橋下市長と女とコスプレと差別と・ニュース3題
【歴史には女の悲鳴がこだましている】
戦国時代の歴史小説や、日露戦争を描いた小説「坂の上の雲」にあるのは、将軍と参謀達の戦略や軍隊の動員・陣形、そして、勇ましい将兵の活躍や激しい戦闘シーンである。
戦に勝つのは「将」が強いからであり、戦に負けるのは「兵」が弱いからである、とでも言いたげな司馬遼太郎の小説が世の経営者や管理者にウケるのはもっともだと思う。あたかも自分が「弱体兵士」を率いる「優秀な将軍」にでもなったかのような気分になれる。
勝ち勇む将兵が次に狙う「獲物」は征服された側の女だ。そのようなことは誰でも知っている。知っていながら何故か映画にも小説にも、ましてや教科書に書かれることは滅多に無い。
陥落した都市や村では、勝ち誇った将兵が当然の「戦利品」として略奪、強姦を働く。抵抗も虚しく男に蹂躙される女の地獄絵が至る所で繰り広げられる。また、他に生きる術の無い女は自らの精神を殺して春を鬻ぐ。
戦場から国元に帰り、平常の生活が戻る時、男達は自分が戦地で女にした行為を恥じるか、忘れようとする。恥ずべき行為は思い出したくもないだろう。これが映画や小説で描かれない理由の一つであろうか。
しかし、歴史に対して謙虚であり想像力のある人間であれば、古代から現代までの歴史の中にこだまする「女の悲鳴」を悲痛な気持ちで聞き取ることであろう。
慰霊の日に沖縄を訪れた日本維新の会の橋下代表が浦添市で講演した時のセリフ。(どのツラ下げて行ったんだか)
「…(当時内務省は)特殊慰安施設協会を作って沖縄にも置いた沖縄県民の女性がその多くの女性や子供たちを守るために、まあある意味防波堤みたいな形になってそこで食い止めてくれる。(略)それを米軍が利用していたことも事実…。」(琉球朝日放送・6月24日)
「女は防波堤」か。。。確かにこのような表現はあっても良いかもしれない。しかし、橋下市長の口からこの言葉が出ると全身の毛穴が開くような不快感に襲われるのは何故だろう。
前回の「沖縄の女を買え」的発言と同じく、橋下市長が「性欲を持て余す男達には女をあてがえ。そうすれば大人しくなる」という発想に凝り固まっているのを感じる。そして、女性を完全にモノ扱いする低い人権意識をさらけ出している。これなども、いわゆる「セカンドレイプ」に近いものがあると私は思う。
何よりも、橋下市長の言葉には「心」が通っておらず無機質である。ザラザラとした砂を噛むような気持ちにさせられる。人間のおぞましさを感じる。聞き手の共感を呼ばない。その理由は、戦争を知らず(私もそうだが)、女性でも無い橋下市長が己れの政治的野望のネタとして、「慰安婦問題」を全て分かったような顔で偉そうに語るからであろう。
しかも、本当に「防波堤」になったのかどうか、その検証も無い。
特殊慰安施設協会…東京の大田区は大森にもあったそうだ。私が大伯父から聞いた話しでは、この巨大な施設におよそ2000人ほどの女性が「応募」した。
部屋には間仕切りは無く、簡単な衝立が置かれただけだったそうだ。
彼女達は毎日、行列するアメリカ兵を相手にした。昼ごはんを食べるヒマも無い為、何と、アメリカ兵を相手にしながら枕元のおにぎりを食べていたそうだ。
こうした女性達は、世間からは蔑まされた。しかし、彼女達は「私達のお陰でアンタ達、お嬢様は無事でいられるんだろう!!」とのプライドは強く持っていたそうだ。
彼女達が自ら「防波堤」と言うのと、橋下市長が「防波堤」と言うのとでは、天と地の差がある。彼女達の血と汗の叫びに対し、橋下市長の独演会の何と寒々として虚しく響くことよ。
橋下市長には「歴史にこだまする女の悲鳴」はたぶん聞こえないのだろう。たまには山崎朋子のノンフィクション「サンダカン八番娼館」でも読んでみたらどうか。田中絹代の名演技が光る映画版もある。これを見て己を少しは恥じたら如何か。
【カネボウ化粧品販売コスプレ強要事件】
<社内コスプレ強要で和解、カネボウ子会社が謝罪>
社内研修でコスチュームを着用する「コスプレ」を強要され、精神的苦痛を受けたとして、化粧品大手「カネボウ化粧品」(東京)の子会社「カネボウ化粧品販売」に勤務していた大分県内の女性(60歳代)が、同社と当時の上司らに約330万円の損害賠償を求めた訴訟は2日、同社側が女性に謝罪し、和解金を支払うことなどを条件に福岡高裁(古賀寛裁判長)で和解が成立した。
2月の1審・大分地裁判決では、女性が2009年10月、研修会で、ウサギの耳の形などをしたコスチュームを着用させられたことについて、「正当な職務行為とはいえない」として、子会社側に22万円の支払いを命じた。
和解条項には、子会社側が〈1〉精神的苦痛を与えたことに遺憾の意を表明する〈2〉再発防止に向けて社員教育を強化する――ことなどが盛り込まれた。
カネボウ化粧品は「事案を重く受け止めており、和解が成立してよかった」としている。(読売新聞、2013.7.2)
<福岡高裁:社内研修でコスプレ強要 訴訟が和解>
化粧品の販売実績が目標に達しなかった罰として社内研修でコスチュームを着せられ精神的苦痛を負ったとして、大分県内の女性(61)が「カネボウ化粧品販売」(本社・東京)と当時の上司4人に約330万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審は2日、福岡高裁(古賀寛裁判長)で和解が成立した。女性の代理人によると、カネボウ側が衣装の着用指示を認めて謝罪し、再発防止を誓う内容。和解金額は公表していない。
1審・大分地裁判決(2013年2月)は「着用は任意だったとしても拒否することは非常に困難」として、カネボウ側の違法性を認め計22万円の支払いを命じた。会社側の指示だったことの認定を求めて女性側が控訴していた。
判決によると、女性はカネボウ化粧品の契約社員で、子会社のカネボウ化粧品販売に出向。09年10月、販売実績が目標に達しなかった罰として、研修会で上司が女性ら4人に衣装を選ばせた。女性は易者の格好をし、翌月の研修会でその様子がスライド上映された。同12月にうつ状態を伴う「身体表現性障害」と診断されて休養し、そのまま雇用期間を終えた。
カネボウ化粧品は「不適切な行為で女性におわびし、既に再発防止に取り組んでいる」とコメントした。(毎日新聞、2013.7.2)
残酷なことをするものだ。卑劣な性差別に加え、精神的な暴力。愚劣極まる上司や経営陣に怒りを覚える。彼等と橋下市長の体質は良く似ている。女性を何だと思っているのか。
この女性は良く戦ったと思う。世にこの事件と似たり寄ったりの出来事は無数にあるであろう。職を失うことを恐れ、世間体を恐れ、泣き寝入りする女性がどれだけいることか。
記事中に重要な言葉がある。「着用は任意だったとしても拒否することは非常に困難」。つまりは、これなのだ。いくら何でも「コスプレ着用の命令書」を発行するほど会社側はトンマではない。口頭であれば何とでも言える。
だから、「強制はなかった。証拠は無い。あるなら示せ。あくまで本人の自由意思である。」と会社側は弁明したと容易に推測出来る。何かの歴史問題で政治家がよく言うセリフを使って。
会社側が和解に応じたのは…裁判長からの強い勧めもあったと思うが…この裁判は色々な意味で会社側は不利と判断したからであろう。(自慢じゃないけど、私は労働問題で何度か民事裁判を経験してるので、ある程度想像が出来る)
出来ることなら裁判長には下劣なカネボウ子会社の経営陣や上司に対して、ふんどし一枚の姿にさせ、社内にスライド上映するようにも命じて欲しかった。
日本は国連から何度も何度も「性差別」を含む「差別撲滅」の勧告を受けている国である。韓国や中国の民度の低さを笑う日本人は少なくないが、果たして本当に笑えるのだろうか?
仏極右党首の免責特権はく奪 ヘイトスピーチで欧州議会(共同通信2013年07月03日)
欧州連合(EU)欧州議会は2日、フランスでイスラム系移民らに対するヘイトスピーチ(憎悪発言)が問題とされている極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首の不逮捕などの免責特権をはく奪することを決めた。ルペン氏は2010年に、イスラム教徒が路上で祈りをささげることを「軍事力によらない占領」と表現。「宗教上の理由で特定集団への憎悪などを扇動した罪」に当たるとした仏司法当局の事情聴取に応じていなかった。
日本も仏司法当局や欧州議会を見習った方が良い。日本では政治家(例えば、石原慎太郎のように)が差別発言をしても平気でいられる。やはり、この点では日本は後進国だと思う。
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2013.07.04 | | コメント(17) | トラックバック(1) | 政治・社会