深まる演技構成点の謎:ソトニコワ選手の評価がハネ上がった理由は?
ひょっとするとヨナ選手にはショックだったのではないでしょうか?まさか、ソトニコワ選手の演技に対し、自分とほぼ同程度の高い演技構成点が出るとは想定外だったのでは?
同様に、チャン選手も羽生選手のフリー演技に対し自分と同程度の演技構成点が出たことは、金メダルを逃したのと同じくらいショックだったのではないでしょうか?もっとも、前年のGPFで既に羽生選手の高い評価は出ていましたが。
誰もが驚いたことでしょう。演技構成点において、GPSカナダ大会で76.86点(平均7.00点台後半)からスタートした羽生選手のフリー演技がGPFで突然92.38点(平均9.00点台前半)という非常な高評価を受けたのですから。そしてソチ五輪ではいくつかの大きなミスがあったにも関わらず90.98点の高評価を得ました。
これはチャン選手の92.70点、高橋選手の91.00点とほぼ同程度の高い評価でした。
今シーズンの演技構成点の沸騰傾向とヨナ選手の演技構成点については以前の記事に「2013GPSのPCSに異変?:ヨナ選手のPCS予想」として取り上げました。カテゴリーの「演技構成点」よりご参照下さい。
ヨナ選手のショートの演技構成点は35点台とした私の予想は見事に的中<(`^´)>。ただし、フリーの72点台の予想は外れましたが(^_^;)。実際は74点台でしたので。
それよりもさらに驚いたのはソトニコワ選手のケースです。彼女のフリーの演技構成点は、GPS中国大会では60.31点(平均7.00点台後半)~フランス大会は64.65点~GPFは60.47点が、欧州選手権では69.60点(平均8.00点台後半)と劇的に上昇しました。そして、ソチ五輪では74.41点(平均9.00点台半ば)にまで上昇。
つまり、ひとシーズンで14点(アップ率23%)という驚異的な上昇です。私はこのような例を寡聞にして知りません。どうなんでしょうか。これまでの「常識」からではちょっと考えにくい数値です。
2009世界選手権やバンクーバー五輪ではヨナ選手の演技構成点が「爆上げPCS」と騒がれ、「もはや女子シングルは死んだ」と叫んでいたブロガーもあったくらいですが、ソトニコワ選手のそれと比べれば上げ幅は小さく、今にして思えば可愛い方です。
リプニツカヤ選手も60.88点(カナダ大会)から始まり、欧州選手権では68.00点とハネ上がりました。ソチ五輪個人戦ではミスが2つ出たものの、70.01点という高評価でした。ノーミスであれば72点台くらい出たかもしれません。
イエ、私は何も演技構成点がハネ上がるのが問題と言うのではありません。なんでしたら20点上がっても良いです。要は、どうしてそこまでハネ上がるのかを知りたいだけです。いくらルールを勉強しても訳のわからぬ現象を前にして、「採点競技とはそういうもの」とか「素人には判らないのがフィギュア競技。専門家の判断をよろしく受け入れるがファンの良き心得であるゾヨ」では面白くありません。ジャッジにはきっと確かな根拠があるのでしょうけども。
しかし、ヨナ、コストナー、浅田といったベテラントップスケーターの持つ演技構成点での優位性がなくなれば、難しいジャンプ構成を軽々と完遂してしまう若手トップスケーターとは厳しい争いになりますね。
上記の女子3選手と、男子のチャン、高橋の両選手のスケーティング技術と表現技術が一流中の一流であることは、ほぼ皆が認めているところです。そして、演技構成点での大きなアドバンテージとなっていました。特に、チャン選手が「僕は最強のスケーターだよ」と語る時、それは決して強がりでも負け惜しみでもありません。
ところがソチ五輪では演技構成点に「価格破壊」の波が押し寄せたようです。
羽生選手とソトニコワ選手とリプニツカヤ選手がジャンプ、スピン、ステップと、各技術エレメンツで非常に卓越した技量を持っていることは誰も否定できません。
しかし、スケーティングとなりますと、十分に伸びやかでスピード感と切れ味鋭く、とまでは言い切れず、素人目にもどこかセカセカしたところが見て取れます。表現技術でも上半身の自在な使い方、腕や手先の細やかな使い方という点で、まだどこかジュニアっぽさが多少残っているように見えます。
京都で見たベテランの踊り子と若い舞妓の踊りの表現力の違いが素人目にも分かるように、ベテラントップスケーターの表現技術には一日の長、いや、三年の長を感じますけど…どうなんでしょうね。間違った見方でしょうか?
リプニツカヤ選手は誰にも真似の出来ない独自のスピンを持ち、フィギュアスケートの発展性と創造性という点では高く評価されるべきでしょう。また、今季のショート、フリーは本人の個性と絶妙なマッチングを示す名プログラムとの呼び声も高く、これも高く評価されるのも分かります。しかしです。。。
ただ、冷静な解説をされる中庭健介さんのコラムを読みますと、「ソトニコワ選手の演技構成点はやや出過ぎと思うが、許容範囲」くらいの見解のようですね。その一方では、ドイツのカタリナ・ビットさんはヨナ選手推しだったようで、「採点に失望した」との報道がありました。
いずれにしましても私の疑問に応えて貰える説明はありません。私はどうして3選手の演技構成点が著しくハネ上がったのかが知りたいのです。ワカラン(ーー;)。
「ISUは次のスターを作る為に、彼らに高下駄を履かせたんだよ」との、一見もっともらしい珍説に誘惑されるファンがいるのも、まあ、分からなくもありません。これはもちろん、結果を前提に都合の良い原因を当て嵌めようとする非科学的な発想に過ぎません。ましてや、ロシアの陰謀など、論外です。
ヨナ選手の演技構成点はもっと高くても良かったのでは?との声もあります。田村明子氏の新著「銀盤の軌跡」によると、「一般的にフィギュアスケートでは、ジャッジは復帰した選手に厳しいと言われている」とありました。そして、「ストイックに毎年その努力の成果を見せ続けてきた選手のほうに情が移るのは、人間としてごく自然なことであろう」と。まあ、この辺りのジャッジの消息について、田村氏がどこまで正確に取材しているかは分かりませんが。
それもひょっとしてヨナ選手の評価に少し影響したのでしょうか?しかし、私はヨナ選手の評価については中庭さんじゃないけど、「許容範囲」ですけども(^O^)。
滑走順と演技構成点との関係ですが。。。より強い緊張を強いられる最終グループよりも、早いグループで演じる方がメンタル面では有利という一面もありそうです。ジャッジはともかく、どちらが良いかは選手にもよりけりでしょうし、一概に最終グループが有利とも言い切れないかもしれません。一長一短あるわけだ。
再び田村明子氏「銀盤の軌跡」から。大会中に3人の技術役員が交わした会話は、後々になっても決して外部に漏らしてはいけないルールになっているそうです。「あの時、自分は回転が足りていると思ったけど、他の二人が足りないと主張したのでやむを得なかった」というような言い訳は、墓場まで持って行かなくてはならないと。
なるほどね。。すると、口外禁止はジャッジパネルも同じなんでしょうね。まあ、下手に言おうものなら、ヤブヘビになりかねませんからね(^_^;)。
田村岳斗さんが宮原選手のエッジ判定に不満を訴えても、TSの岡崎真さんは何も言えない、というワケだ。
羽生選手もソトニコワ選手もリプニツカヤ選手もまだまだ伸び盛りですので、これから順調に育てば演技構成点はどこまで上昇するのか予想も出来ません。ひょっとして、アイスダンスのように10.00点が並ぶ評価が飛び出すかもしれませんね。
そろそろ演技構成点に関する基準、項目数、係数、運用など、見直しするタイミングになったのではないでしょうか。曲の解釈やコレオグラフィーというのも、もう一つ良くわかりません。
「シンドラーのリスト」は分かり易い。しかし、コンテンポラリーな音楽や振付だとジャッジはどう判断するんでしょうか。伊藤みどりさんがカルガリーで使用した和太鼓の邦楽っぽ曲の場合、欧米が主流のジャッジはどう判断するんでしょうか。シングルでもヴォーカル入りが認められるそうですが、私は反対意見です。
日本語や中国語のヴォーカルを使った場合、欧米のジャッジはどう判断するのでしょうか。英語の歌が有利、有名なオペラの歌が有利、ということになる危険がありますね。それではダメです。差別ですよ。
以下はどうでもいい話ですが。。。
私はフィギュアスケート競技が大好きでありながら、時々、嫌気が差すこともあります。いったい、フィギュアって「何を競っている」スポーツ競技なのか、頭の中でワケ判らなくなる時があるのです。
だからと言って、私は競技から離れたEXやアイスショーにはあまり興味が湧きません。競技の持つ緊張感や興奮が無いからです。競技では選手達が技術と体力と精神力の限界ギリギリで演じる姿に魅了され感動します。アイスショーの方は、ジャパンオープンのインターバルで荒川静香さんが演じる美しいプログラムを見るだけで私には十分です。
2014.02.25 | | コメント(243) | トラックバック(0) | 演技構成点とは