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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
今週のポイント
2021-03-01-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 振幅大きく不安定な動きに = 3万円台を踏み固めていた日経平均株価が先週末、大幅に下落した。26日の下げは1202円、4年8か月ぶりの下げ幅となった。週間でも1052円の大幅安。終り値は2万9000円を割り込んだ。直接の原因は、前日のダウ平均が560ドルも値下がりしたことにある。その原因は、アメリカの長期金利が1.6%台にまで上昇したことにある。市場の空気は、確かに一変した。

ダウ平均は先週562ドルの値下がり。終り値は3万1000ドルを割っている。長期金利が上昇したことから、債券市場への資金移動、それにFRBが金融緩和政策を修正するのではないかという疑念が強まった。このことを察知していたパウエルFRB議長は、23日の議会公聴会で「金利の上昇は景気回復への期待の表れで、緩和政策は長く続ける」と強調していたが、市場は疑心暗鬼で受け取った。

今回の大幅値下がりは、一過性の調整なのか。それとも下降局面に突入する兆しなのか。市場の見方は分かれているようだ。しかしFRBが緩和政策を持続すると明言しているので、資金はすぐに株式市場に戻ってくるだろう。だがその半面、金利が高止まりすれば警戒感も消滅しない。したがって今週は株価の値動きが大きく、不安定な相場となる可能性が大きい。

今週は1日に、2月の新車販売。2日に、10-12月期の法人企業統計と1月の労働力調査。アメリカでは1日に、2月のISM製造業景況指数。3日に、2月の非製造業景況指数。5日に、2月の雇用統計と1月の貿易統計。また中国が7日に、2月の貿易統計を発表する。なお5日に、中国の全国人民代表大会が開幕。また7日に、首都圏などの緊急事態宣言が解除の予定。

       ≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ


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いい金利上昇? 悪い金利上昇? (上)
2021-03-02-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 戸惑ったウオール街 = 長期金利が上昇して、株価が大幅に下落した。これが一時的な調整なのか、それとも下降局面への入り口なのか。すべては金利の上昇を良質とみるか、悪質とみるかで変わってくる。ニューヨーク市場はその見極めを巡って、大いに戸惑ったようだ。じっさい金利上昇の原因はいくつもあって、その善悪を判定することはきわめて難しい。

パウエルFRB議長は、議会の公聴会で「金利の上昇は景気回復への期待を反映したもの。金融緩和政策は長く続くことになるだろう」と力説した。つまり現在の金利上昇は“良質だ”と説明している。だが市場は半信半疑。景気が回復すれば、FRBが緩和政策を続ける必要はなくなるのではないか。そうなれば、株高の原動力となっている過剰資金の供給が途絶えることになる。金利上昇は“悪質”かもしれない、と警戒心を強めてしまう。

下院は先週、総額1兆9000億ドルの追加コロナ対策を可決した。ワクチンの接種も進んでおり、ことしの後半には景気が急拡大するだろう。そうなれば資金需要が増えて、金利は上昇する。また国債が大幅に増発されるから、これも金利の上昇要因になるはずだ。こうした思惑が先行し、10年もの国債の利回りは先週1.6%を超えた。株式の平均配当利回りは1.5%だから、資金は株式市場から債券市場に流れやすくなる。

金利が上昇すれば、企業の負担は重くなる。住宅ローン金利も上昇するから、株価にとってはマイナス材料になる。つまり全く奇妙なことだが、現在の株式市場にとっては「景気回復が悪材料」になりかねない。振り返ってみれば、これまでの株高は「コロナ不況下」で達成された。株価と実体経済の関係は、これまでの“乖離”から“逆乖離”へと進行するのだろうか。

                          (続きは明日)

       ≪1日の日経平均 = 上げ +697.49円≫

       ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ

         
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いい金利上昇? 悪い金利上昇? (下)
2021-03-03-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 間の悪い日銀の突飛な“実験” = 株式市場にとって、金利の上昇はだいたいマイナス材料。本当は“いい金利上昇”など、ないのかもしれない。ただ金利上昇という現象が株価に与える影響は、過大評価されているフシがある。市場にとっていちばん恐ろしいのは、金利が上がるほど景気がよくなって、中央銀行が金融を引き締めることだろう。その観点からすれば、最も注意すべき経済指標は物価だということになる。

アメリカ商務省の発表によると、FRBが最も重視している1月のPCE(個人消費支出の物価指数)は前年比1.5%の上昇だった。この上げ幅は11か月ぶりの大きさ。今後も上昇率は拡大する見通しだ。その一方、雇用の回復は遅れているので、FRBが直ちに政策を転換することはない。しかし物価がどこまで上がったら、FRBが行動を起こすのかは不明。そこが市場の警戒感を強めている。

日本の金利も、アメリカに引きずられて上昇した。10年もの国債の利回りは先週0.175%まで上昇、5年1か月ぶりの高さになった。日銀がゼロ金利政策に踏み切る前の水準に戻ったことになる。しかし、その上げ幅はきわめて小幅。このため日米間の金利差はむしろ拡大し、ドル高・円安が進行した。それでも市場には、やはり不安感が広がっている。

輪をかけたのは、日銀が秘かに実施したある“実験”。これまで恒常的に行なってきたETF(上場投資信託)の買い入れを突然ストップしたのである。2月中は1200円を超えた下落となった26日を除けば、いっさい買わなかった。日銀は「株価が上昇基調にあるとき、ETFの買い入れを止めるとどうなるか」を“実験した”のだと言われている。だが、まことに間の悪いときの実験になってしまい、株価の下落に拍車をかける形となった。

       ≪2日の日経平均 = 下げ -255.33円≫

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ


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ウラ読みが必要な 求人倍率統計
2021-03-04-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 7か月ぶりの高さになったけれど = 厚生労働省は2日、1月の求人倍率統計を発表した。それによると、全国平均の有効求人倍率は1.10倍。前月より0.05ポイント上昇して、昨年6月以来の高さを取り戻した。求人倍率というのは、全国のハローワーク(職業安定所)に寄せられた求人数と求職数の倍率。数値が高いほど人手が不足し、就職しやすい状態であることを示す。だが1月の倍率上昇は、手放しでは喜べないようだ。

求人倍率統計には、過去3か月分を集計した有効求人統計と、最新月だけの新規求人統計がある。そして1月の新規求人統計をみると、求人数は前月より3.1%増加、求職数は2.3%減少した。求人数が増えれば、倍率は上がる。だが求職数が減っても、倍率は上がる。コロナ不況で仕事探しを諦めた人が増えて、求人倍率を押し上げた側面もあるわけだ。

有効求人倍率を地域別にみると、非常に興味深い。まず倍率が最も高かったのは福井県で1.64倍。次いで岡山県、岐阜県の順。反対に倍率が最も低いのは沖縄県で0.71倍。次いで神奈川県、千葉県の順。驚いたのは、福井県がなんと28か月にわたって全国1位の座を死守していることだ。その理由を解明する研究も進んでいるという。

一方、首都圏の成績は悪い。1月の有効求人倍率は東京都が0.91倍、神奈川県が0.89倍、千葉県が0.99倍、埼玉県が0.98倍。いずれも1倍を割り込んでいる。全国で倍率が1を下回ったのは9都府県だが、そのうちの4つが首都圏になった。これが緊急事態宣言の影響であることは明らか。さらに宣言が解除されても、なかなか倍率が上がらないことも事実のようである。

       ≪3日の日経平均 = 上げ +150.93円≫

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ


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オリンピックは 鬼門だ! : 菅首相
2021-03-05-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 何をやっても評価は下がる = 菅首相は3日夜の記者会見で「首都圏の緊急事態宣言を2週間延長する」と発表した。ご自身は「自分が決めた」と主張したかったようだが、一般人は「首都圏の4知事に押し切られた」と受け取ったようだ。しかも宣言延長で苦しさが増す飲食・宿泊・娯楽などの業界が発する恨み節は、4知事でなく菅首相に向けられることになってしまった。

菅首相は緊急事態宣言の早期解除に固執してきた。経済への悪影響を心配するからだけではない。もう3月、オリンピックまで時間がないからだ。政府はこれまで、多くの競技場に定員の半分まで観客を入れる。外国人観客についてはPCR検査の証明書を持つ人だけを受け入れ、日本国内での行動は制限する。選手や関係者についても、同様の条件で対処したいと考えてきた。

しかし時間がなくなってきたため、準備が間に合わない。たとえば選手や大会関係者だけでも1万5000人以上。それに観客が加わったとき、国内の医療体制は耐えられない。ワクチンの接種も、夏にはピークを迎える。そこで海外からの観客は受け入れないことを検討中。仮にそうなるとインバウンドの需要は消え去り、オリンピックの経済効果は激減する。これまで緊急事態に耐えてきた業界からは不満の声が沸き起こり、これも菅首相に向けられる。

菅首相はオリンピック開催を「人類がコロナに打ち勝った証し」と捉えている。逆に言うと、もしオリンピックの開催に失敗すれば、自身の政治的生命にかかわると考えているのだろう。しかし最近の世論調査では「オリンピック中止もしくは再延期」の声も強まってきている。たとえば読売新聞の調査では58%が「開催してほしくない」と答えている。菅首相は世論とのかい離にも苦しまなければならない。何をやっても評価は上がらない。安倍さんはいいときに辞めたものだ。

     ≪4日の日経平均 = 下げ -628.99円≫

     ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ


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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (51)
2021-03-06-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 新型コロナの年内終息は非現実的 = WHO(世界保健機関)は先週「世界のコロナ感染者が7週間ぶりに増勢に転じた」と発表した。同時に「ワクチンの効果は見えてきたが、それでも年内の終息は非現実的だ」との見解を表明した。日本時間5日午前0時の集計で、世界の感染者数は1億1500万人。前週より261万人増えている。死亡者数は255万9576人で、5万4500人の増加だった。

国別では、アメリカの感染者が2877万人。死亡者は51万8459人、前週より1万2511人増加した。1月中の2万人を超えた増加数よりは縮小したが、まだ驚くほど多い。そのアメリカでは、テキサス州がすべての規制を解除、マスクの着用も義務付けないことになった。バイデン大統領が「ネアンデルタール人並みの知能だ」と批判する始末。先が思いやられる。

死亡者数だけをみると、ブラジルが25万人台。続いてメキシコが18万人台、インドが15万人台。イギリスが12万人台、イタリアが9万人台、フランスとロシアが8万人台、ドイツとスペインが7万人台となっている。ただ各国とも増勢が強まってはいない。このため都市封鎖や店舗の営業などの規制を部分的に緩める国も目立ち始めた。

日本の感染者は43万7431人、前週より7264人増えた。前々週の7414人増加と、あまり変わらない。死亡者は8156人で397人の増加。前々週の447人増加よりは縮小した。問題は変異ウイルスが19都府県に広がり、感染者が234人発見されたこと。検査数が少ないため、実際はもっと拡大しているものと思われる。こうしたなかで、政府は首都圏4都県の緊急事態宣言を2週間延長した。

       ≪5日の日経平均 = 下げ -65.79円≫

       【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】     

          
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今週のポイント
2021-03-08-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ “金利上昇”の余震が続く = 予想した通り、株価は大きな振幅で上下動を繰り返した。たとえば日経平均は先週、700円近く上げた日もあったが600円を超えて下げた日もあった。さらに1日のなかでの振幅も大きい。たとえば5日のダウ平均は、上値と下値の差が813ドルに及んだ。これらの現象は、金利上昇に怯えた投資家の不安がまだ収まらず、方向感を見失っていることを示している。

ダウ平均は先週564ドルの値上がり。パウエルFRB議長は討論会で「一時的に物価が上昇しても、FRBは忍耐強く対処する」と述べたが具体的な説明はなく、市場は売りに走った。しかし予想を大きく上回る2月の雇用統計が発表されると、株価は急騰した。景気が良くなれば金融緩和政策は修正されるという警戒感は、すっ飛んでしまったようだ。ここにも投資家心理の混乱がみてとれる。

日経平均は先週102円の値下がり。円相場が108円台まで下落しても、株価は上昇しなかった。今週も余震は続くだろうが、株価の振幅は縮小する公算が大きい。ただ先週も一時1.62%まで上昇したアメリカの長期金利。16-17日に予定されるFRBの政策決定会合。それにアメリカの物価動向からは、目を離すことが出来ない。

今週は8日に、2月の景気ウオッチャー調査と1月の景気動向指数。9日に、1月の家計調査、毎月勤労統計、10-12月期のGDP改定値。11日に、2月の企業物価。12日に1-3月期の法人企業景気予測調査。アメリカでは10日に、2月の消費者物価。12日に、2月の生産者物価と3月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が10日に、2月の消費者物価と生産者物価を発表する。

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ


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投資家も“分断”された? : ウオール街
2021-03-09-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 割れた雇用統計の評価 = アメリカ労働省は5日、2月の雇用統計を発表した。注目された非農業雇用者数は37万9000人で、事前の民間による予想を大幅に上回った。まだコロナ前の水準には及ばないが、それでもアメリカ経済の強い回復力を示した数字だと評価されている。ところが株式市場に限ってみると、その評価は二分された。順調な雇用の回復は、売りなのか買いなのか。

この発表を受けて、この日のダウ平均は572ドルも上昇した。景気回復の勢いが強まったことを、素直に好感したからである。ところが、この動きに疑問を持った投資家も少なくなかったようだ。というのも最近の市場では「景気回復→FRBの緩和政策修正」という読み方が、圧倒的に強かったからである。ではなぜ投資家の考え方が一変したのだろうか。

雇用統計によると、2月の平均時給は30ドル01セントだった。昨年2月に比べると1ドル50セントも上昇している。専門家はこの時給上昇が消費を増やし、将来の物価上昇につながるとも指摘した。それならインフレ傾向が強まり、FRBの政策変更をもたらしやすい。株式市場にとっては、大きな警戒要因になってもおかしくはない。

株価は下落すれば、その反動で上昇することが多い。5日のダウ急騰は、その前の下落の反動だったとも考えられる。しかしFRBの政策変更を警戒していた投資家が、急に楽観的になったわけではなさそうだ。もともと警戒的な投資家と楽観的な投資家が存在し、5日は楽観的な投資家が買いに回ったということだろう。政治・人種・地域で分断されたアメリカ。株式市場も分断されたと言うべきか。

       ≪8日の日経平均 = 下げ -121.07円≫

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ


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経済超大国への野望 / 中国 (上)
2021-03-10-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ アメリカに追い付け追い越せ = 中国の李克強首相は、いま開催中の全国人民代表大会で「21年の経済成長目標を6%以上とする」と表明した。この目標を達成するためには「海外からの投資も利用するが、国内の需要・供給体制を強化しなければならない」と強調している。これはアメリカの締め付けに対抗するためには“自国自強”、つまり内需の拡大とそれに見合った供給力の強化が不可欠になったという意味だ。

新型コロナに関する限り、中国はいま一人勝ちの状態。ほぼコロナの制圧に成功し、主要国のなかでは唯一のプラス成長を達成している。このため専門家の間では、ことしの成長率は8%を超えるという見方が強い。にもかかわらず、中国政府は21年の成長目標を「6%以上」と低めに抑えた。また21-25年の5か年計画についても、数字を出さなかった。なぜだろう。

世界経済に与えるコロナの影響が不透明。だから目標を低めに抑えたのかもしれない。しかし目標を高めに打ち出したり、中期的な目標値を公表することで、アメリカを過度に刺激しないよう配慮したのかもしれない。中国としては出来るだけ“秘かに”経済力の増強を図り、1年でも早くアメリカに追い付き追い越す。そんな遠謀が見て取れる。

中国の名目GDPは20年に、ドル換算で約14兆7900億ドル。前年比で3.0%の増加だった。これに対しアメリカの名目GDPは約20兆9300億ドルで、前年比2.3%の減少。中国はアメリカの70.4%にまで成長している。たとえば日本経済研究センターの試算だと、中国のGDPは「早ければ28年に」アメリカに追い付くという。中国政府としては「アメリカの背中は見えてきた」と考えているに違いない。

                        (続きは明日)

       ≪9日の日経平均 = 上げ +284.69円≫

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ≫   
    

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経済超大国への野望 / 中国 (下)
2021-03-11-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 経済規模がすべてを制す = 中国共産党は昨年11月、新しい5か年計画を策定。そのなかで「35年に1人当たりGDPを中等国並みにする」ことを、目標に掲げた。これは3万ドル程度、現在のイタリアや韓国に匹敵する水準だと考えられている。しかし中国の1人当たりGDPは19年に1万ドルを超えたばかり。日本の4万ドル、アメリカの6万5000ドルに追い付くまでには、相当の時間がかかる。

そういうこともあってか、李克強首相の演説では1人当たりGDPには触れていない。GDPの大きさ、つまり経済規模いっぽんで、勝負する姿勢をみせている。たしかに1人当たりGDPは、国民の豊かさを示す尺度にはなる。しかし世界のなかでの存在感は、経済規模で決まってくる。中国のGDPが世界に占める比率は、10年の9%から20年には17%に拡大した。

もし中国のGDPがアメリカのGDPを上回れば、世界中がびっくりするだろう。多くの新興国が、欧米流の資本主義よりも中国流の社会主義経済政策を取り入れることになるだろう。GDPの大きさに比例して、軍事費や外交予算を増やすことが出来る。基軸通貨も米ドルではなく、中国元に変わるだろう。習近平国家主席の頭のなかに、こんな図柄が描かれていても不思議はない。

アメリカも最近になって、やっと中国の経済的な野望に気が付いた。バイデン大統領も「真の競争相手は中国だ」と言い始めた。半導体の中国向け輸出を規制したりしている。しかし中国に負けないためには、アメリカ自身が成長しなければならない。もし政治・人種・地域の“分断”が長く尾を引き、経済の不調が続くようだと、それはアメリカの自滅につながりかねない。中国はそれも期待している。

       ≪10日の日経平均 = 上げ +8.62円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ


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特殊詐欺を 根絶する方法
2021-03-12-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 非通知の機能をなくせばいい = オレオレ詐欺や還付金詐欺などの特殊詐欺。官民あげての大掛かりなPR活動で減る傾向にはあるが、まだまだ活発だ。警察庁の発表によると、昨年は1万3526件が確認され、被害総額は277億8000万円にのぼった。老後の生活資金をだまし取られ困窮しているお年寄りが、なんと多いことか。そこで素人ながら、こんな根絶法を考えてみた。

それは「非通知の電話をなくしてしまうこと」である。どんな詐欺グループも、最初は必ず電話をかけてくる。それも位置などを特定されないために、非通知でかけてくる。だから、もし固定電話でも携帯電話でも非通知の機能がなければ、詐欺は成り立たなくなるのではないか。もし非通知の機能がなくなったら、困る人はいるのだろうか。

調べてみたけれども、よく判らない。もともと電話というのは非通知が原則。そう言えばダイヤル式の電話だと、通知のしようがないわけだ。それがデジタルになって、相手の番号が判るサービスが付け加えられた。しかし、その機能を働かせない新しいサービスとして、非通知が上乗せされたというのである。

詐欺グループは別として、いったい誰がどんな目的のために非通知を使うのだろう。特殊詐欺を根絶するために非通知をなくしたら、何か問題が起こるのだろうか。どうしても非通知を使いたい人は、警察への届け出が必要ということにすればいい。総務省は会食ばかりしていないで、非通知の排除を真剣に考えてもらいたい。国会議員の皆さんも、議員立法を試みたら評判がよくなりますよ。

       ≪11日の日経平均 = 上げ +175.08円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ

           
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◇◇◇ 読者のみなさんに お願い ◇◇◇

   1)この記事を拡散してください。特殊詐欺をなくすために、永田町や霞が関にまで伝わるように。

   2)非通知がなくなったら困る事例を教えてください。

よろしく お願いします。

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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (52)
2021-03-13-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 変異ウイルスの逆襲 = 変異ウイルスの逆襲が始まった。世界の感染者数は1億1800万人、死亡者は261万9799人に。1週間で感染者は286万人、死亡者は6万0200人増えている。いずれも前週の増加数を上回った。特にブラジル型変異ウイルスはブラジルで、イギリス型変異ウイルスはイタリアとフランスで猛威を振るい始めた。これらの国では感染者が急増し、死亡者も増加の傾向をみせている。

日本時間12日午前0時の集計をみると、アメリカの感染者は2915万人、死亡者は52万9267人に達した。死亡者は前週より1万0808人増えており、まだワクチン接種の効果はみられない。死亡者数をみると、ブラジルが27万人台、メキシコが17万人台。次いでインドが15万人台、イギリスが12万人台、イタリアが10万人台。フランスとロシアが8万人台、そしてドイツがスペインを抜いて7万人台に乗せている。

ブラジル型変異ウイルスは、世界の27か国で確認された。特に地元のブラジルでは全土に拡大、感染者の総数は1120万人に達している。増加のスピードも1日で8万人という速さ、アメリカの増加スピードを追い抜いた。またイギリス型は、イタリアとフランスで多く確認されている。これらの変異ウイルスは感染力が強く、死亡率も高い。さらにワクチンの効果も低くなるというから、まことに厄介だ。

日本の感染者は累計44万5050人になった。この1週間では7619人の増加。前週より400人ほど増えている。変異ウイルスも25都道府県に広がり、患者数は380人以上となっている。日本の場合は検査数が少なく、実際の感染者数は何倍も多いと指摘する専門家も多い。死亡者数は累計8477人、1週間で321人増加した。この状態で首都圏4都県の緊急事態宣言が21日に解除できるかどうか。きわめて疑問だ。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +506.19円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     


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今週のポイント
2021-03-15-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウは6日間連騰で最高値更新中 = ダウ平均は先週1282ドルの値上がり。先々週末から6日間の連騰で、史上最高値を更新。この6日間の上げ幅は1855ドルに達した。終り値は3万2800ドルに接近、3万3000ドルを狙う勢いだ。バイデン政権による総額1兆9000億ドルのコロナ対策が成立、新規感染者の増加も鈍ってきたことが、連日の買い材料になった。

日経平均は先週854円の値上がり。円安の進行もあったが、ほとんどはニューヨーク市場の活況に引きずられた形。終り値は2万9700円で、まだ3万円に戻せない。2月末に3万円を割り込んでから、ずっと2万8000円-3万円の間で一進一退している。日本もコロナ対策には巨額の財政を注ぎ込んでいるが、アメリカほど騒がれないのはなぜだろう。

そのアメリカでも、株価はすでに財政支出の効果を織り込んでしまった。バイデン大統領は続けてインフラ整備のための支出を考えているようだが、実現には時間がかかる。とすると、市場は何を目標に据えるのか。目標を見出せないでいると、こんどは「景気回復→物価上昇→FRBの政策修正」を警戒する投資家の空売り攻勢が始まる可能性もないではない。

今週は15日に、1月の機械受注と第3次産業活動指数。17日に、2月の貿易統計。19日に、2月の消費者物価。アメリカでは16日に、2月の小売り売上高と工業生産、3月のNAHB住宅市場指数。17日に、2月の住宅着工戸数。また中国が15日に、2月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお16-17日はFRB、18-19日は日銀の政策決定会合が開かれる。また21日は、首都圏4都県の緊急事態宣言の解除予定日。

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ


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史上最大の景気対策 / アメリカ (上)
2021-03-16-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 景気は劇的に上昇する = バイデン政権の巨額な景気対策が成立した。総額は1兆9000億ドル、なにしろ日本円にすると約200兆円。日本の年間予算の2倍に近い。議会では大揉めに揉め、共和党は上下両院の議員が1人残らず反対。しかし民主党は多数の力で、強引に支出法案を可決した。バイデン大統領としては、最初の成果だと考えられている。

内容は民主党色に溢れている。全世帯の85%に1人最大1400ドルの現金給付、その総額は4000億ドル。失業給付金に2500億ドル、コロナ対策に4000億ドル、中小企業対策500億ドル、地方政府支援3500億ドルなど。いずれもバイデン大統領が選挙戦中に公約していた。中堅所得層以下を重視した対策だと言える。

アメリカ政府によるコロナ不況対策の実施は、これで5回目。トランプ政権も昨年3月を皮切りに、都合4回の対策を実行した。その4回の財政支出は合計3兆8600億ドル。したがって今回を含めると、総計は5兆7600億ドル(約630兆円)に達する。この金額はアメリカのGDPの28%に相当し、日本の年間GDPよりも多い。

これだけの財政支出があれば、経済は確実に急拡大する。たとえば多くの調査機関は、4-6月期のGDP成長率は2ケタの増加。コロナの影響で20年はマイナス3.5%成長だったが、21年はプラス7%前後。37年ぶりの高成長になると予測している。アメリカの景気上昇は、日本経済にとっても大きなプラス材料。だが問題はインフレという副作用が出やすいことである。

                           (続きは明日)

       ≪8日の日経平均 = 上げ +49.14円≫

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ

          
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史上最大の景気対策 / アメリカ (下)
2021-03-17-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 注意点は物価上昇のスピード = アメリカではいまコロナ感染者の増勢が弱まり、規制を少しずつ解除する地域が増えつつある。そこへ史上最大の財政支出が加われば、これまで抑えられてきた消費と設備投資は爆発的に増えるだろう。しかも原油や銅などの国際価格は、投機によって高騰している。したがって物価は、間違いなく上昇する--専門家の見方はほぼ一致している。

特に4-6月期の物価は上がりやすい。というのも昨年4-6月期はコロナの影響で経済活動が抑えられ、物価は落ち着いていたからだ。パウエルFRB議長が最近たびたび「一時的な物価上昇なら、FRBは我慢する」と述べているのは、このことを指しているものと思われる。だが問題は、物価上昇のスピードだ。仮にスピードが予想以上に速かった場合でも、FRBは緩和政策を続けられるのだろうか。

中央銀行は、自国の通貨価値の安定を最大の目標としている。物価が上がれば通貨の価値は下がるから、インフレの阻止が最優先の使命となる。もしアメリカの物価が3-4%も上昇し、インフレの気配が濃厚となった場合、FRBは少なくとも緩和政策を続けることはないだろう。市場がその動向を予知すれば、株価は下がるに違いない。

アメリカの消費者物価は昨年4-6月期、ほぼ0.3%の上昇で推移していた。それが7月以降は1%を超え始め、この2月には1.7%の上昇となった。これが景気の急拡大で、どこまで上昇するか。その結果、FRBは緩和政策の停止、さらには金融引き締めにまで進むのかどうか。市場の関心は、この一点に集中しそうだ。

       ≪16日の日経平均 = 上げ +154.12円≫

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ

           
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緊急事態宣言を解除するワケ
2021-03-18-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ つらい決断を迫られた菅首相 = 菅首相はきょう18日、東京・神奈川・埼玉・千葉に発令中の緊急事態宣言を21日で解除することを決める。病床使用率の低下を重視した結果だが、実は「延長は困難」なので、解除するしかなかったとも言える。首都圏4都県の知事の意見も割れており、今回は菅首相がひとりで決断を下さなければならなかった。

仮に緊急事態宣言を延長すると、どうなるか。まずオリンピックの聖火リレーが25日には始まってしまう。そのとき首都圏は緊急事態というのは、なんとも具合が悪い。オリンピック中止の声が高まるかもしれない。また4月には菅首相が訪米するが、バイデン大統領から「オリンピックは開けるのかね」と質問されかねない。そして当然ながら、飲食業者や宿泊業者からの批判は強くなる。

緊急事態宣言の効果が薄れてきたことも、まぎれもない事実である。最近は繁華街の人出も増加している。ここで延長しても、効果は挙がらないかもしれない。しかも5月の連休前には、また新しい手を打たなければならないだろう。延長すると、1か月後には再び緊急事態を宣言する可能性が出てくる。

そこでやむなく解除となったが、解除してもリスクは大きい。コロナ感染のリバウンドが始まれば「菅首相は判断を誤った」と非難される。すぐに緊急事態の再発令ともなれば、内閣支持率は大幅に落ちるだろう。ワクチンの接種は始まったが、その効果はまだ表われそうにない。それでも菅首相は「解除」を決断しなければならなかった。就任6か月を経たいま、菅首相は最大の試練に曝されたとも言えるだろう。

       ≪17日の日経平均 = 下げ -6.76円≫
 
       ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ


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1年で3倍以上に : 原油価格
2021-03-19-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ バブルの最終局面へ? = 原油の国際価格が急騰している。ニューヨーク商品市場のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は、今週1バレル=65ドル前後で推移。2年4か月ぶりの高値を付けた。昨年3月の価格は20ドル強だったから、この1年間で3倍以上の高騰をみせたことになる。明らかにバブルの症状を示しているが、価格はまだ上昇するのだろうか。

原油価格が高騰した理由は、いろいろある。まずはOPEC(石油輸出国機構)やロシアなど、産油国側の減産。現在も日量800万バレルを減産中で、いま4月以降の継続を検討している。その一方で、世界の需要は増えてきた。中国経済がいち早く回復。さらにワクチン接種が進み、ことし後半の世界経済は確実に立ち直るという見方が強まっている。このため投機資金が流入、価格を押し上げた。

原油価格の高騰は、各国経済に大きな影響を及ぼす。たとえば電気代やガソリン代の上昇を通じて、企業や家庭の負担を増大させる。アメリカでは物価上昇を加速させ、FRBの金融緩和政策を終わらせることにつながるかもしれない。また日本でもコロナ不況からの脱出にとって、重荷となることは避けられない。

原油価格がこの先どうなるかは、投機資金しだい。投機筋がバブル崩壊の危険を感じれば、価格は急反落するだろう。まだ先高と考えれば、100ドルを超える可能性もないではない。原油市場は株式市場に比べると、はるかに規模が小さい。このため価格の変動も大きくなりがちだ。したがってバブルの崩壊も、株式市場に先行して現われることが多い。

       ≪18日の日経平均 = 上げ +302.42円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ

            
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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (53)
2021-03-20-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ アメリカの感染者数が激減した = 世界的にみると、新型コロナ流行の勢いは全く衰えていない。そうしたなかで、アメリカだけが感染者の増加数を減らしている。世界の感染者は1億2121万人、この1週間の増加数は318万人で、前週より32万人増えた。死亡者は268万0712人で、6万0900人の増加だった。ブラジルなど中南米諸国の感染者が急増、ヨーロッパ諸国でも状況は悪化している。

アメリカの感染者は2960万人、死亡者は53万8096人に達した。しかし感染者の増加数はピークだった1月に比べると、ほぼ3分の1程度に縮小している。ワシントンやロサンゼルスなどでは行動規制が部分的に解除され始めた。人口の1割がワクチン接種を終えたが、まだその影響は微々たるもの。都市封鎖などの効果が表れたためとみられている。

死亡者数でみると、ブラジルが累計28万4775人。1週間で1万4119人も増えており、制御が困難な状態に陥った。次いでメキシコが19万人台、インドが15万人台。イギリスが12万人台、イタリアが10万人台、フランスとロシアが9万人台、ドイツとスペインが7万人台など。中南米もヨーロッパも、変異ウイルスの拡大が著しいようだ。

日本の感染者は累計45万3486人に。1週間の増加数は8436人で、前週の増加数7619人を上回った。死亡者は累計8778人、1週間で301人の増加だった。前週の増加数321人よりは減っている。こうしたなかで政府は首都圏4都県の緊急事態宣言を解除したが、やはり警戒すべきは変異ウイルスの拡散。すでに26都道府県で400件余りの感染者が確認されている。

       ≪19日の日経平均 = 下げ -424.70円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     


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今週のポイント
2021-03-22-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 企業業績の回復に賭ける市場 = ダウ平均は先週17日、終り値で3万3000ドルに乗せた。バイデン政権の大型景気対策とコロナ感染の落ち着きを好感したためである。しかし、その後は大きく反落、週間では151ドルの値下がりとなった。高値警戒感による利益確定売りが出たためである。FRBが「金融緩和政策は長く続ける」と強い意志を表明したが、市場の反応は鈍かった。

日経平均も先週18日、2月末以来の3万円台を回復した。ニューヨーク市場の活況と、首都圏の緊急事態解除を好感したためである。しかし、こちらもあとは反落。週間では74円の値上がりにとどまった。反落したのは高値警戒感と、日銀が日経平均に連動するETF(上場投資信託)を買い入れの対象から外したためである。

ニューヨーク市場の場合、財政と金融面からの景気対策はすべて出尽くした形。コロナの落ち着きと景気の急回復はプラス材料だが、高値警戒感も強まっている。その綱引きのなかで、市場が次に頼るのは企業の業績回復だ。3月期の業績が予想以上によくなることに賭ける形になるだろう。東京市場もほぼ同じ。ただコロナ感染者の増加スピードからも、目は離せない。

今週は24日に、2月の企業向けサービス価格。アメリカでは22日に、2月の中古住宅販売。23日に、2月の新築住宅販売。25日に、10-12月期のGDP確定値が発表される。なお25日には、聖火リレーが福島からスタート。

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ


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中央銀行への 疑念 (上) ・・・ FRB
2021-03-23-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ パウエル議長の完璧すぎた説明 = 「バイデン政権の大規模な財政支出とワクチンによる新型コロナの抑制で、景気は急回復する。物価も上昇するがそれは一時的な現象だから、FRBは現在のゼロ金利と量的緩和政策を23年まで継続する」--FRBのパウエル議長は先週17日、こう公式に表明した。なにしろ中央銀行トップの発言である。株式市場にとって、こんなに力強い贈り物はない。ところが、そのあとダウ平均株価は大きく反落してしまった。

コロナ不況に対処するため、FRBはいま短期金利を限りなくゼロに近づけると同時に、市場から毎月800億ドルの国債と400億ドルの住宅ローン担保証券を買い入れている。しかし市場では、景気が急回復するとFRBは「この緩和政策を修正するのではないか」という心配が強まっている。パウエル議長の発言は、この心配をはっきり否定したわけだ。

たしかに景気が回復すれば抑え込まれていた消費が爆発し、物価は上昇するという見方が強い。FRBもことし10-12月期には、物価が2.4%と10年ぶりのインフレ率になると予測している。それでもパウエル議長は「忍耐強く、緩和的なスタンスを維持する」と約束した。しかし投資家の多くは、疑念を捨て切れずにいるようだ。

というのも、物価がもっと上昇する可能性があるためだ。ことし後半の物価が3-4%にも上昇したら、FRBは少なくとも緩和政策を停止するだろう。物価の上昇が止まらなければ、引き締め政策に踏み切るかもしれない。現にFRB政策決定会合のメンバー18人中、4人が「22年中の利上げ」を予想している。市場にとって、パウエル発言は“模範答案”であり過ぎたようだ。さて、日本の場合は全く様相が異なる。

                          (続きは明日)

       ≪22日の日経平均 = 下げ -617.90円≫ 

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ

          
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中央銀行への 疑念 (下) ・・・ 日本銀行
2021-03-24-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 真意が不明な政策の微調整 = 日銀は先週19日、金融緩和政策の修正を発表した。そのポイントは2つ。1つは長期金利の変動幅を、現行のプラス・マイナス0.2%からプラス・マイナス0.25%に拡大したこと。もう1つはETF(上場投資信託)の買い入れについて「月間6兆円」という原則を廃止、買い入れ対象から日経平均に連動するETFを外してTOPIX連動だけにしたこと。日銀は緩和政策の副作用を抑制するために、こうした修正を実施すると説明している。

長期金利の変動幅が小さいため、いま金融機関は国債の売買で利益を出すことが難しい。この状態を改善するため変動幅を広げたと日銀は説明するが、こんな広げ方で状況は改善するのだろうか。それよりも国債の増発で長期金利が上昇することに、いまから備えた措置ではないのか。市場がこう疑うのも無理はない。

日銀のETF買い入れ残高は、2月末で35兆円を超えている。ETFのなかには業績の悪い企業の株式も含まれるが、日銀が買うので株価が下がらない。この弊害を少なくするため、銘柄数の多いTOPIX関連一本に絞ったのは理解できる。しかし同時に「月間6兆円」の原則を廃止したのは、なぜだろう。黒田総裁は「ETFの買い入れを減らすつもりはない」と言っているが、減らさないのなら原則を消去する必要はないのではないか。

日銀はいずれ、保有したETFを売らなければならない。だから保有額をあまり増やしたくはない。日銀がこう考え始めてもおかしくはない。アメリカではFRBが「23年までの緩和政策継続」を表明したにもかかわらず、市場は緩和政策の終了を警戒し始めた。この空気を感じ取った日銀が、現在の政策の“出口”を意識しても不思議はない。少なからぬ投資家が、そう感じ始めた。

       ≪23日の日経平均 = 下げ -178.23円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ


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ほんとに開けるのか? オリンピック (上)
2021-03-25-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 海外客なしで2000億円の損失 = 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は先週20日「コロナの感染状況を踏まえて、海外からの一般客の受け入れを断念する」と発表した。IOC(国際オリンピック委員会)も了承している。またスポンサーなどの関係者の入国をどうするか、各会場の観客数をどこまで規制するかは、4月中に決めることになった。

事前に海外で販売された入場チケットは約90万枚。ただ1年の延期でキャンセルも多く出ており、現状では63万枚が有効。これらのチケットはすべて払い戻される。訪日客がそれだけ少なくなるわけだ。こうした払い戻しのほか、訪日客が消費するはずだった宿泊・飲食・交通費などを合計すると、損失額は2000億円になると推計されている。

これでオリンピックの開催は楽になったかというと、そうでもない。出場する選手だけで1万2000人。コーチや審判、大会関係者は2万人以上。これだけの人がやってくる。政府は入国時にコロナの陰性証明書を提出してもらい、少なくとも4日に1度はPCR検査を実施する。さらに宿舎と競技場以外への移動は認めない方針だ。

だが日本側に、そうするだけの体制が整備できるだろうか。PCR検査だけでも、大変な人数の医師や看護師が必要になる。そのころは国内でもワクチンの接種がピークを迎えるだろう。ましてや3万人を超える外国人が、繁華街の見物に出かけないかどうか。いったい誰が監視するのだろう。そしてオリンピック開催を危うくする、もっと基本的な問題がまだある。

                         (続きは明日)

       ≪24日の日経平均 = 下げ -590.40円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ



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ほんとに開けるのか? オリンピック (下)
2021-03-26-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 予選が出来ない国や地域も = 日本ではいま、オリンピックで来日する選手や関係者をどう迎えるか。水際でコロナ・ウイルスを、いかに阻止するか。海外からの観客を受け入れないことで生じる経済的損失を、どう補てんするか。そんなことが議論の中心になっている。だが視点を変えて、海外諸国の準備状況にも注意を向ける必要があるのではないか。

東京には世界200以上の国から、約1万2000人のアスリートがやってくる。これらの選手はまず自国のなかで選抜され、次に競技種目にもよるが、アジア・アメリカ・ヨーロッパといった地域ごとのトーナメントで出場権を争うことが多い。しかしコロナの影響で、こうした予選の開催も難しくなっているようだ。

規定によって、これらの予選は6月29日までに終了させなければならない。しかし現在まだ予選競技を開催できずにいるのは、出場ワクの25%に達するという。そのなかには過去の実績を参考に選抜する国もあるが、勝ち抜き組とこうした選抜組が戦うことになるのは、いかがなものだろうか。

ところが海外の予選に関する情報は、きわめて少ない。だから一般には「こんな状況で開催できるのか」という印象が強まってしまう。世論調査をみても「オリンピックは中止すべきだ」という回答が、多くの国で過半数を占めるようになってきた。主催国である日本の組織委員会はもっと海外の情報を収集して公開しないと、中止論はさらに拡大してしまうだろう。

       ≪25日の日経平均 = 上げ +324.36円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ


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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (54)
2021-03-27-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ ワクチンの効果が見え始めた! = 世界全体でみると、新型コロナの感染力はまだ衰えていない。世界の感染者数は1億2479万人、前週より358万人増えた。前週の増加数318万人を上回っている。死亡者数も274万3529人で6万2800人の増加。前週の6万0900人を上回った。特にブラジル、インド、イタリア、スペインなどで、感染者や死亡者が増えている。

アメリカの感染者は累計で3001万人、死亡者は54万5282人に達した。前週比で感染者は40万人、死亡者は7186人の増加。ブラジルは感染者が1222万人、死亡者は30万0685人に。あと死亡者数でみると、メキシコが20万人、インドが16万人。次いでイギリスが12万人台、ロシアとフランスが9万人台、ドイツとスペインが7万人台に乗せている。

日本の感染者は累計46万3729人、前週より1万0243人増えた。この増加数は前週の8436人を上回っている。死亡者は8984人で、206人の増加。前週の301人を下回った。1週間当たりの死亡者増加数は2月初めの675人から、一貫して減少している。緊急事態宣言はすべての地域で解除されたが、今後はリバウンドが非常に心配されている。

きわめて注目されるのは、アメリカやイギリス、それにイスラエルの状態が目立って改善されたこと。感染者の増加数はこの1週間、アメリカは40万4000人、イギリスは3万8700人に縮小した。死亡者の増加数もかなり減っている。日経新聞と英フィナンシャル・タイムスの共同調査では、3月25日時点でアメリカのワクチン接種率が38.6%、イギリスは46%に達した。イスラエルは108.9%。この3か国の状態が著しく改善したのは、ワクチン接種の効果によるものと判断してもいいのではないか。

       ≪26日の日経平均 = 上げ +446.82円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     


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今週のポイント
2021-03-29-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ コロナ改善を素直に評価 = ニューヨーク市場では先々週18日、長期金利が1.75%まで上昇し株価は下落した。この流れを受けてダウ平均は先週前半には売られたが、後半は反発。金曜日には3万3000ドルを回復、終り値では史上最高値を更新した。週間では445ドルの値上がり。金利が1.5%台まで下げたこと。それにコロナ感染者増加数が目立って減ってきたことを、素直に好感したためである。

日経平均も先週は前半に下げ、後半は反発した。しかし週間では615円の値下がり。ドル高・円安が進み、3月決算も好調。にもかかわらず株安となったのは、年度末で利益を確定する投資家が多かったため。また日本ではワクチンの接種が遅れ、感染のリバウンドが心配される状態。ワクチン接種率が株価を動かす大きな要因になってきた。

今週はバイデン大統領が、総額3兆ドルの追加対策を打ち出すだろうと報道されている。大変な景気対策の積み重ねだが、市場の評価は難しい。というのも、その財源の大半は大企業に対する増税となるらしいからだ。またインフレを惹き起こす心配も増大する。ニューヨーク市場はその心配を乗り越えて、さらなる最高値を目指すのだろうか。日経平均の重荷は、やはりコロナの動向ということになるだろう。

今週は30日に、2月の労働力調査と商業動態統計。31日に、2月の鉱工業生産と住宅着工戸数。1日に、4月の日銀短観と3月の新車販売台数。アメリカでは30日に、1月のFHFA住宅価格と3月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。31日に、2月の中古住宅販売。1日に、3月のISM製造業景況指数。2日に、3月の雇用統計。また中国が31日に、3月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ

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とてつもない 財政支出額 / アメリカ (上)
2021-03-30-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ さらに3兆ドルの経済再建政策か = 「バイデン大統領は31日、新しい経済立て直し政策を発表する。その総額は3兆ドル」--アメリカの主要メディアが、一斉にこう報じている。その内容は道路・鉄道などの整備に1兆ドル。ほかに半導体技術の向上やEV(電気自動車)用の充電ステーション普及、公立大学の授業料無償化など。これまでの財政支出はコロナ収束とコロナ不況の克服に向けられていたが、新政策はアメリカ経済の立て直しを目的としたものになる。

トランプ前政権は合計4回にわたり、コロナ対策を講じてきた。その合計額は3兆8600億ドル。続いてバイデン政権も1兆9000億ドルの追加予算を成立させたばかり。それに新しく3兆ドルの財政支出が加われば、これまでの累計は8兆7600億ドルに膨れ上がる。アメリカのGDPの4割に相当。日本円にすると約960兆円で、日本のGDPの2年分に近い。

財政再建派のイエレン財務長官も「いまは財政面からの刺激が必要だ」と述べており、政権内部の足並みは揃っているようだ。しかし議会では共和党が大反対。民主党内部にも「支出が多すぎる」という批判が出ている。ただバイデン大統領は「中国との競争に負けないために」と、必要性を強調するに違いない。

ワクチン接種の効果も出始めて、いまアメリカでは「夏になれば正常な社会が戻ってくる」という予想が広がっている。そこへ史上最大の景気対策が加われば、7月以降の成長率は2ケタのV字回復になるだろう。株式市場にとっては、夢のような展望である。ところがニューヨーク市場は、考え込んでしまった。この超積極型財政政策には、とんでもない副作用も付いてくると考えられるからだ。

                           (続きは明日)

        ≪29日の日経平均 = 上げ +207.82円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 



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とてつもない 財政支出額 / アメリカ (下)
2021-03-31-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 増税+金融緩和の停止は恐ろしい = バイデン大統領が打ち出す超大型財政政策には、2つの大きな副作用があると考えられている。その1つは増税だ。具体的には、法人税と株式譲渡課税の引き上げ、企業の海外利益に対する課税や富裕層の所得税引き上げ。新政策の財源の3分の1を賄うにしても、増税額は1兆ドルに及ぶことになる。株式市場にとっては、大きなマイナス材料だ。

もう1つの副作用は、FRBが現在の金融緩和政策を停止すること。新政策の財源には国債の大量増発も必要だから、債券市場では国債の価格が下がり、金利は上昇しやすくなる。しかもコロナの感染が下火になり、経済活動が正常化すると、景気がV字型の回復をみせることは明かだ。そこで物価の上昇が顕著となり、インフレの兆候が強まれば、FRBは金融緩和政策を継続できなくなるだろう。場合によっては、引き締め政策に転じるかもしれない。

アメリカの消費者物価は昨年4-6月、コロナ不況のせいで0.3%程度の上昇にとどまっていた。それが7月からは1%台に乗せ始め、ことし2月には1.7%の上昇となっている。今後の見通しでは、昨年が低かったため4-6月には2%台の上昇になるかもしれない。しかしFRBも「それは一時的な現象」とみているから、4-6月中の政策変更はまずないだろう。

しかし問題は、景気が急回復する7月以降。仮に物価が3-4%の上昇を続けた場合、それでもFRBは緩和政策を継続できるだろうか。市場はすでにその辺までを視野に入れて、心配し始めている。緩和政策の停止は、市場にとって死活にかかわる大問題となるからだ。ウオール街の著名な評論家が「バイデンの3兆ドル政策で、クレイジーな出来事が起きるだろう」と発言したことが、きわめて印象的だった。

       ≪30日の日経平均 = 上げ +48.18円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ


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