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一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

イージス艦の事故から思う憲法問題

今日は午後から、風が強くて黄砂もたくさん舞っていましたネ。春一番と言えばなんとなく風情があるが、実態は中国の汚染物質まみれの黄砂か…と考えるとそんな風情も吹き飛んでしまいますな。

最近の話題と言えば、やはりイージス艦と漁船の衝突事故ですね。親子二人を突然亡くしてしまった遺族の悲しみは察するに余りある。ましてや自国の軍隊によって殺されたのだから。ご冥福をお祈りいたします。

さて、今回の事故はどう考えても、海自の過失が大きかったのは間違いないでしょう。昔に比べればようやく自衛隊も日陰者扱いから抜けつつあったけど、こうした事件があるとまた印象を悪くなってしまうのは、残念だが自業自得か。
護衛艦の火災事故といい、今回の事故といい、ちょっとたるんでいるので猛省してもらいたいですね。

ところで、今回のイージス艦の事故を巡る議論で、私が一番考えさせられたのは、衆議院議員西村慎吾氏の主張でした。以下↓転載させていただく。

一隻の漁船に撃沈されるイージス艦

 イージス艦と漁船との衝突で、マスコミ報道が沸騰している。それに応じて、政治の世界でも議論が起こっている。それを観ていて私が感じたことを次に述べておきたい。

 はっきり言って、議論が矮小化されてきている。首相も防衛大臣も、自分への「事故の報告が遅れた」といっている。
 では、午前4時5分、即刻、官邸で寝ている福田さんや自宅で寝ている石破氏をたたき起こして報告すればよかったのか。
そうではないだろう。この二人をたたき起こして何ができたのか。現場海域に変化はない。
 問題は、このような事態に対処できる体制があったのか。その体制に基づいて対処されていたのかということである。
 つまり、海上自衛隊にいざというときの「ROE」(ルール・オブ・エンゲイジメント)、交戦規定とも訳されるルールがあったのかということではないのか。
 
 つまり、イージス艦という世界最新鋭の軍艦を運用する体制を我が国は保有しているのかが問われねばならない。
 突き詰めれば、我が国は「海軍」そして「軍隊」を運用する体制を保持しているのかということである。しかも、この体制を創設する責務は、政治つまり総理や防衛大臣が担っているのだ。
 よって、はっきり言って、軍隊を運用する体制を整えることなくイージス艦を運用していながら、事故が起これば、報告が遅れたと部下を非難しても始まらないではないか。
 午前4時過ぎに、この「おっさん方」が叩き起こされれば、漁民が助かったとでも言うのか。事故直後から起きていましたという言い訳ができたということくらいであろう。
 
 何故、こういう思いを持ったのかと言えば、この二人は、自衛隊は軍隊かと尋ねられれば、「軍隊ではありません」と答える閣僚だからである。石破氏には、かつて安全保障委員会で確認済みである。
 正真正銘軍隊でしか運用できない船を運用する組織の長でありながら、「軍隊だ」と答えることは回避する。しかし、事故が起これば報告が遅いと組織をなじる。まるで、平安朝の公家が、武士に守られながら昇殿は許さず、細かい落ち度だけはなじっているようではないか。
 では、あらゆる不祥事を即座に報告されたら、福田、石破両氏はどうなる。寝られなくなるだろう。アメリカ大統領が夜に寝られるのは、対処する体制があるからである。我が国も同様でなければならない。

 かつて、高校生の演習船「えひめ丸」がハワイ沖でアメリカの原子力潜水艦に沈められた。その時、当時の森総理はゴルフをしていた。そして、国会の委員会での質問は、いつゴルフを辞めて首相官邸に入ったのかということに集中していた。
 私が質問にたったとき、「総理が何時官邸に入ったかなどは、矮小化された議論である。問題は、この事態に対処する体制があったのかということである。」と官房長官に言った。その時の官房長官は今の福田総理であり、ホッとしたように肯いていた。私は、我が国に体制があれば、総理はそれから9番でも18番でもゴルフを続けてよいと思っていた。

う~ん、ごもっとも。確かに指摘されているように、「運用体制に不備」があるのは確かでしょう。ただ、交戦規定というより、直接的には以前の基本技術である「操艦」の問題であるような気もしますが…。まあ、事故の原因というのは「たるみ」なんだろうけど、その「たるみ」が起きた背景には、危機に直面したときにどうするかはっきり決めず曖昧なままにしている事が影響しているような気がします。
どうも、マスコミを始め日本人というのは、不祥事が起きたときに責任者はどう過ごしていたのかを気にしすぎるような気がしますね。そればかりこだわるあまり、肝心の対策がおろそかになってしまう。西村氏の言うように、「矮小化」しないよう一人一人が考えていく必要があるのではないかと思います。

 さらに、もう一つの観点を述べたい。
 イージス艦に漁船が衝突した。イージス艦が漁船を回避できなかったからだ。その結果、漁民の行方がわからなくなった。けしからん。これだけで済ませて良いのであろうか。
 
 この船が、実は漁船ではなく爆薬を満載した漁船に偽装した工作船だったらどうなったのか。
 我が国のイージス艦は、偽装漁船一隻によって撃沈されるということではないのか。
 最高指揮官たるもの、部下を叱るなら、こういう観点からも叱責して欲しいものだ。
 「お前たちは、7トン半の漁船に撃沈されかねないような気の弛んだ状態で国家にとって貴重なイージス艦を操船していたのか」と。
 とは言っても、この場合においても、軍隊であることを否定して、イージス艦を運用させている政治の総責任者には、部下を叱責する資格はないだろう。イージス艦の弛みというより戦後国家の弛み、戦後政治の弛みだ

 かつて、アメリカの空母が、ペルシャ湾で自艦の上空を通過しようとする民間の旅客機を撃墜したことがあった。これに対して、アメリカを非難する国はなかった。空母の上を無断で通過しようとする航空機の方に落ち度があると国際社会が観たからである。ソビエトも、自国領空に無断で侵入しようとする航空機を無警告で撃墜することを常とした。その航空機に核が搭載されているかも知れないからである。
 つまり、このアメリカもソビエトも、最悪の事態を想定してそれを防ぐための措置を躊躇うことなく実行したのである。
 ここに、国家国民を守る国防を担う組織の厳しさ非情さがある
 この度のイージス艦も、自艦の損失は即我が国防衛体制の破綻であると認識し、自艦へのあらゆるものの接近に神経を研ぎ澄まし、接触など断じてありえないという体制で東京湾に向かっていたら、二人の漁師の親子は今頃家で夕餉を食べられたであろうに。
 夫と息子の二人が冷たい海から未だ帰らないご家族の心中を思えば言葉がない。

なぜ西村氏の指摘する「戦後国家の弛み、戦後政治の弛み」という事態が、起きているのだろうか?やはり「戦後冷戦構造のなかで、日本が都合の良いポジションに甘え、自国の防衛について徹底して議論し尽くしてこなかったこと」のツケがたまっているとしか思えない。

なぜ議論を尽くしてこなかったのか?日本人の馴れ合う体質というのも作用している気がするが、やはり、憲法自体がこうした議論を妨げていることは間違いないだろう。問題点を議論していても、いつの間にか「合憲か・違憲か」に焦点が移ってしまい思考がストップしてしまう。

こうした状態に陥らないためには、一度故意に憲法から離れ、現実を直視し、自由に議論してみる必要があるのではないだろうか?護憲派の皆さんには、ぜひ検討してもらいたいと思う。

最後に、イージス艦の事故に関して私があきれた赤旗の記事を一部抜粋して引用しておきましょうか。

漁船を”自爆テロ”扱い 渡辺行革相
渡辺喜美行政改革担当相は19日の記者会見で、海上自衛隊のイージス艦と漁船の衝突事故について、「素人的に考えると、(漁船が)レーダーに映らなかったのか(と思う)。映らない場合もあるそうだが、万が一これが自爆テロの船ならどうするのか」などと、被害者をテロリストよばわりする暴言をはきました。赤旗新聞2月20日(水)2面記事より抜粋

おいおい、なぜそうした解釈にたどり着く??うーん、斜め上の反応だなぁ(笑)レベルの違いがありすぎて…。話にならん。

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コメント

私のブログにきて頂きありがとうございました。

西村先生の指摘は鋭くて勉強になりますね。
これが現職の国会議員の力か・・・・・・
今回はイージス艦が弛んでいたから起こったと言われても仕方がないです。
だから国会議員の先生方には自衛隊という軍をいかに運用していくか、ちゃんと議論してもらいたいですね。

  • 2008/02/24(日) 16:33:42 |
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  • コウ #leF2ecbc
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一知半解なるがゆえに、自らの言葉で恥を晒すのを控え、主に山本七平の言葉を借用しつつ書き綴ってゆきたいと思ふのでアリマス。宜しくメカドック!!
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