日本に今も根強く残る「言霊信仰」
・「言霊」とは。
言葉には現実を動かす力がある、口に出した言葉は現実化する、という日本古来の信仰。又は思想。日本人がよく言うセリフ、「縁起でもないことを言わないでくれ」や、祝典での「忌み言葉」の存在は言霊信仰の例。
日本政府や関係者が絶対に口にしない言葉。最近の例。
①新型コロナ感染の第3波、第4波。
野党やメディアが「今は第4波に入った」と述べても、菅首相をはじめとして政府関係者は決して認めようとしない。何故か「第〇波」という言い方を厭うのです。どうしてか?
②医療崩壊。
これも同様。田村厚労相にいたっては、「医療崩壊の定義ってどうなんでしょう?」などと、寝惚けたことを言っています。政府だけなく当事者の大阪の吉村知事も言いませんね。「医療がひっ迫している」という弱い言葉を用い、「医療崩壊が起きている」という言葉は避けています。今、大阪では明らかに医療崩壊が起きているにもかかわらず、日本政府も大阪府知事も、「口が裂けても医療崩壊とは言うまい」と決めているかのようです。
③東京五輪の中止・延期
これはもう、関係者に催眠術をかけるか、拷問にかけるかしない限り、絶対に「口を割らない」でしょう。「最悪の場合、中止も視野に入れて」(極めて当たり前のこと)と、言った瞬間、その人間は五輪の世界から村八分にされ、絶縁・永久追放されるでしょう。
言霊信仰で日本史を語る井沢元彦氏が何かの著書で、「戦争を事変、敗戦を終戦、と言い換える日本。これこそ言霊信仰の典型」と述べていましたが、同感です。
映画「男はつらいよ」で、こんなシーンがありましたね。すなわち、吉永小百合が演じる歌子は病気で夫を亡くした。その歌子が来るというので寅さんが家族に、「夫とか旦那とかダーリンなんて言葉は使わないこと。そうだ!(妹さくらの夫)博!お前は死んだことにしよう!即刻死ね!」と言う。
これを見て笑えるのは日本人だけじゃないでしょうか?
・不吉なことは口に出さない。ネガティブなことは口に出さない。
万が一、不吉なことが起きたら、それは「さだめ」として、「運命」として受け入れよう。あきらめよう。人を責めるな。誰が悪いとか犯人さがしをするな。済んでしまったことを掘り返すな。。。
日本が危機管理能力に著しく劣る原因の一つは、言霊信仰にあるのかもしれません。
☆
ただし、日本以外にも言霊信仰かそれに近い風土を持つ国や民族がいるかもしれません。他の国を調べないで、ただちに「これは日本の特徴だ」と断じるのは問題がありますね。
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2021.04.29 | | コメント(1) | トラックバック(0) | 歴史・文化