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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

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2023.04
26
CM:1
TB:0
22:41
Category : 未分類
 中国雑誌でラー油関係の記事を発見した。正規には辣椒油と呼ぶらしい。その最適抽出温度は180度とのことである。

 これは葉夢宇ほかによる研究の結果である。色と香りと辛さについて比較した結果を『中国調味品』に発表している。*1

 ラー油の製法は次のとおり。菜種油、原文では菜仔油60mlを摂氏140度、160度、180度、200度、220度に加熱する。そこに15gの唐辛子粉、原文では秦椒粉15gを入れて1時間おく。その後に40度で濾過して完成として各種検査機で測定する。

 結論は次のとおりである。

 色は180度を超えると変暗する。160度までは正常である。

 香りは揮発成分次第であると説明している。そしてC4からC8あたりの分子について各温度条件ごとの濃度を提示している。その表から見るとラー油の香りはC6-12あたりのガソリンやらJP-4の中にも入っているということになる。

 そして辛さは180度がピークになる。ラー油1mLあたりの辣椒素の含有量は140度と160度はグラフ読み取りで0.0275mgだが180度は0.055mgと倍になり200度、220度では0.04mgに減る。

 なお、辣椒素はカプサイシンだろうと見当をつけていた。いまググるとやはり正解であった。

 いずれにせよこの結論を以て最適温度を180度としていた。

 ちなみに、他に似た雑誌を探すと唐辛子の相性を探す記事もあった。どの唐辛子がラー油に向くかの研究である。

 中国雑誌は面白いものである。

 なお商売関係の記事では「日本はサラミスライスをしている」もあった。『台湾研究』の温さん、陳さんの記事なのだが「台湾問題以"切香腸"的方式挑発"一个中国"的紅線」とあった。佐藤正久さんが推すTW政策なんかがそれと言っている。*2

 実際にそうだねえとしか言えないものだ。「南シナ海で中国はサラミスライス」ばかりを言っている連中の言ってる台湾政策はまあ「"切香腸"的方式」だよねと。

*1 葉夢宇ほか「油温対辣椒油品質的影響」『中国調味品』2022年1期(全国調味品科技情報中心站出版,2022年)pp.124-127.

*2 温天鵬、陳星「日本渉台政策調整的路径、動因及未来走向」『台湾研究』2022年5期(中国社会科学院台湾研究所,2022年)pp.53-62.

2023.04
05
CM:5
TB:0
10:37
Category : 未分類
 製麺用小麦というと「農林61号」が思い浮かぶ。うどん用であればその印象があり、うどん文化圏の川越の在では実際に今でも作っている。窒素の施肥でだいたいタンパク質11%を達成できるあたりという。

 ただ、それを超える品種はすでに登場している。そもそも「農林61号」自体が戦争中の品種で相当に古い。それよりも優れた高タンパクの小麦はいくつも誕生している。

 さらには最適な小麦の品種模索も進められている。かの香川県は、うどん専用品種、うどん向けブランドとして「さぬきのゆめ」の品種まで作っている。


■ 中国のラーメン研究

 それと同方向の中国研究を見つけた。蘭州ラーメン向けに最適な品種はなにかを追求する研究である。

 『粮油食品科報』の魏記事である。「小麦粉蘭州拉麺制作適宜性研究」で各種の小麦粉を用いた検討を行っている。*1 先月に日本海軍研究の偉い人と神保町で会ったのだが、そこで海軍の話はせずひたすらラーメンハゲ漫画の話ばかりをしていた。その流れで記事を探したものだ。

 昔は在来の「和尚頭」、ついで80年代は「寧春4号」を使っていたらしい。

 それが最近ではいろいろな品種ができた。だからそれぞれで製麺して官能検査を含んだ比較で最良品種を探すという内容である。

 ちなみに、中国語でも「小麦粉」の語を使っていた。本来は「麺」が小麦粉製品を意味する。小麦粉は「面粉」つまり「麺粉」と呼ぶ。日本語で言うヌードルの意味はない。だから小麦粉といった言葉もないとばかり思っていた。だが実際にはヨリ厳密な意味をもつだろう「小麦粉」の語もあるらしい。大雑把につかう常用語の米粉と、正確なニュアンスを持つ上新粉の使い分けみたいなものなのだろう。

 研究では小麦品種を20種ほど挙げている。

 その中で高タンパクの品種としては上から14.55%の「開麦18」、14.35%の「武農986」、14.25%の「小偃6号」がある。いずれも市場で買ってきた粉を研究室で実測した値である。ちなみにBAIDUほか簡体字で开麦18、武农996で検索すると多くの関連情報が得られる。なお小偃366は簡繁とも同じである。メモを採るときに「この偃の字は『元和偃武』でしか使わないな」と思ったものだ。こないだ30年ぶりに手書きした突厥の「厥」の字と同じようなものだ。

 それらの小麦について同様の加工を施す。500gに塩7グラム、拉麺剤まずはカンスイを3g(粉を1:1.25で水に溶いている)を投入しその後に水を加えて含水率43%とし20分放置する。その後に拉麺剤を4g追加してから直径3ミリに製麺して比較する内容である。


■ 西農583

 ちなみに最適とされたのは「西農583」、ついで「鄭麦366」である。色、表現これはたぶん麺条=ヌードルの伸び?、硬度、黍性たぶんモッチリ感、弾性、光沢性、食味での総合比較でそう結論づけられている。検索するための簡体字なら西农583、郑麦366である。

 どちらかというと中力粉側に向いた小麦である。拉麺用としてはタンパク質が高すぎるのも考えものらしい。

 なお、官能検査には拉麺師の作業性も含まれていた。食う客の官能とばかり思っていたのだが引っ張り加工あたりで切れないとか、ノビが良いのも評価材料らしい。

 ちなみに、先行研究としてはオーストラリアの文献が使われていた。ラーメン向け小麦研究ちなみに「アルカリヌードルまたの名をRAMEN」とウドン向け小麦研究がある。*2 小麦は重要輸出品であり各国市場向けブランドを作っているだけのことがはある。



*1 魏益民 et al「小麦粉蘭州拉麺制作適宜性研究」『粮油食品科報』30.6 (粮油食品科技、2022年)pp.52-62.

*2 ラーメン向け小麦の先行研究として下のクロスビー記事に註をつけている。
   Crosbie et al 「Starch and Protein Quality Requirements of Japanese Alkaline Noodles (Ramen)」『Cereal Chemistry』76.3 (1999) PP.328-334.