●2015グランプリシリーズアメリカ大会でロシアのメドベデワ選手が、演技構成点(PCS)で非常に高い評価を受けました。ここから私が演技構成点の問題について考えたことを述べます。
①「演技構成点(PCS)は、実績を積まないとアップしない」という「巷説」は誤り。
今回のメドベデワ選手が実証しましたね。ジュニアからシニアにあがって初のグランプリシリーズでは、フリーの演技構成点はいきなり67.16点でした。すなわち、各5項目が8点台初め~半ばという高評価でした。ジュニアあがりの女子選手が過去にこんなに高い評価を受けた例はありません。浅田選手や鈴木明子さんの演技構成点とほとんど変わらぬ評価です。驚きです。
もちろん、選手によってはシニアでの参戦回数を積むことで一歩一歩階段を上がるように演技構成点がアップして行く例の方が多いでしょう。鈴木明子さんがその典型です。また、キム・ヨナさんやパトリック・チャン選手のようにシニア参戦からしばらくしてポーンと評価がアップする例もあります。しかし、メドベデワ選手の例は、年齢や実績に関係無く、「素晴らしい演技には思い切って高い評価を!」がジャッジの間で定着していることを示したと思います。
②「演技構成点(PCS)は、地元の選手にはやや甘くなる。地元の利がある」という「巷説」は誤り。
地元アメリカのゴールド選手のフリーの演技構成点は68.93点で、メドベデワ選手とほとんど同じ評価でした。もしも、「地元の利」が作用するのであれば、二人の選手の評価にもっと明確な差をつけても良かったハズです。そうすればゴールド選手が優勝したことでしょう。が、そうはならなかった。ましてや、相手はライバル国のロシアの選手です。
①も②も、「絶対にそう言い切れるのか?」との反論もありましょう。しかし、「演技構成点の評価は実績主義では無い。地元選手に甘めということは無い」を証明するのは、悪魔の証明になりますから不可能です。しかしながら、「有る」という証明も無いのですから、ここは「ジャッジはあくまで今行われた選手の演技を純粋に評価しているだけで、年齢や実績や国籍を考慮に入れる頭も無ければ、そのような余裕も無いであろう」と見て置くくらいで良いのではないでしょうか。
ただ、「それにしてもメドベデワ選手の評価は高過ぎやしないか?」という素朴な疑問はあるでしょう。私もちょっとそのようには感じました。が、あくまで印象に過ぎず、具体的に論理的に説明は出来ないことです。
素人であっても、シニアのトップスケーターの演技と、下位のスケーターやジュニアのスケーターの演技をたくさん見ていると、大枠では演技構成点の差異はある程度分かると思います。各エレメンツの出来栄え、スピード感、スケートの滑らかさ、音楽表現の巧みさ等、ある程度はレベルの違いを私達も掴み得ます。
が、例えば、上位10人のトップスケーターのレベル差などほとんど無いのですから、こういう段階になりますと、私達には分からないですね。テレビで解説をしている元スケーターだってどこまで分かるのか疑問なくらいですから。
また、アイスダンスの各カップル毎の演技構成点の差異になりますと、もう、お手上げです。シングル競技よりも難しい。しかし、アイスダンスはフィギュアの基盤となるスケーティングの粋を競うものでもあると思います。アイスダンスの演技構成点の説明が出来ないのに、シングル競技の演技構成点となると「知ったかぶり」してアレコレと自信たっぷり?に持論を展開するファンはどうなの?と思うのです。もちろん、これは私自身の反省も含めてですが。
とりわけ、「ジャッジの陰謀論」だの、「ジャッジの贔屓論」だのと、それらがあたかも「事実」であるかのように自信満々と語るフィギュアファンの頭の構造は一体どうなっているのでしょうか。
●昨シーズンのGPF女子シングルの例から、もう一つの「巷説」の誤りが見えて来ました。
2014グランプリファイナルのリザルト→こちらです
「演技構成点(PCS)は、建前は絶対評価だが、実際は相対評価である」という「巷説」は誤り。
6人の女子選手のショートプログラムの演技構成点をご覧ください。本郷選手だけは評価が6点台後半となっていますが、残り5人の評価は「団子状態」です。リプニツカヤ選手の31.66点~ポゴリラヤ選手の30.00点まで、ようするに、5項目の評価が7点台の後半に集まっています。まさしく「ドングリの背比べ」です。
グランプリファイナルでは選手の数は6人だけ。仮に、演技構成点が相対評価だとしよう。要は6人の差を明瞭にすることが相対評価の要ですから、各6選手の評価はもっと明確にバラケさせても良いハズです。相対評価の場合、点数そのもの自体に価値はほとんど有りません。差別化の為の記号くらいに思っておけば良いものだ。だから、極端な話、リプニツカヤ選手には9点台後半~10点を、ポゴリラヤ選手には6点台を、本郷選手には4点台をつけても良いのです。
しかし、実際はそうではなかった。5人の選手の演技構成点が団子状態になったのは、たまたまそうなったのです。各選手にあくまで絶対評価で点数を出したところレベル差が極小だったので、評価が似通った。そう考えるのが自然と思います。
☆ジャッジの陰謀論に否定的な人が、「演技構成点は相対評価」と主張するのは非常に矛盾しています。
もしも、絶対評価であるはずの演技構成点を相対評価で行っているとしたら、これは国際スケート連盟による悪質な詐欺行為だ。新採点法導入の2005年以来今日までずっと選手やファンを欺いて来たことになります。これこそ大陰謀ではあるまいか?
そもそも、技術点は絶対評価ですから、演技構成点が相対評価であれば、両者の点数を合計するなど、めちゃくちゃな話です。もうこれは採点競技としての体を成していないことになります。
相対評価という意見があっても良い。意見は自由です。しかし、「キム・ヨナさんの得点にジャッジの陰謀や不正があるという証拠は無い」とし、ジャッジの陰謀を断定するようなファンに反論をしている人達が、「演技構成点は相対評価」と主張するのは矛盾も甚だしいと言わざるを得ません。それこそ、証拠は無いのにジャッジやISUの「大陰謀」を唱えているに等しいと思います。
さりながら、以前にも述べたことがありますが、こうした問題の背景には、一般のファンに対するISUやフィギュア関係者の無為無策があると思います。演技構成点に関する踏みこんだ解説が何も無いのです。せいぜい、用語の意味をなぞるだけの、ごく初歩的な解説が時々見られる程度です。言葉では説明が難しい要素が多々あることは分かりますが、少しでも分かって貰おうとする努力もほとんど無いように見えます。
ファンは自ら勉強する必要はあります。いたずらに知ったかぶりで持論を展開するのは危険です。しかし、いくら勉強してもファンにはワケが分からないことが多いから、アレコレと想像し、推測し、憶測し、怪しみ、不信感を抱くのです。
2015.10.30 |
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ひょっとするとヨナ選手にはショックだったのではないでしょうか?まさか、ソトニコワ選手の演技に対し、自分とほぼ同程度の高い演技構成点が出るとは想定外だったのでは?
同様に、チャン選手も羽生選手のフリー演技に対し自分と同程度の演技構成点が出たことは、金メダルを逃したのと同じくらいショックだったのではないでしょうか?もっとも、前年のGPFで既に羽生選手の高い評価は出ていましたが。
誰もが驚いたことでしょう。演技構成点において、GPSカナダ大会で76.86点(平均7.00点台後半)からスタートした羽生選手のフリー演技がGPFで突然92.38点(平均9.00点台前半)という非常な高評価を受けたのですから。そしてソチ五輪ではいくつかの大きなミスがあったにも関わらず90.98点の高評価を得ました。
これはチャン選手の92.70点、高橋選手の91.00点とほぼ同程度の高い評価でした。
今シーズンの演技構成点の沸騰傾向とヨナ選手の演技構成点については以前の記事に「2013GPSのPCSに異変?:ヨナ選手のPCS予想」として取り上げました。カテゴリーの「演技構成点」よりご参照下さい。
ヨナ選手のショートの演技構成点は35点台とした私の予想は見事に的中<(`^´)>。ただし、フリーの72点台の予想は外れましたが(^_^;)。実際は74点台でしたので。
それよりもさらに驚いたのはソトニコワ選手のケースです。彼女のフリーの演技構成点は、GPS中国大会では60.31点(平均7.00点台後半)~フランス大会は64.65点~GPFは60.47点が、欧州選手権では69.60点(平均8.00点台後半)と劇的に上昇しました。そして、ソチ五輪では74.41点(平均9.00点台半ば)にまで上昇。
つまり、ひとシーズンで14点(アップ率23%)という驚異的な上昇です。私はこのような例を寡聞にして知りません。どうなんでしょうか。これまでの「常識」からではちょっと考えにくい数値です。
2009世界選手権やバンクーバー五輪ではヨナ選手の演技構成点が「爆上げPCS」と騒がれ、「もはや女子シングルは死んだ」と叫んでいたブロガーもあったくらいですが、ソトニコワ選手のそれと比べれば上げ幅は小さく、今にして思えば可愛い方です。
リプニツカヤ選手も60.88点(カナダ大会)から始まり、欧州選手権では68.00点とハネ上がりました。ソチ五輪個人戦ではミスが2つ出たものの、70.01点という高評価でした。ノーミスであれば72点台くらい出たかもしれません。
イエ、私は何も演技構成点がハネ上がるのが問題と言うのではありません。なんでしたら20点上がっても良いです。要は、どうしてそこまでハネ上がるのかを知りたいだけです。いくらルールを勉強しても訳のわからぬ現象を前にして、「採点競技とはそういうもの」とか「素人には判らないのがフィギュア競技。専門家の判断をよろしく受け入れるがファンの良き心得であるゾヨ」では面白くありません。ジャッジにはきっと確かな根拠があるのでしょうけども。
しかし、ヨナ、コストナー、浅田といったベテラントップスケーターの持つ演技構成点での優位性がなくなれば、難しいジャンプ構成を軽々と完遂してしまう若手トップスケーターとは厳しい争いになりますね。
上記の女子3選手と、男子のチャン、高橋の両選手のスケーティング技術と表現技術が一流中の一流であることは、ほぼ皆が認めているところです。そして、演技構成点での大きなアドバンテージとなっていました。特に、チャン選手が「僕は最強のスケーターだよ」と語る時、それは決して強がりでも負け惜しみでもありません。
ところがソチ五輪では演技構成点に「価格破壊」の波が押し寄せたようです。
羽生選手とソトニコワ選手とリプニツカヤ選手がジャンプ、スピン、ステップと、各技術エレメンツで非常に卓越した技量を持っていることは誰も否定できません。
しかし、スケーティングとなりますと、十分に伸びやかでスピード感と切れ味鋭く、とまでは言い切れず、素人目にもどこかセカセカしたところが見て取れます。表現技術でも上半身の自在な使い方、腕や手先の細やかな使い方という点で、まだどこかジュニアっぽさが多少残っているように見えます。
京都で見たベテランの踊り子と若い舞妓の踊りの表現力の違いが素人目にも分かるように、ベテラントップスケーターの表現技術には一日の長、いや、三年の長を感じますけど…どうなんでしょうね。間違った見方でしょうか?
リプニツカヤ選手は誰にも真似の出来ない独自のスピンを持ち、フィギュアスケートの発展性と創造性という点では高く評価されるべきでしょう。また、今季のショート、フリーは本人の個性と絶妙なマッチングを示す名プログラムとの呼び声も高く、これも高く評価されるのも分かります。しかしです。。。
ただ、冷静な解説をされる中庭健介さんのコラムを読みますと、「ソトニコワ選手の演技構成点はやや出過ぎと思うが、許容範囲」くらいの見解のようですね。その一方では、ドイツのカタリナ・ビットさんはヨナ選手推しだったようで、「採点に失望した」との報道がありました。
いずれにしましても私の疑問に応えて貰える説明はありません。私はどうして3選手の演技構成点が著しくハネ上がったのかが知りたいのです。ワカラン(ーー;)。
「ISUは次のスターを作る為に、彼らに高下駄を履かせたんだよ」との、一見もっともらしい珍説に誘惑されるファンがいるのも、まあ、分からなくもありません。これはもちろん、結果を前提に都合の良い原因を当て嵌めようとする非科学的な発想に過ぎません。ましてや、ロシアの陰謀など、論外です。
ヨナ選手の演技構成点はもっと高くても良かったのでは?との声もあります。田村明子氏の新著「銀盤の軌跡」によると、「一般的にフィギュアスケートでは、ジャッジは復帰した選手に厳しいと言われている」とありました。そして、「ストイックに毎年その努力の成果を見せ続けてきた選手のほうに情が移るのは、人間としてごく自然なことであろう」と。まあ、この辺りのジャッジの消息について、田村氏がどこまで正確に取材しているかは分かりませんが。
それもひょっとしてヨナ選手の評価に少し影響したのでしょうか?しかし、私はヨナ選手の評価については中庭さんじゃないけど、「許容範囲」ですけども(^O^)。
滑走順と演技構成点との関係ですが。。。より強い緊張を強いられる最終グループよりも、早いグループで演じる方がメンタル面では有利という一面もありそうです。ジャッジはともかく、どちらが良いかは選手にもよりけりでしょうし、一概に最終グループが有利とも言い切れないかもしれません。一長一短あるわけだ。
再び田村明子氏「銀盤の軌跡」から。大会中に3人の技術役員が交わした会話は、後々になっても決して外部に漏らしてはいけないルールになっているそうです。「あの時、自分は回転が足りていると思ったけど、他の二人が足りないと主張したのでやむを得なかった」というような言い訳は、墓場まで持って行かなくてはならないと。
なるほどね。。すると、口外禁止はジャッジパネルも同じなんでしょうね。まあ、下手に言おうものなら、ヤブヘビになりかねませんからね(^_^;)。
田村岳斗さんが宮原選手のエッジ判定に不満を訴えても、TSの岡崎真さんは何も言えない、というワケだ。
羽生選手もソトニコワ選手もリプニツカヤ選手もまだまだ伸び盛りですので、これから順調に育てば演技構成点はどこまで上昇するのか予想も出来ません。ひょっとして、アイスダンスのように10.00点が並ぶ評価が飛び出すかもしれませんね。
そろそろ演技構成点に関する基準、項目数、係数、運用など、見直しするタイミングになったのではないでしょうか。曲の解釈やコレオグラフィーというのも、もう一つ良くわかりません。
「シンドラーのリスト」は分かり易い。しかし、コンテンポラリーな音楽や振付だとジャッジはどう判断するんでしょうか。伊藤みどりさんがカルガリーで使用した和太鼓の邦楽っぽ曲の場合、欧米が主流のジャッジはどう判断するんでしょうか。シングルでもヴォーカル入りが認められるそうですが、私は反対意見です。
日本語や中国語のヴォーカルを使った場合、欧米のジャッジはどう判断するのでしょうか。英語の歌が有利、有名なオペラの歌が有利、ということになる危険がありますね。それではダメです。差別ですよ。
以下はどうでもいい話ですが。。。
私はフィギュアスケート競技が大好きでありながら、時々、嫌気が差すこともあります。いったい、フィギュアって「何を競っている」スポーツ競技なのか、頭の中でワケ判らなくなる時があるのです。
だからと言って、私は競技から離れたEXやアイスショーにはあまり興味が湧きません。競技の持つ緊張感や興奮が無いからです。競技では選手達が技術と体力と精神力の限界ギリギリで演じる姿に魅了され感動します。アイスショーの方は、ジャパンオープンのインターバルで荒川静香さんが演じる美しいプログラムを見るだけで私には十分です。
2014.02.25 |
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2013GPSの女子シングルにおける演技構成点で、SPで30点以上(各7点台半ば)と、FSで60点以上(各7点台前半)が出た例を調べてみました。
30点と60点に深い根拠はありませんが、一流中の一流の目安として分かり易い数値と考えました。
1.SP
①30点以上が出たのは8人の選手で延べ14回。
②32点以上は5人の選手で延べ9回。
③最高得点は浅田選手の34.37点。
④選手名…浅田、鈴木、ワグナー、ゴールド、リプニツカヤ、ソトニコワ、ラジオノワ、マルケイ。
2.FS
①60点以上は8人の選手で延べ15回。
②64点以上は5人の選手で延べ8回。
③最高得点は浅田選手の70.23点。
④選手名…浅田、鈴木、ワグナー、コストナー、ソトニコワ、リプニツカヤ、ゴールド、ラジオノワ。
2012GPSでは、
1.SP
①30点以上は4人の選手で延べ6回。
②32点以上は浅田選手1人。
③選手名…浅田、ワグナー、鈴木、コルピ。
2.FS
①60点以上は4人の選手で延べ6回。
②64点以上は2人の選手で延べ3回。
③最高得点は浅田選手の64.54点。
④選手名…浅田、鈴木、ワグナー、コルピ。
参考までに、前回の五輪シーズンであった2009GPSでは、
①SPで30点以上はヨナ選手とロシェット選手の2人のみで、延べ3回。
②FSで60点以上は浅田選手、ヨナ選手、ロシェット選手の3人のみで、延べ5回。
昨シーズンと比べ、2013シーズンの演技構成点での高得点が倍以上に増えたのは何故でしょう?
A.たまたま素晴らしい演技をする選手が多くいたから。基準は何も変わっていない。
B.さじ加減を多少甘くしているから。
私はAとBの両方があるように感じます。
例えば、浅田選手のSPの34.37点は女子の世界得点です。ヨナ選手と言えども33点台が最高です。そして、同じくFSの70.23点は女子GPS史上では世界最高です。ヨナ選手はGPSでは70点台を出したことはありません。2009フランス大会での66.40点が最高点です。彼女の世界最高得点は五輪や世界選手権で出たものです。
このように見て行きますと、浅田選手の今季の演技構成点が如何に高いか分かります。
もちろん、今季の浅田選手が素晴らしい演技をしているのは間違いありません。昨季までと比べ、スピンの完成度が増したように見えます。ステップシークエンスでは「ゆとり」と「緩急」と「確固たる自信」が見えます。全体的に昨季よりも身体がよく動き、切れもあると感じます。
ファンの素朴な感情としては、浅田選手や鈴木選手の高い演技構成点は嬉しいのですが、正直、「70.23点!?そんなに出ちゃうの?」と思うのも正直な気持ちです。
今季の演技構成点ですが、韓国人の国際ジャッジが下記のように語っています。
→サイトはここです
「基準となる高い技量の選手がいないため、今シーズンは高い点数をつける傾向がある」と言っていますね。
韓国の国際ジャッジは自国の選手への贔屓が過ぎた発言を平気でします。他国の選手達を見下すような言い方もそうですが、国際ジャッジとしての見識・倫理感を疑いたくなります。
まあ、それはそれとして、高めだとする「専門家」がいるわけです。
GPファイナルと並行して開催されるゴールデンスピンでのヨナ選手が、演技構成点でどのような評価を受けるか非常に注目です。
私の予想ですが、普通に演じれば、SPは35点台(各8.80点均)、FSは72点台(各9.00点均)くらいが出るのではないかと。今季の演技構成点の出方を見ると、これくらい出ても不思議では無いと思います。
もちろん、足の怪我からどこまで戻しているかにもよりますが。
2013.12.02 |
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驚異のスコアを生んだ「呼吸」と「膝」・フィギュア“王者”パトリック・チャン:野口美恵(2013年11月20日)
→サイトはここです
パトリック・チャンが世界王者である所以・元フィギュアスケーター 中庭健介
→サイトはここです
「…パフォーマンス/エクセキューションとは、まとめるとスケーターの体の動きの質や正確さ、感情や知性の表現に長けていることで評価される。そういう点でチャン選手を見ると、背筋がピシっとして凛としている様は、非常に見た目の印象が良い。その姿勢から生み出される振り付けやステップやターンも正確かつ質が高い。さらに今回の「四季」という曲を季節が様変わりするところを感情表現として見せている。そういったところからすると満点をつけたジャッジがいるのもうなずける。
インタープリテーションとは音楽の解釈である。チャン選手を見ると常にエレメンツ(ジャンプやステップやスピン)を音楽に合った状態でこなしている。さらにエレメンツだけでなく、「四季」の音楽の季節を滑りにより表現し、柔らかいタッチから厳しい冬の時には力強いタッチに変わっている。そういった点からも他の選手より抜きんでている。このようにチャン選手は技術点で100点に乗せ、芸術点でも次元の違う演技をし、196.75点という自身の持つ世界歴代最高点を出したのではないだろうか。
チャン選手のスケートを表現する上で、歴史上最高だという人が多いが、私も歴代最高だと思う…」
日本のフィギュア解説者が海外の選手の技術的側面や演技構成点についてここまで突っ込んだ説明をした例は過去になかったと思います。
その点で中庭さんのコラムは画期的です。
しかも、はっきりと「歴代最高だと思う」と語っています。
チャン選手の高いPCSを、Patrick・Chan・Scoreとかチャンフレーションなどと揶揄するフィギュアファンもいますが、中庭氏の説明はそうした誤解を解く手がかりになると思います。
高橋大輔選手は最新著書の「それでも前を向くために」の中で、「パトリックはスケーティングがコントロールされていて、キッチリ踏んでいてラインもキレイ。ダイナミックに見えてやっていることは繊細で綿密。それはなかなか両立できないものだから本当にうまいなと思う」と語っています。
稀代のステップの名手、高橋大輔選手をも羨ましがらせるチャン選手の卓越したスケーティングスキル。中庭氏の言う「歴代最高」。
チャン選手の出現はそれまでのフィギュアスケート競技のあり方を変えてしまった…エポックメイキングな出来事ではないだろうか?
あるいは、一般のフィギュアファンに、「フィギュアはジャンプだけが見せ場では無い。むしろ、スケーティングにこそフィギュアの真髄と醍醐味がある」ことを教えてくれたスケーターではないだろうか?
専門家のようには明快に理解出来なくとも、チャン選手のスケートスキルが凄いというのは沢山の演技を見てきたファンの目にも感じ取れます。
次はコストナー選手やヨナ選手についての解説をお願いしたいです。
追記。
フリープログラム「四季」は魅力満点です。これは知性派のファンに向いたプログラムです(笑)。そもそもバロック音楽は知性派好みなのだから。
べたついた感情移入など無用。しんしんと降る雪の厳冬の中で、こ凍える身体に歯をガチガチ鳴らしながら見るのみです。
私のツボは演技後半にあります。
「四季」が冬の第一楽章に移った所から、足換えのキャメルスピン→バック~フォアクロス&ストローク→ハミルトンターン→バックでのシザース・ステップ→2A→スリーターンからコレオグシークエンスに入る、これら一連の動きです。
ここでも音楽とチャン選手の滑りとは渾然一体となっていて言葉もありません。キャメルスピンの回転速度まで音楽と一致しているみたい。
→動画はここです
2013.11.20 |
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「佐藤有香コーチの挑戦とプロ人生・元世界女王、節目の五輪シーズンへ」
→サイトはここです
佐藤有香さんのインタビュー記事はとても興味深いですね。
現役時代、プロスケーター時代、そして、コーチとして、振付師として活躍する今と、自分のそれぞれのフィギュア人生における悩みや葛藤、そして喜びと、その中での様々なエピソードをざっくばらんに語っています。
ただし、これはフィギュアスケーターとして成功し、功なり名遂げた佐藤さんの人生です。その傍らには様々な理由や事情からフィギュアスケートの世界から去ったスケーターが無数にいることにも思いを馳せたい。
ビジネスの世界も厳しいけど、フィギュアの世界、スポーツの世界はそれに勝るとも劣らぬ過酷な世界だと思います。誰もが佐藤有香さんのようにはなれない。
一つ気になる箇所があります。
「…ただし、いままでと変わらない面を挙げますと、ここまで細かく採点されるようになったとは言え、結局は人が採点するスポーツなので2回も3回も転倒した選手にコンポーネンツで9点台が出るのはどうしても理解できないし、ちゃんとやった選手にとってはちょっとがっかりさせるシステムというか、そういう採点方法でもあります。そこだけは昔と変わらない。それを指導者として、選手をどれだけ元気づけて受け入れていくことがいままでと変わらないチャレンジですね…。」
佐藤さんは選手名を伏せていますが、これは明らかに世界選手権におけるパトリック・チャン選手のフリースケーティングに対するPCSを指していると分かります。
スケーティングの名手である佐藤さんならチャン選手の凄さを誰よりも良く知っていると思うだけに、余計に気になるコメントです。
しかし、ファンが佐藤さんのコメントを「得たり!」とばかりに、チャン選手の演技に対する批判やジャッジ批判に安易に利用するのであれば、佐藤さんにとっては不本意であろうと想像します。
フィギュア関係者からときどき採点システムや採点に対する疑問や批判が語られます。ただし、時間とスペースの限界の中で、ポツっと語られるので、ファンがアレコレと深読み、裏読みして、結果的には誤解や曲解を招く危険もあります。
例えば、私は以下のようなことを思います。
1.「9点台」というのはジャッジ全体の平均点を指していると思うが、ジャッジ個別の評価であれば、佐藤さんがコーチをしているアボット選手にも9点台の例がある。昨季のスケートアメリカの例とか。それはどうなのか?
2.では、転倒ではなく、両足着氷+回転不足が2回も3回もあって「9点台」が出るのはどうなのか?
3.すっぽ抜けによる1回転ジャンプやステップアウト等が2回も3回もあって「9点台」はどうなのか?
4.転倒すればそれだけでGOE-3にディダクション-1点となるが、PCS評価ももっと厳しく下げろということなのか?それは高難度ジャンプへのモチベーションを下げるマイナス面もあるのではないか?
5.佐藤さんであれば国際ジャッジから色々と説明を聞く機会があると思うが、それを聞いた上で「理解出来ない」と言っているのか?
等です。
フィギュア関係者が新採点法や採点に対する疑問を語る場合、出来ることなら、もっと詳しく、様々な角度からの説明が欲しいですね。日本ではこれだけの人気のあるスポーツなのですから、メディアと連盟が共同して、こうしたコラムを掲載するなり、特集を組む企画が欲しいものです。
2013.10.17 |
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