるRyoko174さんの発言である。
ryoko174@ryoko174
福島原発事故からもう5年が経つのに、下記のような「新たな安全神話」から抜けられない人が目立つことは残念なことです。
・原発停止さえすれば核燃料があっても安全
・そのためには災害時の電力不足リスクも無視していい
・原発に関する法律やルールは破ってもよし
https://twitter.com/ryoko174/status/721530790761201665?lang=ja
だが「原発停止さえすれば核燃料があっても安全」(Ryoko174)、つまり「運転を止めても安全にならない」は詭弁でしかない。安全性の裏の概念である危険性でみれば、桁違いに下がるためだ。
操業中で一次系統が高圧である状態と、冷温停止が達成されて大気圧の状態、どちらが安全だろうか? 間違いなく後者だ。
操業中に地震を食らえば、大惨事につながるおそれは大きい。一次系の配管等が破断すれば周りの補機や安全機構をふっ飛ばし、あるいは放射能を含んだ蒸気が発電所の建築物から外に漏れるといった事態が起こりえるためだ。そもそも、大地震でキチンと制御棒が降りるかといった問題もある。さらには管理している電力会社が逃げる可能性もあってアテにならない。
停止状態であれば、危険度は2-3桁は小さくなる。冷温停止はほぼ大気圧である。仮に配管破断があっても水が流れるだけであり、遠隔監視・操作の計装関連も生き残る。さらに蒸気火災のおそれもない。緩慢な崩壊熱にだけ対応できれば、気体も含めた放射能は建物内で食い止めることもできるだろう。
操業状態と停止状態の危険性を天秤にかけず「どちらも危険なので同じ」と言い出すのは相当にどうかしている。
薬でラリって運転している状態に対して「薬物だけでも危険なのだから、薬物運転をやめさせても意味はない」(Ryoko174)というようなものだ。
その後の「原発に関する法律やルールは破ってもよし」(Ryoko174)という言いがかりもいやらしさにあふれている。
Ryoko174さんはその後にもこのように述べている。
ryoko174@ryoko174
被災者の不幸を燃料にして、反原発や特定人種差別のようなエゴを訴求する愉快犯にはどんな対処をすればよいのでしょう?
いつの時代もそういう人は存在するので根絶はできない。今回は無視する方針ですが、それが正しいのか確信はありません。
彼らに効果的に対処する仕組みが欲しい
https://twitter.com/ryoko174/status/721535101490700288?lang=ja
このあたりは田舎の小学校の女教師の言い分に似ている。「ルールを破ることへの罪悪感あるいは忌避感」を無理やり想起させようとするアレだ。
だが、そのルールは運転条件として電力会社が縛られるだけものに過ぎない。
それ以上でもないし、それ以下でもない。
当然だが、それをもって反対者を封じ込められるルールではない。「漁業規則に従って産卵期のマグロをとっている」と主張し、そこから「その『マグロ漁をやめろ』という反対意見は、漁業規則で決まったことへのルール違反だ」というようなものでしかない。
そもそも、法律どころか、省令や施行規則以下のルールを振り回して正当化しようとするあたりがおかしなものだ。
その点で、ryoko174さんの主張は「ユダヤ人をガス室に送るのは組織のルールだったから、ボク無罪」(アイヒマン)の主張と同レベルにある。
おそらくryoko174さんは次の事故の時にもいけしゃあしゃあというのだろう「原子力は国策であって運転はルールで認められていた。だから、停止するなといった発言は誤りではない、私は道義的に無罪」とかね。まあ、小役人というか、小学校の女教師の言い分や振る舞いに似ていることだよ。
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「原発の電気でなければ吸引器は使えない」(タクラミックス)とは、奇妙な主張だ。
これはタクラミックスさんによる、災害の機会に乗じての原発擁護あるいは反・反原発主張である。具体的は次のようなものだ
とは「原発の電気でなければ吸引器は使えない」との言い分にほかならない。
そもそも電力は不足していない。今動いているのは川内原発の2基であり、これは日本の総発電能力の1-2%でしかない。そして4月は電力需要が低い時期でもある。九州電力の電力需要をみると4月は年間最低であり、真夏のピークの65%でしかない。そこで「電力不足で吸引器が使えない」といった事態はない。
現地で停電しているのは、電気火災が怖いので通電できないだけの話だ。当然だが、原発がいくら電力を作っても市内に送電できなければ停電は解消しない。
必要な物は原発電力ではなく、被災現場で医療機器を動かすための無停電装置と非常発電機にある。それがなければ原発を動かしても医療機器は動かせないし、それがあれば原発がどうなろうが医療機器は動く。
そのうち、「原発の電力でなければ、ご飯は炊けない」とか「米の味が落ちる」とか言い出すのだろうよ。
なによりも「非常時」といえば通ると考える点、雰囲気に乗じようとする卑しさしかない。「この非常時に原発を止めろと電力会社に要求した人物が居る。」(タクラミックス)といった告発じみた発言には、それに付和雷同する連中同様に品性下劣を示すものだ。
「非常時」の本心も、まずは自然災害を原発擁護のチャンスみて、そこでウソをついて反原発運動に打撃を与えようとするものなのだろう。
これはタクラミックスさんによる、災害の機会に乗じての原発擁護あるいは反・反原発主張である。具体的は次のようなものだ
吸引器が停電で使えず、お亡くなりになった方がの報道…電力供給の危機は命に直結する危機なのだ。
ところが、この非常時に原発を止めろと電力会社に要求した人物が居る。
https://twitter.com/takuramix/status/721152912689266688?lang=ja
とは「原発の電気でなければ吸引器は使えない」との言い分にほかならない。
そもそも電力は不足していない。今動いているのは川内原発の2基であり、これは日本の総発電能力の1-2%でしかない。そして4月は電力需要が低い時期でもある。九州電力の電力需要をみると4月は年間最低であり、真夏のピークの65%でしかない。そこで「電力不足で吸引器が使えない」といった事態はない。
現地で停電しているのは、電気火災が怖いので通電できないだけの話だ。当然だが、原発がいくら電力を作っても市内に送電できなければ停電は解消しない。
必要な物は原発電力ではなく、被災現場で医療機器を動かすための無停電装置と非常発電機にある。それがなければ原発を動かしても医療機器は動かせないし、それがあれば原発がどうなろうが医療機器は動く。
そのうち、「原発の電力でなければ、ご飯は炊けない」とか「米の味が落ちる」とか言い出すのだろうよ。
なによりも「非常時」といえば通ると考える点、雰囲気に乗じようとする卑しさしかない。「この非常時に原発を止めろと電力会社に要求した人物が居る。」(タクラミックス)といった告発じみた発言には、それに付和雷同する連中同様に品性下劣を示すものだ。
「非常時」の本心も、まずは自然災害を原発擁護のチャンスみて、そこでウソをついて反原発運動に打撃を与えようとするものなのだろう。
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昨晩の地震以降、アレ右派のアレな発言が続いているのだがよくいえたものだ。
■ ○○人が毒
一つは「○○人が井戸に毒を入れた」というアレ。水道全盛の当節、井戸はない。あっても電動ポンプやらイオン交換による鉄分除去もついている。毒を入れられるような水面が開放されている井戸なんかありはしない。墓場の水汲み用がいいところだ。
■ 原発止めても問題はなし
もう一つは「原発を止めたら電力が不足する」というアレ。
現地電力が不足することはない。今時動いているのは川内2基だけ。止めたところで電力需給に影響はない。あっても他方面からの送電で終わる。
それを、さも「ボクは被災地のためにそう言っている」といった偽善には反吐が出るものだ。例えばこれがそれだ
結局は追いつめられた原発擁護の機会的発言にすぎない。
■ 菅首相の邪魔をしたのはアレだ
あともう一つが、かつて自民が政府の足を引っ張ったことの隠蔽。具体的には東日本大震災で安倍がやったことを隠蔽している。
産経が勝ち誇って「災害最中に民進党公式ツイッターで自民党批判!? 東日本大震災時に『自民議員がデマ流して政権引っ張った』」としている。
だが、今の安倍首相がそれをやったことは頬かむりしている。あるいは都合よく忘れているかのどちらかだろう。具体的には、菅首相への海水注入問題での攻撃や、事実無根であった韓国隠し子問題がそれだ。
■ 体制と同一化したい願望
この種の発言は、体制と同一化したい連中が毎回繰り返しているものだ。反・反体制といってもよい。本来の主張としては粗雑がすぎるため、災害のような事態が発生した時にそれに便乗しようというものだ。
その結果が「○○人が毒」であり、「原発を止めると人が死ぬ」であり、「菅首相の足を引っ張った安倍の行為への頬かむり」である。本人たちは大義であると考えているのだろうが、機会主義にあわせたデマ以外の何物でもない。
なによりもそれを複数の幹部隊員が嬉々としてツィートしているのをみると、価値判断がお仕着せのライト・イズ・ライトなのだろうと軽蔑するものだ。大抵が軍クラとやらでSFファンを兼ねていて、技術の読み物ばかりで人文科学とか社会科学とか全然ご存じないのもねえ。
■ ○○人が毒
一つは「○○人が井戸に毒を入れた」というアレ。水道全盛の当節、井戸はない。あっても電動ポンプやらイオン交換による鉄分除去もついている。毒を入れられるような水面が開放されている井戸なんかありはしない。墓場の水汲み用がいいところだ。
■ 原発止めても問題はなし
もう一つは「原発を止めたら電力が不足する」というアレ。
現地電力が不足することはない。今時動いているのは川内2基だけ。止めたところで電力需給に影響はない。あっても他方面からの送電で終わる。
それを、さも「ボクは被災地のためにそう言っている」といった偽善には反吐が出るものだ。例えばこれがそれだ
こんな時に電力供給減らしたら、それこそ人が死ぬんだがなぁ…。
https://twitter.com/takuramix/status/720686890995744768?lang=ja
結局は追いつめられた原発擁護の機会的発言にすぎない。
■ 菅首相の邪魔をしたのはアレだ
あともう一つが、かつて自民が政府の足を引っ張ったことの隠蔽。具体的には東日本大震災で安倍がやったことを隠蔽している。
産経が勝ち誇って「災害最中に民進党公式ツイッターで自民党批判!? 東日本大震災時に『自民議員がデマ流して政権引っ張った』」としている。
(民進党のツイッターが)「多くの議員が与野党なく災害対応に協力した中で、一部の自民党の有力議員が原発対応についてデマを流して政権の足を引っ張ったのも有名な話です」とも投稿した。具体的な根拠は示さなかった。
だが、今の安倍首相がそれをやったことは頬かむりしている。あるいは都合よく忘れているかのどちらかだろう。具体的には、菅首相への海水注入問題での攻撃や、事実無根であった韓国隠し子問題がそれだ。
■ 体制と同一化したい願望
この種の発言は、体制と同一化したい連中が毎回繰り返しているものだ。反・反体制といってもよい。本来の主張としては粗雑がすぎるため、災害のような事態が発生した時にそれに便乗しようというものだ。
その結果が「○○人が毒」であり、「原発を止めると人が死ぬ」であり、「菅首相の足を引っ張った安倍の行為への頬かむり」である。本人たちは大義であると考えているのだろうが、機会主義にあわせたデマ以外の何物でもない。
なによりもそれを複数の幹部隊員が嬉々としてツィートしているのをみると、価値判断がお仕着せのライト・イズ・ライトなのだろうと軽蔑するものだ。大抵が軍クラとやらでSFファンを兼ねていて、技術の読み物ばかりで人文科学とか社会科学とか全然ご存じないのもねえ。
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「ゲームで軍艦旗が使えない」「反日だ」と文句をいってどうなるものでもない。「嫌ならやるな」で終わる話だ。
『水交』(旧日本海軍の士官の親睦会、水交会の会誌)に「ここまでやるのか嫌日運動 -旭日旗を巡るある騒動について」(この本文中では著者名は秘す)といったゲームについての記事があるが、まずは件の歴史戦の一人相撲をでるものではない。
■ 憤るだけで改善策なし
記事の骨子は 「ロシアの軍艦ゲームで日本軍艦が軍艦旗を使えず、艦尾や戦闘旗が日章旗になる、これは韓国の反日運動だ」と憤るものだ。
だが、たかがゲームでの旗の表記に難癖つけて憤れるのが不思議である。
まず、商売的判断に反日と責める点、焦点がおかしい。ゲーム屋も商売である。歴史的に旭日旗に拒絶感を持つ地域で商売するに「そうするべき」と考えただけだ。フランスにメッシャーシュミットのプラモデルを輸出するとき、ハーケンクロイツを鉄十字に変えるといった配慮の域をでるものではない。それを殊更に反日といってどうするのだろうか?
また、ゲームでの軍艦のモデリングだけに史実を求める姿勢もおかしい。『水交』記事の筆者は「ゲームの方針である『史実に忠実にそぐわない』」と言っている。だが、第二次世界大戦の時の軍艦が至近距離でタイマンを貼るゲームが史実だろうか? そこで軍艦の形、旗がかつての日本軍艦と違うといってもあまり意味はない話である。
なによりも、憤るだけで終わっている。記事は「韓国が悪い、ゲーム屋が悪い」に終止している。韓国側の主張と、ゲーム屋による日章旗化について、記事は「反日キャンペーンの一つの実績として喧伝していることにもなるだろう」と述べているが、本筋に対する反論はどこにもない。
憤りで終わり、問題の改善にも全く資していない。本来なら、「軍艦旗と日本軍国主義は別であると主張すべき」とか「アジア侵略と決別した日本の自衛隊によって長年使われ、世界中に受け入れられている事実を宣伝すべき」くらいは書くものだが、それは全く無い。
■ 嫌ならやらなければいいといわれるだけ
そもそも、商売づくの判断に食って掛かって相手にされると思っているのだろうか? このあたりも一人相撲を窺わせるものだ。
ゲーム屋は商売づくである。韓国やそれに似た立場の国、中国やシンガポール、フィリピン、マレーシア、タイでの反日感情を躱そうと工夫をした。同時に日本市場も失わないようにするために日章旗にした。それで問題は厄介払いできるし、それ以上の文句は知らぬ存ぜぬで済まそうと判断したものだ。
それに不満をもって「日本人に不公平」と言い出しても「嫌ならゲームやらなければいいだろう」と言われるだけの話だ。傍目に見てもそのようにしか見えない。
所詮はピコピコの話にすぎない。士大夫はそんなことには関わりにはならないものだ。そこに「反日」やら「中韓の策動」といいだし、一人相撲で奮闘したところで恥をさらすだけに終わる。
この点も産経のやっている歴史戦と変わらない。まず兵役経験無しが感情的になって軍隊擁護をする点でも歴史戦に似ている。記事筆者はおそらく従軍経験はない。末尾に出身期別等がないことと、基本は若手がやるゲームの話なので一般会員の投稿だろう。
そして現実的な利益も得られないところも、歴史戦そっくりである。結局は、映画やアニメやゲームやら模型での描写の範囲で、軍艦の尊厳とか持ち出したものにすぎない。それで何かの現実的利益が失われたわけでもないし、何かを達成しても現実的利益が得られるわけでもない。
いずれオウンゴールをするのではないかといったところも、歴史戦を踏襲するだろう。兵隊行ったことのない人が日本軍隊の名誉とか言い出して、軍隊のやらかしたことアクロバット擁護し、傷口に塩を塗り込めることで日本軍隊の名声をさらに落としてしまっている。それと似たようなことになるのではないかと心配するものだ。
岡野裕「ここまでやるのか嫌日運動 -旭日旗を巡るある騒動について」『水交』2016新春号(水交会,2016.1)pp.68-69.
『水交』(旧日本海軍の士官の親睦会、水交会の会誌)に「ここまでやるのか嫌日運動 -旭日旗を巡るある騒動について」(この本文中では著者名は秘す)といったゲームについての記事があるが、まずは件の歴史戦の一人相撲をでるものではない。
■ 憤るだけで改善策なし
記事の骨子は 「ロシアの軍艦ゲームで日本軍艦が軍艦旗を使えず、艦尾や戦闘旗が日章旗になる、これは韓国の反日運動だ」と憤るものだ。
だが、たかがゲームでの旗の表記に難癖つけて憤れるのが不思議である。
まず、商売的判断に反日と責める点、焦点がおかしい。ゲーム屋も商売である。歴史的に旭日旗に拒絶感を持つ地域で商売するに「そうするべき」と考えただけだ。フランスにメッシャーシュミットのプラモデルを輸出するとき、ハーケンクロイツを鉄十字に変えるといった配慮の域をでるものではない。それを殊更に反日といってどうするのだろうか?
また、ゲームでの軍艦のモデリングだけに史実を求める姿勢もおかしい。『水交』記事の筆者は「ゲームの方針である『史実に忠実にそぐわない』」と言っている。だが、第二次世界大戦の時の軍艦が至近距離でタイマンを貼るゲームが史実だろうか? そこで軍艦の形、旗がかつての日本軍艦と違うといってもあまり意味はない話である。
なによりも、憤るだけで終わっている。記事は「韓国が悪い、ゲーム屋が悪い」に終止している。韓国側の主張と、ゲーム屋による日章旗化について、記事は「反日キャンペーンの一つの実績として喧伝していることにもなるだろう」と述べているが、本筋に対する反論はどこにもない。
憤りで終わり、問題の改善にも全く資していない。本来なら、「軍艦旗と日本軍国主義は別であると主張すべき」とか「アジア侵略と決別した日本の自衛隊によって長年使われ、世界中に受け入れられている事実を宣伝すべき」くらいは書くものだが、それは全く無い。
■ 嫌ならやらなければいいといわれるだけ
そもそも、商売づくの判断に食って掛かって相手にされると思っているのだろうか? このあたりも一人相撲を窺わせるものだ。
ゲーム屋は商売づくである。韓国やそれに似た立場の国、中国やシンガポール、フィリピン、マレーシア、タイでの反日感情を躱そうと工夫をした。同時に日本市場も失わないようにするために日章旗にした。それで問題は厄介払いできるし、それ以上の文句は知らぬ存ぜぬで済まそうと判断したものだ。
それに不満をもって「日本人に不公平」と言い出しても「嫌ならゲームやらなければいいだろう」と言われるだけの話だ。傍目に見てもそのようにしか見えない。
所詮はピコピコの話にすぎない。士大夫はそんなことには関わりにはならないものだ。そこに「反日」やら「中韓の策動」といいだし、一人相撲で奮闘したところで恥をさらすだけに終わる。
この点も産経のやっている歴史戦と変わらない。まず兵役経験無しが感情的になって軍隊擁護をする点でも歴史戦に似ている。記事筆者はおそらく従軍経験はない。末尾に出身期別等がないことと、基本は若手がやるゲームの話なので一般会員の投稿だろう。
そして現実的な利益も得られないところも、歴史戦そっくりである。結局は、映画やアニメやゲームやら模型での描写の範囲で、軍艦の尊厳とか持ち出したものにすぎない。それで何かの現実的利益が失われたわけでもないし、何かを達成しても現実的利益が得られるわけでもない。
いずれオウンゴールをするのではないかといったところも、歴史戦を踏襲するだろう。兵隊行ったことのない人が日本軍隊の名誉とか言い出して、軍隊のやらかしたことアクロバット擁護し、傷口に塩を塗り込めることで日本軍隊の名声をさらに落としてしまっている。それと似たようなことになるのではないかと心配するものだ。
岡野裕「ここまでやるのか嫌日運動 -旭日旗を巡るある騒動について」『水交』2016新春号(水交会,2016.1)pp.68-69.
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秋山ちえ子さんが亡くなった。99という。天寿としかいいようもない。10年ほど前までにはTBSラジオで朝の10時に「秋山ちえ子の談話室」をしていた。その中で8月15日あるいはその最前の金曜日に「かわいそうな象」の朗読をしていた。
「かわいそうな象」は、ある世代まではどこかしかで聞いていた話だ。戦時中の猛獣処分で上野の動物園の象のトンキー、ワンリー、ジョンを殺す話だ。空襲檻が壊れて暴れたらどうするといった話や、食糧事情が破断点に近づいている段階でその餌が準備できないといった問題があり、それを悲劇的に描いている。そのあと一九年末から東京以下の大都市が空襲に襲われること、その戦争被害が東京他の市民にも降りかかったことを作者も読者も承知した上での作品である。
だが、最近の世代はこの話をあまりご存じがない。なんとなく思いつき、同人誌のまえがきに「かわいそうなシャチ」を書いたことがあるが、それを事実と思い込む世代がいた。四〇の世代には象の話が元だと判るのだが、20代には分からないという。
その世代がリアルと考える戦争とはどんなものなのか。
少なくとも威勢のいい連中やそこに末期戦と言い出す連中はその不利益と利益を秤にはかけられていない。 メカミリの類のファンはオレは戦争を知っているというが、彼ら戦争感は例えばこのようなものだ(発言主の名は秘す)
と、どこにもまったく具体性がない。その上、リツイートしている連中もそれに「ほんとこれな。」とか言いながら、例えば末期戦といった奇妙なモデルを振り回しているのだがら言っているのだから表面ヅラでよさ気なこと、「いいこと風」を言っているにすぎない。
実際には戦争末期はどこもやる気はなくなる。軍隊も戦闘はなるべく回避しようと考えるし、軍民ともに戦後がどうなるかを考えての行動にでる。「歴史を知ることにより戦争を知」るといいながらも、まずは何も見えていないのだろう。
なんにせよ戦争被害と戦闘継続の利益を秤に掛けられていない。末期戦と言い出すような連中が言い出す戦争のリアルはその程度ということだ。だから、絶望的な状況で最後まで戦うさまは美しいといったことをいいだすのだろう。まあ死ぬのはともかく、それなら一人でどうにかすればよかった宇垣さんについて、その巻添死を褒める手合と大差もないものだ。
「かわいそうな象」は、ある世代まではどこかしかで聞いていた話だ。戦時中の猛獣処分で上野の動物園の象のトンキー、ワンリー、ジョンを殺す話だ。空襲檻が壊れて暴れたらどうするといった話や、食糧事情が破断点に近づいている段階でその餌が準備できないといった問題があり、それを悲劇的に描いている。そのあと一九年末から東京以下の大都市が空襲に襲われること、その戦争被害が東京他の市民にも降りかかったことを作者も読者も承知した上での作品である。
だが、最近の世代はこの話をあまりご存じがない。なんとなく思いつき、同人誌のまえがきに「かわいそうなシャチ」を書いたことがあるが、それを事実と思い込む世代がいた。四〇の世代には象の話が元だと判るのだが、20代には分からないという。
その世代がリアルと考える戦争とはどんなものなのか。
少なくとも威勢のいい連中やそこに末期戦と言い出す連中はその不利益と利益を秤にはかけられていない。 メカミリの類のファンはオレは戦争を知っているというが、彼ら戦争感は例えばこのようなものだ(発言主の名は秘す)
ミリオタが兵器は好きで戦争が嫌いになる理由?
簡単さ。ミリオタは兵器を知るにつれ歴史も知り、
歴史を知ることにより戦争を知り、
他の人より戦争の闇を見るからな。必然的に戦争が嫌いになる。
(リンク先)
と、どこにもまったく具体性がない。その上、リツイートしている連中もそれに「ほんとこれな。」とか言いながら、例えば末期戦といった奇妙なモデルを振り回しているのだがら言っているのだから表面ヅラでよさ気なこと、「いいこと風」を言っているにすぎない。
実際には戦争末期はどこもやる気はなくなる。軍隊も戦闘はなるべく回避しようと考えるし、軍民ともに戦後がどうなるかを考えての行動にでる。「歴史を知ることにより戦争を知」るといいながらも、まずは何も見えていないのだろう。
なんにせよ戦争被害と戦闘継続の利益を秤に掛けられていない。末期戦と言い出すような連中が言い出す戦争のリアルはその程度ということだ。だから、絶望的な状況で最後まで戦うさまは美しいといったことをいいだすのだろう。まあ死ぬのはともかく、それなら一人でどうにかすればよかった宇垣さんについて、その巻添死を褒める手合と大差もないものだ。
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神立尚紀さんが、共産党議員の発言に「粗雑」(神立)と述べている。
中身は、「戦争でゼロ戦のパイロットやっていたジジイが『戦争やめとけ』といってたよ」(大意)といった発言に対し「旧日本軍機を全て零戦と呼んでしまうのは粗雑」と反駁するものだ。
■ 反論となっていない
だが、これは主張への反論となっているのだろうか?
共産党議員の趣旨は「兵隊とられたことのある、死に損ないのジジイどもが『戦争はいやだ』と言っている」といったものだ。政治家も戦争を知らない世代となり、安全保障で景気のいい話をしていることへの苦情である。
そのジジイが載っていた飛行機がゼロ戦だろうがそれ以外だろうが、どうでもいい話だ。さらにはパイロットだろうが陸兵だろうが軍艦乗りだろうが、兵隊とられてエライ目にあった、戦争で無駄に人が死んだ、やるもんじゃないといった主張が変わることもない。
それに「ゼロ戦ではない云々」は、相当にズレている。「レンジでチンする時にサランラップ使った」といった話に、「使ったのはクレラップだろ、粗雑すぎる」とったものであるからだ。
なによりも反駁になると考えるあたりが奇妙である。外見上、発言は精緻を求める形だが、主張への反論、さらには言語によるコミュニケーションとしては成り立っていない。ある意味、会議室で社長が「この部屋、暑くないかね」とエアコン側の社員に尋ねた時に、社員が「暑いですね」と言いながら何もしない様子と同じだ。
■ 分別盛りの雷同は不憫
もっと不思議なのは、これをリツイートする連中だがね。神立さんはゼロ戦専門家だから細部に拘泥して看過できないのはともかくとしよう。だが、現段階で171リツイートされている。
その中には複数の幹部級の隊員がいる。自分の商売、職場を相対的に見られず、普段からライト・イズ・ライトの発言をしている連中だが「この子、ホントにバカなんじゃないか?」と思うものだ。もちろん、これは反語的表現であって疑問形ではない。
実際にアタマが悪いから、部内の公的雰囲気であるライト・イズ・ライトを普段から平気で外に出している。以前から海賊ハゲやゼロ戦ハゲや蛙ハゲ、アパグループ将官をヨイショし、かのゲートを持ち上げる手合である。分別盛りの四十郎がまあといったものだ。
そのノリで「正しい軍事知識を持たない共産党議員が誤った軍事知識を表明している」と喜々としてネトウヨ的に攻撃をしているつもりなんだろうが、傍からみればトンチンカンでしかない。「そこの金魚鉢を隣の部屋に持っていけ」といった指示に「中の金魚をどうするんですか!」と息巻くようなものだ。
そして、その大概が自称理系なのもどんなものか。世上では文系教育は要らないといったようなことが言われているが、それでできる自称理系がこんなものではねえ。
中身は、「戦争でゼロ戦のパイロットやっていたジジイが『戦争やめとけ』といってたよ」(大意)といった発言に対し「旧日本軍機を全て零戦と呼んでしまうのは粗雑」と反駁するものだ。
神立尚紀 @koudachinaoki
共産党の議員さんのこんなTweetを見たが、いまご存命の零戦搭乗員で98歳の方は一人しかいない。しかも花見など不可能な体調。パイロットが嘘でなければ他の機種と勘違いしているのでは。旧日本軍機を全て零戦と呼んでしまうのは粗雑すぎます。
https://twitter.com/koudachinaoki/status/717769136269430785?lang=ja
■ 反論となっていない
だが、これは主張への反論となっているのだろうか?
共産党議員の趣旨は「兵隊とられたことのある、死に損ないのジジイどもが『戦争はいやだ』と言っている」といったものだ。政治家も戦争を知らない世代となり、安全保障で景気のいい話をしていることへの苦情である。
そのジジイが載っていた飛行機がゼロ戦だろうがそれ以外だろうが、どうでもいい話だ。さらにはパイロットだろうが陸兵だろうが軍艦乗りだろうが、兵隊とられてエライ目にあった、戦争で無駄に人が死んだ、やるもんじゃないといった主張が変わることもない。
それに「ゼロ戦ではない云々」は、相当にズレている。「レンジでチンする時にサランラップ使った」といった話に、「使ったのはクレラップだろ、粗雑すぎる」とったものであるからだ。
なによりも反駁になると考えるあたりが奇妙である。外見上、発言は精緻を求める形だが、主張への反論、さらには言語によるコミュニケーションとしては成り立っていない。ある意味、会議室で社長が「この部屋、暑くないかね」とエアコン側の社員に尋ねた時に、社員が「暑いですね」と言いながら何もしない様子と同じだ。
■ 分別盛りの雷同は不憫
もっと不思議なのは、これをリツイートする連中だがね。神立さんはゼロ戦専門家だから細部に拘泥して看過できないのはともかくとしよう。だが、現段階で171リツイートされている。
その中には複数の幹部級の隊員がいる。自分の商売、職場を相対的に見られず、普段からライト・イズ・ライトの発言をしている連中だが「この子、ホントにバカなんじゃないか?」と思うものだ。もちろん、これは反語的表現であって疑問形ではない。
実際にアタマが悪いから、部内の公的雰囲気であるライト・イズ・ライトを普段から平気で外に出している。以前から海賊ハゲやゼロ戦ハゲや蛙ハゲ、アパグループ将官をヨイショし、かのゲートを持ち上げる手合である。分別盛りの四十郎がまあといったものだ。
そのノリで「正しい軍事知識を持たない共産党議員が誤った軍事知識を表明している」と喜々としてネトウヨ的に攻撃をしているつもりなんだろうが、傍からみればトンチンカンでしかない。「そこの金魚鉢を隣の部屋に持っていけ」といった指示に「中の金魚をどうするんですか!」と息巻くようなものだ。
そして、その大概が自称理系なのもどんなものか。世上では文系教育は要らないといったようなことが言われているが、それでできる自称理系がこんなものではねえ。
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へぼ担当さんはヘリウムからの不純物分離技術をご存じないのだろう。
天然ガスに随伴するヘリウムを膜技術で分離し、市販する話がある。これは、へぼ担当さんが自分でまとめているとおりなのだろう。
だが不思議なのは、へぼ担当さんはそれについて「不純物はどうするのか?」と疑問を持っていることだ。具体的には、ヘリウム分離について陳さんのコメント「トラップした不純物の除去方法とかどうするのか」に対して次のように述べている。
つまりは「膜分離では不純物が取りきれない」(大意:へぼ担当)といった意見である。
だが、なんでそれが課題であって「 membraneと伺って嫌な予感しかしない私個人。」(へぼ担当)なのだろうか?
ヘリウムから不純物の抽出法は戦前から工業的に実現している。これは単に冷やせばよいというものだ。ヘリウムの沸点は-269度と最低である。単純に冷やしていけば窒素酸素アルゴン水素といったヘリウム以外の不純物は全て液化し、容易に分離してしまうのである。これは米海軍でもUSSロサンゼルスの昔から定期的に行われていた。
それを知らずに「membraneは運用9割…というのが率直です。」(へぼ担当)と言い出すのは、不思議なものだ。ヘリウムの場合、9割出せれば冷却での不純物凝固、ドレン処理で問題はないためだ
ちなみに吸着や膜分離でも9割以上にも追い詰めることができる。2段・3段にすることで純度を増す方法であり、一般的でもある。1段で運用9割、つまり不純物が1割混じっても、その後にもう一段を増やせば純度は99%に上がる。
そこでロスしたガスや液体についても、前段・あるいは別段に戻せば再利用できる。処理前の自然状態よりも極端に高濃度であるので、1弾で効率よく9割以上に持っていける。このあたりは有機溶剤の回収プロセスがそうなっている。大概2-3段で、後段からの高濃度排気ガスはたいていは前段に戻すようにできている。
なお、トラップを「微細孔の目潰し」と理解しても、それはさらにおかしな話である。そのような環境では、分離膜の前には粗フィルターの役割を果たす前処理があるためだ。
水のRO処理であれば前段階でオゾンを吹き込み、細菌を殺しバイオフィルムによる目潰しを避けるやり方がある。これは硫黄島でやっている方法だ。
炭化水素処理では文字通りの粗フィルターもあるし、OBIGGS的なもので基体上の炭化水素をさけるなら、メタン・エタン程度しか通さないフィルターで前段処理をすれば終わる話である。
まずは、へぼ担当さんがいつもやる自分を大きく見せるための豆知識開陳なのだろう。これは以前から指摘しているところだ。例えばCIF価格についてはどう見ても何もご存じないのに「ボクは詳しいけど機微情報だから教えられない」(大意)といっている。今回の膜分離も、それと同じ話だ。
もちろん、へぼ担当さんとは相互主義である。以前の航空燃料コンタミで
「「ガスタービンは燃料を選ばない…」と公言なさっていた人物がいるが、モノを見ているのか?と小一時間。」(へぼ担当)と言われて以来なので、かくいう次第。
天然ガスに随伴するヘリウムを膜技術で分離し、市販する話がある。これは、へぼ担当さんが自分でまとめているとおりなのだろう。
だが不思議なのは、へぼ担当さんはそれについて「不純物はどうするのか?」と疑問を持っていることだ。具体的には、ヘリウム分離について陳さんのコメント「トラップした不純物の除去方法とかどうするのか」に対して次のように述べている。
へぼ担当@育児中@hebotanto
naichin membraneと伺って嫌な予感しかしない私個人。当該技術個々については私自身も承知していませんが、membraneは運用9割…というのが率直です。<過去に相当に酷い目に
4:44 - 2016年4月3日 https://twitter.com/hebotanto/status/716592174154911744
つまりは「膜分離では不純物が取りきれない」(大意:へぼ担当)といった意見である。
だが、なんでそれが課題であって「 membraneと伺って嫌な予感しかしない私個人。」(へぼ担当)なのだろうか?
ヘリウムから不純物の抽出法は戦前から工業的に実現している。これは単に冷やせばよいというものだ。ヘリウムの沸点は-269度と最低である。単純に冷やしていけば窒素酸素アルゴン水素といったヘリウム以外の不純物は全て液化し、容易に分離してしまうのである。これは米海軍でもUSSロサンゼルスの昔から定期的に行われていた。
それを知らずに「membraneは運用9割…というのが率直です。」(へぼ担当)と言い出すのは、不思議なものだ。ヘリウムの場合、9割出せれば冷却での不純物凝固、ドレン処理で問題はないためだ
ちなみに吸着や膜分離でも9割以上にも追い詰めることができる。2段・3段にすることで純度を増す方法であり、一般的でもある。1段で運用9割、つまり不純物が1割混じっても、その後にもう一段を増やせば純度は99%に上がる。
そこでロスしたガスや液体についても、前段・あるいは別段に戻せば再利用できる。処理前の自然状態よりも極端に高濃度であるので、1弾で効率よく9割以上に持っていける。このあたりは有機溶剤の回収プロセスがそうなっている。大概2-3段で、後段からの高濃度排気ガスはたいていは前段に戻すようにできている。
なお、トラップを「微細孔の目潰し」と理解しても、それはさらにおかしな話である。そのような環境では、分離膜の前には粗フィルターの役割を果たす前処理があるためだ。
水のRO処理であれば前段階でオゾンを吹き込み、細菌を殺しバイオフィルムによる目潰しを避けるやり方がある。これは硫黄島でやっている方法だ。
炭化水素処理では文字通りの粗フィルターもあるし、OBIGGS的なもので基体上の炭化水素をさけるなら、メタン・エタン程度しか通さないフィルターで前段処理をすれば終わる話である。
まずは、へぼ担当さんがいつもやる自分を大きく見せるための豆知識開陳なのだろう。これは以前から指摘しているところだ。例えばCIF価格についてはどう見ても何もご存じないのに「ボクは詳しいけど機微情報だから教えられない」(大意)といっている。今回の膜分離も、それと同じ話だ。
もちろん、へぼ担当さんとは相互主義である。以前の航空燃料コンタミで
「「ガスタービンは燃料を選ばない…」と公言なさっていた人物がいるが、モノを見ているのか?と小一時間。」(へぼ担当)と言われて以来なので、かくいう次第。