ミニも積もればギガスとなる
1982年ころ、ブルマァクの怪獣ソフト人形を探して地元のオモチャ屋や駄菓子屋をまわってみたことがあります。
当時は宇宙船やアニメックなどの雑誌で昔のキャラクター玩具が断続的に掲載されていて、刺激されました。
また、第一次怪獣ブームを体験した世代が社会人になり購買力を持ち始めたことでマルサンの怪獣ソフトやプラモデルなどが市場価値を見直され、ビリケン商会などいくつかのアンティークトイショップも現れていました。
82年の夏休みにそうしたショップに行ってみて、ソフト人形の大群にワクワクするとともに天文学的なプレミア価格を目の当たりにしてクラクラしました。
そこで、とりあえず地元で知っている限りの玩具店・駄菓子屋をまわってみたのですが、この時点でブルマァクはおろかポピーのキングザウルスさえ一個も見つかりませんでした。
多くの店で聞いたのは「ちょっと前までたくさんあったけど、かさばるばかりで邪魔だから
捨てたまたは
燃やした」という話です。
当時はゴミ収集が厳格化されておらず田舎は土地が余っているので、庭の片隅で空の灯油缶などを使ってゴミを焼却処分することが珍しくありませんでした。
多くの怪獣ソフトが、そうしてこの世から消えていったのでしょう…
中でも忘れられないのは、電話帳を頼りに初めて行った駄菓子屋で「ウチの子が昔からたくさん持っているけど、ちょうど昨日、不燃ゴミに出したところなのよ」と言われたこと。
本当に、ひざから崩れ落ちそうになりました(T T
そうした店に残っていたのは画像のようなミニソフトや
モドキソフトがせいぜいでした。
ミニソフトが見つかるのはマイナーヒーローやメジャー作品のサブキャラクターなどが多く、現在でも安価で入手できるものがほとんどです。
怪獣ソフトへの道は遠い…
そんな時、市街地のはずれに玩具問屋があることを知りました。
住所を頼りにドキドキしながら行ってみると、残念ながら駄菓子屋などに流通する低価格玩具(小物玩具)のみを扱う問屋さんでした。
ただし昔は玩具全般を扱っていたそうで、巨大なレーシングセットの色褪せた箱が往時を偲ばせました。
ご主人に「ブルマァクなどの怪獣ソフトを探しているんですが」と尋ねると、昔はさんざん売ったけど今は残っていないとのこと。
ただ、お子さんが気に入ってずっと飾っている人形があるそうです。
そこで奥の茶の間を見せていただくと、テレビの上にブルマァクのベムラー、ガマクジラ、ギガスが並んでいました!
それも傷や落書きなどの無いピカピカの人形です。
お子さんは娘さんで「色がきれいだから」という理由でこれらを気に入っていたそうで、怪獣ごっこで激しく遊んだりしなかったため新品同様のまま残っていたようです。
ブルマァク怪獣を目の前にして興奮しましたが、とはいえこれらは売り物ではなく「家族のもの」ですから、譲っていただくことは出来ませんでした。
残念ですが、仕方ないですね…
その問屋さんでは、当時では珍しい物がいろいろ見つかりました。
プラモデルではタツノコランドのみなしごハッチ・どんぐりこ、バンダイ模型のジェッターマルスカレンダー、日東のレッドバロン・アイアンホークなど。
紙ものではダイヤモンドアイのミニカードやリバイバル期のウルトラやライダーの20円ブロマイド、またデンジマンやギャバンのカード類などが箱や束の状態で買えました。
小さいとはいえ問屋さんなのでどこから何が出てくるかわからない楽しさがあったし、それらを定価の六掛け(4割引き)で購入できたのも小遣いに苦慮する身にはありがたかったです。
しばらくは学校帰りに、時には理解のある友人と連れ立って、その問屋さんに通うようになりました。
そんなある日、店に入るとご主人が「あ、あなたの欲しがってた怪獣が出てきたから取っておいたよ」と、奥の方からひとつの人形を持ってきてくれました。
しかも袋入りの新品です……が、なぜかブルマァクでなくあやしげなヘッダーが付いています。
一瞬「モドキソフトかな?」と思いましたが、足裏にはちゃんとブルの刻印が入っています。
どこからどんな状態で出てきたのかご主人に尋ねましたが、詳しいことは教えてもらえませんでした。
売れ残りのキャラクター玩具はいわゆるバッタ屋に流れたりクジの景品に流用されたりすることは知っていたので、このギガスはブルマァク倒産後にそうしたルートに流れた一体なのではないかと想像しました。
ともあれそのギガスは、定価ということで350円だったか500円だったか?で購入しました。
「ついにブルマァク怪獣を新品で見つけた!」と興奮しながら、前カゴにギガスを入れて自転車で帰途に就いたのを昨日のことのように思い出します…(^^;
その後は進学で他県に引っ越したのですが、そちらで「H市に古いオモチャがたくさん残っている店があるらしい」という話を聞きました。
バスと電車を乗り継いで行ってみると、海沿いにあるその玩具店にはたしかにさまざまなキャラクター玩具が残っていました。
ウルトラマンのサイボーグ変身セットや少年サイボーグ、タカトクのウルトラ警備隊セット、ポピニカ・カブトローなどなど…
スタンダードのソフト人形はアカレンジャー、アマゾン、ストロンガーなどがあり、続いてブルマァクのヘッダーが目に入りました。
「うわ、ブルマァクの怪獣ソフトだ!」
今度は正真正銘、ブルマァク純正のギガスなのでもちろんうれしかったのですが、「なんで、よりによってまたギガス?」という思いも拭えませんでした。
もっと怪獣らしい、ゴモラやバルタンみたいなやつが欲しいのに…
ちょっと贅沢ですね(^^;
その後、こうしたキャラクター玩具の市場価値が次第に広く認知されるようになり、現在は毎日チェックしきれない物量のオモチャがネットオークションなどで流通しています。
そのままでは捨てられて消える運命だった物が、市場価値の確定によってこの世に残されているという面があるので、プレミア価格での流通も一概に否定はできません。
自分もその恩恵に浴している一人です。
とはいえ、世間の評価など関係なくただ「好きだ」という衝動だけで探し回り、まるで宝を掘り当てるように目当てのオモチャに辿り着いた時の高揚した気持ちは、二度と追体験できないものになりました。
こうした思いも、忘れずにいようと思います。