いくつかの灰色のピクセルから誕生したモバイルゲームは、21 年の時を経て、映像も音声も美しい、マルチプレーヤーで楽しめる高性能ゲームに成長しました。大人になると、一般に物事はより複雑化します。成功に至る道筋はいくつもあるとは言え、競争が激しくなり、周囲の関係者からのプレッシャーも徐々に、しかし確実に増してきます。
モバイルゲームの状況もそれと同じです。ユーザーは長年にわたりさまざまなジャンルで質の高い体験を享受してきたため、その期待はますます高まっています。モバイルゲーム業界は年率 13% で成長しており(出典: 世界のゲーム市場に関する Newzoo の最新レポート、2018 年 10 月)、多くのデベロッパーが注目を浴びようとしています。この市場では、ユーザーに「発見」されるゲームを開発することが依然としてデベロッパーの重要な任務です。開発サイクルが長期化しコストが膨れ上がる中、より慎重で周到な戦略が求められるような場合は特にそう言えます。
モバイルゲーム マーケティングの進化
そこで出番となるのがマーケティングです。実際のゲーム開発とは切り離して行われることが多かったマーケティング活動やそのためのツールは、かつてないほど重要性を増しています。今日では、ユーザーに発見されるのが早いほど利益になり、それがゲームの収益見通しを大きく左右します。そのため、最近のゲーム開発では、マーケティング担当者があらゆる場面で重要な役割を果たしています。
ゲームのリリース前には、さまざまなテーマに対するユーザーの関心をデベロッパーが評価します。その際利用するのは、対応する広告のテストやクリック率の分析です。リリース時には、短期間での新規ユーザー獲得に適した媒体を吟味して、そのメディアを利用します。リリース後にマーケティングが果たすべき重要な役割は、離脱したユーザーを復活させることと、ターゲットを絞ったキャンペーンを実施することです。そこで、ゲームプレイの最新情報や時期に応じた LiveOps を活用し、ユーザー トラフィックの流れを途切れさせないようにします。
さらに、ゲームが成功を収めるためには、高いユーザー維持率と収益力も必要です。マーケティング戦略が一流だからといって平凡なゲームを改良できるわけではありませんが、平凡なマーケティング戦略は一流のゲームに悪影響を与えます。
ゲームの企画、リリース、運用においてマーケティングが不可欠な要素となる中で、デベロッパーは、ゲーム発見の機会を広げるためのチャネルを継続的に見直して最適化しています。そのためのアプローチとしてよく話題になるのが、YouTube などのプラットフォームでインフルエンサーと提携することです。
デベロッパーと話をすると、インフルエンサー マーケティングの価値についてさまざまな意見が聞かれます。懐疑的な人は、インフルエンサー キャンペーンの管理には労力がかかることや、体験プレイ広告の方が測定しやすいことを指摘します。一方、実際のゲームプレイの様子を見られる動画は、ユーザーの目を引く独特の効果があり、ゲーム コミュニティの構築に一役買うものだという肯定的な意見もあります。
「インフルエンサーを活用すると、広告ネットワークや DSP を介して設定できる一般的なターゲットに入らない人々にリーチできます。また、インフルエンサーのおかげで長期的な見通しが立ちます。コンテンツは通常、インフルエンサーのチャンネルで無期限に配信されるためです。」— Kolibri Games マーケティング ディレクター、Volkmar Reinerth 氏
こうした議論は続いているものの、インフルエンサーは今や無視できない存在だという点では合意が得られそうです。2018 年のモバイルゲーム デベロッパーの投資額は 2 億 5,000 万ドルを超え、今後数年にわたり予算が増加していくという明らかな兆候も見られました(2018 年、Statista/Morar HPI for Rakuten Marketing)。
では、この業界がインフルエンサー マーケティングの真の価値を理解できるよう、賛成派と反対派の双方に行動を起こさせるための有意義なデータを提供したらどうなるでしょうか。データを基に熟慮したアプローチをインフルエンサー マーケティングに適用することで、マーケティング全体への投資を最大限に活かせるとしたらどうでしょう。マーケティングは、ゲームの開発および運用のあらゆる段階で重要な役割を担うようになりました。今日の市場環境でゲームが全体的な成功を収めるためには、インフルエンサーを起用する意義を理解することがカギとなりそうです。
ゲーム デベロッパーに適したインフルエンサー マーケティングとは
Google Play では、デベロッパーの皆様が Android でビジネスの持続的な成功を収められるよう支援したいと考えています。そこでこの 1 年間は、インフルエンサー マーケティングの有効性の研究を行ってきました。その際常に念頭に置いていたのは、これがデベロッパーの利益を左右する課題であり、チャンスでもあるということです。
作業を進めるにあたり、インフルエンサー マーケティングに関して関心のある分野を特定する目的で、開発形態やビジネスの規模を問わず多数のデベロッパーに話を聞きました。すると、デベロッパー コミュニティではいくつもの疑問が湧いていることがわかりました。
たとえば、適切なインフルエンサーを選ぶにはどうすればよいか、提携するうえで最善の方法はどれか、デベロッパーはどこから手を付けるべきか、といった疑問です。その中でも特に大きな課題が 1 つありました。それは、インフルエンサーの動画をどのように管理し、効果を測定すればよいのか、というものでした。こうした動画の費用対効果を明確に理解していないと、たとえパフォーマンス改善の秘策を知っていても十分に活かせません。
最近のインフルエンサー マーケティングにはかかわっていないという方のために、多数のデベロッパーがインフルエンサーの動画の効果をどのように評価しているか、改めてご紹介しましょう。通常、YouTube クリエイターは、プロモーションするゲームへのリンクを動画の説明欄に掲載します。
このリンクは、それをクリックしたユーザー集団によるインストールや収益をトラッキングしています。ただし、すべてのユーザーがこのトラッキング リンクをクリックするわけではないと考えるのが妥当です。その動画を見ながら Google Play の検索バーに直接ゲームの名前を入力するというユーザーもいれば、動画を見ているのとは別のデバイスで後からゲームをダウンロードするユーザーもいるでしょう。
あるいは、動画をフルスクリーン表示にしているために、リンクがクリックできない状態になっていることもあり得ます。そのうえ、APK のサイズが大きくなり続けているため、スマートフォン ユーザーの多くは安定した Wi-Fi に接続できるまで待とうとするものです(
この状況を回避する方法をぜひ採用してみてください )。要するに、トラッキング リンクは評価の手がかりにはなるものの、インフルエンサーの動画を見てゲームをダウンロードしプレイしたユーザー、さらには課金にまで至ったユーザーを完全に把握できる方法とは言えません。
こうしたトラッキング リンクの限界に対応するために始まったのが、トラッキングできないユーザーについての仮説を立てることでした。インフルエンサーを利用するプラットフォームと代理店は、キャンペーン データや業界関係者からの情報を基にベンチマークと推定値を用意し、より複雑なモデルを考案しました。そこで Google では、推定値から実際のデータに発展させることで、インフルエンサーの効果測定のレベルアップを図ることにしました。
トラッキング リンクの限界を超えるのは小さな一歩のように見えますが、実際デベロッパーにとっては大きな前進です。この方法をうまく機能させるため、ログインした Android ユーザーから成る匿名化された集団と、これらのユーザーが 2 つの Google サービス(YouTube と Google Play)でどのように行動したかを Google は調査しました。調査データが適切であること、多様なユースケースに幅広く応用できることが不可欠だったため、規模の異なる複数のデベロッパーに連絡を取り、インフルエンサーがゲームをプレイしている動画の提供を依頼しました。ゲームのライフサイクルの各段階に注目し、フォロワー数の多いインフルエンサーと少ないインフルエンサーの両方の動画を調べるためです。
その後、独自の測定モデルを試験的に運用して、ユーザーがインフルエンサーの動画を見た後に Google Play で実際にゲームをダウンロードしたかどうかを検証します。また、ダウンロードしたユーザーの数がトラッキング リンクで測定したときと比べて増えている可能性はあるか、つまり、今まで誰も証明できなかった数値の上昇が見られるかどうかを調べることにしました。
そこで、総視聴回数が 6,000 万回を超える 250 以上のゲーム動画について、動画視聴後のユーザーの行動を調査した後、その調査記録と、各デベロッパーのトラッキング リンクのデータを比較しました。
なんと、YouTube でインフルエンサーの動画のトラッキング リンクをクリックしたユーザー 1 人に対し、リンクはクリックしなかったものの視聴後 4 日以内にゲームをダウンロードしたユーザーはその 4 倍もいたのです。
この大きなユーザー グループを、「トラッキングされていない多数派」と呼ぶとしましょう。インフルエンサーと提携する価値を自社の CFO に示す必要があるすべてのマーケティング担当者にとって、4 倍という数字は朗報です。4倍というのは平均かつ控えめな数字で、ゲームや動画の内容によっては、10 倍にさえなり得ます。また、この調査全体のアトリビューション期間を 4 日間と定義しましたが、平均すると、全ユーザーの 50% が視聴後 4 時間以内にゲームをダウンロードしていることがわかりました。つまり、インフルエンサーの動画は明らかに、従来のトラッキング リンクよりもはるかに多くのユーザーにリーチして、即座に行動を起こさせているのです。
「当社では長年にわたり、インフルエンサー キャンペーンによるパフォーマンス向上効果を観察、測定しています。この効果を追跡しやすくなったことは、非常に有意義です。」— Space Ape Games CMO、Mickey Elimelech 氏
バイラル効果の影響力と限界
効果はそれだけではありません。この調査の実施中に、参加者であるデベロッパーとその結果について議論する中で、インフルエンサーを活用する価値についてさらなる見識が得られました。そのひとつが
波及効果 です。ゲーム デベロッパーの多くは、さまざまなタイトルを管理することで収益を分散させ、タイトル間の相互プロモーションを促すというポートフォリオ戦略を実施しています。
通常、これらのゲームでは同じオーディエンスをターゲットとしているため、離脱しそうなユーザーを別のゲームに誘導することができます。シェアの奪い合いはデベロッパー自身のゲーム同士で起きるだけです。さて、この調査で 250 以上のゲーム動画を分析した結果、1 つのゲームをプレイする動画を公開すると、ほぼ同じカテゴリに属する同種のゲームのインストール数が増えることが判明しました。インフルエンサーの動画を見てゲーム A をダウンロードしたユーザーが 10 人いたとすると、同時期における類似のゲーム B のインストール数が 1 件増えると予想できるのです。
しかも、これは先ほどと同じく平均値であり、IP が非常によく似ているケースではゲーム A とゲーム B の比率が 10:3 になることもありました。複数のゲームで同じオーディエンスをターゲットにするポートフォリオを運用しているものの、インフルエンサー マーケティングをまだ試したことがないデベロッパーにとって、これは注目に値するデータと言えるでしょう。
ユーザー行動に関するこれらの分析結果とは別に、この調査ではインフルエンサーの活用の仕方についても理解を深めることができました。同じクリエイターが短期間に複数回登場した場合、必ずしもダウンロード数が増えるわけではないことが明らかになったのです。あるインフルエンサーがモバイルゲームを紹介する動画のプロモーションを行った後、そのインフルエンサーが登場する 2 本目の動画を 12 か月以内に公開した場合、後者でのゲームのダウンロード数は前者のときと比べて最大で 3 分の 1 まで減少していました。
これは、まったく予想外の結果というわけでもありません。それでも、インフルエンサー戦略を立てるときは、いわゆる「
ダウンロード疲れ 」を念頭に置いておく必要があります。この状況は、クリエイターのコミュニティではすでにゲームがダウンロードされていたか、あるいはダウンロードが選択されなかったということです。第一印象を与えられるチャンスは一度しかなく、モバイルゲーム業界では特にそれが当てはまります。では、インフルエンサーの活用は 1 回限りにすべきなのでしょうか。インフルエンサーをインストール数増加のためのチャネルと考えるのであれば、そうすることをおすすめします。
ただし前述のように、ゲームのリリースは、モバイルゲーム ビジネスの半分にすぎません。本当の課題はその運用を成功させることであり、既知のコミュニティへの再アプローチは、そのための有効な手段となり得ます。人生でもよくあるように、そこには正解も不正解もありません。ただタイミングと理由だけが重要なのです。
「こうした分析結果をすべてまとめることで、有望なインフルエンサー戦略の形が見えてきて、ひいては成功につながります。」— Kolibri Games マーケティング ディレクター、Volkmar Reinerth 氏
インフルエンサーが効果をもたらす理由
ここで、「理由」という大きな問題に再び直面します。つまり、インフルエンサーを活用する理由です。デベロッパー コミュニティ全体がこのオピニオン リーダー達とのコラボレーションを強く望んでいるという事実もさることながら、先に取り上げたように正当な理由はいくつもあります。
いずれも胸を躍らせるのに十分な理由ではありますが、ひとつ忘れてはならないのは、インフルエンサーの動画はアプリ インストール キャンペーンではないことです。アプリ インストール キャンペーンの場合は、キャンペーンの目標、入札戦略、クリエイティブを選択するだけで十分な結果が得られます。しかし、インフルエンサーとの提携ではそうはいきません。提携する適切なクリエイターの選択、関係構築、ビジネス条件の交渉、最終的な動画の準備には、より多くの時間を割く必要があります。
こうした明らかな違いにもかかわらず、パフォーマンス マーケティング担当者の多くはこの 2 種類のキャンペーンを同列に評価しています。また、広告費用対効果の比較においては、インフルエンサー マーケティングに収益性があるとは考えていません。そこで皆さんに質問です。
あなたは、測定が困難であるものの欠かすことのできない側面も考慮して、本当に価値全体を評価しようとしているでしょうか。あらゆるマーケティング活動は、それ自体で、あるいは他の要素と組み合わせて(テレビと検索の組み合わせは今でも典型例です)、利益を生むことが求められます。ユーザー コミュニティを通じてつながっているユーザーの長期的価値は、他の形態のパフォーマンス マーケティングを実施した場合より大きいと言えます。
トラッキングされていない多数派によるダウンロード数がトラッキング リンクの 4 倍になるうえに、インフルエンサーは貴社のゲームまたは貴社そのものに個性を与えてくれる存在です。つまり、今の世の中、大規模な新しい未知の IP をインフルエンサーの協力なしに立ち上げることは、結果として無謀な試みに終わる可能性があります。
「新しいシューティング ゲーム、FRAG をリリースするにあたり、当社では YouTube でインフルエンサーと提携しています。潜在的なプレーヤーが、このプラットフォームで動画の視聴に多くの時間を費やしているからです。私たちは、このゲームをあらゆる人に見つけてほしいのです。」— Oh BiBi CRO、Solène Delooz 氏
それでもインフルエンサーとの提携をためらうという方は、
インフルエンサーを使ったキャンペーンを実施する際に陥りやすい誤り を回避するとよいでしょう。YouTube でクリエイターとのコラボレーションをテストする簡単な方法は、狭い範囲で影響力を持つインフルエンサー、いわゆる「マイクロ インフルエンサー」と提携することです。
この種のクリエイターはチャンネル登録者数が比較的少人数(1 万~20 万人程度)で、たいてい提携の話には非常に前向きです。ゲーム デベロッパー側のメリットとしては、コストの節約、リスクの抑制、コミュニティをゼロから構築できるチャンスなどが挙げられます。デベロッパーとクリエイターが共にユーザーベースを拡大できれば理想的です。
「初めてのゲームのプロトタイプ開発を始めた最初の週から「インフルエンサー的」な人たちの話を聞きました。彼らは、ゲームを一緒にプレイしたりハイレベルな競争をしたりする友人から成るグループを形成していました。その過程で何人かのクリエイターにも会いました。YouTube のチャンネル登録者数が 10 万人になると大騒ぎした時代です。彼らと連絡を取り続けた結果、当社の「インフルエンサー戦略」は過去 7 年にわたり自然な形で発展しました。現在一緒に仕事をしているメガ インフルエンサーの中には、最初の頃のマイクロ インフルエンサーもいます。単なるチャンネルとの取引にとどまらず、何年も続く関係を構築し、純粋に興味を持って、インフルエンサーの成功に投資する取り組みなのです。」— Space Ape Games CMO、Mickey Elimelech 氏
ゲーム デベロッパーは、マイクロ インフルエンサーとの交渉は有名クリエイターとのコラボレーションと比べると有利に進められることに気付くでしょう。Google の調査データによると、すべてのインフルエンサーの動画をチャンネル登録者数ベースで分類すると、マイクロ インフルエンサーの CPI は、チャンネル登録者数が多いクリエイターと比較して最大で 3 分の 1 程度に抑えられます。
これは、トップ クリエイターとの提携関係を解消すべきだという意味ではありません。そこには他の利点も存在するからです。チャンネル登録者数が多いインフルエンサーはコミュニティ エンゲージメントの規模も大きく、他のクリエイターに良い影響を与えたり、コンバージョンに至ったユーザーの LTV を高めたりすることもあります。一方、インフルエンサーを起用することに慣れていない、あるいはインフルエンサー マーケティングのリスクを回避したいデベロッパーにとって、マイクロ インフルエンサーは最適な提携先です。
リスクの回避と言えば、ゲームの開発プロセスにインフルエンサーを採用するタイミングが早いほど、彼らが本当にプレイしてみたいと思えるゲームになる可能性が高くなります。フィードバックは貴重なものであり、インフルエンサーからのものであればなおさらです。これまでに何度も目にしたのは、リリースからすでに 2 年が経過し、動画での公開には適さないゲームをプレイするようインフルエンサーを説得しようとするデベロッパーの姿です。
時代の先端を行く実況可能なゲームを作るためには、開発の初期段階でインフルエンサーとの関わりを持つことをおすすめします。そうすれば、早いうちからインフルエンサーのフィードバックを聞けるだけでなく、インフルエンサー自身もベータ版テスターであることを誇りに思って、最新の状況を自分のコミュニティに伝えることができます。
その好例と言えるのが、
Space Ape Games による「Rumble League」でのインフルエンサーの起用 です。ロンドンを拠点とするこのデベロッパーは、プロ ゲームチームの
Team Secret をオフィスに招待し、ゲーム「Rumble League」について紹介した後、プロチームとデベロッパー自身が参加する小さなトーナメントを開催しました。
このゲームとゲームの成否に関する評価はまだ公開されていませんが、Space Ape Games はすでに、リリースの数か月前から高度なマーケティング戦略を展開しています。これは、リリース当日のみに注力してきた従来のモバイルゲーム デベロッパーにとって、学ぶべきところの多い事例です。
「開発プロセスのごく早い段階でインフルエンサーに参加してもらうことで、ゲームが視聴者に受け入れられるとインフルエンサーが思う理由をよく理解できるようになり、それに合わせてゲームを作ることができる、と私たちは確信しています。インフルエンサーのためにゲームを作るということではありません。むしろ、何百万というファンを惹きつけるための手がかりとしてインフルエンサー自身が何に注目するかを理解することが目的です。ゲームの開発プロセスや展望に関する知識が深まるほど、インフルエンサーは自らのチャンネルをレベルアップできるチャンスを確実につかめるようになります。」— Space Ape Games CMO、Mickey Elimelech 氏
最後に: すべてのマーケティング担当者が知っておくべきこと
今回の調査から得られた有益な情報やおすすめの方法が、インフルエンサーを活用する本当の価値を理解するうえで皆さんのお役に立てば幸いです。デベロッパーの規模の大小を問わず、インフルエンサーと関わりを持つべき理由はいくつもありますが、この記事を読んだ後も特に忘れないでいただきたいことを最後に 4 つ挙げておきます。
トラッキングされていない多数派 : 大部分のユーザーがゲームをダウンロードするのはインフルエンサーの動画を見た後です(インフルエンサーの動画を見た後で、説明欄のリンクはクリックしていません)。トラッキングされていない多数派によるダウンロード数が、トラッキング リンクの 4 倍になることを考慮しましょう。
波及効果: ゲームのプロモーションにインフルエンサーを起用した場合、類似のゲームのダウンロード数も増えることに注目しましょう。類似ゲームのダウンロード数が増える割合は、元のゲームの 10 分の 1 です。なお、競合ゲームのインストールを促す可能性もある点に注意してください。
ダウンロード疲れ : インストールのチャンスは最初の 1 回限りです。1 人のインフルエンサーが同じゲームをプレイする 2 本目の動画を 12 か月以内に公開すると、最初の動画と比べてダウンロード数が最大で 3 分の 1 まで減少する場合があります。
マイクロ インフルエンサー : インフルエンサーを試しに使ってみたい場合は、チャンネル登録者数が 20 万人以下と比較的少人数のインフルエンサーに依頼しましょう。マイクロ インフルエンサーの CPI は、著名なクリエイターと比較して最大で 3 分の 1 程度に抑えられます。
以上のポイントを考慮に入れることにより、ゲームのリリース前、リリース時、リリース後のどのタイミングでも、ユーザーを獲得し惹きつけるためのマーケティング投資の効果を最大化できます。結局のところ、大人になったときに重要なのは、最終的に結果を出すことです。この先の 21 年も、モバイルゲーム業界で大きく成長しましょう。
Reviewed by Kentaro Meiseki (Gaming Partnerships, APAC)
いくつかの灰色のピクセルから誕生したモバイルゲームは、21 年の時を経て、映像も音声も美しい、マルチプレーヤーで楽しめる高性能ゲームに成長しました。大人になると、一般に物事はより複雑化します。成功に至る道筋はいくつもあるとは言え、競争が激しくなり、周囲の関係者からのプレッシャーも徐々に、しかし確実に増してきます。
モバイルゲームの状況もそれと同じです。ユーザーは長年にわたりさまざまなジャンルで質の高い体験を享受してきたため、その期待はますます高まっています。モバイルゲーム業界は年率 13% で成長しており(出典: 世界のゲーム市場に関する Newzoo の最新レポート、2018 年 10 月)、多くのデベロッパーが注目を浴びようとしています。この市場では、ユーザーに「発見」されるゲームを開発することが依然としてデベロッパーの重要な任務です。開発サイクルが長期化しコストが膨れ上がる中、より慎重で周到な戦略が求められるような場合は特にそう言えます。
モバイルゲーム マーケティングの進化
そこで出番となるのがマーケティングです。実際のゲーム開発とは切り離して行われることが多かったマーケティング活動やそのためのツールは、かつてないほど重要性を増しています。今日では、ユーザーに発見されるのが早いほど利益になり、それがゲームの収益見通しを大きく左右します。そのため、最近のゲーム開発では、マーケティング担当者があらゆる場面で重要な役割を果たしています。
ゲームのリリース前には、さまざまなテーマに対するユーザーの関心をデベロッパーが評価します。その際利用するのは、対応する広告のテストやクリック率の分析です。リリース時には、短期間での新規ユーザー獲得に適した媒体を吟味して、そのメディアを利用します。リリース後にマーケティングが果たすべき重要な役割は、離脱したユーザーを復活させることと、ターゲットを絞ったキャンペーンを実施することです。そこで、ゲームプレイの最新情報や時期に応じた LiveOps を活用し、ユーザー トラフィックの流れを途切れさせないようにします。
さらに、ゲームが成功を収めるためには、高いユーザー維持率と収益力も必要です。マーケティング戦略が一流だからといって平凡なゲームを改良できるわけではありませんが、平凡なマーケティング戦略は一流のゲームに悪影響を与えます。
ゲームの企画、リリース、運用においてマーケティングが不可欠な要素となる中で、デベロッパーは、ゲーム発見の機会を広げるためのチャネルを継続的に見直して最適化しています。そのためのアプローチとしてよく話題になるのが、YouTube などのプラットフォームでインフルエンサーと提携することです。
デベロッパーと話をすると、インフルエンサー マーケティングの価値についてさまざまな意見が聞かれます。懐疑的な人は、インフルエンサー キャンペーンの管理には労力がかかることや、体験プレイ広告の方が測定しやすいことを指摘します。一方、実際のゲームプレイの様子を見られる動画は、ユーザーの目を引く独特の効果があり、ゲーム コミュニティの構築に一役買うものだという肯定的な意見もあります。
「インフルエンサーを活用すると、広告ネットワークや DSP を介して設定できる一般的なターゲットに入らない人々にリーチできます。また、インフルエンサーのおかげで長期的な見通しが立ちます。コンテンツは通常、インフルエンサーのチャンネルで無期限に配信されるためです。」— Kolibri Games マーケティング ディレクター、Volkmar Reinerth 氏
こうした議論は続いているものの、インフルエンサーは今や無視できない存在だという点では合意が得られそうです。2018 年のモバイルゲーム デベロッパーの投資額は 2 億 5,000 万ドルを超え、今後数年にわたり予算が増加していくという明らかな兆候も見られました(2018 年、Statista/Morar HPI for Rakuten Marketing)。
では、この業界がインフルエンサー マーケティングの真の価値を理解できるよう、賛成派と反対派の双方に行動を起こさせるための有意義なデータを提供したらどうなるでしょうか。データを基に熟慮したアプローチをインフルエンサー マーケティングに適用することで、マーケティング全体への投資を最大限に活かせるとしたらどうでしょう。マーケティングは、ゲームの開発および運用のあらゆる段階で重要な役割を担うようになりました。今日の市場環境でゲームが全体的な成功を収めるためには、インフルエンサーを起用する意義を理解することがカギとなりそうです。
ゲーム デベロッパーに適したインフルエンサー マーケティングとは
Google Play では、デベロッパーの皆様が Android でビジネスの持続的な成功を収められるよう支援したいと考えています。そこでこの 1 年間は、インフルエンサー マーケティングの有効性の研究を行ってきました。その際常に念頭に置いていたのは、これがデベロッパーの利益を左右する課題であり、チャンスでもあるということです。
作業を進めるにあたり、インフルエンサー マーケティングに関して関心のある分野を特定する目的で、開発形態やビジネスの規模を問わず多数のデベロッパーに話を聞きました。すると、デベロッパー コミュニティではいくつもの疑問が湧いていることがわかりました。
たとえば、適切なインフルエンサーを選ぶにはどうすればよいか、提携するうえで最善の方法はどれか、デベロッパーはどこから手を付けるべきか、といった疑問です。その中でも特に大きな課題が 1 つありました。それは、インフルエンサーの動画をどのように管理し、効果を測定すればよいのか、というものでした。こうした動画の費用対効果を明確に理解していないと、たとえパフォーマンス改善の秘策を知っていても十分に活かせません。
最近のインフルエンサー マーケティングにはかかわっていないという方のために、多数のデベロッパーがインフルエンサーの動画の効果をどのように評価しているか、改めてご紹介しましょう。通常、YouTube クリエイターは、プロモーションするゲームへのリンクを動画の説明欄に掲載します。
このリンクは、それをクリックしたユーザー集団によるインストールや収益をトラッキングしています。ただし、すべてのユーザーがこのトラッキング リンクをクリックするわけではないと考えるのが妥当です。その動画を見ながら Google Play の検索バーに直接ゲームの名前を入力するというユーザーもいれば、動画を見ているのとは別のデバイスで後からゲームをダウンロードするユーザーもいるでしょう。
あるいは、動画をフルスクリーン表示にしているために、リンクがクリックできない状態になっていることもあり得ます。そのうえ、APK のサイズが大きくなり続けているため、スマートフォン ユーザーの多くは安定した Wi-Fi に接続できるまで待とうとするものです(この状況を回避する方法をぜひ採用してみてください )。要するに、トラッキング リンクは評価の手がかりにはなるものの、インフルエンサーの動画を見てゲームをダウンロードしプレイしたユーザー、さらには課金にまで至ったユーザーを完全に把握できる方法とは言えません。
こうしたトラッキング リンクの限界に対応するために始まったのが、トラッキングできないユーザーについての仮説を立てることでした。インフルエンサーを利用するプラットフォームと代理店は、キャンペーン データや業界関係者からの情報を基にベンチマークと推定値を用意し、より複雑なモデルを考案しました。そこで Google では、推定値から実際のデータに発展させることで、インフルエンサーの効果測定のレベルアップを図ることにしました。
トラッキング リンクの限界を超えるのは小さな一歩のように見えますが、実際デベロッパーにとっては大きな前進です。この方法をうまく機能させるため、ログインした Android ユーザーから成る匿名化された集団と、これらのユーザーが 2 つの Google サービス(YouTube と Google Play)でどのように行動したかを Google は調査しました。調査データが適切であること、多様なユースケースに幅広く応用できることが不可欠だったため、規模の異なる複数のデベロッパーに連絡を取り、インフルエンサーがゲームをプレイしている動画の提供を依頼しました。ゲームのライフサイクルの各段階に注目し、フォロワー数の多いインフルエンサーと少ないインフルエンサーの両方の動画を調べるためです。
その後、独自の測定モデルを試験的に運用して、ユーザーがインフルエンサーの動画を見た後に Google Play で実際にゲームをダウンロードしたかどうかを検証します。また、ダウンロードしたユーザーの数がトラッキング リンクで測定したときと比べて増えている可能性はあるか、つまり、今まで誰も証明できなかった数値の上昇が見られるかどうかを調べることにしました。
そこで、総視聴回数が 6,000 万回を超える 250 以上のゲーム動画について、動画視聴後のユーザーの行動を調査した後、その調査記録と、各デベロッパーのトラッキング リンクのデータを比較しました。なんと、YouTube でインフルエンサーの動画のトラッキング リンクをクリックしたユーザー 1 人に対し、リンクはクリックしなかったものの視聴後 4 日以内にゲームをダウンロードしたユーザーはその 4 倍もいたのです。
この大きなユーザー グループを、「トラッキングされていない多数派」と呼ぶとしましょう。インフルエンサーと提携する価値を自社の CFO に示す必要があるすべてのマーケティング担当者にとって、4 倍という数字は朗報です。4倍というのは平均かつ控えめな数字で、ゲームや動画の内容によっては、10 倍にさえなり得ます。また、この調査全体のアトリビューション期間を 4 日間と定義しましたが、平均すると、全ユーザーの 50% が視聴後 4 時間以内にゲームをダウンロードしていることがわかりました。つまり、インフルエンサーの動画は明らかに、従来のトラッキング リンクよりもはるかに多くのユーザーにリーチして、即座に行動を起こさせているのです。
「当社では長年にわたり、インフルエンサー キャンペーンによるパフォーマンス向上効果を観察、測定しています。この効果を追跡しやすくなったことは、非常に有意義です。」— Space Ape Games CMO、Mickey Elimelech 氏
バイラル効果の影響力と限界
効果はそれだけではありません。この調査の実施中に、参加者であるデベロッパーとその結果について議論する中で、インフルエンサーを活用する価値についてさらなる見識が得られました。そのひとつが波及効果 です。ゲーム デベロッパーの多くは、さまざまなタイトルを管理することで収益を分散させ、タイトル間の相互プロモーションを促すというポートフォリオ戦略を実施しています。
通常、これらのゲームでは同じオーディエンスをターゲットとしているため、離脱しそうなユーザーを別のゲームに誘導することができます。シェアの奪い合いはデベロッパー自身のゲーム同士で起きるだけです。さて、この調査で 250 以上のゲーム動画を分析した結果、1 つのゲームをプレイする動画を公開すると、ほぼ同じカテゴリに属する同種のゲームのインストール数が増えることが判明しました。インフルエンサーの動画を見てゲーム A をダウンロードしたユーザーが 10 人いたとすると、同時期における類似のゲーム B のインストール数が 1 件増えると予想できるのです。
しかも、これは先ほどと同じく平均値であり、IP が非常によく似ているケースではゲーム A とゲーム B の比率が 10:3 になることもありました。複数のゲームで同じオーディエンスをターゲットにするポートフォリオを運用しているものの、インフルエンサー マーケティングをまだ試したことがないデベロッパーにとって、これは注目に値するデータと言えるでしょう。
ユーザー行動に関するこれらの分析結果とは別に、この調査ではインフルエンサーの活用の仕方についても理解を深めることができました。同じクリエイターが短期間に複数回登場した場合、必ずしもダウンロード数が増えるわけではないことが明らかになったのです。あるインフルエンサーがモバイルゲームを紹介する動画のプロモーションを行った後、そのインフルエンサーが登場する 2 本目の動画を 12 か月以内に公開した場合、後者でのゲームのダウンロード数は前者のときと比べて最大で 3 分の 1 まで減少していました。
これは、まったく予想外の結果というわけでもありません。それでも、インフルエンサー戦略を立てるときは、いわゆる「ダウンロード疲れ 」を念頭に置いておく必要があります。この状況は、クリエイターのコミュニティではすでにゲームがダウンロードされていたか、あるいはダウンロードが選択されなかったということです。第一印象を与えられるチャンスは一度しかなく、モバイルゲーム業界では特にそれが当てはまります。では、インフルエンサーの活用は 1 回限りにすべきなのでしょうか。インフルエンサーをインストール数増加のためのチャネルと考えるのであれば、そうすることをおすすめします。
ただし前述のように、ゲームのリリースは、モバイルゲーム ビジネスの半分にすぎません。本当の課題はその運用を成功させることであり、既知のコミュニティへの再アプローチは、そのための有効な手段となり得ます。人生でもよくあるように、そこには正解も不正解もありません。ただタイミングと理由だけが重要なのです。
「こうした分析結果をすべてまとめることで、有望なインフルエンサー戦略の形が見えてきて、ひいては成功につながります。」— Kolibri Games マーケティング ディレクター、Volkmar Reinerth 氏
インフルエンサーが効果をもたらす理由
ここで、「理由」という大きな問題に再び直面します。つまり、インフルエンサーを活用する理由です。デベロッパー コミュニティ全体がこのオピニオン リーダー達とのコラボレーションを強く望んでいるという事実もさることながら、先に取り上げたように正当な理由はいくつもあります。
いずれも胸を躍らせるのに十分な理由ではありますが、ひとつ忘れてはならないのは、インフルエンサーの動画はアプリ インストール キャンペーンではないことです。アプリ インストール キャンペーンの場合は、キャンペーンの目標、入札戦略、クリエイティブを選択するだけで十分な結果が得られます。しかし、インフルエンサーとの提携ではそうはいきません。提携する適切なクリエイターの選択、関係構築、ビジネス条件の交渉、最終的な動画の準備には、より多くの時間を割く必要があります。
こうした明らかな違いにもかかわらず、パフォーマンス マーケティング担当者の多くはこの 2 種類のキャンペーンを同列に評価しています。また、広告費用対効果の比較においては、インフルエンサー マーケティングに収益性があるとは考えていません。そこで皆さんに質問です。
あなたは、測定が困難であるものの欠かすことのできない側面も考慮して、本当に価値全体を評価しようとしているでしょうか。あらゆるマーケティング活動は、それ自体で、あるいは他の要素と組み合わせて(テレビと検索の組み合わせは今でも典型例です)、利益を生むことが求められます。ユーザー コミュニティを通じてつながっているユーザーの長期的価値は、他の形態のパフォーマンス マーケティングを実施した場合より大きいと言えます。
トラッキングされていない多数派によるダウンロード数がトラッキング リンクの 4 倍になるうえに、インフルエンサーは貴社のゲームまたは貴社そのものに個性を与えてくれる存在です。つまり、今の世の中、大規模な新しい未知の IP をインフルエンサーの協力なしに立ち上げることは、結果として無謀な試みに終わる可能性があります。
「新しいシューティング ゲーム、FRAG をリリースするにあたり、当社では YouTube でインフルエンサーと提携しています。潜在的なプレーヤーが、このプラットフォームで動画の視聴に多くの時間を費やしているからです。私たちは、このゲームをあらゆる人に見つけてほしいのです。」— Oh BiBi CRO、Solène Delooz 氏
それでもインフルエンサーとの提携をためらうという方は、インフルエンサーを使ったキャンペーンを実施する際に陥りやすい誤り を回避するとよいでしょう。YouTube でクリエイターとのコラボレーションをテストする簡単な方法は、狭い範囲で影響力を持つインフルエンサー、いわゆる「マイクロ インフルエンサー」と提携することです。
この種のクリエイターはチャンネル登録者数が比較的少人数(1 万~20 万人程度)で、たいてい提携の話には非常に前向きです。ゲーム デベロッパー側のメリットとしては、コストの節約、リスクの抑制、コミュニティをゼロから構築できるチャンスなどが挙げられます。デベロッパーとクリエイターが共にユーザーベースを拡大できれば理想的です。
「初めてのゲームのプロトタイプ開発を始めた最初の週から「インフルエンサー的」な人たちの話を聞きました。彼らは、ゲームを一緒にプレイしたりハイレベルな競争をしたりする友人から成るグループを形成していました。その過程で何人かのクリエイターにも会いました。YouTube のチャンネル登録者数が 10 万人になると大騒ぎした時代です。彼らと連絡を取り続けた結果、当社の「インフルエンサー戦略」は過去 7 年にわたり自然な形で発展しました。現在一緒に仕事をしているメガ インフルエンサーの中には、最初の頃のマイクロ インフルエンサーもいます。単なるチャンネルとの取引にとどまらず、何年も続く関係を構築し、純粋に興味を持って、インフルエンサーの成功に投資する取り組みなのです。」— Space Ape Games CMO、Mickey Elimelech 氏
ゲーム デベロッパーは、マイクロ インフルエンサーとの交渉は有名クリエイターとのコラボレーションと比べると有利に進められることに気付くでしょう。Google の調査データによると、すべてのインフルエンサーの動画をチャンネル登録者数ベースで分類すると、マイクロ インフルエンサーの CPI は、チャンネル登録者数が多いクリエイターと比較して最大で 3 分の 1 程度に抑えられます。
これは、トップ クリエイターとの提携関係を解消すべきだという意味ではありません。そこには他の利点も存在するからです。チャンネル登録者数が多いインフルエンサーはコミュニティ エンゲージメントの規模も大きく、他のクリエイターに良い影響を与えたり、コンバージョンに至ったユーザーの LTV を高めたりすることもあります。一方、インフルエンサーを起用することに慣れていない、あるいはインフルエンサー マーケティングのリスクを回避したいデベロッパーにとって、マイクロ インフルエンサーは最適な提携先です。
リスクの回避と言えば、ゲームの開発プロセスにインフルエンサーを採用するタイミングが早いほど、彼らが本当にプレイしてみたいと思えるゲームになる可能性が高くなります。フィードバックは貴重なものであり、インフルエンサーからのものであればなおさらです。これまでに何度も目にしたのは、リリースからすでに 2 年が経過し、動画での公開には適さないゲームをプレイするようインフルエンサーを説得しようとするデベロッパーの姿です。
時代の先端を行く実況可能なゲームを作るためには、開発の初期段階でインフルエンサーとの関わりを持つことをおすすめします。そうすれば、早いうちからインフルエンサーのフィードバックを聞けるだけでなく、インフルエンサー自身もベータ版テスターであることを誇りに思って、最新の状況を自分のコミュニティに伝えることができます。
その好例と言えるのが、Space Ape Games による「Rumble League」でのインフルエンサーの起用 です。ロンドンを拠点とするこのデベロッパーは、プロ ゲームチームの Team Secret をオフィスに招待し、ゲーム「Rumble League」について紹介した後、プロチームとデベロッパー自身が参加する小さなトーナメントを開催しました。
このゲームとゲームの成否に関する評価はまだ公開されていませんが、Space Ape Games はすでに、リリースの数か月前から高度なマーケティング戦略を展開しています。これは、リリース当日のみに注力してきた従来のモバイルゲーム デベロッパーにとって、学ぶべきところの多い事例です。
「開発プロセスのごく早い段階でインフルエンサーに参加してもらうことで、ゲームが視聴者に受け入れられるとインフルエンサーが思う理由をよく理解できるようになり、それに合わせてゲームを作ることができる、と私たちは確信しています。インフルエンサーのためにゲームを作るということではありません。むしろ、何百万というファンを惹きつけるための手がかりとしてインフルエンサー自身が何に注目するかを理解することが目的です。ゲームの開発プロセスや展望に関する知識が深まるほど、インフルエンサーは自らのチャンネルをレベルアップできるチャンスを確実につかめるようになります。」— Space Ape Games CMO、Mickey Elimelech 氏
最後に: すべてのマーケティング担当者が知っておくべきこと
今回の調査から得られた有益な情報やおすすめの方法が、インフルエンサーを活用する本当の価値を理解するうえで皆さんのお役に立てば幸いです。デベロッパーの規模の大小を問わず、インフルエンサーと関わりを持つべき理由はいくつもありますが、この記事を読んだ後も特に忘れないでいただきたいことを最後に 4 つ挙げておきます。
トラッキングされていない多数派 : 大部分のユーザーがゲームをダウンロードするのはインフルエンサーの動画を見た後です(インフルエンサーの動画を見た後で、説明欄のリンクはクリックしていません)。トラッキングされていない多数派によるダウンロード数が、トラッキング リンクの 4 倍になることを考慮しましょう。
波及効果: ゲームのプロモーションにインフルエンサーを起用した場合、類似のゲームのダウンロード数も増えることに注目しましょう。類似ゲームのダウンロード数が増える割合は、元のゲームの 10 分の 1 です。なお、競合ゲームのインストールを促す可能性もある点に注意してください。
ダウンロード疲れ : インストールのチャンスは最初の 1 回限りです。1 人のインフルエンサーが同じゲームをプレイする 2 本目の動画を 12 か月以内に公開すると、最初の動画と比べてダウンロード数が最大で 3 分の 1 まで減少する場合があります。
マイクロ インフルエンサー : インフルエンサーを試しに使ってみたい場合は、チャンネル登録者数が 20 万人以下と比較的少人数のインフルエンサーに依頼しましょう。マイクロ インフルエンサーの CPI は、著名なクリエイターと比較して最大で 3 分の 1 程度に抑えられます。
以上のポイントを考慮に入れることにより、ゲームのリリース前、リリース時、リリース後のどのタイミングでも、ユーザーを獲得し惹きつけるためのマーケティング投資の効果を最大化できます。結局のところ、大人になったときに重要なのは、最終的に結果を出すことです。この先の 21 年も、モバイルゲーム業界で大きく成長しましょう。
Reviewed by Kentaro Meiseki (Gaming Partnerships, APAC)