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天空の舞踊・浅田真央の「白鳥の湖」・追記あり






2013世界選手権・浅田真央のフリープログラム「白鳥の湖」


技術点:65.96点
演技構成点:8・41点
合計:134.37点

   基礎点  GOE  計
1. 3A  8.50  -2.14  6.36点
両足着氷ですが3Aは認定されました。今シーズンを通してTPは両足着氷には回転不足を取る傾向が見られたので、これは意外でした。2013世界ジュニアの厳しいTPなら回転不足を取ったかもしれません(苦笑)。これでも約5点失っていますから痛いですね。

しかし、「3Aの型」は完成しつつあるのではないでしょうか?
男子は4回転ジャンプが当り前の時代になりましたが、女子は中野さんが引退してからは3Aを試合で跳ぶ選手が浅田選手唯一人という状態がずっと続いています。

トゥクタミシェワ選手他、3Aを練習している若手の噂は聞きますがそれっきりです。過去には伊藤みどりさんを初めとして、3Aを決めた女子選手は4~5人いたのが、どうしたことでしょうか。

おそらく、スピン、ステップ、PCS等、フィギュア全般に渡り、技術的難度が著しく上がったことで、女子にとっては3Aを跳べるようにするだけの時間的・体力的余裕が無くなったのだと思います。しかも、3Aを跳べないと勝てない状況には全くありませんので、わざわざ3Aを跳ぶ動機も稀薄になったのかもしれません。このままでは3Aを跳ぶ女子選手は絶滅するかもしれません。

「フィギュアはジャンプが全てではない」は耳にタコが出来るほど聞かされていますが、それでも、やはり、女子は寂しい感じがします。しかし浅田選手がソチ五輪で3Aを決めて優勝すれば…3Aを跳ぼうとする女子選手が増える可能性はありますね。

2. 3F<  3.70  -1.20  2.50
以前から浅田選手は3-3を意識した3Fではこのような失敗が時々ありました。3Fは高さが無く腰砕けみたいになり、セカンドが付けられませんでした。これで約8点失っています。

セカンドを付けやすい3F―3Tにすれば、という意見があります。しかし2A―3Tを跳ぶ以上は基礎点の高い方の3Loを1つ外してまで3Tを2つ跳ぶのは損ですね。

最も決めたかったであろう最初の2つの大技、3Aと3F―3Loを続けてミスした時、私は「また昨季と同じメロメロのパターンか。。。」と嘆息しました。

3. 3Lz e  6.00  -0.70  5.30
素人目にも明らかに踏切はロングエッジ。事実上は3Fを跳んだようなもの。過去の3Lzよりも大きく減点されています。しかし、前の2つのジャンプミスを引きずらず、よく跳びきったと思います。何回も触れていますが、3Fではしばしば回転不足を取られるのに、「3Lz」だと滅多に回転不足を取られないんですね。実に不思議です。

4. 3Lo+2Lo  6.90  0.60  7.50
ファンの多くが驚いたセカンド2Loのリカバリー。浅田選手本人は冷静でした。リカバリーの練習もしたのでしょうか?

5. FCCoSp4  3.50  1.00  4.50
少しトラベリングがありましたがGOE+1.00点貰えました。浅田選手のビールマンスピンはこのような取り入れ方が一番見映えが良いと思います。ショートプログラムのようにレイバックの連続からだと回転速度が落ちてしまうんですよね。

6. 2A+3T  8.14 x  1.40  9.54
浅田選手が嘗て跳んだ2A―3Tの中で、これは最も綺麗に決まったものではないでしょうか?助走スピードを生かした大きな2Aはランディングの流れが素晴らしく次の3Tにスムーズに繋がったと思います。

7. 3S 4.62x  0.90  5.52
これもタイミング良くピタリ決まりましたね。浅田選手のサルコウはちょっと変わっているように見えます。いわゆる両足のブレードが「ハの字」になったかならぬ内にサッと跳んでしまいます。抜き手も見せぬ居合ばりのサルコウとでも言いましょうか。

8. CCoSp3  3.00  0.86  3.86
今まで取れていたレベル4がレベル3になったからといって、それは必ずしも悪いことではないと思います。ただ浅田選手の場合はGOE狙いによるレベル3ではないので、やはり、これは小さなミスでしょうね。レベル4に何が足りなかったんでしょう?

9. 3F+2Lo<+2Lo  9.24 x  -0.30  8.94
演技終盤で疲労が出る時にステップの繋ぎからの3連続ジャンプはキツイでしょうね。しかし2連続よりは3連続の方が音楽にピタリはまります。

10. FCSp3  2.80  0.14  2.94
このスピンは素人目にも浅田選手比で不出来な方と分かります。GPFの頃に腰痛があったと報じられていました。エレメンツの中でもスピンは特に練習量が物を言う(小塚選手談)そうですから、それも不出来の遠因かもしれません。

11. StSq4  3.90  1.50  5.40
圧巻です。「これでもか!」とばかりに左右に回るターンの嵐。最初のウィンドミルの後に、トゥで1回転ターンしてそのままツイズルターンしている箇所がありますが、トゥでターンするって難しいでしょうね。

ただ、左右のターンが余りに多いと逆に気になってしまうのが次の基準です。TPハンドブックの「ステップ・シークェンスのパターン全体の少なくとも1/3 の間、体幹のバランスに影響を与えるような腕および/または頭および/または胴の動きを目に見えて明らかに使っていること」

タラソワさんの振り付けたステップシークエンスでは、ウィンドミルを3回入れることで上記の基準をクリアーさせようとの考えなのでしょうか?

ともあれ、音楽はヴィヴァーチェのような快速で押し通し、頻繁なステップ・ターンの連続技で畳み込む…有無を言わせぬ運動量と力業。体育会系のステップ。このような凄いステップシークエスを見ると、やれエモーションが不足だの黒鳥になっていないのヘチマだの、という批判など軽く吹っ飛びます。

音楽のテンポの変化を巧みに取り入れたヨナ選手の優美で表情豊かなステップ、コストナー選手のようにボレロのゆったりとした速度の中で、上半身を上手くしならせ足元は伸びやかに踏むステップと、三者三様の個性が光っていると思います。ここで3選手のステップシークエンスの優劣など論じるのは野暮というもの。それぞれがフィギュアスケートの醍醐味を満喫させてくれます。

12 ChSq1  2.00  1.60  3.60
スパイラル姿勢で上半身を徐々に低く下げながら右手を背中の方に伸ばす箇所がツボです。あたかも白鳥が羽を折り畳むような仕草でしょうか。浅田選手には珍しい振り付けです。音楽とも良く調和していますね。

浅田ファンは浅田選手の柔軟性を賞賛します。確かにビールマンスピンやスパイラルシークエンスで高く上がるフリーレッグを見ればそうです。しかし上半身~肩・首にかけての動きはさほど柔らかいとは思えません。むしろ堅い方と思います。浅田選手がムーブメンツとしてイーグルは多用しても、(太田・荒川流の)イナバウアーを全く取り入れないのもそれが原因では?そして、ややもすれば浅田選手の表現性の範囲を狭めている原因もここにあるのかも。

そうは言いつつも、やはり浅田選手は姿も演技も実に綺麗です。浮き世離れした透明感みたいなものがフワフワ漂っています。現実の女性の持つドロっとした「生臭さ」「生活感」が稀薄なのが幸いして、虹の彼方の空遠く「天空の舞」を見るような魅力があります。


☆2012~2013シーズン・浅田選手のフリー演技のPCS推移。
ジャパンオープン:68,07点(8.00点台中半~後半)
中国大会:64.34(7.00点台後半~8.00点台前半)
NHK杯:64.54
GPF:66.39(8.00点台前半)
四大陸:67.76(8.00点台中半)
ワールド:68.41(8.00点台中半~後半)

☆2011~2012シーズン・フリー演技のPCS推移
NHK杯:64.57点
ロシア大会:63.20
四大陸:61.42
ワールド:60.02

昨季のPCS評価がNHK杯から下がる一方だったのが、今季は逆に上がっています。

正直、昨季の「愛の夢」と今季の「白鳥の湖」と比べて、NHK杯の時点では両プログラムとも同じ64点台のPCS評価が、何故、後半にこれほど違う推移・結果となったのか分からないです(苦笑)。昨季だって「スケーティングが磨かれた」「『愛の夢』は良プログラム」と言われていたんですよ。

異なる大会の異なるジャッジの数値を比べても意味があまり無い、と言いましても、各選手やコーチが現実にパーソナルベストやシーズンベストを喜ぶのですから、PCSについても同様かと。浅田選手のPCS評価は昨季より上昇したのは間違い無いと思います。浅田選手が「今季ようやく手応えが」とコメントしている根拠の一つはたぶんこれだと思います。

☆岡部由起子氏談「TRはSSの0.50点減くらい」について。
仮りにも現役の技術審判が語ったことですから重みがあります。ただ、「0.50点減」は「結果論」的な「相場」を視聴者に分かり易く表現した…一種の「方便」かもしれませんね。

何故なら、9人のジャッジ毎のPCS評価を調べていて判明したことですが…ジャッジによってはSSよりもTRに高い評価を出している例が時々見られるからです。

例えば、2013世界選手権、パトリック・チャン選手のTR評価を9.75点としたジャッジがいます。しかも他の4項目よりも高い最高評価です。他の選手でもSSよりTRを高く評価したジャッジの例はいくらでも見つかります。つまり、個別の内訳を見た場合、岡部氏の発言と反する評価をつけているジャッジがいるわけです。

しかしながら、「概して、TRはSSよりも厳しく評価する」との、ジャッジ間での「不文律」が存在するか、「意識合わせ」がされている可能性が高いですね。理由は不明ですが、同じ10.00点満点制でもTRは他の4項目よりも各ジャッジの頭の中にある基準値が厳しく設定されているのですね。

追記。
ブログ友達の皆さんから「岡部氏談以下は間違いで、小塚崇彦選手がJスポの番組で自分のトランジッションに関して、『SSからマイナス05くらいが』と語った」が事実なようです。自戒を込めて、このまま晒して置きます(^。^;)


2013.03.31 | | コメント(177) | トラックバック(0) | 浅田真央



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片割月

Author:片割月
和歌を愛し、音楽を愛し、花を愛し、神仏を尊び、フィギュアスケートが大好きで、歴史・社会・文学が大好きで、ジョン・レノン、八代亜紀、ちあきなおみが大好きで、クリント・イーストウッドと映画も好きで、皮肉とユーモアも好きな変わり者熟女(四十路半ばを過ぎた)ですが、よろしくお願いします。

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