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Category : ミリタリー
『『ひゅうが』の類、30kt出す必要があるのかね』でも書いたけれども。水上艦の最大速力は何ノット必要であるかという話です。まあ、27ktあれば充分じゃないかなぁ。
戦前、艦隊用水上艦にとって、対水上戦は最優先の任務であった。艦隊型水上艦とは、巡洋艦や駆逐艦のことである。艦隊用水上艦は、砲や魚雷を用いて敵艦船を攻撃することに主眼をおいていた。そのためには強力な火力を装備するだけではなく、優位な状態で火力を発揮できることも求められた。
このため、水上戦では対勢が重要視された。対勢とは、敵味方の位置、針路、速力の関係を示す言葉である。水上戦では、有利な対勢を取ることができれば、効率的に火力を発揮することができた。逆に、不利な対勢であれば、火力発揮の効率は落ちる。いわゆる丁字戦法も、優位な対勢を取るための手法である。
対勢を有利にするためには、速力が必要である。優位な対勢を取るためには、相手よりも優位な位置に占位しなければならない。また、相手を抑えこむ針路をとる必要がある。このためには優速が必要となる。丁字戦法の例で言えば、針路に制限のない場合、双方が同じ速力であれば、まず丁字の頭(尻尾でも良い)をとることはできない。概ね同航戦(互いに平行な針路で撃ちあう戦い)に持ち込むことができる。頭を取るためには、相手よりも早い速力が必要である。また、不利な対勢から逃れるためにも、ある程度の速力が必要である。速力に劣勢があったとしても、速力さが小さければ小さいほど、頭尾をとられる可能性は減る。頭尾を取られても逃げられる可能性は大きくなる。戦前期の思想で作られた艦隊型水上艦の最大速力は、33ノット超、場合によれば35ノット超を要求されるに至った。
しかし、太平洋戦争では対水上戦の優先順位は低下した。対潜戦や対空戦への所要が増大したのである。機会の少ない対水上戦よりも、対潜戦や対空戦への対応が優先されるようになった。具体的には、艦隊型水上艦であっても、対水上火力を減じてでも、対潜火力や対空火力の充実が図られるようになったのである。
対潜戦や対空戦では、水上戦ほど最高速力への要求は生じない。対潜戦でも潜水艦に対して優位な対勢を占めなければならない。だが、潜航中に潜水艦が発揮できる速力は極めて遅い。水上艦は容易に優速を保つことができた。対空戦については、速力はあまり意味を持たない。艦隊陣形を維持できる程度の速力、あるいは舵効きがよくなる程度の速力が発揮できれば足りるのである。
戦時建造計画の段階で、すぐに最高速力性能は要求されなくなった。艦隊型水上艦の主任務は、対潜戦であり、ついで対水上戦となった。艦隊型水上艦に要求される最高速力は、切り下げられた。対水上戦を意識したかつての高速力は見直された。高速力は大出力機関を要求する。大出力機関は当然大きいため、船体容積や重量の大分を占めてしまう。また、高船価であり、建造期間も伸ばしてしまう。しかし、それでも最大速力30ノット超は必要とされた。対水上戦の可能性がある以上、対水上戦で不利にならない程度の速力が必要とされたためである。
戦後は概ね最高速力として30ktが基準となった。これは、戦争中に建造された艦隊型水上艦の最高速力基準が、そのまま残った結果である。戦後に建造された艦隊水上艦の最高速力は、時代とともに30kt丁度まで下がっていった。30ktを超える部分速力は無意味と判断されたのである。だが、30ktという数字はキリの良いこともあり、そこからはなかなか落ちることもなく、最近まで続いている。
しかし、最高速力30ktは現実には必要はない。戦後、海戦をとりまく環境は大きく変化した。まず対水上戦では対艦ミサイルが登場している。また、対水上戦以外でも、対空ミサイル、艦載ヘリコプターが普及している。これらの環境の変化により、最大速力への要求は減じているのである。
対艦ミサイルの普及により、対水上戦は変化した。戦後、1970年代までは、水上艦艇は水上砲戦を意識していた。1960年代以降、すでに東側は対艦ミサイルを装備し、西側も一部の対空ミサイルを対水上使用する意図を持っていた。だが、ミサイル発射可能数は多いものでなく、ミサイルでの交戦が終わった後には、水上砲戦があると考えられていた。しかし、1970年代以降、小型軽量の対艦ミサイルが登場すると状況は変化した。在来艦艇に容易に後付けされた対艦ミサイルは、対水上戦を変えたのである。
対艦ミサイルを用いた対水上戦は、対勢を意識する必要はない。対艦ミサイルでの攻撃に際しては、目標に対して優勢な針路というものはない。対艦ミサイルは発射方位に制限はない。大砲では自艦の艦橋や煙突で隠れてしまう目標は射撃できない。だが、対艦ミサイルであれば問題はない。また、発射時に限ってミサイルが目標方向に向くように針路をとってもよい。また、対艦ミサイルの射程は砲よりはるかに長大である。ミサイルも打ち放し性能を持つため、艦艇側は誘導する必要を持たない。
対勢を意識する必要が減じたため、対水上戦に要求される速力要求は低下した。もちろん、水上砲戦への備えもあり、極端に低下させることもできないが、必要な最高速力は減少したのである。
対空ミサイルが登場し、普及したことも最高速力への要求を切り下げる要因である。空母直護を担当する防空艦も、かつてのような高速力は要求されなくなった。対空兵器が砲から対空ミサイルに変化した結果、1隻あたりで担当できるエリアは拡大した。護衛対象である空母を、容易に対空ミサイルの迎撃エリアに収められるようになった。従来に比べ、相当ルーズな艦隊陣形でことたりるようになった。防空戦には緻密な艦隊陣形は不要となり、陣形転換や針路変更に合わせて、基準艦である空母よりも高速な占位速力で陣形内移動をする必要はなくなったのである。
ヘリコプターが搭乗し、普及したことも最高速力への要求を切り下げる要因である。対潜戦を艦載ヘリコプターに任せることができるようになったため、緻密な艦隊陣形維持の必要はなくなったのである。もともと対潜戦ではそれほどの最高速力は要求されないが、空母直衛であっても、占位や蛙飛びをするためのような高速力は不要となった。艦載ヘリコプターの海上での警備であっても、極端な高速力への要求は減少している。目標追跡や、場合によれば強行移乗も艦載ヘリコプターに任せることができるようになったため、高速力は不要になったのである。
今日では艦隊型水上艦であったとしても、30ノットが必要というわけではない。実際に、対艦・対空ミサイルや艦載ヘリコプターが一般化した80年代以降、艦隊型水上艦の最大速力は30ktを切るようになってきている。スペインのミニイージス、バサン級の速力は29ktである。英国新型駆逐艦、タイプ45型であっても29kt、英国タイプ23型は28ktである。実際の要求最高速力はこれよりも低い。機関構成はレディメイドであるガスタービンを組み合わせて決定される。このため、要求速力を発揮するために必要な出力丁度ではなく、それ以上の出力となってしまった結果である。
今日の艦隊型水上艦に必要な最大速力は、多くとも27ktあれば充分である。既述のとおり、対水上戦であっても、空母直衛であっても、海上警備であっても30ktは不要である。実際に必要な速力は、米フリゲートが参考になるだろう。ブロンシュタイン級以降の米フリゲート(当時護衛駆逐艦)は、27kt(荒天時維持速力)が費用対効果上、最適と考えられていた。そして、米フリゲートは、運用上艦隊型護衛艦と同様に扱われたが、27ktで問題は出ていない。空母を除けば、艦隊型水上艦が護衛すべき重要艦の速力は、高速でも25kt程度であり、十分優速である。また空母直衛であっても、常に高速力を維持しているわけではない。空母直衛であっても、米フリゲートがその任務を果たしていることからすれば、やはり27kt発揮できれば十分である。27ktあれば、対水上、対潜、対空、海上警備、空母直衛の任務は果たせるのである。
自衛隊の甲種護衛艦も、なんだかんだで30ktは維持しているけど、もう少し落として機関を安くしても問題はないカモ。
でも、ガスタービンを組み合わせるとオーバーパワーになってしまうのも仕方が無いところかね。実績もないヘンテコなガスタービンを採用するよりも、力が余っても熱効率がよくて信頼性のあるLM2500あたりを装備するのが正解だしね。
戦前、艦隊用水上艦にとって、対水上戦は最優先の任務であった。艦隊型水上艦とは、巡洋艦や駆逐艦のことである。艦隊用水上艦は、砲や魚雷を用いて敵艦船を攻撃することに主眼をおいていた。そのためには強力な火力を装備するだけではなく、優位な状態で火力を発揮できることも求められた。
このため、水上戦では対勢が重要視された。対勢とは、敵味方の位置、針路、速力の関係を示す言葉である。水上戦では、有利な対勢を取ることができれば、効率的に火力を発揮することができた。逆に、不利な対勢であれば、火力発揮の効率は落ちる。いわゆる丁字戦法も、優位な対勢を取るための手法である。
対勢を有利にするためには、速力が必要である。優位な対勢を取るためには、相手よりも優位な位置に占位しなければならない。また、相手を抑えこむ針路をとる必要がある。このためには優速が必要となる。丁字戦法の例で言えば、針路に制限のない場合、双方が同じ速力であれば、まず丁字の頭(尻尾でも良い)をとることはできない。概ね同航戦(互いに平行な針路で撃ちあう戦い)に持ち込むことができる。頭を取るためには、相手よりも早い速力が必要である。また、不利な対勢から逃れるためにも、ある程度の速力が必要である。速力に劣勢があったとしても、速力さが小さければ小さいほど、頭尾をとられる可能性は減る。頭尾を取られても逃げられる可能性は大きくなる。戦前期の思想で作られた艦隊型水上艦の最大速力は、33ノット超、場合によれば35ノット超を要求されるに至った。
しかし、太平洋戦争では対水上戦の優先順位は低下した。対潜戦や対空戦への所要が増大したのである。機会の少ない対水上戦よりも、対潜戦や対空戦への対応が優先されるようになった。具体的には、艦隊型水上艦であっても、対水上火力を減じてでも、対潜火力や対空火力の充実が図られるようになったのである。
対潜戦や対空戦では、水上戦ほど最高速力への要求は生じない。対潜戦でも潜水艦に対して優位な対勢を占めなければならない。だが、潜航中に潜水艦が発揮できる速力は極めて遅い。水上艦は容易に優速を保つことができた。対空戦については、速力はあまり意味を持たない。艦隊陣形を維持できる程度の速力、あるいは舵効きがよくなる程度の速力が発揮できれば足りるのである。
戦時建造計画の段階で、すぐに最高速力性能は要求されなくなった。艦隊型水上艦の主任務は、対潜戦であり、ついで対水上戦となった。艦隊型水上艦に要求される最高速力は、切り下げられた。対水上戦を意識したかつての高速力は見直された。高速力は大出力機関を要求する。大出力機関は当然大きいため、船体容積や重量の大分を占めてしまう。また、高船価であり、建造期間も伸ばしてしまう。しかし、それでも最大速力30ノット超は必要とされた。対水上戦の可能性がある以上、対水上戦で不利にならない程度の速力が必要とされたためである。
戦後は概ね最高速力として30ktが基準となった。これは、戦争中に建造された艦隊型水上艦の最高速力基準が、そのまま残った結果である。戦後に建造された艦隊水上艦の最高速力は、時代とともに30kt丁度まで下がっていった。30ktを超える部分速力は無意味と判断されたのである。だが、30ktという数字はキリの良いこともあり、そこからはなかなか落ちることもなく、最近まで続いている。
しかし、最高速力30ktは現実には必要はない。戦後、海戦をとりまく環境は大きく変化した。まず対水上戦では対艦ミサイルが登場している。また、対水上戦以外でも、対空ミサイル、艦載ヘリコプターが普及している。これらの環境の変化により、最大速力への要求は減じているのである。
対艦ミサイルの普及により、対水上戦は変化した。戦後、1970年代までは、水上艦艇は水上砲戦を意識していた。1960年代以降、すでに東側は対艦ミサイルを装備し、西側も一部の対空ミサイルを対水上使用する意図を持っていた。だが、ミサイル発射可能数は多いものでなく、ミサイルでの交戦が終わった後には、水上砲戦があると考えられていた。しかし、1970年代以降、小型軽量の対艦ミサイルが登場すると状況は変化した。在来艦艇に容易に後付けされた対艦ミサイルは、対水上戦を変えたのである。
対艦ミサイルを用いた対水上戦は、対勢を意識する必要はない。対艦ミサイルでの攻撃に際しては、目標に対して優勢な針路というものはない。対艦ミサイルは発射方位に制限はない。大砲では自艦の艦橋や煙突で隠れてしまう目標は射撃できない。だが、対艦ミサイルであれば問題はない。また、発射時に限ってミサイルが目標方向に向くように針路をとってもよい。また、対艦ミサイルの射程は砲よりはるかに長大である。ミサイルも打ち放し性能を持つため、艦艇側は誘導する必要を持たない。
対勢を意識する必要が減じたため、対水上戦に要求される速力要求は低下した。もちろん、水上砲戦への備えもあり、極端に低下させることもできないが、必要な最高速力は減少したのである。
対空ミサイルが登場し、普及したことも最高速力への要求を切り下げる要因である。空母直護を担当する防空艦も、かつてのような高速力は要求されなくなった。対空兵器が砲から対空ミサイルに変化した結果、1隻あたりで担当できるエリアは拡大した。護衛対象である空母を、容易に対空ミサイルの迎撃エリアに収められるようになった。従来に比べ、相当ルーズな艦隊陣形でことたりるようになった。防空戦には緻密な艦隊陣形は不要となり、陣形転換や針路変更に合わせて、基準艦である空母よりも高速な占位速力で陣形内移動をする必要はなくなったのである。
ヘリコプターが搭乗し、普及したことも最高速力への要求を切り下げる要因である。対潜戦を艦載ヘリコプターに任せることができるようになったため、緻密な艦隊陣形維持の必要はなくなったのである。もともと対潜戦ではそれほどの最高速力は要求されないが、空母直衛であっても、占位や蛙飛びをするためのような高速力は不要となった。艦載ヘリコプターの海上での警備であっても、極端な高速力への要求は減少している。目標追跡や、場合によれば強行移乗も艦載ヘリコプターに任せることができるようになったため、高速力は不要になったのである。
今日では艦隊型水上艦であったとしても、30ノットが必要というわけではない。実際に、対艦・対空ミサイルや艦載ヘリコプターが一般化した80年代以降、艦隊型水上艦の最大速力は30ktを切るようになってきている。スペインのミニイージス、バサン級の速力は29ktである。英国新型駆逐艦、タイプ45型であっても29kt、英国タイプ23型は28ktである。実際の要求最高速力はこれよりも低い。機関構成はレディメイドであるガスタービンを組み合わせて決定される。このため、要求速力を発揮するために必要な出力丁度ではなく、それ以上の出力となってしまった結果である。
今日の艦隊型水上艦に必要な最大速力は、多くとも27ktあれば充分である。既述のとおり、対水上戦であっても、空母直衛であっても、海上警備であっても30ktは不要である。実際に必要な速力は、米フリゲートが参考になるだろう。ブロンシュタイン級以降の米フリゲート(当時護衛駆逐艦)は、27kt(荒天時維持速力)が費用対効果上、最適と考えられていた。そして、米フリゲートは、運用上艦隊型護衛艦と同様に扱われたが、27ktで問題は出ていない。空母を除けば、艦隊型水上艦が護衛すべき重要艦の速力は、高速でも25kt程度であり、十分優速である。また空母直衛であっても、常に高速力を維持しているわけではない。空母直衛であっても、米フリゲートがその任務を果たしていることからすれば、やはり27kt発揮できれば十分である。27ktあれば、対水上、対潜、対空、海上警備、空母直衛の任務は果たせるのである。
自衛隊の甲種護衛艦も、なんだかんだで30ktは維持しているけど、もう少し落として機関を安くしても問題はないカモ。
でも、ガスタービンを組み合わせるとオーバーパワーになってしまうのも仕方が無いところかね。実績もないヘンテコなガスタービンを採用するよりも、力が余っても熱効率がよくて信頼性のあるLM2500あたりを装備するのが正解だしね。
Category : 未分類
ロシアでの国勢調査で、自分は「シベリア人」であるという回答が無視できない数であったという。雑誌『クーリエ・ジャポン』※では、海外新聞記事を翻訳・転載している。ロシア新聞記事を紹介した中には、シベリアでの民族主義勃興を紹介した記事があった。『国籍をシベリアと書いた市民は[略]悪ふざけで済ませられる数ではなかった』とあり、『僕らはロシア人とは違うんだ』とする、民族運動団体の主張も載せられている。
新しい民族が萌芽しようとしているのである。シベリア以東には種々の少数民族が居住しているが、彼らは、帝政ロシア・ソ連・ロシアによって、事実上、一段低い地位におかれていた。彼らは住む土地から、石油、鉱物、木材、狩猟や漁業の資源を対価なしにロシアに奪われている。ロシアからもたらされるのは、放射性廃棄物の最終処分場程度である。ロシアに不満を持つ人々が、互いに同じ民族集団であると認識する可能性は高い。ロシア人ではない、シベリア・ネイティブである、あるいは体制に疎外されていたことで紐帯とした民族が生まれる可能性がある。
新しい民族が生まれた実例はある。民族集団は、古代氏族から連綿と続くものではない。大半は古くとも近世に「誕生」したものである。「民族が生まれた」過程が一番わかり易いのは、インドネシア人誕生である。インドネシア人は、非白人であり、インドネシアに現住しており、そしてオランダに弾圧された点を紐帯として生まれたごく新しい民族である。新民族であるインドネシア人が誕生する前には、インドネシアには多数の民族が居住していた。それぞれの民族はそれぞれの王国を建て、互いに抗争を繰り返していた。オランダによる侵略・植民地化に際しても、オランダによる攻撃を奇貨として王国の伸長を図る状況であった。いまだにそうであるが、宗教も、言語も異なっている。インドネシア語は、交易用共通言語であった外国語、マレー語に過ぎない。※※
インドネシア人は、オランダ植民地支配によって誕生した。オランダ植民地政府が国勢調査を実施する際、分類しがたいアジア人はまとめて「インドネシア人」としたことが起源である。「インドネシア人」とは、東インド植民地に居住する、日本人ではなく、中国人でもなく、インド人でもないアジア人を総称する人種名であった。国政調査で便宜上に作られた「インドネシア人」という概念は、後の行政制度や司法制度でも使われるようになった。オランダ東インド植民地に住む人々は、インドネシア人として括られることにより、仲間意識が根付き、最終的には独立運動により、互いに同じ民族であると認識するようになった。植民地支配の結果、新しい民族、インドネシア人が生まれたのである。
シベリアでの国勢調査の傾向は、インドネシア人が誕生しようとした時期の状況に近い。シベリアは実質的にロシアが持つ植民地である。帝政ロシア以来、ネイティブである人々は疎外されている。シベリア・ネイティブである人々は、比較的小規模の民族集団しか形成できていない。このため「シベリア少数民族」として十把一束で把握されていた。そして、シベリア・ネイティブである人々は、自分たちが「シベリア人」であると考え始めているのである。
「シベリア人」誕生は、周辺国にとって興味ふかい話となる。「シベリア人」誕生し、民族自決により、「シベリア人のシベリア」が成立した場合、シベリア開発はブームとなる。シベリアには手付かずの天然資源が埋蔵されている。シベリアにはありあまる資源がありながら、新規開発に至らない理由は、ロシアには新規開発をするだめの必要性も資金がなく、外資の導入にも消極的であるといったものだ。しかし、「シベリア人」が独立を果たした場合には、外資を積極的に導入する。シベリアはフロンティアになる。世界中から投資は集まるが、周辺にあり、経済的に余力のある日中韓は特に熱心となるだろう。
※「ロシアで『シベリア国籍』を主張する市民が急増している」64p『クーリエジャポン2011年4月号』(2011.2)
※※アンダーソン『比較の亡霊』に詳しい
新しい民族が萌芽しようとしているのである。シベリア以東には種々の少数民族が居住しているが、彼らは、帝政ロシア・ソ連・ロシアによって、事実上、一段低い地位におかれていた。彼らは住む土地から、石油、鉱物、木材、狩猟や漁業の資源を対価なしにロシアに奪われている。ロシアからもたらされるのは、放射性廃棄物の最終処分場程度である。ロシアに不満を持つ人々が、互いに同じ民族集団であると認識する可能性は高い。ロシア人ではない、シベリア・ネイティブである、あるいは体制に疎外されていたことで紐帯とした民族が生まれる可能性がある。
新しい民族が生まれた実例はある。民族集団は、古代氏族から連綿と続くものではない。大半は古くとも近世に「誕生」したものである。「民族が生まれた」過程が一番わかり易いのは、インドネシア人誕生である。インドネシア人は、非白人であり、インドネシアに現住しており、そしてオランダに弾圧された点を紐帯として生まれたごく新しい民族である。新民族であるインドネシア人が誕生する前には、インドネシアには多数の民族が居住していた。それぞれの民族はそれぞれの王国を建て、互いに抗争を繰り返していた。オランダによる侵略・植民地化に際しても、オランダによる攻撃を奇貨として王国の伸長を図る状況であった。いまだにそうであるが、宗教も、言語も異なっている。インドネシア語は、交易用共通言語であった外国語、マレー語に過ぎない。※※
インドネシア人は、オランダ植民地支配によって誕生した。オランダ植民地政府が国勢調査を実施する際、分類しがたいアジア人はまとめて「インドネシア人」としたことが起源である。「インドネシア人」とは、東インド植民地に居住する、日本人ではなく、中国人でもなく、インド人でもないアジア人を総称する人種名であった。国政調査で便宜上に作られた「インドネシア人」という概念は、後の行政制度や司法制度でも使われるようになった。オランダ東インド植民地に住む人々は、インドネシア人として括られることにより、仲間意識が根付き、最終的には独立運動により、互いに同じ民族であると認識するようになった。植民地支配の結果、新しい民族、インドネシア人が生まれたのである。
シベリアでの国勢調査の傾向は、インドネシア人が誕生しようとした時期の状況に近い。シベリアは実質的にロシアが持つ植民地である。帝政ロシア以来、ネイティブである人々は疎外されている。シベリア・ネイティブである人々は、比較的小規模の民族集団しか形成できていない。このため「シベリア少数民族」として十把一束で把握されていた。そして、シベリア・ネイティブである人々は、自分たちが「シベリア人」であると考え始めているのである。
「シベリア人」誕生は、周辺国にとって興味ふかい話となる。「シベリア人」誕生し、民族自決により、「シベリア人のシベリア」が成立した場合、シベリア開発はブームとなる。シベリアには手付かずの天然資源が埋蔵されている。シベリアにはありあまる資源がありながら、新規開発に至らない理由は、ロシアには新規開発をするだめの必要性も資金がなく、外資の導入にも消極的であるといったものだ。しかし、「シベリア人」が独立を果たした場合には、外資を積極的に導入する。シベリアはフロンティアになる。世界中から投資は集まるが、周辺にあり、経済的に余力のある日中韓は特に熱心となるだろう。
※「ロシアで『シベリア国籍』を主張する市民が急増している」64p『クーリエジャポン2011年4月号』(2011.2)
※※アンダーソン『比較の亡霊』に詳しい
Category : 有職故実
関税率表は、すべての輸入物品に対応できなければならない。課税されるかどうか、課税される場合の税率をあらかじめ決めておかないと、税関は仕事にはならない。もちろん租税法律主義にも反してしまう。
http://www.customs.go.jp/tariff/2011_4/index.htm(2011年4月版 実行関税率表)
http://www.customs.go.jp/tariff/kaisetu/index.htm(関税率表解説・分類例規)
このため、関税率表は相当妙なものまで規定している。実際に日本に輸入されたことがあるのかどうかまで怪しい物も載っている。例えば、カタパルトがある。カタパルトは8805.29に規定されている。『関税率表解説・分類例規』では『航空機射出装置は、一般に船の甲板で使用され、射出する航空機の案内をする金属製構造物と一体になっている。発進に必要な加速度は、航空機を乗せてある滑走車又は射出棒に作用する圧縮空気、蒸気、発射火薬等により得る。』とある。そして、グライダー離陸用や、ロケット加速用(実例があるかはしらない)は含まないと規定されている。戦後、実際に輸入された実例は多分ないが、あらかじめここまで決めているところがお役所なのだろう。
他にも、聞いたこともないようなものもゾロゾロしている。たまたま眼についたものの中に、自動車関連で『ジャイロ・バス』というものがあったが、聞いたこともないもの。関税率表では『この項には、原動機付きバス、トロリーバス(架線から電流を得るもの)及び運動エネルギーを高速回転するはずみ車に貯蔵して、その運動エネルギーにより発電機を駆動して電流を発生させ、その電流を原動機に供給することにより作動する“ジャイロバス”を含む。』 (8702.90)とされている。
ちょいと調べると、ジャイロバスとはバス停でトロリー式に電気を貰い、モータでフライホイールを回し、次の停留所(電気が貰える)まではその力で(発電器を回して)進む車両とのこと。自動車のオモチャをそのままスケールアップした仕組みである。実用車両の図版では、座席は運転手を抜いて27人分あった。最大速力55km/h。フライホイールのスピンアップには2~5分。最大40分程度の走行も可能、停車時していれば10時間程度は回転を維持するとのこと。
『鉄道車両』(大塚誠之 1955)によれば、『スイスのエリコン社で1954年に実用化された』とある。また、http://www.ne.jp/asahi/yada/tsuneji/history/FW-bus.pdfでは、1953年になっている。後者の記述が具体的であるので、より正確なのだろう。ジャイロバスはいまのEVバスの魁で、仕組みもなかなかのもの。だが、フライホイールから発電してモータを廻す仕組みはロスが大きすぎるのだろう。50年以上前に実用化されたがスグに廃れてしまった。フライホイールと車輪を直結すれば効率はよくなるだろうが、そうなると基本ON/OFFなので、速力調節がノッチングとなる。乗り心地が悪くなるのだろう。
ちなみに、関税率表には『戦車その他の装甲車両』(87.10)とある。『武器を装備しているかいないかを問わない』とされており、『通常の型式の乗用車及び貨物自動車に軽度の装甲又は取外し可能な補助的な装甲をしたものを含まない』『自走砲は、93.01 項に属する。これは停止して発射するように設計してあり、発射範囲が限られているのが特徴である。』関税上は、自走砲は戦車にならないが、突撃砲の類はどっちに入るかは判然としない。戦車・装甲車であれば無税であるが、自走砲とされてしまうと税率12.8%で課税されてしまう。装甲の薄い突撃砲の類を輸入するときには、走りながら射撃できるようにしないと面倒なことになるカモ。
http://www.customs.go.jp/tariff/2011_4/index.htm(2011年4月版 実行関税率表)
http://www.customs.go.jp/tariff/kaisetu/index.htm(関税率表解説・分類例規)
このため、関税率表は相当妙なものまで規定している。実際に日本に輸入されたことがあるのかどうかまで怪しい物も載っている。例えば、カタパルトがある。カタパルトは8805.29に規定されている。『関税率表解説・分類例規』では『航空機射出装置は、一般に船の甲板で使用され、射出する航空機の案内をする金属製構造物と一体になっている。発進に必要な加速度は、航空機を乗せてある滑走車又は射出棒に作用する圧縮空気、蒸気、発射火薬等により得る。』とある。そして、グライダー離陸用や、ロケット加速用(実例があるかはしらない)は含まないと規定されている。戦後、実際に輸入された実例は多分ないが、あらかじめここまで決めているところがお役所なのだろう。
他にも、聞いたこともないようなものもゾロゾロしている。たまたま眼についたものの中に、自動車関連で『ジャイロ・バス』というものがあったが、聞いたこともないもの。関税率表では『この項には、原動機付きバス、トロリーバス(架線から電流を得るもの)及び運動エネルギーを高速回転するはずみ車に貯蔵して、その運動エネルギーにより発電機を駆動して電流を発生させ、その電流を原動機に供給することにより作動する“ジャイロバス”を含む。』 (8702.90)とされている。
ちょいと調べると、ジャイロバスとはバス停でトロリー式に電気を貰い、モータでフライホイールを回し、次の停留所(電気が貰える)まではその力で(発電器を回して)進む車両とのこと。自動車のオモチャをそのままスケールアップした仕組みである。実用車両の図版では、座席は運転手を抜いて27人分あった。最大速力55km/h。フライホイールのスピンアップには2~5分。最大40分程度の走行も可能、停車時していれば10時間程度は回転を維持するとのこと。
『鉄道車両』(大塚誠之 1955)によれば、『スイスのエリコン社で1954年に実用化された』とある。また、http://www.ne.jp/asahi/yada/tsuneji/history/FW-bus.pdfでは、1953年になっている。後者の記述が具体的であるので、より正確なのだろう。ジャイロバスはいまのEVバスの魁で、仕組みもなかなかのもの。だが、フライホイールから発電してモータを廻す仕組みはロスが大きすぎるのだろう。50年以上前に実用化されたがスグに廃れてしまった。フライホイールと車輪を直結すれば効率はよくなるだろうが、そうなると基本ON/OFFなので、速力調節がノッチングとなる。乗り心地が悪くなるのだろう。
ちなみに、関税率表には『戦車その他の装甲車両』(87.10)とある。『武器を装備しているかいないかを問わない』とされており、『通常の型式の乗用車及び貨物自動車に軽度の装甲又は取外し可能な補助的な装甲をしたものを含まない』『自走砲は、93.01 項に属する。これは停止して発射するように設計してあり、発射範囲が限られているのが特徴である。』関税上は、自走砲は戦車にならないが、突撃砲の類はどっちに入るかは判然としない。戦車・装甲車であれば無税であるが、自走砲とされてしまうと税率12.8%で課税されてしまう。装甲の薄い突撃砲の類を輸入するときには、走りながら射撃できるようにしないと面倒なことになるカモ。