◇ 預金の取り付けもSNSで一瞬に = 女子高校生2人が電車内で、信用金庫に就職が決まったもう1人の同級生に「信金は危ないよ」と冗談を言った。あとで判明したことだが、その意味は「強盗が入ることもあるから」ということだった。ところが言われた女子高生は、家に帰って「信金は危ないのか」と家人に質問。家人は知人に聞いたことから、噂が拡散。この信用金庫には預金を下ろす人が殺到してしまった。いわゆる‟取り付け騒ぎ”、1973年に静岡県で本当に起こった事件である。
いまアメリカでは、いくつかの地方銀行がこの‟取り付け騒ぎ”に揺らいでいる。最初に経営破たんしたのは、カリフォルニア州を地盤とするシリコン・バレー銀行。それから2か月の間に、中堅の2行が預金の流出で行き詰まった。いずれも大銀行による買収などで、預金者は完全に保護された。しかしパックウエスト銀行など数行が、まだ預金の流出に苦しんでいる。
静岡県の信用金庫とアメリカの地方銀行。この2つの‟取り付け騒ぎ”には、1つの共通点と2つの相違点がある。共通点はインフレと不況の前夜。1973年は石油ショックの真っ最中、その後の景気は下降した。相違点の1つは、今回アメリカの場合はパソコンやスマホで情報が拡散し、預金が引き出されたこと。だから取り付け騒ぎ”とは言っても、店頭に行列は出来なかった。その代り預金は、音もなく一瞬のうちに消えて行った。
相違点の2つ目。静岡の信金は経営的に何の問題もなかったが、アメリカの地銀は不良資産を抱えていること。貸し出し先の企業が経営不振に陥っていたり、信用度の低い債券を保有していたりする。このためFRBが金利を上げると、資金の回収が困難になったり、含み損が増大しやすい。したがって金融引き締めを進めるFRBとしては、こうした銀行経営に及ぼす影響にも配慮せざるをえなくなった。また1つ、新たな方程式を抱え込むことになったわけである。
(続きは明日)
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静岡県の信用金庫とアメリカの地方銀行。この2つの‟取り付け騒ぎ”には、1つの共通点と2つの相違点がある。共通点はインフレと不況の前夜。1973年は石油ショックの真っ最中、その後の景気は下降した。相違点の1つは、今回アメリカの場合はパソコンやスマホで情報が拡散し、預金が引き出されたこと。だから取り付け騒ぎ”とは言っても、店頭に行列は出来なかった。その代り預金は、音もなく一瞬のうちに消えて行った。
相違点の2つ目。静岡の信金は経営的に何の問題もなかったが、アメリカの地銀は不良資産を抱えていること。貸し出し先の企業が経営不振に陥っていたり、信用度の低い債券を保有していたりする。このためFRBが金利を上げると、資金の回収が困難になったり、含み損が増大しやすい。したがって金融引き締めを進めるFRBとしては、こうした銀行経営に及ぼす影響にも配慮せざるをえなくなった。また1つ、新たな方程式を抱え込むことになったわけである。
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