日本人とゼノフォビア
「なでしこ・近賀に顔面蹴り、韓国人選手に非難殺到」 2012年03月16日:トピックニュース
15日に開催された女子サッカー「日韓女子リーグチャンピオンシップ」におけるINAC神戸と高陽大教の試合で、INAC神戸・近賀ゆかりが相手選手の蹴りを顔面に受け、鼻の上が大きく腫れ上がる痛々しい負傷を負った。
蹴ったのは7番チャ・ヨンヒ(イエローカードが提示されたのは、11番イ・ジャンミ)だが、このラフプレーに、ネット掲示板やツイッター上では瞬く間に非難の声が寄せられた。
掲示板上では、「わざと蹴り入れてるようにしか見えない」「皆、日本サッカー協会に対して韓国とはできるだけ試合を組まないよう電話とかしようぜ」といった怒りのコメントが寄せられ、中には「あれでレッドカードが出ないのが不思議でならない。レッドどころか対外試合禁止レベル」など、審判への批判も――。
7日にも、韓国人が「日本人は地震で一瞬に死んでください」と語る「反日動画」がYouTubeにアップロードされ、ネット掲示板が大炎上したばかり。韓国に対して感情的な罵詈雑言を書き込むユーザーも多く、批判はしばらく続きそうだ。
私もテレビでこのシーンを見ていたが、日本ゴール前にこぼれたボールを巡り両チームの選手が殺到していた中でのアクシデントでした。近賀選手の身体を張ったプレイが不幸にもかかる結果になったまでで、故意ではなかったと思う。一部のサッカーファンがこのように騒ぐのは、相手が韓国だからに違いないと思う。
この記事はそのまま浅田真央とキムヨナの図式にピタリと収まる。
キムヨナを非難し、審判を批判し、協会ならぬ連盟に抗議の電話をする…まさにサッカーとウリ二つだ。
バンクーバー五輪で浅田真央選手は銀メダルだった。悔し涙を流す彼女の姿とキムヨナ選手の凄い高得点に、ゼノフォビアの心性を持つファンの怒りに火がついたようだ。それは今も一部のファンの根強い恨みとなっている
日本と韓国の間でこうした罵り合いを繰り返す背景には色々な理由があるだろう
韓国や中国では「反日教育」が行われているという。彼等の多くが日本や日本人を嫌うのは分かる。しかし、私たち日本人は小・中・高時代に「反韓・反中教育」など一切受けていないのである。
不思議だ。それなのに何故、私の世代やそれよりも若い世代の日本人に「韓国・中国嫌い」が少なくないのだろうか?
最近では韓流ドラマやタレントの隆盛と、その「元凶たる」テレビ局への反発が強まり、視聴者を中心とした反韓流デモもあった。
これは映画「ドラゴン怒りの鉄拳(fist of fury)」の一シーンを模したブルース・リーのフィギュア。
数年前、ブルース・リー主演の「ドラゴン怒りの鉄拳」をテレビで見て、私は驚いた。
一つは、これは日中戦争時代、日本の軍国主義の吹き荒れる歴史的背景を借りた「反日映画」と知ったからだ。
映画の中の場面でブルース・リー扮する武闘家が門の中に入ろうとすると「中国人と犬は入るべからず」との看板があった。怒った彼は看板を蹴飛ばし粉々にする。
上記の「東亜病夫(亜細亜の弱虫くらいの意味らしい)」は中国内で柔道道場を経営する横暴な日本柔道家が、ブルース・リー扮する武闘家の所属する道場に殴り込みに来て、あざ笑うべく置いていった額縁なのである。
おまけに、この映画に登場する日本人、日本人柔道家たちは見事なまでに漫画チックに、極めて情けない姿に脚色されている。
この映画が日本に公開されたのは1974年頃らしい。
で、ここで私が驚いたのはこの映画が日本でも「大ヒット」したこと、この映画に対する非難・反発が、当時の日本人の間ではほとんど無かったと聞いたからである。配給会社もよくやったものだ。
ヒット間違い無しとなれば「国辱もの」でも何でもござれというわけだ。
中国人というよりも当時の「香港」に対する反感は、日本人にはあまり無かったということか。あるいは、まだ高度成長期にあった日本は反日映画くらいで怒ることもないほど「余裕があった」ということだろうか。あるいは、それくらいブルース・リーは日本人にも人気が高かったということか。
この映画がもしも今、初めて日本で公開されたら大変であろう。
中国や配給会社に対する罵詈雑言で大騒ぎになるであろう。
この映画から約四十年の時が流れ、日本はバブル崩壊後の長い経済不況に喘ぎ、その一方ではお隣の国々の隆盛を見て、日本人の心には余裕が無くなってきたということだろうか。そして、日本人の心の奥に潜むアジア諸国に対するゼノフォビアに火がつき始めたということだろうか。
色々と考えさせられる。
続く。
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2012.03.16 | | コメント(18) | トラックバック(0) | 政治・社会