初期のガンプラについて、暇つぶし的なネタです。
ガンプラ第1号の1/144ガンダムは、ベストメカコレクションという模型シリーズのNO.4として1980年7月に発売されました。
画像はホビージャパン2020年9月号別冊付録より。
ベストメカコレクションは、バンダイがスポンサードする作品の主役ロボットを単価300円に統一してプラモデル化するシリーズとして1980年にスタートしています。
当初はダイデンジン、ゴッドシグマ、ゴーディアン(ガービン)が発売され、ガンダムは第4弾です。
バンダイ本体(当時のポピー)とは無関係にバンダイ模型が独自に商品化した点で、ガンプラは異色の存在でした。
これは玩具商報1980年7月号掲載のガンプラ発売予告記事より。
この時点では2色成型が予定されています。
ベストメカコレクションの金型はふたつのワクがつながった形状になっています。
それを2種類のプラ素材で成型し、真ん中で切断して異なる色を組み合わせて梱包されています。
画像はゴッドシグマの説明書です。
実際に入っていたパーツは青と黄色が反転したパターンでした。
年少者向けにカラフルな印象にしているのでしょうが、こちらの組み合わせだと塗装はタイヘンですね…
ガンダムもこのやり方を踏襲して2色成型が予定されていたようです。
成型されたままの1/144ガンダムのランナーはこのような状態です。
白とは別にもう1色のプラ素材でこれを成型し、中央で切断して異なる色の組み合わせを作る予定だったことになります。
ではもう1色はどんな色だったのでしょうか。
これはガンプラA(KADOKAWA2002)より、1/144ガンダム設計担当の村松正敏氏の談話です。
白と黄色の2色成型が予定されていたこと、スナップフィットの導入が検討されていたことが語られています。
その場合、こんな状態の2種類の完成品になっていたはずです(画像加工による再現)。
これではいかにもチープトイ然としていて、造形自体の魅力が伝わりにくい感じです。
初めて1/144ガンダムを手にした時の「ホンモノそっくりだ!」という強烈な印象には、成型色選択の微妙な判断も寄与していたことがあらためて実感されます。
なお、ベストメカコレNO.3のゴーディアンは青の単色成型になっています。
これは元の色指定が上腕・太もも以外は青になっていることと、仮に青と白の2色にした場合に頭部・ボディが白になると著しくイメージが異なってしまうことが考慮された結果ではないかと想像します。
また村松談話にあるスナップフィットについては、ダイデンジンのみ通常の小さな接合ピンですが他3種には接着不要を意図する大きなピンが使われています。
成型精度に限界があるせいか接着剤は入っていますが、ゴッドシグマとゴーディアンは接着部分はごくわずかでかなりスナップフィットに近づいています。
しかしガンダムでは大きなピンと小さなピンが混在しており、おそらく設計中にスナップフィットによる簡易性より形状再現によるリアルさを優先する判断がなされたように思えます。
そのガンダムが大ヒットになったため、ガンダム後のベストメカコレはすべて小さなピンで接着必須の仕様になり、同時に玩具的なギミックより形状再現・関節可動が追及されるようになります。
こうした流れで、1/144ガンダムをきっかけとして「リアルロボットプラモデル」という新機軸が誕生することになったようです。
最初の1/144スケールHG・RX-78ガンダムは、ガンプラとしては数少ない公式絶版品になっています。
これはその発売に伴い、小売店などに配布されたと思われるサンプルキットです。
箱のサイズは市販品と同様で、印刷は単色で上面のみ。
旧キット流用の箱絵イラストはシールで貼られています。
画像の現物は中古で入手したので値札などが付いていますが、本来は非売品だったと思われます。
パーツは市販品と同じもののようですが、説明書は簡単なコピー紙一枚になっています。
組み立て図自体は市販品と同じですが順番などは変わっています。
こうしたサンプルキットがどのような基準で制作されていたのかは不明です。
HGガンダムの場合、その内容があまりに先進的だったために周囲に理解されにくく、バンダイ内部でも営業サイドから「300円のガンダムと同じ大きさのキットを1000円で売るなんてとんでもない」という批判があったそうです。
現在ふり返れば的外れな意見ですが、流通・小売段階で同様の誤解が生じるのを防ぐために、とにかく現物を見て納得してもらうためにサンプルキットが制作・配布されたのかもしれません。
発売された90年当時、イロプラ・システムインジェクション・スナップフィットを総動員したHGガンダムは、プラモデルの概念を刷新するような革命的な存在でした。
こちらは絶版前の最終生産版。最終生産を示すシールが貼付されています。
コレクター的な視点ではこれでコンプリートという感じでしょうか。
箱側面を見ると、普及品と最終品では一部デザインが変更されています。
いつごろ変更されたのかは未確認です。
バンダイ模型がグレートマジンガーから始めたロボットプラモデルに対するさまざまな模索の、ひとつの到達点となったのがHGガンダムでした。
その製品内容は5年後にMGへと発展し、現在に続く「ガンプラ」の基礎となっているようです。
機動戦士ガンダムガンプラブームの1981年、バンダイ模型が供給不足に対応するために一時的に国内流通させたものです。
当時は店頭で見たことはなく、入手はほとんどあきらめていたのですが、縁あってひょっこり手元にやってきました(嬉
元々は韓国メーカーによる無許可の複製品だったものをバンダイが差し押さえ、金型に手を加えて正規品にしたそうです。
現物のランナーを国内生産品と比較するとランナー内のパーツ配置が一部異なっています。
また、特に1/144は成型状態がかなり悪いようです。V字アンテナは溶けかかったような状態でパーツ自体が細く小さくなってしまっていますし、脚の付け根のパーツには角度が付いておらずただの十字状になっていたりします。
組み立て図の日付は1/144が1981年5月、1/100は同年9月になっているので、無版権品を改造したのは1/144だけで1/100は当初からバンダイ模型の主導で韓国生産された可能性が考えられそうですが、詳細は不明です。
韓国版といっしょに通常の
1/144ガンダムも入手したのですが、こちらは組み立て図と塗装図が別紙の初期タイプでした(ただしサーベルは4本に改修済み)。1/100の初期タイプ(十字マークがデカール版)はすでに所有しているので、とりあえずガンダムの初期プラモが手元にそろいました。
サーベル2本の1/144最初期版は気長に機会を待とうと思います…
ほかに1/144ガンダムのバリエーションには、塗装済み状態で1988年に発売されたフルカラーモデル(FCM)と、翌89年に箱変えしてシリアルナンバーを加えたガンダム10周年記念版FCMがあります。 これらのFCMは中国生産になっており、上掲の国内版1/144とは別の金型が使用されているようです。
みんなのガンプラ(アスキー・メディアワークス2010)での大下聡氏のインタビューで、
1/144ガンダムには3つの増し型があったと述べられています。また同書の松本悟氏のインタビューではFCM企画時にタイの協力工場を使う予定があったことが語られており、実際にタイ生産版の1/144ガンダムの存在はウェブで確認できます。
こうしたことから、1/144ガンダムの金型はオリジナル1、増し型3、韓国版1、の計5つが存在していたと考えられます(韓国版が増し型に含まれるなら計4つ)。
そのうちひとつはタイへ、ひとつは中国へ運ばれて現地生産に使われたのでしょう。
韓国版はあくまで急場しのぎとすれば、現在国内にはオリジナル含め1~2セットのみが存在しているということになりそうです。
初期ガンプラについては深いマニアの方も多いようなので、より詳しい情報などありましたらご教示いただけたらと思います。
当時のガンプラでほかに気になるものには、すでに絶版の1/250イロプラがあります。
で……
韓国版1/144はベストメカコレナンバーが04になっていますね。
FCMでもガンダムがナンバー4なのはベストメカコレに合わせたのでしょうか?
つなぎ更新です。
合体マシンではないですが、初期のベスト・メカコレクションも4つそろうとうれしいです。
ガンダムの初版はハードルが高いので、画像のガンダムは普及品ですが(^^;
同じベストメカコレでも、初期のダイデンジンとゴッドシグマはそれぞれ変形・合体のギミックを再現しています。
ゴーディアンは関節可動がメインですが脚の付け根は可動せず、黒ヒョウのクリントが付属するなど低年齢向けのオモチャっぽさが残っている印象です。
NO.4のガンダムに至って、初めて関節可動自体が製品の「売り」になって、箱側面にもその旨が明記されています。
1/144ガンダムはガンプラ第1号として有名ですが、ベストメカコレシリーズの商品内容を決定付けたという点でもターニングポイントになっているようです。
なお、ダイデンジン以外は大型の接合ピンが使用されており、このころスナップフィットへのトライが行われていたらしいことがうかがえます。
これは玩具商報1980年7月号掲載のガンプラ新発売情報。
1/144ガンダムは「ミニガンダム」と表記され、ベストメカコレシリーズでなく「ガンダムシリーズ」とされている点など興味深いです。
また、この時点では商品仕様は二色成型とされています。
ベストメカコレは画像のようにふたつの枠が連なった状態で成型されて、真ん中で切断して梱包されています。
(画像は日経キャラクターズ2005年11月号特別付録の1/144ガンダム)
ダイデンジンやゴッドシグマは2色のプラ素材で2種類のランナーを生産し、中央で切断して異なる色の組み合わせにして梱包していました(ゴーディアンは青の単色成型)。
当初はガンダムもこれに倣って白と黄色の2色成型が予定されていたことが関係者の談話で語られており、この告知の記述はそれを裏付けています。
ガンダム独特の緑がかった白の単色成型になったのはかなりギリギリのタイミングだったようです。
1/100ガンダムのハイパーバズーカも金型完成後に急遽追加されたものだったし、このあたりの微妙な変更判断は、ガンプラが高評価で受け入れられる上で意外に重要な要素になっていたように思います。