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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 軍事ライターの文谷です
 コミケでは隅田金属ででています。評論情報です。

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2012.12
30
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01:29
Category : 未分類
月曜に出す新刊は3種類です
冬コミ3日目_東-ヒ-06b

・『いづれいきづまるLCS』24p、米の新水上艦、LCS:沿岸戦闘艦本です
・『陸自は10万でよい』12p(実質13p)18万に根拠はない本です
・『磁気機雷は簡単に作れる? 朝鮮戦争のソ連磁気機雷』8p、名前のとおりですね

新刊3種

 他にも、旧刊

・ 中国戦争経済本 アメリカなら鉄道橋狙うんじゃね?という内容
・ 対日攻勢機雷戦本
・ 掃討じゃなきゃ感応機雷に対抗できないよ本
・ 国後島はロシアの限界で、対日戦は無理だよ本
・ 10式戦車要らないよね本

を持っていきますので、よろしかったらどうぞ
2012.12
30
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01:17
Category : コミケ
「陸自は10万人でイイよ」本、出来ました。

まあ、18万人にも32万5000人にも根拠はなくて、結局、対日援助の交渉と日本向け支援予算の支出期限で決まっただけの数字なんですけどね。ちなみに冷戦期は定数18万、実数15万、今も実数14万です。

陸兵をあと4万減らし10万にして、その分を海空戦力に回せば防衛費の有効活用になるでしょう。1985年の新聞にも「陸自減らして海空増やすのが合理的だけど、陸自制服の抵抗でねえ」(大意)といってます。今の情勢となると、さらに海空の重要性があがってますからね。いくら戦車や大砲が優れていても、まあ10式戦車が優れていても、そんなものに金突っ込んでもしょうがないでしょう。


陸自10万本

ストックしていた色紙の関係で、表紙が2種類になりましたが、順調に製本中です。

2012.12
28
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13:00
Category : ミリタリー
 不思議な事に、自衛隊の機雷とか掃海具は、チョット調べても性能どころかどういったものであるかの説明もない。内緒だということと、興味をもつ人が少ないためだろう。今のところ海外に売る予定もない。多分、使い勝手がアレなんで、売れるシロモノでもない。海外製みたいに、売るためにアピールする必要もないから、あまり見せたり説明したりしない。

 ただ、たまにポロリと中身について説明されることがある。どの業界もそうであるように、同業組合の業界誌は過半は毒にも薬にもならない記事なのだが。時折、無造作なポロリがある。S-8掃海具について、中身を説明している記事があった。

 S-8掃海具は任意深度で曳航することができる。そう書いてあるからそうなんだろう。また、位置、方位、深度についてもフネ側に送れるようになっているともある。

 このS-8は水中フロート、パラベーンである。機械・感応の掃海具を展開する、横に広げ、適切な深度を保つ役割をする。これは掃海では一大発明、実用考案である。

 掃海具を決められた深度で引っ張るのは難しい。従来は展開器(水中凧)の調整と、曳航速力で深度等を調整していたが、これは相当に面倒くさい。なんせ理論では、レイノルズ数が出てくる。パラメータは掃海具の重量、展開器の設定、曳航速力なのだが、流体の影響を受けるので訳がわからない計算式が出てくる。多分、教える方も解き方を知っているだけで、理解していない。

 実際には、経験則や簡易表、概略式でもできる。機械掃海の起源は北海のタラ漁であって、理論がなくてもやってできないことはない。ただし、間違いなくその深度で一定にとなると難しい。

 その意味で、S-8は画期的であった。

 しかし、すでに掃討の時代になっていた。もちろん、こと繋維掃海に関しては今なお有効な手段で、イラン等が主要する繋維触発機雷を効率良く処分するには向いている。だが、感応機雷であれば、沈底だけではなく、繋維であっても掃討で対応する時代になりつつあった。

 まずは、S-8は時代遅れだったわけだ。技術的には、TEM掃海や可変深度式曳航ソーナーにも通じているのだが、可変深度繋維掃海の必要性が大きく減じたため、あまり意味のない兵器になってしまったのである。
2012.12
28
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12:59
Category : コミケ
10年くらいまえに作った、昭和16年のカレンダーを7枚くらい見つけました

カレンダー

 梱包用の紙によると、艦艇の図は、1941年のジェーン海軍年鑑のイラストに着色。航空機は、1944年のジェーン航空年鑑のシルエットを反転させて着色したものです。フォトショップ(多分5)ページメーカー(多分6.5)で作って、知り合いの建築事務所のインクジェットで略A1(600mm×850mm)、100dpi、ドラフトで普通紙に出力したものです。

 欲しい人が居れば、コミケに持っていきますので、連絡ください
2012.12
27
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16:08
Category : ミリタリー
 桜林美佐さんの記事を拝見して認識するのは、自衛隊への片思いのあまり、なんでも擁護してしまう自衛隊ファンの問題点を示すものでしょう。

 桜林さんの「納得できない『談合』自衛官の起訴、純国産ヘリの開発こそ国益にかなう」ですが、国防の都合の前に談合は小さい悪であるという主張です。
 すでにUH-Xの開発は3年続けて予算計上を見送られてきた経緯があり、昨今のわが国をとりまく情勢に鑑みて、待ったなしのところまで来ている。これ以上の遅れは許されないのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36832
「昨今のわが国をとりまく情勢に鑑みて、待ったなしのところまで来ている」だから、談合でもいいので速く進めろという理由です。

 不思議なのは「遅れは許されないのである」のならば、海外製を使うなり、当座は外国製、例えばベル412でも買えばいいと思うのですが、そこは防衛産業や国産への片思いもあるので、桜林さんはそれを許せないのでしょう。
 海外製を排除する理屈として、次のようにも述べています。
外国にプライムメーカーがあると、修理に出せば数カ月や下手すると2~3年も戻ってこなかったり、あるいは製造がストップされて部品が手に入らなくなったり不良品が送られてくるなど、弊害が少なくないのだ。だいたいそういう問題は、購入時には気付かない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36832?page=2
 しかし、これは自己撞着です。この桜林さんの理屈だど、メジャーな海外製機体の方が国産機より優れていることになります。まず、メジャーな海外製機体の方が長年製造が継続しており、部品の安定供給に向いていることになります。むしろ国産機の方が危険でしょう。OH-1のように市場が小さく、大した数作れず、直ぐに生産が止まる。国産機のほうが「製造がストップされて部品が手に入らなくなったり」する「弊害が少なく」なく、危険ということになります。

 あとは、あまりに情緒的な自衛隊員への擁護です。
もうすぐ仕事納めである。自衛隊員も束の間、家族との団欒を楽しむ季節だ。しかし、起訴された当事者たちはどうだろうか。防衛省は2人を地検に告発していて、これから先どうなるかも見えず関連企業への再就職も難しいだろう。
[中略]
 そういえば、12月21日の東京新聞には防衛省の元幹部が2人を擁護したとする発言が載っていた。

 「川重のヘリなら同僚の命を預けられると純粋に考えていたのではないか」

 常に厳しい視点を持つ同紙であるが、このコメントが掲載されたことに初めて武士の情けを感じた。日本人はかくありたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36832?page=3
これは、「その志は諒とする」や「赤誠の至り」とかいった、二二六事件の首謀者を擁護する理屈に似ています。

 桜林さんの言論には、随意契約が官製談合や癒着の温床となったという問題点への配慮がないことも不思議です。桜林さんは随意契約の推奨、あるいは一般競争・指名競争入札への反対を明確にしています。しかし、かつての随契や癒着の温床となったことは全く触れていません。最近でも、調本の水増し請求、US-2開発の時の汚職事件、山田洋行事件の温床は、随意契約に由来する官製談合、官民癒着です。汚職の太宗といっても良いでしょう。随意契約を推奨するのはいいとしても、その結果としてもたらされる涜職に触れないのは、やはり自衛隊ファンであるので、その影を見たくないという心情の表れなのでしょう。

※ 桜林美佐「納得できない『談合』自衛官の起訴、純国産ヘリの開発こそ国益にかなう」(JB Press,2012.12)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36832
2012.12
27
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08:27
Category : コミケ
 2010年冬コミのまえがきで見っけたのですけどね。来年の4月から「俺の妹が」の続きやるとかいうのを聞いたので、まあアップしとこうかと。



 今期、白眉とすべきは『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ですね。

 物語の構造は「理不尽な妹と、それを手当てする兄」それだけです。妹が困難に行き当たると兄が助けるだけの話です。妹のオタク要素はオマケに過ぎません。単純な物語ですが、なぜか惹きこまれてしまいます。
妹の希望を叶えること自体が物語になるのでしょう。『俺妹』は昔話でよくある『求婚者の無理難題を解決する』話です。兄妹の関係は、擬似的な夫婦・恋愛関係です。物語では、妹はお姫様や女神様といった存在と等価なのです。

 物語で兄が妹にコントロールされる仕組みにも不自然はありません。『をなり神の島』や『妹の力』でもあるとおり、妹は兄に対して霊的優位にあります。二重王権システムそうでしょう。高坂兄妹も、実務・世俗を執り仕切る兄(京介)と、文化・精神を支配する妹(桐乃)です。京介は実行力を持ちながらも、桐乃のコントロール下にあることには何の不思議もありません。

 ただ、TVシリーズの後半失速は残念でした。失速の原因は、カタルシスを最初の段階で使いきったことにあります。京介に課せられた最初の試練、父との対決は、実は本作最大の試練です。最大の試練ですから、本来であれば最後に持って来るべきでした。あとは詰め込みすぎです。全13話に原作を機械的に詰め込んだのは誤りです。シリーズ構成もそうですが、無条件に「萌え」を全肯定するエピソードだけ選んだ点にも、少々鼻白みたくなるものがあります。本来であれば、原作者が最終巻で提示したもうひとつのテーマ「『萌え』の裏側にあるもの」。それを真正面から向合う話もTV放映すべきだったでしょう。

 その点、BD/DVDに収録されたアフターストーリーは、原作者の問いを描ききったものであるといえます。前編『ああっ妹狩峠』、後編『太陽を盗んだオタク』は、ともに「萌え」の裏側を曝く筋立てとなっています。中高生の時期、消費者として「萌え」に接した主人公達が5年後に生産者として「萌え」と正面から向きあうのです。

 前編『ああっ妹狩峠』(山本薩夫監督)は、原作者によるルポルタージュ『アニメ絶望工場』を俺妹キャラにアレンジしたものです。舞台は原作の5年後、アニメ・ゲーム専門学校を卒業し、シスカリプス社に就職した桐乃(動画)、黒猫(動画)、沙織(プログラマー)、あやせ(声優)たち。その彼女たちが「やりがいの搾取」により、過重労働に倒れていく姿を描く社会派作品です。

 原作、伏見つかさの参与観察がすでに秀逸なのです。平成の日本資本主義を支えた萌産業、その裏にある労働搾取。華やかな平成"Cool Japan"はアニメ・ゲーム産業労働者の屍の上に築かれていることをあきらかにしています。山本監督はこれを「アニメ・ゲーム会社の全てが反社会的ではなかっただろう。一部はヨリ民主的であったかもしれない。しかし、彼女たちの置かれた労働環境が前近代的であることは歴史的事実である」と評しています。明治生まれの「赤い監督」はいまだに健在なのです。

 桐野たちの就職したシスカリ社はブラック企業でした。歩合制給料体系、検査工程による単価決定、極端な報奨金制度や罰金制度…そのなかで桐野や黒猫は、動画職トップ単価となる「カリスマ動画」をめざします。しかし、このシスカリ社の給与体系は「働きすぎ」へ誘う巧妙な仕組みでもありました。桐乃たちは「自己実現系ワーカホリック」に陥ってしまいます。休みを返上し、月300時間を超える残業に自ら進む桐乃たち。

 過酷な環境の中で、桐乃たちは壊れていきます。社会保険だけでなく、健康保険もありません。頻繁な枕営業と妊娠、ヤミ堕胎での事故で働けなくなるあやせは退職を強制されます。眼を酷使した結果、眼底出血で略失明してしまった沙織には労災は下りず、そのまま解雇されます。激しい勤務で体を損なった黒猫は、ふとした風邪が肺炎となり、あっけなく落命します。過重労働で心身をすりつぶした桐乃も、体の不調を訴えますが、職場や家族の不理解に直面する理不尽です。特に父である大介には「辛抱が足りない」や「会社のせいにするな」と突き放すのです。その時すでに桐乃の体は結核に冒されていました。21世紀でありながらも、結核に命を狙われてしまう桐乃。異変に気づき、なにもかもなげうって迎えにいく京介ですが、再会した桐乃は骨と皮だけの体になっています。かつての丸顔モデルの面影はありません。

 首都高湾岸線のラストシーン。雪の降るなか、京介の運転する車が湾岸をひた走り故郷の千葉県へ渡ろうとする。そのとき、すでに意識が薄れた桐乃は「ああ、千葉が見える」と言って絶命する。その時、通り過ぎた有明では萌の祭典、コミックマーケットが開かれ、企業ブースではシスカリ社が空前の収益を上げていた…

 そして『太陽を盗んだオタク』です。あまりの「赤さ」ゆえに更迭された山本監督、そのピンチヒッターとなった長谷川和夫監督による「後編」です。鬱展開と言われた原作最終話を元としていますが、ヒロインたちが全滅してしまった前編と矛盾しないように纏め上げています。悲しすぎる結末であるにもかかわらず、長谷川監督は見事ホップ調でまとめ上げました。

 次回予告から素晴らしいものでした。アニメ予告編としては『機神兵団』OVA以来の傑作です。「日本にも原爆を作った男がいた。オレは太陽を盗んだヲタク。オレは日本に復讐する」「10億?、100億?、オレの欲しいのは金じゃない、桐乃を、黒猫を返せ!オレはこの社会に復讐する」 素晴らしい!

 前編の父子の対決、その回想から後編は始まります。京介はシスカリ社の不法行為を告発をします。しかし、シスカリ社はアダルト系コンテンツ会社です。当然、警察の天下りを受け入れています。警察権力の論理に従い、公私にわたり告発を握りつぶす父、千葉県警高坂大介。完全な悪、権力の犬です。京介は、家庭での、そして仕事での大介の振る舞いに、妹たちを殺した平成日本社会を投影するのです。後編は、京介による竜退治の物語であり「父殺し」の物語でもあるのです。

 京介が原爆を作る際には、多少の不自然もあります。液体プルトニウムが東海村原発施設外の下請会社で、しかもバケツで汲める状態であること。また大分の自衛隊を買収して小銃を入手する際、自衛官が「員数外の小銃だから判らない」とうそぶくところです。ありえない話なのですが、話中でリアリティレベルを意識する問題ともなりません。

 なんにせよ、正味21分の作品では、ヤマは一つもあればいいのですが、この作品はヤマが四つも五つもあります。そして、その全てが小気味く進行するのです。

 和菓子屋の調理場で、鼻歌交じりに原爆を作る京介。起きてしまった臨界。チェレンコフ光を見たあと京介は嘔吐します。京介との情事のあと、真奈美はベッドで大量の抜け毛を見つけます。京介との逢瀬で、あやせは愛人の口腔に「血の味がする」と呟く。沙織との合いびきで「つけなくても大丈夫」と笑う京介。京介に残された時間は短いのです。

 原爆により実現する要求。「アニメ録画がズレる。野球の放送延長をやめろ」「夏コミ会場を完全冷房しろ」… そして山手線車中のシーン。原爆を設置する京介、それを発見する大介。殺し合う父と息子。外れてしまった安全尖。動作する起爆ロジック。ジャイロと積分回路により、電車が山手線から逸れても、あるいは30km以下に減速しても爆発してしまう…

 両作ともTV版への強烈なカウンターとなっています。オススメです。



参 考
『あゝ野麦峠』(東宝 1979)
『太陽を盗んだ男』(東宝 1979)
本田由紀「やりがいの搾取」,『世界』
(岩波書店,2007年3月号)

2010年冬コミのまえがき「『萌え』を肯定するだけではダメ」を転載
2012.12
26
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13:00
Category : 有職故実
 同姓同名の人が同時期に活躍すると紛らわしいもの。

 戦争中、終戦付近の動静だと、吉田茂と加瀬俊一がそれにあたる。

 吉田茂さんは、御存知、外務省出身の元首相とは別に、内務省出身の人もいる。戦争末期に福岡県知事と軍需相をやって、戦後に神社本庁に移った人なんだがね。本土決戦準備で地方総監を調べていた時に、その前身の「九州地方行政協議会会長 福岡県知事 吉田茂」が出てきて驚いた。その後、注意して内務省関係を見ていると、結構出てくる。『内務省史』のガリ版官報の話だかで「関東大震災の時に、東京市助役をやっていた吉田茂さんが、市役所がダメになったので、内務省の中庭に間借りして仕事をしていた」とか、そういった話がでてくる。だいたい同世代人で、外交官試験と高文試験(しかも内務省)を突破したトップエリートだから、同じような場所、人脈で出てくるので、内務省が外務省がわからないと紛らわしい。

 加瀬俊一はもっと有名だろう。「俊一」の読みが「としかず」さんと「しゅんいち」さんなんだが、終戦工作だとどっちも出てくる。「としかず」さんがベルン公使でアメリカと終戦工作した人。USSBSのマイクロ読んでいると「広島に落ちたの、あれ、原子爆弾」って報告もしている。もうひとりの「しゅんいち」さんは終戦時に外務省情報局の人。高木惣吉さんの終戦関連の話に出てくる方で、ついこの間までご存命だった。

 似た名前だと、黒田清隆と黒田清輝が紛らわしい。「きよたか」さんが二代目の総理大臣、酒癖がアレでという話も有名だけれども、篠田鉱造さんの本には力持ちで梅坊主さんに腕の上でかっぽれを踊らせたみたいな話もある。「きよてる」さんが画家なんだが、貴族院議員もやっているので紛らわしい。帝国憲法の時の総理大臣がどっちだったか悩む。あるいは、東京国立博物館あたりで絵を見ると、これもどっちだったかと作者名を確認する。むしろ、名前が別なのが却って面倒でね。「首相のひと」と「画家のひと」で済まないからねえ。いまでも「きよたか」さんか「きよてる」さんかと毎回悩む。笠原弘子と笠原留美、平野レミと平野文あたりもそう。

 川路聖謨と川路利良も難しい。「としあきら」(聖謨)さんは幕臣で日露和親条約の人。「としよし」(利良)さんが、警察のエライ人で「大警視川路利良」なんだが、だいたい逆に、ゴロと落ち着きがよい方の「大警視かわじとしあきら」と言ってしまう。

 幕臣だと、西周、津田真道、田口卯吉が立ち位置が同じで、同じような本を書いているので紛らわしい。特に、西周と津田真道は津和野藩と津山藩だから、そこでもどっちがどっちとなる。同姓同名ではないのだけれどもね。「かないみか」と「こおろぎさとみ」のキャビテーションノイズを聞き分けるみたいなもんだ

 まあ、こんなことを書いたのも「矢吹健太郎」という名前を見つけて「矢野健太郎」を想像して、さらには数学の参考書を思い出したからなんだけどね。矢吹さんは『To LOVEる』の人なんだが、40代以上には『ネコじゃないモン!』の「矢野健太郎」を想起してしまうし、そこから数学の参考書に書いてある著者名も連想されてしまう。

 逆に、昭和30年の朝日新聞、数学クイズに「矢野健太郎」さんを見つけて 島本和彦さんの『アオイホノオ』に出てくるスーツ姿を想像してしまったこともあるのだけれども。
2012.12
25
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21:55
Category : コミケ
 磁気機雷パンフ製本中。
 朝鮮戦争の時の、元山に敷設されたソ連製磁気機雷のロジックって、マイクロリレーとリレーだけで作れんじゃね?って内容です。体裁は、前回のISARパンフとか空気銃パンフと同じで、写真のとおりです。

磁気機雷は簡単に作れる

 とりあえず、これを折り終わったら、陸自10万人本に取り掛かります。そいや「ソ連軍がどーやって海渡るんだよ」とか「米海空軍が負ける前提はオカシイだろ」って、MSA協定で池田勇人が言ってますね。米側も「前提がオカシイのはともかく、予算があるのでそれは言わないでくれ」という感じ
2012.12
24
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13:00
Category : ミリタリー
 A幹は江田島で幹部候補生を1年、そのあと練習艦隊実習幹部を半年やるのだが。一般大出の2課程では、お上手なのが外語大あたりだった。東京大阪だけではなく、語学やってたのがわりとイイ感じで成績優秀者になったよ。

 今様に言えばコミニュケーション能力が高いとでもいうのだろうね。実際に学科成績も良いから、序列トップになるんだが、練習艦でも副長あたりと上手くやっていた。別にそこには恨みもないのだけれどもね。

 逆に、早大はエライ目にあっていた。練習艦隊で、なぜか後列に並んでいるのに殴られるとか、副長に目をつけられるとか。早大は己のほか3人、別に名誉早大あつかいの慶応出がいた。まあ慶応というよりは、自分の好きな事しかしないあたりのボンクラ具合が早大風だった。自分の好きな事しかしない。あまりいうことは聞かない。

 なーんか馬鹿馬鹿しくなってくんだよね。特に練習艦隊の指導がどうしようもなく見えてしょうがない。それが顔に書いてあるから、殴られるんだがねえ。副長に「まともな評価されると思うなよ」といわれたよ。

 己は傍観者の面だったんのだろうね。精神教育※ とか追い詰める指導とか、端から無視していた。いきなりアレコレやれ言われるのだが、いきなりは出来ないのが当たり前だと思っていた。できなくて叱責、人によれば罵倒されても「だから何だ」と思ってた。

 あとの連中見ても、似たようなものだった。酒のんで暴れるとか、矛盾してんじゃないのと反論したりね。副長に思っていることを自由に好きなこと書け、そう言われたので、好きなように書いたら、3人で順番で呼び出されたよ。己はそう思ったので書いたといっただけだったが、某は矛盾してますねと一言したらしい。

 次やったら丸坊主だぞと言われたので、だからどうしたと、イヤガラセで先に2人丸坊主にしたりね。どうせ髪なんて航海中に伸びるし、外出るときは帽子かぶるし、何のこともない。

 まあ、傍観者やったお陰でねえ、おべんちゃらを使うのはよく見えた。追従するタイプには、わりと地域性があって、官尊民卑で有名な北国の防大出身とか、外交官試験落ちたみたいなタイプが結構媚びを売っていた。

 練習艦隊だと、実習幹部は4層分離している感じだった。自分を律し努力を厭わないタイプと、他人を出しぬきおべんちゃらで逃げるタイプ、人並みに(相当の)努力して無難に過ごすことを選ぶタイプ、どーでもいいやというタイプ。まず、江田島で半年たったあたりで1・2課程は完全混交するのだが、それでも自律タイプとおべんちゃらタイプは一般大より多かった。

 自分を律し努力を厭わないタイプは、やっぱ立派だった。あまり成績はよろしくなかった御仁なんだが、彼に叱られたときには効いたね。止まった乾燥機から他人の生乾き洗濯物を取り出して、自分の洗濯物を乾かそうとしたときないんだがね。「あと少しなんだから、完全に乾してやれよ」とやんわり注意されたよ。確かに、乾燥機は貴重であるけど、必死になって取り合うもんじゃない。自分を恥じるしかない。

 ただ、彼は隠れも無き風俗大王で、国内だけじゃなく海外でも「買ってくるぞと板橋区」だった。CAS(対不安)も低いタイプだから、病気も向こうから避けると思っていたのだろう。メキシコでもブラジルでもドミニカでも「いやあ、よかったよ」とね。まあ、人格見識体力のよろしきあって、無事に航空用兵、パイロットだかTACOだかになっていたよ。



※ そいや思い出したがね。己、五省も馬鹿にしていた。内容はともかく、江田島での大声合唱大会が馬鹿らしいので、勝手に纏めて「五省にもとるなかりしか」とか「ばっかりだ」いって、残り4つの唱和は自主的に遠慮させていただいた。前の1課程、己の席は「もんたに」の「も」で折り返しだったので、1課程の「わ」の後に座っていたのだが、彼は気づいているけど面白いからとそのままにしていた。

 隣の隣の列だったか、割りと熱血漢の1課程が、江田島の最後のあたりで気づいたあたりで怒ってきたのは面白かった。
 悪いやつじゃないんだがね。ただ、カッター漕いでいて、先に力尽きて櫂を揚げる奴で、その後、漕がないくせに「文谷、もっと力強く漕げ」と、前席(8番で「エンジン」だった)になる己の背中を蹴っ飛ばしてくるのは、当時から笑い話だと思っていた。それでいて、馬だがパチンコだかでオケラになると、「なにか食わせてくれ」とタカリにくるのだからねえ。
2012.12
24
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TB:0
01:20
Category : コミケ
 新刊『いずいずれ行き詰まるLCS -沿岸戦闘艦には将来はない-』について、だいたい、2/3近く製本が終わりました。

作業中

 飽きたので、磁気機雷のパンフと、陸自は10万程度でイイよ本を作っている最中です。パンフの方は明日にでもできるでしょう。後者も、A5版12pぐらいなら、当日に間に合うでしょう。

 ま、こんなとこです。
2012.12
22
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TB:0
13:00
Category : 有職故実
 数の関係から列外になることが結構あった。平素の態度と「も」で始まる苗字がモノ言って、結構、あまりもの編成に入っていた。

 江田島の防火防水だかもそうだった。1人足りない隣の、左舷の分隊に、あまり1ということで放り込まれた。今でも覚えているのは、当直学生だった母分隊の薬剤候補生。「文谷が居ても足を引っ張るだけ」と聞こえるように陰口聞かれたので腹がったった。でもま、防火防水はねえ、やってみたら得意だったのよ。なんせ、山持っていて家も薪風呂、ガキの頃からチェンソーと斧、鉈は使っている。防水での、木を切って削るなんてお茶の子さいさい。回された隣分隊で、母分隊の1/3の時間で3寸5分の角材で大木栓作って差し込んで、抑えもさっさと鎹で打ち付けてやったよ。片方が上手にできると、もう片方が厳しくされる、ザマミロと思ったね。

 余り物編成で懐かしいのが、帆走での8号カッターと、陸戦での3小隊1分隊。どちらも問題児ほかを集めたとこなんだが、分隊間で競争に巻き込まれないから気楽なもの。帆走は風が悪いので、夜航海は適当にやっていたんだが、夜が開けると、競争でタッキングやった連中と大して離れてもいなかった。陸戦小隊では面白半分で「おかあさーん」と叫んで突撃したり、急襲急射撃で航空学生に腕立て200やらせたりした。

 8号カッターは、まあ効率第一だった。医官課程が終わってお役御免の元8分隊長が艇長。この人も、あまり出世欲のない人。無茶は言わないで効率を重視する。ほかのカッターだと分隊長が眼を三角にしているのだが、8号は分隊競争とは無関係でのんきなもの。風が止まったので、ついに人力で櫂走を始めたカッターを尻目に、風がくるまで待っていた。現地についても、砂浜にノシ上げるとき「無理するな、この程度でいいぞ」だった。

 帆走は幕営というか、お遊びキャンプのあと、夜航海で戻る。その夜はまず北風で、安芸灘を行ったり来たりだったが、やはり各分隊カッターは必死になっている。あとで聞くとただひたすらタッキングを繰り返して北上しようとしていたらしい。

 8号は、正直自分の位置もよくわからない。小賢しいことをして、下手に島の間に入って迷ってもしかたがないと、南に流されない程度にのんびり東に移動して、岩国のあたりで北にあがろうということになった。しかし、海図の小さいコピーと、手持ちのチャチなマグネットコンパスなので、灯台見ても灯質判断ができず、しかも方位がよく分からず、現在位置がわからない。

 そうこうして深夜、疲労がたまり、ぼーっとしている状態のとき、目の前にイキナリ灯台が現れて、ヒヤリハットがあった。ブツカッてたら、死人も出ただろう。ただし、寝ている奴は呑気なもの。特に風が当たらず平らな部分で熟睡したやつは何も御存知なかった。己は場所取りに出遅れてオールの上で横になったが、ゴツゴツと風で眠れたもんではなく、オモテに居たのでホントに恐怖だった。岩国寸前まで進んで、ノシ上げる寸前だったらしい。

 結局、一晩、多少切り上がりながらの東西移動していておわり。でもま、ろくすっぽ帆走したことのない候補生のやることだから、ちんたらタッキングしてたら、その間、風に南に流されただろう。結果として回数減らしたのは正解だった。夜が開けると、先頭とあまり差はない。南にもカッターがある。そのうち風が代わって、夜の努力は何だったのかというくらい、快走で江田内に戻れた。

 原村での陸戦は、確か1中隊3小隊1分隊だった。1中隊が一般幹部候補生、3小隊が戦力外、その1分隊は思想不良者、2分隊は体力不良者、3分隊はWAVE。

 まず、空砲射撃の時に一工夫した。空砲は結構、炎を吐く。秋の演習場は絶乾状態なので枯れ草がいっぱい。枯れ草に炎が当たると容易に火がつく。この両方を、ある本で学んでいたので、枯れ草めがけて空砲を撃ち、時には枯れ草を集めて空砲を撃った。

 こうなるとしめたもの。山火事防止で状況中止になる。時間に追われた演習なので、消火の時間分、匍匐そのほかの面倒が省略される。それに気づくと、周りも真似をしだすし、消火も適度にやるようになる。火事はマズイが、早く消えるのもよろしくない。真面目なWAVE分隊に較べれば、相当の省力化になっただろう。

 ハイポートで隠れてスリング使ったりもした。小銃を手で抱えて走るのも重いので、スリング伸ばして背中にかけて、ピンと伸ばして走っていた。ズルなんだが、それやるなとも言われてなかったしね。これも一人が始めると何人か真似した。なんせ、腕のちからがほとんど入らないので全然ラク。もちろん、万事が適当な仲間なので、互いには何も言わない。

 あとは「撃ち方止め」を令さず、しびれを切らせて突撃してきた連中に面白半分で急射撃とかもやった。まあ、全員戦死なんだが、気の毒なことに航空学生なので腕立て200には気の毒だった。その日の風呂(毎日入れるんだから気楽なもの)で、誰か知らんが、ただでは済まさないといっているのを聞いて、ありゃと思ったけどね。

 突撃の時には、適当に叫ぶことになっているのだが、まあ「おかあさーん」は良かったねえ。防大でのハミ出し男の提案なんだが、粋なもんだった。奴は練習艦隊最後の巡検でアフロかぶって座っていた粋な幹部なんだが、成績は己と同じ最低クラスだったよ。

 割りと仲よかったこともあって、帰りの徒歩行軍で車に乗せられる落伍者を出さないで済んだ。行軍といっても50kmもないし、荷物も軽いので陸空からすればピクニックなんだが、尺取虫運動をする最後尾の割に落伍者なしは、海の水準では褒められるものらしい。
 要は体力に応じて荷物をわけただけのズルなんだがね。特に一番重いのが鉄の棒、初から見てないとこでは小銃もわけたし、途中からは堂々と分担した。いいのか悪いのか知らないが、どーしょうもない地口言いながらあるったりね。運良く、高校でのワンゲルだかの経験者がいて「とにかく靴下を変えろ」というのでそのとおりにした。結果、よそほど靴傷で酷い目には合わず、真っ先に上陸できた。針通して糸のこせ、で驚くほど安全に靴傷も治ったのも幸運か。

 カッターも陸戦も、そのあとの練艦隊でも、同じ面子が一緒になることが多くてね。分隊の連中よりも割りと仲良くなったもんだよ。クラスで一番有名になった奴もいて、有名になった理由を知ったときは気の毒だと思ったが、その後の消息を聞くと、まあ、彼も無事でいてよかったと思った。
2012.12
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13:00
Category : アニメ評
 国鉄の高田馬場駅で発車メロディーを聞いた時に、ふと「肉弾アトム」というフレーズが頭に浮かんだんだけど。どんな話かね。

 まず、アトムの時代だから、宇宙空間で核弾頭を抱いて敵を待つのでしょう。宇宙軍戦力が全滅したのに、地上決戦だ、戦車があるので負けないとかヘンなことをいう軍部に付き合わされた形。外惑星から援軍が来るまで陸上戦力で持ちこたえるのだとか言ってますけど、静止軌道あたりまで宇宙機雷まで撒かれて、月やらコロニーからの食料輸送も途絶えたので、地球人は餓死寸前だから意味は無い。

 多分最終回でアトムは敵艦隊迎撃のためドラム缶大の水爆にしがみつくようにして、宇宙に放置される。でもなかなか敵も来ない。3日も4日も漂流して、頼みの冷却水、一升瓶にいれた真水も流されてしまう。日差しを遮る唐傘も、戦争で生まれた砂粒大の極微小なジブリボロボロになる、そうして熱暴走したアトムは、混乱する意識の中で超巨大戦艦を発見するのです。「方向良し、距離良し、安全栓抜いた」みたいな感じで準備するのですけど、それは精神衰弱による勘違いで、実際には何の変哲もない流星に体当たりで犬死だったという。

 でも、その時、既に地球は既に終戦となっていて、みんなが街で大喜びをしている。ひときわ輝く流れ星みても「戦争が終わってみる星空は綺麗なもんだ」としか言われない。誰も宇宙に行って、戦って死んだアトムのことなんか思い出してもくれない…という救いようのない話じゃないかな。多分、ベトナム戦争の時代を反映しているのでしょう。

 いや、最近の萌えアニメしかしらない若い人には信じられないのでしょうけれども。昭和のアニメは結構、戦争体験が投影されてますから。

 『肉弾アトム』の最終回辺りだと、後に有名になるシーンがあるのですよ。アトムが敵前逃亡した兵隊に死刑を宣告し、銃殺するアレですけど、PTAからの抗議に手塚はキレるのです。

 アニメ版ではよくわかりにくいのですけど、漫画版では食糧不足の中、逃亡兵は食料を持ち出しているのです。それを理解しないと、手塚の「飢餓者が出る中で、中隊の乾麺包を一切合切盗まれた気持ちが分かるか!」という啖呵も理解出来ないのでしょう。比島での手塚の実体験が忍ばれるエピソードです。



2010年11月03日 MIXI日記より
2012.12
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Category : 有職故実
 今回の新刊の表紙です。色が変なのは、CMYKをRGBに変えてJPGにしたせいですので、紙はマトモです。
 写真に関しては、さすがに撮影できないので米海軍写真を利用しました。

2012年12月21日表紙_ウェブ用








 で、同時に旧刊在庫を引っ張りだしたのですが、前回のがこれですね

2012_07_20_表紙_ネット用



 内容は、「米軍が中国を屈服させるとしたら、海上封鎖では無理で、でも陸上侵攻もできないから、対ドイツ式に国内交通網を麻痺させんじゃね」ってモンです。狙うとしたら鉄道橋と河川交通で、長江南岸が分断され、特に石炭で困るんじゃないですかね。



 その中にいれた図が

長江鉄道橋


橋の詳細


 こんなもんです。在庫もそれなりの数持って行くんで、気になったらどうですかね
2012.12
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Category : ミリタリー
 とりあえず、冬の新刊作っているのですけどね。
 LCS本がなんだかんだ言ってメインになってしまうかもしれない。それはそれでいいのだけれども。中に出てくる米国の対機雷戦器材が、見通し甘いんじゃないのかと。

 仔細は本買ってくれだけど、MCMパッケージにある掃海システムがダメじゃないかと。OASIS掃海具という、高精度のTEM掃海ができるのだけれども、狭い面積しか清掃できないので困る。バカなダボハゼ感応機雷しか引っかからないけど、大面積を一気に処理できる、粗暴な掃海具も別に必要になるんじゃないのかね。

 このOASIS掃海システムがヘリで引っ張る掃海具なんだが、日米が今まで使っていたMK105ほかのでかい器材ではない。引っ張るヘリがMH-60Sだからムリもないのだが、小型の掃海具になっている。それはいいんだけど、まずTEM掃海志向なんだよねえ。

 TEM掃海とは、ターゲット・エミュレーション・モードの略で、艦船ソックリの磁気・音響信号を作り出して機雷を感応させる方法。北欧海軍なんかで、泥に埋まった機雷を処理するにはこれしかないだろということで流行っている手法。

 信号の大きさもフネにあわせてある。エミュレートする艦船のそっくりにするため、信号の強度まで合わせるから、掃海幅はどーしても狭くなる。TEM掃海事態も狭い水路を確保するための手法でそれでもしかたがないのだが、実際には回数起爆設定にも対処したいので、何回も往復する必要がある。

 掃海幅が狭く、しかも何回も往復しなければならない、そんな掃海をヘリにやらせるのに適しているかね。OASISの場合、自分の艦隊が通れるだけの、極端な話、LCSの前路掃海だけができればいいのかもしれない。もちろん、米海軍の対機雷戦は艦隊通過や上陸戦準備のための対機雷戦で、たいした期待はされていない。そんな程度ができればいいのかもしれない。

 しかし、これだと航空掃海の役割が果たせない。もっと大雑把だけど面積稼げるのがヘリ掃海の利点だった。実際、今までの航空掃海は、多数を占めるダボハゼ機雷だけをさっさとスクリーニングする役割が期待されていたわけです。ダボハゼ機雷は、頭が単純で大きな信号があればなんでも食いつくので、MK105みたいな粗暴な掃海にも引っかかる。

 感応しない機雷が残るとったような問題があるが、粗暴な掃海も悪いもんでもない。それで、とりあえずどの範囲に機雷があるか分かります。粗雑だけど掃海幅は広いし、短時間にできるから、機雷原の大きさとエンドを把握する役に足つわけです。

 しかし、OASISではそれができない。幅が狭いし、信号も弱いので、大面積を一気にスイープ出来ない。別にヘリでTEM掃海が出来なくても問題ないんですよ。OASISでできるTEM掃海は、LCSに搭載される何種類かの無人艇にOASIS曳けば代替できる。でも、航空掃海はSH-60Sでしかできないのに、唯一の掃海具では粗暴な大面積掃海ができないのは問題でしょう。

 ホントは、永久磁石つけたワイヤーを展開器で幅広に広げてヘリで曳航するとか、同じ周波数しかでないけど、偏心ハンマーをゴロゴロ回すハンマーボックスを曳くとかしてダボハゼ磁気機雷を一気に始末するとか、大音響を出す使いすて発音弾を連続投下して、ダボハゼ音響機雷を一気に始末する仕組みも必要なんじゃないかね。まあ、作る気になれば直ぐに作れるのかもしれないけどね。

 あとはMH-60S用の航空繋維掃海具もないのも問題だと思うよ。
2012.12
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Category : 有職故実
 国立国会図書館で、他人が請求して、積み上げられたマンガ雑誌の表紙にに「奥崎謙三」と書いてある。新連載「ゆきゆきて神軍」と頭の中で短絡した。

 よく見ると、岡崎武志だったけどね。雑誌は週間少年サンデーか何か。

 多分ねえ、漫画版の『ゆきゆきて神軍』は奥崎謙三原作、水木しげる作画ではないのかな。全ての元凶はニューギニア編で、アレな環境で、主人公の心が壊されるあたりが、水木先生の絵なんだけれども、ドラマとして、すげーリアルという。 サンデーはサンデーでも、どっちかというと漫画サンデーかねえ。

 「悪い精霊との契約」が全てのキーなんでしょう。マラリアで生死の境をさまよった奥崎さんが、高地人のアボリジニ的なドリーミング・タイムに入って「お前の王のマナを寄こせ」で契約するアレ。(マナはポリネシアの概念だけど)
 BGMはアフリカ音楽『ソバヤ』(タモリ版ね)あたり。突然恢復した奥崎さん、必要もないのに人肉食をしたり、いつも檳榔子を噛むようになる。餓死寸前になると、敵味方問わずパイロットが降りてきて、ご馳走になる。

 あとは、中隊長、大隊長、師団長の怪死の裏に奥崎さんの影ですか。そのたびに悪い精霊が力を貸し与えるという。そして、パチンコ事件へ…

 その『ヤマザキ、○○を撃て』は、おそらく、さいとうたかお作画じゃないかと。そのまま難しい話だから、無難に舞台を別の国にして「ジャッカルの日」に差し替えて終わり。

 調べものも一段落し、最近は殆ど取らないコピーを珍しくとったので、新聞室で縮刷版読んで時間つぶししていると、奥崎謙三さんの皇居パチンコ事件の記事が出ていた。シンクロニシティw



2012年9月27日 MIXI日記より
2012.12
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16:55
Category : 有職故実
 桜林さんの「『愛情』があるから人間は戦争をする」※ なんだけれども。 記事全体のご趣旨はともかくとして、昭和15年を「奉祝ムードに沸いていた」とするのは、当時の世相を無視しているのではないか。

 桜林さんは、おそらく、左翼的な戦前真っ暗史観への対抗、感情的反発として「2600年奉祝」を持ちだしたのでしょう。だが、当時は日華事変の真っ最中で、配給制が厳しくなる時代である。国際環境を見ても、蒋政権を屈服させる見込みも立たず、ABCD包囲網も狭まり、ヨーロッパでは第二次世界大戦も始まっている。この世相をみて、昭和15年は「奉祝ムードに沸いていた」とするのには無理があります。
一体、誰が昭和15年をして「暗い時代」に突入したなどと決めたのだろうか。そもそもこの年は「紀元2600年」であり、日本中が奉祝ムードに沸いていたはずだ。

 「今」の価値観で測って「暗い」「明るい」などと評価するなど、おこがましいことこの上ない。当時の人々の懸命な日々の営みを否定する権限は私たちにはないのだ。

 毎年3万人もの人が自殺し、それ以外にも不審死が数万人に上るという現代は「平和」だと言われるが、果たして「幸せ」な時代なのだろうか。こうなると、もはやどちらがどれほど「暗い」か「明るい」か、などと評することに何の意味もないだろう。

 たしかに、戦前は真っ暗であったと一言で片付けるのは乱暴です。山本夏彦さんがよく書いていたように、戦争による需要増大で、10年前の世界恐慌を吹き飛ばす好景気でもあったわけです。

 しかし「昭和15年は暗い時代」を否定するのに「奉祝ムードに沸いていた」というのは、大きな間違いです。

 桜林さんは平成24年について「毎年3万人もの人が自殺し」と具体的な死者数を挙げ、「[昭和15年と平成24年の]もはやどちらがどれほど『暗い』か『明るい』か」と述べ、今日の、平成24年の世相がむしろ暗いと主張しています。

 桜林さんは、昭和15年の不幸な死者数を御存知ないのです。おそらく、日華事変を知らないか、知っていても「中国相手の気楽な戦争」だと思い込んでいるのでしょう。

 当時は日華事変の真っ最中です。日華事変は日露戦争以上に過酷な戦争で、昭和12年9月から16年12月までの間に、陸海軍で19万人が、戦死、戦病死、戦地での公務死で死没しています。昭和15年には5万人程度が戦死しています。

 昭和15年は、当時は自殺者に加えて、それに倍する死者が発生し、それと同数以上の不具廃疾となった戦傷者が発生しているのです。

 当時の人口は今よりも少ない8000万人ですから、社会に与えるインパクトはヨリ大きくなります。実際に新聞縮刷版を読むと、毎日、戦死者を顕彰する記事が出ていますし、郷土部隊の戦死者名を公告する記事もでています。

 不幸な死者の数を数えてみれば、昭和15年と平成24年では「どちらがどれほど『暗い』か『明るい』か」は容易に判断できると思います。桜林さんのように判断つきかねることもないでしょう。

 時代の閉塞感も、平成24年どころではありません。戦争そのものも行き詰まり、終わる見込みもありません。日華事変は、最初に南京落としても駄目だったあたりで、もうどうしようもないのです。その後、広州、仏印と援蒋ルートを封鎖しても、蒋が降りる見込みもない。その上、対日禁輸も本格化し、国家総動員体制で配給制も強化された昭和15年は、相当に逼塞感が迫ってきた時代です。

 確かに、国家行事としての「皇紀は2600年」もありましたが、あくまで官製のお祭りです。そこで配給の大盤振る舞いもありましたが、国中が「奉祝ムードに沸いていた」ようなものではありません。東京オリンピックや大阪万博の世相とは、通奏低音の戦争の重苦しさが違い過ぎます。

 知り合いのだれかは出征兵士の家なのです。翌昭和16年度の支那派遣軍は72万8000です。海軍の支那派遣艦隊のうち、陸上配置部隊を足すと、まず80万人近いでしょう、出征兵士の家も80万戸です。当時は大家族ですから、出征兵士の家族は1000万人程度はいます。知り合いに出征兵士がいない人を探すのは無理な話で、出征した人のうち、年間5%強が死没し、同数の戦傷者を生むのです。

 試しに97の祖母に聞いたら、「皇紀二六〇〇年のお祭りなんて覚えてないよ。兵隊に引っ張られて大陸に行った爺様がいないんで、毎日が大変だったから」といってますね。日華事変の段階で、近所で白木の箱で帰ってきた人もいたから、支那派遣軍ほかで大陸で戦っている兵隊さんのご家族は、心労で奉祝どころではないのです。

 昭和15年が明るい時代「奉祝ムードに沸いていたはずだ」は、当時の世相を無視しています。桜林さんが左翼的な臭いに感情的反発をした「昭和15年は暗い時代」という戦前真っ暗史観と同様に誤りなのです。

※桜林美佐「『愛情』があるから人間は戦争をする 思考停止を脱して戦争の本質を理解せよ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36733



と、まあコミケ作業の合間に書いてしまったので、即時投稿。
冬新刊の「LCSには魅力がない」は概成したので、「陸上戦力18万の数字に根拠はない」本にとりかかろうかというところです。
2012.12
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Category : ミリタリー
 ターター/スタンダートには対水上射撃機能がある。10年前ほどか、自隊警備している時の暇つぶしで、当時2佐の、定年寸前の経補幹部の古いオトツァンから聞いた話なんだが、結構、対水上射撃をやっていたらしい。「当たれば、ただでは済まない。当たったところを見に行ったら、分厚い鋼板がスッパリ切れている」との由。

 「あまつかぜ」は対水上戦の切り札でもあったんじゃないのかね。長いこと唯一のターター艦であった。存在価値は今のイージス艦の比ではない。対空戦の切り札であっただけではなく、アスロックによる対潜戦にも期待されていたのだろう。その上、ターターの対水上射撃能力もあったわけだ。水平線のこっち側しか狙えないが、精度も威力も絶大だったわけだ。

 ターターの威力は5インチ砲弾どころじゃない。なんせ、600kgのミサイルが超音速で飛んでくる。運動エネルギーはデカイし、炸薬まで入っている。榴弾としては殻がヤワイが、中で破裂すればそれなりの威力は発揮する。せいぜい重さ30kgの5インチ砲弾とは比べ物にならない。そもそも砲弾は当たるかどうか分からず、しかも状況次第ではVT信管で破裂させるからねえ。

 「あまつかぜ」は対空戦だけではなく、対水上戦でも切り札だったのだろう。特に、ソ連の巡洋艦との対水上戦では、ターターでも使わないと勝てなかった。オトッツァン達が呪文のように「スベルドルフ、キンダ、クレスタ…」と暗記していたソ連巡洋艦は、海自護衛艦よりも大きく、対水上戦火力も強力だった。

 護衛艦にハプーンが搭載されるまでは、「あまつかぜ」以下のスタンダート搭載艦でどーにかするしかなかったわけだ。

 ただ、「あまつかぜ」は最後の時期にはあまり風評のよろしくない護衛艦だった。己は直接聞いたことはないが、海曹士あたりは「あまつかぜがくる、貴重品○○」みたいな、号令をもじった冗談※ を言っていたらしい。



※ 舞鶴から来た電機員からよく聞いたし、他の人からも聞いたことがある。「○○がくる、右横付け用意」の節回し。その後何年か経って「あまつかぜ」で電機員やってた人に先任になってもらったのだが、遠まわしに聞くと、まあ烈火のように怒った。某所に隠してあるガスタービンを試運転していたときなんだが「そんなことはありません」の声がよく通ったよ。ちなみに、舞鶴から来た電気員と先任はほぼ同期(MとYだけどね)で知り合いだった。
2012.12
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22:36
Category : ミリタリー
 好きでも嫌いでもないのだけれども。軍事評論家の某さんが北朝鮮のロケットの話でラジオに出ているのだけれども、なんつーか、言っていることがミクロの話ばかりでねえ。エンジンがノドンだろうがムスダンだろうが、そんなのどーでもいいじゃん。

 軍事の話をするにしても、それによって、北朝鮮を取り巻く軍事環境がどう変わるかを述べるべきであって「回収できたので技術水準が分かる」なんて話はどーでもいい。わかったからどうなるもんでもない。

 アレは、念願の米本土に到達するロケットが作れたって意味と、人工衛星にできたので、非難しにくかろうといったあたりがメインじゃね。米国にとっては大事だけれども、日韓にとっては軍事的な脅威の大した上積みにもならない。日本にとっては、今でも射程内なんだから、大した上積みでもない。韓国にしても、短射程ミサイルや火砲にコンマ1%以下の上積みにしかならないので、あんま問題はない。

 政治的効果の話もしない。米国にとっては、米本土に届くミサイルを作られたことは、心理的な脅威になる(命中精度なんてどーでもいい)わけだ。けれども日韓にとっては、あんまりね。北朝鮮の体制の権威があがったとか、ミサイル技術が上がって、重いもの、まあNBCが積めるようになると困るねといった潜在的な話にすぎない。あるいは、北朝鮮の脅威が上がることにより、米国を日韓に引き込めるようになったみたいな話をすべきじゃないのかね。

 北朝鮮にとっては、前の軽水炉と同じ政治的な駆け引きの道具ができたねとかもあると思うんだけど。イージスがどうとか、EP-3がどうとかといった、本質から離れたミクロの話しかしないのがねえ。

 アレ、ミクロにこだわるあまり、物事を抽象化できないモデラーの話、件の「10式戦車がないと亡国」みたいな、全体を俯瞰しないどーしょうもない話そのものだと思ったよ。




うん、ラジオを聞きながらコミケ作業していてね。そういう話をしていたので、聞き取りながら書いてみたのだけれども。ラジオで話が終わって3分くらいでアップってできるもんだね。
2012.12
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19:54
Category : 映画
 コミケの作業で、BDとかDVDかけっぱなしにしていて、『肉弾』見ていたのだけれども。シガラミで自爆テロしなければならないヤクザの映画とかどうかね。「昭和44年、九州のヤクザの平均寿命は88歳だった。平成24年には44歳、その差44歳…昭和44年生まれのあいつも44歳」みたいな映画作らないかね。

 自爆テロが当たり前になった北九州の町で、組長とのシガラミでテロに志願した「あいつ」の物語なんだが、最初の決別の宴の段階で、組長の若い女房があくびしているみたいな映画。

 訓練キャンプで「この空気に耐えられない」と若いヤクザが「あいつ」から拳銃を奪って頭に当てて引き金引くけど不発。返してくれよと手に戻して、「爺さんが、朝鮮戦争の時に誤魔化したリボルバーだからな」みたいな言い方で、もう一度引き金を引くとズドン。若いヤクザが腰抜かすシーンとか。
 業務用のバンに、灯油缶とANFOを積めるだけ積んで街を流して、敵対幹部の車の脇で発火させようとするんだけど、4ナンバーの悲しさで、必死に走っていて追いつけないとか。首尾よく追いついたら出迎えの空車だとか、後少しのところで信号が赤に代わって、思わず止まってしまって、赤面するところとか。追いついたと思って点火準備をしたら、小倉駅前で通学の小学生を見てしまい、どうしても発火できないとかねえ。

 埠頭そばの埋立地での密航立会を嗅ぎつけて、首尾よく仇の車が隣に停まったその瞬間、手打ちのを知らせる電話が入ってくる。緊張の糸が切れて、リクライニングして、オピウムか何かを摂取して寝てしまうのだけれども、サイドブレーキが入っていなくて、水切り勾配のせいで、車が海の方にズルズル…
 どっちかというと、中東のゲリラ向けの話なのかね。これなら、アラブ・イスラム・西欧のどちら様にも角が立たない内容になると思うんだけどね。



 ま、冬コミまで当分はこんな内容ですね。なんせ12月の分はだいたい書きためたヤツです、ハイ。
2012.12
14
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13:00
Category : 有職故実
 すしを1貫、2貫なんて呼ぶのは最近のことじゃないかと思ってさ。
というのも、

「黒田のお殿様が16文しか持たないで屋台のすしを食べに出た。
 1ヶ8文のすしを4ヶ食ったあとで
 『1ヶ4文だと思っていた、金はねえ』といって
 『すしの値段もしらねえのか、この唐変木奴』
 といきり立った職人の客と殴り合いの喧嘩」

という話が篠田鉱造の『明治百話』にあったはず…という記憶からなんだけどね。ただね、家で調べたのだけれども。岩波の上巻に記載がない。そして、下巻が見つからないのよ。確か下巻にあったはずなんだが。

 ともかくね、篠田鉱造は、すしを「ヶ」で数えていたのだよ。貫ではなかった。だから、「すし 貫」というのは昭和に入ってできた言葉じゃないかなとね。

 そこで、すしの数え方をググッたら「やっぱ最近だよ」http://www.benricho.org/kazu/column_sushi-5sakka.htmlが出てきた。やっぱり、ひとつふたつ、いっこにこ、だよねえ。

 そもそも握りずし自体がここ最近、200年程度しか経っていないのに、由緒ありげに「貫」なんて新しい助数詞を作るのは、権威づけなんでしょう


2009年11月10日MIXI日記より
2012.12
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13:00
Category : ミリタリー
 肉眼は馬鹿にならないんだよねえ。レーダーやソーナー無しではなにもできないと思っている人多いけど、肉眼で先に発見することも結構多い。練習艦隊実習幹部で南米回されてた時に、艦橋見張りがブラジル潜水艦とヘリコプターを先に発見したことがある。

 どっちもCICがこっぴどく怒られたらしい。

 特にヘリコプターはねえ。見てりゃ分かる上「方位変わらず距離近づく」だから、報告しないのは懈怠だね。潜水艦は、分かるときと分からない時があるからしょうがない。向こうもゲーム感覚でヒッソリ接近してきたのなら、ソーナーでわかんないのも仕方ない。最後に分かるように浮上してくれたんだった。新型潜水艦で、電池航走だったら周波数スペクトラム見てもわかんないんじゃないかな。

 古いレーダだと、肉眼の方が先に見つけることもあった。練習船11号なんだが、相当古いレーダで、視程があれば肉眼とウイングにある据付双眼鏡のほうが先に発見できた。背の高いタンカー風なテッペン見っけて、「一番(から)艦橋、右30、タンカー、2万(メートル)、左に進む」とあげたことがあった。ホントは距離はあてずっぽうだが、まあ10万どころじゃないから20万だと思った。その時、船体が水平線の下にあったかもしれないが、レーダでは10万程度から先は見っけられなかった。

 そういうレーダなんで、荒天時には水上目標も拾えないこともあった。練習船は小舟なので簡単にカブる。燧灘でガブッたときにレーダは役にたたなくなった。そうこうしているうちに、船酔いで候補生がドンドン居なくなる。そこで、レーダなんかどうでもいいから、操舵手やれといわれたことがあった。

 高台に登れば、遠くまで見えるもの。仙台合同庁舎の機関に出向中、先にある仙台港、そこに入る商船がよく見える。暇な時に同じ出向のオトッツァンと「アレなら大砲があればいつか当たるだろ」という話になり、そのまま30分くらいか観察したことがある。実際、マグネットで概略方位、霞み方で概略距離、波切りで概略速度を出して、紙の運動盤に書きこんで撃って修正すればいい。分画付双眼鏡があればより正確になる。方位は地物からの水平方向分画とればいいし、距離は水際眼高差、水平線と喫水線の垂直方向の分画を取ればいい。速度は仮定した速力尺当てれば大体は分かるわけだ。なんにせよ、陸上側は動かないから、悩むこともないよねえと。

 まあ、レーダがないと射撃できないとか、甚だしいのは対艦ミサイルも撃てないということはないね。
2012.12
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12:36
Category : 有職故実
 小沢昭一が死んだ。さっき『ゆうゆうワイド』で第一報を聞いたように、まずはラジオの人と思うのだけれどもね。もとは映画や演劇の人なのだが、あいにく映画だと『幕末太陽傳』とか『肉弾』でしか知らない。

 小沢さんは、昭和20年、人材温存のために作られた九州の海兵分校に入る。当時の回顧として、課業外に中尉の分隊士?が「小沢、東京が恋しくないか」と言われ「恋しいです」と答えると「俺もだよ」と言われたといった話をしていた。海兵に行く前の話、麻布中学での配属将校も柔軟な人だったというような話もしている。逼塞感にあふれた時勢の中でも、常に張り詰めていたわけでもないからねという話をしたかったのだろう

 この海兵分校は、高木惣吉が作った制度なのだが、江田島の海兵本科からは徹底的にイジメられている。同じように戦争に行っていない75-77期が「お前ら海兵を名乗るな」とまで言っている。期名では( )に入れられて(海兵78期)ともされている。昔の『水交』あたりを読めば分かるのだが、機関学校や経理学校への差別どころではなく、まずは尋常の話ではない。

 小沢さんは、その78期同期会の司会をやった話が出ている。ちくま文庫で題名は忘れてしまったのだが「78期は多い、4000人もいる、カネミ油症?事件で逮捕された○○さんも78期、担当した厚生省の○○さんも78期、担当検察官の○○さんも78期」といった挨拶をしている。

 ただし、その後の会の流れが「同期の桜」の類を歌うアレな感じになってしまい「御歯に合わない雰囲気」と冷ややかな目で見ているのだけれども。

 このあたりの話を含めて、まずは早大出の将校・幹部の雰囲気だよね。小沢さんの場合は、分校の後に早大一文なんだがね。なんというか、醒めているというか、軍隊特有の自転する構造に対して批判的になってしまう。己もそうだし、同期に3人いた同窓もそう。名誉早大だった慶応出もそんな感じだった。いろんな意味での先輩が死んでしまった印象を受けたよ。

 当節の、兵隊の生活も知らないひ弱なボンボンが、なんの必要あってか国防軍だの憲法改正だという御時勢があるけどね。小沢さんにはそれを茶にして欲しかったねえ。

 戦争でエライ目にあった昭和ヒトケタで、比較的恵まれているとはいえ海兵分校で軍隊生活を暮らした小沢さんは適任だと思うのだけれども。
2012.12
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Category : ミリタリー
 「こんごう」級「あたご」級の各イージス艦、BMD改修の時にベースライン嵩上げしてんじゃないかね?
 イージスシステムに関しては、「こんごう」がベースライン4、「あたご」が7とされているのだけれども。BMD特別改修の時に、イージスシステムのベースラインを最新にアップデートしてんじゃないかと。

 というのも、ちょっと前のIDRに、イージスシステム・ベースライン9の記事が出ていたのです。記事では、今年中に9に上げて、SM-6運用能力を持たせる云々とあったのですが、最初に導入されるのが、新造艦ではなく、タイコンデロガ級のチャンセラービル。レトロフィットしているわけです。

 ベースライン9は、並行して開発されています。チャンセラービルが装備されるのが9A、2013年にアーレイバーク級のジョン・ポール・ジョーンズに9Cが装備されます。新造艦艇への適用は、9Dになってから、建造中のジョン・フィンに2015年1月装備されるという話。そして9Bはキャンセルされたとのこと。

 その9Bの説明だけども、米海軍がイージスシステムを積極的にレトロフィットするつもりを伺わせる内容になっている。9Bは、タイコンデロガのチョウシン以降の、既存のベースライン4をを一括更新するものだったとされている。ベースライン改修は、作業的にも経費面でも、やる気になればできる話なんだろう。

 レトロフィットが実用的であるなら、海自もこっそりやってんじゃないですかね。BMD改修は途方もなく高い。こんごうの時には、事業費400億弱程度つかっている。やったこともあるのですが、規模が大きければ、いろんな物を紛れ込ませる事もできるわけです。「イージスシステムを改修する」という内容であれば、ベースライン嵩上げも可能でしょうしね。

 だから、日本のイージスは全部7相当にアップグレードしてんじゃないかなと。海自は良しにつけ悪しきに機械主義者です。チャンスはまず見逃さない。BMDと関係ない通常の防空戦のあたり※ とか、状況判断のアレとかも、イージス改修で全部ひっくるめて実施してんじゃないですか。イージス以外も、その機会についでにやってるでしょうし。

 まあ、イージス艦の機能強化は悪いことじゃないですし、中国との海軍力のゲームを考えると、ベースライン7に上げることには、効用もあるのでしょうけどね。少しは発表してもいいんじゃないですかね。もちろん「その部分、無駄じゃん」と言われるのが怖いから、ナイショなんでしょうけど、



※ そうとう昔に、BMDと通常防空戦のあたりの取り合いの話もあったけどね。IDRにはベースライン7ではそこも解決するようなことも書いてあった。
2012.12
08
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13:00
Category : オカルト
 だよもんさんの説によると、74式戦車はシャーマン戦車にも劣るらしい

>だよもん(階級剥奪済み)‏@V2ypPq9SqY
>74戦車でk1戦車に勝てるというが、74は新砲弾出るまではT55相手でも圧倒的に不利であった。
>世代が違いすぎて無理や。
https://twitter.com/V2ypPq9SqY/status/274350968831889408

 だよもんさんの言うとおり、ホントに74式が「圧倒的に不利」なら、シャーマンにも劣る戦車になるんじゃかね。だって、イスラエルのシャーマン改修型、IシャーマンはT-55に対して不利でもなく、照準装置と発射速度を活かして優位に立っているわけだしね。その中身だって、シャーマンに74式と同口径の105mm砲に換装しただけだからねえ。
 T-55は74式に圧倒的優位である、シャーマンはそのT-55に対して有利である。それなら、シャーマンは74式にも圧倒的優位+になるんじゃないですかね。

 ま、なにをもって74式がT-55に「圧倒的に不利」だと判断するのかが不思議なんだけどね。

 まず、攻撃力は74式が優位でしょ。74式の105mmL7はT-55に対して「圧倒的な不利」どころではありませんね。APFSDFはともかくとして、L-7は1959年の開発当時からAPDSはあり、中東戦争ではT-55やそれ以降のソ連戦車を容易に撃破している。FCSも負けていると思えない。74式は最初からレーザ測距に連動したFCSを持っていた。対して、T-55にレーザ測距が適用されるのは、T-55Mが登場した1980年代に入ってから。そのT-55Mにしても、FCSは80年代の西側にすら簡易型としか評されていない。
 装甲は同等でしょう。当時の冶金技術はソ連が優れていたかもしれないが、生産技術は74式が有利でしょうから行って来いですよ。なんにしても、基本的に重量が同じで、同じ鋳鋼だと所詮はどんぐりの背比べにすぎない。
 機動力は明らかに74式の方が上、馬力も大きいし、トランスミッションの差は隔絶している。

 だよもんさんは、絶対的優位じゃなければ、二分法で「圧倒的不利」だと考えているのだろうね。ちょっとでも瑕疵があると、その不利に我慢ならない。「T-55でも74式に砲弾を当てることができる、当たれば74式はお陀仏、、絶対的に優位に立てないんだから、圧倒的に不利」だと思っているのでしょう。

 まあ、そういう発想だから、潜水艦あたりで極少数のコマンドの類は上陸できるから「周辺国による対日上陸戦は可能である」とか判断するのだろうね。実際に、苫小牧や室蘭にもロシア軍は上陸してくるって言ってるくらいだしね。まあ、ロシアの"Enemy's Stuation"とか、苫小牧や室蘭上陸についての"Suitability"、"Feasibility"、"Acceptability"なんて一回も考えた事ないんだろうから仕方がないのだろうね。
2012.12
07
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Category : ミリタリー
 「海上自衛隊も採用する消臭靴下」って何だろうね。PR記事で見っけたのだけれども靴下では必要性が立たないので採用はないでしょう。

 普通、靴下は私物で買うもの。官品もないわけじゃないが、曹士に2足支給されるだけ。しかも向こうが透けて見えるほど薄くて「靴下はいてます」と見せる以外には何の役にも立たない。曹長扱いで官品がもらえる候補生の時に貰ったが、まあ使えない。

 自衛隊としちゃ「靴下であればそれでいい」のでしょう。調達するヤツも配るヤツも「履いている奴いるのか」と思っているんじゃないですかね。

 自衛隊が、靴下に消臭機能付なんか買うほど親切でもないでしょ。「(商品名) 海上自衛隊」で検索すると、似たPR記事が頻出しますけど、具体的にどこの部隊が調達したなんて書いていない。

 会社のウェブページにも、当該靴下について「海上自衛隊」の一言も書いていない。別のPR記事を読むと、専務さんが『リピートしてくださる隊員の方は少なくありません』と言及しているだけ。リピートするというのであれば、私物でしょう。官品はリピートなんかできませんから。

 私物で買ってくれた人がいますよ、とか、無料で配った試供品が役に立っていますよ、みたいな話じゃないのかな。広告で「海上自衛隊採用」を明言するのは、広告を作った段階での勘違いか、悪意があれば誇大表現ではないですかね。例の、誰もつけていない、単に共済取扱商品であるだけの、自衛隊御用質時計http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-322.htmlみたいなものでしょう。

 調達関係みても去年に補本で「敷布、消臭機能付、艦艇用 ほか1件」というのがあるだけ。ほか一件とあるから、これなのかもしれないけどねえ。価格的に敷布が主で、しかも契約額170万程度だから、試しで買った程度じゃないの。

 消臭靴下では、本格的に調達できないでしょう。「なんでこれでなければならないのか」を説明できないといけないけど、消臭靴下が謳っている新機能って、JIS規格で示されていないし、基準となる○○相当以上もできないから。

 実際に、艦艇部隊だからといって、消臭靴下が是非とも必要ってこともないでしょう。艦艇の中では常に短靴と靴下を履いているわけじゃない。艦内には泥は持ち込まれないし、禅寺のように磨き上げられている。非直時は靴下脱いでサンダル、科員寝室では素足にもなれる。私物も結構もちこめる。靴下なら日数分+アルファは持ち込む。昔と違って造水装置があるので、余裕があれば洗濯もできる。

 まあ、末端部隊で、潜水艦とか潜医隊みたいな、ホントに過酷なところで少数を「物買い」したかもしれないけどね。
2012.12
05
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13:00
Category : 有職故実
 歴史的円高とか言っているが、アレって単に米ドルがインフレで価値下落しているだけじゃないのかな?

 米哨戒艇サイクロン級建造費(1990年契約)を知りたくて調べたのだが。「インフレ換算しなきゃいけない」と「アメリカのインフレ率の推移」※ から、各年分のインフレ率を22年分乗じた。1.0542(1990年ね)とか0.9968(2009年ね)みたいな数字を掛け算でつないで、グーグルに計算させたんだがね。1990年から22年間のインフレ率は185%となった。

 これって、ドル円相場の変化そのものじゃないかね。1990年は1ドル150円位、2012年は80円位、80円に185%を掛けると、ピタリ148円になる。

 歴史的円高って、実は妥当な為替水準ではないかね。同じ期間、日本のインフレ率は1%未満が多く、プラスとマイナスで行って来いになっている。日本円の価値が同じなんだから、インフレの分、米ドルの価値が下がるのは当然といえば当然の話だろう。

 それを「歴史的円高で輸出業が大変」というのは間違っているんじゃないかな。ドルの価値が一定で、円が高くなったので輸出ができなくなったわけではない。ドルの価値が下がっているのだから、米国での価格が上がるのも当然だろ。

 輸出業が大変なのは、円高のせいではなく、中国からの輸出の影響ではないかね。ドルがインフレを起こす中、本来であれば諸式は高騰する。しかし、安価な中国製品は、米ドルの価値が下がり続ける中で、ドルベースで従来の価格を維持しつづけたわけだ。米国での輸出不審は、生産コストをさげられない日本製品が、同等品質を確保した安価な中国製に駆逐された結果じゃないかと思うよ。

 そもそも、米ドルの価値下落があって、日本円の価値がキチンとそれに応じているのだがら、「歴史的円高」を問題にして「あるべき相場水準は」云々で「あわよくば為替介入」という助平心は間違ってるんじゃないですかね。

※ http://ecodb.net/country/US/imf_inflation.html
2012.12
04
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18:48
Category : ミリタリー
 香港誌『鏡報』によると、来年に中国は国産空母を進水させるとのこと。昔から『鏡報』は新中国寄りで、先方が言いたいことをアナウンスする役割があった。内容的には信じがたいが、まず、無下には扱えない情報なんじゃないかね。

 梁さんは「十八大吹響強軍」※で
中国首艘国産航母将於一年後下水・排水量与遼寧艦相若・採用蒸気輪汽並蒸汽弾射器、不採用燃汽輪機是従風険角度考慮及方便銜接未来的核航母・最快2005至206年服役(下線ママ)
と述べている。

 来年進水はともかくとして、前から国産空母建造中という話はあったわけだが。サイズや主機、発艦方式については出た話はあまりない。「遼寧艦と同じ大きさ、蒸気推進と蒸気カタパルトを導入する。その目的は原子力空母建造のため」という具体的な話なのが気にかかるわけです。「最も速いスケジュールで、2005-2006年に就役」という部分は「2015年から2016年」の誤記だろうね。

 ただねえ、蒸気カタパルトは難しいんじゃないかな。
 中国には発電所でのノウハウはあるので、信頼性はともかく大出力蒸気タービンと補機群は作れるでしょう。
 でも、カタパルトはゼロベースで造るしかない。とりあえず効率や信頼性を無視したものを作ったとしても、それでは実用性に欠けてしまうわけです。それを含めて試行錯誤を考慮すれば、国産空母はカタパルト試験艦で終わっちゃうんじゃないですかね。(まあ、それでいいならいいのかも知れませんけどね)

 また、梁さんは、引用部のあとにも国産2隻目について言及してます。概要をまとめると「国産2隻目は、1隻目の進水から2年、就役から2年遅れる」「ガスタービン推進、電磁カタパルト」とのこと。

 このガスタービンと電磁カタパルト採用も、少々信じがたい内容なんだよね。

 ガスタービンは、吸排気のために、甲板に吸気路・煙路といった開口部を設ける必要があるわけです。それをやると、格納庫や飛行甲板を狭めてしまう欠点がある。それをわざわざやりますかということが一つ。また、搭載するガスタービンをどうするか問題になるでしょう。中露はガスタービン技術で遅れており、米英製に比較して、いま一つであって、容積効率や燃費が悪いことも問題です。

 電磁カタパルトは、米国でも最新技術であって、中国がホイホイ作れるものではない。前にIDRに電磁カタパルトEMALSの記事※※ があったが、記事の内容から考えると、Su-27系の大重量機を押し出せるものを作るのは相当に難しい。なんといっても、F-18より重い。アメリカが作った電磁カタパルトよりも高性能なカタパルトが必要になる。それを中国が作れるとも思えないわけでね。

 何にせよ、信じがたい内容なんだよね。。
 とはいえ、完全無視もできない。『鏡報』は江戸時代のオランダ風説書みたいなもので、それなりの信憑性をともなっているんじゃないかというあたりか。

 そして梁さん「中国はあと30年で超一流海軍国になる」とも述べている。30年を10年毎に分けて説明しているのだが「最初の10年で空母打撃群が3ヶできる」としている。そんなにスンナリ行くものかねえ。

 ただ、もし、仮にそうなったとした時には、日本はどうするのかを考えると、日本も空母造るんじゃないかと。歴史的に見てそうなるんじゃないかと思うのですよ。確かに、日本人は海軍力で超越しているかぎり、軍事力には無頓着を極めている。でも、一回でも海軍力の劣勢を見せつけられると豹変する。そして海軍力増強を最優先にする。そういう国民ですからね。

 実際に、黒船襲来、長崎事件、旅順艦隊創設で海軍力劣勢を感じた日本は豹変していますよ。まず維新後、日本は海軍建設を最優先にした。明治初期には優先順位通り「海陸軍」と呼んでいたほどの優先度になっている。また、日清戦争直前には、宮廷費削減・公務員給与1割減もやるからとする
明治大帝の詔勅を受け、政府と議会は海軍拡張予算を可決した。そして、三国干渉後に成立した六六艦隊は、保有艦隊の二倍以上を新造整備する大軍拡であった。それなんか臥薪嘗胆の一語で可決しているわけです。

 ま、日本人は、突然化けるということです。海軍力の劣勢を感じた日本人は、海軍力の大増強を行うでしょう。中国が正規空母を3隻就役させたとなると「相手が空母を造るなら、日本も空母を造ろう」って話になるんじゃないかと、まあそう思うわけですよ。※※※



※ 梁天仞「十八大吹響強軍」『鏡報』(鏡報文化企業公司,2012.12)p.p.12-15
※※ "Power assist: EMALS era""INTERNATIONALDEFENCE REVIEW"(IHS,LONDON,2012.4)P.P.58-67
※※※ みんなF-35云々いうんだけど、とりあえずは、今ある軽空母にゴスホークの類でも積んで、飛んでみせればいいんじゃないのって思うんだけどね。


いや、ポストに入ってた『鏡報』最新号がねえ、この内容なので急遽投稿したのです、ハイ。
2012.12
03
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Category : 有職故実
 「海軍参謀長」は誤訳じゃないけど、不案内な人の不適切な翻訳じゃないでしょうか?

 「自衛隊の名称改正を改正しよう」という話です。だたし、選挙の話題じゃない方。その中で見つけたのですがが、やはり「海軍参謀長」のあたりには相当に違和感を感じてしまう。

 『外交』最新号に、道下徳成さんが「自衛隊の組織・装備の名称改正案」※(1) を述べています。問題意識としては、国民にわかりやすくすべきだというもので、理解でき、共感できる内容になっています。しかし、自衛隊での名称については、すでに膾炙している部分もあります。英訳はズバリ軍隊そのものなので、実施する必要性は、あまり感じらるものではないように見えます。

 道下さんの主張は、昔の「『特車』って何?」と同じものです。「国民が理解し難いから、各自衛隊は陸海空軍に、階級は旧軍呼称に、普通科を歩兵に、施設科を工兵にしたほうがいい」(大意)といった内容です。

 もちろん、使用上には実害はありません。隊員はわかっているし、海外でも問題はない。道下さんが言っているとおり、自衛隊は英訳で世界標準にあわせてある。歩兵はinfantryだし、大佐はCaptain、大尉はLieutenant。実務レベルでは、海自なんかは平気で"JAPAN Navy"(なぜかJapaneseではない)と言っています。

 道下さんは、漢字表現だと「中国と韓国で理解し難い」という意見もされています。ただし、旧日本軍と全く同じでなければ理解されないわけでもありません。「戦力ではない」理屈の自衛隊が「国軍」なのは、「党の軍隊」であるはずの人民解放軍が「国軍」なのと同じです。階級にしても、日中韓でも漢字名称は違う。日本が大佐、大尉にしてもコンパチになるわけでもない。漢字文化圏で通用しにくいのは、陸自の普通科、特科の二つだけでしょう。海の「護衛艦」なんて、中国語でも似た様な感じです。タイプ056は、中国側では056軽型護衛艦です。

 ただ、海軍関係の言い換え表現は気になります。各種名称は、変えても変えなくても、どちらでもいいのですが。旧軍準拠に変えるのなら、正しく踏襲しないと不自然感が生まれます。また、規模や内容を正しく示せていないようにも見えます。

 中にある言い換え一覧表「自衛隊の現行名称と新名称案」その海軍関係用語が相当に不自然・不正確なのです。

 「海軍参謀総長」「海軍参謀部」「海軍作戦司令部」はあまりにも不自然でしょう。普通は「軍令部長」「軍令部」「◯◯艦隊司令部」※(2) になります。「海軍参謀本部」も、一応は明治の一時期にはあったのですけど、あまりにも短命で人口に膾炙しませんでした。

 英訳部分でも、例えば護衛隊群を"Escort Flottila"ではなく"Destroyer Squadron"とするのは、二重に間違えているでしょう。"Destroyer Squadron"は相当に不自然です。元の"Escort Flottila"は、水上部隊だよという分類と、フロッティラ(小艦隊)であることを示しています。対して、"Destroyer Squadron"だと、駆逐艦だけという意味と、フロッティラから規模が一つ落ちた「戦隊」※(3) という意味になってしまう。ニュアンス的に、タイプ編制、つまり同じ型の駆逐艦だけを集めた、駆逐隊のイメージになります。今でいえば護衛隊のイメージです。

 護衛隊群は、規模内容として、いまのまま"Escort Flottila"でいいでしょう。あるいは、まあ単に"1st Flottila"とか、あるいは、タスク編成っぽくなりますけど"Surface Group"か"Surface Action Group"ではないでしょうか。

 他にも、今の航空集団を"Naval Aviation"にするのも、イメージが違います。"Naval Aviation"では、組織ではなく、海軍航空職域をイメージしてしまう。日本語の方も「海軍航空隊」ですが、これも作戦組織ではなく、漠然とした職域イメージです。海自的には「海軍航空隊」よりも「航空艦隊にしてくれ」※(4) でしょう。英名も、今のままの"Fleet Air Force"か、お師匠さんに倣って英海軍の"Fleet Air Arm"、空自と紛らわしいけど米海軍と同じ"Naval Air Foerce"でしょう。

 階級制度についても、旧軍に倣うのであれば、陸空とは違う階級呼称にしないといけない。すると、兵曹、水兵になる。表には下士官の部はありませんでしたが、陸式な軍曹、伍長あたりはダメでしょう。特に伍長は、先任伍長と衝突するからダメ。今の今の海曹、海士でも、旧軍呼称と充分親和的なので、特に変える必要はないでしょうけれども。



※(1) 道下徳成「自衛隊の組織・装備の名称改正案」『外交』(外務省,2012.11)pp.134-141.
※(2) ◯◯には、連合艦隊なり自衛艦隊なり、明治初期みたいに中艦隊なり適当な語を入れればいいんじゃないですかね。
※(3) 大きい方から並べると、Fleet-Flottila-Squadron-Division-Sub Divisionの順番になる。日本語なら、艦隊-小艦隊-戦隊-隊-分隊かな。艦艇なら、Divisionで個艦ですね。
※(4)「航空集団」も空軍ぽくて嫌だ、「ホントは航空艦隊にしたかった」といった話が、うろ覚えですけど『水交』(だったか?)にありました。
2012.12
01
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13:00
Category : 有職故実
 60年前の新聞※ に、感嘆するほどの悪漢ぶりを見つけた。昭和30年、師走の29日に質屋に押し入った強盗の話なんだが、発砲した警官から拳銃を奪い逆にズドンという話。

 舞台は西巣鴨の某質店。そこに強盗が入ったと、某巡査が駆けつけるところから始まる。

 強盗を見つけて「撃つぞ」と拳銃を擬した巡査。しかし強盗は怯まない。『そんなものに驚くか』※ と徒手にて格闘を挑みかかる。巡査は咄嗟に発砲したものの、当たらない。そのまま両者つかみ合い、上になり下になる大乱闘をしたのだろう。だが、やはり警官、強盗を組み敷くことに成功する。

 その瞬間、強盗は隠した切出しナイフで下腹部を刺突、ついで手にも切りつける。怯んだ巡査が手離した拳銃を見事に奪取。強盗は、そのコルト38口径、銃番号は568898という。強盗は躊躇せずズトンズドンと2発発砲。一発は警官の脇腹に見事に命中。そのまま逃亡に成功したという話。

 もちろん、悪いのは強盗であり、その罪は軽くはない。しかし、そこには一種の力強さがある。拳銃なぞ当たるものかと踏み込み、あるいは組み伏せられても六分か八分かの切出しで窮地を逃れ、拳銃を奪い脚を止めたのは、アクション映画の筋書きそのものだ。

 もちろん、無責任な感想とは承知している。最近でもなく、親類縁者が被害を受けたわけでもない。当の強盗を実見すれば、おそらくは下卑た男と感じるのだろう。しかし、記事からはその力強さが魅力的に見えるのも事実なのである。もちろん俗悪映画での魅力であり、社会では称揚どころか凶悪犯罪であるが、見事なまでの悪漢ぶりに感心し、思わずメモ取っててしまったほどのやり取りでもある。

 なお、翌日の新聞によると、不首尾の警官は翌日には峠をこえ、全治1ヶ月で済んだとの由。



※ 「ピストル奪い射つ」(朝日新聞,1955年12月30日7面)