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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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Author:文谷数重
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2014.02
09
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19:46
Category : 中国
 国交正常化で中国は賠償権を放棄し、その代わりが対中ODAになった。このあたりをスットばして「中国側の感謝が少なく、外交の観点から効果があったと言えない」とする主張には、違和感がある。

 高橋洋一さんの「アフリカ重視のODA戦略 かつての中国援助の轍踏むな」※ は、日本のODAの仕組みと、アフリカへの適用について丁寧にまとめている。元内閣参事官という立場もあるので、日本ODA支出について簡単に理解する上で役に立つ記事である。

 しかし、かつての対中ODAの性格を、アフリカ向けODAと同一視するのは、妥当ではない。対中ODAは、戦時賠償の代替であった。その点で、アフリカその他の、資源や常連理事国の議席を買うためのODAと同一視して評するのは、誤りである。

 日本は、どちらの中国に対しても負目がある。戦後、民国(国民政府)は、蒋介石総統の指示により、対日戦争犯罪裁判も穏やかな処置にとどめ、対日請求権を要求しなかった。新中国(大陸)も、戦争犯罪処理は最低限に止め、国交正常化で対日請求権を要求しなかった。

 日本は、対日請求権をチャラにしてくれた件について、お礼を兼ねて対中ODAを始めた。このあたりは、日中にある阿吽の呼吸である。この点を、証拠もなく曖昧であると言われる方は中公の『日中国交正常化 - 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦』を読めばいいだろう。

 対中ODAは、形を変えた賠償であった。

 しかし、高橋さんの記事では、その点を考慮せず、アフリカ向けODAと同一視している。この点が、気にかかるのである。
 しかし、かつて中国へ巨額の円借款を行い、今の国際協力機構に統合される前の海外経済協力基金の総裁(歴代大蔵省からの天下り)は閣僚級の扱いを中国から受けたという話もある。

 それにもかかわらず、中国政府が日本からの借款に感謝したと公の場で大々的に語ることはなく、そうした援助は、外交の観点からあまり効果があったとはいえない。また、今のODAの原則に書かれている環境配慮、軍事回避、西側諸国価値観の観点から見て、良いODAだったと言い切れないだろう。
「アフリカ重視のODA戦略 かつての中国援助の轍踏むな」http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140209/dms1402090728005-n1.htm
その前提条件にある差異を無視し、同じODAとして取り扱っている点は、主張として乱暴に見える。

 また、対中ODAはほとんどが借款である。対中ODAの総額は、3.5兆円だが、うち3.15兆円が低利ではあるが融資であり、返済もつつがなく行われている。外務省資料

 すでに終了した対中ODAのは、正味は賠償であり、しかも形態は借款であり、返済も順調である。その対中ODAを、資源や常任理事国といった欲目当てて、アフリカにバラ撒くODAと一緒にするべきではない。

 対中ODAもについて、お金の使い道や、日本への感謝が少ないと評価することは、経緯からすれば「何様のつもりか」といった話になってしまう。

 まずは、日本側は言うべき発言ではない。中国側に対して不満があれば、中国と話し合って終わらせればいい話であり、事実、そのようにして対中ODAもは2008年に終わっている。あれは賠償だったと割りきって忘れればいいだろう。



※ 高橋洋一「アフリカ重視のODA戦略 かつての中国援助の轍踏むな」『ZAKZAK』(産経新聞,2014.2.9)http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140209/dms1402090728005-n1.htm

※※ 撫順収容所の件は、洗脳についての話もあるが、寛大な処置であることは間違いない。そもそも戦犯指定の際に、周恩来は上限数を約300(だったはず)とし、死刑をしないことを指示している。
 このあたりは、中帰連関連が詳しい。新中国への支持者養成の目論見や、帰国後の政治的な立場云々もあるが「そこまでしといて報復で処刑しなかった」といったあたりは、日本にとってはありがたいものであった。
2014.01
11
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13:42
Category : 中国
 今の政権は、対中包囲網やらという幻想に深入りし過ぎではないかね。そもそも中国と対立を選択する国は、日本くらいしかない。そこで頑張ったところで、インドあたりに手だまに取られて、孤立するのがオチではないか。場合によれば「日本一国だけの対中包囲網」になるのではないか。

 中国と対立を選択する国はない。

 米国は中国との通商を重視している。安全保障では敵であるが、経済的には仲間である。そして、現今の情勢では中国との安全保障の問題は全く重視する必要はない。経済問題に比べれば、オマケである。米国で対中強硬論を言う人々を見ても、共和党系の一部だけで、まったく力を持っていない。

 東アジア、東南アジアで対立的な選択肢をとる国もない。東アジアで、それなりの力の規模を持つ台湾や韓国も対中融和である。東南アジアでは、対中融和ではない国はない。マレーシアとブルネイが安全保障の分野で警戒しているものの、経済的利益があるので対立までする気はない。あのベトナムでも基本は対中融和である。今、フィリピンは対中対峙をしているが、熱しやすい国なのですぐに方向転換する。そもそも、フィリピンは全くアテにならない。

 南アジアでも、軍事的に対立しているインドにしても、経済的には中国と融和的であり、対立する気はない。シン首相は対中融和派である。日本の首相が来るとリップサービスをするが、それで利益を得られるのでそう言うだけの話だ。そもそも、インドは掌返しが多いので、何を行ってもアテにならない。

 この状況で、日本だけ全面的な対中対立を選択していい事はあるのだろうか? 東アジアは世界経済の成長エンジンである。そこの政治的安定に水を差すなと、世界中に怒られるだろう。

 実際に、アメリカには嫌味を言われている。毎日新聞「日米議連:米側『経済重視を』」が、それだ。
 日米国会議員連盟の中曽根弘文会長らが10日、首都ワシントンで、米政府関係者らとの意見交換を総括する記者会見を開いた。議連側が安倍晋三首相の靖国神社参拝は「不戦の誓いが目的だ」と説明したのに対し、「米側から踏み込んでくる人はいなかった」とし、一定の理解が得られたとの認識を示した。ただ、経済発展を望む声が多かったといい、経済重視路線に戻ることを求める米側の考えがにじんだ。
毎日新聞「日米議連:米側『経済重視を』」(毎日新聞,2014.1.11)http://mainichi.jp/select/news/20140111k0000e030204000c.html


 一番まずいのは、日本が疎外される構図になることだ。嫌味を言われるくらいならまだ良い。しかし、ボッチになってしまうのは避けなければならない。

 その危機はある、中国がAPECに台湾代表を招き、習近平と馬英九が会談する事態がそれだ。中国がやる気になれば、2014年のAPECに馬英九が来る可能性はある。2014年のAPECは中国がホストである。そして、首脳会議でありながら、これまでAPECに台湾指導者を呼ばないのは中国の抗議があってのことである。この点は、野島剛「習近平と馬英九は会うのか会わないのか」に詳しい。※※

 中国は台湾との関係改善を示すことにより、日本の孤立化を印象づけられる。最初に述べたように、両岸関係は対立的ではない。そもそも、中国と台湾には、人も金も自由に往来している。互いの指導者が(野島さんによれば、互いの立場も台湾地区指導者と大陸指導者で調整する話があるらしい)会うことに、政治的な障害はない。

 それをされると、日本は面目を喪う。特に今回の靖国社参拝と絡められて、頑なのは日本だけということになるだろう。





※ 正月に宴会やるんで、靖国社で参拝がてら待ち合わせしたのだけれども。
 大村益次郎の銅像って革命戦士の像だよなあと。毛沢東とか安重根とか金日成あたりと同じじゃないかね。ホセ・リサールとか孫文はもっと上のレベルの人物だし。
 待ち合わせ中に「長州神社の部分は違和感あるよね」という話になった。確かに遊就館の長州征伐の展示も?なわけだ。
 やっぱ、適当な儀式で革命戦士の墓と、長州神社の部分、あとは昭和受難者の皆さんを分離して引っ越してもらったほうがいいんじゃないのかねえ。
 行き過ぎた保守や神社側は神様を外す操作は無いとか行っているけど、神道にそこまでの典礼もそれを禁ずるまでのドクトリンもないから、柔軟にやればいいんじゃない。祝詞みても「美味しいもの一杯用意したから、お互い分離してよ」って言えるよ。
 戦後には、今日では、靖国社は戦死した息子に会いに来るとか、あったことのない父に会いに行く場所であって、党派により政治利用していい場所じゃないね。


※※ 野島剛「習近平と馬英九は会うのか会わないのか」『東亜』(霞山会,2013.12)pp.6-7.
2013.11
03
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12:00
Category : 中国
 台湾に潜水艦を売っていいことがあるのだろうか?

 北村淳さんが、日本は中国に潜水艦を売れと主張している。※ 「卑怯者国家」のレッテルを貼られないために東アジア全体のために中国と対立しろとするものだ。
東アジア諸国共通の“公敵”である中国の覇権主義的海洋侵攻戦略を封じ込めるのに一肌脱がないと、それこそ憲法9条を隠れ蓑にアメリカ軍事力に頼りきり自主防衛努力を放棄した“卑怯者国家”とのレッテルが国際社会に定着してしまいかねない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39037?page=4


 だが、中国との関係悪化と釣り合うリターンはあるのか? 台湾に潜水艦を売るということは、中国との関係悪化を覚悟するということである。中国は、台湾に武器を売る国は許さない。フランスでも、ドイツでも、自国へのアクセスを妨害する。「二つの中国」に加担する国には、中国自体が経済的な不利益を受けても対抗する覚悟が中国にはある。しかも、西欧ならともかく、よりによって日本が「二つの中国」に加担すると、面子から抵抗は徹底的なものとなる。

 それに見合う利益は考えられない。北村さんは、日本が誇り高い国家になれば、割があうと考えている。だが、「東アジア諸国」全体のための奉仕と、日本が「卑怯者国家」と呼ばれないことは、何の利益にもつながらない。単なる精神的な満足に過ぎない。それよりも、中国との関係悪化、日本が中国市場から締め出される経済的ダメージの方がはるかに大きい。

 そもそも、東アジアのどこの国も火中の栗は拾わない。中国にある膨張主義の萌芽は迷惑だか、中国との関係悪化をする気はさらさらない。そこに日本だけが「東アジア諸国共通の“公敵”である中国の覇権主義的海洋侵攻戦略を封じ込める」といっても、ただのドン・キホーテに過ぎない。東アジア諸国平和のために中国と対立しても、恩を享けるその東アジア諸国は日本を助けやしない。

 実際に、台湾に武器を売っても、バカを見るだけの話だ。売ってもらった台湾は感謝はするだろうが、それだけである。今の両岸関係では、日本が中国市場から閉めだされれば、台湾人はこれ幸いとその空白を埋めようと、中国とのビジネスを強化することになる。もちろん、見返りで日本が台湾市場ごときで特恵的な位置をもらっても、広大で成長が見込める魅力的な中国市場の代わりにはなりもしない。

 中台関係には巻き込まれないのが、日本の方針である。これは、1973年に日中国交正常化してからの原則である。当時から、さしたる価値もない台湾問題は、重要な価値を持つ中国問題に影響を与えてはならないことは明らかであった。新中国の価値は、その後経済成長で益々増加しているし、濃密になりすぎて切ることのできない日中の経済、人的交流(中国から来たお嫁さんが何人いるか考えるといいでしょう)といった面からも、台湾よりも中国が重要である。台湾程度の問題で、中国との関係を悪化させることは許されないということだ。

 中国との対立、領土問題、軍備競争にしても、ゲームに留める必要がある。金儲けや、人的交流の問題がある。とにかく実質的な友好関係を維持することだ。安保その他の問題が気になるにしても、にこやかに握手する裏で、日本側が優位ある諸条件、例えば海軍力の優越そのほかを維持し、積み増せば済む話に過ぎない。真っ向から喧嘩をふっかけて、冷戦関係になっても何の得もない話である。



※ 北村淳「切り札は日本の潜水艦技術、中国の覇権主義を封じ込める妙手とは」『JB Press』(日本ビジネスプレス,2013.10.31)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39037
2013.07
29
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12:00
Category : 中国
 中国が太平洋に出ることは軍事的挑発なのだろうか。7月25日に中国の航空機と、水上艦が、公海を選んで琉球列島線を通りすぎたことを指して「中国の軍事的挑発がエスカレートしている」と頭括するのは、言いがかりに近い。

 「中国軍に『制御不能』の懸念 8月15日控え突発的衝突の可能性も」は、中国が太平洋に出たことを「軍事的挑発」としている。
中国軍機が南西諸島を通過して太平洋まで初飛行したうえ、中国海軍のミサイル駆逐艦など5隻が、7・21参院選を挟むように日本列島を1周したのだ。
中国軍に「制御不能」の懸念 8月15日控え突発的衝突の可能性も」http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130726/frn1307261810004-n1.htm
中国側の目的として
「反日世論」に火をつけて、国民の不満をそらすつもりなのか。それとも、中国人民解放軍の一部が暴走しているのか
中国軍に「制御不能」の懸念 8月15日控え突発的衝突の可能性も」http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130726/frn1307261810004-n1.htm
とも述べている。

 だが、いずれも日本を挑発するものとするとは言えない。航空機は公海を通過して太平洋に出入した。艦隊も、国際海峡である宗谷海峡をから太平洋に出て、公海を通過して東シナ海に入っただけに過ぎない。国際法的には何の問題もないし、日本領空・領海にギリギリまで近づいたわけではない。洋上で、海自・海保・日本出入する商船につきまとったわけではない。果たして、何が挑発なのだろうか。

 もちろん、日本と中国は海洋で海軍力を競いあうゲームをしている。日本にとって、中国海軍は仮想敵である。だからといって、中国憎しで、中国海軍が太平洋に出ただけで軍事的挑発と見るのは、どうかしている。

 だいたい、この程度で「軍事的挑発」とする論法では、日本の方が軍事的挑発をしていることになってしまう。

 なんせ、海自の方が行動は活発で、大陸側にも結構なところまで進んで行動している。日本は毎日、中国の東シナ海ガス田を監視飛行している。日中中間線の向こうにP-3Cを飛ばしてガス田周辺を偵察している。東シナ海で飛ぶP-3Cは、ガス田を偵察する1機どころではない。また結構なところまで飛んでいる。水上艦も、おそらく潜水艦も同じような行動をしている。もちろん、全て合法的行為である。

 また、中国艦隊が太平洋に出るときには、日本はどこまで行っても追いかける。南西諸島を通過するときには、水上艦による監視を受ける。中国艦隊が沖ノ鳥島あたりまで出張っても、P-3Cが追いかけ、日本が持つ質的優位を見せつけている。中国海軍は、どうやっても海自の追尾を振りきれないと慨嘆させることに成功している。もちろん、これも同じように、国際法上、何の問題もない。

 今回の中国海軍の行動程度は非難するには及ばない。全て合法であり、挑発的な行為もない。それを中国がやったことだからと、無理やり非難するほうが挑発的だろう。

 中国が憎いからと言って、全てを挑発とするのは無知故である。防空識別圏に入ったことや、公海での行動、領海での無害通航に文句を言うのは、海洋国のマスコミの言うことではない。防衛や安全保障についての報道に詳しいと自称していながら、海洋法に全く無知であることを晒すものだ。海洋やその上空にある領域については、中国のそれと同じように、珍奇で特異な解釈である。これでは、強引な中国海洋法の解釈に文句を言える立場ではない。



「中国軍に『制御不能』の懸念 8月15日控え突発的衝突の可能性も」『zakzak』(産経新聞,2013.7.26)http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130726/frn1307261810004-n1.htm
2013.07
25
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11:59
Category : 中国
 上海新聞網で「甲骨文全球大会在上海隆重举行」との見出しを発見。

 甲骨文字研究なんてやっている人はそうそういない。まず中国だけで、あとは日本人が少々だろう。それに1万8000人を集めるという。しかも、三回目だともいう。

 中華文明に対する歴史的誇りに繋がるのだろうかねえ。さらに、殷墟は華北なのに、上海でやるという。上海市も、純学術的にしかならないような、そんな大会をスポンサードするなんて豪勢なもの。景気がいいとか、北京に負けないぞというあてつけかねと考えたのだがね。

 記事を読むと計算機技術云々みたいに書いてある。「商業和信息技術」と、金儲け臭いのが何なんだが「硬件一体化集成系统、云计算、客户体验等新一代信息技术与战略为主题」とある。

 「甲骨文」が違う意味なんじゃないか。そう考えてググってみたら「Oracle」だって。オラクルは神託という意味があるみたいなんだが、それを甲骨文、神秘的な古代文書と重ね合わせて社名にしたらしい。

 「中文記事に「企業号」が連発されている記事がある。もちろん会社の名前の話ではなく、米空母のエンタープライズの話だったよ」みたいなものかね。まあ騙されたよ。
2013.07
19
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12:00
Category : 中国
 確かに、中国とは、軍事力を使ったゲームをしている。あと10年20年は張りあわなければならないし、摩擦も対立局面も起きるだろう。だが、ここまで中国のやることに悪意を持つのは異常ではないだろうか。

 佐藤正久さんのオフィシャルブログで、新潟の中国領事館問題を取り上げている。「新潟で展開『トロイの木馬』作戦をこう潰せ!」 以前に、広すぎるし、相互主義からオカシイんじゃないのと話題になった問題である。ちなみに、領事館整備は今は凍結状態にある。

 この問題について、佐藤さんはあまりみない主張をしている。中国領事館の軍事利用と北朝鮮による利用といった問題である。

 佐藤さんは「軍事要塞化された領事館が戦闘の拠点」となることを危惧している。しかし、軍事要塞化して何と戦うのか。

 似た例として思いつくのはダンチィヒの例である。戦前のダンツィヒでは、ポーランド郵便局は要塞化されていた。1939年にドイツが侵攻してきた際には、時間稼ぎのために戦っている。

 だが、軍事要塞化した新潟中国領事館が何のために何と戦うのかがわからない。新潟は、裏日本の中部にある平凡な地方都市である。中国本土にある日本の租界ではなければ、日中陸上国境にあるわけでもない。

 また、佐藤さんは「中国は北朝鮮の後ろ盾でもありますから、北朝鮮の工作員などが領事館に逃げ込む可能性も否定できません」と主張している。新潟で危惧する理由は「新潟は北朝鮮による日本人拉致の拠点」であったためとしている。

 しかし、中国はそれほど北朝鮮に優しくない。中国は、あたりまえだが日本と国交をもっている。中国は、係争地以外では日本の主権を尊重している。日本の主権を犯し、正当な理由で日本の官憲に追われた北朝鮮工作員を保護することはない。

 そもそも、工作員を匿うなら、領事館の広さは関係ない。狭い領事館でも同じ事だ。

 佐藤さんは他にも「中国は、北朝鮮の羅津港を租借」し、その「羅津から新潟までは一直線」であるとも述べている。新潟を「中国にとっては航路で最も上陸しやすい都市」としている。

 「上陸」は、軍隊の侵攻とも取れるように記述しているが、わざわざ、第三国の羅津経由で日本を攻める理由がわからない。中国が、東北の辺境から、さらに輸送網が貧弱な北朝鮮を経由して羅津に軍隊を集めて、新潟に攻めるというのは、面倒が多すぎる。護衛艦艇も、わざわざ対馬海峡を経由して送り込むのだろうか。しかも距離も遠い。羅津から新潟は850kmある。それなら、普通に寧波舟山から、沖縄(650km)、吹上浜(800km)に向かった方がはかどるだろう。もちろん、中国に日本本土を侵攻する能力もないものだが。

 中国脅威論に乗っかるにせよ、佐藤さんの主張はあまりにも粗雑である。佐藤さんにしても、扇情的な記事を喜ぶアサ芸に合わせた談話なのだろう。だが、それを真に受け、コピペするマヌケが出てくるのも罪作りな話である。実際に、それをコピペした動画もある。(該当時間にリンク




 まあ、野党の時期に、扇情的であることを承知で書いたアサ芸の記事を、政務官になって、しかも選挙期間中にアップするのも、どんなものなのかね。
2013.07
04
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12:00
Category : 中国
 中国が中間線の向こうでガス田建設の準備をしているらしい。

 読売新聞「中国、ガス田新施設…官房長官『重大な懸念』」※ によると「東シナ海の日中中間線の西側約26キロ・メートル」「ガス田『樫』(中国名・天外天)からは北北東約33キロ・メートルの地点」でプラットホーム建設の準備をしているという。

 官房長官は『東シナ海の境界が未画定である中、日中双方の主張が重複する海域で、中国側が一方的に開発を進めることは認められない。』と述べたともいう。

 まあ、微妙な所でやってくれるなという話なのだが。それほど悪い話でもないのではないか。なんせ、日本が主張している日中中間線を中国は認めているわけだ。

 中国は、大陸棚主義を主張している。大陸から沖縄トラフまでは大陸棚になっている。大陸棚は大陸に属する。その大陸棚にある資源は、中国のものであるというのが主張である。

 しかし、今回の件では、日本側が主張している中間線主義を尊重している。ガス田が建設されようとしているのは、日中中間線から15マイルほど西側である。日本側が主張する領域を犯さぬように注意している様子を伺えるのである。

 もちろん、中国は大陸棚主義を放棄するつもりもない。読売新聞「ガス田新施設、中国は『非難される点ない』」※※ では中国の反論を報道している。それによると「[中国外務省の]華氏は『中国が中間線を受け入れたことはない』」と述べたとのことである。

 しかし、その反論の中にも、日本側主張への配慮が垣間見える。華さんは、「『中国は争いの棚上げと共同開発を一貫して主張している』」とも述べている。これは、日本側が懸念する、地下資源ストロー論にも一定の配慮をしたものだと言えるだろう。

 中国にも国際社会に配慮する動きがあるということだ。日本としても、中国の中にある、このような国際協調主義を後押しし、対外強行主義を抑えるべきなのではないかね。具体的には、政治主張棚上げ、金だして共同開発あたりに持って行くべきではないかね。ただ、今の政権は中韓に対して、無分別の対外強行主義だから、無理だろうけどね。

 この文章、3日の23時頃書いているけどさ、4日の12時に予定投稿される頃には、機械じかけの右翼や、それを鵜呑みにするネトウヨが騒いでいるのではないかと思うよ。連中は、なんにしても新中国のやることは全部侵略主義であると貶すだけなわけだ。その中に国際協調主義の動きがあったとしても、憤怒のあまりに見えないだろうし、見えても気づかないふりをするだろう。

※  「中国、ガス田新施設…官房長官『重大な懸念』」『YOMIURI ONLINE』(読売新聞,2013.7.3)http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130703-OYT1T00536.htm?from=ylist

※※ 「ガス田新施設、中国は『非難される点ない』」『YOMIURI ONLINE』(読売新聞,2013.7.3)http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130703-OYT1T00955.htm?from=popin

※※※ もともとガス田ほかの東シナ海地下資源は割にあわない。共同開発して中国側で使うのが現実的な方法である。そのあたりはhttp://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-530.htmlで書いたとおり
2013.06
15
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12:00
Category : 中国
 中国艦艇がアメリカのEEZを行ったり来たりしているらしい。

 FTの記事"Chinese navy begins US economic zone patrols"※ は、次のように伝えている。
Admiral Samuel Locklear, commander of US forces in the Pacific, on Sunday confirmed the revelation from a Chinese military delegate at the Shangri-La Dialogue, a high-level defence forum in Singapore, that the People’s Liberation Army navy had started “reciprocating” the US navy’s habit of sending ships and aircraft into the 200-nautical-mile zone off China’s coast.
   Hille,Kathrin"Chinese navy begins US economic zone patrols""The Financial Times"(THE FINANCIAL TIMES,London,2013.6.2)
   http://www.ft.com/intl/cms/s/0/02ce257e-cb4a-11e2-8ff3-00144feab7de.html#axzz2WCS7kJqg
今まで、米海軍は中国沿岸200マイル以内で、艦隊を往復、まず遊弋させるレシプロケーティング(reciprocating)をやっていた。今度は、それを中国がアメリカ沿岸で始めたという。中国が「尖閣棚上げしない?」と言い出した、例のシンガポールのシンポジウムで、これまた中国が言ったということだ。

 この中国によるリプロケーティングは、世界にとって喜ばしいことではないか?

 もちろん、このニュースに脅威を感じる人がいるかもしれない。中国海軍による活動範囲が沖合に広がった。ついに米国(多分、グアムあたり)遊弋するようになった。これは、中国海軍の拡大であり、中国海洋進出の成果である。キツイ言い方をする人だと、中国膨張主義の現れであるというかもしれない。

 しかし、中国が世界の海洋秩序に倣った点で、喜ばしい事件である。

 前々から中国はEEZについて、国際秩序と異なった珍奇な主張をしていた。EEZでは軍事的行動が制約されるというものである。去年の日経の記事にもこのようなものがある。※※ 
海洋法は領海や大陸棚などとともに、沿岸から200カイリ以内で経済的な主権が及ぶEEZを定める。中国はこの規定を根拠に、EEZやその上空での外国の軍事活動を認めず、米軍を自らの近海に近づけない「接近阻止戦略」の論拠としている。
   中山真「米司令官『中国は海洋権益を過剰に主張』」『日本経済新聞WEB版』 (日本経済新聞,2012.6.16)
   http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1600K_W2A610C1NNE000/
10年ほど前、海南島近くでEP-3と中国機が空中衝突したことがある。当時、中国はEP-3が中国EEZ上で軍事行動をすることに対してイチャモンつけていたことを憶えている人も多いだろう。

 だが、今回中国が取った行動は、従来、自国による主張を引っ込めるものだ。そもそも、米海軍が対象国沿岸を往復するレシプロケーティングは、海洋での国際法上権利の確認と、その行使といった面もある。昔の米海軍によるオホーツク海公海部への進入や、たまにやる台湾海峡通過と同じ性格ももっている。アメリカのEEZで艦隊行動を行うということは、自国EEZでの行動にも文句を言うことはできない。海洋での国際法秩序に中国が収まる傾向であるとも言える。その意味では、世界にとって好ましいことであるとも言えるわけだ。



※  Hille,Kathrin"Chinese navy begins US economic zone patrols""The Financial Times"(THE FINANCIAL TIMES,London,2013.6.2)
   http://www.ft.com/intl/cms/s/0/02ce257e-cb4a-11e2-8ff3-00144feab7de.html#axzz2WCS7kJqg
   どこの国も、EEZと領海を混同する人はいると見えて"Under international law, each country has the exclusive right to the economic resources inside a 200-nautical-mile zone off its coast, a zone different from coastal states’ 12-mile national waters."と断っている。
   英語圏の読者にも、EEZを領海侵犯と言い出す連中はいるのだろう。日本の例を見たければ、試しに「EEZを領海侵犯」と入れてググればよい。意味が矛盾しているワードを振り回して、右曲がりのダンディ達が発火しているのを散見できる。

※※ 中山真「米司令官『中国は海洋権益を過剰に主張』」『日本経済新聞WEB版』 (日本経済新聞,2012.6.16)
   http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1600K_W2A610C1NNE000/
   そうとう昔に読んだ話だが。中国の独特なEEZ解釈に、日本が抗議をした。すると「日本発着商船の行動を阻害しないからいいだろ」と回答をしたという。「海洋の自由への挑戦である」ことに抗議をしたことを「中国が邪魔するかもしれない」から抗議したと認識するズレ具合にあると言う話だ。まず、中国の海洋秩序への認識は、他国とズレていたわけだ。
2013.06
12
CM:1
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12:00
Category : 中国
 土地の境界争いに、他人が助けてくれると考えることは甘い考えではないか?

 尖閣での争いで「アメリカは本当に味方なのか?」と言い出すのは、みっともないことだ。「私は甘い見通しに浸っていました」と示す証拠であるからだ。「日本政府、オバマ政権の尖閣対応に募る不安」※ では
尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐり、オバマ米大統領が領有権で中立姿勢を取り、習近平中国国家主席に対し対話による解決を図るよう求めたことは、日本政府にオバマ政権への不安を募らせることにもなった。
「日本政府、オバマ政権の尖閣対応に募る不安」『MSN産経ニュース』(産経新聞,2013.6.10)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130610/plc13061023590013-n1.htm
と述べている。「日本政府」がどのレベルを指すか分からない。また、記者が政府を観察した結果かもしれない。だが、日本政府の中で、また日本政府を観察して「オバマ政権への不安を募らせる」人は、状況を見抜けていないといってよいだろう。

 尖閣問題は、解決してもアメリカには何の利益を産まない。下手に関与すれば、恨みを買うだけである。そもそも、アメリカにとって尖閣問題はどうでもいい話である。関与しないに限る。

 アメリカは、日中での土地争いには関与しない。あれほど、どうでもいい島はない。片方に味方すれば、残り片方に恨まれる。日本に味方すれば中国が怒る。中国が味方すれば日本が怒る。下手をすれば両方から恨まれる。親切心で島を等分にしろと言ったり、そうなるように周旋すれば、日中両国は反発する。関与しないに越したことはない。まず、日中両国で喧嘩されるのも困るので、よく話しあえしか言えない。

 関与しない方針の下、アメリカができるのはリップサービスだけだ。実際には、日中領土問題に引き込まれないように注意しながら、旨いことをいって両国から歓心を買う程度である。日本との会談があれば「一般的に、尖閣諸島は安保条約の適用範囲にある」と言う。中国との会談があれば「アメリカは他国同士の領土問題に介入しない」と言う。その位である。

 そのリップサービスを真に受けると「オバマ政権への不安を募らせる」ことになる。実際には、オバマ政権でなくとも、どの政権でも尖閣に関与するはずはないが、それが見えていない。

 米中会談前にされた報道も、同じように不関与が見えていないものだ。
菅氏は尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題などを念頭に「日本側の考え方を米国に伝えており、そこは(首脳会談で)しっかり主張してもらえる」と述べた。
「菅長官『米側は日本の考え主張』」『MSN産経ニュース』(産経新聞,2013.6.10)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130610/plc13061023590013-n1.htm
官房長官が本気でそう考えているとも思えない。アメリカは領土問題に介入しないことは分かっている。アメリカにとって、尖閣はどうでもいい無人島にすぎない。折角の米中会談で「日本側の考え方」を開陳して、無駄に習近平さんを「立場として怒らなければならない状況」に追い詰めることはない。

 官房長官は、そう発言することで「政府は仕事をしているよ」と見せ、あるいは支持者を惹きつけようとしただけの話であるに過ぎない。その発言をそのまま受け取るほうがどうかしているだろう。

 なんにしても、日本保守政権による強硬政策は、アメリカが無条件に支持するという思い込みがあるのだろう。日本が保守政権であればアメリカとうまくいく。日本が中国に強硬に出れば、中国と対立しているアメリカが喜び、支持するという無邪気な判断である。戦後、冷戦期での対ソ強硬政策や自衛隊増強といった政策はそうだったかもしれない。

 しかし、アメリカと中国は冷戦状態ではない。日本が無駄に中国に強硬政策をとっても、アメリカは日本を支持するところか、考えなおせ、仲良くしろという時節になっている。政権やその支持者は、その辺りは見えていない。政権では気づいているのかもしれないが、支持者の手前、強硬政策しかできないのだろう。



※  「日本政府、オバマ政権の尖閣対応に募る不安」『MSN産経ニュース』(産経新聞,2013.6.10)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130610/plc13061023590013-n1.htm

※※ 「菅長官『米側は日本の考え主張』」『MSN産経ニュース』(産経新聞,2013.6.10)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130610/plc13061023590013-n1.htm
2013.06
09
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12:00
Category : 中国
 台湾が不自由であることは、米国にとって経済的利益を生んでいるといえるのではないか?

 台湾は好きに武器を買えない。台湾と中国には、圧倒的な経済力と外交力の差がある。経済力を背景として、中国が文句をつければ、台湾に武器を売る国はない。それを無視出来るのは米国だけだが、攻撃的な武器となると、中国による抗議にあわせてバランスを取っているのは実情である。

 これは、台湾自身にとっては悪い話である。欲しい兵器があっても、それが米国製でなければ望み薄である。米国製であっても、概ね旧式のお古か、意図して性能を落としたものになっている。それでも言い値で買わないとならない。米国以外から買うことができないからである。

 しかし、これは米国にとっては、都合が良い話でもある。台湾が不自由であることは、米国にとってもメリットを生む。唯一武器を売ってくれる国として、武器輸出を独り占めできる。また、唯一の同盟的な国家として、台湾にとって特別な地位を占める事もできる。これにより、武器以外でも、米国は台湾市場で優位な立場を占めることができる。

 実際に、台湾は米国なしでは、防衛も外交も危うい。一応、台湾は中国と内戦中である。いつ中国に攻めこまれても、仕方がない状態である。仮に中国が台湾を、本気で回収しようとすれば、台湾単独で守り切ることは難しい。平時の政治的なゲームでも、軍事力に差があるため、台湾単独で中国の圧力に抗することも難しい。国防という面でも、外交という面でも、米国の後ろ盾がなければ、不安になってしまう。

 台湾に対して、優位的立場が確保できることは、米国にとっては都合のよい話である。既述のとおり、兵器市場を独占し、言い値で売却できるといった点は、米国にとって都合の良い点である。同じように国防分野以外でも、台湾にはアメリカ製品を売りつけやすいというメリットがある。WTOによって、貿易での露骨な特恵的な関係は認められない。だが、例えば、アメリカ製品を購入しやすいように制度を整えさせることはできる。

 実際に最近の話を挙げると、米国産牛肉がある。台湾は「なに使っているかわかったもんじゃない」と民意でも議会レベルでも、輸入緩和は規制したかった。しかし、政治的立場から受け入れなければならない結果になっている。おそらく政府調達でもそうで、米国製に負けやすい構造になってのだろう。

 もちろん、米国にとって台湾のもつ最大の価値は、対中カードである。

 しかし、台湾の価値はそれだけではない。たしかに、米国は台湾を経済的植民地云々とも考えてない。だが、政治的な優位性から、市場としても優位に立てる重要な地区であり、米国にとって台湾が経済的に美味しいことは間違いない。

 台湾が不自由であることは、米国にとってはメリットである面もあるということだ。



※ GATT/WTOがなければ、台湾の政府調達や政府関連機関の調達は、アメリカ一辺倒になっていただろう。たとえば、中華航空はすべてボーイングのみといった具合である。(実際には、GATT以来の民間航空機貿易に関する協定がるので、露骨にできなかったわけだが)
2013.05
12
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13:00
Category : 中国
 尖閣問題でアメリカが味方してくれると考えるのは、あまりにも無邪気で大甘ではないか?

 他国の領土問題に深入りしていいことはない。日本と中国が喧嘩しているところに顔を出しても何もいいことはない。関係ない家の土地争いに口を出しても恨まれるだけがオチだ。

 しかし、アメリカが助太刀してくれるという、甘い考えがある。古森義久さんの「『尖閣』揺れるオバマ政権」だが。オバマ政権は尖閣ごときで揺れることもない。まず、取るに足らない無人島の話で、アメリカからすれば、つまらない喧嘩にすぎない。経済や北朝鮮の問題もあるので、「日本と中国が喧嘩するのは困るなあ」程度の認識にとどまる。

 アメリカがどちらにもつかないことは、アメリカ自体が前々から説明している。前にも書いたのだが、アメリカの立場は巻き込まれないように注意しながら、日中双方に恩を売るというものだ。
[閔之才さんが指摘するように]
 1 尖閣諸島は日米安保の適用範囲
 2 米国は日中の領土係争には関与しない
 3 日中が冷静に処理することを望む
このように説明した上で、1で日本人を喜ばせ、2で中国人を喜ばせ、3でアメリカを巻き込まないでくれよといっている。
   「日中両方へのリップサービス」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-472.html
古森さんがそれを知らないことは怪訝である。

 そもそも、保守はアメリカへ相当に片思いしている。「日本が保守政権であれば、右派政権であればアメリカとの関係はうまくいく」と勝手に思い込んでいる。今の安倍政権であれば、対米関係は勝手に上手くいくと思い込んでいる。

 しかし、それは勝手な思い込みに過ぎない。アメリカは中国と対立するつもりはない。オバマ政権の対中発言をみても、中国に対しては、敵対的な封じ込めではなく、国際協調路線に引き出そうとしている。国防省周りは中国と対立している頭かもしれない。しかし、国務省ほかはもともと協調路線であり、政治家も経済界も協調路線の頭にある。

 古森さんや産経が想定する読者は、中国は世界の敵に見えるのだろう。例えば、アジアや太平洋の諸国が競って対中包囲網に参加するというような、単純な発想がある。安倍政権のいう「安全保障のダイヤモンド」がそれであるが、「民主主義の価値観」という実情を見ない発想で、インドを対中包囲網に入れようといったようなあまり考えていない発想がある。※※

 領土問題でアメリカが日本の味方をしてくれるというのは、大甘な発想である。尖閣諸島にはアメリカの利益もなく、日本に肩入れしても経済的にも軍事的にも何の得もない。たかがその無人島についての領土問題で、しかも中国の恨みを買ってまで、日本の味方をしてくれる理由もない。

 アメリカが助太刀してくれる発想は、現実主義を標榜する保守としては、相当に現実を見ない、無邪気で単純な発想に見えるのである。



※ 古森義久「『尖閣』揺れるオバマ政権」『MSN産経ニュース』(産経新聞,2013.5.11)http://sankei.jp.msn.com/world/news/130511/amr13051110360008-n1.htm

※※ インドは民主主義の価値観はあるかもしれないが、それ以外の価値観にある絶望的な段差を見ないようにしているのも奇妙に見える。
2013.05
02
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Category : 中国
 日米安保の適用範囲という言質に意味があるのだろうか?

 日米防衛相会談で「尖閣諸島(沖縄県石垣市)が日米安全保障条約の適用対象であることを確認」と報道がある。

 しかし、これによって尖閣諸島問題が変化するわけでもない。アメリカの立場は不介入であるためだ。

 今回の発言は、アメリカのリップサービスである。前にも書いた話だが、アメリカは日中双方にリップサービスをしている。日本には「尖閣諸島は日米安保の適用範囲」と言って、日本人の歓心を買う。中国には「米国は日中の領土係争には関与しない」と言って、中国に恩を売る。そして領土問題に関わり合いたくないので「日中が冷静に処理することを望む」と念を押している。

 具体的には、前に書いたとおり(「日中両方へのリップサービス」)。閔之才さんが『鏡報』※※ で指摘したように、アメリカは口先で日中両国に恩を売っている立場にある。

 尖閣が日米安保の対象である点の確認も、尖閣諸島のいざこざにアメリカが介入するというものではない。小野寺防衛相がアメリカに行って「尖閣諸島が日米安保の適用対象」という言質を取った。しかし、それは一般的に適用対象であると言っているだけの話にすぎない。今の尖閣諸島問題に、軍事的に介入しますよというものではない。

 そもそもアメリカにとって尖閣問題は、巻き込まれたくない問題である。もともと他所の国同士の、しかも無人島をめぐっての喧嘩にすぎない。どうでもいい問題であり、巻き込まれるのは面倒そのものである。

 アメリカには尖閣諸島で軍事介入する気はさらさらない。他所の国の無人島のために米軍を動かし、米軍人が血を流す危険を犯すことはなんとしても避けなければならない事態である。しかも、日本側について介入すれば中国側から恨みを買ってしまう。

 防衛相の確認は、中国側に日米が日米安保を見せつける効果はあるだろう。折にふれて見せつけるのは悪くはない。

 しかし、日本にとって、尖閣諸島問題を有利にするものでも不利にするものでもない。
 抑止効果も間抜けな話である。尖閣問題での熱戦化は、日中ともに回避したいと考えている。そしてアメリカも回避したいと考えている。その熱戦化を抑止する効果というのはマヌケなことだ。※※※



※ 「尖閣への一方的行為に反対 中国牽制、安保条約適用を確認」『MSN 産経ニュース』(産経新聞,2013.4.30)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130430/plc13043010440016-n1.htm
   会談中の確認事項「尖閣諸島の現状変更を試みるいかなる力による一方的な行為にも反対する」とはいうのは、日本側の既成事実の積み増し、たとえば公務員常駐のようなことをするなよ、という釘刺しでもある。

※※ 閔之才「美国:一『魚』釣両国」『鏡報』426(香港,鏡報文化企業有限公司,2013.1)pp.16-19.

※※※ 確認しようがしまいが、日米同盟の海空軍力が中国側、政治的発言をする軍部への重石になっていることは変わらない。
2012.11
23
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Category : 中国
 ダライ・ラマさんは、プレスター・ジョンではないだろうか。

 ダライ・ラマさんに含むところはない。好きでもなければ嫌いでもない。宗教指導者であるところから見ると、大人物なのだろうとは推測できる。しかし、周辺にいるダライ・ラマさんを過剰に持ち上げ、期待する人々には不健全なものを感じる。

 例えば、櫻井よしこさんの記事「中国への遠慮捨てよ」「国会議員が初めて法王を迎える」である。どちらもへの新中国に対する強烈な反感と、その裏返しとしてのダライ・ラマさんを持ち上げる気持ちがある。

 ダライ・ラマさん待望は、プレスター・ジョン待望と同じである。プレスター・ジョンは、中世欧州でアジアにいるアンチ・イスラムとして想像された。十字軍時代、ヨーロッパ人が待ち望んだ、アジアにいる高潔で熱心なキリスト教君主であり、反イスラム同盟として提携する勢力がプレスター・ジョンであった。

 桜井さんを始めとする、アンチ新中国の皆さんにとっては、ダライ・ラマさんは救世主である。新中国との戦いでの、反中国の同盟者であることから、ダライ・ラマさんは美化される。美化するだけならいいが、そこに自由と民主主義と人道主義といった西側価値観を共有していると考えるのは、勝手な投影※ である。

 ダライ・ラマさんはチベット亡命政府の顔である。亡命政府であるから、西側には自由や民主主義をリップ・サービスはする。そのリップサービスを真意と真に受けるのは早計ではないのか。

 これはインドへの傾倒でも似ている。だいたい同じ人たちは「インドとは価値観を共有しており、同盟関係を強化する」とも言っている。ダライ・ラマさんと同じように、駒としては便利で、互いの利益にもなるだろう。しかし、過度な思い入れをするといずれしっぺ返しを貰うのではないか。

 敵の敵を持ち上げるのはいいが、そのうち深い絶望を味わうのではないか。第二次世界大戦で、米国はソ連に対して過剰な思い入れをして、戦後に絶望を味わった。それと同じことが、ダライ・ラマさんやインドとの共闘の後に生まれる可能性を考えないのは危ういように見える。

 大人物に見えるダライ・ラマさんがそうだとはいうわけではないが、李承晩という例もある。キリスト教倫理観や自由や人道を共有しており、パペットやプロクシとして安全牌だったはずの李承晩がやったことを見れば、まず亡命政権首班ほどあてにならないものもないのではないか。

 いずれにせよ、なぜ、駒と割り切れないのか不思議である。櫻井よしこさんほか、新中国に反感を抱く人たちが、中国に膨張主義に見るのは理解できる。その上で、いわゆる中国膨張主義を封じ込めるツールとして、ダライ・ラマさんは便利な道具である。しかし、そこに同志的連帯を見だすまで心酔するのは行き過ぎに見える。「現実主義」や「冷徹な国際政治」を標榜する割には、敵の敵にはやたら甘い。そこに理想まで見てしまうのは、中世のプレスター・ジョン待望論そのものだ。相当に甘い認識である。



※「ゴドーを待ちながら」みたいな、本人不在の空間で好き勝手言っている感じがするんですよね。各国を問わず称揚者が人道主義、中国のチベット政策、社会思想、あるべき仏教みたいな話について、自己の理想像を勝手に投影しているようにも見えるわけです。
 いや、己はダライ・ラマさんには悪気も憎しみもないんですけどね。
2012.09
14
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Category : 中国
 櫻井よしこさんがサンケイに載せた「未来開く大戦略語れ」※ なのだが、気の長い話。
台湾の現状は危うい。2040年頃には西太平洋とインド洋から米海軍を排除するとの長期戦略を描く中国は、異常な軍拡をいまも続行中だ。
 [略]
にも拘(かか)わらず、米国は台湾の求めていた最新鋭戦闘機F16C/D66機は売却しないと決定した。米国議会は、中国への過剰な配慮を反映したこの決定が中国を誤解させかねないと激しく批判したが、中国はさぞ、自信を深めていることだろう。

 …2040年の話をいましてもね。1970年代初頭に「このままでいけばソビエトの海軍力は2000年には米海軍を追い抜く」って言っているもので、現実味はありません。あるいは、今の日本で「2080年には財政再建できます」と言っているようなものでしょう。中国も順調に軍拡が続くかは怪しいもの。軍拡が続けば、周辺国も対抗する。そうなると、逆にインド洋でも西太平洋でも、軍事的に封じ込めされる可能性もあると思うのですけどね。

 櫻井さんは、兵器の数が少ないことだけで、国が滅びると考えている。これは100年前の、ワシントン&ロンドン条約を批判した悲憤慷慨家と同じメンタリティーです。軍備の中で、正面戦力の一部である主力艦・補助艦について、対米7割になる程度で日本が滅びると主張するようなものです。

 あとは、台湾への過剰な思い入れでしょう。櫻井さんは、事あるごとに台湾を持ち上げ、新中国を貶します。台湾は、ついこの間、戦争に負けるまでは日本領土でした。その意味で、ナショナリズム的な領土感覚、自己の肉体であるかのように錯覚が、櫻井さんにはまだ残っているのです。

 両者が合わさって、台湾が危機であると主張している。台湾にF-16×66機を売却しないと中国が強大になり、台湾は押しつぶされるという危機感と意見表明になっているわけです。

 でもねえ、余計な焦燥感じゃないですかね。

 当座、新中国は台湾回収をするつもりもない。回収するとしても、新中国は経済成長で自信をつけている。突発的な事態でも無い限りは、新中国は無難な平和回収を選ぶ。平和回収であれば、中国国内、海外諸国、そして回収される台湾にも角は立たない。

 台湾防衛への関与を急ぐ必要もない。今、中台の両岸関係は安定している。新中国も、今日明日に台湾を回収するつもりもない。米国も中国とは商売をしている。その機嫌を、商売を損ねてまで、台湾に戦闘機を売る必要もない。雲行きが怪しくなってから、その時、最新鋭か、最新鋭であるが旧式を装ったタイプを売ればいい。

 そもそも、台湾向け武器輸出を全部止める話でもない。中国にしても、米国との商売は大事であって、中台関係でぶち壊したくもない。実際に「防衛的な武器であれば構わない」とも言っており、米国製武器や技術は相当に台湾に流れている。F-16を66機どころの話でもない。

 そのあたりを言及せずに「2040年頃には西太平洋とインド洋から米海軍を排除するとの長期戦略を描く中国」といった、どうなるかもわからない与太話を元にしても、意味のない話ですね。

※ 櫻井よしこ「未来開く大戦略語れ」(2011.10.13、サンケイニュース)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111013/plc11101303100004-n1.htm ただしリンク切れ。
アーカイブとしてhttp://jinf.jp/articles/archives/6092に全文掲載


2011年11月01日 MIXI日記より
2012.02
25
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Category : 中国
 沖縄問題でピントの外れた人が「台湾有事云々」を口にするけどさ、実際に台湾有事ってあるものかね。




 中国にとって、台湾問題での最善手は、平和回収となる。

 日米は、台湾が中国に回収されても文句のつけようはない。平和的手法なら、どこも文句はつけようもない。日米とも、微妙な表現は含むものの「中国は一つ」を認めている。

 平和回収は利が多く、武力回収には利がない。平和回収は、人命、コスト、予算、外交関係、経済的安定で優れる。武力回収は全てに劣る。武力回収での利点は、自己都合で着手できるという点だけであるが、成功する保障もない。

 その得失から、中国は平和回収を採用する。実際に、香港の例もある。台湾には、香港、澳門方式を応用する。中国人は気が長い。煮詰まって、熟した柿が落ちるまで待つ。経済格差がなくなり、中国での人権思想が成長し、一国二制度ならOKと台湾人が納得するまで待てば良い。

 台湾は今でも中国の一部である。台湾回収を急ぐ理由もない。今まで60年間回収しなかった領土を、急いで回収する必要はない。中国から見ても、別に国土が外国に奪われたわけではない。民国政府は外国の傀儡でもない。外国の軍隊が駐留しているわけでもない。中国の一部である台湾で、中国人である台湾人が政府の言うことを聞かない。それだけの話で、失敗した時の面子を考えれば、武力侵攻は危なくてできない。

 今の中国は、台湾が中国の一部である限りは、武力侵攻はしない。中国が台湾に侵攻する。そういうった状況をは考え難い。中国が武力行使するのは、台湾が中国から離脱しようとした時だろう。しかし、台湾で軍隊機構が健全なら海峡を渡っての侵攻は、相当にハードルが高い。失敗した時、台湾は中国から完全に離れてしまう。実際にできるのは海上封鎖と空爆に限定される。

 台湾への上陸を決意するのは、台湾が大混乱した時だけだ。台湾が中国から離れようとした時に、政治的大混乱が生まれ、軍隊機構が無力化した場合である。そうでもなければ、中国は台湾に武力侵攻しようとも思わない。

 対岸にいる中国軍は、台湾が中国から離れないように圧力を掛ける戦力である。「攻め込めるぞ」という姿勢を示す見せ金であり、台湾が中国である限り、武力侵攻は行わない。独立派が力を持った時に、演習をする程度のものだ。

 平和回収は妙手である。どこの国も文句のつけようもない。また、どこの国も大して困ることもない。

 日米としても、台湾が平和的に中国統治下に戻っても特に困ることはない。外交・軍事面を除けば、特に困る事態も考え難い。





 …確かにね、外交・軍事的には、中国の自由度が上がるから、日米はチョット困まる。中国を拘束した台湾がコマ落ちする。台湾正面に張り付けられてた中国軍がフリーハンドになってしまう。そうなると、日米とも後のゲームで困る。その戦力が、太平洋方面に指向された場合、日米は海空軍力でのアドバンテージを維持するために、大きな努力を強いられるからねえ。

 でもねえ、必ずしも太平洋に来るとも限らないんだよね。浮いた中国の戦力がどこに指向されるかは分からない。いわゆる中国「膨張主義」の結果、ゲーム的には四囲皆敵となっている。彼らが思い込んでいる「核心的利益」は南シナ海にある。インドやロシア、イスラム諸国との国境もある。もしかしたら、その頃になっても国内治安に問題を抱えているかもしれない。(あるいは、歴代王朝のように、外の世界に興味を失い、軍縮してしまう可能性もある。)

 まあ、日米としては、そこを上手く突いて、中国をどこか別正面で拘束させるべきなんだろうね。

 なんにせよ、沖縄問題と台湾有事をリンクさせるのには、無理があるだろうね。たしかに、中国と日米のゲームからは、沖縄に日米のコマを置く必要性はある。(それが海兵隊でなければならない理由はないけどね) しかし、その理由として台湾有事は、蓋然性に大きく欠けるよね。
2012.01
25
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13:00
Category : 中国
 日本と中国は友好関係にある。両国で全面戦争という事態はまず考えられないのだがね。ま、頭の体操としてね。

 日中が全面戦争になったとしても、まず互いに敵国に上陸しようとはしない。日本は、強固に団結した一つの中国に対抗できる陸上戦力を持っていない。中国は、膨大な陸上戦力を保有している。だが、強力な日本海空自衛隊を圧倒して、日本列島で制海権、制空権を維持できない。上陸戦力を運ぶ揚陸艦も日本本土侵攻には不充分であり、それを護衛する水上艦艇も少ない。限定された中国上陸部隊では、本土防衛※に特化した陸自は打倒できない。

 相手を屈服させる方法として、戦略爆撃・空爆も難しい。両国とも、戦略爆撃に適した装備を多数保有していない。日本は戦略爆撃機を全く保有していない。中国も戦略爆撃機や弾道弾を、それほど多く保有しているわけでもない。そして、両国とも、自国本土での防空では優位に立つことができる。日本は、JADGE以下により、防空戦では質的に優位に立つことができる。量的にも、日本本土に飛来できる中国空軍機数と比較しても、数的に不利ではない。中国は、防空戦力として旧式化しているものの、戦闘機や対空兵器は数も多い。遠距離飛行のあと、疲労もたまり、燃料も限られた侵入機に極端に遅れはとらず、数で消耗させることができる。

 対して、海上封鎖は両国にとって困難はない。両国とも、経済は多くを海上輸送に依存している。その海上輸送を阻害することにより、相手側の戦争経済を崩壊させ、屈服させる方法である。相手の主要港や、そこに至る航路を封鎖すればよい。相手の沿岸部に近づけなければ、相手のいない遠くで通商破壊をしてもいい。日本は強力な海軍力で中国に屈服を迫ることができる。中国にしても、日本側通商保護が弱い遠洋であれば、日本艦隊/船団を圧倒できる。

 海上封鎖は、敵本土上陸や戦略爆撃よりも有利である。まず、敵本土上陸よりも安くつく。大規模な陸空軍投入を必要としない。このため、コスト的に人命、予算、物資、装備を上陸戦ほど消耗しないため、敷居が低い。また、市民を直接戦闘に巻き込まずに済む。また、戦略爆撃・空爆ほど直接的な市民殺傷を伴わないため、敵愾心や恨みを買いにくい。

 ありえない設定であるが、日本と中国が全面戦争になったとした場合、両国が相手を屈服させるため、第一選択※※とするのは海上封鎖である。両者とも、いきなり上陸戦をとることはない。戦略爆撃をしようとしても、両者とも、防空側が優位すぎるため、準備としての航空撃滅戦も行えないだろう。

 なんにしても、今の日中関係は安定している。日中両国は友好関係にあり、経済的にも互いに欠くことのできない存在になっている。緊張、衝突といっても、小さい無人島で、低強度で衝突しているにすぎない。国民感情に関しても、両国政府ともコントロールに努力している。両国軍部による競争、張り合いは、あくまでもゲームに過ぎないわけだ。



※ 冷戦が終わったあとでも、ほとんど可能性のない大規模着上陸対処、対上陸戦を主軸に据えている点は、旧態依然であり、無駄なんだけどね。
※※ その前にサイバー戦とかあるだろうけどね。
2011.08
02
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22:22
Category : 中国
コミケ作業で繁忙なので、MIXI日記からの転載です
コミケの新刊が対機雷戦本です。
 ・ 掃討でなければ感応掃海は処理できない
 ・ 中露は対機雷戦ができない
といった本をだそうかとね

で、中国の文革の話を日記からお手軽に転載します


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文革期の中国、やたらと戦時日本の経済・労働不効率に近いものがあるなと。

 1980年に実施された中国残留孤児からの聞き取り調査を発見。
 黒竜江省にある農機具工場で働いていた人に、1977年当時を回顧してもらった内容。

● 工場購買係は公定価格でモノが買えない。だから、豚肉と食用油を持参して売ってもらう。
 ・ おおっぴらに渡し難いときには、自宅や宿泊先に届ける
 ・ ベッド・メイクの時に、掛け布団の下に豚肉を並べる

● でも、自分達の工場で治すときは、お礼をもらう。
 ・ 生産大隊(人民公社)も農機具が壊れたら、食用油を持ってきた。
 ・ 公式ルートで治すと3か月だけれども、お礼があれば即日作業になる。
  - 壊れるのは農繁期だから、どうしてでも直さないといけないわけだしね。
 ・ 黒龍江省だから[大豆が取れるので]食用油はどうとでもなる。山東省とかはどうなんだろうね。

● 工場が停電で操業停止したりする。

● 休みは日曜だけ。休暇も1月1日、春節、10月1日だけ。
 ・ でも、医者に診断書書いてもらえばいつでも休める
 ・ 用事があると使いを出して診断書をもらって休む

● [踏み倒せる可能性が高いから]工場に借金はしている。
 ・ みんな「借金はしないと損」だと思っている

 とまあ、戦時体制にあった日本にえらく似ている。
 市民生活についても

● 公式配給は、豚肉250g/月、油200g/月、鶏卵はまずない。

● 婚礼で豚を潰すことは禁じられていた。
 ・ でもみんな潰していた。

 あたりもそっくり。

 また、物資が偏在していたらしい話もある。

● 家庭用石炭は1年に2トン購入した。
 ・ 車を借りて運ぶ[多分、この時も診断書で不正休暇]
 ・ 県で売っている、オフィシャルな石炭は「品質が低すぎて」使わない。
  - 県内で石炭が取れるから[ヤミで]購入は可能
  - 他県は低質品の配給制
 ・ 薪[石炭に点火する時に使う]は農機具修理のお礼で余るほど入手できる

 日本でも戦争中、全国的に石炭不足であった。でも樺太では「内地に送れないので、余って余って仕方がない」とかでヤケになって朝風呂を立てていた話(内務官僚の回顧談)に通じるねえ。


MIXI日記 2010年10月23日より