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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 軍事ライターの文谷です
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2012.08
31
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13:00
Category : 有職故実
 統合部隊に、新編時から居たことがある。各種儀礼もいろいろあったが、射撃が一番ナンだった。陸式の「右肩よし」という号令が「打ち方よし」に聞こえて仕方がない。「打ち方はじめ」と誤解するような号令は、安全上やめた方がいいと思ったよ。

 統合部隊だと儀礼で混乱した。まず、並ぶ段階で混乱する。海式の総員集合なら、幹部、海曹、海士、事務官技官に別れて並ぶ。しかし、陸式だと、各部隊ごとに並ぶ。幹部とそれ以外で並ぶときも、准尉さんは幹部列かどうかで最初の頃は話し合い。海だと幹部列だが、陸だと准曹士列になる。海准尉は幹部と全くおなじ服装だから妙なことになる。号令もそうだが、頭の敬礼をどうするかでも話し合い。頭の敬礼は、海だと准尉を含む幹部はしない。陸だと隊本部は、曹士含めてしない。陸式に揃えたが、体に染み込んでいるもので、海幹部は誰かしかはいつも挙手の敬礼をしていた。

 特に、射撃は全くやり方が違う。陸式でやると、拳銃射撃で逐一に安全係がつく。射場指揮官の「打ち方はじめ」以降は、「ご自由に」の海式とは全然違う。そもそも、拳銃の弾込めから始めるのには面食らう。年次射撃でバラで弾薬を渡されることはない。海式だと、試射用3発、本射10発入った弾倉が予め準備してある。経補の海幹部「弾ってマガジンに詰めて売ってるんじゃねえの」とかギャグを飛ばしていた。もちろん、弾薬が缶詰で供給されているのは承知。安全係をやる陸幹部が真面目に「違います」と言っていたのには笑った。しかし、9mm拳銃のマガジンって固い。5発目以降は「弾が変形するんじゃないの」ってくらい力入れないと入らない。

 逆に陸の人には、私物耳栓が多いのが珍しかったらしい。海の航空部隊出身であればジャンパーのファスナーにぶら下げとく耳栓や、下手すると本格的なイヤーマフを持っている。射撃の時に渡されるような、プアな官品(白いセルロース?の耳栓)はあまり使わない。艦艇系も、後方系も、持っている奴は適当なのを持ってくる。本職鉄砲屋(砲術)の一人はゴーグルまで持ってきていた。趣味で散弾持っているヤツは専用品持ってきたし、己も大口径用の耳栓持っていった。

 そして「右肩よし」で混乱。事前教育していても、慣れには勝てない。「打ち方よし?」「右肩はじめ?」とみんな動揺。「打ち方はじめ」(ちーかたはじめ)と言われないと、撃っていいのかわからない。

 朝霞の300mでやったが暗がりなのは閉口。距離は25m(だったか?)だが、弾着が見えない。双眼鏡でも見えない。安全係が見に行く仕組みなので「だいたい右上10cmにまとまっている」とか言われても、感覚がわからない。最初のうちは真面目に打ち込むが、フィードバックできないので途中からは適当になる。残弾処理はもう適当にやった。

 帰ってきたあとでも、まずやらないことをやった。指導方針で、幹部も射後手入れということだが、これにも海幹部はびっくり。海曹士の仕事だからねえ。

 拳銃だから面倒はない。幹部でも、部隊によっては「忘れるといけない」と分解結合はやっている。そもそも頭をつかうものでもないので問題ない。実際、「そいや、9mm拳銃って安全装置ないね。はじめて気づいた」というオトッツァンもいたけど、普通にバラして油塗って、拭いていた。

 あんま真面目でもなかったね。私語しながらフキフキ。ライフリングの隅に結構、銅が固着している。でもソルベントは使わないのでそのまま。それを見つけた鉄砲屋さん曰く「拳銃は狙うもんじゃないから、いいけどね」と言ってた。また航空整備のオトッツァン曰く「前の連中、油塗りすぎ、油膜は薄くしないと、固まって固着しちゃうんじゃないの」「野戦だと油が落ちるのかもしれんけど」とか好き勝手に言っていた。

 ま、市ヶ谷の武器庫で九九小銃とか四四式騎銃の類が3丁ほどあった。それを見つけられたので、己には眼福だったけれどもねえ。
2012.08
29
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13:00
Category : ミリタリー
 東シナ海は結構浅い海で、水深も200mもない。そこで日本が対潜戦やるとした時の話なんだが、潜水艦に沈底されたら厄介じゃないのかな?

 東シナ海では、一応、日中対峙の最前線ということになったいる。日中は国交があり、友好関係にあるから、有事ということも考えがたい。ただ、互いの海空軍力でゲームをやっている関係上、その最前線になっている。

 そこで対潜戦をやるとしたらの話だ。潜水艦ほか、海軍力は足が長いので、互いの最短距離で使うものとも限らない。※ そういったことは、考えないで、単純に考えた話だ。
 浅い海で、潜水艦に沈底されて、無音を極め込まれるとお手上げではないかね。捜索手段も、攻撃手段が限定されてしまう。

 まず、捜索手段が限定される。パッシブ戦は意味がなくなる。アクティブ戦でも、対潜戦用ソーナーでは海底地形と潜水艦を分離できない。MADか、対機雷戦用の精密ソーナー、あるいは透明度と水深が許せば目視となる。いずれも捜索範囲は極めて狭い。

 対潜戦をやるようなソーナーでは、無音状態にある沈底潜水艦を発見できない。

 パッシブ・ソーナーは、無音ではお手上げである。そもそも、外洋用であって、雑音が多い浅い海では使いにくい。

 アクティブ・ソーナーは分解能が良くない。到達距離を稼ぐため、低周波数を使っている。このため、デジカメで言う解像度が低い。海中を航走している潜水艦からの反射は、点としてしか認識できない。その方位と距離が分かる程度である。当然、海底地形に紛れた潜水艦を見分けることができない。動いていれば、反射波がドップラー・シフトを起こすので救いがある。しかし、沈底状態で無音であれば、どうしようもない。

 MAD、対機雷戦用ソーナー、目視は、もともと捜索手段ではない。最終確認手段にすぎない。「追っかけていた潜水艦が沈底を極め込んだ、その場所はこのあたり」程度ならできるかもしれないが、水上艦に気づいた潜水艦に機先を制されたら終わりである。

 無音の沈底潜水艦に対しては、発見しても攻撃手段も限定される。短魚雷は役に立たないだろう。いまある装備で役立ちそうなのは、哨戒機やヘリからの対潜爆弾程度である。水上艦からすればお手上げである。今はなきボフォースやヘッジホッグ、爆雷を使うしかない。あるいは、掃討具で120kgの爆薬を設置してくるかだ。

 この場合、短魚雷は役に立たない。基本はパッシブ・アクティブ誘導を組み合わせたものである。海底近くで地形と潜水艦を識別するには、ドップラー・シフトを利用するしかない。無音状態にある沈底潜水艦には通用しないのは、既述したとおりである。

 使えそうなのは爆雷の類だけでとなる。対潜爆弾、爆雷、ボフォース、ヘッジホッグといろいろ種類はあるが、海自が投下手段とともに保有しているのは対潜爆弾だけである。

 あるいは、掃討具で潜水艦の側に爆薬を設置してくるか。機雷掃討に使用する爆薬は、NATOタイプで120kg(だったと思う)ある。至近距離で1つ、あるいは2つ置いて炸裂すれば、潜水艦はただではすまないだろう。もちろん、対機雷戦艦艇が必要となり、投入や回収に時間も手間もかかるので、実用的ではない。

 まずは、探すのが容易じゃない。攻撃手段まで気にしてもしょうがないのだが、仮に発見できても攻撃する手段もないということだ。

 逆に、海自潜水艦あたりが沈底して、ほぼ無音に入れば、中国側も気付かないし、攻撃も容易じゃない※※ のだけれどもね。

※ 特に潜水艦の運用なんてわからないもの。リアル有事では、中国潜水艦とは太平洋とか南シナ海とか、インド洋とかで対峙するかもしれない。また、日本の潜水艦もトンでもないところにいるかもしれない。ホント、なんにも知らないから無責任に言うけど、日本潜水艦が台湾海峡に張り付いているとか、香港・広州の港の目前で張っているとかね。

※※ 中国海軍は、一応、ヘッジホッグ風は持っている。
2012.08
27
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13:00
Category : 未分類
 銭も厘も記憶から失われた。昭和28年に銭と厘が廃止されてから60年が経過しようとしている。日本には、既に銭と厘を表記する方法も忘れれた。

 神保町富士見坂にあるイタリアンバルFUJIMIZAKAさんの看板である。洒落た店構えで、美味しそうで一度は入ってみたいものだが、時間と財布の関係で伺ったことはない。

1銭
(撮影 2012年6月26日)

 看板をよく見ると、金額表記法が変わっている。通常は\480-と書くところを、480と表記している。

7円80銭


 これは海外での価格表記に引きづられた結果にみえる。ドル-セント、ユーロ-セントでの表記を真似たものだろう。イタリアの旧通貨、リラもインフレにより銭に相当する下位単位が廃れているのは皮肉である。

 しかし、日本でも同じ表記があった。例えば、古い切手の額面で円のあと、2線を引っ張って銭を示している。戦後まもなくまで、印刷物や掲示には、何円何銭と書くのが正式と考えられていたようである。しかし、手書きの文書や、広告などでもこの表記はある。

 この表記では「生ハムが4円80銭」と書いていることになる。パルマ産生ハムが4円80銭、ピリ辛トリッパが7円80銭、海老のアヒージヨ(どういう料理なんだろうね)が7円20銭になる。そう言われても文句もいえない。

 常識では10円もしないで料理が食えるわけでもない。勘違いする人はいない。ただ看板で「4円80銭」と書いているのは、潜在的にはトラブルの種になるのだろう。以降、観察している限りは、FUJIMIZAKAさんに円-銭の表記はない。
2012.08
25
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13:00
Category : ミリタリー
 対艦ミサイル連隊は、平時はスッカラカンでいいんじゃない?

 対艦ミサイルは単純なもので、適当に撃てば適当に当たる。複雑なモードもあるが、機械任せにすれば誰でも使える。コースウェイなんかも、どのくらい遠回りするか、同時弾着の時刻をいつにするかを数字で指示すれば、アルゴリズムに任せきりで構わない。数字は上が考えることで、操作員はなにも考えることもない。

 タイムスケールも悠長なもの。対空戦闘に較べれば時間的余裕はある。TOTをやるにしても、それほど急いでどうこうもない。相手は10kt20ktの艦船である。ゆっくり入力しても構わない。

 対艦ミサイル連隊なんて、平時は司令部とレーダ手だけでいいんじゃないの。あとは未熟練で問題はない。そもそも、アレは大隊編制でいいとおもうのだけれどもね。車両整備なんか民間に投げとけばいい。今みたいに、対艦ミサイル連隊で自動車の車検までやることもない。

 何かあったら、それから増員すればいい。まずないけど、上陸戦があるとすれば、対艦ミサイルで敵を沈めるのが一番効率がいい。敵戦車が云々というのだが、気になるなら先に沈めてしまえばいい。要員は、その時に集めれば間に合う。ミサイル側につく要因は、地本、業務隊あたりの陸曹士に、1回、半日程度で、年4回も訓練しとけば充分だ。あとは上陸戦の気配を感じてからでも間に合う。

 心配性で不安なら、九州だけフル編成にしておけばいい。ロシアによる侵攻の脅威はない。北の部隊は保管装備でよい。連隊ただし3ヶ中隊欠で、毎年、保管装備を入れ替えて3年で1巡させればいい。九州に置いて何に使うかは分からないが、場合によれば沖縄あたりに出張して、よく見えるところに置いておけば、少しは艦隊行動への脅威として認定してくれるだろう。それなら、あまり使い道もないミサイル艇のほうがいいかもしれないけどね。

 対艦ミサイルの諸元も、スマホやiPADの類で入力できないこともない。諸元入力はそんなに難しいことをしているわけではない。やる気になれば、スマホの類でできる。能力的にはオーバースペックである。専用アプリでも作れば済む話にすぎない。

 対艦ミサイル発射機も、単純な機材でいいんじゃないの。面倒な飛翔経路設定や、TOTみたいな射撃ならば、諸元は指揮所から無線LANなり、有線LANでもらうだけにする。機側発射はLOS(直接照準)か、方位発射に限定する。垂直発射なんかやめる。キャニスターと、それを斜めに乗せるトリイだけで作る。そうすれば陣地に隠すのも楽。民生トラックにも積める。別に専用車両はいらないだろう。

 最新の12式SSMなんて必要ないんだよねえ。上陸戦の脅威はすでにない。88式ですらオーバースペックになっている。もともとミサイル自体は艦載の対艦ミサイル転用で充分である。そこに、艦載SSM以上に贅沢な12式を作ったのも無駄の極みである。
2012.08
24
CM:3
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13:00
Category : アニメ評
 軍隊生活への勝手な思い入れと、その醇化への方向性が生理的な拒絶を呼び起こします。『トータル・イクリプス』を排したくなる気分の底にあるのはそれです。製作者とファンが想像した奇妙な軍隊イメージと、それをリアルであると勘違する。その姿は見ていられるものでもない。

 物語としても、設定での稠密性だけに執着していて、それ以外はスカスカ。登場人物がタイピシャルに過ぎる。そのセリフも、あまりにも抽象的で説明風が過ぎます。『FATE』と同じで内輪向けなんでしょう。ファン以外はお歯も当てないような内容です。

 メカや政治状況への稠密性への執着は、それを裏返せば理解しやすいでしょう。あの物語からメカと政治状況を抜いたらどうなるか。なにも残りません。『トータル・イクリプス』からロボットを抜いて、例えば、耐寒靴の開発物語まで原始化するとどうですかね。「意識の高い」開発者同士がぶつかり合うだけの話です。その喧嘩を延々と引っ張ってもね。黒沢の『天国と地獄』で、三船敏郎がナショナルシューズの靴のデザインで怒りまくるだけの話ではないですかね。ドラマは全然高まらない。政治状況云々にしても、冷戦時代に知っている国を並べる程度であって、人物描写と同じであまりにタイピシャルに過ぎます。

 登場人物が、安易に類型的につくっていてどうしようもない。典型的なのがソ連人のイメージです。ソ連が残っている点を面に出しますが、全員が官僚的、あるいは非人道的で、冷たい人物描写ってなんでしょうね。冷戦期でも、今でも、ソ連人、あるいはロシア人がミステリアスである部分はそこではありません。素朴で、適当で、利益にも人情にも人間臭い連中が、急に態度が変化するところがミステリアスと言われていたわけです。
 他にも、表と裏の使い分け、賄賂や闇経済、言い方を変えれば生きる知恵、助け合いの構造といったものも、ソ連イメージです。それを官僚的・非人道的・冷酷だけに集約するのは、『キン肉マン』のウォーズマンでみるソ連イメージ程度にすぎません。あまりにも皮相的な理解でしょう。
 『トータル・イクリプス』での、登場人物への性格付与は、『I.S』と同じで粗末なものです。各国人に、それぞれの表層的なイメージを付与しただけの粗雑なものです。『キン肉マン』のブロッケンjr、ロビンマスク、テリーマン、ラーメンマンへの初期イメージと変わるところはありません。

 セリフが抽象的であり、説明風が過ぎるところも、酷いものです。口語であるべきセリフで抽象的な漢語を連発するのは何事かと。「97式戦術歩行高等練習機」「殲滅速度を0.7% あげろ」「わがソ連軍の尋問技術は進んでいる」なんて4話のセリフ、誰が考えるんでしょうね。もともと少ない物語への没入感を引き下ろす効果しかない。視聴している物語が、キャラクターが突っ立って説明セリフを読んでいるようにしか聞こえません。物語の中でのリアルな流れは完全に失われます。逆に、あんな珍奇なセリフに喜ぶファンがいるといったあたり、『トータル・イクリプス』が内輪向けに作られた話である証拠でしょう。

 まず1・2話だってたいがいです。基本的に石原慎太郎が監督した特攻隊賛美映画と同じです。やたらキレイ事だけ。敗戦国の映画ドラマ小説なら「その日8月15日」みたいに、もっと深くできるだろうと思うのですけどね。このあたりも戦後70年が近くなった。景気のいい話だけしか見聞きしたがらない、そういう製作者とファンで消費される作品ということなのでしょう。

 『トータル・イクリプス』には積極的に嫌いたい感情が浮いてくるのです。面白くない、ツマラナイようなアニメは見ないだけです。しかし、それ以上の悪感情が生まれるのは、軍隊生活への勝手な思い入れが気持悪いからでしょう。製作者、そしてファンのイメージに合わせ、純化された軍隊像は拒絶したくなるものです。過度にガチガチで固められた組織、ナショナリティの過剰な強調して「リアリティでございます」とするやり方へは、悪感情が生まれます。

 今期、バトル物であれば『だから僕はHができない』『カンピオーネ』と『トータル・イクリプス』があります。『だから僕は』は案外、視聴に耐える。意外とキチンとできている。『カンピオーネ』になると、カン違い度が一気に増える。これが『トータル・イクリプス』になると、耐え難く腹立たしくなる。『カンピニオーニ』は見ないで済ませる。見て小馬鹿にすればいいのだけれども。これが『トータル・イクリプス』は積極的に、嫌いたい心持を表明したくなります。なんであんな話を作ったのかとね。

最新の8話みてもね。細部だけでも「ダッフルバック背負った将校」とか「身内のミーティングなのにスクリーンやマイク使う」とか「お世話になるのに向こうが挨拶に来る、しかも糞忙しい出撃前にトップが来る」とかね。あれ、なんだと思ったよ。そもそも構造事態がアホくさいのだけれども

『トータルイクリプス 死んだら神様』を本気にされると本意ではないので、直截的に書いてみました、ハイ
2012.08
24
CM:3
TB:0
12:59
Category : コミケ
2012年夏のあとがきです。ナマモノなのでココで開陳

 戦後70 年も経ち、軍隊生活に抱くイメージも実相から大きく外れたものなりました。『マブラヴ』シリーズですが、あの軍隊イメージでリアリティを感じるファンに呆れます。ファンの嗜好に添った味付けを繰り返した軍隊イメージです。過度にガチガチで固められた規律、過剰なナショナリティ強調には辟易です。それに違和感を感じないのは、日本軍隊がなくなり70 年が経過したためでしょう。 彼らにとっての軍隊イメージは、意識の高い人間だけで構成される非日常の特殊な社会集団です。生活臭や遊びの存在しない社会です。

 『マブラヴ』は抽象的で説明風なセリフが目立ちます。歴史やメカ等設定への稠密性への執着だけが溢れますが、それ以外はスカスカ。『FATE』と同じで、囲い込んだファンを喜ばせるだけの商売です。

 しかし、今期始まった『トータル・イクリプス』は例外でした。原作者小沢昭一、山本七平が観察した、等身大の昭和軍隊、戦争体験が生かされています。プレストーリーとして冒頭2 話を費やした、原作1巻『トータル・イクリプス 死んだら神様』は特に宜しいものでした。ゆとり世代が持つ、ヒーローが戦う戦争イメージではなく、あの戦争中に兵役に取られた一般国民の感覚が生きております。

 トータル・イクリプス1話「女の兵隊/毛虱と娘軍」は兵営のつらい面だけではなく、時には享楽にも興じた娘たちの姿を活写しています。もとがエロゲーだからでしょう。動員以降、最後の外出日に、唯依たちは全員で男を買いに行きます。ただし、上玉の役者を買う金もない。とはいえ質を落としたくもないと、彼女達は全員のお金をまとめ、名物を1 人買ってシェアする。隊内で浮いていた山城上総も含めて、姉妹になってしまうエピソードは皆が本当の仲間になった姿を描いており、心あたたまるものです。

 そして病気も仲良く伝染される。ひと月後の出征前夜、代表した甲斐が意を決して、眼帯教官に相談し、スカートを捲り上げ、下履きを下ろす。年甲斐もなく赤面した教官が虫眼鏡でまじまじと観察し一言「ケジラミだな」と。性病のカルテが残ると困ると、全員が下半身裸になって教官の前に並び、順番にスミスリンを噴霧してもらうところは、なかなか見ないタイプのエロ描写です。すでに四十郎だろう教官が「オレ、性欲も食欲も失せたよ」といったあたりは原作者小沢のエロ喜劇の雰囲気もあります。

 一転、第2 話の「橋」は、悲惨さが強調されます。唯依たちはベータ侵攻により、急遽前線投入が決まりましたが、結局は足手まといです。訓練未修で機動的運用はできない。前後に大きく動く最前線に投入できないことは明らかでした。教官は動員学徒に関する練度報告のあと「前線で夜に使うには心もとない」「下手すれば同士討ち」と後方残置すべきと示唆します。理由に「匍匐飛行ができない」と事実無根の報告も加えますが、言いたいことは皆が理解している。参加者も「バウンダリ南端に小さな橋がある」「重要ではない」「後に爆破予定です」「それまでは死守せねば」「そうしたまえ」と。

 しかし、悲劇への不安は、徐々に掻き立てられいく。配備された橋は、唯依たちの学校の側です。毎日キャフフしながら渡った橋。思い出との結びつきは、唯依たちを橋の防備にのめり込ませてしまう。

 そして、女中隊長の逮捕。姿勢がだらしない唯依たちを叱責すると「ちょっと痒くて」「膿がチョット、本当にホンのチョットだけ」と。問いただす中隊長が徐々に赤面する。時間的余裕があったのが裏目に出ました。こんなのにウツされたらタマランと、中隊長は薬品入手に出ますが、憲兵の尋問を受ける。何の意味もない橋に戦術機を配備する不自然と、経験不足で部下の病気とクスリについて中隊長は具体的には説明できない。そのまま前線軍法会議送り方になってしまう。

 残された小娘たちは何も判断できません。しかし、何の不安もない。無邪気に恋の話を繰り返す。山城上総が、秘していた教官への想いを「この戦いが終わったら…」と開陳すると、みなが冷やかします。しかし「遊んだのがバレたくらい大丈夫」と元気づけもする。物語で最も穏やかなシーンでしょう。

 しかし、その目の前の橋を、後方へ後退する部隊が通りすぎていく。その車両も傷病兵後送から、高級士官の乗用車、司令部付隊、通信部隊の車両に変わる。最後には天井にまで兵隊を乗せたトラックになる。死んだ眼をした彼らが小銃すら捨てていることには気づかない。どのような命令が出たのかも推測せず、情況を全く把握していない有様です。

 そして始まる戦闘。最初は群れからはぐれた少数のベータが侵入してくる。それを蹴散らし意気を上げるものの、その戦闘が新しいベータを呼んでしまう。数波にわかれて襲撃するベータ、櫛の歯が欠けるように減る娘たち。そして今まで見たこともない数のベータの群れ。残る娘は5 人だけ。弾薬を集めて再分配し「1 人7 発、大事に使えば7 匹までは殺せる」と至近距離にベータを引き付ける唯依たち。

 ベータの大波が橋にたどり着くその瞬間、艦砲による弾幕射撃が始まります。悉くが吹き飛ばされ、生き残ったベータが後退する。唯依たち5人は「勝った、守りきった」と喝采しますが、それはぬか喜びです。射線はすぐに下り、唯依たちに襲いかかる。「味方を殺すのか」と喚く唯依。弾幕射撃の後、生き残ったのは唯依と上総の2 人だけ。

 そこに教官が僚機を伴って到着する。2 機はともに大きな梱包を、道路爆破薬を携行している。始まった準備が何であるか察した唯依は「命を棄てて守った橋」、「私ひとりでも守り切る」と激昂します。そして、それを説得する教官が「橋は無価値だ。最初から落とす予定だった」と口を滑らせてしまう。

 その時、上総はいきなり教官機をフルオートで射撃する。教官僚機は上総機に応射。コクピットごと粉砕された上総機は教官機と同時に爆発。呆然とする唯依。そのメインカメラに飛散物が貼り付くが、それは教官と上総のツーショット写真。錯乱し、絶叫する唯依と、その背後で爆破される橋…

 このプレストーリ導入によって、本編、山本七平『トータル・イクリプス 一下級衛士の見た国連軍』が活きるのです。「半分死んたポンコツ」と自重する唯依。その醒めた視点で綴られたアラスカ物語は『マブラヴ』他作品とそのファンが持つ「空気に酔う」病理を痛烈に批判します。機械を重視し、人間関係を軽視する。気持ち悪いほどテンプレな人物造形、大仰なセリフ回しを評価する姿を「空気に酔ったもの」として描いています。

 『マブラヴ』特有の無機質な軍隊描写。それを冷笑的になぞらえることにより、合間に挟まれた、戦争体験者から拾った生きたエピソードが活きてくるのも逆転的です。

 第9 話で墜落したステラが米敗残兵と出会う話。「たかが百㎞じゃないか」に対し、老民兵の「たかが百㎞だと!」。「スタームルガーよりも優れた銃が」への「オレには…」といった反発は、機械しか描かない『マブラヴ』への批判です。

 第15 話のノーズアート話は萌えでした。タリサが同郷の女整備兵にノーズアートを頼みますが、よりによって屹立し汁を放つブータンの魔除けを描かれ、ユウヤに見られてしまう。ククリを使い半泣きで塗装を削るタリサは、生者の萌える物語です。

 なによりも第19 話「アルゴス小隊本部いまだ射撃中」でしょう。取り残されたオペレータ、ニーラム、リダ、フェーベの物語。『マブラヴ』で飾られる、高貴で清潔な死への皮肉そのものになっています。

 ベータ襲来により、司令部壕が孤立するところから物語は始まります。3 人は手鏡の反射で生存を知らせますが、ベータに阻まれた本隊は見守ることしかできない。しかし、ニーラム軍曹は「ここにM2がある限り、ベータはここを通れない」と豪語する。3人が頼るのは1門のM2重機。「M2 の命中精度は地球一だ。これから逃げられるソルジャーはいない」とも。そして3人の戦いが始まります。

 印象的であるのは、リダが「ギャップ調整適切ならざるなきや」「ベルトリンク捻じれあらざるや」と唱えながら何回も何回も銃身交換と給弾を続けるところでしょう。後半になると銃身だけではなく機筺部も熱を持ち始め、最後は赤熱します。それを尿で冷やしながらも射撃を維持する。戦場体験者の機関銃信仰、機関銃神話の再現そのものです。

 最後には、掩体が光線の直接射撃で溶かされ始める。しかし、3人はほぼ飲まず食わずでも射撃をやめない。弾庫と往復していたフェーベがベジタリアン用レーションを見つけ、嬉しそうに報告する。そしてニーラムの口元にレーションを運ぶフェーベに、ニーラムも照準器から眼を離すことなく感謝し「お前、今日誕生日だったよな」と尋ねる。「16 になりました、ようやく先任とお店に行けます」と答えるところは、本編でも最高のシーンです。

 『死んだら神様』も『一下級衛士』も、メカ設定排除に加え、奇妙なセリフ、演出を許さない姿勢は高く評価できます。他の『マブラヴ』だと「97式戦術歩行高等練習機」「殲滅速度を0.7% あげろ」「わがソ連軍の尋問技術は進んでいる」と、とうてい口語できない酷いセリフが頻出します。あんなの誰が考えるんでしょうね。しかし『死んだら神様』『一下級衛士』では違和感ある会話、演出はありません。「20 ばいの てきに ほういされる」「くわれます」、「しきんきょりでの はくへいせん」 「しにます」、「さいごの ひとりまで たたかう」「まけます」と、むしろ小桜エツ子の素朴な声にリアルを伺えます。

 BD には『トータル・イクリプス 人類は衰退しました』が収録されるとのことです。あまりにも空中楼閣的で戯画的な「マブラヴ」の世界を、新しい人類の出現で矛盾なく説明するとのことです。
2012.08
23
CM:0
TB:0
18:10
Category : ナショナリズム
 米国のリップサービスだろうけどね。報道※ によると、日米外交担当者が「日米安保条約の適用範囲内であるという原則を改めて確認した」とのことである。米国にとっても、そのように言及することによって、中国を牽制できるのは悪い話ではない。しかし、実際にどうこうする気もない。尖閣諸島そのものには、米にとっての価値は何もない。名前は貸すけど、それ以上は「考えておく」程度の話だろう。

 米中は軍事・政治的に対立している。この発言一つで、ゲームでの中国の行動を制約できるのは悪い話ではない。また発言により、日本の歓心を得ることもできる。日本への駐留への追い風にもなる。一担当者の、口先の発言程度であれば、リスクも少ない。

 しかし、米国は尖閣諸島にコミットする気はない。中国とゲームをしているが、深刻な対立は望んでいない。尖閣諸島での日中の争いで、中国に恨まれるほどのコミットメントはしない。前に日本が食らったレアアース禁輸のような経済的不利益を受けるのはゴメンだと考える。

 だいたい、尖閣諸島そのものに米国の利益はない。軍事的にも経済的にもどうでもいい無人島である。日中はナショナリズムで自国のものと争っている。しかし、そんなものは第三国から見れば、どうでもいい話だ。日本人が、南沙諸島がどこの国のものであるか、キプロスがどちらに属するかを見る目と同じだ。傍から見ればツマラナイ島のために喧嘩しているだけの話である。

 米国は尖閣諸島で血を流す必要を感じない。どうでもいい島で、米国人が血を流す必要はない。流したら流したで問題になる。全面戦争のついででもなければ手は出さない。

 このあたりが「日米安保条約の適用範囲内であるという原則を改めて確認した」である。まずは日本に対するリップサービス。「安保条約の範囲に入るんじゃないかと思うよ」程度のものである。有事にどうこうする約束をするつもりはない。

 有事での関与は、かつての大陳島への関与と同じような話になるだろう。昭和30年の年初、人民解放軍は浙江省沿岸島嶼を解放した。新中国の進出に対し、台湾は、米国に助けを求めたが、米国は「そんな辺境の話は知らない」といった。「軍隊と住民の脱出は手伝うけど、あとは関与しない」ということとなり、最後の島である大陳島から撤退した。

 尖閣諸島も、仮に戦闘ともなれば、米国は逃げ腰になる。血は流したくない。また、中国から余計な恨みを買いたくもない。情報くらいはくれるだろうが、戦力は出してくれない。

 ま、信用しても仕方がないという話だ。リップサービスであることを承知して、米国の威を借りるのは悪くない。しかし、いざというときに米軍が関与してくれるというのは、甘い考えである。尖閣諸島と米軍のオスプレイ配備を絡める人もいるけど、まずは牽強付会だ。

 尖閣諸島でのゲームは、日本vs中国・台湾の、決着する見込みのない綱引きである。米国は引き込まれないように用心している。「日米安保条約の適用範囲内であるという原則を改めて確認した」で、日本が勝ったと言い出す奴がいるかもしれないが、それはぬか喜びに過ぎないのである。



※ 読売テレビ「「尖閣は安保条約の適用範囲内」日米が確認」(2012年8月23日 11時25分)http://www.ytv.co.jp/press/mainnews/TI20084815.html
2012.08
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 陸自砲兵、特科は機甲科以上に必要性を主張できないのではないか?

 基本的に、特科は本土侵攻対処以外では役に立たない。そして今日、本土上陸のおそれはなくなった。そうなると、特科は必要性をアピールできない。中国とのゲームで対艦ミサイルを見せる程度だろう。

 本土侵攻対処以外では、特科は使いにくい。特科は手軽に使えない。特科は重く、揚陸や輸送、補給に手間取る。すでに陸自特科は、野砲でもすべて15榴、重砲で20榴、ロケットがMLRSとなっている。いずれも重く、弾薬を輸送する段列を伴う必要がある。長射程であるものの、観測や通信構成その他も必要になる。その使いにくさは、戦車以下である。

 本土侵攻対処以外の任務では、特科は場違いである。いまのところ海外派遣、離島対処、ゲリコマが想定されているが、いずれも特科は向いていない。海外派遣では、本気で戦争するような状況でなければ持って行かない。離島への上陸対処でも、多用されるのは迫撃砲や航空支援や艦砲射撃である。野砲重砲が展開するほどのこともない。ゲリコマ対応では、特科は出る幕もない。

 海外派遣で、特科を派遣する事態は今のところ考えられない。余程の大戦争でなければ特科を派遣して、野砲重砲を撃ちまくることはない。そのような戦争前提の海外派遣は、今のところは想定されていない。

 離島への着上陸対処であれば、海空による火力支援の方が使いやすい。航空直接支援、艦砲射撃の方が手軽である。両者は特科よりも精度に優れる。直接航空支援は、上空から直接視認した目標に攻撃できる上、反斜面といった制約もない。艦砲射撃は精度・発射速度に勝る。5インチ艦載砲は15榴と同じ砲弾重量がある。精度も高く、発射速度は比較にならないほと早い。また、上陸部隊が手許で使える火力が欲しいとしても、特科は呼ばれない。その時は迫撃砲になる。

 ゲリコマは、特科は出る幕もない。それほどゲリコマが来るとも思えないが、それはさておく。いずれにせよゲリコマは少人数であり、隠密に行動する。陣地に拠ることもあまり考えられない。このような見つからない敵には、特科は無力である。ゲリコマは探すことが面倒であって、見つけられればそれほどの大火力は要らない。特科は出る幕がない。

 特科は今のところ、仕事はない。本土上陸対処程度でしか使えないが、その本土侵攻は考えなくて良い時勢である。特科が活躍できる事態があるとすれば、海外での大きな戦争しかない。小規模な事態では、特科が展開し、本格的に運用される前に終わってしまうだろう。しかし、日本は今のところはそのような戦争に参加するつもりはない。仮に参加しても、1ヶ大隊も出せば充分である。いまある砲・ロケットを装備する約50ヶの特科大隊の2%に過ぎない。

 それにも関わらず、必要性を失った本土決戦用の装備を新造しようとしている。寿命も残る※ 牽引自走砲、FH-70をヨリ高価な装輪式自走砲で更新する考えを持っている。

 装輪式自走砲を開発する必要はない。いまさら本土侵攻対処に使う重装備を新造更新しても、使い道はない。

 それよりも、海外派遣、離島対処、ゲリコマに使いやすい装備を作るべきである。例えば、迫撃砲と被るかもしれないが、超軽量砲取得を目指す。あるいは工兵装備と被るかもしれないが、陣地粉砕用の大口径臼砲かミサイルの類を作ったほうが、まだアピールしやすいだろう。

 例えば、汎用ヘリに搭載できるような超軽量砲である。M777超軽量砲のように15cm砲である必要もない。10cmや7cm程度の山砲であっても構わない。迫撃砲よりも命中精度に優れ、発射速度や重量で劣らないものであればよい。

 あるいは工兵資材的になるかもしれないが、重掩蓋粉砕用で98式臼砲、あるいは航空爆弾投射法が目指した方向であるべきだろう。

 重装備取得は、特科が生き残りを賭ける方向として誤りである。海外派遣、離島対処、ゲリコマへの対応、それに向いた装備取得でなければ将来につながらないし、賛同も得られない。

※ 最大の装薬を使った砲身寿命を、昔のM1A2と同じ7500発、弱装薬による射撃が0.25発に換算されるとすれば、FH-70は3万発は発射できる。年500発撃っても、なお60年は持つ計算になる。傷んだと言われるエンジンは乗用車用であり、作り直しがは容易。方位や俯仰角、信管廻しあたりの電子化とシステム連接だけすればFH-70は現用砲として問題ない
2012.08
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 桜林美佐さんの『オスプレイ導入で日本の安全保障はどう変わるのか』では、数字的に奇妙な説明がある。記事中に「開発、訓練で200人以上が死亡した『零戦』」という章立てがある。その中で「1941(昭和16)年の1年間で、海軍だけで200人を超えるパイロットが事故で殉職している」と述べている。

 しかし、開戦時に200人殉職できるまで零戦は生産していない。ウィキペディア零戦の項目にはを見ると生産数がある。昭和16年開戦まで生産できた零戦は合計430機程度に過ぎない。そして、緒戦に投入された零戦は空母主力6隻分で120機程度、南方作戦に投入された基地航空隊は、台南空ほか3個隊で最大200機程度。墜落・全損する余地は100機もない。

 そもそも、200人を超すパイロットが殉死するほどの事故を起こすには、まず1000機は零戦が全損する必要がある。機体が全損してもパイロットは無事、あるいは軽傷で済むケースは多い。逆にパイロットが死亡しながら、機体は無事、あるいは修理可能という例は少ない。零戦1000機全損して、殉職200、重傷200、軽傷400、無事が200といったあたりだろう。

 あるいは、零戦は機体がとても丈夫であったかである。『吸血鬼の花束』みたいな話があったかということだ。零戦がエンジン・機体がとても丈夫で、パイロットは死ぬけど、機体は無事であった。そうでもなければ、生産数400でありながら、200人殉職する事故を起こしなお、緒戦で活躍した零戦の数、300機は確保できない。

 実際のところは、昭和16年の航空要員殉職者が200あったという話である。桜林さんが根拠とした『零式艦上戦闘機』※ では、零戦の殉職者だけに限定した話をしていない。大艇や陸攻、中攻といった大型実用機から、練習機まで含んだすべての数字として記述している。「パイロットが事故で殉職している」と明記しているが、実際にはクルーも含んだ数字だろう。記事趣旨であるオスプレイ開発での殉職者に相当するといったような、零戦開発に関する殉職者ではない。

 桜林さんがカン違いした裏には、国家へ犠牲を賞賛し、強調することが大好きな思想的背景がある。桜林さんは、零戦についての章立での結論として「多くのパイロットがその命に代えて1つの航空機を作り上げていくという真理」があると主張している。零戦のような象徴的存在には、相応の供犠がふさわしいと考えているのだろう。

 記事そのものの対象であるオスプレイにしても、たかが輸送機に過大な思い入れをしている。輸送機としては画期的かもしれないが、基本的には50人載せられるかどうかの輸送機に過ぎない。しかも、平時における開発である。その人的損失について、既に日華事変で戦時体制にあり、対米戦を決意した昭和16年の例を牽いて許容範囲とするのは妥当ではない。

※ 清水政彦『零式艦上戦闘機』(新潮社,2008.8)p.55
2012.08
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 今の陸上自衛隊は役にやっているのか?

 陸自が強力であっても何の利益もない。冷戦期であれば、陸自はソ連に対する脅威としての価値があった。また、本土防衛にも一定の必要性があった。しかし、今日ロシアに脅威を与える必要は少なく、本土侵攻の可能性も消失した。防衛政策の焦点である中国とのゲームでも、陸自は何の貢献もしていない。

 財政は極端に悪化している。役に立たないわりに、大予算を費消する陸自は規模縮小が必要である。浮いた予算は財政削減、あるいは海空戦力強化に回すべきである。

 陸自は、国内警備と外征部隊維持で10万以下で充分である。陸自に求められる国内警備は5万程度あれば足りる。中国とのゲームや国際貢献で役立つ外征部隊維持も、1ヶ師団程度なら4万程度で足りる。外征部隊を作れば、陸自は現15万人、将来14万人から、予算・人数を減らしてなお、役に足つ組織となるだろう。

 冷戦期、強力な陸自は、西側の利益であった。脆弱なソ連極東部に配置された陸自は、ソ連の喉元につきつけたナイフの役割をした。ノルディック・アナロジーは、太平洋に至る経路にある北海道について価値を論ずるものでもあった。ソ連にとってのチョーク・ポイント、その対岸に展開した陸自は、ソ連にとって脅威を与える存在であった。ソ連は、「日本が攻めてくる」という重圧にさらされていた。

 冷戦終期、日本が陸自を強化した理由は、西側との協調にある。中曽根政権以降による防衛力強化は、対米協調の側面もある。貿易赤字そのほかを埋め合わせるため、レーガンによる対ソ軍拡に協調したものだ。その過程で、公式には本土防衛戦力、極端な話、郷土防衛戦力に過ぎないはずの陸自も強化された。それは、陸自がソ連極東部にとっての脅威、ナイフの役割を果たしていたためである。

 冷戦期、陸自はソ連による本土侵攻を抑止するだけの存在ではなかった。実際に対ソ侵攻をする能力があるかどうかはともかく、ソ連極東部にとっての脅威でもあった。北方領土に配備されたソ連地上軍は、今もそうであるように、対日侵攻能力を持たない守備隊である。有事には全滅予定部隊と認識されていただろう。冷戦期、サハリンに所在していた海上機動可能と言われた2ヶ師団も同じようなものだ。今から見れば、日米軍侵攻に対する逆上陸部隊である。陸自はこれらのソ連軍を拘束していたと見ることもできる。

 しかし、冷戦が終わると、強力な陸自には価値がなくなった。ソ連/ロシアに対するナイフの役割は不要になった。日本周辺国で最大の脅威であったソ連が崩壊してからは、日本に上陸戦を挑む能力のある国もなくなった。冷戦期ソ連が保有していた両用戦能力でも対日侵攻は厳しい。それ以下の各国に、日本本土に侵攻する力はない。

 それにもかかわらず、陸自の規模は維持された。財政悪化により、徐々に減らされたものの、冷戦期18万から、今のところ15万と8割方維持されている。陸自は、漫然と冷戦時代そのままの備えをしている。いまだに正面戦力を増やすため、切り詰めた使いにくい師団・旅団編制もそのままにされている。冷戦期、基幹13ヶ師団+2ヶ混成団は、9ヶ師団+6ヶ旅団と全く変化していない。

 本土侵攻の可能性が減じたにも関わらず、15万もの兵員を擁し、9師団+6旅団を維持する必要はない。国内警備、治安維持といった戦力の空白を作らない程度であれば、5ヶ管区隊、あるいは4ヶ鎮台で充分である。

 陸自が本土決戦態勢15万人を維持しても、使い道もない。今の陸自は中国とのゲームに役立たない。強力な陸自が居ても、中国は海への進出に何の制約も受けない。「『中国膨張主義』の脅威」に対抗する要素とはならない。海外派遣にしても、正面戦力偏重の師団・旅団編制はそのまま投入できるものでもない。

 陸自に15万人を宛てがうのは無駄遣い以外の何物でもない。国内警備用としても過剰である。国内警備程度の所要であれば、人員も4万-7万で足りる。明治期当初の陸軍は4ヶ鎮台で4万人程度、日清戦争直前でも6万人である。警察予備隊は7万5000人であった。現状15万、将来的に14万もいらない。極端な話、カナダ軍は1000万平方キロの領土を陸軍2万で済ませている。あの米国にしても、9500万平方キロを米国50万人と、面積あたりでは1/60に過ぎない。

 外征部隊を作るとしても、合計10万なくとも足りる。国内警備用4-6万に加えて、海外活動用に1ヶ師団分、交代、支援部隊含めて4万人の人的資源を与えれば相当のことができるだろう。外征部隊を作れば、中国とのゲームで役に立つ。また、海外での国際貢献にも役に立つ。

 また、一気に10万以下に減らせば、装備更新も容易になる。大幅に減った人件費から装備費用も捻出できる。数もそれほど必要なくなるので、新しい玩具も揃えられるようになるだろう。

 今の陸自が強力であっても何の利益もない。中国とのゲームで陸上戦力は役に立たない。日本が強力な陸自を持っていても、ゲームで利益になることはない。財政が極端に悪化し、防衛費も大幅圧縮されるだろう当節、役に立たないわりに、予算の多くを費消する陸自規模を維持する必要はない。

 国内警備部隊と、外征用部隊でコンパクトにまとめれば、10万あれば足りる。陸自予算縮小分で、財政削減にも貢献できる。また、中国とのゲームや、海外での活動のために重要度が増す海空戦力強化に回すこともできる。
2012.08
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 尖閣諸島上陸は、強制送還がルールである。日本と中国は、尖閣諸島に関してはルールを守ったゲームをしている。日中はエスカレーションを避ける。日本は領海侵犯は国外退去、上陸は強制送還に留める。それを超えない限り、中国は日本に強硬な手段を採らない。

 今回の強制送還は、ルールに則ったものである。日中ルールに適応しているため、日中関係に何も影響しない。

 2010年の中国漁船衝突事件のような無意味なマイナス・サム・ゲームは回避された。2010年の事件では、日本側は既成事実を積み上げるため、ルールに反した行動を取った。日本は、中国漁船船長を日本での裁判につながるプロセスに載せた。しかし、中国はルール違反に対し、フジタの社員を拘束し、レアアースを禁輸した。現実に利益を生まない島であるが、日中は面子と国民感情によりエスカレーションを行い、マイナス・サム・ゲームを行う愚を犯した。

 領土問題はどうやっても解決しない。まず、理屈ではない。日本人は尖閣諸島、竹島、北方領土が自国領域であることには何の疑問も抱かない。しかし、中国人、韓国人、ロシア人もそのように確信している。条理を尽くしても正邪で決まる問題ではない。そもそも領土は神聖である。領土問題では不利な側でも絶対に譲らない。譲った側は政府は持たない。

 どうしても解決しない問題で執着しても仕方がない。まず、戦争でもしない限り手に入るものでもない。豊かになり、強くなった中国は尖閣諸島で諦めることはない。それを諦めさせようとしても無駄である。逆に譲る必要もない。譲らない限りは、竹島も北方領土も日本人の土地でありつづける。

 現実的には、現状維持しかない。領土問題で経済的利益まで失う必要もない。その意味では、日中のルールに則った尖閣諸島ゲームは合理的である。日中の戦略的互恵関係、「政治対立はともかく、損するゲームはやめましょう」に適っている。尖閣諸島への上陸者を強制送還に留めることは、正しい選択である。

 逆に、韓国にはルールを意識させる制裁行為が必要になるだろう。竹島に大統領が上陸したことは、日本にとって認められない実績積み上げである。ゲームの範囲を越え、ルールに違背する行為である。自国だけを優位にする行動には、利益が消し飛ぶような大きな不利益を与える必要がある。また、今日の外交関係は、国内ナショナリズムを抑えこむことが求められる。国内ナショナリズムを焚つけ、利用することもルール違反である。韓国が竹島問題で実績積み上げを行うことが、韓国人が大きな不利益になる制裁を課すべきだろう。
2012.08
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 今年も8月15日。終戦の日が来ました。例年通りにTBSラジオで秋山ちえ子の『かわいそうなしゃち』の朗読が始まりました。

 戦争中に起きた動物の出征。お国のために水族館から出征したシャチのおはなしは、昭和時代に小学校教育を受けた人ならみんな知っている内容です。毎年、あの暑い夏の一日の記念日に、秋山ちえ子は戦争を語り継ぐため、相模湾、江ノ島での悲劇を朗読をします。
 敵潜水艦攻撃のために調教されたにシャチ。秘匿名称はオルカ金物。生物爆雷として潜行中の潜水艦に体当たりするように条件付けを受けたシャチのジョーイの話です。

 体当たり用の爆雷を取り付けられたジョーイですが、戦局が悪化し外洋での運用が不可能になります。御役御免で除隊したはずのジョーイは、水族館でしばらくノンビリ過ごしていました。ですが戦争はついに内地まで近づいてしまいました。水中特攻兵器が実用化されたために、「味方潜水艇への誤認襲撃の可能性あり」という理由で、シャチを殺しなさいという命令が出てしまったのです。

 水族館では、毒薬を注射しようとしますが針は海獣の厚い皮を通さずポキリと折れてしまいます。大好きな魚に毒の入れて与えようとしても、知能の高いジョーイはそれを見抜いてしまいます。
 飼育員のおじさんたちは、命令違反を承知でジョーイを外海に逃がそうとしますが、水族館で育ったジョーイは外海で生きていけず帰ってきてしまうのです。
 それでもジョーイは褒めてもらいたくて芸をします。飛び上がって回転したり、上半身を水上に突き出してみたり、逆立ちをして尻尾を立ててみたり。飼育員さんを鼻先に乗せようとしたりして、ほめてもらおうとするのです。それを見ていたみんなは、銃殺や干上げて殺すことはとてもできない。餓死させるしかないだろうと決めました。
 しかし、そんなことを知るジョーイではありません。よい芸を見せれば今まで育ててくれた人間が餌をくれるものと信じています。芸をすれば体力が奪われてしまうというのに。そして、ジョーイはどんどん弱っていってしまいました。流線型の体は脂肪が減って痩せ馬がでてしまいました。ほとんど衰弱して、ただ浮かぶだけになってしまいますが、飼育員の長谷川さんを見つけると芸をみせようとするのです。
 ジョーイを子供のように思う飼育員の長谷川さんは辛くなって、辛くなって、ついに食料のサバやイワシを、ジョーイに分けてしまいました。限られた燃料を使って、汚穢船を転用した支援船で網を引いて手に入れた皆の食べ物です。「ジョーイ、腹が減ったろう、おいしいか、おいしいか」と食べさせる長谷川さんに他の飼育員のおじさんたちは何もいえませんでした。所長も、大学の人も、配属された海軍の将校さんも何も言わずに、見守っていました。中には涙を流している人もいました。

 みんなその晩に話し合いをしました。「心を鬼にしてプールからジョーイを追い出そう。銛でついてもいい、音でいじめてもいい、普通のシャチとは違う体になってしまったけれども、外に出れば、お腹が空けば魚を食べるだろう。」
でも、海軍の人は申し訳なさそうに口を開きました。
「ジョーイがもしプールから出てしまったら、湾内で訓練している水中特攻部隊の若い人を殺してしまうかもしれません」
 戦争は過酷でした。本土の海岸にも特攻隊の配備が始まっていました。体当たりで敵を沈める小さな潜水艇はあまりにも小さすぎて、爆雷をつけていないジョーイであってもぶつかれば沈んでしまうかもしれないのというのです。

 飼育員のみんなも黙ってしまいました。実は戦争がどうなっているか、軍隊の方針がどうであるのかということは誰の頭にもありませんでした。でも、みんなは特攻隊の兵隊さんが、自分の子供のような年齢の兵隊さんの身の上を思うとなんともいえませんでした。特攻隊の兵隊さんたちは水族館の側に寄宿しており、上陸日にジョーイの芸を楽しみに見に来ていたくらいですからなおさらです。
 学徒出陣してきた分隊士さんの中には、学生時代に研究で水族館に通っていた人もいました。若い下士官を連れた将校さんは、彼らをジョーイの鼻先に乗せてやれるように懇願しました。若い下士官も軍服を着ながらジョーイの鼻や背に乗って無邪気に喜んで、ジョーイに貴重品になった特別配給の飴を食べさせようとしたりしているのも見ていました。

 そして、その兵隊さんたちの潜水艇は安全なものではなく、ちょっとした不具合で沈んだままになってしまう。そのまま殉職してしまうことも知っていました。みんなは、もう若い人が、訓練で死ぬのはやりきれないです。
 長谷川さんが口を開きました。「もう、ジョーイには何の餌もやらない」みんなは、下をうつむいて何も離しませんでした。ただただ、長谷川さんを囲んで味のしない合成の理研酒をまわし飲むだけでした。
 それから3週間たった夏の暑い日、長崎に原爆が落ちた4日後、ジョーイはプールで沈み、窒息してしまいました。せめて綺麗な体で埋めてあげようと、一端引き上げて爆雷取付具や安全尖外しを取り除き、ガスが堪って膨れたお腹を開いたとき、本当は風呂桶のように大きなジョーイの胃袋は湯たんぽの大きさまでしぼんでいたそうです。

 いまでもジョーイが死んだ8月15日には、鎌倉建長寺で慰霊祭が行われるそうです。
 『かわいそうなしゃち』でした。
 それではみなさん、ごきげんよう。

2009年夏『瀛報』(ようほう)29号のまえがきから、一部訂正のうえ転載。

参考
谷甲州『星の墓標』(1987.7 早川書房)
秋山ちえ子 朗読『かわいそうなぞう』「大沢悠里のゆうゆうワイド」(2011.8,TBS)
2012.08
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11:17
Category : ミリタリー
 12式短魚雷に閉鎖サイクル機関は無駄じゃないのかね? 

 新型短魚雷、12式は深海用の閉鎖サイクル機関を搭載している。フッ素だかを使って蒸気を作るエンジンとのこと。このエンジンは深海で高速移動をする潜水艦に対処するためのエンジン。電池じゃそれほどの速力が出ない。水圧が高いので、斜盤エンジンでは排気できない。だから採用されたエンジンで、極め付きに高価である。

 Mk50や97式短魚雷は閉鎖サイクルを採用した理由は、対アルファ級だった。-1000mを40ktでスッ飛ばすアルファ級に従来短魚雷では対抗できない。だから高価な閉鎖サイクルを採用した。項目は出ていないが、アルファ級より深く潜れて、後ろからでも追っかけられるようにより速い速度を出せなければいけない。

 しかし、12式単魚雷が想定しているのは、浅海を低速移動する潜水艦である。中国周辺で行動する中国潜水艦を目標としている。中国海軍潜水艦の主力は在来潜水艦であり、原潜は例外的存在にとどまる。在来潜水艦はスピードを出せない。中国原潜もあまりスピードは出せないし、そもそも浅いところにいると危なくて飛ばせない。浅海だと、ちょっと深めに潜舵とったら海底に激突してしまう。

 それを考えれば、高い閉鎖サイクルは不要じゃないのかね。Mk46中古の斜盤エンジンやで充分だと思うけどね。「外洋で深く潜られたらドースル」なら、電池式にすればよい。安くなった上に、バラすようなメンテナンスは不要になる。

 まあ、今までの短魚雷が浅海で使いにくい。浅海では海底と潜水艦のエコーは明瞭に分離しない。潜水艦が極微速で海底ギリギリを航走しているときには、短魚雷のアクティブ・ソナーでは、潜水艦移動によるドップラーシフトも拾いにくい。ましてや沈底された状態になるとお手上げだろう。

 12式短魚雷を作る必要はあった。外洋でのASWだけを考えていた海自にとって、浅海は不得手であった。「アスロックは使いにくいので、ボフォース、あるいはヘッジホックが良い」とする話もあった。その浅海域に対応するための魚雷開発は間違っていない。

 しかし、無駄に高級なエンジンを使う必要はない。水深-1000mを40ktでスットばす潜水艦は既に存在しない。ロシアの原潜も、常識的な水深、常識的な速力を出す潜水艦になっている。中国にはそのような潜水艦は存在しない。仮に将来出てきたときなら、97式/Mk50を使えば良い。海自は物持ちが良い。短魚雷はそうとう昔の在庫まである。何かが狂って紅いアルファ級が出ても、騒音出しまくりなので97式で充分だろう。-1000mで爆音とともに40kt出していたら、水上目標は探知できないし、攻撃する手段もない。放っといても構わないと思うのだがね。
2012.08
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Category : コミケ
 空気銃とアニメ評のパンフも出来、

出し物_UP


頒価
 本 誌 499
 教練銃 199
 駄 話 100

で考えてます。折りが終わって余裕があれば、ISARのパンフを追加しようかと考えてます
2012.08
10
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13:00
Category : ミリタリー
 統合部隊にいた時、陸予定者幹候の参考書を見せてもらったことがあるのだが、兵術みたいなどうでもいいことが一杯書いてあったよ。見せてくれた人、若くして陸曹長さんになれた優秀な先任で、本人も一生懸命なんだがね。幹部予定者(SLC、海ならC幹)に外国師団の編制とか暗記してもらう必要があるのかね。

 幹部予定者は、部隊経験と技能が期待されている。ぶっちゃけ、旧海軍の特務士官と同じで、兵術や大部隊での運用が期待されているわけではない。望まれているのは小さい部隊の仕切りと、専門を生かした技術指導に過ぎないわけです。この曹長さんは通信科だから、通信に秀でていればそれでいいと思うんだよね。例の野外令も使うとこだけ覚えてもらえばいい。陸戦も、通信・施設だと自衛戦闘でしょう。施校入校中に「施設と通信は、小銃1丁、最初に弾◯◯発をもらうだけで終わり」と聞いたけどそんなものでしょう。

 職種技能に重点おいて選べばいいのにね。まあ、陸はなんでも戦闘重視で、それは悪いことじゃないだろうけど。支援職種や後方職種だと、戦闘よりも大事な仕事があると思うのだがね。通信で、しかも今ホットなシステム関係をやっていた曹長さんです。無駄で、どうせ使わない試験勉強やってもらうよりも、高度な通信知識を覚えてもらったほうがいいんじゃないのかね。

 もちろん、幹部希望と書けばC幹になれる海のやり方も問題ある。なんせ、幹部希望を表明しとけば、試験は自分の名前書いておくだけで終わり。その試験も、3曹昇任試験よりも容易。会場に詰めたのは10年以上前だけれども、3曹昇任試験は、彼だけはという人間にしかカンニングはさせない。でも、昇任幹部とか昇任1曹は挙手して「教えてください」があったし、試験官は苦笑いしながら教えてやったよ。

 ヤル気演技だけ幹部になれるんだよねえ。某職域の方だが、ある競技ではエキスパート。それを生かして若い時からサブマークの体育員になった。しかし、本職マークで勤務していない。だから体育員から抜けられない。そのうち、体育員でも先任になる。でも部下指導はできない、庶務事務もできない。そこから逃げるため幹部になった。そういう人がいた。幹部になっても、本職マークも部下指導も庶務もできない。体育科長も、退職後に困るだろうと親心で◯◯に派出したのだけどね。やはり喫食伝票もまとめられない、小出庫管制額の割付もできない。調整も会議出席も係長付の3曹に投げていた。そもそも、ワードもエクセルもメールもできない。みんな、上から下まで心を鬼にして、この文書作ってメールで出すまでは、部屋から出さない、体育も駄目と一週間ほど略監禁したことあった。まあ、どうにかパソコンだけは覚えさせたよ。

 その点、昇任意欲のある人が、しかも一生懸命勉強して幹部になる陸システムはいいことだと思う。

 ただ、いまだに本土決戦用教育を踏襲しても、屠龍の術じゃないの。陸だってイラクに行ったわけだ。陸戦に関する内容でも、今ならそっちで役立つことを覚えて貰ったほうがいいんじゃないの。付幹部やってもらった高射特科、生徒あがりのSLC2陸尉ドノなんか、演習での本土決戦準備を、馬鹿みたいに掩体作ることを批判してたよ。朝雲に載った掩体写真を指して「攻勢転移する前に、無駄に立派な掩体を作らせて消耗するのってどうかと思う」だって。実はその掩体、知っている中隊長殿が作ったヤツで、本人も出来がいいと新聞に載ったと自慢していたのだがねえ。
2012.08
08
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Category : コミケ
夏コミ新刊、あとは刷って折って綴るだけ。

2012_07_20_表紙_ネット用

趣旨というか要約はこんな感じ


 長江鉄道橋への攻撃は、中国を屈服させる最有力の手段である。長江鉄道橋への攻撃は、中国にとって破滅的な結果をもたらす。長江水系鉄道橋15ヶ所のうち、11ヶ所を破壊すれば中国鉄道網は南北に分離する。実質的な輸送力を負担する鉄道橋は6ヶ所であり、それだけを破壊しても中国戦争経済、国民経済は大打撃を受ける。

 鉄道橋攻撃は、現実的に採用可能な手段である。仮に米国が、中国を屈服させようと考えた場合、米国は攻撃目標として採用するだろう。
 米国であっても、現実的に採用できる手段は経済封鎖と海上封鎖、そして陸上交通網への航空攻撃に限定される。その航空攻撃の目標として、長江鉄道橋は最も優れている。中国防空戦力による抵抗を考慮すると、比較的小規模な攻撃規模でも達成可能であり、最も高い効果を発揮する
(文谷数重「長江鉄道橋 -現代中国の急所鉄道網 河川通航 石炭輸送-」『瀛報』2012.8)


 自分の文章ブロック引用ってのもナンだけどねえ

 時間的に余裕があれば、ISAR原理、もしくは空気銃関連のパンフレット程度は作れるかと。あとは、本誌表紙と裏表紙の紙代(高いんだ)救済用に、アニメ評を一つ、夏色キセキ 大戸島編 / ストパン映画版音速雷撃隊の評かな。

 あと、『瀛報』の「瀛」の字、国立国会のマイクロフォッシュ『寰瀛水路誌』では「よう」とフリガナが振ってあったので「よう」と読んだのだが。こないだOPACで覗いたら「えい」になってんのね。「エイ」が音便で「よー」になったと思ったか。あるいは、「洋」の異体字だと思っていたか。ちなみに、己は異体字だと思っていた。
 いまさら名前は代えないけどね
2012.08
06
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13:00
Category : ミリタリー
 夏の白い服は思ったよりも涼しいものでもない。白上下白靴は見栄えはいいものの、通気性のよい繊維ではない。半袖を着ているのに蒸れて仕方がない。人が見ていないところでは、まあ上は脱ぐ。特に最近は冷房温度を28度設定にしていたので、だいたいみんな上は脱いでいた。まず白のVネックTシャツ姿だね。外面のいい、自称エリート職域で、服装容儀にうるさく脱衣を許さないところがあった。だが、夏場の設定温度をみたら18度にしている。己がその部屋に行く度「18度にしたのは誰だ」と親方が室内に向けて怒鳴り、28度にさせる。だが、普段から窓が結露している。そのあたりは丸わかりだった。まずは電気代とCO2の無駄づかいをするもんだと思ったよ。

 脱衣をすると、当然だが階級章はつかない。もちろん身内限りなので無くても構わないだが、あるときにのらくろ式に着用できるのではないかと思いついた。桜がダンゴムシになっている旧式階級章だと、尖部にバンカーズ・クリスプみたいなバネ鋼のフックがついている。そのフックをT-シャツの襟元に挿しこむと、まあ、のらくろ少佐ドノになる。自分のショップにいる時には、ギャグでたまにやっていた。多分、見つかった時には、つけていない時よりも余計に怒られる。市ヶ谷の某所にある陸海空共同仮眠区画、そこの◯◯室で茶話会のとき、一回だけエライさんに見つかった。トイレに立った時なんだがね、洗濯乾燥機を使っている御仁と眼があった。ネチッコイ人だったが、海幕だか統幕だか勤務で死んだ眼をしていたので嫌な顔をされただけで済んだ。ま、仮眠区画使うくらいだから、月曜朝から金曜夜まで家に帰れずゾンビなのもしょうがない。

 夏の白服も高機能繊維で作れば売れると思うんだよね。

 私物は結構、生地が厚くて蒸れる。メジャーな私物だと、宮地、フジ、あとは形が違うけど着てる人は多い米軍士官用だが、いずれも生地は厚ぼったい。これはアイロンの効きを残すためと、下着の色や線を出さないためだろう。半袖の袖口は丈夫に作ってある。糊を効かせた裃の肩と同じで疲れることはない。ズボンも柄物パンツを履いていても、生地の厚さと挟み込んだ紗で隠しきってくれる。己は悉皆フジで宮地や米軍は着た事ないが、見ている限り皆同じ。その代わり、フジでも蒸れた。

 官品はドンゴロスの親戚みたいな生地だが下が透ける。生地の匁をケチっているので、下着が見える。上の肌着はまだいいが、ズボンは濡れてもいないので、柄パンの柄まで透視できる。モモヒキを履いて隠すか、白パンツを履くかになる。お陰で世間では売れない白トランクスがよく売れている。アイロンは効くものの、夕刻まで持たないし、すぐにシワになる。己は配られただけで一回も着た事ないが、多分涼しい点がメリットなのだろう。だから着ているという奴がいた。

 蒸れないで涼しく、アイロンが効いて、裏地が透けず自前洗濯が容易な白服を高機能繊維で作れば売れると思うぞ。肌触りと吸水性を挙げて下着なしで着られるようにすれば更に宜しいんじゃないかね。宮地・フジの私物半袖の上着が9000-7000円くらい、下が1万円程度である。着る方も金はないわけではないので、高機能なら倍は出すだろう。

 実際には、白上下なんか着ないで半袖作業服にすればいいんだけどね。私物しか存在しないが、通気性命で作った薄い麻みたいな作業服がある。作業服と言いながら、事務にしか使えない代物。ただ、濃紺なので下も透けず、不思議加工をしているのでアイロンの持ちもいいので、制服の代わりには丁度いい。更に涼しくするには、上着背中と脇腹にを網にして、通風ベントで隠せばいい。ズボンも、硫黄島で支給される半ズボンタイプにすればいいんじゃないかな。世間ではクールビズOKなんだから、そういうのを作って着ればねえ。過剰冷房もなくなるので体に良いし、電気代も安く上がるよ。
2012.08
04
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13:00
Category : ミリタリー
 ヘンテコな役職指定といえば、一人きりの分隊長をやったことがある。確か61分隊長だったか。一時期、分隊員なしだったのだが、分隊長指定はされたままだった。

 その時に分隊点検をやるという。分隊点検は年一回行う行事で、全職員を分隊ごとに整列させて、指揮官が検閲する行事。部長不在だったので、再先任の上司の科長が部長代行になって指揮官扈従でいなくなる。周囲が10人20人50人で2列横隊を形勢するなか、同じ面積を使って一人だけポツンと立っている。ボッチもいいところだった。

 伍長(最先任曹長)の、てんけーんという号令がかかり、指揮官が回ってくる。各分隊は頭の敬礼、これも海は独特で「し~ら~、ギッ」と語頭はサイレント気味で発声する。だが、わがボッチ分隊は当然、頭の敬礼はかけることもできない。声も出さず一人で普通に挙手礼して「61分隊」と間延びした申告するだけ。

 点検する将補は、ひと目で事情を察して「ン」とだけ言って通過。しかし、お付きの総務課長がね「分隊指導方針は何か」とか愚につかぬ事を言ってきた。分隊員がいないのに指導方針もないものだ。井側の父母かなにか、孟子あたりを言って素通りさせたがねえ。点検が終わったあとで所用あって本部に行ったのだが、将補は科長と己を見るなり、総務課長も真面目だよなあと言って笑っていた。

 あとは、分隊長会報にも出ろとかね。部下がいなくとも出ろと言われたよ。所属部の部長も「呼んだ人の面子があるから出ておけ」と言う。それならば仕方がないのだが。部では先頭の分隊で、分隊長でも部先任だったもので、現況報告や問題点について色々やらされる。とんだ面倒だった。しかも、今日の会報で決まったことを分隊員に確達しろ、その状況は次に報告とかね。

 あまりにも腹立たしかったので、後に一人だけ分隊員ができた時には、先任会報には常に参加するように命じた。「1曹だから充分に先任海曹です。他所との付き合いもあるので会報には必ず参加してください。あとで命令って件名つけたメールを送るから」と言ったら「普段は命令なんか一切しないクセに、こういう嫌がらせは喜んで」と言われたよ。知り合いの海曹だったが「◯◯さん」ではなく、常に先任と敬意を評して呼ぶことにもした。

 先任には色々嫌がらせをした。己はタバコを飲まないが、わざわざ「わかば」を買って、海曹士で話している中に「先任、言われた通り、タバコ買って来ました」とか、「教育隊(入ったことない)で先任は班長でしたので」とか嘘八百をつけてね。あと、3曹の階級章をつけてお手伝いしたこともあった。構内点検の前は膨大なペンキ塗りなのだが、作業員なんかいない。手伝おうとすると「駄目です」という。「草刈りはいいですけど、ペンキ塗りをやらせるわけにはいかない」と云う珍理論。だから、庶務係海曹から3曹のゴム階級章を二人分借りた。科長と二人でジャンパーに付けてお手伝いしたこともあった。什器の陰になる壁に、微妙に色味の違うペンキで落書きとかもしたけどね。

 定年寸前だった科長なんか、面白半分で40年前の円管服まで持ちだした。護衛艦の腹に「はるかぜ」とか艦名が書かれていたころのもの。少年自衛隊だったとき、3等海士か2等海士のころに貰ったのだろう。小さい部隊だからできることで、水上艦あたりじゃ絶対に無理だけれども。
2012.08
03
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13:00
Category : 映画
 昔、東京12チャンネルで平日午後によく放送していた映画だが、完全版をやるらしいですね。

 昭和20年8月、ソ満国境に取り残された重機関銃部隊の話。饅頭型のトーチカ群に立て篭もる日本軍が、互いに鏡をチカチカやって健在を伝え合うところから始まる話だと言えば思い出す人もいると思う。重機に取り付けるマガジンの点検をしながら「保弾板、曲がりあらざるや」とか「保弾板、弾爪ゆるみあらざるや」というアレ。

 注目すべきは、8月8日に防衛召集された少年兵が、ふ号兵器で脱出するところからですね。今までのTV短縮版だと報告のための脱出命令としか説明されなかった部分が、今度の完全版では、実際は子供たちだけでもどうにか、と考えた隊本部が体裁を整える部分が放映されるそうです。そのシーンの復活で「無茶苦茶な命令」の意味が変わってみえることでしょう。

 あとはご存知のとおりです。命令は8月16日の闇夜に脱出なのだが、水素不足と補充のための電気分解で出発が黎明になってしまう。対空射撃で割れるふ号兵器。ソ連機パイロットが興安嶺山脈を指さすシーンからは何回見ても眼を離せないものでした。

 でもねえ、この歳になると、残置されたふ号兵器の開発者、帝大卒の軍属が「おれはいつか風船でハワイまで行く、いや、アメリカまで行って見せる!!」 といったところや「爆弾や生物兵器を積むために風船を作ったのではない」とかいうシーンにやるせなさを感じてしまうものです。

 エンディングも前よりも後のほうが身に響く年になりましたよ。「興安嶺の魔女は、自分に戦いを挑み敗れていった男たちを思い出して、今でも笑い続けているという…」よりも、そのあとの「戦後、銚子沖を飛んでいく一つの風船をみたというはなしがある。おじさんが、アメリカまで到達できたかどうかはだれも知らない…」 の方に悲しさを悲しさを感じてしまいますね。
2012.08
01
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19:39
Category : ミリタリー
 中国海軍新型コルベット、056クラスなんだが、どうもピントがハズれているように見える。香港誌『鏡報』8月号に、いつも軍事記事を掲載する梁天仞さんの「掲開056軽護神秘使命」※ が掲載されている。そこに3DCGと、正横から艤装中を写した写真が掲載されている。「056轻型护卫舰 」で画像検索するか、このあたりhttp://news.sctv.com/jsxw/201012/t20101203_552029_1.shtmlを見てもらえばよいだろう。

 梁さんによると、056型は1300tであり、全長89m、全幅11m、喫水3mで、最大速力25kt、航続距離2000マイル、乗員60名。砲は3インチ砲×1門と、小型艇避けの30mm機銃2門、対艦ミサイルはYJ-83を4発、対空ミサイルはRAMもどきのFL-3000Nを搭載している。対潜兵装は短魚雷のみであり、ヘリは離着艦のみで、搭載はしない。退役したDEの「いしかり」と同じ規模と見てよいだろう。

 この056型は、図を見た限りでも、甲板での運用作業が面倒であるように見える。ステルス性を強調した結果、中甲板が内側に引っ込んでいるので、船腹にぶつかって海面にアクセス出来ない。甲板作業は艦橋前にある前甲板30mか、航空甲板を兼ねた後甲板15mを使ってやるしかない。これでは落水者の救助や浮遊物回収がやりにくい。だいたい、拾い物は横目に見ながら、艦橋真横に擦り付けるように接近する。しかし、中甲板が使えないとそれも困る。前甲板に合わせるとなるとフレアに隠れて見えにくい。後甲板だと下手すれば水流に巻き込んでしまう。

 また、バウソナー装備についても疑問が沸く。バウソナーを装備しながら、ソナー部の喫水も4.5mと浅い。これでは探知距離が狭くなってしまう。水中音波の関係から、潜望鏡深度といった浅い位置にいる潜水艦を、近距離でしか探知できない。一般的には、ハルソナーよりも高級なバウソナーをつけてもあまり意味は無い。そもそも、短魚雷だけの対潜装備と釣り合っていないとも言える。

 なによりも、航続距離が短く、船型過小であり、外洋にだせない点で、使いにくく見える。18ktで航続距離2000マイルは短すぎる。外洋海軍になろうとしている中国海軍であるにも関わらず、昔の沿岸海軍に合わせた程度の航続距離でしかない。広州から南沙列島までだと経済速度で往復するので手一杯であり、海南島から南沙列島でも、哨戒や戦闘速力を発揮を考えると心もとない。戦闘航海を考慮すると、寧波から台湾、琉球列島線あたりまでしか使えないことになる。乗員数も少ないので、無理に長期航海させるといろいろ困るだろう。現在の中国海軍にとって既に使いにくく、将来的にはお荷物になるように見える。

 航続距離の短さについては、梁さんもどのような使い方をするのか見えてこなくて困っている様子である。記事では「脚が短いので南沙は無理、おそらく尖閣諸島で使うのだろう。あるいは、米LCSに対抗するための沿岸防備艦として使うのかもしれない」(大意)と述べられている。

 外洋海軍を目指す中国海軍にしては、沿岸域でしか使えないコルベットは場違い太郎な印象を受ける。現在2隻が艤装中であり、合計20隻も建造される可能性があるとのことだが、「いしかり」やその後継の「ゆうばり」と同じ轍を踏むように見える。将来的にOPVへ転用するにしても、脚の短さは致命的だろう。

※ 梁天仞「掲開056軽護神秘使命」『鏡報』421(鏡報文化企業有限公司,香港,2012.8)pp.82-85.


目下、コミケ作業が佳境なもので、コミケ明けまでは書きためた記事が連続します。興安嶺の魔女みたいなアレですのでご勘弁
2012.08
01
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13:00
Category : ミリタリー
 護衛艦を引き渡しの仕事をしたことがある。「護衛艦壱隻、〆テ500億円(内官給品300億円)慥二請取致候」みたいな請収証と船舶証書を渡すだけの簡単な仕事。チェックは本当に護衛艦があるかどうか確認するだけ。細かい金額的な書類は契本がやっていた。その書類があることを確認すれば何もやることはない。

 この仕事が出張だと旨味が増す。なんせ仕事は30分もかからない。遠い造船所なら、公務員の標準移動日が◯日もついたりする。民間機移動なので、半日もかからない。まあ、どこのお役所も同じだけど、その◯日間は、官費で遊び放題ということだ。先任で引率者なら自儘だし、そうでなくても幹部だから放置プレイ。話を聞くと、悪い所まで遊びに行くヤツもいるらしいのだがね。己は地位を利用し、趣味も兼ねて、造船所見学をしていた。なんでも見せてくれたよ。

 あとはパーティーだね。慣習により、先方持ちで大宴会が行われる。全く椀飯振舞でね。ホテルのケチな宴会とは違う。造船所のゲスト・ハウスで、シャンパン飲み放題、世界三大珍味食い放題。まあ、艤装員長以下への接待だろうけど、そのご相伴に預かれる。おいしい思いをしておいてなんだが、税金使った飲み食いと変わらない。廃止はともかく、縮小しても良い習慣だと思うのだけれどもね。お祝いなので勿論参加しなければならないし、参加すれば頂戴する。

 陸任期あがり事務官が、シャンパンを飲んで「これ何ですか?」といったのを思い出す。本当に飲んだことがないらしい。「自腹じゃ飲み食いできない高級品だから、心ゆくまで飲み食いしろ」と言ったところ、微かに酔った容貌で「弁当箱と水筒持ってくればヨカッタですねえ」だって。

 防衛産業は儲からないというのも大嘘。この手のパーティーに金を惜しまない程度には儲かっている。まあ、艦艇引渡はおおっぴらに宴会ができるし、航空機もやっているらしい。おそらく戦車や自走砲でもやっているだろう。この費用も経費に積み上げられている。その経費に利益率GCIPを乗じるから、パーティーも金をかければかけるほど儲かる構造。「担当者が始終呼ばれるので儲からない」なんて言われるけど、市ヶ谷や現地に呼びつける費用も同じ構造。経費積み上げされて、利益率が掛けられている。

 本当に宴会で酔っ払うわけにも行かない。己はほとんど飲めない上、その後に引渡し式がある。防衛大臣から自衛艦旗を授与する式典で、海幕長以下が参加する重要な儀礼。でも、年度末に引渡しラッシュになると、エライ人は東京近場の重要艦に参加する。同日に遠くの造船所で行われる儀式には来やしない。そうなると代理が立つ。海幕長代理が海幕勤務の3佐ドノ。確か車両かなにかを担当していた人。で、配属総監部の総監代理が当時2海尉の己だった。

 乗り込みの際には艦長以下との敬礼があるのだが、代理だからこっちがエライ。手を挙げるだけだから金が掛かるわけでもないので、向こうも名代に敬礼するのには抵抗もない。敬礼は敬意を示すためにやるものではない。決まっているから機械的に敬礼するものだしね。しかし、船務士、応急士あたりに配置された同期連は嫌な眼で己を見ていたよ。「序列最下位のお前に敬礼して損をした、あとで返せ」という眼だったな。

 なんにせよ、役得な仕事であったもんだ。