ソチ五輪:羽生結弦選手のSP→動画はここです
ソチ五輪の男子シングルは羽生選手とチャン選手の壮絶な一騎打ちでしたね。パトリックファンの私としてはチャン選手を応援しますし、さりとて、日本人の一人としては羽生選手も町田選手も高橋選手も応援します。複雑な気持ちでした。
101.45点!キスクラでのこのシーンと共に忘れられない羽生選手の凄いSPでした。お隣で文字通りアングリと口を開けているおば様はスケート連盟の方とか(-^〇^-)
単独の4回転トゥループとしては、羽生選手のこのジャンプは最高級に美しいですね。フェルナンデス選手のも美しいですが、羽生選手の方が迫力があります。私はこの演技を何度も見ても飽きません。よく見ると、エレメンツとエレメンツの間の繋ぎには難しいステップやターンが随所に織り込まれていて、密度の高い振り付けになっているんですよね。
しかし、4Tー3Tのコンビネーションとなれば、チャン選手がフリースケーティングの冒頭で跳んだジャンプに止めをさします。これ以上に完璧な4-3を見たことがありません。この素晴らしいコンビネーションが決まった瞬間、テレビを見ていたフィギュアファンのほとんどが金メダルはやはりチャン選手、と思ったことでしょう。しかし、勝負というのは終わってみるまで分からないものです。
前にも書きましたが、ソチ五輪中継で、我が家のテレビがチャン選手の4-3の直後に突然、受信不能になりました。後でプロトコルを見たら羽生選手のフリーの方が得点がわずかに高かったのでビックリしました。いったい、チャン選手に何が起きたのだ!と超常現象でも見たかのような信じられない数字でした。
チャン選手のこの表情、好きだなあ(*´∀`*)。人懐こくて可愛いのよね。
競技に戻って来たチャン選手を早く見たい。
あのショートプログラム(の出来映え)があったからこそ、このフリースケーティング(の出来栄え)があったという言い方がしばしばなされます。確かに、ショートで完璧な演技をした選手がフリーではミスを重ねる、逆にショートでミスした選手がフリーでは完璧な演技をするケースがあります。しかし、ヨナ選手のように両方ともほぼ完璧な演技をした選手もいれば、両方とも不本意に終わった選手もいます。
つまり、「ショートでああだったからフリーではこうなった」は「相関関係」はあるとしても、「因果関係」は無いのです。それはちょうど、「朝焼けは雨」、という格言や「雨おんな」というレッテル貼りがそうであるように。朝焼けと雨との間には因果関係はありませんが、経験上、見かけの現象上、しばしばそういうケースがあるという相関関係はあります。
相関関係と因果関係をごちゃごちゃにすると、色々と誤謬や誤解や偏見が生まれるわけです。
まあ、私もしばしばこの落とし穴に嵌ります(^◇^;)
2014.08.01 |
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私は「朝日新聞デジタルニュース」をネット購読しています。と言っても有料版ではなく無料版のみですが。下記の記事は無料版なのでそのまま引用させて頂きます。良記事と思います。
(インタビュー)真央と歩んだ4年 浅田真央選手のコーチ・佐藤信夫さん 2014年4月10日(朝日新聞)
(引用開始)…フィギュアスケートの浅田真央選手が集大成とするシーズンが3月末の世界選手権で終わった。ソチ五輪ではメダルを逃したものの、フリーの完璧な演技は世界を感動させた。浅田選手の挑戦にどんな意味があったのか、フィギュア界の未来は。練習拠点の中京大学を訪れ、この4年、二人三脚で歩んできたコーチの佐藤信夫さんに聞いた。
――ソチのフリーの演技はいまだに印象深いです。それだけにショートプログラム(SP)でなぜ16位に沈んだのか、疑問が消えません。
「あれほど崩れるとは私も想像していませんでした。報道などでかなり期待され重圧もあったのかなと」
――日本スケート連盟が準備した本番前の練習拠点のアルメニアのリンクに砂が混じっていて、エッジが摩耗してしまったみたいですね。SP当日、佐藤さんが研いで調整したと聞きました。感覚が変わるので、演技当日は避けるはずですが。
「朝の練習後にエッジが少し傷ついていたのが分かり、私が研ぎました。あまり変化を起こさぬよう軽くやりました。フリーの日もちょっと。練習リンクは特別よかったわけではなかったのですが、皆さんの努力のおかげでちゃんと練習させてもらいました。SPの結果はエッジの影響ではないでしょう。やはりのみ込まれてしまったのでしょう」
――あれだけのキャリアがある選手なのに、という気もしますが。
「記録で優劣を競う競技だと、試合で興奮状態になり、練習以上の爆発力を出して新記録をつくったなら成功です。でも、我々の競技はそれでは失敗です。普段より力が出てジャンプの滞空時間が変わると、回転オーバーする。力の出し具合が普段と変われば、いつもより速いスピードになったり、遅いスピードになったりして、狂いのきっかけになる。それほど微妙な競技なんです」
――練習でやったことをどう試合で再現させるのでしょうか。
「練習で試合と同じ経験をすることです。しかし、私が指導で一番苦労した部分は、そこ。彼女は、昔の軍隊みたいに月月火水木金金なんです。週1日も休まず、『なぜ練習して悪いんだ』って反論して、試合前でも5、6時間も滑ろうとした」
――そんなに長時間滑れるなんてすごいです。だめなんですか。
「力をセーブしながら滑ることを覚えてしまうのです。それでは(フリーの)4分で自分のエネルギーすべてを使い切れない。試合で使い切るには、1日に30分練習したら動けなくなるくらいの方がいい。本当につい最近、短時間の練習で『疲れて動かない』と言い、休みもとるようになったので、心の中で『やった』と思いました。ソチのフリーであそこまで動けたのは、短時間で力を使い切れるようになった証しです」
――浅田選手といえばトリプルアクセル(3A、3回転半)ジャンプです。ただでさえ普段の力を出すのが難しい競技なのに、失敗のリスクの高い技にも挑んだ。ただ、一時期、3Aをさせませんでしたね。
「本音はやらせたいんです。3Aがなしでもいいと思ったら、本当にやらなくなってしまいます。この状態ならやっても失敗するなと思ったら『だめ』と言うし、できそうだと思ったら『じゃあいこう』と。それだけだったんですけどね」
――ソチでは3Aを採り入れましたが、SPで転倒。メダルに届かないことになってしまいました。
「どうやったら彼女の持ち味が一番出せるのか。彼女にとってベストは何なのか。私が考えたのはそのことだけです。もちろん高度なジャンプを並べればいいというわけではない。人にどう感動してもらうか、そういう要素も大事です」
――勝つことを考えれば、回避する手もあったのではないですか。
「ソチではやるつもりでした。彼女が自分の生涯の夢としてやっている現実を知ったら、それを取り上げられるでしょうか。子どもに例えれば、そんなことをしたら、その子は何をして遊ぶの?どこに興味を持つの?と同じことですから。3Aを完成させるのは難しい。でも、その苦しいところはこちらも承知して、何とか一緒に乗り切ってあげようという気持ちだけは忘れないようにしてきたつもりです」
――フリーでは3Aを鮮やかに決めました。ところが全体の得点は3番目です。点が低すぎませんか。
「私が口をはさむとややこしくなるから。いい要素もあったが、減点されても仕方がない面もあります。フリーの点に文句はありません」
――技術と表現力を評価する採点競技では、判定側の主観を完全には排除できない面があります。
「私の現役時代は今と違い、規定という種目がありました。氷上で課題の図形を描き、滑り跡の正確さを競うんですが、競技中は他国の選手も見ています。当時、日本の選手はよく知られていなかったですけど、私の点が出ると『低い。彼が一番うまいのに』と選手が騒いだんです。それでも審判は知らん顔ですよ」
「欧州が発祥と言われる競技で、しかも音楽がついているわけです。かつては、この音楽をアジア人はいったいどう解釈しているんだと疑問を抱かれたこともあった。審判もミスジャッジはしたくないから、あまり知らない国の選手だとどのくらいの点をつけるのか考える。逆もあります。有名ブランドのハンドバッグなら品物を見なくても買いますよ、というような感覚ですね」
――そういう先入観を変えていくのは簡単ではないですよね。
「ええ、それはもう間違いないです。私だって、なじみのない国の選手がどんな演技をするのかなという目で見てしまうこともあります」
――こう言っては何ですが、とても理不尽な気がします。
「そうです。でも、そこで頭に来たら終わっちゃいます。お陰様で私はあきらめることができない人間だから、今でもしつこくやっている」
――そういう見られ方を日本はどうやって覆してきたのですか。
「私たちの現役時代は海外の模倣です。その私たちが教える立場になり、海外へ渡り指導者と交流を深め、さらに学ぶ。そこで自分たちの方法を確認し、これでいけるという自信を持って教え始め、私が規定の指導を手伝った佐野稔が1977年の東京の世界選手権で日本人で初めて3位になりました。そこからは、様々な人たちの努力の積み重ねです。06年トリノの荒川静香、ソチの羽生結弦で男女とも五輪金メダルが取れましたが、本当に時間がかかっていますよね」
――ソチ五輪で女子で3Aをしたのは浅田選手だけです。いわば今の世界の流れ、価値観に対する挑戦です。その点が評価されないと、難度の高いことに挑む動機付けが選手にも指導者にも生まれない。スポーツとして、これでいいのでしょうか。
「3Aはロシアの小さい子どもたちは結構跳んでいます。でも年齢が上がって体形が変わると跳べなくなる。つまり、女子が3Aを成功するのは非常に難しいんです。そうした事情を国際スケート連盟がくんで、女子だけは点がもっと出るようにすれば、やる選手も出てくるでしょう。いま、女子の世界トップの選手は似たような演技構成です。そこから抜け出すには難しいジャンプを跳ぶしかない。みんながジャンプ、ジャンプの時代になると、3Aの成功者も増えてくると思います」
――浅田選手のフリーの演技を歴代の世界王者たちが称賛しました。多くの人々が刺激を受けたのでは。
「そうですね。外国の若手コーチの中には『次は自分が選手を育ててやるぞ』と虎視眈々(こしたんたん)と思っている人はかなりいると思いますよ。『私も3Aをやるんだ』と心に決めた選手もいるでしょう。ただ現時点で跳べている10代の子は、体形が変わってしまうと跳べるとは限らない。さらに年齢が低く、10歳より下の子たちが将来出てくるかもしれないが、10年、15年先になるかもしれません」
――23歳の浅田選手が一線から引くのは、惜しい気もします。
「先の世界選手権に向けた練習の最中に『まだ伸びるところあるよね』みたいな話はしました。砂鉄ってありますよね。紙の上にまいて、下の磁石を動かすと、くっついて模様ができる。ああいう滑りが好きなんです。氷に吸い付き、下から誰かが動かしているように、すーっと動く。それなのに足の力で氷を蹴っている感じがない不思議な世界。『そんな風に滑ってくれたら、感激して泣いちゃうかもしれない』とも言いました。でも、彼女も人生設計を考えないといけない。生き方が変化することもあるでしょう…(引用終わり)」
……………………………………………………
アルメニアのリンク環境の酷さと日本スケート連盟の対応の問題については女性週刊誌の記事で指摘されていましたが、私は半信半疑でした。如何せん、女性誌でしたからね^^;
今回の佐藤コーチの発言から記事が全くのガセネタでは無かったと判明しました。これは連盟の大失態ではないでしょうか?よくこれで責任問題にならないものだと思います。4年に1度しかチャンスの無い五輪ですよ!
フィギュアスケートは繊細なスケーティング技術を求められること、エッジのわずかの違和感がしばしばミスに繋がることは、連盟關係者であれば知らぬとは言わせません。
鈴木選手と長久保コーチも同じ被害にあっていたのでしょうね。もちろん、彼等の立場としては表立って連盟を批判出来ないでしょうし、演技でのミスに繋がったなどとは口が裂けても言わないであろうことも分かるような気がします。
しかし、朝日の記者はこの問題を知っていながら淡々とインタビューしている事には違和感を覚えます。済んでしまった事は今さらガタガタ言わないといういことでしょうか。あるいは大人の事情で言えないからでしょうか。連盟を怒らせるとテレビ放映にも支障があるからか?と勘ぐりたくもなります。
ファンの一人としては連盟に対し、腹立たしさを抑えられません(`Δ´)!
それとは別に、佐藤コーチのコメントは薀蓄に富んでいますね。磁石と砂鉄の模様の喩えでスケーティングの妙を語る箇所とかね。こういうのは文学的センスの問題ではなく、スケートの道一筋に生きてきた佐藤コーチだからこそ言い得る修辞なのだと思います。机上の空虚な形容ではなく、地に足のついた生きている形容ですね。
選手とブランドか…ジャッジは演技のみだけではなく、選手の顔と名前を見て評価をしているように思うことがしばしばありますが、それは完全に間違いでは無いと思います。佐藤コーチも色々と「理不尽なジャッジ」と戦って来た様子が伺われますね。
一部のファンがチープに「不正だ!八百長だ!」と騒ぐのとは異なり、採点競技の不条理も受け止めつつ、そこを粘り強く実力でジャッジに判らせ、高い評価を勝ち取る長い戦いであったことが佐藤コーチ(他のスケーターも)のコメントから察せられます。
フィギュアスケートでは「本番では練習通りの演技」が出来るか否かが勝負の肝なのだということも、佐藤コーチのコメントからある程度分かるような気がします。そして、浅田選手が「練習通りの演技が出来た」と喜ぶ理由も。こういうことはファンは分かっていたつもりでも実は何も分かっていなかったのです。佐藤コーチの説明によって少しだけ理解されただけなのですよね。少なくとも私は。
佐藤コーチの意見を知って、私は「女子の3Aは男子とは異なり、もっと高い基礎点に上げるべし」に宗旨替えすることにしました。現行の8.5点は4Tと同じ10.30点くらいに上げましょう(^_^)ノ。これまでのようなショボイ上げ方はダメです。中途半端は良く無い。これなれば、女子でも本番で3Aに挑む選手が複数出て来ると思います。
女子の場合はジャンプ構成は「頭打ち状態」で、男子のようにエキサイティングではありませんし、将来的にも疑問に思っていましたから。次いでに言えば、女子では3-3のセカンドジャンプを3Loで成功させたらボーナス点+1点とするのも有りかと。そうでもしないと誰もチャレンジしませんよ。
「お前は浅田ファンだから浅田選手に有利なルール変更を願っているな。『女子フィギュア全体の発展の為に』は綺麗事であり付け足しに過ぎないな」との批判を受けそうですが、その通り!浅田選手に有利なルール変更があれば、彼女が現役続行する大きな動機になるだろうと予想するし、ファンとしましてもそう願うものです…と居直る(^O^)。
2014.04.12 |
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片割月はどうして安藤さんの「浅田選手は昨日のSPがあったから今日のFSがあった」コメントに拘るのか?との質問やご批判を受けましたので、続編を書くことにしました。
安藤さんが杉田翁のように「昨日のSPとは別人のような演技」と言ったら、私は心から素直に「その通り!」と思ったことでしょう。ところが、あにはからんや「昨日のSP(大失敗)があったから今日のFS(大成功)があった」と言われてしまい、私は思わず、ケッ!と、いささか鼻白んだのは事実です。
安藤さんは事前にFSでの素晴らしい演技を期待し、予想もしていたそうです。で、予想通りだったと。それゆえ、あのようなコメントになったのでしょうと。
そうだとすれば、凄い予測・カンの鋭さと思います。私はSPよりは良い演技はするにせよ、あそこまで目覚しい演技をするとは全く思いませでしたので、驚きもしましたし、それだけ感激もしました。
何故安藤さんは予想が出来たのでしょう?
その根拠として、過去に浅田選手が何度か同じような試合展開をした例があるからでしょうか?
もしもそうだとすれば、安藤さんは…意思決定における「可用性バイアス(The Availability Bias): 人間が過去を再構築する時、最も生き生きした記憶や回想しやすい記憶を重要視してしまうこと」…に囚われていた可能性もあります。
何故なら、データ上や確率論からは安藤さんの予想を裏付ける根拠が見いだせないからです。
過去に浅田選手はソチ五輪のような極端な演技をした例は見当たりません!
似たような例を挙げるとすれば、2007世界選手権(SP5位→FS1位)、2007GPF(SP6位→FS1位)があります。しかし、二つの大会でのSPはいずれも得点は60点以上、技術点30点以上の点数が出ており、大失敗とは言えず、ソチ五輪のような「極端な例」とはほど遠い展開でした。よって、予想の根拠となるデータには成りえません。
浅田選手のSPの場合、ソチ五輪のように技術点が25点以下くらいを大失敗の例としましょうか。これに該当する例は2009GPS(ロシア大会等)、2010GPS(NHK杯等)があります。
しかし、これらのいずれもFSでは「目覚しい演技」はしておらず、ミスを連発していました。共に6位で終わった2011、2012の世界選手権においても、これといった特徴は見当たりません。
つまり、安藤さんの言う「昨日のSPがあったから今日のFSがあった」に該当する例は過去には無かったのです。あったと思うのは「可能性バイアス」による作用かもしれません。
すると、予想が当たったのは安藤さんの独特の嗅覚による勘であったのかもしれません。
しかし、それであれば私が「浅田選手の順位は6位」の予想が当たり、村上選手のSP変更やワグナー選手のFS変更によるプログラムを当てたケースも、凄い勘と言えましょう(^O^)。
もちろん、これらは唯のマグレに過ぎません。そして、勘による予想に因果関係は求めにくいでしょう。これが浅田選手の過去のデータや確率から閃いた勘であれば別ですが。
人間の行為について、マグレや偶然を必然又は当然の結果とみなし、そこに合理的な因果関係を求めるのは行き過ぎと思います。ある程度は因果関係が当てはまる例もありますが、当てはまらない例もあります。
遥か遠くの月と、目の前の潮の満干には因果関係がありますが、浅田選手の昨日と今日の演技に直接の因果関係はありませんでした。人の心の動きは刻々と変化し、不規則で矛盾した展開を示すものです。※1
そもそも、FSで成功した3Aにしましても、失敗して転倒又はすっぽ抜け、回転不足+両足着氷しても少しもおかしくない状況にありました。今季は3Aの成功率はほぼ0%だったのですから。紙一重で成功だったのです。団体戦で転倒し、個人戦でも転倒した後で、FSで成功するとはほとんど期待出来なかった。むしろ、この流れでは二度あることは三度ある、と思う方がよほど「合理的?」と言えるかもしれません。
しかも、スケートやスキーといったウィンタースポーツは、いわゆる「僥倖性の低い」競技であり、番狂わせが普通に起り得る競技です。陸上の100m走のようには行かないです。ちょっとしたエッジワークのブレや回転の微妙な違いや重心の繊細な移動の違いにより、成否の分かれ道が生じ、天と地の差が生じる場合が少なくない。しかも、雪や氷の状態は常に変化しています。ジャンプの高梨沙羅選手が良い例です。
ソチ五輪の浅田選手のSPとFSは、「たまたま」そうした巡り合わせになったのです。データからも確率からも説明出来ない「想定外」「予想外」の出来事だったと考える方がよほど自然ではないでしょうか?
私が安藤さんのいかにも穿ったコメントに、結果から遡及して「必然の結果であった」かのように語ることに対し、「ケッ!」と鼻白んだのは、以上の理由があったからです。
しかし、人間は偶然とかマグレを好まず、そこに何かしらの原因→結果という因果関係を求めたくなる生き物です。だからこそ、科学・学問の発展があったのでしょう。実際は偶然やマグレも沢山あるのに。
上司が部下を誉め、その後に部下が良い仕事をすれば「誉めたから良い仕事をした」と己の指導に満足し、悪い仕事をすれば「誉められたことで傲慢になったからだ」と考える…つまり、因果関係を求める生き物なのです。※2
だから、これを逆手に使うことも可能だ。(以下はどうでも良い話です)
私は上司から叱られると大げさに落ち込んでいるように見せ、その後に仕事で(故意に)ミスをする。すると、上司は「叱ったのが逆効果だったか」と反省し、その後は私をあまり叱らず、なるべく誉めるようになる。そこで私は「課長が誉めてくれたのでやる気が出ました!」とニコニコ顔で言って、その後に本気を出して仕事をする。ミスはしない。上司は益々私を誉めるようになる…(^-^)/
頭は使いよう、ものは言いようなのさ(^O^)。
※1.松井秀喜がヤンキースに入りした最初のシーズン。監督は松井を最初は4番や3番で打たせていた。ところが、彼は凡打が続き、「ゴロマシーン」とファンから揶揄されるほどでした。
そこで、監督は松井を7番に下げた。そうした途端に松井はバカスカとヒットやホームランを打ち始めた。監督はびっくりして「まるで別人だ!」と言った。
安藤流にコメントすれば、4番で打てなかった時期があったからこそ、7番で打てた、のかな?4番の重圧から解放されてリラックス出来たから?
それは分からないでしょう。分かったようなコメントを解説者がすれば「ケッ!」です。だって、それは必然の結果かもしれませんしが、偶然かもしれないからです。過去の巨人在籍中に松井が4番から7番に下げられ、途端にバカスカ打ち出した実績が何回もあったのであれば別ですが。
※2.東日本大震災が発生した直後、当時の石原都知事が「天罰だ。日本人は我欲の塊になったことへの戒めだ」くらいのことを発言し問題になった。大震災と人間の我欲とを強引に結びつけ、無理やり因果関係を求める典型だ。こういうのを強い言葉で表現すると「因縁を付ける」とも言うのでしょう。
「因縁」は仏教用語から来たものと思われ、特に悪い意味での用法は無かったのが、いつしか悪い意味にも使われるようになったのでしょう。仏教の教えに因果応報とか、まさしく、因果関係(因縁)について深い考察を示すものが多くあります。
2014.03.23 |
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キム・ヨナの五輪採点めぐりISUに調査要請へ=韓国協会(聯合ニュース 3月21日)
【ソウル聯合ニュース】ソチ冬季五輪のフィギュアスケート女子でキム・ヨナが銀メダルに終わったことをめぐり採点に疑問の声が上がっていることについて、大韓体育会と大韓氷上(スケート)連盟が対応に乗り出した。
大韓体育会は21日、「ソチ五輪のフィギュアスケート女子の審判(ジャッジ)構成について国際スケート連盟(ISU)に意義を申し立てることになった」と伝えた。
体育会は当事者であるキム・ヨナ側から同意が得られれば、大韓氷上連盟と共同でISU懲戒委員会に書簡を送り、ソチ五輪フィギュアスケート女子の審判構成に関する厳正な調査を求める。また、不公正な問題が再び起こらないよう改革を求めていくとしている。
キム・ヨナはソチ五輪フィギュアスケート女子でほぼミスのない演技を披露し合計219.11点を獲得したものの、224.59点を出したアデリナ・ソトニコワ(ロシア)に五輪2連覇を阻まれた。ソトニコワはフリーの演技で1度ジャンプのミスをしたにもかかわらず、キム・ヨナを上回ったため、その判定が問題となっていた。海外メディアもこの結果に疑問を投げかけ、韓国の世論も反発した。
キム・ヨナのファンは判定が不可解だとして新聞に広告を掲載し、一部のファンは体育会の前でデモを行った。
両団体はこれまで異議を申し立てるかどうか腐心してきた。協議の結果、両団体はジャッジの判定ではなく、当時のジャッジ構成について問題を提起することで抗議する方針を固めた。
ジャッジの構成については、競技直後から問題があるのではないかという批判があった。ジャッジには、1998年の長野五輪でスコアを改ざんし処分されたウクライナの審判やロシアフィギュアスケート協会会長の妻らが含まれていた。また、テクニカルコントローラー(技術審判の責任者)をロシアフィギュアスケート協会の元副会長だった人物が務め、不公平な判定が出やすいジャッジ構成だという指摘が出ていた…。
審判の構成が記事の通りの事実としての前提ですが、これは開催国特権でしょうか?
トリノやバンクーバーの時はどうだったのでしょうか。そこまで調べる根気はありませんけど。
ウクライナの審判ですが、これがもしもウクライナ東部、クリミア半島のようにロシア系ウクライナ人であれば問題になるのではないでしょうか?これですと、TOに1人、JPに2人ロシア人がいるのと同じですから。また、ロシア系では無いとしても、上記の「前科」があるジャッジを五輪に起用するのは如何なものでしょうか。
このような審判の構成にしたISUは「痛くもない腹を探られ」ても致し方ないのでは?
ロシアフィギュアスケート協会はロシアスケート連盟と同じ組織なのか記事では分かりませんが、ちょっと引っかかりますね。会長の妻とか元副会長とか…審判の構成が開催国ロシアに対する露骨な情実人事みたいですよね。
もちろん、TOはテクニカルコントローラー1人で判定をするわけではないし、JPはもちろんランダムカット(12人の中からくじ引きで9人が選ばれる、でしたか?)があるはずですので、「たまたまそうなっただけのこと」と弁明出来そうですが、ハナからISUを信用しないファンには糠に釘です。
韓国サイドは狂気のような世論に尻を叩かれ、渋々動いたという印象を受けます。五輪での判定が覆る可能性はほぼゼロであろうことは分かりきっているのだから。
「もしも」を言っても仕方無いかもしれませんが、銀メダルのキム・ヨナを浅田真央と入れ替えたら、日本の浅田ファンも同じように怒り狂い、日本スケート連盟に「抗議しろ!動け!!」と大騒ぎしたと想像します。
今回は浅田選手がメダル圏外であった為、一部の浅田ファンや陰謀論者は優勝したソトニコワ選手の「銀河点」は無罪放免、2位のヨナ選手の演技と「銀河点」をひたすら叩いていますが、浅田選手が2位だったらどうなったか?
こうした韓国の騒ぎを一部の浅田ファンはあざ笑うが、いまだに「茶番クーバー」と執念深く言っている浅田ファンの「恨」気質とどれだけ違うというのか。汚い言葉ですが、目くそ鼻くそを笑う、の類でしかない。
私が夢想することが一つあります。
浅田真央とキム・ヨナがそれぞれ主催するアイスショーにお互いがゲスト出演したらどんなに素晴らしいかと。例えば「ザ・アイス」にキム・ヨナを招きます。そこで、浅田真央が「ボンドガール」を演じ、キム・ヨナが「ノクターン」を演じたら面白だろうな。浅田真央がキム・ヨナっぽく演じ、キム・ヨナが浅田真央っぽく演じる。あるいは、二人でデュオを演じても面白い。見てみたいな~。
日本にヨナファンがいるように、韓国にも浅田ファンはいます。「キム・ヨナが来るなら見に行かない!」という浅田ファンもいるでしょうけど、そういう人は「ザ・アイス」を見に行かなくて良いです(-^〇^-)。アイスショーには食指が動かない私も、これだったら遠く名古屋まで見に行きたくなります。
キム・ヨナが主催するショーには浅田真央と、もう一人、高橋大輔も招いたら良いと思うけど。韓国には彼のファンもいるでしょう。そして、両スケーターが「ムーランルージュ」をペアで演じたら面白いだろうな。
昔、卓球の選手に荻村伊智朗という志の高い方がいて、現役を引退してからは中国との「ピンポン外交」の実現や、韓国と北朝鮮の統一チームによる世界選手権参加を実現させる上で多大な尽力をされたとか。今の日本のスポーツ界にはこういう優れた人物はいないのでしょうか。
今、日本と韓国は最悪の関係にあります。これが夫婦や近所付き合いであれば別れたり引っ越したりも出来ますが、国と国の場合はそうは行きません。何度も戦争で取った取られたと、あれだけ仲の悪かったフランスとドイツだって今ではかなり関係が改善されたようですし。※1。何とかなりませんでしょうか?
荻村伊智朗のような存在がフィギュア界にいると良いのですが。スポーツを政治に利用することは普通は「悪」かもしれませんが、「善」の場合もあります。相手国を非難するしか能のない両国の政府・政治家※2だけに任せず、アスリートが平和と友好の為に動くこともあって良いと思います。浅田真央とキム・ヨナが日韓友好に一役買えるよう、うまくコーディネイト出来る人物がフィギュア界にいませんでしょうか?
※1.遠藤周作のエッセーに面白い実話?があったのを思い出す。彼がフランスのリオンに留学していた時、居酒屋の主人から「君は中国人か?」と聞かれた遠藤が「いいえ、日本人です」と答えると、主人は笑いながら「俺にとっては中国人も日本人も同じこと」と言った。頭にきた遠藤は主人に「アナタはボッシュか?」と聞いた。「ボッシュ」はフランス人がドイツ人をバカにして言う言葉らしい。果たせるかな、主人は目を剥いて「俺はフランス人だ」と答えた。すると遠藤は「私にとってはドイツ人もフランス人も同じこと」と言って居酒屋を出たとか。
※2.アメリカのオバマ政権から「脅かされて?」渋々と村山談話・河野談話を継承すると明言した極右安倍ボンボン首相。片や、〇〇の一つ覚えのように告げ口外交を繰り返す韓国のオバチャン大統領も渋々日米韓の首脳会談に臨むと同意したらしい。いくら強気なことを言ったところで所詮はアメリカとの同盟がなかったら日本も韓国も、中国・北朝鮮と戦えないことは分かりきっていることなんだけどね。
追記。
3月22日付けの朝鮮日報日本誤訳版によりますと、
…大韓体育会と大韓スケート連盟は「倫理規定違反」を掲げ、ISU懲戒委員会招集と調査着手を要請した。問題視している点は大きく分けて三つある。まず、ロシア・フィギュア連盟の元会長であり、ロシア・フィギュア連盟現事務総長であるワレンティン・ピセーエフ氏の夫人、アラ・シェコフチョワ氏が審判に加わり、競技直後にソトニコワをハグをした。審判の一人ユーリ・バルコフ=ウクライナ=は1998年の長野五輪時、カナダ人審判に八百長を提案していたことが2002年に明らかになり、1年間の資格停止処分を受けている。審判たちが不公正な採点をしたという疑惑もある。キム・ヨナは同日午後、マネジメント会社のオール・ザット・スポーツを通じ「ソチ五輪に韓国代表として出場した選手として、大韓体育会と大韓スケート連盟がISU懲戒委員会に提訴した決定を尊重し、その意思を謙虚に受け止める」とコメントした…。
( `・ω・) ウーム…きな臭くなって来ましたね。。。
マズイでしょう、ISUは。これは問題にされても仕方無いと思います。
「前科者」のウクライナのジャッジはおそらく親ロシア系でしょうね。
ヨナさんのコメントですが…まあ、このように言っておかないと、韓国の両組織のメンツも立たないし、クレイジーなファンの気持ちを鎮めることも出来ないでしょうね…と私は解釈しています。
彼女の本音は、「終わったことはもういいよ。私、疲れています」くらいか?
ISUからの回答が来れば、韓国サイドは公表するんでしょうね。いや、ISUが回答を公表すべきでしょう。
2014.03.22 |
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浅田真央・FS(ソチ五輪):二つの異なるアングル
→動画はここです
ソチ五輪の動画はブロックが厳しいようで、良い動画はほとんど得られません(^。^;)
浅田選手のフリーが多くの日本人に感動を与えた理由はいくつも考えられます。
1.SPとは別人のような会心の力演・熱演をしたこと。
2.浅田選手ほどその練習風景から日常の生活、そして、あらゆる発言まで広く知られたスケーターはいないこと。
3.よって、浅田選手の涙に見ている人も感情移入し易かったこと。
4.3Aや3F-3Loを含め、限度一杯の演技を完遂したこと。
5.浅田選手の演技は人をハラハラさせ、スリリングなものであること。
6.彼女の人柄や容姿から来る影響もあるかと。
等が挙げられると思います。
メダル並かそれ以上の演技!と賞賛されることに批判的な向きも一部あるようですが、フリーだけであれば3位の成績であるし、このところずっと技術点でも適わなかったヨナ選手より3点以上も高い得点を出したことは特筆すべきことだと思います。少なくともFSに限ってはメダル並の演技はしたわけです。
また、メディアが煽るよりも先に人は浅田選手の演技に感動を受けたのであって、その逆ではありません。私の身内や職場でも…普段はそれほどフィギュアを熱心には見ない人達…も、異口同音に「感動した」と言っています。また、ヨナ選手については、「バンクーバーの時は凄いと思ったが、今回はそれほどでもなかった」という感想も複数聞きました。もちろん、彼等はヨナ選手に悪感情など持っていない人達です。
それと、「浅田真央は6位ですよ。それが現実であり実力」と賢しらにおっしゃる向きもありますが、そんなこと、浅田ファンは先刻承知です。言うだけ野暮というもの。少なくとも私のブログに投稿されるファンで、「浅田真央はメダルを奪われた」などと強弁する方はほとんどいません。
まあ、一部の「浅田ファン」が、「メダル以上の演技!、私の中では真央選手が1位!」と陶酔し、恍惚のようなコメントをするのを見れば、ちょいとばかり皮肉の一つも浴びせ、釘を刺したくなる心情はワカル。
テレビ解説で安藤美姫さんが、「(失敗した)SPがあったからこそ、このFSがあった」と語っていましたが、私はこれは「こじつけ」だと思います。結果論に過ぎない。結果から因果関係を無理やりこじつけている。何故なら、浅田選手はFSでもミスを連発した可能性も十分にあったのだから。その場合、「SPでのミスが尾を引きましたね」と言うであろうことは容易に想像出来る。つまり、何とでも言えるのだ。
SPは16位、FSが3位、という結果は「たまたま」そうなったに過ぎないと思います。だからこそ見た人は興奮し、感動を受けるのです。ただし、これは言えるかもしれない…SPとFSはそれぞれ浅田選手の弱い面と強い面が出たと。
もちろん、浅田選手を幼い頃から知り、共に戦ってきた安藤さんの発言はそれなりに説得力はある。が、これは同意出来ません。
【ソトニコワ選手の高いPCSについて】
フィギュアファンのほとんどは、彼女がヨナ選手とほぼ同じ評価を受けるとは予想しなかったのではあるまいか?
FSでは両者とも「ほぼノーミス」でした。ノーミスであればスケーティング技術や表現技術に「一日の長」のあるベテランのヨナ選手の方が明らかに高い評価を受けると予想するのが自然だ。ヨナ選手は演技後半はややパワーダウンした印象がありましたが、それはソトニコワ選手にだって当て嵌るのかもしれないのだ。
ファンはリザルトを見てから、アレコレと高いPCSの理由を見つけようとする。しかし、もしも、ジャッジと同じように「その場で」採点すれば、私だったらソトニコワ選手には8点台後半くらいの評価をしたと思います。その後にジャッジの評価を見て、愕然とするのでしょう。
しかしながら、9人のジャッジの評価を見渡すと、各5項目について、ソトニコワ選手よりもヨナ選手や浅田選手の方に高い評価を出したジャッジが複数いたのですから、なかなか微妙なものがあったとも言えそうです。
これがPCSにどれだけ影響があるのかは不明ですが…ソトニコワ選手とリプニツカヤ選手に共通している特長は、スピンの上手さです。つまり、スピンでGOE+1、以上の評価を貰える能力があるということ。両選手はスピンにもハイライトがあり、大向うを唸らせることが出来ます。
それに対し、浅田、ヨナ、コストナーの3選手はスピンではそこまでのパフォーマンスは出来ていません。逆に、ロシアの二人の若手は、ジャンプ、ステップ、スピンと、全ての技術エレメンツでまんべんなく高い加点が貰える総合力を持っていることが、ひょっとして、PCS評価の高さに寄与しているのではないかと想像しています。
アリッサ・シズニー選手を例外として、ロシアの女子選手はなべてスピン技術が高いと思います。回転速度が早く、歯切れが良くて、柔軟性を生かしたポジションに特色があります。嘗ては数多の名スピナーを輩出したスイスに代わり、今ではロシア女子がスピン王国になった感があります。
ヨナ選手のファンにはPCS評価がソトニコワ選手と同じであったことに不満を言っている例があります。その気持ちは私にもある程度は理解出来ます。
しかし、上位選手で5種類の3回転ジャンプを跳ばなかったのはヨナ選手だけです。また、ヨナ選手らしい流れのあるランディングにならなかったジャンプもありました。もしかすると、ヨナ選手がソトニコワ選手を上回るだけの技術的パフォーマンスが出来なかったことも、PCS評価に影響を与えたのではあるまいか?…と知ったかぶりを(^。^;)。
知ったかぶりついでにもう一つ。滑走順が影響云々よりも、SPをノーミスでハイクオリティの演技をすることが、FSのPCS評価に何がしかの影響を与えるのではないかと。羽生選手を見ているとそのように推測してしまいます。彼の完璧なSPによってジャッジから高い評価を受けるようになったことは、FSにも良い影響をもたらしているのかなあと。
「それは一種の思考停止だ」と批判を受けそうですが、そうでも考えないと今の私にはPCSは五里霧中なのです。
2014.03.15 |
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