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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 軍事ライターの文谷です
 コミケでは隅田金属ででています。評論情報です。

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2011.08
27
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13:00
Category : ミリタリー
 封鎖用沈船について、実例を見つけたので少々。
 去年の今頃「日本本土に上陸できる国なんてありませんよ」で出した「利用可能な港湾なんか沈船でも沈めれば使用不能になるでしょ」で使う沈船です。
『ゆとり上陸作戦』(http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-92.html)で「予め封鎖船を用意しておけばそれでOKでしょう。孔を空けて木栓でも突っ込んでおけばよい。相手の上陸必至となったら沈めるだけの話です。」としたアレの話。


 誰でも実際に考えることは同じということだ。日中戦争でも日本は同じ方法で沈船を取り扱っている。日中戦争で、日本は閩江口を沈船で封鎖した。閩江口は台湾海峡、その大陸側にある福州入り口部である。日中戦争で日本は大陸封鎖を実施した。軍艦による臨検や機雷敷設を行ったが、福州封鎖では閩江口に沈船を使用した。

 沈船は、捕獲ジャンクに孔を空け、木栓突っ込んだものである。沈船は泊地設定した馬祖島から20マイル程度を曳かれて閩江口に到達、木栓を抜かれ沈められている。ジャンクには石も詰まれており、浮揚を困難にする工夫とされている。

 現代日本でも沈船候補は事欠かない。日本に廃船や廃船候補は幾らでもある。金属価格が高騰したとはいえ、廃船は取れる非鉄や鉄にあわせた値段しかない。沈船作業費用としても、必要なのはビルジ処理と沈めるまでの維持費用に過ぎない。
 孔あけて木栓を突っ込んでおけばいい。浮揚阻止を考えるのならば、屑鉄でも砕石でも生コン充填でもしておけばいい。孔から浸水してくる分は、ポンプを廻しておけば充分である。
 あとは、必要に応じ現地に曳航し、木栓を抜けば終わる。

 沈船が持つ有効性も、日中戦争で見つけることができる。
 日中戦争、上海事変では、日本軍は沈船除去に3ヶ月を要した。民国は、上海市街から揚子江に流れる黄浦江を沈船他で封鎖した。この沈船は8月12日に沈められたが、日本側が除去したのは11月12日である。日本側は早期除去を目論んだものの果たせなかった。除去は戦場が上海から南京に変わった後、しかも、沈船がなぜか浮き上がったものを利用してどうにか果たせたに過ぎないのである。
2011.08
27
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TB:0
12:59
Category : ナショナリズム
 岩波ホールで映画『おじいさんと草原の小学校』(BBC)観てきたのですが、これがなかなか面白いものでした。前にケニアで「84歳の小学生」が話題になりました。その映画化です。
 何が面白いといって、イメージされる「感動ドラマ」とは全然別のベクトルにあるところです。実際は民族創世神話ですね。




 「字が読めるようになりたい」と小学校に入学した、主人公マルゲじいさん。この人、リアルで元マウマウ団で独立の闘士です。

 妻と子供を目の前で英帝に殺される。10年間収容所に入れられる。体中は拷問のあと。背中には鞭の傷、頭蓋骨にはヒビが入っている。歩くのが不自由なのは、つま先を切り落とされたから、という凄まじさ。

 マウゲ爺さん「良い生徒になるから」なんて言って、首尾よく小学校に入るのだけれども。許可した校長先生に、村人や役人から容赦無い圧力が掛かる。老人のために子供向けの予算を使うなとか、そういう話になる。
 しかし、そこでマウゲは民族対立の意識をむき出しにする。「あの役人、イギリスの手先になった部族だ」とね。
 しかし、教師や児童との交流の中で、マルゲは同じケニア人であるという意識が芽生えるのです。ケニア民族創世の物語になっているわけです。

 クライマックスでは、読み書きを教えてくれた先生と、一緒に勉強した児童を救うために立ち上がり…って話。良い生徒は、良い国民になったわけです。おそらく周囲もケニア国民としての団結があがったような結末ですね。

 うん、イギリス帝国主義をキチンと描いたBBCは立派だと思いますよ。
 絵もいいです。よく見ると画像処理してますけど、アフリカって感じが良い。
 あと、女校長先生のナオミ・ハリスは、あれは戦うタイプの大石先生なんでしょうねえ。

 『おじいさんと草原の小学校』は、一応、実話とされていますが「どこまでが実話か」となると、ちょっと膨らませた部分もあるでしょうね。いい映画になるのなら、悪いことでもないのですけど。
 でも、どうせなら、マウゲ爺さんと、あの少年の部族に潜在している敵対関係をもっと煽ったほうが更に面白くなるでしょうねえ。ケニア的にはあまりよろしくない展開でしょうけけど。
2011.08
20
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TB:0
11:46
Category : ナショナリズム
 中国と台湾は、南沙諸島では喧嘩しないだろうね。
 南沙諸島、英名だとスプラトリー諸島は、5ヶ国が領有を主張している。それぞれの国はてんでバラバラに島を占拠し、互いに島を奪われないように防備を固めている。時折、衝突も発生していており、見方によっては、他国を追いだそうとしているように見えるのだけれども。

 中国と台湾は衝突しないだろう。というのも、中国にとっては「台湾により確保された島も中国領であること」に間違いはない。「中国人が支配する、中国の領土」である。台湾にしても、新中国が確保した島も「中(華民)国人が支配する、中(華民)国の領土」であることに違いはない。
 中国領土を、外国人に占領されているわけではない。大した問題ではないのだ。

 これに対して「外国」によって「中国領」が占領されていることは、大問題である。中国人にとっては、国辱といってもよい。ベトナム、フィリピン、マレーシアによって「中国領」が占拠されている事態には、耐えられない事態である。
 特に新中国政府は、強硬に対処する。摩擦を怖れず防備を固め、衝突も辞さない。場合によれば実力での回収も考慮するだろう。新中国は、反帝反封を旗印にしてきた。そして、南沙諸島では反帝国主義が、失われた領土回収がまだ終わっていない。南沙で妥協をすることは領土を失うことと同じである。その場合には政府が持たない。

 しかし、台湾による南沙支配は何の問題もない。台湾も中国の一部である。台湾人も中国人である。「中国の島を中国人が占拠している」にすぎない。言い換えれば、弟(台湾)が親の家作(中国固有の領土)に住んでいるようなものだ。自分の土地(固有領土)に他人(外国)が家を立てたほどの問題ではないのである。

 中国が台湾支配を助ける可能性もある。極端な話、台湾が南沙諸島支配に困ったときには、中国は何らかの手助けをする可能性もある。台湾支配も、中国による「中国領」確保と同義である。「外国に奪われる」おそれに対しては、協調の余地はある。1958年にあったような、暗黙の国共合作(※)や、それから一歩踏み込んだ公然とした国共合作もあるかもしれない。状況が悪化すれば、台湾上陸船団に、中国艦隊が護衛位置につくくらいのこともするだろう。もちろん、阿吽の呼吸で。

※ 廉 徳瑰「第二次台湾海峡危機(1958年)における暗黙の国共合作」『軍事史学』(2003.7)4-19p.p.
2011.08
11
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TB:0
17:26
Category : 未分類
2011_08_11_表紙_完成_見本用



新刊表紙出来しました
なお、内容につきましては、昨日同然です


『掃討しかない 感応機雷と対機雷戦』
本文34ページ
まえがきは『聖なる娼婦 あなる』1ページ
あとがきは『原発・CIA・島耕作-機密文書で読む初芝裏面史 -』1ページ
合計36ページです

関連詞としては
機雷ロジック、妨掃装置、特殊感応、新掃海、施航船、掃討、掃討艇、
ってあたりで
「対機雷戦戦力は、日米欧が独占している、中露は何も出来ない」って感じですね

頒布は、14日(日曜日)東Q-35b「隅田金属ぼるじひ社」です
2011.08
11
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TB:0
00:09
Category : 未分類
新刊概成しました

『掃討しかない 感応機雷と対機雷戦』
本文34ページ
まえがきは『聖なる娼婦 あなる』1ページ
あとがきは『原発・CIA・島耕作-機密文書で読む初芝裏面史 -』1ページ
合計36ページです

関連詞としては
機雷ロジック、妨掃装置、特殊感応、新掃海、施航船、掃討、掃討艇、
ってあたりで
「対機雷戦戦力は、日米欧が独占している、中露は何も出来ない」って感じですね

頒布は、14日(日曜日)東Q-35b「隅田金属ぼるじひ社」です
2011.08
08
CM:1
TB:0
19:55
Category : 有職故実
新刊『掃討、掃討艇、感応機雷』(仮題)、とりあえず完成する見込みです。
"Steam,Steel and Shellfire"とか"Cogs,Caravel and Galleons"みたいにスルっと入る題があればいいのですけどね。どうもうまくいきませんな
とりあえず、件の古い日記の転載で

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「アフリカに伝承されるZ工法」

旧海軍設営隊のZ工法をケニアで発見。

ケニアのムエア感慨地区、キクユ人入植地に「セイブ・ザ・チルドレン」の支援で作られた水タンクなんだが、作り方がZ工法そのもの。砕石で基礎を作り、その上に大袋(1立米位かな)を起き、その中に籾殻を入れる。袋の底、その下に針金をとおし、袋の口の方に廻して姿勢を固定する。あとは、大袋の外にモルタルっぽいセメントを貼りつけていく。セメントの強度が発現したら籾殻を抜けば水タンクの出来上がり。(季刊民族学 95号より)

まあ、世界中どこにでもある、誰でも考える工法なんだろうけれどもね。
旧海軍はこの方法で掩体を、単発機を収容するハンガーを作っていた。掩体内部の大きさにゴム袋を膨らませ(あるいは土饅頭を作って)その上にコンクリートを打設する。強度が発現したら餡子を抜くとカマクラ状の掩体ができあがるという理屈。

Z工法による掩体は、まだ厚木基地の中に残っているという。

2010年04月30日 MIXI日記より
2011.08
07
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TB:0
03:35
Category : 映画
昔のMIXI日記からサルベージ


映画の『八甲田山』観たのだが、不図思いついた。
無理に軍隊だけで八甲田山を超える必要はなかったんじゃないかな、と。

映画の中で、集落の長老が「隊長さん、露営なんてしないで、村に泊まってください、準備もできてますから」というシーンがあります。「自分たちの倅が軍隊に入っている。軍隊をもてなすことは、自分たちの倅をもてなすことだ」って心情があったわけです。

軍隊も、それに素直に従えばよかったのではないか、と。

『八甲田山』は映画ですが、戦前の日本では、国民が軍隊を助けようとする例は当たり前でした。戦前までは「天皇の軍隊」とは、天皇の臣民と一体にある「国民の軍隊」でもあったわけです。そして、徴兵制と郷土連隊主義の連結は、徴兵制は好ましくない制度だと思うのですが、国土防衛戦では無類の力を発揮するのです。

だから、ロシアと戦争になっても、無理して軍隊独力で八甲田山を通行する必要はなかったのではないかと思うのです。

だって「ロシアと戦になって、自分たちの倅が、兄弟が、亭主が自分たちを守るために軍隊に取られた」事態になったら、村々は軍隊を助けないわけがないからです。
「国民のものは針一本、糸一筋も盗まない」天皇の軍隊、国民の軍隊であるかぎり、何があっても国民は軍隊を助けますよ。

よしんば戦争になって、ロシア海軍力によって青森県の沿岸部が通行不能になり、軍隊が山越えをしなければならなかったとします。
でも軍隊が、あるいは国家が薪炭と糧食さえ用意すれば「自分たちの倅のために」村方で寝食は準備してくれるはずです。
だから、八甲田山越えも、地元の支援を前提にしてもよかったのではないか、と思い付いたわけです。

映画の本筋とは全然関係のない話ですけれども。

2007年10月29日 MIXI日記より
2011.08
02
CM:0
TB:0
22:22
Category : 中国
コミケ作業で繁忙なので、MIXI日記からの転載です
コミケの新刊が対機雷戦本です。
 ・ 掃討でなければ感応掃海は処理できない
 ・ 中露は対機雷戦ができない
といった本をだそうかとね

で、中国の文革の話を日記からお手軽に転載します


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文革期の中国、やたらと戦時日本の経済・労働不効率に近いものがあるなと。

 1980年に実施された中国残留孤児からの聞き取り調査を発見。
 黒竜江省にある農機具工場で働いていた人に、1977年当時を回顧してもらった内容。

● 工場購買係は公定価格でモノが買えない。だから、豚肉と食用油を持参して売ってもらう。
 ・ おおっぴらに渡し難いときには、自宅や宿泊先に届ける
 ・ ベッド・メイクの時に、掛け布団の下に豚肉を並べる

● でも、自分達の工場で治すときは、お礼をもらう。
 ・ 生産大隊(人民公社)も農機具が壊れたら、食用油を持ってきた。
 ・ 公式ルートで治すと3か月だけれども、お礼があれば即日作業になる。
  - 壊れるのは農繁期だから、どうしてでも直さないといけないわけだしね。
 ・ 黒龍江省だから[大豆が取れるので]食用油はどうとでもなる。山東省とかはどうなんだろうね。

● 工場が停電で操業停止したりする。

● 休みは日曜だけ。休暇も1月1日、春節、10月1日だけ。
 ・ でも、医者に診断書書いてもらえばいつでも休める
 ・ 用事があると使いを出して診断書をもらって休む

● [踏み倒せる可能性が高いから]工場に借金はしている。
 ・ みんな「借金はしないと損」だと思っている

 とまあ、戦時体制にあった日本にえらく似ている。
 市民生活についても

● 公式配給は、豚肉250g/月、油200g/月、鶏卵はまずない。

● 婚礼で豚を潰すことは禁じられていた。
 ・ でもみんな潰していた。

 あたりもそっくり。

 また、物資が偏在していたらしい話もある。

● 家庭用石炭は1年に2トン購入した。
 ・ 車を借りて運ぶ[多分、この時も診断書で不正休暇]
 ・ 県で売っている、オフィシャルな石炭は「品質が低すぎて」使わない。
  - 県内で石炭が取れるから[ヤミで]購入は可能
  - 他県は低質品の配給制
 ・ 薪[石炭に点火する時に使う]は農機具修理のお礼で余るほど入手できる

 日本でも戦争中、全国的に石炭不足であった。でも樺太では「内地に送れないので、余って余って仕方がない」とかでヤケになって朝風呂を立てていた話(内務官僚の回顧談)に通じるねえ。


MIXI日記 2010年10月23日より