2019年4月9日(火)
この前の日曜日(4月7日)、ももちパレスで福岡市民劇場四月例会 【裏長屋騒動記】(前進座公演)を観ました。
反故紙など紙類を引き取り紙漉き屋に売って小銭を稼ぐ『屑屋』 (江戸時代のチリ紙交換業者)が、困窮する武士から仏像を買い それを骨董趣味の裕福な武士(放蕩息子?)に転売することから 始まる悲喜劇で、『寅さん』の山田洋次さんの脚本。
なので、笑わせ處満載。
困窮する武士は傘貼りのアルバイトで糊口を凌ぎ、娘は針仕事で 父親を助けている。 もう売るものが無くなった親子は先祖伝来の小さい観音菩薩立像 を屑屋に売ろうとする。 しかし、屑屋は親の遺言で骨董には手を出すなと言われており 何度も断るのだが、遂に見兼ねて二百文(もん)で購入。
屑籠に入れて街中を歩いていると武士(時放蕩息子)が仏像を見染めて 三百文で購入する。 購入した仏像を水洗いしている時に、仏像の中に何か入っている ことに気付き、調べてみると何と五十両もの大金が転がり出てくる。
これを着服しないところが当時の武士の矜持か?
屑屋を呼び戻し、元の所有者(貧乏武士)に返して来いと・・・
飛んだ騒動に巻き込まれそうになり断るのだが、人の良い屑屋は 仲介の労を取る羽目に。
貧乏武士に五十両を持って行くと、渡りに船と受け取るのでは無く 売り払ったものに何が入っていようとそれは買った方の物!と こちらも武士の矜持を守る。(武士は食わねど高楊枝)
何度か行ったり来たりするが、とうとう耐え兼ねて直接話し合って くださいと勇気を持って声を出す。
放蕩息子の武士が貧乏武士を尋ねると娘さんだけ! ひと言二言話すうちに一目惚れしてしまい・・・
色々あって第3幕でハッピーエンドになると言う話。
第2幕は、無くても良い場面で、取って付けたような話。
貧乏武士の隣のヤクザ風の浪人が魚屋からタダで巻き上げた フグを食べて死んでしまい、その兄弟分が家主に葬儀代と 酒肴を要求すると言う話で、落語の『らくだ』の潤色。
休憩二回も含めて3時間半の長丁場であり、第2幕は省略しても 話は成り立つだろう。
最後に二百文で買った観音菩薩立像は、骨董趣味の領主が購入する ことになり、放蕩息子の武士が三百と言うと、領主の会計担当者が やむなく三百で購入することを決めたが、それは三百文では無く 三百両だった!と言う落ちのついたハッピーエンドで大団円!
劇団【前進座】公式サイト『裏長屋騒動記』より
【あらすじ】 江戸のとある裏長屋に出入りする紙屑屋(かみくずや)の久六が、浪人朴斎(ぼくさい)とその娘お文(ぶん) に懇願されて二百文で買い付けた古い仏像。 それを蔵屋敷から声をかけてきた若侍の作左衛門に三百文で売ったところ、仏像の腹の中から出てきたのは誰のものともわからない大金五十両! ところが、朴斎も作左衛門も、この金は自分のものではないから受け取れない、と強情に言い張り、久六は裏長屋と蔵屋敷を、五十両を持たされたまま行ったり来たりで、良心の大ピンチ…。 また同じ裏長屋の"らくだの馬"という鼻つまみ者は、今日も傍若無人のふるまいの末、フグにあたって死んでしまいます。 馬を訪ねてきた兄貴分の半次は、馬の弔いにかこつけてご馳走にありつこうと、久六を巻き込んで強欲大家の家まで乗り込み、目を覆う大騒ぎ。 そんなある日、作左衛門は藩主綱正から呼び出しを受けます。 朴斎を訪ねたものの留守居のお文に受け取りを断られ、未だ行き場のない例の五十両でのお咎めかと恐れていると、思いがけない展開が…。
【スタッフ・キャスト】
スタッフ 監修・脚本 : 山田 洋次 演 出 : 小野 文隆 装 置 : 高木 康夫 照 明 : 桜井 真澄 音 楽 : 杵屋 勝彦, 杵屋 佐之義 音楽監修 : 杵屋 佐之忠
役 名 : 配 役 紙屑屋の久六 : 嵐 芳三郎 緋鯉の半次 : 藤川 矢之輔 赤井綱正 : 河原崎國太郎 朴斎 : 武井 茂 高木作左衛門 : 忠村 臣弥 朴斎の娘 お文 : 今井鞠子
【山田 洋次 さんのひと言】
「僕は高校時代、山口県の田舎にいました。戦後のあの時代は山口県にも前進座の巡回公演があって、シエークスビアの『ベニスの商人』をやるんだ、うわー、観たいなー"と思ったけど、観られなかった。前進座は当時すごい人気があって、切符が手に入らなかったんです。 その後、前進座が独立プロダクションとして映画『箱根風雲録』(監督・山本薩夫)を製作した時、僕は大学の映画サークルにいて、この映画を支援するために各大学の映画サークルを動員して大勢でエキストラにかけつけたものです。
僕は、本当に笑える楽しい喜劇を前進座が創造してくれるといいなあと思います。今、日本人は笑いたいんだけど、気持ちよく笑わせることほど難しいことはない。それは、笑わせる方が、観客と同じような生きる辛さを共有していないといけないからです。そして、前進座にはその資格があると思うんです。」
-2011年4月放送 NHK教育テレビ「芸能百花繚乱~前進座八十年の軌跡~」インタビューより
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今回初めて、前進座と一緒に舞台を創ることになりました。落語の「らくだ」と「井戸の茶碗」をもとに、ある裏長屋で起こる騒動のお話です。五年前にお話しさせていただいたことが、このような形で実現でき、長年の前進座との想い出に新しいへージが追加されることに、わくわくしています。どうぞ、ご見物の時には、舞台の俳優さんと同じ空間で、笑いや喜びを共有して、にぎやかに大声で笑いながらお楽しみください。 (山田洋次)
【関連記事】
山田洋次監督の脚本舞台、関西初上演 前進座が長屋喜劇 朝日新聞:岡田慶子 - 2018年9月21日10時05分
歌舞伎にルーツをもつ劇団「前進座」が、寅さんシリーズで知られる山田洋次と、舞台演劇でタッグを組んだ。山田が監修と脚本を手がけた喜劇「裏長屋騒動記」を来月、関西で初めて上演する。 10月4~10日、大阪・日本橋の国立文楽劇場。8800円など。 (以下略)
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テーマ:演劇
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