2010年1月17日(日)
METライブビューイングを見てきました。 演目は、プッチーニ作曲 【トゥーランドット】 昨日、2010年1月16日(土)より、公開中
上映期間:1月16日(土)~1月22日(金) 上映時間:2時間56分(休憩2回)実際は予告編も含め3時間10分ありました。 観客も意外に多く、会場の半分ほど150人くらいは入っている様子。 熱烈なオペラファンが結構居るんですね!
指揮は、若手のアンドリス・ネルソンス 演出・美術は、映画からオペラまで幅広く活躍するフランコ・ゼフィレッリ
主役・タイトルロールの中国の王女トゥーランドット姫には、今や世界のプリマであるマリア・グレギーナ。 これに挑戦するカラフ王子にマルチェッロ・ジョルダーニ この二人の主役に匹敵する脇役・リューにマリーナ・ポプラフスカヤ
第一幕では、トゥーランドットは姿だけ見せますが歌は無し。 これに代わってカラフの父・ティムール王(サミュエル・レイミー)と 召使いリュー(マリーナ・ポプラフスカヤ)が開演後すぐに現われて歌います。 そのリューの歌い出しワンフレーズ数秒を聴いただけでマリーナ・ポプラフスカヤのうまさを感じさせます。 リューはカラフのために命を捧げる自己犠牲と悲劇の役柄で、観客の共感は主役のトゥーランドットよりもむしろリューの方に向かうので、配役はどのようなプロダクションを見てもトゥーランドットと勝るとも劣らない歌い手を当てます。 トゥーランドットが2幕や3幕で恐怖の力強さで歌い上げるのと比べて、リューはピアニッシモで4階バルコニーまで聴こえる歌い方をしなければならず、テクニック的にも難しい役柄ですが、マリーナ・ポプラフスカヤはこれを絶妙なコントロールで演じていました。 Intermissionでは、それぞれの歌手へのインタビューがあるのですが、マリア・グレギーナが、リューのピアニッシモに絶賛を送っていました。
第二幕では、トゥーランドットの三つの謎掛けにカラフが自らの首を掛けて挑戦するのをティムール王とリューはもちろん、トゥーランドットの下僕であるピン・ポン・パン(幼児番組のようですが、こちらの命名が先)までもがトゥーランドットの冷酷さを訴えて、謎への挑戦を断念するよう説得する。 その上、周りの忠告に聞く耳を持たず、「挑戦のドラ」を鳴らしてしまい、皇帝の前に進み出たカラフに対して皇帝(チャールズ・アンソニー)までもが、「この無謀な挑戦で血が流れるのは見たくない、この場を去れ」と忠告するのであった。
その中国皇帝を演ずるチャールズ・アンソニーは、METで50周年を祝ってもらったという御高齢の方で、出演回数ももうすぐ3千回に迫っているベテランなのですが(すなわち80歳前後なのでしょうが)、深いゆったりしたバスで悠々たる声を聞かせました。
その謎掛けはカラフが「希望」「血潮」「トゥーランドット」と答えることで勝利(ビンチェロ)します。
第三幕では、カラフがその「勝利」を歌い上げる「誰も寝てはならぬ」(トリノ五輪での荒川静香の選曲で有名)で始まります。 カラフがトゥーランドットに逆に掛けた「私の名前を言い当てたら命を捧げよう」という謎を解こうとトゥーランドットは下僕に命じてリューを拷問に掛けますが、一瞬の隙を突いてリューは下僕の刀を抜き取り自害します。 プッチーニは、この「リューの死」の場面で自らの命が尽きたので、トスカニーニはこの場面で一度指揮棒を置いたと言われていますが、今回の演出では停まることなく、弟子の補作を最後まで演奏しました。 そういうイキサツを知っているためか、「リューの死」のあとは何か如何にも付け足しのように感じてしまいました。私的にはハッピーエンドで終わる補作よりも、「マダム・バタフライ」のように「リューの死」の悲劇のまま終わった方が良いのではと思います。
上映会場と時刻 北海道 札幌シネマフロンティア 011-209-5400 12:30 千 葉 MOVIX柏の葉 04-7135-6900 10:30 東 京 新宿ピカデリー 03-5367-1144 10:00 東 京 東劇 03-3541-2711 19:00 東 京 MOVIX昭島 042-500-5900 10:30 神奈川 109シネマズ川崎 0570-007-109 11:00 愛 知 ミッドランドスクエアシネマ 052-527-8808 10:30 大 阪 なんばパークスシネマ 06-6643-3215 18:30 神 戸 109シネマズHAT神戸 0570-011-109 11:00 福 岡 福岡中洲大洋 092-291-4058 10:00
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************************************* あらすじ、スタッフ、配役
【松竹METライブビューイング】メルマガより内容紹介 トゥーランドットとは、古来から伝わる物語をペティが編纂した「千一日物語」の中に収められた「カラフ王子と中国の王女の物語」にある、謎掛けに当らないと殺してしまうというペルシアの国トゥーランのお姫様のこと。
アダミとシモーニが書いたオペラ台本は、ヴェネツィアの劇作家カルロ・ゴッツィがそのお話を元に戯曲化した1762年の喜劇(コメディア・デラルテ)をベースとしている。
おとぎ話は辛辣な風刺を盛り込み人々を戒めるもので、時に残酷である。そのため、お姫様をものにするため、女奴隷の犠牲も顧みずものにする謎の青年カラフの行動に、どうもしっくり来ない方もいるかもしれない。 しかし設定を変えると、これが今まさに現実にも起きていることと同じであることが判る。 それは近年の不況をもたらした金融問題にも当てはまるし、秘書が責任をかぶり当人は大義を全うするため邁進するというような話とも同じである。 つまり、主人公カラフをヒーローとして考えず、彼の出世のため犠牲となって死んで行ったリューの悲劇を誰に当てはめるのかと考えると、それは社会批判として感慨深いものと思えるのでは...。
ちなみに1924年4月にファシスト党が誕生しているが、体調不良だったプッチーニは「リューの死」の場面を書き終えたところで作品を完成する事なく11月29日にこの世を去っている。 プッチーニの息子トニオはフランコ・アルファーノにその後の部分の補足を依頼し、26年スカラ座で初演されるのだが、指揮をしたトスカニーニは「リューの死」のところで一旦演奏を止めて黙祷した。
一方、1981年の映画「Yes, Giorgio」ではオペラ・スターに扮したルチアーノ・パヴァロッティがMETで《トゥーランドット》のアリア「誰も寝てはならぬ」を歌い上げて大喝采を受け、アンコールに応えて再び歌い始めると不倫相手のヒロインが仕事の支障にならぬよう立ち去って身を引くというエンディングであった。 この映画での驚愕の熱唱で、パヴァロッティといえば「誰も寝はならぬ」がトレードマークとなり、後にワールド・カップやオリンピックで歌ったのはご存知の通り。 1987年3月にゼフィレッリによって《トゥーラドット》が1927年のMET初演以来久しぶりに新演出されこととなった際、カラフを演じたのはゼフィレッリ演出の《オテロ》《トスカ》で絶賛されたプラシド・ドミンゴだった。 指揮はそのシーズンに音楽監督に就任したジェイムズ・レヴァイン。 この3人は映画版『椿姫』で組んだチームであるが、この上演ではその映画にも負けないくらい贅を尽くした豪華なセットとなって話題となり、TV放映されて注目を集めた。 以来、20年以上この演目はMETの名物として頻繁に上演されてきた。 ゼフィレッリは同じ演目を各地の歌劇場で微調整しながら上演しているが、この演目に限っては、METだけのもので、門外不出。 凝りに凝った自身のデザインによる中国風セットはHD映像に改めて収めるに値するものである。 ツアー公演で持ち出せないもう一つの主役であるこの豪華なセットはHD映像で眼を楽しませてくれるであろう。
梅園房良(フリーライター)
Giacomo Puccini "TURANDOT" MET上演: 2009年11月7日 指揮……………アンドリス・ネルソンス 演出・美術……フランコ・ゼフィレッリ 衣装………………………アンナ・アンニ ………………………ダダ・サリゲリ 照明………………ギル・ウェックスラー 振付…………………………チャン・チン 再演演出…………デイヴィッド・ニース 出演 トゥーランドット…マリア・グレギーナ リュー………マリーナ・ポプラフスカヤ カラフ……マルチェッロ・ジョルダーニ ティムール………サミュエル・レイミー ピン……………ジョシュア・ポプキンズ パン…………トニー・スティーヴンソン ポン…………エドゥアルド・ヴァルデス 皇帝……………チャールズ・アンソニー 役人………………………キース・ミラー 公式サイト http://www.shochiku.co.jp/met/
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