ラヴェルが青く燃える
ラヴェル作曲:水の戯れ(1901年)
またしてもラヴェルを選ぶ。やはり好きなんだな、この人の作風が。
「水の戯れ」の7年後に作曲された「夜のガスパール」の第一曲目が「水の精」。
少し似た楽想である。専門家は後者の方を傑作とするが私は前者の方が好きだし、気がつくとこちらを聞いている。
ラヴェルは後期になるほど小さな空間に多くを詰め込み過ぎる傾向があるように聴こえる。この為、曲によってはややもすると窮屈で息苦しく感じる時がある。「水の戯れ」ではまだそのような密度の濃さはなく、適度なユルユル感が心地よい。ここにはまだロマン派の熱情の残り火が燻っているかのようでもある。とにかくあまり構えて聞く必要のない、リラックス出来る音楽だ。それでいて味わい深い。まさに水が戯れ、湧き出て、岩間に滴るかのような透明感と爽やかさ。
この動画の3:20~3:50の演奏は分散和音のシャワーで音楽が進行する。現代人の耳には何の違和感も無い響きだが、この頃の人々にはこれがエライ斬新的で不協和に聴こえたらしい。
マルタ・アルゲリッチの演奏はサラリとしていて、どこか投げやりというか適当に流しているようにさえ聴こえる。ところがこれこそが「水の戯れ」を演奏する肝なのだと思う。彼女が華やかにデビューした直後にもこの曲の演奏が録音されている。アルゲリッチのようなラテン的でテンペラントな熱い演奏する人が、それとは正反対のタイプのラヴェルを好んで演奏するのは興味深い現象と思う。昔のレコードのジャケットにあったキャッチに「ラヴェルが青く燃える」とあったが、言い得て妙だ。
それにしても太い腕。ピアニストの青柳いづみこさんが語っていたと思うが、素人が想像する以上に「腕力」が必要とか。
2011.12.31 | | コメント(6) | 音楽