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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
景気を良くする 最善の方策 (下)
2021-07-01-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 副作用が大きくなりすぎたゼロ金利政策 = 日本の場合、ゼロ金利政策は1999年から、マイナス金利政策は2016年から始まった。景気を刺激するための思い切った政策で、株価を上昇させるなど一定の効果はあったと言っていい。しかし、ある意味では劇薬であり、副作用も大きい。いま世界の経済学者の間では「ゼロ金利は緊急事態には効果があるが、副作用も大きいので長く続けない方がいい」と考えられるようになった。

ゼロ金利やマイナス金利で最も得をしたのは、国と地方自治体だ。発行する国債や地方債の金利が下がり、利払い負担が極端に軽減されたからである。また企業も低利で融資が受けられ、社債の利払い負担も減った。その一方、金融機関は本業の預金・貸出業務で利益が出せず、国債の売買もできなくなってしまった。ゼロ金利政策の被害者だと言えるだろう。

最大の被害者は、個人である。将来の生活を安定させるため努力して貯めたおカネが、少しも利を産まなくなってしまった。なかには株式投資で儲けたり、低利の住宅ローンで得をした人もいるが、それは少数。大多数の個人は資産価値の保持に懸命だから、消費態度も節約志向になってしまう。だから景気は良くならない。

多くの経済学者が指摘するように、ゼロ金利の弊害は強くなりすぎた。このままの状態が続くと、高齢者や非正規労働者や母子家庭などと、金融投資で儲けた人々との格差が増幅する。そしてゼロ金利政策の被害者たちの不満は、政治に向かう。政府・与党はこの危険を意識し、ゼロ金利の早急な修正を計画すべきだろう。

       ≪30日の日経平均 = 下げ -21.08円≫

       ≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ


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さまよう 経営者の景気見通し
2021-07-02-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 3か月後は△、6か月後は○? = 日銀は1日、6月の全国企業短期経済観測調査を発表した。それによると、大企業・製造業の業況判断指数はプラス14で、3か月前の調査に比べて9ポイント上昇した。また大企業・非製造業もプラス1となり、前回より2ポイント改善した。世界経済の回復を反映して製造業は輸出を中心に大きく好転したが、非製造業はコロナの影響で改善が鈍い。今回の調査は5月27日-6月30日の間に、9400社を対象に実施されている。

注目されたのは、3か月後の業況見通し。大企業・製造業はプラス13で、1ポイントの低下。大企業・非製造業はプラス3で、2ポイントの上昇となっている。要するに3か月後の見通しは、現在とあまり変わらない。その理由について日銀はコメントしていないが、おそらくは「9月ごろでは、まだコロナ不況から抜け出せない」と考える経営者が多いのだろう。

興味深いのは、日経新聞が実施した社長アンケート。6か月後の景気見通しを139人に聞いたが、なんと9割以上が「景気は拡大する」と答えている。ちなみに実施したのは6月4日-21日で、日銀の短観と同じ時期だ。もちろん全く異なる調査だから一概には言えないが、経営者の多くは「6か月後ならば、コロナ不況から脱出できるはず」と、期待も込めて予想しているように思われる。

ただ過去の経験からすると、経営者を対象とした景気見通し調査では、日銀の結果はやや厳しく出がちである。反対に日経の調査では、楽観的な結果が多い。少々うがった見方をすると、金融緩和を続けてもらうためには、日銀には厳しい回答を出しておく。日経の場合は、楽観的な回答で“明るい紙面”を作ってもらう。こんな心理が働くのではないか。

       ≪1日の日経平均 = 下げ -84.49円≫

       ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ

          
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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (68)
2021-07-03-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ ワクチンの効果で死亡者は減る傾向 = 世界の感染者数は累計1億8220万人、この1週間で260万人増えた。死亡者数は394万7099人で、5万5125人の増加。感染者の増加数は前週より4万人増えたが、死亡者数は3774人減った。国別でみても、死亡者はロシアを除いて減少の傾向にある。これは高齢者に対するワクチンの接種が進み、重症者や死亡者が減少しつつあると考えていい。

国別に死亡者数をみると、アメリカが60万4714人で前週比1881人の増加。この増加数は1月のピーク時に比べると、わずか8%にまで縮小した。次いでブラジルが51万人台、インドが39万人台、メキシコが23万人台。さらにロシアが13万人台、イギリスとイタリアが12万人台、フランスが11万人台、ドイツが9万人台、イランが8万人台となっている。

ワクチンを1回以上接種した人の全人口に占める割合は、カナダが69.15%、イギリスが66.08%、アメリカが54.02%、中国が43.21%、韓国が29.91%。そして日本も23.94%にまで上昇してきた。いずれの国でも高齢者が優先的に接種を受けており、死亡者数は確実に減少している。このうち中国は、ことしの1月以降ひとりの死亡者も報告されていない。また韓国は、この1週間の死亡者が13人にとどまっている。

日本の感染者は累計80万1547人、この1週間で1万0556人増えた。死亡者は1万4808人で203人の増加。感染者は前週より383人増えたが、死亡者は71人減っている。やはりワクチンの効果が出始めているように思われる。インド型変異ウイルスは、主としてワクチン接種が遅れている65歳以下の人たちに拡散しているようだ。政府は感染者が増えているため、東京・大阪などのまん延防止措置を延長。死亡者が減っているため、緊急事態宣言は発令しないことになりそうだ。

       ≪2日の日経平均 = 上げ +76.24円≫

       【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】     

         
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今週のポイント
2021-07-05-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウ平均は2か月ぶりに新高値 = ニューヨークは夏祭り、東京は夏休みの風情となった。ダウ平均は先週353ドルの値上がり。終り値は3万4786ドルに達し、ついに史上最高値を2か月ぶりに更新した。ナスダックやSP500も最高値を更新しており、ニューヨーク市場は熱気に溢れている。ところが日経平均は先週283円の値下がり。出来高も少なく、まるで活気がない。

このところ、株価は分厚いパンに挟まれたサンドイッチのハムのようになっている。上のパンは、金融緩和の縮小がいつ始まるかの不安。株価を上から押さえつける。下のパンはコロナ後の景気回復に対する期待。株価を下から持ち上げようとする。ニューヨーク市場の場合は、上のパンが薄くなり、下のパンが厚くなった。たとえば、6月の雇用情勢が予想以上に好転したことなどが原因。

東京市場の場合は、反対になった。コロナの第5波が真剣に心配され始め、下のパンは薄くなる。その一方、日銀はETF(上場投資信託)の買い入れをほとんど止めてしまったから、上のパンは重みを増した。だからニューヨークが上がっても、ついて行けない。今週は反発力が働くかもしれないが、基本的な流れは先週と同じだろう。

今週は6日に、5月の家計調査と毎月勤労統計。9日に、5月の景気動向指数。8日に、6月の景気ウオッチャー調査。アメリカでは6日に、6月のISM製造業景況指数。また中国が9日に、6月の消費者物価と生産者物価を発表する。なお9日に、G20財務相・中央銀行総裁会議がイタリアで開かれる。

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ


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人手不足に苦しむ アメリカ
2021-07-06-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 金融引き締めを早める最大の要因に = アメリカ労働省は先週2日、6月の雇用統計を発表した。それによると、非農業雇用者は前月比で85万人の増加。予想を大きく上回った。その半面、失業率は5.9%に上昇している。興味深いのは14.4%というテレワーク人口の比率、前月の16.6%から確実に減少した。それだけ経済活動が正常化したことを示している。

全体として雇用情勢は改善し、景気の回復が進んでいる。しかし失業率は、むしろ悪化した。また雇用者の総数も、コロナ前に比べるとまだ680万人少ない。こういう情勢ならFRBも、そんなに早く緩和政策を縮小するわけにはいかないだろう。株式市場はこう解釈し、ダウ平均は2か月ぶりに史上最高値を更新した。

ところが唯一の心配は、6月になって急に表面化した人手不足。経済活動の正常化に伴い企業の求人は増加したが、人が集まらない。自営業協会の集計によると、中小企業の半数以上が「必要な人員を確保できずにいる」という。理油は失業給付金の特別加算が9月上旬まで実施されており、働くより特別加算金を貰った方が得という人が少なくない。またコロナで故郷に帰った人が、都会に出てこないなど。

人を集めるには、賃金を上げるしかない。たとえばアマゾンは、最低時給を17ドル(1870円)に引き上げた。雇用統計をみても、6月の平均時給は30ドル40セント、前年比では2%以上も上昇している。この傾向は、今後も続きそう。人件費が上がれば、やがて企業は製品の値上げに踏み切らざるをえなくなる。するとFRBの引き締めも早くなる。市場はこれまで景気回復に伴う需要インフレを心配してきたが、同時にコスト・インフレも警戒しなければならなくなった。

        ≪5日の日経平均 = 下げ -185.09円≫

        ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ


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“反動”で大幅に増えた 給与・消費 : 5月
2021-07-07-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ コロナ前には戻り切れず = 厚生労働省は6日、5月の毎月勤労統計を発表した。それによると、勤労者の現金給与総額は1人平均27万3777円で、前年より1.9%増加した。内訳をみると、所定内給与は0.8%しか増加していないが、残業などの所定外給与が20.7%の大幅な増加となっている。生活周辺サービス・娯楽業や教育・学習支援業が40-50%も伸びた。昨年5月は最初の緊急事態宣言が発令され、経済活動が著しく制約されていた。その反動で、大幅に伸びたものである。

総務省は6日、5月の家計調査を発表した。それによると、2人以上世帯の消費支出は平均28万1063円で、前年比11.6%の大幅な増加となった。消費支出が10%以上も増加するのは、異例なこと。自動車に対する支出は51.3%、外食は45.4%も伸びている。収入が増加したため支出も増大したわけだが、これも昨年5月の異常な緊縮体制の反動だったと言える。

ところが、こうした給与と消費の水準は、まだコロナ前まで戻り切っていない。コロナ前の19年5月。現金給与総額は平均27万5193円だった。したがって、ことし5月の総額は2年前より1416円少ないことになる。また消費支出をみると、19年5月は30万0901円だったから、こちらの方は1万9838円も少ないことになる。

こうした状況のなかで、ことし6月には東京・大阪などに3度目の緊急事態宣言。その後もまん延防止措置が続いて、オリンピックを迎えることになる。給与や消費がコロナ前を回復する時期は、また遠のくに違いない。人々は緊縮に疲れ果てたと言われるが、経済の正常化、給与や消費の回復にもメドが立たない。自民党が都議選で敗れた最大の原因だったと思うのだが。

        ≪6日の日経平均 = 上げ +45.02円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ


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100ドル説も浮上した 原油価格 (上)
2021-07-08-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 需要>供給 の状態が定着 = 原油の国際価格が、じわじわと上がってきた。ニューヨーク商品取引所のWTI(テキサス産軽質油)の先物相場は、いま1バレル=75ドル前後の水準に。ことしの安値だった4月に比べると、約5割も値上がりしている。この間、特別な事件があったわけでもない。きわめてゆっくりと、着実に値を上げてきた。このことは4月以降、世界の原油に対する需要が常に供給を上回っていることを示している。

供給が抑制された原因は、いろいろある。まずOPEC(石油輸出国機構)とロシアなどが、減産協定を結んだこと。イランに対する制裁の主柱として、先進国がイラン産原油の禁輸を実施したこと。それに大きいのは、アメリカのシェール生産が伸び悩んでいること。シェールはバイデン政権が国有地での生産を禁止、また世界的な脱炭素ムードが影響して、現在でもピークだった19年末に比べて45%も減少したままだ。

一方、需要の方はコロナの収束を見越した景気の回復により、世界的に増大中。IEA(国際エネルギー機関)の推計によると、ことし1-3月には日量9310万バレルだった世界の需要は、10-12月には9960万バレルに増大する見通し。この結果、ことしの春以降は需要が供給を上回る状態がずっと続いている。つまり在庫は減り続けているわけだ。

こうした状態をみて、投機資金も参入してきた。価格が上昇すれば、投資資金は売りに転じる。このため相場が反落する場面もありそうだが、基本的な需要>供給の構図は変わりそうにない。そして国際相場が近く80ドルに達することは確実。さらに100ドルにまで上昇する可能性も出てきた――専門家の間では、こんな予想も広がり始めた。

                          (続きは明日)

       ≪7日の日経平均 = 下げ -276.26円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ


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100ドル説も浮上した 原油価格 (下)
2021-07-09-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本にとっては大きなマイナス = 原油価格の高騰は、産油国の収入を増やす。だが消費国には、いろいろな面から悪影響が及ぶ。たとえば、いまのアメリカ。景気の急回復で物価が上昇し、FRBが金融緩和の縮小時期を早めるのではないかと心配されている。政府やFRBは「物価の上昇は一時的」と説明しているが、原油の高騰でガソリンの値上がりが続けば、インフレの兆候が強まることは間違いない。つまり原油はアメリカの金融政策を転換させるかもしれない、大きな要因になってきた。

日本は原油やLNG(液化天然ガス)のすべてを輸入に頼っているため、特に大きな打撃を受ける。すでにガソリンの店頭価格は、1リットル=156円30銭にまで上昇した。昨年6月に比べると30円の値上がりである。そして2-3か月後には、電力やガスの料金に跳ね返る。企業のコストが上がり、消費者のエネルギー負担も確実に増大する。

貿易統計をみると、5月の原粗油の輸入量は961万㌔㍑で前年5月より1.5%増加した。しかし輸入額は4300億円で170%も増加している。その増加額2700億円は、いずれ企業や消費者が負担することになるわけだ。もし負担増がなければ、企業や消費者はその分を他の消費に回していたはず。その分だけ国内の需要が減り、景気を押し下げることになる。

原油の国際価格80-100ドルが長く続けば、日本の負担額も長期にわたって持続する。ワクチンの接種でなんとかコロナ禍を抜け出しても、日本経済は新たな困難に直面する。いまのところ原油価格が急落するような材料は見当たらないから、国際価格は80ドルを超えて100ドルに迫る可能性も小さくはない。エネルギー計画の作成さえ出来ない政府の失態が、より明白になりそうだ。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -248.92円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ


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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (69)
2021-07-10-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ イギリスは賭け、日本は負け = 世界の感染者数は累計1億8508万人、この1週間で287万人増加した。死亡者数は400万1791人で5万4692人の増加。感染者の増加は前週よりやや拡大、死亡者はやや縮小した。死亡者数はこの3か月で100万人増え、400万人を突破している。しかし感染者に対して死亡者の増加が多少とも縮小しているのは、ワクチンの効果が出始めているからだろう。

死亡者数を国別にみると、アメリカが60万6228人でいぜん断トツ。ただ1週間の増加数は1509人にまで縮小した。続いてブラジルが52万人台、インドが40万人台、メキシコが23万人台。さらにロシアが13万人台、イギリスとイタリアが12万人台、フランスが11万人台、ドイツが9万人台、イランが8万人台となっている。このほかで目立ったのはインドネシアで、この1週間では4765人が死亡した。

驚くべき行動に出たのはイギリス。ジョンソン首相は5日「ロンドンを含む全土で、すべての規制を解除する」と発表した。イギリスのワクチン接種率は2回目を終えた人が全人口の64%に達して、重症者・死亡者が激減したためだという。この1週間でみると、感染者は19万人も増えたが、死亡者は161人にとどまった。イギリスの新聞は「ジョンソン首相の大きな賭け」と論評している。

日本の感染者は累計81万3822人、この1週間で1万2275人増えた。死亡者は1万9920人で112人の増加。感染者は前週より1719人増えたが、死亡者は91人減少した。ただ東京都で感染者の増加傾向が著しく、政府は東京都に4度目の緊急事態宣言を発令した。オリンピック中も緊急事態になるわけで、政府の「オリンピックをコロナに勝った証し」とする目論見は破れたと言える。日本は「負けた」ことを自覚すべきだろう。

       ≪9日の日経平均 = 下げ -177.61円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】    


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今週のポイント
2021-07-12-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 置き去りにされた日本株 = ダウ平均は先週84ドルの値上がり。終り値は3万4870ドルで、前週に続き史上最高値を更新した。高値圏で売り物も多く、新型コロナの再拡大など悪材料も出たが、それでもジワジワと上昇して行く。その一方で日経平均は続落、先週は843円の値下がりとなった。急落する場面はなかったが、こちらはジワジワと下げた。東京都に4度目の緊急事態宣言が発令されたことが、心理的に大きく響いている。

日本株の退潮は、4-6月期の数字にも表れている。日経新聞によると、G20(主要20か国)のうち16か国の株価が4-6月期には上昇した。米英独の株価も3-5%値上がりしている。そうしたなかで、日本株は1%の下落だった。そこへ今回の緊急事態宣言で、さらに“一人負け”の形が鮮明になったわけである。

緊急事態宣言のなかのオリンピック。この異常な状態が、世界の耳目を集めることにもなってしまった。緊急事態が予想より早く解除されればともかく、そうでなければ異常な状態はオリンピックが終わるまで続くだろう。日本株にとって唯一の助けは、出遅れ感によってマネーが流入することだけ。長い夏休みになるかもしれない。

今週は12日に、5月の機械受注と6月の企業物価。15日に、5月の第3次産業活動指数。アメリカでは13日に、6月の消費者物価。14日に、6月の生産者物価。15日に、6月の工業生産。16日に、6月の小売り売上高、7月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が13日に、6月の貿易統計。15日に、4-6月期のGDP速報、6月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

        ≪12日の日経平均は? = 上げ


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「緊急事態宣言」の 副作用?
2021-07-13-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 実態より深刻に受け取られる = 長いこと東京に住んでいるアメリカ人のジャーナリストが、こんな話をしてくれた。ついに緊急事態宣言の発令中に実施されるオリンピック。たしかに日本のいまの状態は大変だが、多くの外国人は「問題をより深刻に受け取っている」というのだ。アメリカやヨーロッパの株価が上がっても、日本株は上がらない。その一因にもなっているのではないか、とも指摘した。

緊急事態宣言を英訳すると、Declaration of the State of Emergency となる。外国人からみると、これは非常に強い言葉だ。クーデターなどのときには、よく Martial Law (戒厳令」)が出されるが、State of Emergency は、これに次ぐ緊迫性がある。だから外国人は、この言葉と戦争や内乱、あるいは大規模なテロを結び付けやすい。ちなみに「まん延防止等重点措置」は Priority Measures such as Prevention Spread 。略すと Preventive Measure だから、Emergency との格差はきわめて大きい。

欧米では Lookdown がよく使われる。封鎖や閉鎖という意味で、もともとはカギをかけること。ご承知のように都市封鎖と訳され、行動規制はかなり厳しい。日本の緊急事態の方がよほど緩やかだが、Emergency という語感からは Lockdown よりずっと物々しく受け取れる。戒厳令に近い規制を実施しても、日本のコロナは収まらないと考えている人も多い。

実際には、日本の規制の方がずっとソフトで、人々の権利にも配慮している。それなのに「緊急事態宣言」という言葉が、それを阻害する。その結果、日本はかなり損をしているのではないか――彼はこう指摘した。気が付いてみれば、確かにそうなのかもしれない。きょうは英語の勉強になってしまったが、みなさんにも考えて頂きたい問題だ。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +628.60円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 


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原発に触らない 経産省(上)  
2021-07-14-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ エネルギー計画が曖昧に = 経済産業省はいま新しいエネルギー基本計画を作成中。近く公表する予定だが、原子力発電の将来像がどうしても描けない。エネルギー供給に占める原発の役割が想定できなければ、再生可能エネルギーなどの役割も確定できない。その結果、新しいエネルギー基本計画の内容はきわめて曖昧になってしまう。エネルギー自給度が低い日本なのに、こんなことが許されていいのだろうか。

新しいエネルギー基本計画の草案では、原子力について「依存度を可能な限り低減する」「必要な規模を持続的に活用する」と書かれているらしい。以前からの政府の方針を踏襲したものだが、これでは何を言っているのか、よく解らない。原発を巡るいまの情勢からみて、これ以上の踏み込みはできないというわけだ。

政府は世界的な脱炭素の流れに乗って、50年には温室効果ガスの排出を実質ゼロにする。そこに至るまでの中間目標として、30年度のガス排出量を13年度比で46%削減すると公約した。この公約を果たすためには、19年度で発電量の76%を占めた火力発電を30年度までに43%に引き下げる必要がある。その穴を埋めるため、30年度の時点で原発は30基程度が稼働していなければならない。

ところが、いま稼働している原発は10基のみ。あとは原子力規制委員会の審査に通らなかったり、地元の同意をえられなかったりで、そう多くは動かせない。しかも老朽化する原発も続出する。したがって新設や建て替えがなければ、30年度30基の実現は不可能だ。しかし新設・建て替えの可能性は、全く予測できない。そこで経産省は、手を引っ込めてしまった。

                           (続きは明日)

        ≪13日の日経平均 = 上げ +149.22円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ


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原発に触らない 経産省(下)
2021-07-15-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ また太陽光に頼るけれど = 温室効果ガスの排出量を30年度に13年度比で46%削減するには、原発30基の稼働が必要。さらに再生可能エネルギーも、19年度の1850億㌔㍗時から3120億㌔㍗時へと大幅に増やさなければならない。もし原発の稼働数が足りなければ、その分を再生エネルギーに追加することが必要になってくる。その場合、再生エネルギーによる発電量は現在の2倍以上になるわけだ。

再生エネルギーの主柱は、やはり太陽光発電。経産省は19年度に690億㌔㍗時だった太陽光発電を、30年度には1244億㌔㍗時まで拡大する方針。国や地方自治体の建築物の50%、企業のビルや駐車場に太陽光発電パネルを設置するという。だが、そんなことで太陽光発電を2倍近くも増やせるのか、はなはだ心許ない。

経産省の太陽光発電政策は、失敗の連続だった。電力会社による強制買い取り価格を高く設定した結果、電気料金が高騰。慌てて引き下げると普及が鈍化した。しかも関連企業の育成に失敗、発電パネルや蓄電池の研究開発は停滞。市場も海外企業に席巻されてしまった。

太陽光発電の急拡大を図るため、経産省は再び買い取り価格を引き上げるのか。ほかに何かいい知恵を考え出せるのか。その見込みが低いのは、政府が原発への姿勢を確立できない点にある。「原発で何とかなるかもしれない」という思いがあるうちは、再生エネルギーに集中できないだろう。ドイツは22年までに原発をゼロにする。アメリカも22年には、再生エネ発電が原発を上回る。経産省は勇気を出して、原発に触るべきだ。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -109.75円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ


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労組と政府が結託 : 最低賃金上げ
2021-07-16-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ もっと柔軟な設計も出来たはず = 中央最低賃金審議会は14日、21年度の最低賃金を全国平均で28円引き上げることを決定した。上げ幅は3.1%で、02年度以来の最大。労組側の代表は40円の引き上げを要求、企業側は据え置きを主張して大揉めに揉めたが、最後は政府側が引き上げに賛成して28円で決着した。この指針をもとに、各都道府県が実際の引き上げ額を決め、10月ごろから実施される。

現在の最低賃金は平均902円。これが930円に引き上げられる。もし全国で実施されると、最高の東京都は1041円に。最低の秋田・高知県などは820円となる計算。政府は安倍前政権のときから「賃上げ→消費増→景気回復」の好循環を意図しており、最低賃金の引き上げを支持した。企業側は「中小企業の経営が成り立たなくなる」と抵抗したが、結局は押し切られた。

政府は企業側の抵抗を抑えるため「賃金を引き上げた中小企業には補助金を出す」と約束した。だが援助期間は3か月だけ。苦しくなった企業が雇用者を減らす危険性は、否定できない。じっさい韓国では、その失敗を経験したばかり。いま東京に緊急事態宣言が発令されていることを考えると、28円の引き上げはやや強引過ぎたような気もする。

もっと柔軟な設計は、出来なかったのだろうか。たとえば10月以降、「全国の都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除された場合、その3か月後に最低賃金を30円引き上げる」というように。これならコロナ不況脱却のメドもつき、中小企業の心配もかなり軽減されるだろう。これから実際の引き上げ額の検討に入る都道府県では、ぜひ参考にしていただきたい。

        ≪15日の日経平均 = 下げ -329.40円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ

        
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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (70)
2021-07-17-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 弱いところを攻めてくるデルタ型ウイルス = 世界の感染者数は累計1億8836万人、この1週間で329万人増えた。死亡者数は405万8233人で、5万6442人の増加。感染者も死亡者も増加数が前週より拡大し、ここ数週間の縮小傾向がストップした。インド発のデルタ型変異ウイルスが、感染力を強めているためだ。WHO(世界保健機関)の発表によると、デルタ型ウイルスは世界の104か国で感染が確認されている。

デルタ型ウイルスは、ワクチン接種が遅れている中南米や東南アジアの新興国で拡大中。また先進国でも、接種が遅れている50歳代以下の人たちを中心に感染力を強めている。要するに防衛体制が整わない弱いところを狙って、勢力を広げている状態。まるで“総司令官”が作戦を立てて侵攻してくるようで恐ろしい。

国別の死亡者数をみると、アメリカが60万人台。次いでブラジルが53万人台、インドが41万人台、メキシコが27万人台。さらにロシアが14万人台、イギリスとイタリアが12万人台、フランスが11万人台、ドイツが9万人台、イランが8万人台と続いている。このなかでアメリカ・インド・メキシコ・ロシア・イギリス・イランの6か国が、前週より死亡者の数を増加させた。

日本の感染者は累計83万1082人。前週より1万7260人増えた。この増加数は前週より4985人多い。また死亡者は1万5020人で、前週より100人増えた。この増加数は前週より12人少ない。デルタ型の侵入で感染者は拡大したが、ワクチンのおかげで死亡者はやや縮小したものと考えられる。この傾向がオリンピックで、どう変わるのか。

        ≪16日の日経平均 = 下げ -276.01円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     


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今週のポイント
2021-07-19-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウは高値圏でひと休み = ダウ平均は先週182ドルの値下がり。史上最高値の更新を続けただけに、一服する形になった。終り値は3万4688ドル。高値での利益確定売りが増えたほか、根底にはFRBによる緩和政策終了への警戒感が消えない。14日にはパウエル議長が議会で「緩和縮小の時期は、まだ先」と証言したが、株価は動かなかった。

日経平均は先週63円の値上がり。終り値は2万8000円台を、かろうじて維持した。コロナの再拡大が進み、景気回復の見通しが全く立たない。そこへオリンピックという新たな不確実要素が加わった。市場としては、上へも下へも動きようがない。16日には黒田日銀総裁が「脱炭素に向けた新融資制度」を発表したが、株価は下げた。

アメリカ経済の将来見通しは、確実に改善しつつある。企業の業績見込みも、上向いている。したがって株価の基本的な体勢は強く、ダウは一服ののち3万5000ドルに駆け上がる可能性は大きい。一方、日経平均はコロナの感染増加が収まるまでは上がりにくい。さらに解散・総選挙という政治の季節も近づいてきた。下げ渋る状態を保つのが、精いっぱいだろう。

今週は20日に、6月の消費者物価。21日に、6月の貿易統計。アメリカでは19日に、7月のNAHB住宅市場指数。20日に、6月の住宅着工戸数。22日に、中古住宅販売が発表される。なお23日は、東京オリンピック開幕。同じ23日は、中国共産党の結党100周年。

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ

           
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インフレの足音が聞こえる / アメリカ (上)
2021-07-20-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 物価の上昇は一時的なものなのか = パウエルFRB議長は先週14日、議会で証言。注目されている金融緩和政策の縮小について「まだまだ遠い先の話だ」と強調した。株式市場にとって、こんなにいいニュースはない。ダウ平均は300-400ドル上昇しても、おかしくはなかった。ところが、その日のダウ平均は44ドルしか上がらなかった。FRB議長がいくら説明を尽くしても、市場は最近の物価上昇を無視できなくなっているからである。

米商務省の発表によると、6月の消費者物価は前年比5.4%の上昇だった。13年ぶりの上昇率である。5月も5.0%の上昇で、物価の騰貴は歴然としている。ただFRBは一貫して「この上昇は一時的なもの」だと主張してきた。というのも、昨年4-6月はコロナ不況の影響で物価が上がらなかった。したがって、ことし4-6月の物価上昇は大きく出ても仕方がないという説明だ。

たしかに昨年4-6月の消費者物価は、前年比0.1-0.6%の上昇にとどまっている。その後の7-9月に比べると、ほぼ1%ポイント程度低い。その分だけ上昇幅が大きく出ている、という説明は納得できる。しかし、その1%分を差し引いて考慮しても、ことし5-6月の上昇率は4%を超えており、無視できるような状態ではない。

問題は、7月以降の物価が上げ止まるかどうかだろう。この点については、需給動向とコスト動向の両面から見なければならない。まず需給面では、コロナ後の景気回復で需要は急激に増大する。しかし供給は、部品や人手などの制約から追い付けない。このため物価には上昇圧力が加わるだろうというのが、一般的な見方となっている。次にコスト面では・・・。

                            (続きは明日)

        ≪19日の日経平均 = 下げ -350.34円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ


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インフレの足音が聞こえる / アメリカ (下)
2021-07-21-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 10月にも金融緩和の縮小開始? = コスト面からの物価上昇は、国内要因と国際要因に分けられる。このうち国内要因でいちばん大きいのは、人手不足による賃金の上昇だろう。6月の平均時給をみると、レジャー・運輸・小売り部門では、前年比で6-7%も上昇した。景気は回復傾向にあるが、人が集まらない。失業手当に特別加算が付いたため、求職しない人が多い。この特別加算は8月いっぱいで終了するが、9月以降どのくらい求職者が増えるのかは不明だ。

国際要因は、原油や非鉄金属・半導体・木材などの原材料価格が上昇したことだ。すでにガソリン価格や電気料金の高騰は、企業の生産コストをじわりと押し上げている。原材料の国際価格が上昇したことで、中国製品も値上がり傾向。輸入価格の上昇もコスト高につながっている。また世界的な異常気象の影響で、農産物の価格も上がり始めた。

いまアメリカの物価を押し上げているのは、中古車と住宅。これらは時間が経てば、供給が追い付いて価格が落ち着くかもしれない。しかし全体を見渡せば、インフレ要因がずらりと顔を見せ始めた。パウエルFRB議長が「物価上昇は一時的なもの」と強調しても、市場の不安は打ち消せない。シティ・グループの調査でも「物価上昇は継続的」という答えが、半数を上回った。

7-8月の物価動向は、9月になると判明する。そのときインフレ傾向が強まっていれば、FRBは金融緩和政策を続けるわけにはいかない。引き締め政策に転じるのはまだ先だとしても、その準備段階として緩和の縮小は始めるだろう。早ければ、その転換点は10月にやってくる。市場はこうした推測を、どうしても捨てられなくなった。

        ≪20日の日経平均 = 下げ -264.58円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ


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なぜなのか? トヨタが五輪CMを中止
2021-07-22-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 根は浅いのか深いのか = トヨタ自動車は19日「東京五輪・パラリンピックに関するテレビCMを中止する」「豊田章男社長はじめ同社関係者は、開会式に出席しない」と発表した。トヨタは五輪・パラリンピックの最大級スポンサー。今回も3340台の車両を提供するなど、大会の開催には協力してきた。それが、どうしてテレビCMを止めるのか。関係者の間で、大きな憶測を呼んでいる。

CM中止の理由について、トヨタの長田執行役員は「いろいろなことが理解されていない五輪になりつつある。アスリートが集中できることを、いちばんに考えたい」と説明した。だが、この言い回しでは何のことだか判らない。だから憶測だけが独り歩きしている。味の素やNTT、アサヒビールなどの大スポンサーも、対応をどうするのか考え始めたという。もし追随するスポンサーが続出すると、民間テレビ局や広告会社は経営的な損失を免れない。

大会の運営については、紆余曲折があった。たとえば有観客か無観客か。そんな曲折の経緯が、スポンサー側には全く報告されなかった。トヨタはそれを怒っているのだという推測もある。だが、それなら組織委員会が詫びを入れれば、トヨタも怒りを鎮めるかもしれない。問題の根は浅いと言えるだろう。

世論調査の結果をみると、オリンピックの開催に批判的な回答が予想外に多い。コロナ禍のさなかに強行することへの批判もあるが、その根底には肥大化し、カネまみれになったオリンピックそのものへの反発がある。そんなときにCMを出せば、企業のイメージを悪くする危険がある。トヨタがそう考えたのであれば、根はずっと深い。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +159.84円≫

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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (71)
2021-07-24-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ インドネシアが世界最悪に = 世界の感染者数は累計1億9200万人、この1週間で363万5000人増えた。この増加数は前週より34万8000人多い。死亡者数は412万7109人で、6万8876人の増加。前週を1万2434人上回った。全体としてコロナは再拡大している。東南アジアやアフリカの新興国で流行、ワクチン接種が進んだ先進国でも勢いを取り戻した。特に悪化が目立つのはインドネシアだ。

例によって国別の死亡者数をみると、アメリカが60万9877人。来週は61万人台に乗せるだろう。次いでブラジルが54万人台、インドが41万人台、メキシコが23万人台。さらにロシアが14万人台、イギリスとイタリアが12万人台、フランスが11万人台、ドイツが9万人台、イランが8万人台となっている。そしてインドネシアが7万9032人と続く。この1週間で8840人が死亡しており、この死亡者数はブラジルやインドを上回った。

こうしたなかで、イギリスの危険な賭けが始まった。ロンドンを含むイングランド全域の規制を、19日に全面解除。店舗やイベントの規制、ソーシャル・ディスタンス、マスクの着用義務もいっさい無くなった。ワクチン接種率が成人の68%に達したためで、「感染者が増えても死亡者が増えなければいい」という政策である。ちなみに、この1週間の感染者は33万4000人の増加、死亡者は385人にとどまった。

日本の感染者は累計85万7921人、この1週間で2万6839人増えた。この増加数は前週より9579人と大幅に悪化している。死亡者は1万5108人で88人の増加。前週より12人減っている。ワクチン接種が伸びたせいだろう。こうした状況のなかで、とうとうオリンピックが開催された。期間中に感染者や死亡者が急増すれば、菅内閣の支持率はさらに下がる。ここでも賭けが始まった。


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今週のポイント
2021-07-26-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 史上最高の3万5000ドルに到達 = ダウ平均は先週374ドルの値上がり。終り値は3万5062ドルとなって、史上最高値を更新した。昨年5月に2万5000ドルを突破してから約1年2か月で、10000ドル上昇したことになる。コロナの再拡大や金融緩和政策の縮小が警戒されるなか、4-6月期の企業業績が予想を上回ったことで買い気が広がった。ナスダックとSP500も最高値を更新、ニューヨーク市場はお祭り気分に湧いている。

日経平均は先週455円の値下がり。オリンピックも始まったが、元気は出ない。東京などに緊急事態宣言が発令され、景気の見通しが暗くなった。このためオリンピック後に実施される総選挙の結果にも、警戒感が生まれ始めた。日経平均はこの1年2か月の間に、約6100円の上昇だった。したがって、出遅れ感が強まると上げるだろう。だが、ほかに積極的な買い材料は、いまのところ見当たらない。

ニューヨークの活況は、まだ続くのだろうか。お祭り騒ぎが高じて株価の急騰が続くようだと、反動安に見舞われかねない。しかし一進一退しながら徐々に値を上げる形ならば、株価はまだ切り上がる。その条件としては、コロナの異常な再拡大がないこと、それにFRBが緩和政策の修正を口にしないことだろう。最大の注目点は、アメリカの物価動向ということになる。

今週は27日に、6月の企業向けサービス価格。30日に、6月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数。アメリカでは26日に、6月の新築住宅販売。27日に、5月のFHFA住宅価格、7月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。29日に、4-6月期のGDP速報。またEUが29日に、4-6月期のGDP速報。中国が31日に、7月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ


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賛?否? ジョンソン首相の“人体実験”
2021-07-27-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 規制解除で沸き上がるイギリス = イギリス政府は先週19日、コロナの流行を防止するための規制を全面的に解除した。店舗の営業からイベントの開催、3密を避けるためのソーシャル・ディスタンス、さらにマスクの着用に関してまで。いっさいの規制を取り払った。サッカー場では6万の大観衆が大声で応援、ナイトクラブは立錐の余地もないほど若者で埋め尽くされた。それから1週間、賛成の声は圧倒的に強いが、批判的な見方も決して少なくはない。

イギリスのコロナ感染者は、目立って増えている。たとえば1日の感染者は5万人、最近1週間では33万人を超えた。イギリス政府も「近く1日10万人に達するだろう」と予想している。にもかかわらず規制を全面解除したのは、重症者や死亡者があまり増えていないからだ。最近1週間の死亡者数は385人にとどまっている。これはワクチン接種率が、成人の68%に達したためと考えられている。

死亡者が少なければ、普通のインフルエンザと変わらない。だから規制を全面解除して、社会・経済をコロナ前の状態に戻す。こう決断したのはジョンソン首相であり、ロンドンのマスコミは「ジョンソンの大きな賭け」と論評した。それから1週間、街は活況を取り戻したから、評判はそこそこいい。だが一部では「危険な賭け」という見方も広まっている。

概して高齢者には、評判が悪い。若者が街を占領しているので「恐ろしくて地下鉄にも乗れない」という嘆き。医療関係者の間でも「感染者が増えると、新たな変異ウイルスが発生する」という警告。さらに死亡者も増えざるをえないが、その人たちはジョンソン政策によって命を落とすことになる。だから今回の規制解除は、ある意味では大規模な“人体実験”ではないのか。厳しい批判も出ているが、賭けの結末は10月になれば判明するだろう。

        ≪26日の日経平均 = 上げ +285.29円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ


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国もカネ余り ⇒ 大型景気対策?
2021-07-28-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 税収も予想を上回る = 財務省は20年度の決算作業を進めているが、なんと30兆円を超える膨大な予算が使い残しとなる見込み。コロナ対策として3度の補正予算を編成。20年度予算は総計175兆7000億円に達したが、使い切れなかった。無担保融資を行う金融機関への支援、GO TO トラベルなど、多くの費目で予算が余ったことになる。経験したことがないコロナ不況への対応だったとはいえ、これだけの予算未達は異常と言っていい。

一方、20年度の税収も予想を大きく上回った。財務省の発表によると、一般会計の税収は総額60兆8216億円。前年より4.1%増加した。コロナ不況にもかかわらず、過去最大の税収額となっている。最大の原因は、消費税の引き上げが年度を通じて寄与したこと。消費税収は20兆9714億円で、初めて最大の税収項目となった。

法人税収も予想以上に伸びた。総額は11兆2346億円で、前年比4.1%の増加。巣ごもり需要や輸出の増大で、主として大企業の納税額が伸長した。所得税収は19兆1898億円だが、前年比は0.1%の増加にとどまっている。法人税収の伸びに比べて、所得税収は増加しなかった。ここからも、企業が人件費を抑制したことが判る。なお相続税収は2兆3145億円で0.6%の増加だった。

予算の使い残しが30兆円以上。税収が予定を5兆7000億円も上回った。財務省にとっては、万々歳である。ところが与党は黙っていない。秋には総選挙があるから、このカネを使って「大型の景気対策を打て」という声が、早くも湧き上がってきた。本来ならば来年度予算で国債の発行を減らすことに使うべきだと主張する財務省だが、「泣く子と選挙には勝てない」とも言われる。はたして、どうなるのだろうか。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +136.93円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ


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“武家の商法”の 脱炭素融資 : 日銀
2021-07-29-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 「よきに計らえ」では危ないぞ = 日銀は脱炭素に向けた、新しい投融資計画を策定する。金融機関が気候変動に対応する事業に投融資することを、資金面から後押しする内容だ。詳細を詰めて、年内には運用を開始する予定。貸出金利はゼロ、期間1年だが30年まで借り換えできるようにする。脱炭素は世界的な潮流であり、日銀としても政策的に支援することにした。

その基本的な考え方は正しい。イングランド銀行やECB(ヨーロッパ中央銀行)も、脱炭素を支援する計画を発表している。ところが、この日銀の計画には、大きな落とし穴があるのではないか。というのも実際に投融資する事業の選定は、すべて金融機関まかせ。投融資先の拡大を図りたい金融機関が、将来性の不確かな企業や事業を選んでも、日銀にはチェックする手段がない。

イングランド銀行やECBは、その不安を除くために投資をグリーン債券やETF(上場投資信託)に限定するようだ。またFRBは脱炭素を目指した投融資そのものを考えていない。にもかかわらず日銀がこの計画を発表したのは、ヨーロッパの中央銀行に先を越されたくないという意向が働いたためと指摘する関係者もいる。

たとえば、ある企業が山奥の傾斜地に太陽光発電所を造ると計画する。その地方の金融機関は、日銀の新制度を使ってそこに融資する。ゼロ金利の元手だから、貸せば必ず儲かる。だが、この地域には送電線がなかった。事業は失敗するだろうが、金融機関に損は出ない。こんなとき、責任は誰が負うのだろうか。日銀にそれを防ぐ手段があるとは思えない。

        ≪28日の日経平均 = 下げ -388.56円≫

         ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ


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数字合わせに終わった 脱炭素計画
2021-07-30-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 公約の実現はまず不可能 = 政府は26日、新しい「地球温暖化対策計画」を公表した。この計画は日本の温暖化対策と、その結果を総合的に描き出したもの。脱炭素に向けた行動の基本的な指針となる。計画のなかで、日本が世界に公約した長期目標の「50年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」こと。また中期目標の「30年度の排出量を13年度比で46%減少する」ことを、改めて明記した。

13年度の温室効果ガス排出量は14億0800万トン。これを30年度までに6億4800万トン減らす必要がある。このため計画では、工場などの産業部門は1億7300万トン、家庭部門は1億3800万トン、運輸部門は8400万トン削減することにした。また発電に占める原子力発電の比率を13年度の1%から30年度には20-22%へ、再生可能エネルギーは11%から36-38%に引き上げる。

たしかに、数字はこれで合う。しかし、たとえば産業部門でも家庭部門でも、どうやって1億トン以上のガス排出を削減するのか。それが書いてない。また原発は30年度に約30基の稼働が必要だが、現在の稼働はたった10基。再生エネルギーも現在の3倍以上にしなければならないが、その方策にも触れていない。どれ1つをとっても、実現は不可能だろう。

要するに、数字合わせは出来た。だが実現性はゼロに近い。考えられることは、太陽光や風力発電の買い取り価格を引き上げて、再生エネルギーによる発電量を急増させることだけだろう。すると電気料金が急騰し、企業や家計の負担が大幅に上がる。国民にとっては最も望ましくない方向だけが見えてくる。

        ≪29日の日経平均 = 上げ +200.76円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ



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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (72)
2021-07-31-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ ついに日本も“要注意国”に = 世界の感染者数は累計1億9597万人、この1週間で397万人増加した。この増加数は前週より34万人多い。死亡者数は418万7446人で、6万0337人の増加。この増加数は前週より8539人少なかった。死亡者はブラジルやインドでは減少したが、その他の諸国では軒並み増加している。なかでも日本の状況が急速に悪化した。感染者が1日で1万人以上も増えており、“要注意国”の仲間入りをしたと考えられる。

国別の死亡者数をみると、アメリカが累計61万1813人。この1週間で1936人増加した。前週より194人多い。次いでブラジルが55万人台、インドが42万人台、メキシコが23万人台。さらにロシアが15万人台、イギリスとイタリアが12万人台、フランスが11万人台、ドイツとイランが9万人台。そのあとインドネシアが9万人台に近づいている。

日本の感染者が29日、1万0693人増加した。これまでのピークは1月に記録した2520人だから、4倍以上に跳ね上がっている。東京都だけでも、この日は3865人増加した。東京都には緊急事態宣言が発令されており、オリンピックや4連休があったにせよ、この増加ぶりは異常だ。死亡者数は累計1万5175人。この1週間で67人増えた。

政府は神奈川・埼玉・千葉の首都圏3県と大阪府に、緊急事態宣言を拡大した。しかし、その効果については疑問視する人が多い。東京都の場合をみても感染者は20歳台-50歳台に多く、そのほとんどがワクチンの接種を受けていない。感染者の急増に悩まされた欧米諸国の場合も、増加数が1日1万人を超えると、増加のスピードは急激に上がる。緊急事態の先を考えておく必要があるのではないか。

        ≪30日の日経平均 = 下げ -498.83円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】     



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