私の好きな歌謡曲①
歌:吉田美奈子
曲名:夢で逢えたら
私がこの歌を初めて知り、好きになったのは、カラオケで会社の上司が歌ったのを聞いて「良い曲だなあ。歌詞も素敵」と思ったのがキッカケでした。
多くの歌手がカバーしている名曲であることも、オリジナルは吉田美奈子(良い声をしている)という歌手によるもであることも、後で知った。
「夢で恋人に逢う、逢いたい」は、万葉の時代から平安時代にかけて男女の区別なく多くの歌人によって詠まれて来たものです。
例1.「古今和歌集」より小野小町の歌2首と詠み人知らずの歌1首。
思いつつ寝ればや人の見えつらむ夢としりせばさめざらましを
うたたねに恋しき人を見てしより夢てふものは頼みそめてき
夢のうちにあひ見むことを頼みつつくらせる宵は寝むかたもなし
例2.「新古今和歌集」より、藤原実定の歌1首と藤原実宗の歌1首。
覚めてのち夢なりけりと思ふにも逢ふはなごりのをしくやはあらむ
夢のうちに逢ふと見えつる寝覚めこそつれなきよりも袖は濡れけれ
「夢で恋人に逢う」という言葉は、これだけで詩になり歌になります。何故ならこの言葉の底には、現実の世界では遠くにいる恋人になかなか逢えないという切なさや寂しさ、自分とは別れてしまった恋人をいつまでも忘れられぬ悲しさ、もしかしたら恋人も夢で私に逢いたいと思っているのではないかという儚い願い、フト目覚めると袖や枕が泪で濡れている…これらが通奏低音として聞こえてくるからです。
この歌がヒットして長く愛好されて来た理由は曲自体の良さにもありますが、そうした歴史的・文化的背景もいくらか寄与していると思います。
「夢で逢えたら」の作詞者は上記のような和歌を知っていたかどうかは分かりませんが、意識下にそうしたメンタリティーが流れていたのでしょう。
気持ちがムシャクシャしたり、落ち込んでいる時、夜に一人で自家用車に乗り、閑散としたビル街や郊外の高速道路を走ったことはありませんでしょうか?
赤く点滅するビルの航空障害灯や車のテールランプを見ると、どういうわけか、とても悲しく切ない気持ちになります。そのくせ、そうした気分を味わいたい自分がいるんですね。
ところが、仕事で遅くなっての帰宅途中、夜のビル街を歩きながら航空障害灯を見ても何の感慨も覚えないのだから、人間の気分とは不思議だなと思います。
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2013.02.27 | | コメント(14) | トラックバック(0) | 音楽