2020年8月2日(日)
きのうの西日本新聞紙面から
【妖艶な社交場守りたい】 九州唯一のストリップ劇場 女性経営者奮闘 西日本新聞:米村勇飛 - 8月1日(土) 6:00
(引用)
九州で唯一残るストリップ劇場「A級小倉劇場」(北九州市小倉北区)の経営者、木村恵子さん(69)は、新型コロナウイルスによる経営危機を乗り越えようと、約2カ月間の休業を経て、6月から感染対策を講じて劇場を再開した。ただ、売り上げは以前の半分以下に。風俗業ゆえに国の持続化給付金も受けられない。それでもストリップ劇場を「社交場」と考えている木村さん。「こういう場が少しは残っていいと思う」と明るさを忘れない。
7月中旬の平日午後5時。マスク姿の男たちの真剣なまなざしは、ショッキングピンクのライトが照らす舞台上の踊り子に向かっていた。妖艶さを増した裸体を見つめる観客は約20人。木村さんは「コロナ以前の約半分。なかなか人出が戻らんですね」と笑う。
元々ストリップ業界におり、1970年代から福岡市・中洲のストリップ劇場「DX博多」では経営に携わっていた。80年ごろには系列店として、喫茶店を改装してA級小倉劇場をオープンし、経営を任された。
業界華やかなりし時代。木村さんらによると、今ではストリップ劇場は全国に約20軒だが、当時は各地に約300軒がひしめき合い、福岡市と小倉にも3軒ずつあるほどだったという。「競争は激しく最初は知名度もない。1日にお客さんが数人というのもざらだった」と振り返る。
従業員総出で街中に宣伝ポスターを徹夜で張ったり、ビラで呼び込んだり。人気の踊り子も舞台に呼んだ。一方で一番重視したのはトイレ掃除だった。「ここは非日常の場。気持ちよく楽しんでもらうためには、不愉快な思いはさせられない」。地道な経営は評判を呼び、九州内外から客が来るようになった。
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新型コロナの感染拡大は、かつてない経営危機をもたらした。緊急事態宣言前から休業し、5月末まで2カ月間も劇場を閉めた。木村さんは「この業界に50年いるけど、こんなことは初めて」と驚きを隠せない。
6月からは感染対策をして営業を再開。入場時の手指消毒や検温、マスク着用などを徹底している。幕あいに座席などを消毒するほか、劇場内のドアも開け放して換気。最大50~60人ほど収容可能な座席も間隔を空け、今では30人が精いっぱいだという。
全国ではショーパブや劇場でクラスター(感染者集団)が発生している。木村さんは「うちみたいなところがクラスターになったら、もうやっていけない」と危機感をあらわにする。
十数年通っているという大分県の男性(56)は「感染防止が叫ばれる中、こういう場所に通っているのはたたかれる。劇場を存続させるためにも予防策には協力する」と話す。
国の持続化給付金は「風俗業は除く」という規定で援助が受けられなかったという。木村さんも「一度も滞りなく税金を払っているのに、釈然としない」と厳しい表情だ。
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木村さんはストリップ劇場を社交場に例える。「お客さんはここに来ると、みんなが子どもの顔に戻って、純粋に体を見て楽しむし、客同士で仲良くなる人もいるから」という。
営業再開後、常連客からは九州唯一のストリップ劇場の再開を喜ぶ声を聞いた。「また長期間閉めることがあったらもう駄目。でも、それまではなんとか九州唯一の劇場をもたせていきたい」。ショーのBGMが漏れ聞こえてくる事務所で、あっけらかんと笑った。 (米村勇飛)
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