今年、私が読んだミステリーの中から、おススメと思うものを。
●中村文則 「教団X」(集英社)…評価:上の下
読みだしてすぐに、「あ、この小説家はドストエフスキーの影響、それも「悪霊」あたりの影響を受けているなあ」と感じる。もっとも、著者本人もそれを認めているらしいが。具体的には、カルトっぽい集団の教祖的人物や幹部が登場しては、それぞれ延々と話すことだ。現実にはあり得ない長大な会話をする点はドストエフスキー的だ。また、仏教思想が展開されたり、最新の量子論を展開し、宇宙と人間存在についての哲学的思索が繰り広げられる点もそうだ。ドストエフスキーはロシア正教会だけど。
典型的な犯罪小説的なようでいて、生とは?人間の存在とは?との問いが執拗に繰り返される。それも複数の主要人物によって複数の視点から。これが「教団X」に純文学的奥行きを与えていると思う。
この物語の中では露骨なセックス描写を何度も読まされる。それは道徳的基準を無くし、絶対的な何かを必死に求めようとしつつも己を見失った人間の彷徨や焦燥を表現する上で、作者にはどうしても書かなくてはならなかったのだろうと思う。
興味が湧いたので、もっと初期に書かれた「銃」「掏摸」(河出文庫)も読んでみた。やはり、犯罪小説にちょっとした哲学的思索をブレンドした面白さがある。
ところで、「掏摸」にはこんな文章がある。
「…店内の温度は高く、汗をかいた。立花の姿を見つけ、いるわけがないと思い、息を吐くと店員が僕に視線を向けていた…」
意味が不明。結局、(主人公の知人である)立花は店内にいたの?いなかったの?それと、やたらと句点を入れるので読みにくくて意味が頭に入りにくい場合がある。
中村文則は強い問題意識を持っていると分かる。が、その割には読み手に訴える力が少し弱いのは、私の読解力の問題や好みのせいだけではあるまい。文体に主題を支えられるだけの密度が薄いように思う。
しかし、これから期待の持てる若手作家の一人と思う。
ひょっとすると、中村文則は気楽なユーモア小説を書いたら、むしろ、その方が成功するかもしれない。
●中山七里「さよならドビュッシー」 (宝島社文庫) …評価:中の中
この小説家は女性かと思ったら男性なんだ。ドビュッシーのピアノ曲のアナリーゼやピアノの演奏技術や演奏論に関する長い説明はクラシックファンである私には面白く読めたが、そうでは無い読者には少々冗長で退屈するのではないか?で、ミステリーとしてのトリックに関しては、私は見事に引っかかり、騙されました。
もう一冊、「どこかでベートーヴェン」(宝島社)も読んでみた。こちらも私は「死体」についてのトリックが見抜けず、やられました。よくもまあ、こんな意外なトリックを考え付くものだと感心するばかりだ。本筋とは別に作者のベートーヴェン論にも期待したのだが、こちらはアッサリとしていて少々肩透かしを食わされた。それと、探偵役の主人公、岬洋介がちょっと超人的過ぎやしないか?ここでは彼はまだ高校生だぞ。
☆私はミステリーを読んでも真犯人は当てられず、トリックは見抜けず、綺麗に騙される方だ。私にはとても警察官や刑事は勤まらないと思っている。しかし、これは負け惜しみで言うのだが、どうせミステリーを読むなら騙された方が面白いのではないか?「途中で真犯人が分かっちゃったのよね~」「チャチなトリックはすぐ見抜けるんだよ」と自慢する人がいるが、そんなんでミステリーを読んでも面白くあるまいに、と思うが。。。(゚∀゚)
●綾辻行人「十角館の殺人」(講談社文庫)…評価:上の下
海の孤島の古い館で連続殺人が…過去に多くのミステリー作家によって書かれて来た古典的な設定だが、綾辻行人のはそれを更に本格化・精密化・複雑化したものだ。私なんぞ、いくら目を凝らして読んでも、頭を必死に働かせても、いっこうにトリックも犯人も分からない。見事に騙されてため息をつくだけ。他の作品を読もうとしたら、ホテル並に部屋が多い館で大人数が登場するような設定なので諦めた。たぶん、スイスの時計技師のごとく精密なトリックが施されているのだろう。館の見取り図を見ただけで目がクラクラした。
●小泉喜美子「血の季節」(宝島社文庫)…評価:中の上
「弁護側の証人」に続いて、幻の名作?が復刊されさっそく読んだ。前作とは全く雰囲気が異なり、こちらはサイコパス的・スリラー的要素が施された物語だ。トリックそのものよりも、アンティークなタッチが楽しめた。
●麻耶雄嵩「隻眼の少女」(文春文庫)…評価:中の上
読者の好みで評価が大きく割れるミステリーでしょ。私は結構楽しめたよ。探偵役は隻眼の女の子。17才くらい。しかも、巫女じゃあるまいし、水干に赤い袴という奇抜なコスチュームで登場。名前は、御陵みかげ、と来た。もう、これだけで「アホくさ!」と思う人もいるだろうね。場所は信州の山深い村。琴折家の家系図が示され、連続殺人が…横溝正史の「悪魔の手鞠唄」「獄門島」かよ。しかし、文章は横溝正史のようなオドロオドロしたものではなく、今風にドライだ。
「バカミス」と割り切れば、なかなか面白いと思うけどね。ストーリーも登場人物もリアリティーとは遠い設定なのに、トリックの方はいやに緻密で理屈っぽくて、その対照がまた不思議な雰囲気を醸し出す。他の作品に「貴族探偵対女探偵」があり、これも面白そうなので手元に置いてある。
●西村京太郎にハマる:「寝台特急殺人事件」「夜行列車殺人事件」(光文社文庫)…評価:中の上
西村京太郎は初期の頃の作品の方が力作が多くて良い。
「寝台特急殺人事件」では、深夜0時前に広島だか岡山近辺を走っていた寝台特急に乗車していた若い女性が、次の日の早朝、多摩川で死体となって発見される…うそだ~!?そんなの有り得ない!となる。
上手いなあ、この展開。読むのが止まらなくなる。
ここで少しネタバレになりますが、枝葉の部分なので問題ないかと。小トリックとして用いられている例から疑問に思った点。長距離列車では時刻表では通過と表示されていても、業務上の必要があって「運転停車」というのがあり、実際には主要駅で1度は停車するシステムになっているとか。これって、フェアじゃないな。だって、これはよほどのコアな鉄道ファンでもなければ一般の読者には知り得ず、想像しようの無いトリックでしょ?
●薬丸岳にハマる:「天使のナイフ」「闇の底」「虚夢」「逃走」 (講談社文庫)「Aではない君と」(講談社)評価:上の下
まさしく、読みだしたら止まらない「ノンストップミステリー」だ。私、久しぶりに夜更かしをしてしまった。
少年法という社会的テーマとミステリーとしてのトリックの意外性の組み合わせが上手い。また、刑法第39条。すなわち、「心神喪失者の行為は、罰しない。」、「2.心身耗弱者は、その刑を減刑する。」という社会的テーマを扱ったりと、薬丸岳のミステリーは社会派推理小説的だが、松本清張よりもっとドロッとしている。遺族や加害者側家族の心の葛藤が強く描かれている。それでいて、展開がスピーディでドラスティックなので退屈するヒマが無い。文章はごく平板な言い回しだから読みやすい。内容がストレートに頭に入って来るので簡単にストーリーの世界に入り込んでしまう。
特に「Aではない君と」は印象に残った。評価:上の中
例えば、
少年「僕はあいつに心を殺されたんだ。それでも殺しちゃいけなかったの?」
吉永「そうだ・・・」
少年「心を殺すのは許されるのに、どうして体を殺しちゃいけないの?」
こんな質問をされたら、大人も考え込んでしまう。重い問いである。
●横山秀夫は中・短編が優れているが、長編も良い。が、弱点もある。
「64(ロクヨン) 」(文春文庫)「震度0」(朝日文庫)…評価:上の下
しかし、同じ長編でも私は両作品よりも「クライマーズハイ」の方がドラマ性とリアリティという点でより優れていると思う。元新聞記者だった経験が良く生かされているので、日航ジャンボ機墜落事故を受けての地方紙の記者達の死に物狂いな取材や報道部門内の争い等、多少は誇張されている感があるにせよ、本物の迫力と臨場感があった。
横山秀夫の長編は最初から3分の2までが特に素晴らしい。「起承転結」で言えば、「起承転」。元新聞記者だから問題提起とその現状をリアルに示す場面が素晴らしいと思う。登場人物が多いのもリアリティを増す長所である。ある意味、「震度0」は横山秀夫の長編の特徴、その長所も短所も良く出ていると思う。
登場人物は某県警本部の本部長と最高幹部4人とその直属部下、そして、家族。実に多い。それだけ、出世に汲々とする幹部達の姿や、部署間の凄まじい対立がリアルだし、階級社会に生きる夫を持つ妻達の姿も生々しい。実に臨場感がある。
しかし、登場人物それぞれが均等に話し、随所に登場するので、そのうち誰が主役なのか曖昧になる。また、問題とするテーマも複数あるので本筋が分からなくなる場合がある。「震度0」の場合、何の為に阪神大震災をストーリーの背景の一つにしたのか、その必然性が弱いと思う。別に大震災と絡める必要は無かったのではないかと。
で弱点は「結」だ。長編では複数の面白い題材を上手く活用しているのだが、その中には尻切れトンボ的に終わっているものがある。「半落ち」でも、ドナーの問題が中途半端に終わっていた。作者はドナーの問題について何が言いたかったのか不明なのだ。それよりもミステリーの謎の解明の方に行ってしまう
そして、「64(ロクヨン) 」に象徴されるように、最後のトリックが非現実的で少々白ける。これが横溝正史的な物語であればまだ許されるが、作品の3分の2までがリアリティーのある内容なのでトリックがチャチに思えてしまう。
そのような短所があったとしても、十分にお釣りが来る程に面白く、読み応えがあるのが横山秀夫の長編だ。
私の主観では、横山秀夫は今野敏と並ぶ警察ミステリーの名手と思う。
●今野敏「去就: 隠蔽捜査6 」(新潮社)。評価:上の中
登場人物の一人ひとりに味があり、会話の随所に味があり、竜崎署長の家族のシーンも味があり、無駄な箇所が全く無い!私は特に竜崎署長が好きだが、その妻にも魅力を感じ始めている。彼女こそ本当の意味での良妻賢母だよ。
今野敏の「隠蔽調査シリーズ」(新潮文庫)は超おススメだよ!!
2016.10.07 |
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【私は図書館や図書室が苦手】
私の欠点です。あるいは贅沢病の一種です。節約意識に欠けるのでしょう。少なくとも、高校時代から図書館で勉強するのが苦手でした。あのシーンとした雰囲気が圧迫感や閉塞感となり、読書や勉強に集中出来なくなるのです。むしろ、公園や駅のベンチ、ホテルのロビー、喫茶店、多摩川土手のような「雑音」のある場所の方が不思議と集中出来るのです。自宅で読書や勉強をする場合はラジオやステレオで音楽を流していた方が集中出来ます。「無音状態」が苦手なんですね。
本を図書館から借りて読む習慣もありません。贅沢ですよね。返本納期があるのが嫌とか、図書館にいちいち行くのが面倒等の理由もありますが、最大の理由は、私は本に書き込みをするクセがあるからなんです。気になる個所、未知の事柄、良い言葉等に出会うと、几帳面な人であれば手帳やノートに書き込むのでしょうけど、私は横着者なので直接本に書き込みをしたり、印をつけたり、折り目をつけてしまいます。その代わり、本の7割くらいは中古本を買います。文庫本や新書版のような比較的価格の安いものは新品を買うこともありますが、今は本のサイクルが速いので、2週間もすれば大抵の新刊本は2割引き以下で中古本屋さんに出回っているので、そちらで買います。
わたしは変わり者なのかと思っていたら、案外と同じ人がいると分かり、少しホッとしていますが(^_^;)。
以下は私の好みであり、独断と偏見ですから、参考にもならないかもしれません。
【期待はずれだったミステリー本】
「仮面病棟」(実業之日本社文庫)…評価→下の中。
最近は特に目立つ印象があるのですが、本の帯に「怒涛のドンデン返し!!」「ラスト3ページで涙腺崩壊!!」「著者渾身の最大傑作!!」等の大げさなコピーがやたらと躍っています。実際に読むと、ちっとも涙腺など崩壊しませんし、ドンデン返しは期待外れでひっくり返る場合が多いし、最大傑作どころか凡作でしかないものが多いです。
で、「仮面病棟」も著者が医師とて、海堂尊の「ジェネラル・ルージュ」並みの期待をしましたがガッカリ。設定もトリックもリアリティが無いのでドッチラケ。むしろ、これはマンガかよ、って感じ。いや、おちゃらけたマンガ系のミステリーやSFなら、それはそれで私は好きです。しかし、この本はどうにも中途半端だ。
奥田英朗「ナオミとカナコ」…評価→下の上。
単行本のカバーデザインがおしゃれだったことと、私が愛読している随筆家の中野翠さんが推していたので久しぶりに奥田英朗のミステリーを読みました。最初は面白そうな気配がありましたが、中国人の女社長が登場して来た頃から私の熱は冷めて行きました。ダメですよ。日本人の目に映る旧態依然としたステレオタイプの中国人を描いては。これもマンガか?
「ナオミとカナコ」はテレビドラマ化されましたが、こういうのはドラマにしたら面白いかもしれませんね。奥田英朗の「最悪」「邪魔」を読んだ時の評価は「中の下」くらいでした。それなりに面白さはありますが、やたら長い上に内容が陰惨で暗いので読んでいて憂鬱になってしまった覚えがあります。それ以来、読まなくなりましたが、これで奥田英朗の本とはオサラバです。
大沢有昌「雨の狩人 - 狩人シリーズ・4」…評価→下の上。
私は「新宿鮫シリーズ」の大ファンだったのですが、5シリーズ目くらいから質の低下を感じてやめました。
いいですか?鮫島刑事だったか誰かは忘れましたが、どこかの道路から公園を通り過ぎ、目的のアパートに辿りつくまでにやたらと細かい描写で十数ページを費やしている箇所がありました。それが後々の何かの伏線にでもなっているのであればまだしも、そうではないのです。あのねえ、純文学じゃなくてハードボイルド系なんだから、もっと展開の速さが必要でしょうに。ただのページ稼ぎだよ。ウンザリ。そして、「雨の狩人」にもウンザリ。これで大沢有昌の本とはオサラバです。
【私がオサラバしたミステリー作家】
海堂尊…なまじ、「チームバチスタ」で華々しいデビューを飾った分だけ、後が苦しくなったか。田口・白鳥シリーズは3作目「ジェネラル・ルージュ」を最後に、それ以降はグッと密度が下がった。退屈。
森村誠一…「人間の証明」「野性の証明」以下、何冊か読みましたが、この人はストーリーよりも文章そのものがネチネチとイヤラシク暗いのでやりきれない。(例外はある)
宮部みゆき…社会派ミステリー「火車」やSF系の「龍は眠る」「レベル7」「蒲生邸事件」までは楽しめたけど、「理由」で期待外れとなり、「模倣犯」はただ水ぶくれしただけの内容の大長編に辟易。やめた。
純文学や風俗文学の世界だけではなく、ミステリーの世界も大長編を書かないと大物作家として評価されない傾向があるのでしょうか?しかし、私の知る限り、大長編ものはその半分以下の量で済む内容を水ぶくれさせているだけに思えます。松本清張といえども、大長編は凡作だ。「砂の器」などは、原作よりも映画の方が出来映えが遥かに上だ。
東野圭吾…私が高校生の頃からずっと愛読していました。講談社文庫の「卒業」「放課後」「学生街の殺人」などの「学園もの」に魅了されて。以後、「片想い」「白夜」「秘密」「トキオ」と次第に長編傾向になっても面白くて読み続けましたが、「容疑者Xの献身」でついに疲れてやめた。東野圭吾の作品が劣化したからではなく、単に私の方が飽きたのです。それに、東野圭吾は多作なので追い付けない。私の関心や好みが他に増えた、という理由もあります。
【期待を裏切らなかったミステリー本】
ジェフリー・ディーヴァー「スキン・コレクター」…評価→上の下。
最初に「静寂の叫び」を読んで、ギャッボン!と驚かされ、次に「ボーン・コレクター」を読んで、アギャーン!とノックアウトされて以来、ディーヴァーのファンになっています。リンカーン・ライムシリーズはほとんど全て読みましたが、どれも満足。「スキン・コレクター」も内容の密度や展開の面白さ、知的好奇心を刺激してくれる点で期待を裏切りませんでした。かなりの長編ですし、筆致が細かいので読む人によってはウザイと思うかもしれませんが、私には面白いです。リンカーン・ライムと公私とも良きパートナーであるアメリア・ドナヒュー巡査とのコンビも相変わらず良い。
以前に、ミステリー短編集の「クリスマス・プレゼント」を読みましたが、こちらも高質な短編が目白押しで満足度は高かったです。ジェフリー・ディーヴァーはミステリーの天才じゃないかしら?誉め過ぎかな。
桜木紫乃「硝子の葦」「無垢の領域」(新潮文庫)…評価→中の上。
桜木紫乃の顔写真を見て、「あ、桐野夏生に似ている」と思いました。良く見るとまったく違うのですが、お二人とも非常に理知的な女性という印象です。で、理知的な女性の小説はえてして暗いんですよ。桐野夏生がまさにそうでして、「柔らかな頬」「グロテスク」「OUT」と読んで、タッチがどうにも暗くてこれ以上は読む気が失せました。
で、上記の2作もタッチが暗いのですが、何でもないような箇所にハッとさせられる感性の鋭さと文章の上手さがあり読ませます。おそらく何度も推敲を重ね完成度を高めた小説と思います。さほど長編でないのも疲れなくて良い。
たとえば、「無垢の領域」では、
「…突き放しているわけでも、諦めているわけでもない。怜子自身は、自分がそうした生活に対する女性的な細やかさを持っていないせいだと思っている。秋津母子の生活を支えていることも、彼の妻という立場も、どこか他人事のように感じている。一緒に暮らす人間に抱く距離を、最近は縮めようと思わなくなった…」
のように。
桜木紫乃は不思議な魅力がありそうです。また機会を見て他の作品も読んでみたい。
shige様ご推奨?の小泉喜美子「弁護側の証人」(集英社文庫)…評価→中の上。
なんせ、今から五十年以上も前に書かれたミステリーなので、内容的にやや古めかしさを感じます。使われたトリックも。しかし、これはミステリーの古典として楽しめば良いのです。
その上で、小泉喜美子独特のエモーショナルな文章のタッチを味わい、楽しもう。トリックは…秘密ネ。
これ以上はネタバレになるのでよすわ。
【今もオサラバ出来ないミステリー作家】
松本清張…初期の頃の短編や、「黒い画集」の中編は今も手元にあり、再読すると改めて面白い発見があります。短編の「声」ななどは、もしかすると、横山秀夫の短編、「顔」に影響を与えているんじゃないかしら?
梓林太郎…マイナーな方の作家かもしれませんし、トリックなど取り立ててどうってこともないのですが、川を題材にした「茶屋次郎シリーズ」を楽しんでいます。「多摩川殺人事件」「信濃川殺人事件」「隅田川殺人事件」など。海や山を題材にしたミステリーは珍しくないですが、川は珍しい。
川を河口から源流まで辿る旅は好奇心を刺激しますし、ロマンティックです。若いころに私ですら、不完全ですが、多摩川と信濃川(千曲川)については、河口から源流近くまで、断続的な遡行ではあっても、試みたことがあります。電車やバスやレンタカーを使って、ズルをしていますが(^_^;)。
「茶屋次郎シリーズ」は時々テレビドラマ化され、ベテラン俳優の橋爪功さんが良い味を出していますね。
山村美沙…京都に住んでいた作家で、京都を舞台にしたミステリーが多いですね。私はどうも京都ものには目が無いです。「舞妓シリーズ」とか。今でも中古本屋で山村美沙の「京都もの」を見つけると、つい買ってしまいます。で、山村美沙のトリックは、そんなにバカにしたものでもありません。
【読む度に、評価が上昇するミステリー作家】
新田次郎…エッ?新田次郎はミステリーも書いていたの?ですか。そうなんです。「山岳ミステリー」です。松本清張の「黒い画集」に「遭難」という北アルプスを舞台にしたミステリーがあります。これはたぶん、山岳ミステリーに先鞭をつけたものだと思います。さすがは松本清張です。
新田次郎は読む度にますます好きになって来ます。
山岳小説と山岳ミステリーについては、別途あらためて記事にする予定です。
2016.05.03 |
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