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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
リラの花散るころ : 新興国に試練 (下)
2018-06-01-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 試される新興国の耐久力 = 新興国のなかには、突如として吹き荒れた寒風にもめげず頑張っている国もある。年初来の通貨騰落率をみると、アルゼンチンが22%、トルコが19%下落したのに対して、タイは1.2%、マレーシアは1.9%上昇した。国内経済の状態が良好なためである。ただマレーシアの場合は先週になって、前政権による多額の債務隠ぺいが発覚。今後の見通しは、急激に悪化した。

新興国を取り巻く環境も、よくはない。アメリカのFRBが6月の政策決定会合で、追加の利上げを決めることは確実。それが長期金利をどこまで押し上げるかは不明だが、少なくとも下げ要因にはならない。もし長期金利が3.2-3.3%に上昇するようだと、新興国からの資金流出には拍車がかかりかねない。

自国通貨が下落し、その防衛のために金利を引き上げると、新興国の経済は不況に陥る。するとまず近隣諸国からの輸入減という形で、不況が伝染する。先進国からの輸入も減少するから、不況はしだいに世界へと拡散して行く。こうした現象は、1980年代と90年代にも発生した。ただ新興国もその当時よりは、かなり抵抗力を増している。その耐久力が、これから試されようとしているわけだ。

経済が成長して、たしかに耐久力は増した。だが結果として新興国の賃金水準が向上し、それだけ先進国の直接投資は伸び悩んでいる。逆に先進国は、証券などの間接投資に重点を置くようになった。それだけ金利の変動には敏感になっているわけで、引き揚げも簡単にできる。こうしたマイナス材料もあるなかで、新興国がどこまで耐えられるか。当面の抵抗線はトルコの通貨、リラの花の散り具合である。

       ≪31日の日経平均 = 上げ +183.30円≫

       ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ


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プラスチック製の食器など禁止へ / EU
2018-06-02-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本も対応を迫られる = EUの行政府であるヨーロッパ委員会は28日、プラスチック製の食器やフォークなどを使用禁止にするよう加盟国に提議した。レジ袋についてはすでに規制しており、ペットボトルに関しても25年までに9割を回収することを業者に義務付ける。30年にはプラスチックのごみを完全になくすことが目標だ。プラスチックごみが海洋生物の生態系を破壊しているためで、EUは「海を汚染している物質の86%がプラスチックだ」と説明している。

アメリカのカリフォルニア州では、飲食店で飲み物を注文すると、ストローの代わりに穴の開いたパスタが付いてくるようになった。プラスチック製のストローが禁止されたからである。このようにプラスチック製品の使用規制は、アメリカにも広がっている。プラスチックは海に流されると、紫外線と海水の作用で細かい粒子に分解されてしまう。この粒子には有害物質が付着しやすく、これを魚が食べる。

驚いたことに、このプラスチックによる海洋汚染は、日本近海で著しい。ある調査によると、日本近海の汚染度は世界平均の27倍。じっさい、東京湾で釣り上げたカタクチイワシ64匹中49匹が汚染されていたという。また日本は年間900万トンのプラスチックごみを出しており、全国の河川には4000万本のペットボトルが沈んでいるという調査もある。

プラスチック製のペットボトルやレジ袋、使い捨ての食器やストローを使用禁止にする動きは、すぐ日本にも波及してくるに違いない。政府もその具体的な対応策と目標の樹立を迫られる。メーカーや消費者も、覚悟しなければならないだろう。同時に日本としては、代替できる商品の開発と、海中に広がったプラスチックごみの回収。このための技術を開発して、世界に貢献できるようになりたいものである。

       ≪1日の日経平均 = 下げ -30.47円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-06-03-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪35≫ ダーストニウム = 東京ドームに似た巨大工場の天井から見下ろした光景は、圧巻だったがグロテスクでもあった。直径が3メートルもありそうな太い金属パイプが、大蛇のようにとぐろを巻いている。そのパイプには数百本の細いパイプが突き刺さり、電線が蜘蛛の糸のように張り巡らされていた。音はほとんどしない。歩き回ったり、計器を見ているロボットたちが、小人のように見えた。ロボットのリースト所長が説明し始める。

「これが精錬所の第1工場です。この太いパイプは沖合30キロ、水深5000メートルの深海に繋がっています。そこでは定期的に海底が爆破され、砕かれた岩石や砂が、このパイプを通じて吸い上げられてくるのです。海には何百億年もかけて、あらゆる元素が溶け込み沈殿していますから、それを原料にして必要な金属類を精製します。

この第1工場では、いろいろな技術を使って金属類の種分けをしています。鉄や銅、金やプラチナという具合に。それをあそこに見える第2工場に送って、溶解して延べ棒にするわけです。ですから昔は貴重品だった金やプラチナなんかも、いくらでも生産できるのです」

いやー、びっくりした。最新鋭の錬金術だなあ。でも、これで金の家が造れることも理解できた。気を取り直して、質問をぶつける。
――ところで、いちばん向こうの第3工場では、何を造っているんでしょう。  

「本当は国家機密なんです。でも賢人会の許可がありましたから、お話ししましょう。100種類に近い金属を造っていますが、なかには使いようのないものもありました。ところが40年ほど前のこと、ある若い化学者が大発見をしたんです。それまでは捨ててしまっていた役に立たない金属の一つが、思いもよらない性質を持っていました。

ごく少量のその金属を、一定の温度と圧力の下で鉄に混ぜる。さらに銅やコバルト、レアメタルなどを混合すると、金属同士が完全に融合して新しい金属が誕生したのです。こうして出来上がった新しい合金は、不思議な力を持っていました。強度が鉄の10倍以上になり、しかも強力な磁性を帯びたのです」

――その新しい合金を、あの第3工場では造っている?  でも何に使うんですか?

「人間たちは、この新金属をダーストニウムと名付けました。実はこの金属が誕生したおかげで、この国のエネルギー供給と交通手段が革命的に変化したんですよ」

                               (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-06-04-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 暗くなった株式市場 = 株式市場は三方をカベに囲まれ、にわかに薄暗くなった。南ヨーロッパの政治不安、資金流出に悩む新興国、そしてトランプ大統領が火を付けた貿易戦争。もう一方からは好調な企業業績という明かりも差し込んでいるが、3つのカベで世界同時好況の条件が崩れれば、この明かりも光を失う。加えてアメリカの追加利上げと米朝首脳会談。6月の市場は、波乱含みのスタートとなった。

ダウ平均は先週177ドルの値下がり。日経平均も279円の下落だった。大きな3つの悪材料が重なったにもかかわらず、この程度の下げで済んだのは、企業業績が下値を支えたからだろう。ただ嫌らしいのは、これら3つのカベはいずれも短期間では消滅しそうにないこと。したがって市場に漂う重い雰囲気は、当分の間続くと覚悟する必要がある。

加えて来週は、米朝首脳会談とFRBによる追加利上げが実現する。米朝会談の開催は株価にとって好材料だが、これで万事が解決とは誰も考えていない。アメリカの追加利上げは景気がいい証拠とも受け取れるが、その後の引き締めテンポが速まるという警戒感を強めるだろう。いずれにしても、株式市場は梅雨入りした。

今週は5日に、4月の家計調査。6日に、4月の毎月勤労統計。7日に、4月の景気動向指数。8日に、1-3月期のGDP改定値、4月の国際収支、5月の景気ウォッチャー調査。アメリカでは5日に、5月のISM非製造業景況指数。6日に、4月の貿易統計。また中国が8日に、5月の貿易統計。9日に、5月の消費者物価と生産者物価を発表する。

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ


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トランプ貿易戦争の 危険度
2018-06-05-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 世界の秩序が乱れる可能性 = トランプ大統領は1日、これまで猶予してきたEU、カナダ、メキシコに対して、鉄鋼・アルミの高関税を適用すると発表した。輸入する鉄鋼に25%、アルミに10%の関税をかける保護貿易政策は3月に決定され、日本などはすでに適用されている。EUなどに対しては、貿易協定の改定交渉中だったため猶予してきたが、交渉が進展しないことに業を煮やし適用に踏み切ったようだ。

この措置にEU、カナダ、メキシコは猛反発。直ちに、EUはアメリカ製の鉄鋼・二輪車・ジーンズなどに28億ユーロ(約3500億円)分。カナダは166億カナダ・ドル(約1兆4000億円)分。メキシコは鉄鋼・豚肉などに報復関税をかけると発表。トランプ大統領が主導する貿易戦争が、とうとう始まってしまった。

このような輸入制限措置の応酬は、当然ながら双方に被害が生じる。たとえばEUは年間500万トンの鉄鋼製品をアメリカに輸出しているが、仮に輸出額が半減すると10万人単位で失業者が増える。一方のアメリカも全米商工会議所の試算では、47万人が職を失うという。さらに報復が報復を呼ぶような事態ともなれば、世界経済は委縮せざるをえない。

だが、もっと危険なのは、世界の秩序が破壊されることだろう。ベルリンの壁が崩壊してから30年近く、東西の冷戦は完全に姿を消した。アメリカがEUやカナダ、中南米諸国と同盟関係を維持する必要度は、大幅に減退している。トランプ大統領がこうした歴史的認識を持って“アメリカ第一”に走っているとすれば、世界の戦後秩序は変革を余儀なくされるかもしれない。いわゆる西側の絆が緩めば、喜ぶのは中国だけだろう。

       ≪4日の日経平均 = 上げ +304.59円≫

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ


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えっ! 麻生さんの年俸は170万円?
2018-06-06-Wed  CATEGORY: 政治・経済
推定年収は3753万円のハズだが = 財務省は4日、森友学園をめぐる文書改ざんの責任をとって関係者の処分を発表した。その一環として、麻生財務大臣も閣僚給与の12か月分を自主返納している。ところが、その金額は170万円だと聞いて不審に思った人が多かったのではないだろうか。どうして財務大臣の年間給与が、こんなに少ないのだろう。

人事院の資料によると、日本の政官界で最も給料が高いのは、内閣総理大臣と最高裁長官。その年収は、ともに推定で5141万円となっている。次に高いのが国務大臣で、推定年収は3753万円だ。この金額には月給のほかに年2回のボーナスも含まれる。さらに、ここには年2000万円を超す国会議員手当も含まれるから、話はややこしくなってしまう。

だが麻生大臣の場合、ボーナスや国会議員手当を差し引いても、年間170万円にはならない。ここからは全くの推測だが、財務大臣のほかに副総理の給与も別に貰っているのではないか。その分まで差し引くと、計算は合いそうだ。昨年11月時点の麻生大臣の個人資産は5億2303万円。閣僚のなかでも、断トツに高い。170万円ぐらいの返納は、屁とも感じないだろう。

ちなみに文書改ざんの方向付けをした佐川前理財局長。退職金は4999万円のはずだったが、513万5000円を減額されることになった。大臣が返納する金額の3倍である。こうした数字を眺めていると、麻生財務大臣の辞任を求める声はむしろ強まるのではないかという感じがする。

       ≪5日の日経平均 = 上げ +63.60円≫

       ≪6日の日経平均は? 予想 = 下げ


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EUに迫る 新たなる危機 (上)
2018-06-07-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 反対勢力を鎮静できるか = ヨーロッパ大陸で、反EUの動きが高まり広がっている。イタリア、スペイン、ハンガリーでは、反EU的な政権が誕生した。オーストリア、ポーランド、チェコでも、その傾向が強まっている。ドイツやフランスでさえも、総選挙ではEUに懐疑的な姿勢をみせる政党が議席を伸ばした。発足から26年、いまEUは最も困難な事態に直面していると言えるだろう。

イタリアでは先週、大学教授のコンテ氏を首相とする新内閣がやっと発足した。3月の総選挙で過半数を獲得した政党がなく、大統領による組閣工作は二転三転。第1党となったポピュリズム政党の「五つ星運動」と極右の「同盟」が手を組んだことから、政局はややこしくなった。コンテ氏は中立の立場だが、反EU的な「五つ星運動」からの入閣者が多く、EU離脱を主張する政治家も閣内に取り込まなければならなかった。

スペインでは1日、下院でラホイ首相に対する不信任案が成立。7年間続いたラホイ内閣は総辞職した。後任には中道左派「社会労働党」のサンチェス書記長が就任したが、「社会労働党」は少数与党。いくつかの政党と組まなければならない。そうした政党のなかには反EU的な政策を掲げているところも多い。サンチェス氏自身も、EUの緊縮財政路線には反対している。まだ組閣中だが、いずれにしてもラホイ内閣よりは反EU的になるとみられている。

ハンガリーの場合は強烈だ。4月の総選挙で圧勝したのは「連合」で、オルバン党首が首相に再任された。ところが、この政党は選挙中「移民の排斥」しか公約しなかった。EU離脱には慎重なようだが、移民反対だけで選挙に圧勝したことに専門家は驚きを隠せない。東欧圏ではオーストリアが難民問題に厳しい「国民党」が第1党に。またチェコでも、ポピュリズム政党が勝利を収めている。

                             (続きは明日)

       ≪6日の日経平均 = 上げ +86.19円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ


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EUに迫る 新たなる危機 (下)
2018-06-08-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 理想主義 vs ポピュリズム = ヨーロッパに反EU的な政権が誕生すると、どんな事態が起こるのだろうか。まずハンガリーは、EU本部が決める難民の受け入れを絶対に認めないだろう。またイタリアやスペインでも、EU本部が決める健全財政政策を承認しない可能性が大きい。すると市場では国債が暴落、財政危機が大きな問題となる。かつてギリシャが陥った経済不安と同じだ。仮にスペインがそうなれば、危機の大きさはギリシャの数倍。イタリアがそうなれば、スペインの数倍となりかねない。

EU本部が難民の受け入れや健全財政の実行を強引に迫れば、こんどは国民の不満がさらに膨れ上がる。政党はその声を吸い上げなければ議席を増やせないから、ポピュリズムはいっそう蔓延する。その裏では国内経済が不調に陥り、その影響は金融市場を通じて世界に拡散する。

もともとEUはヨーロッパ諸国を経済的に統合し、二度と戦争を起こさないという理想主義を基盤に結成された。難民の救済も、この理想主義から発生した。ところが経済成長が鈍く失業率の高い国では、人々が移民の急増で職を奪われたと感じ始めた。またEUの健全財政路線が、景気を悪くしていると考え始めた。この国民の不満に乗って議席を増やしたのがポピュリズム政党。それに極右政党が同調するという奇妙な関係が、広く流行しつつある。

EUのうちの大部分の国が、単一通貨であるユーロを使用している。ところが域内にはドイツのように輸出競争力の強い国と、ギリシャのように観光に依存している国が併存する。するとユーロの為替相場はドイツにとっては常に割安、ギリシャにとっては割高になってしまう。域内で格差が生じる大きな原因だ。だがEU本部は、この矛盾をどうすることもできない。いったん理想主義を引っ込めるかどうか、決断を迫られている。

       ≪7日の日経平均 = 上げ +197.53円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ


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世界ベスト10に入れず : 外国人客数
2018-06-09-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 健闘している日本だが = 国土交通省の発表によると、17年に日本を訪れた外国人観光客は2869万人だった。前年に比べて19.3%の増加、この5年間で3.4倍に増えている。UNWTO(国連世界観光機関)の調査では、17年の世界の国際観光客数は13億2000人。前年比は6.7%の増加だったから、日本の伸び率は際立って高い。

ただ世界を見渡すと、日本の成績はまだまだ低い。たとえば16年の実績をみると、第1位のフランスは8260万人。2位はアメリカの7747万人、3位はスペインの7556万人となっている。日本は16位だった。仮に17年の成績をそのまま16年の順位表に入れ込んでも、ようやく11番目。まだ世界のベスト・テンには入れない。

観光収入という面からみると、16年はアメリカが2059億ドルで断トツに多い。2位のスペインは603億ドル、3位はタイで499億ドル。日本は307億ドルで11位だった。アメリカは滞在日数が長く、宿泊費や交通費が高いためだろう。そうしたなかでタイが第3位に食い込んでいるのは、ご立派と言うしかない。

17年の場合、日本を訪れた観光客の消費額は、前年比17.8%増の4兆4000億円だった。一人当たりにすると15万4000円ほどになる。一方、日本人が17年に国内観光のために使った金額は21兆1000億円。したがって外国人の観光支出は、日本人の約5分の1ということになる。

       ≪8日の日経平均 = 下げ -128.76円≫

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-06-10-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪36≫ 国家機密 = また1ブロック先のレストランに来ている。落ち着いた間接照明で、高級感と居酒屋的な気安さが同居している住民の集会所だ。いつかマーヤに名前を尋ねたら「満足」という意味だという。人々は人生に満足しているからここへ来るのか、していないから来るのか。よく解らない。

よく一緒になるSさんとMさんの夫婦が、今夜も酒を飲んでいる。そこで隣に座ってもいいかと聞いたら、4人とも手を挙げて歓迎してくれた。断わっておくが、ダーストン語で言ったわけではない。身振り手振りで、そう伝えたのだ。ダーストンの言葉は難しくてとても覚えられないが、そのくらいのことは出来るようになった。

しかし考えてみると、日本に宇宙人が迷い込んだらどうだろう。こんなに打ち解けて歓迎するだろうか。本当にダーストン人は優しくて寛容でもある。健康な生活が保障され、犯罪や争い事もないから、大らかなのだろうか。

ピスコという発泡酒で乾杯したあと、世間話が続いた。もちろんマーヤの通訳入りである。たまたま2組の夫婦は、すべて40歳代。子どものことや教育に関する話が多い。なかで教育をロボットに任せることの是非については、意見が一致しなかった。

折をみて、ぼくが金属精錬所を見学したと言うと、みんながびっくりしたようだ。遠くからドーム型の工場を見たことはあるが、なかに入ったことはないと言う。Sさんが「あそこは国家機密の場所になっていて、一般の人は立ち入り禁止だと思うよ」と断定すると、みんなが首をタテに振った。そこで聞いてみた。

――ダーストニウムという新発見された金属を知っていますか。

「知りませんね。学校でも教わらないし、ネットで調べても出てこないでしょう。それは何ですか」

――あそこの工場長が言うには、この金属のおかげでエネルギーの供給と交通手段が革命的に変わったそうですよ。

「へえ、でも解らないなあ」「たしかにモノは何でもロボットが作っている。しかしロボットも電気は作れないだろう。電気はだれが、どこで作っているのか。いつも不思議に思っていました」

この国の人たちは、ダーストニウムのことを知らないらしい。これは今夜いちばんの収穫だ。もう少し詳しく知るためには、どうすればいいのだろう。帰り道でこう考えていると、マーヤがささやいた。
「あす一番で、賢人会のウラノス博士と連絡を取りましょう」

ぼくのマーヤは秘書としても素晴らしい。2人は一心同体の関係になってきた。

                            (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-06-11-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 米朝首脳会談で大幅高 = 市場の耳目が、一斉にシンガポールに集中した。その成果に期待して、ニューヨーク市場のVIX(恐怖指数)が11台まで急降下。ダウ平均は先週681ドルの大幅高となった。カナダで開かれたG7(主要7か国)首脳会議や、そこでの主要議題となったアメリカ主導の関税引き上げ競争。あるいは今週に迫ったFRBによる政策金利の引き上げや、イタリア・スペインの政情不安など。大きな材料もあったが、シンガポールの陰に隠れてみな重視されなかった。

日経平均は先週523円の値上がり。ニューヨークの活況に引きずられた感じが強い。円相場がほとんど動かなかったことも、市場の空気を明るくした。ただ3月期の決算発表が終わり、19年3月期の業績は多少の減益になる見込みが強まっている。ニューヨークの動向にもよるが、何か新しい材料が出ないと今後の足取りは重くなりそうだ。

一度は中止と発表し、すぐに開催すると方針転換。米朝首脳会談に対するトランプ流の戦術に、市場は乗せられたのか。それとも意識的に乗ったのか。いずれにしても12日の会談で、驚くような結果は出ないだろう。そのあと市場の空気が、どう変化するか。シンガポールから目が離れると、恐怖指数は上がりやすくなる。

今週は11日に、4月の機械受注。12日に、4-6月期の法人企業景気予測調査、5月の企業物価、4月の第3次産業活動指数。アメリカでは12日に、5月の消費者物価。13日に、5月の生産者物価。14日に、5月の小売り売上高。15日に、5月の工業生産、6月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、5月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお12日には米朝首脳会談、13日にはFRBが利上げを発表する予定。

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ


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トランプ大統領の 頭のなか (上)
2018-06-12-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ G7サミットをぶち壊す = カナダのケベックシティで8-9日に開催されたG7サミット(主要7か国首脳会議)は、前代未聞の結果に終わった。各国首脳がアメリカの鉄鋼・アルミに対する輸入制限をきびしく非難したが、トランプ大統領はどこ吹く風。貿易の大赤字を減らすための正当な措置だと強弁して、取り合わなかった。しかもトランプ大統領は会議に遅刻したうえ、終了を待たずにシンガポールへと飛び立ってしまった。

それでも、残された6か国首脳はなんとか共同宣言をまとめて発表した。貿易に関しては「保護主義と引き続き戦う」と明記。さらにトランプ大統領の顔を立てて「WTO(世界貿易機構)の改善を進め、関税・非関税障壁の削減に努める」という文言も付け加えた。ところが専用機のなかでこれを知ったトランプ氏は「首脳宣言は承認しない」と声明した。全くのぶち壊しである。

トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”主義は、よく知られている。この主義を貫くためには「出来上がった現在の秩序やワク組みを壊す必要があると、トランプ氏は確信しているように見受けられる。たとえば移民の受け入れを拒否し、国民皆保険を目指したオバマ・ケアをご破算に。また大気汚染防止のパリ条約からも脱退した。その裏には、11月の中間選挙を見据えた票集め作戦が常に見え隠れする。

国際貿易の面でも同様だ。自由貿易を標榜するWTOは、アメリカにとって不利である。だからアメリカの貿易収支は、長いこと大赤字を続けている。この赤字を削減すれば、アメリカ国内での生産が増えて、雇用者も増加する。こうした一般論を前提として、具体的には鉄鋼やアルミの輸入に高関税をかける。すると工場が集中している北東部で、共和党の票が増える。同様の手法で、次は自動車を標的にする。これがトランプ氏の頭の構造だ。

                              (続きは明日)

       ≪11日の日経平均 = 上げ +109.54円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ


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トランプ大統領の 頭のなか (下)
2018-06-13-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 1-3月期の対日赤字は151億ドル = G7首脳会議は滅茶苦茶な結果に終わったが、トランプ大統領はここでも得点を挙げた。というのも、EUとの間で貿易問題を協議する新たなワク組みを創る合意を取り付けたからである。すでに日本とは、7月から貿易協議を始めることが決まっている。トランプ大統領も6対1では大変だが、個別の交渉に持ち込めばアメリカの力を十分に発揮できると踏んでいるわけだ。

トランプ大統領の頭のなかには、こんな数字がぎっしり詰まっているに違いない。米商務省の集計によると、ことし1-3月期の貿易収支は合計で1556億ドル(約17兆円)の赤字。その内訳は対中国が934億ドル、対EUが304億ドル、対日本が151億ドルの赤字といった具合。これらの赤字を、2国間の個別交渉で減らそうとしているわけだ。

モノの輸入を減らせば、国内の生産は増える。このことは理論的に正しい。しかし相手国が報復措置としてアメリカ製品の輸入を制限すると、その分アメリカ国内の生産は落ちる。だがトランプ大統領は、鉄鋼や自動車の生産が伸びて選挙の票につながれば、それでいい。たとえば報復関税で電子機器の輸出が伸び悩んでも、それは民主党の地盤だから構わないと考えているように見受けられる。

中間選挙に勝って、自身も2年後の選挙で再選される。歴代の大統領が出来なかったことを成し遂げ、歴史に名を残す。トランプ氏の頭は、その将来像でいっぱいだ。だからシンガポールでの米朝首脳会談も成功させなければならなかった。その勢いをかって、7月からの日米貿易交渉にも臨んでくる。日本側は、どう対抗するのか。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +74.31円≫

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ


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用意周到の 民意形成を : 対北朝鮮
2018-06-14-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ どの段階で対応するのか = 米朝首脳によるシンガポール会談は、拭い切れない疑念を残して終了した。共同声明には「朝鮮半島の完全非核化」と「北朝鮮の体制保証」が明記されたものの、非核化の時期や具体策については全く触れられていない。このため北朝鮮はまたまた時間稼ぎをするのではないか、という疑念が残ってしまう。しかし金正恩委員長もそんなに甘くはみていないだろう。北は段階的に非核化を進める可能性の方がずっと高い。

その場合、日本はどの段階で、どのように対応すべきなのか。たとえば核実験場が完全に破壊された時点、ICBM(大陸間弾道弾)が廃棄された時点、中短距離ミサイルも破棄された時点。また拉致問題でも、北朝鮮が再調査に応じた時点、実際に拉致被害者が帰国した時点など。節目となる段階は、いろいろ考えられる。

日本側の対応策も、いろいろある。まず経済制裁の解除。総体的には国連の動きに準ずればいいが、独自の制裁も段階を追って解除することになるだろう。また戦時補償の問題と新たな経済援助も、日本は負担しなければならない。これらの対応策をいつ、どんな段階で、どの程度を実施するのか。

安倍首相は拉致問題の解決が、大前提だと言っている。しかしトランプ大統領は、非核化・非ミサイル化の節目ごとに、日本に対して行動を要請してくる可能性が強い。その可能性までを考慮に入れながら、いまから政府の方針を明示し、世論の形成に努める必要がある。そうしておかないと、こんどは日本がオタオタする番に回ってしまうだろう。

       ≪13日の日経平均 = 上げ +88.03円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 =下げ ≫


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異常に明るい見通し : 企業景況調査
2018-06-15-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 現状は1年ぶりのマイナス判断 = 財務省と内閣府は12日、共同で実施した4-6月期の法人企業景気予測調査を発表した。それによると、大企業・全産業の景況判断指数はマイナス2.0。4四半期ぶりのマイナスに落ち込んでいる。このうち製造業はマイナス3.2、非製造業はマイナス1.4だった。中堅企業・全産業もマイナス1.0、中小企業もマイナス10.6と、すべてが水面下に沈んでいる。

ところが業況の先行き見通しについては、驚くほど楽観的な結果が出た。大企業・全産業の見通しは7-9月期が6.9、10-12月期が7.9と急速に改善する。中小企業でさえ、10-12月期にはプラス0.8まで浮上する見通しだ。その結果、設備投資計画も年内は尻上がりに拡大する予想となっている。

この調査は5月15日時点で、全国1万3000社を対象に行われた。判断指数は「前期より上昇した」という回答の割合から「下降した」と回答した割合を差し引いた数値。その企業の業況判断のほか、いくつかの項目についても同様の方式で質問、指数を算出している。たとえば国内の景気についても聞いているが、その見通しは現在のプラス7.2から7-9月期は6.9、10-12月期は5.8へと緩やかに下降する。

この調査の致命的な欠陥は、景況感が変化した理由を聞いていないことだ。なぜ4-6月期が1年ぶりのマイナスに低下したのか。なぜ国内景気の見通しが鈍化するのに、企業の景況感が急上昇するのか。最も知りたい点が、全くつかめない。ヒトとカネを使って大掛かりな調査をするのだから、内容も改善してほしいものだ。そうでないと、結果もにわかには信じがたい。

       ≪14日の日経平均 = 下げ -227.77円≫

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ


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無法状態に陥った 就活戦線
2018-06-16-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 3年生になったら活動開始 = 来春卒業予定の大学4年生は、もう3分の2が企業の内定を獲得した。就職情報大手ディスコ社の調査によると、6月1日時点の就職内定率はなんと65.7%に達している。経団連の指針では、6月1日が採用活動の解禁日。その日にはもう3分の2が内定しているというのだから、開いた口が塞がらない。しかも3年生になったばかりの大学生も就活を始めているというから、2度びっくり。いったい、どうなっているんだ。

就活の状況が異常になった背景には、人手不足という事実がある。しかし就活を巡る制度自体にも、問題があるようだ。内定の返上が増えているため、企業側は必要以上に内定を乱発。最近の傾向は、内定を獲得した学生1人平均で2.5社から内定を受けているという。すると、どうしても返上率が増えざるをえない。それがまた内定の乱発に繋がるという悪循環を生んでいる。一方、経団連の指針を守っている企業には、学生が集まらない。だから指針を守らない企業が増える。

この4月に3年生になったばかりの学生にも、企業側の囲い込みが始まった。その手段に使われるのがインターンシップ。本来は学生に就業体験をしてもらうのが目的だったが、これが面接代わり。経団連が昨年、インターンを1日だけでも実施できるように改めたため、ことしは実施する企業が大幅に増えている。

大学3年生と言えば、勉学に最も身を入れる期間。それが就活に明け暮れるようでは、学生の質は落ちてしまう。長い目で見れば、日本の将来も危うくなる。経団連には、この状態を改善する力はないだろう。文部科学省は有識者会議を招集して、早急に対策を講ずるべきだ。そうでないと、就活戦線は大学1-2年生にまで拡大する恐れがある。

       ≪15日の日経平均 = 上げ +113.14円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】  


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-06-17-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪37≫ シュべール博士 = この星では大勢の人と出会ったが、シュベール博士ほど変わった人はいない。胸のプレートは≪20≫だ。長身でやせ形、長く伸びた白髪の間からギロリと目が睨む。まるで仙人のようだ。ニコリともせず、こう言った。「君がうわさの地球人かね。われわれと、そんなに変わらないんだな」

マーヤが賢人会のウラノス議長に連絡すると、折り返し手紙が届いた。すべて無線で用が足りるこの国では、とても珍しいことだという。開けてみると「シュベール博士と会いなさい」と書いてある。この島の南端に突き出た半島にある、エネルギー研究所の所長だそうだ。紹介状も同封されていた。

紹介状を一瞥すると、そのシュベール博士はへの字に曲げた口を開き、低い声で語り始めた。
「新金属ダーストニウムのことを教えてやってほしい、と書いてある。ウラノスさんが言うんだから仕方ないが、本当は教えたくないんだ。なにしろ最高の国家機密だからね。まあ、いい。何が知りたいんだ」

――少量のダーストニウムを混ぜると、鉄や金やニッケルなどの金属が簡単に融合する。そうして出来た合金は、強度が格段に増したり、強い磁性を帯びると聞きました。その新しい合金は何に使うのでしょう。
「うむ。使い道は秘密でも何でもない。君はここへ来るのに、高速道路に乗ってきただろう。その路面には、ダーストニウム合金で作った細い線を内蔵した強化ガラス板が敷き詰められているんじゃ。何のためだか、判るかね」

――もしかして、太陽光を集めて発電しているんじゃないですか。
「おう、なかなか勘がいいね。その通りだ。高速道路は延べ5万キロにも達するから、これだけで必要な電力は十分に賄える。雨はできるだけ夜のうちに降らせるようにしているから、昼間はたいてい発電できるんじゃ。次の質問は?」

――ほかにも何か利用しているんですか?
「ああ、沢山あるよ。その高速道路の中心部には、鉄に新合金を混ぜたレールが敷いてある。その磁力で車をほぼ浮かしているから、車は小さなモーターでも高速で走れる。鉄道の時代に完成していたリニアの技術を使っているんだ。この磁力の力で、車は絶対に軌道から外れない。前後左右の車と衝突することもない」

金属精錬所のロボット所長が「ダーストニウムの発明で、エネルギー供給と交通手段が革命的に変わった」と言ったのは、こういうことだったんだ。

――でも、なぜそれが国家機密なんですか?

こう尋ねると、シュベール博士は背筋を伸ばして、ぼくを睨みつけた。

                            (続きは来週日曜日)
              
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今週のポイント
2018-06-18-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウは下げ、日経平均は上げ = 史上初の米朝首脳会談、FRBによる追加利上げ、アメリカの中国に対する制裁関税の発動ーー大きなイベントが続いたが、株価はそう大きくは振動しなかった。ただ鮮明に分かれたのは、ニューヨークが下げ、東京は上げたこと。先週、ダウ平均は226ドルの値下がり。日経平均は157円の上昇だった。

米朝会談は成功したのかどうか、現状での判断は難しい。市場も消化不良のようだった。アメリカの利上げも年内あと2回の追加は厳しいが、それだけ国内経済が好調なことを物語っており、売り材料にも買い材料にもなる。ただ米中間の貿易戦争だけは、明らかに悪材料。そのためダウ平均は前に進めなかった。

日経平均が続伸したのは、円相場が下落気味に推移したため。アメリカの金利上昇で日米間の金利差が拡大するとの思惑で、円が売られた。しかし米中間の貿易戦争が激化すれば、日本も悪影響を免れない。円安はまだ持続するかもしれないが、日本株だけが独歩高という状況ではないだろう。

今週は18日に、5月の貿易統計。20日に、5月の訪日外国人客数。22日に、5月の消費者物価と4月の全産業活動指数。アメリカでは19日に、5月の住宅着工戸数。20日に、5月の中古住宅販売。21日に、5月のカンファレンス・ボード景気先行指数が発表される。

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ


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米中貿易戦争の 行くえ (上)
2018-06-19-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 二段構えの真意は何か = トランプ大統領は15日、とうとう中国に対する制裁関税の発動を公表した。中国製品500億ドル(約5兆5000億円)分について、輸入関税を25%上乗せする。ただ実施は2段階に分け、最初は7月6日に発効する340億ドル分。残りの発効日は決めていない。対象となる品目は1102品目に及び、産業用ロボット、電子部品など。国民生活に直接関連する携帯電話やテレビなどは除外した。

中国政府は、すぐさま反応した。アメリカ産の大豆やトウモロコシ、牛肉、航空機、自動車など500億ドル分に25%の関税を上乗せ。そのうち第1段階として、7月6日から340億ドル分について実施する。このように中国側の対応措置は、金額や時期をアメリカの決定と全く一致させた。少なくとも、相手側の制裁を上回るような報復は避けたことになる。

アメリカはなぜ実施を2段階に分けたのだろう。国内業界との調整に手間取っているという情報もあるが、それよりは第1段階を実施したあと、ひと息入れて再交渉に臨む時間を作ったような気がする。米中両国は5月以降3回にわたって、閣僚級の貿易協議を開いている。だが、そこでの合意に失敗し、今回の関税引き上げ競争に至ってしまった。

中国は知的財産権を侵害している。これがアメリカ側が制裁に及んだ理由だ。具体的には技術移転の強要などだが、国有企業に対する補助金の支給についても議論は割れたまま。アメリカは鉄鋼などが不当に安い値段で輸出されていると非難するが、中国側は国営企業を育成する重要な政策手段だと考えている。この問題で歩み寄りが出来ないと、仮に協議が再開されても戦争終結は難しいかもしれない。

                                 (続きは明日)

       ≪18日の日経平均 = 下げ -171.42円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ


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米中貿易戦争の 行くえ (下)
2018-06-20-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 出る杭を打った? トランプ大統領 = 今回の関税引き上げ競争で米中両国が受ける損失は、そんなに大きくないという見方が多い。たとえば大和総研は「中国のGDPは0.3%、アメリカは0.19%減少する程度」という試算を発表した。しかし全体はそうでも、部門によっては打撃が大きい。たとえば中国は鉄鋼や電子産業、アメリカは農業だろう。それに物価の上昇も招くから、消費者の負担は増大する。

アメリカはすでに鉄鋼とアルミニウムに、高い関税をかけた。これに対して、EUやカナダ、メキシコ、インドなどが報復関税をかける方針。こうして世界的な広がりを見せ始めた貿易戦争が長引けば長引くほど、その悪影響は累積的に拡大して行くだろう。また貿易戦争は長引くという予想が強まれば、株価は下落する。さらにリスク警戒感が高まり、新興国からの資金流出が加速するかもしれない。

トランプ政権は中国に対して、さらに1000億ドル分の関税上乗せ、アメリカへの投資規制をも検討中と伝えられる。こうしたトランプ大統領の強引な仕掛けは、すべて11月の中間選挙を意識したものだという見方が強い。たしかに鉄鋼やアルミ、あるいはハイテク産業を保護し、その地域の票集めを狙っているのだろう。だが中国の報復措置で打撃を被る農業も、共和党の牙城である。

周知のように、アメリカはいま世界一の経済大国。それを追っているのが、GDP第2位の中国だ。その中国の成長率はアメリカの2倍以上、この調子だと10年後には関係が逆転する。アメリカ・ファーストを標榜するトランプ大統領にとって、これは我慢できない。いまのうちに、出る杭は打つ。基幹産業の鉄とIT電子産業を叩く。もしトランプ大統領の真意がここにあるとすれば、貿易戦争は長期化せざるをえないだろう。

      ≪19日の日経平均 = 下げ -401.85円≫

      ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ


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まだ異状なし : 5月の貿易
2018-06-21-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 3か月ぶりの赤字だったが = 財務省は18日、5月の貿易統計を発表した。それによると、輸出は6兆3200億円で前年比8.1%の増加。輸入は6兆9000億円で14.0%の増加だった。この結果、貿易収支は5800億円の赤字。3か月ぶりに赤字を記録している。輸出は順調に伸びたが、エネルギーの輸入価格が上昇したため赤字になった。

輸出は18か月連続で増加。自動車や半導体製造装置などが、大きく伸びた。地域別では中国向けが13.9%増、アメリカ向けも5.8%増加している。トランプ政権は3月末から輸入する鉄鋼に25%の関税をかけているが、5月は輸出額で18.6%も増加。前月の13.7%増を上回っている。アメリカの自動車メーカーなどは、高くても日本の鋼材を買わなければならないのかもしれない。

輸入は5月としては、過去最高になった。特に原油の国際価格が上昇したことから、鉱物性燃料の価格が前年比20.7%も上昇した。たとえば原油・粗油の輸入額は28.6%も増加している。5月の円相場は平均1ドル=109円08銭。前年より2.1%の円高だったが、国際価格の上昇にはとても及ばなかった。

輸出全体は順調な伸びを続けている。だが原油価格が高騰すれば、日本の貿易収支は赤字になりやすい。アメリカ向けの鉄鋼輸出は2ケタの増加を維持している。したがって5月の統計からみる限り、貿易の状態はまだ正常だ。しかし今後は、トランプ大統領が主導する貿易戦争の影響が出てくることは避けられない。

       ≪20日の日経平均 = 上げ +276.95円≫

       ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ


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金利2%の そのあとは? / アメリカ (上)
2018-06-22-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 利上げ街道 ひとり旅 = アメリカの中央銀行であるFRBは先週13日に開いた政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げ年2.00%とすることを決めた。政策金利2%は、リーマン・ショック直前の08年夏以来10年ぶりのこと。EUや日本などの先進国がまだゼロ金利から抜け出せないなかで、アメリカだけが金融正常化への道を突っ走る姿を鮮明にした。

今回の利上げは早くから予想されていたため、市場は全く驚かなかった。しかしFRBは同時に、今後の利上げテンポにも言及。その解釈を巡って、市場は大いに頭を悩ますことになった。そのテンポはことし中にあと2回。19年は3回、20年は1回という内容。まず、ことし後半に2回の引き上げがあると、政策金利は2.5%に。これは速すぎるのではないかという警戒論が、一部に発生した。

だがFRBのパウエル議長は、アメリカの景気が好調なことを強調。だから利上げのテンポを速められるという論理で、警戒論を鎮圧した形となっている。しかし19年も3回の利上げを実施すれば、政策金利は3%を超えてしまう。それでも景気は大丈夫なのか、という疑問は根強く残っているようだ。

ダウ平均株価は、先週から今週にかけて続落した。この下落にFRBの姿勢がどのくらい影響したのかは、よく判らない。というのもトランプ大統領が中国に対する制裁関税を発動、これが株価下落の大きな要因になったからである。おそらく株価を下落させた主役は制裁関税、FRBの引き締めスケジュールは脇役になったものと思われる。

                             (続きは明日)

       ≪21日の日経平均 = 上げ +137.61円≫

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 


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金利2%の そのあとは? / アメリカ (下)
2018-06-23-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 忍び寄る世界貿易不況の影 = FRBが強調するように、たしかにアメリカの景気は好調を持続している。たとえば5月の失業率は3.8%で、18年ぶりの低さ。小売り売上高は前月比で0.8%増と、予想をはるかに上回った。消費者物価も前年比2.8%上昇している。これならFRBが利上げを速めるのも当然と言えるだろう。だが、そこへ立ちふさがったのがトランプ主導の貿易戦争だ。その悪影響が大きくなれば、利上げは難しくなる可能性がある。

それだけではない。大半の新興国が、アメリカの利上げによる資金の流出と貿易戦争のダブル・パンチに苦しみ始めた。自国の通貨を防衛するため、アルゼンチンやブラジル、インドネシアやフィリピンなど多くの国が利上げを余儀なくされた。利上げは景気の悪化を招き、貿易戦争は輸出を阻害する。それが時間とともに世界に拡散して行く。

そうした環境のなかで、ECB(ヨーロッパ中央銀行)が「量的緩和政策を年内で打ち切る」と発表した。ECBは15年1月から量的緩和を開始、現在でも国債などを月300億ユーロ買い入れている。それを年内で取り止めるというわけだ。アメリカの引き締め促進に刺激された感じもあるが、世界経済の動向しだいでは実現できない可能性もあるのではないか。

アメリカやヨーロッパの中央銀行が、金融政策の方向を緩和から引き締めに転換しようとしているのは、次の世界同時不況に備えるためでもある。この観点からすると、日本の場合は全く身動きがとれないまま。したがって不況がやってきても、財政面からも金融面からも対策を講ずる余地がない。世界貿易不況の影が見え始めただけに、とても心配である。

       ≪22日の日経平均 = 下げ -176.21円≫

       【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】  


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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】
2018-06-24-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪38≫ 人工の光線 = 「この話は絶対にオフレコだぞ。マーヤも承知しておけ。本当は話したくないんだが、賢人会の議長から『話しておくように』と、わざわざ指示があった。なんで、あのウラノス博士がこんなことを言うのか、私には解らない」

不満そうな口ぶりで、シュベール博士が訥々と喋り始めた。名指しされて、マーヤも緊張の面持ちで聞いている。
「われわれが発見した新金属ダーストニウムは不思議な力を持っていて、少量を混合するだけで鉄と金とニッケルなどを融合させてしまう。この新しい合金は素晴らしい強度と強い磁性を帯びるから、これを使って高速道路の路面で太陽光発電をしていることは、もう知っているな」

シュベール博士の顔が、いちだんと引き締まった。こちらも思わず身を乗り出す。

「ところがダーストニウム合金には、唯一の弱点があるんじゃ。それは、ある特殊な光線に当たると、例の魔法の力を瞬時に失ってしまうことなんだ。だから、この光線を照射されると、発電設備が破壊される。自動車も磁力を失い、走行できなくなる。
マーヤ君、君の体内にも微量の新合金が使われていることは知らんだろう。神経回線の接着用に、電導率の高いこの金属が使われているんだ。だから、もし光線Xが天から降ってくると、ロボットは直ちに機能しなくなってしまうだろう」

――それは大変だ。ところで、どんな光線なんですか。

「それは言えない。ただ有難いことに、この光線は自然界には存在しない。あくまで人工的な光だとだけ言っておこう。でも、ちょっとした知識と技術があれば、誰でもこの光線は作り出せる。そこが怖ろしいところなんじゃ。

要するに、この光線が発射されると、わが国のインフラは破壊される。それどころか、気象のコントロールもできなくなるだろう。君も知っている宇宙バリア。あれもダーストニウム合金の細い線で造られている。その強力な磁性の吸着力と反発力を利用して、人工衛星から投網のように発射して広大な網を空間に広げるわけだ。これも人工光線が注がれると、破れてしまう。すると気象のコントロールができなくなり、この国は厳しい自然に曝される」

シュベール博士はやれやれという表情で、こう締めくくった。「ダーストニウムと人工光線の話は、だから国家機密なんじゃ。おそらく知っている人は10人もいないだろう。それなのに何で、地球人の君に教えるのか。ウラノス議長はとても思慮深い人だから、何かを考えているんじゃろうが」

                             (続きは来週日曜日)


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今週のポイント
2018-06-25-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 株価は曲がり角に = ダウ平均株価は先週21日まで、8営業日連続で下落した。この間の下げ幅は861ドルに達している。主たる原因は、世界貿易戦争に対する警戒感。これにFRBによる利上げテンポの加速見通しが加わった。株安は各国の市場にも伝染し、世界市場の時価総額は1月下旬に比べて800兆円以上も減少したと試算されている。大天井を迎えたかどうかは即断できないが、株価が大きな曲がり角に来たことは確かなようだ。

貿易戦争の影響は、特に中国関連銘柄に色濃く表れ始めた。ボーイングやキャタピラー、インテルからウォルト・ディズニーに至るまで。業績見通しが下方修正され、売りを誘った。同時に貿易戦争はアメリカ国内の物価上昇をもたらし、消費の縮小を招く。それに金利上昇が加わって、景気の先行きにも懸念が生じてきた。

結局、ダウ平均は先週510ドルの値下がり。これに対して日経平均は週の途中で反発したこともあり、週間335円の下落だった。反発は円相場の安定を背景に、国内の個人投資家が下値拾いに出動したためとみられる。だがアメリカと中国、EU、カナダなどの間で始まった関税引き上げ競争は、拡大する様相だ。今週は逆張りが好きな個人投資家も、様子見に転じるのではないか。

今週は26日に、5月の企業向けサービス価格。28日に、5月の商業動態統計。29日に、5月の労働力調査、鉱工業生産、住宅着工戸数、6月の消費動向調査、東京都の消費者物価。アメリカでは25日に、5月の新築住宅販売。26日に、6月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。28日に、1-3月期のGDP確定値、5月の小売り売上高。また中国が30日に、6月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ


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がんじがらめの 円・ドル相場 (上)
2018-06-26-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 5月からずっと静止状態 = 円の対ドル相場が、全く動かない。東京外国為替市場の中心相場でみると、5月1日が109円30銭。先週22日が109円96銭だった。この間5月21日には111円台にまで下がったが、この2か月間は109円―111円の範囲内での小動きにとどまっている。さらに年初からの推移をみても、値動きは112円台から104円台の間に限られている。こんなに為替相場が動かないことは、きわめて珍しい。

その理由は、円相場を上昇させる要因と下落させる要因が均衡しているためだと考えられる。しかも、これらの要因はいくつも重なり合っている。最近の円ドル相場は、まるで複雑な蜘蛛の糸に絡めとられた獲物のように、身動きがとれなくなっているようだ。1ドル=110円前後の相場は、日本経済にとっては好ましい水準だと言えるだろう。だが、こうした膠着状態はやがて崩れる。

たとえばFRBが政策金利を2%に引き上げた。これは日米間の金利差が拡大することを意味するから、明らかにドル高・円安の大きな要因となる。にもかかわらず、そのときの円ドル相場はほとんど動かなかった。トランプ大統領が中国などに対する輸入関税の引き上げを発表。これがドル安・円高の要因となって、金融面からのドル高・円安効果を相殺してしまったからだと考えられている。

さらに朝鮮半島の緊張緩和は、円安要因として働く。原油の国際価格が上昇すれば、これも円安の要因。さらにECB(ヨーロッパ中央銀行)が金融緩和政策の終結を打ち出すと、これも円安要因。アメリカの高金利で新興国からの資金流出も、ドル高・円安の効果を持つ。しかし中国やEUなどが報復関税を発表すれば、円高要因に。国内の政治情勢が安定度を増すと、これも円高要因になりやすい。ところが、これらの要因はいつも同じ効果を発揮するとは限らないから厄介である。

                                (続きは明日)

       ≪25日の日経平均 = 下げ -178.68円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ


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がんじがらめの 円・ドル相場 (下)
2018-06-27-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 円安の予想が強いけれど = アメリカの金利が上昇して日米間の金利差が拡大すれば、為替はドル高・円安の方向に動く。理屈のうえでは、その通りだ。いまはFRBが「年内あと2回の利上げ」を行うという予想が圧倒的に強い。だがらドル高・円安の要因とみられている。しかし何らかの理由でこの予想が「年内あと1回」に変わると、この要因はたちまちドル安・円高の要因にひっくり返る。北朝鮮を巡る情勢も、何か不安が持ち上がれば同様だ。

このように円相場を縛り付けている蜘蛛の糸は、意外に切れやすい。ただ現時点でみる限り、アメリカの金利も北朝鮮情勢も変化を生じる兆しはない。したがって円ドル相場が動くとすれば、円安の方向だという予想が強くなっている。一方、円高要因として考えられている貿易戦争は始まったばかり。すぐに終息する気配はない。したがって円安に大きく振れるという見方は少ない。

現在の1ドル=110円前後という相場は、日本経済にとって“適温”と言えるだろう。輸出企業は100-105円程度を想定しているから、採算的にはかなり有利だ。原油などの輸入価格も、何とか我慢できる範囲内に収まっている。しかし120円程度の円安状態が続くと、電気代やガソリン代が急騰し消費が圧迫されてしまう。

だから、いま膠着状態にある円ドル相場は、日本経済にとっては非常に好ましい。だが為替の世界では、そんな適温の状態が長続きすることはありえない。間もなく蜘蛛の糸の一本が切れ、全体がバランスを崩すことになるだろう。ただ、どの糸が切れるかは誰も予測できない。梅雨明けの相場は円高になるのだろうか。それとも円安に傾くのだろうか。

       ≪26日の日経平均 = 上げ +3.85円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ


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景気対策に乗り出した 中国
2018-06-28-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 心配な銀行の不良債権増加 = 中国人民銀行は24日、預金準備率を0.5%引き下げると発表した。大手銀行の場合、現行の16%が15.5%に下がる。預金準備率というのは、預金保有額の一部を強制的に中央銀行に預けさせる政策。その比率が下がれば銀行の貸し出し余力が増え、景気の下支えになると考えられている。人民銀行によると、今回の引き下げで7000億元(約12兆円)の金融緩和効果があるという。

アメリカの中国に対する制裁関税は、7月6日に発効する。そのショックを和らげるための措置とも考えられるが、中国経済自体にも、いろいろ問題が起きてきたようだ。たとえば5月の経済指標は、軒並み悪化している。1-5月間の固定資産投資額は前年比6.1%の増加で、1-4月間の実績より0.9ポイント低下した。小売り売上高も15年ぶりの低い伸び。自動車の売れ行きは前年割れとなった。

中国では、景気対策の最初の手段に預金準備率を引き下げることが多い。しかも過去の経験では、間を置かずに何回か連続して下げる。今回もそうなる公算は大きいだろう。ところが中国経済の現状をみると、非常に心配な現象が生じている。それは企業の債務不履行が多発している点だ。1-6月間では、元建てとドル建てを合わせて4000億円超の不払いが発生している。

そこで銀行の貸し出し余力が増えると、どうなるか。おそらくは、経営に行き詰まった企業への貸し出しが増えるだろう。すると銀行は、不良債権のタネを抱え込むことになる。中国の場合は、政府が銀行の貸出先を規制することもできる。だが厳しく規制すれば、景気の浮揚効果は薄れるだろう。

       ≪27日の日経平均 = 下げ -70.23円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ


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大麻が10月から 合法化 / カナダ (上)
2018-06-29-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 世界の潮流は所持・使用OKへ = カナダのトルドー首相は先週「大麻の所持と使用を10月17日から合法化する」と発表した。その理由について、同首相は「規制しているため、犯罪組織に年60億カナダ・ドル(約5000億円)の利益を挙げさせている」「いまの禁止制度では、子どもたちを守れない」からだと説明している。与野党も合法化に賛成しており、大麻が10月に解禁されることは確実だ。

世界を見渡すと、多くの国や地域が大麻を条件付きで解禁している。大麻というのはスペイン語でマリファナ。そのスペインでは個人が栽培したり使用することは合法だが、販売することは禁じている。またウルグアイは完全に合法。オランダも事実上は規制がないといわれる。アメリカは州によってバラバラ。ワシントンDCやカリフォルニア州など10州は少量なら所持できる。全面禁止の州は減っており、いまや10州を残すのみだ。

大麻の所持や使用を規制すれば、密輸がはびこり値段は高騰する。そこに犯罪組織が介入してくるが、規制をはずせば価格が下がり闇市場も消滅する。これがトルドー首相の考え方だ。その背景には、大麻は他の麻薬に比べて中毒性や依存性が低く、過剰摂取による死亡例もないという医学的な裏付けもあるようだ。

こうしたことから、大麻の解禁は世界的な広がりをみせている。ただ反対論も根強い。その多くは宗教的な規律によるもので、イスラム圏では大麻を所持しているだけで死刑になる国もあるという。また先進国でも「大麻の吸引は他の麻薬中毒の入り口になりやすい」という指摘がある。なおオリンピックでは、大麻の成分が検出されるとドーピングとみなされる。

                                 (続きは明日)

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大麻が10月から 合法化 / カナダ (下)
2018-06-30-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本人渡航者はご用心 = 日本は大麻取締法という法律で、大麻の流通を厳しく規制している。大量の密輸が空港で摘発されたり、芸能人が逮捕されてテレビ番組を降ろされたり。ニュースにはこと欠かない。15年には、2101人が大麻取締法にもとづいて逮捕された。ただ暴力団による売買は、なかなか撲滅できない。

この大麻取締法は、少し変わった法律だ。よく読むと、大麻の所持や譲渡は禁止され、違反すると罰則が適用される。しかし大麻の使用に関する罰則規定はない。これは七味とうがらしには大麻の実、神社の〆め縄には大麻の茎が使われるなど、古くから生活の場で使われているからだ。そこで使用については規定されていない。だが麻薬としての大麻を使用すれば、栽培あるいは譲渡の罪が問われる仕組みになっている。

また大麻取締法は、日本人が海外で大麻を所持したり譲渡したりすることを禁じている。だからカナダで大麻が解禁されたとしても、カナダへ旅行した日本人がカナダ人に勧められてマリファナを吸えば、立派な犯罪になる。吸ったことが罪になるわけではなく、大麻を譲渡されたことが法律違反になるわけだ。

世界の流れは、完全に大麻を解禁する方向に進んでいる。そうしたなかで、日本はどうするのだろうか。たしかに密輸や密売はなくなるかもしれないが、暴力団はもっとタチの悪い麻薬の流通に精を出すに違いない。東京オリンピックを前に、大麻は麻薬なのか、麻薬ではないのか。そんな議論が始まりそうである。

       ≪29日の日経平均 = 上げ +34.12円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】  


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