「野火」他、戦争映画3本と愚見を少々
●映画「野火」
関連情報は下記のサイトまで。
①『野火』への道~塚本晋也の頭の中
→サイトはここです
②「常盤貴子が自分の映画そっちのけで絶賛! 映画『野火』が突きつけた戦場のリアルと「忘れるな!」のメッセージ」
→サイトはここです
片割月の評価:上の下
大岡昇平の原作も良いが、やはり、インパクトという点では視覚に直接訴える映像には敵わない。
これは戦争映画というよりも、戦場映画である。フィリピンのレイテ島で敗色濃い日本兵士が飢えと病にもがき苦しむ有り様がリアルに描かれている。
いわゆる「カニバリズム」の言語に絶する凄まじさ、フィリピン住民への殺戮等、目を覆うようなシーンの連続だ。身内を殺されたフィリピン女性が白旗で投降して来た一人の日本兵を自動小銃の弾が尽きるまで打ちまくるシーンも強烈。
この映画にはエンターテイメント性は無い。美談で感動の涙を流させるような場面は無いし、勇気ある英雄が登場することもない。しかし、本物の戦争(侵略戦争)に迫ろうとするのであれば、こういうことになるのだろう。「理屈抜きで面白い映画を観たい」という向きにはおススメ出来ない映画だ。
逆に、青臭い「正義」や「反戦」を表に出さないのも良かったと思う。良識があれば良い映画が出来るとは限らない。製作者の主張が強いと、観る側はむしろ白けることが多いのだ。
低予算の限界の中で、良くぞここまでの映画を創ったと思う。監督・スタッフ・キャストに敬意を表します。
ただし、低予算ゆえの物足りなさもある。また、餓死寸前の兵士なのに、ちっともガリガリではないのも不自然。
塚本監督が苦労したように、この手の映画にはスポンサーはなかなかつかないようだ。満州事変や日中戦争をリアルに描く映画となれば100%絶望的だろう。しかし、日本の企業家や財産家の中に、一人や二人くらい、損得抜きで、監督の志を意気に感じ、ポーンと一億二億を出資する豪気な人間はいないのか!☆
「永遠の0」のようなニセモノの戦争美化映画にはお金を出す人間は多いんだな。※
※この映画では貞操を守り通す戦争未亡人(主人公の妻)の「美しい姿」が描かれていたが、これも「ウソっぽさ」の例だ。当時、軍部が「靖国の妻たち」の貞操問題を取り上げていたことは良く知られている。私に言わせれば、「貞操問題」にしていたのは当時の男尊女卑・家父長的思考にどっぷりと漬かっていた軍人の勝手であり、「貞操を守らなかった女性」の方はむしろ人間的であり、よほど健康的だと思う。
●映画「火垂るの墓」
片割月評価:今頃観ましたが(^_^;)…上の中
大岡昇平と同じく実体験を基にした野坂昭如の原作も良かったが、アニメの方も良い。
この映画が成功した理由の一つは、主人公の兄を「賢い兄」として描かなかったことだと思う。兄を「頭が良く、機転が利き、勇気もある」人間として描いたら、失敗したであろう。ウソっぽい戦争映画になる。また、ことさら「反戦」を唱っていないのも成功した理由と思う。未熟な兄と無邪気な妹の二人の姿にリアリティがある。
こちらは「野火」とは違い、子供も観ることを想定しているので、凄惨なシーンはオブラートに包んでいるし、思わず涙してしまうシーンも用意されている。過半数の人は泣く。しかし、全体的には淡々としたタッチであり、ことさらドラスティックには描いていない。これもまた、好感が持てた。
☆
映画「野火」はテレビの地上波では放映されないだろう。スポンサーがつかないと思うからだ。
そう言えば、原発問題を扱った名作、『チャイナ・シンドローム』(1979年制作のアメリカ映画)も、福島原発問題が発生した後、地上波では放映されたことが無いようだ。地上波で放映すれば高視聴率は間違いないのに。要するに、原発の恐ろしさや電力会社の巨悪不正を追求した映画ではスポンサーはつかないだろうし、電力会社から「圧力」がかかるからであろう。
私は取り立てて「アメリカ贔屓」でも何でもないけど、こういう映画を制作出来る点では「さすが、アメリカ」と思う。日本は先進国の中では「報道の自由度が低い国」との評価があるようだが、それは映画やテレビドラマの世界にも言えそうだ。
日本では東日本大震災後に、原発問題を扱った「希望の国」という映画が制作されたが、残念ながら「チャイナ・シンドローム」には遠く及ばない。大きな政治・社会問題なのに、あたかも家族内の問題に矮小化されてしまった感が強い。
●「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」
片割月の評価:中の中
戦争映画と言っても、こちらは完全なるエンターテイメント。
映画館で観た方が迫力満点とは知っていても、そこまでのファンではないのでDVDで。
過剰期待があった為か、どちらかと言うと、不評だとか。酷評も多いらしい。いわく、「ストーリーが平板」「過去のシーンの焼き直し」「ダース・ベイダーのような存在感ある悪がいない」等。。まあ、そんな感じも無くはない。
今回の作品が新鮮味に乏しい理由は、監督が替ったことにもありそうだ。すなわち、新監督は過去の6作品とルーカス監督へのリスペクトがある為、あまり冒険的な作り方はしなかったのではないかと推測する。
が、大人の漫画のようなエンタメなんだから、そうムキになることもあるまい。普通に楽しめれば私は満足。
私が最初に思ったことは、「アレッ?これはアメリカ制作の映画じゃないの?ブリティッシュ・イングリッシュばかりが聞こえてくるぞ」だ。主たる登場人物は確かにブリティシュ・イングリッシュの発音だ。口の中にピンポン球を入れたまま話すような英語の発音は私には聞きとりにくい。ハン・ソロが登場すると、やっとアメリカン・イングリッシュが聞けて、何やらホッとする。
それにしても、ハン・ソロもレイア姫もルークもすっかり老いた。特に、レイア姫役の女優の「老い」は衝撃的だった。還暦になるのかな?。映像の場合、明らかに女性の方が不利だ。なんだか、とっても侘びしくなる。これは私の偏見かもしれないが、アジアの女性よりも欧米の女性の方が若い時と中高年の時の風貌の「落差」が激しいように思う。
この点、ハン・ソロ役のハリソン・フォードは得だね。老人になってはいるが、適度にカッコ良さもある。歳を取ると、男性よりも女性の方が圧倒的に損だなあ。男性は歳を取ってもそれなりに女性にモテる例が少なくないが、色気と香気を失った女性は男性から見向きもされなくなる。。。私も。。いつかは。。。(^_^;)
今回は新人の女性が主役のようだが、昔のレイア姫と同様、いや、それ以上にやたらと強い。精神的にも肉体的にも強く、男性とチャンバラしても負けないどころか勝つ。最近のアメリカの男性はこの手の強い女性が好みなのか?
女性が多少武芸を習ったところで、鍛えた男性と比べれば「ねこがじゃれている」程度でしかなさそうだけど。
2016.05.25 | | コメント(13) | トラックバック(0) | 戯けたライフ