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97年から書き続けたweb日記を、このたびブログに移行。
「エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド」
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Amazonから届き、この週末で一気に読了。

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著者の竜さんは、以前「日記猿人」で「がりゅう日記」を公開されていた事があり、昔からネットでの知り合い。アメリカ駐在中に、ドクター・エンドーと一緒にシリコンバレーでお会いした事もある。懐かしいなあ。

この著作は、海外駐在からアメリカのIT企業に転職し、ソフトウェアエンジニアとして、Amazonを含む複数のIT系企業でエンジニアとして働いて来た現役ITエンジニアである竜さんが、アメリカで職を得るにはどうするか、面接を切り抜けるには、コーディング面接を切り抜ける具体的なコツ、日米で働くことの違いやそのメリット・デメリットなどを自分の具体的な経験から極めてフェアにかつ詳細に指南するというもの。

高度成長期の昔から、生半可な海外体験を引き合いに出して「海外では~」「アメリカでは~」と上から目線で外国礼賛し日本を卑下する手合は「出羽の守」と呼ばれて陰で馬鹿にされて来たが、この著作にはまったくそんな胡散臭さが無いのが驚異的。

ハッタリも自慢話も、上から目線もアメリカ礼賛も一切無く、アメリカでソフトウェア・エンジニアとして働く良い点も悪い点も、実体験を引いて、率直にリアルに語られているのが実に読み応えのあるところ。ちょうど部活の優しい先輩が、後輩に問わず語りに自分の知っている事を教えているような印象さえあるが、これはやはり、著者の温厚で誠実な性格と、柔軟な知性に裏打ちされているのだと感心する。実物にお会いしても、その通りの印象だった。twitterもそうだが、文章や著作には、本当に人間性が出るのだなあ。

私自身の滞米生活は駐在員としてだったし、財務系の仕事であったから、この本で具体的に指南されているIT系のスキルそのものには門外漢なのだが、アメリカで働くということ、アメリカで人を採用し評価するということ、外国人として働くということ、アメリカの転職や解雇事情等については、私自身の実体験からも著者の書いている事にまったく異論は無い。良い事についても悪い事についても、実にフェアに両面を懇切丁寧に説明しようとする態度がまた素晴らしいところ。これからアメリカでIT系の(あるいは他の職種でも)職を探そうとする人には、必ず座右に置くべき良き参考図書と言えるだろう。

昔、「10年後に食える仕事、食えない仕事」という本を読んで感想を書いた。その本では仕事を縦軸に知的集約度を表す「スキルタイプ」、横軸に日本人としての強みを活かせるかどうかという「ジャパンプレミアム」を置き、知的集約度が低く、日本人でなくても出来る左下エリアの仕事は、ドンドンと沈み込んで行く「重力の世界」であり、この仕事を日本でやっていては将来が無いと説く。

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私自身はこの分類に得心して、社内で海外要員への研修の講師など務める時には必ず引用し、「駐在員として成果出す為にはローカルスタッフで代替できる仕事をやってはいけない」と教えるようにしているのだが、それは本当の意味でグローバルな仕事である左上の象限、「無国籍ジャングル」は、世界中から「Best & Brightest」な人材が集まり、殴り合いをしながら血みどろで勝ち残って行く大変に生き残りが困難なエリアだから。

しかし、アメリカに渡り現地で職を得て、既に「重力の世界」から垂直に脱出して安定軌道に乗り、「無国籍ジャングル」でキチンと評価を得て生きている日本人の優秀な男がいるということを、この著作で確認できるのは、同じ日本人として誇らしいことだ。勿論このエリアは甘い「夢の世界」ではない。過酷な競争もリストラもあり、このエリアの真の上位に到達するのは日本人には至難の技。著者はその事についてもキチンと冷静に言及している。

面接の場であっても一発で雰囲気を変えるジョークの重要性、子供をバイリンガル環境で育てる良い点と悪い点、時として牙も剥くぞと相手に知らしめる自己主張の重要性、同僚とのフランクな付き合い方など、随所にある、アメリカで企業人として生きて行くための様々な知恵についても、アメリカでの同様の体験がある人なら深く頷いて同意できるものばかりだし、これから渡米を考える人には大いに参考になるだろう。

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