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「西郷どん」は今日もダメだった




●やはり、ドラマ開始当初に、私が懸念していた通りの展開になっていますね。

いえ、ケチをつけたり、文句を言いつつも、NHKの大河ドラマは私の楽しみの一つ。特に、テレビドラマを見ることがめったにない私には希少価値のあるドラマです。

それで、つまらないなあ、期待外れだなあ、と思いつつも見てしまうのです。


民放ドラマはいつのまにか、せいぜい二ヶ月間しか続けられないものばかりになりました。昔は民放ドラマでも半年や一年近くまで続くものがあったのが、どうしてでしょうね?


前にも触れたように、原作が林真理子と知って、「これは、ダメっぽいな」と思いました。彼女の得意分野は都会の女性の官能&恋愛小説ではないでしょうか。この分野とて、山田詠美の小説の方が遥かに密度が濃く、凄味がありますが。

歴史大河小説はとても書けないだろうと思いました。そもそも、女性小説家は歴史大河ものは不得手に思います。歴史ものの「大御所」、永井路子でも杉本苑子でも上手いとは言えなかった。

もちろん、別の面白さはあります。が、しばしばスケールの小さい「お茶の間の歴史」になってしまうのです。どうしても、女性(たとえ男性でも)を中心とした登場人物の、細やかな心理描写の方に作者のエネルギーといいますか、関心が偏ってしまうからではないでしょうか?


●「西郷どん」の視聴率が前回の「女城主・直虎」よりも低い。

誤解の無いように申し上げておきますが、私はドラマの出来と視聴率が比例関係にあるとは考えません。今野敏原作の「隠蔽調査」は視聴率はひとけた台だったのですが、私は良作だと思っています。

しかし、今回のケースでは視聴率もドラマの出来を反映していると思うのです。つまり、「直虎」は知名度という点では、「直虎?誰や?」ですが、西郷隆盛を知らない日本人はまずいないし、何と言っても、西郷隆盛といえば、幕末・明治維新の「主役中の主役」じゃないですか。それにもかかわらず、です。


●ドラマ演出の為に、ある程度の史実の変更・創作は分からなくはないが、「西郷どん」はもはや、「歴史偽造物語」だ。視聴者を、鹿児島県民を舐めんじゃねえぞ!

そもそも、歴史大河が書けるか否か以前に、「歴史をここまで嘘八百で並べて描いていいの?」という問題があります。あのなあ、仮にも徳川宗家の慶喜の前で、陪臣に過ぎぬ西郷が畳に刀を突き立てる、なんてあり得ないでしょう!また、慶喜からして、吉原に入り浸って「べらんめえ調」で話すか?「大阪弁」を話す岩倉具視がいるか?島津斉彬がロシアンルーレットで藩主の座を父から奪うなど、もはや、抱腹絶倒。ここまで来ると漫画だ。

それでも見続ける私も私ですが(^_^;)


●小説でもドラマでも、歴史を描くには複数の視点が必要。歴史は一人の英雄の力で動くのではない。

「天璋院 / 篤姫」では、薩摩藩家老の小松帯刀の視点がありました。これでドラマに深味が出ました。幕末ものでは比較的知名度が低く、評価も不当?に低かったかもしれない小松帯刀を「発掘」した功績は小さくありません。

「西郷どん」は、終始、西郷隆盛の視点ばかり。これもドラマを薄っぺらなものにしている原因。

これでは、いくら役者さんが熱演しても、空回りすることになります。


●「大河ドラマ」は、もっと成熟した歴史観を打ち出す時代ではないか?

原作者の林真理子もさすがに反対したそうですが、あまりに西郷隆盛を美化するような脚本や演出がウザイ。

西郷を美化し英雄化すれば鹿児島県民が喜び、視聴率が上がるとでも思ったのか?

もしそうだとしたら、余りに鹿児島県民を馬鹿にしていると思いませんか?


フランス大革命についての本に書かれていたことですが、現代のフランス人はフランス大革命をひたすら賛美したり、ナポレオンを英雄視することはほとんど無くなって来ていると。

つまり、フランス大革命にも、ナポレオンにも「功罪があった」と、フランス人は冷静に捉えているそうです。論じられるとすれば、功と罪、どちらの方が大きかったか、重かったか、という点にあると。

これこそが成熟した歴史観と思います。

「お国自慢」的な人物評価や歴史評価ほど、成熟から遠いものはない。

「お国自慢」ほど、鼻もちならないものはない。

それは最も低レベルな歴史観です。

この低レベルな歴史観を披露しているのが、我が国の首相なんだから悲しくなります。

この首相は例えば、2015年2月の施政方針演説で吉田松陰の「知と行は二つにして一つ」という言葉を引用しています。一国の首相が地元の歴史上の人物を持ち上げて引用する…。レベルが低い。※

もしも、この首相が会津藩の家訓や、江戸生まれの勝海舟の言葉を引用したのであれば、私は素直に聞けたでしょう。

21世紀になり、日本も各県も、そろそろ、「お国自慢」な歴史観から卒業する時代。



この首相は、「テロと闘う。テロには屈しない」と度々口にしていますが、吉田松陰はれっきとしたテロリストです。実行には移していませんでしたが、幕府の老中を暗殺しようとしたり、幕府そのものを破壊してしまえ、と弟子達を扇動したテロの扇動者です。もちろん、あくまで吉田松陰の一面ではありますが、決して無視してはいけない。

仮に、私が山口県民の前で、「吉田松陰はテロリストでした」と言ったら、ボコボコにされるのでしょうか。

いや、山口県民に失礼だ。そんな単純馬鹿は少ないでしょうね。

なお、私は「テロ=100%の悪」とは必ずしも思っていません。

テロにも色々あります。時と場合と社会背景により異なります。詳細は後日。


「大河」ひとつに かけたのよ
「大河」の重みを 信じたの
さがし さがし求めて
ひとり ひとりさまよえば
見れどつまらぬ 幕末よ
ああ 「西郷どん」は 今日もダメだった~♪



2018.08.19 | | コメント(4) | トラックバック(0) | 歴史・文化



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プロフィール

片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、神仏を尊び、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者熟女(四十路半ばを過ぎた)ですが、よろしくお願いします。

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