小学一年生 1971年8月号 小学館
小学一年生の昭和46年8月号、第二次怪獣ブーム真っ只中の発行です。
画像右の次号付録の紹介部分におもしろい記述があります。
「これが ほんもののジェロニモン」。ことさら「本物」を強調しているのはなぜでしょうか。
ジェロニモンは本編撮影時に講談社・円谷プロともにスチールを撮り逃しています。
アトラク仕様に改修後の写真がごく一部で使用された例はありますが、当時の紙媒体のほとんどがジェロニモンの写真を掲載できていない状態でした。小学館も例に漏れず、1971年度初期まではイラストで対応しています。
このころベストセラーだった秋田書店刊「怪獣ウルトラ図鑑」も写真掲載はできていません。
同様に怪獣系出版物を多く出していたエルムの単行本は、挿画主体の構成で写真使用自体がまれな状況でした。
当時の子供がテレビ放送以外でジェロニモンの画像を見ることはほぼ不可能だったのです。
1971年は、それまで絵が主体だった児童向けのキャラクター出版物で写真が主流に変わっていく転換期でした。
こちらが予告された別冊付録の現物。コマ焼きのジェロニモンが掲載されています。
このころから写真のない怪獣にはフィルムのコマ焼きで対応する手法が確立されたようで、Q・マン・セブンの写真素材が不足していた小学館は積極的にコマ焼きを活用します。
それは欠番怪獣の画像のみにとどまらず、ウルトラマンのテレポーテーションのような一回限りの必殺技やザラブ星人がフジ隊員に変身するオーバーラップの連続写真などにも及んでいきます。
リアルタイムでしか触れられなかった「テレビの本物」が写真で掲載されるのは、子どもにとってうれしい大事件でした。
この傾向は1972年度にピークを迎え、特に「一年生」ではミラーマンやウルトラマンAを特写・コマ焼きの両面で展開して密度の高い特集記事を掲載しています。
こうした動きは他社にも見られます。講談社は1971年4月から刊行したウルトラマンの写真絵本シリーズで、自社が写真を押さえていないニセウルトラマンやジェロニモン、あるいはウルトラ水流などのコマ焼きを活用しています。
また、山勝の帰ってきたウルトラマン5円ブロマイドの末期発売分にはなぜかジェロニモンのコマ焼きが1枚紛れ込んでいますが、それもコマ焼き自体に特別な価値があった当時の状況が理由なのではないでしょうか。
いずれも家庭用ビデオ機器が存在しなかった時代の特殊な事情でした。
株式会社エルム カラー写真版仮面ライダー怪人きりぬき画報
昭和46年12月30日第1刷発行、290円。
第三クール制作末期に行われた印刷媒体向け撮影会の写真で構成されており、怪人のコスチュームは本編撮影時とは多少異なる部分があります。
全体にバイク用でなくゴム長靴のような黒ブーツを使用している他、クラゲダールやアリキメデスはなぜか赤い手袋を着けていたりします。
画像はモグラングのページ。見慣れないブーツが使用されています。
こちらは本編撮影時の写真、山勝の20円売りブロマイドより。通常のバイク用ブーツが使用されています。
「怪人きりぬき画報」と同じ撮影会での別スチール、これは天田製「仮面ライダーカードゲーム」の画像です。
つま先に爪のようなものがあり、足の甲には血管状のモールドが確認できます。この足パーツの正体はなんでしょうか。
講談社刊「仮面ライダーGOODS in BOOK」に掲載のモグラングのデザイン画を見ると、足先に爪が付いた形状に描かれています。
とすると撮影会で使われた足パーツは、本編撮影時に制作されていながら未使用に終わった本来のモグラングの足と考えられるのではないでしょうか。
本編の最終決戦は工場施設のような場所の高所の通路で撮影されており、アクションの都合や安全性を考慮して本来の足パーツでなく通常のブーツを使用した可能性が考えられます。
その後モグラングはトリカブトの回、桜島ロケのゴースターの回と劇場版「仮面ライダー対ショッカー」にも登場しますが、いずれも通常のブーツが使用されています。
撮影会で使用されたのがモグラング専用の足パーツだったとすると、本編よりもデザイン画に忠実なモグラングの真の姿なのかもしれません。
以上はあくまで推測ですので、真相は不明です。
ひかりのくに株式会社 おおきい おおきい えほん
仮面ライダー オーロラ怪人の襲撃
仮面ライダー放送当時、380円で発売されたB4サイズ・全12ページの大型絵本。
本放送時に発売されたライダー関連書籍については講談社刊「仮面ライダー怪人大全集」をはじめいくつかの資料が存在しますが、この絵本の紹介例は無いようです。
表紙・裏表紙。「作画・構成 石森プロ」となっています。
奥付には発行日がありません。「MBS系テレビ放映中」の表記から本放送中の発売だったと思われます。
B4サイズを横に開く形式で映画のシネスコ画面のような効果を狙っているようです。
ライダーは一本ラインの旧2号。登場怪人はカメストーン・プラノドン・トドギラー・ガマギラー・ザンブロンゾ。
旧2号時期後半に登場する怪人が主体です。
派手な色使いからはすがやみつる氏の初期ライダー漫画が連想されます。
怪人大全集とのサイズ比較。
なお、紹介実績がなくても本書は珍品というわけではないようで、古書店や古書市で普通に並んでいるのを何度か目撃しています。
1970年代に発売されたバンダイ模型の低価格プラモデル。
本項では他社も含めたいくつかの補足情報をまとめておきます。
1974年度分
グレートマジンガー箱入り80円・袋入り50円のグレートマジンガー、グレートブーメランのパーツを付けた状態を補足しておきます。
台車はゲッター1のもので代用しています。
ブルマァクユニパズル・スーパーロボットマッハバロンの画像。
白いパーツは軟質で、ベルトを巻きつけることでパーツを固定します。パンチは右のみ発射可能でギミック部は組み済みです。
カリメロ(メーカー不明)袋入り50円タイプで黄と青の2色成形、2体セット。
組み立て図と紙タグには「カリメロとプリシラ」と表記されています。
カリメロの玩具はブルマァクとポピーが発売していたようですが、ミニプラモについては不明。
情報をお知らせいただけると幸いです。
追記:バンダイ模型製と判明しました。詳細は
こちら。
1975年度分
ゲッターロボG上記のグレートと同タイプのゲッタードラゴン、詳細画像。ミニドラゴンが付属しています。
頭部の造型がいまひとつでしょうか。
タカトク 50円売りタイムボカンのチョロ坊の画像。
台紙に組み立て図が印刷されており、購入時に切り取る仕様になっています。
ボディが扁平で劇中イメージとは印象が異なります。
以上で、1970年代のキャラクターものミニプラモの概要についておおむね取り上げられたと思います。
(再版品やメーカーオリジナルものは基本的に除外しています)
低価格のミニプラモに限って取り上げても、1974年から76年ころにはキャラクタープラモに質的な変化が起こっていたことが感じられます。
そうした情勢はジョイントモデルの誕生とも無関係でないと思われます。
今後は、なぜバンダイ模型が1975年にジョイントモデルの発売に至ったのか、モデルボーグやDXモデルなどを視野に入れながらその成立の過程を考えてみる予定です。
内容に想像や推論が多くなりそうなので、それを担保する画像の準備に時間がかかると思われます。
1979年度発売のバンダイ模型の低価格プラモデル。
ザ・ウルトラマン
ウルトラ・コレクションNO.1ザ・ウルトラマン、NO.2スーパーマードック、NO.3バーディ、NO.4ベータミー 各100円
ウルトラ・コレクションは接着不要タイプです。ザ・ウルトラマンは製品番号36103-100。
頭部・肩・足首が可動、登場カットを思わせるポーズが再現できます。
ウルトラマンは2色成形ですがスーパーマードック・バーディ・ベータミーは3色成形です。
ゼンマイ動力スーパーマードック(700円)にもウルトラマンが付属しますが、サイズ・ポーズの異なる別成形品です。
宇宙空母ブルーノア
メカ・コレクション 宇宙空母ブルーノア
ブルーノア、艦載機、戦闘ヘリバイソン 各100円
ヤマト同様の精密ディスプレイタイプです。
仮面ライダー(スカイライダー) 100円
スカイターボに乗るライダーのモデル。接着不要タイプですが単色成形。
ドラえもん 100円
接着不要、青・白の2色成形。シール・糸・ゴムが付属。
ネズミのパーツがついた糸を引くと反動でドラえもんがゴム走行します。
他社の動向
バンダイ同様、袋入り形態はなくなったようです。
アオシマ
「炎の超人メガロマン」
TVコレクションシリーズNO.1~8各100円、大箱4種セット400円も2種あり。
ヒーローや怪獣の消しゴム人形とミニディオラマなどのセット。
タカラ
「きょうりゅうサイボーグ マシンザウラー」
接着不要、各100円/①マシンザウラー、②プテラス、③トリプス
1980年以降
1980年度、バンダイは「とんでも戦士ムテキング」よりサイザンス・コンチューター・メデタイン・トカゲッテルの4種を発売。これらは3色成形・接着不要タイプです。
また、ヤマト・メカコレクションの発売は1981年度まで継続しています。
1981年度にはメカ・コレクションでガンダムのモビルスーツの発売が予告されていました。画像は徳間書店刊アニメージュ1981年4月号より。
この時点で固定ポーズの本体とミニサイズのセットという内容が決定していたようです。
ただしメカ・コレクションとしての発売は見送られ、モビルスーツ3体にディオラマベース・背景パネルをセットした「ガンダム情景模型」に変更されて4種が発売されました。
各モビルスーツのランナーは二つのワクが連なった形状で、本来単品売りを想定していたことがうかがえます(中国への輸出版では単品売りが実現しています)。
「ガンダム情景模型」はメカコレのセット売りという側面があり、ヤマト・メカコレの「スペース・パノラマ」シリーズの発展型の製品と見ることもできます。
1980年代に入るとバンダイのミニプラモの発売数は減少していますが、同時期に入れ替わるように増加したのがカプセル売り玩具です。画像はカプセル売りのプラ製組み立てデンジマンとミニプラモのアカレンジャーの比較。
通称「ガチャガチャ」と呼ばれたカプセル玩具は従来消しゴム人形などが主流でしたが、このころからキャラクターものの100円タイプに組み立てモデルが登場しています。
これらはプラモデルでなく玩具の範疇に入るものですが、もともと玩具的な性格の強かったミニプラモとの差異は曖昧です。
さらに食品流通の「食玩」にもキャラクターもののプラ製組み立てモデルが現れると、模型店で流通するミニプラモはほぼ消滅することになります。
他社の1980年以降
1980年以降、他社のミニプラモもメカコレに近い体裁の箱入り100円タイプが主流になったようです。
マークの「Xボンバー」「銀河旋風ブライガー」、日東科学の「アンドロ超戦士」「ダイアクロン」、クローバーの「ダイオージャ」などがこうした例にあたります。
アオシマは「無敵ロボトライダーG7」「伝説巨神イデオン」「魔境伝説アクロバンチ」などをミニ合体やマイクロプラモデルで展開しました。
これらはガンプラブーム時には一時的に活況を呈したようですが、ブームの収束とともにほぼ姿を消したようです。
1978年度発売のバンダイ模型の低価格プラモデル。
さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち
宇宙戦艦ヤマト メカ・コレクション箱入り各100円、79年1~2月に10種発売、最終的に全30種。
メカコレ5個とディスプレイパネルをセットにした大箱製品「スペース・パノラマ」5種各600円もありました。
ヤマトシリーズは資料が充実しているので詳細は略します。
画像は価格200円になった再版品。箱は上下分離型の細長いものでアオシマのミニ合体マシンに近いサイズです。
ヤマトブームで精密な形状再現のディスプレイモデルが成功し、それを受けて開発された新機軸の低価格プラモデルが「メカ・コレクション」シリーズです。
砲塔なども細かくパーツ化されており接着必須、ディスプレイベースもパーツ化されています。
「メカ・コレクション」のヒットで、以後のバンダイの低価格プラモはすべて同タイプの箱で価格100円に統一されることになります。
ただしキット内容はヤマト同様の精密ディスプレイタイプと、従来の低価格プラモを継承する接着不要・多色成形タイプの両者が混在しています。
銀河鉄道999
メカ・コレクション 銀河鉄道999 各100円
ビオナス2号、ベガラス3号、カペラ4号、オルオディア5号、プレアディス7号、スリーナイン号
それぞれ先頭車両と装甲車両のセット。鉄道模型のNゲージサイズで、ヤマト同様の精密モデルだったようです。
6種セットの大箱製品で再版されていますが、初版時に大箱セットがあったのかは未確認です。
科学忍者隊ガッチャマンⅡ
ニューゴッドフェニックス、イーグルシャープ、コンドルアタッカー、スワローヘリコ
各100円、接着不要・2色成形の従来タイプのキット。組み立て図は箱への印刷でなく別紙になっています。
なお、メカコレ型の箱になってからは4箱パックセットは確認されていません。
他社の動向
参入メーカーは少ないままで、1975年前後と比較するとほぼ半減しています。
1977年ころからスーパーカー消しゴムや怪獣消しゴムが登場して人気となっており、これらは児童が日常の小遣いで購入する廉価玩具としては低価格プラモのライバル商品にあたります。
また70年代なかばまでは多くの文具店、雑貨店、釣具店などでプラモデルを扱っていましたが、このころにはそうした店舗は稀になり、児童の日常の中でプラモデルの存在感が低下し始めたように思われます。
ツクダ
「恐竜戦隊コセイドン」
箱入り各80円、4箱パック300円/コセイダー、コセイドン号、ファイタスⅠ号、ファイタスⅡ号
タカラ
「宇宙海賊キャプテンハーロック」
箱入り各100円、4箱パックは未確認/アルカディア号、コスモウィング、スペースウルフ、ゾネス
メカコレ同様の上下分離箱ですが、接着不要の従来タイプのキットだったようです。
サニー
「科学忍者隊ガッチャマンⅡ」
箱入り各50円? 4箱パックもあり/ニューゴッドフェニックス、イーグルシャープ、オートスワン、ホーンドタンク
単色成形・接着不要のミニキットで、バンダイよりも低価格帯の製品でした。
1978年度発売のバンダイ模型の低価格プラモデル。
前年度の低調を受け、前半は消極的な展開になっています。
「闘将ダイモス」「スパイダーマン」はいっさいプラモデル化されていません。
未来少年コナン
ロボノイド、ファルコ、ギガント、バラクーダ号箱入り80円、4箱セット「未来少年コナン4点パック」は300円。製品番号は4点とも36003。
一体型の箱入りは「コナン」シリーズが最終製品になりました。
ロボノイドのパーツ、ダイス船長のフィギュア付き。青と白が反転したバージョンもあります。
ファルコのパーツ。シャフト付きでコロ走行、プロペラ回転。赤と黄が反転したバージョンもあり。
ギガントのパーツ。コロ走行、反転バージョンもあり。アバン映像での初期デザインを再現しています。
バラクーダ号のパーツ。コロ走行、反転バージョンもあり。。
組み済み品、バラクーダ号はジャンク状態です。
パーツ分割は単純ですが形状はどれも良好。ダイス船長もいい雰囲気です。
ウルトラ怪獣
ウルトラセブン、バルタン星人、レッドキング、ゴモラ袋入り50円、箱入りは2体セットで100円。
袋入りは台紙に4種が3個づつで1ダースになっていました。袋入り仕様の最終製品です。
箱入りは「セブン・バルタン」「レッドキング・ゴモラ」の組み合わせで上下分離型の箱が使用されています。
この4種はゼンマイ動力のウルトラホーク1号、3号、マグマライザーに2種づつ同梱されました。
レッドキングとゴモラは足をカタカタさせてコロ走行します。
4種とも腕の付け根にはゆるみ防止のためゴム管を内蔵。この発想が翌年度の「未来ロボダルタニアス」でのポリパーツ採用につながり、ポリキャップに発展すると考えられます。
画像は1982年に再版されたホーク1号、3号に同梱されたパーツ。
組み済み品のセブンとゴモラ、おもちゃ然とした造型です。怪獣はかなり小サイズ。
セブンの身体のラインは一定の太さのまま胸のプロテクターに接しており、当時「てれびくん」などのグラビアでよく見られたアトラク用スーツを参考にしているようです(ただし画像のセブンはその部分を削ってラインを細くしてあります)。
セブンの脚部にはゴム管を使用しないので不安定です。
<<1978年度の項、続く>>