◇ 家計は110兆円超す損失 = 日銀は金融政策の目標としている「物価2%上昇」の達成時期を、従来の「18年度ごろ」から「19年度ごろ」にまた先送りした。このことは日銀自身が「異次元緩和政策の効力はなくなった」ことを認めた結果だと言えるだろう。だが効力はなくなっても、その副作用は逆に強まっている。東京証券市場が依存症に陥っただけでなく、実体経済に対するマイナス効果も膨らんできた。
7月20日時点で、日銀が保有する国債の総額は428兆円。国債の発行総額は935兆円だから、その45%を引き受けたことになる。この結果、市場で流通する国債は品薄に。日銀が買い続けるものだから、価格も利回りも動かなくなってしまった。一方、日銀が買い入れたETF(上場投資信託)の総額も17兆円に。日経平均は日銀が買い出動する2万円前後で膠着、自由市場の機能が損なわれつつある。
実体経済に対する副作用も、見逃せなくなってきた。たとえば個人の預貯金は、3月末時点で851兆円にのぼっている。しかしゼロ金利政策の影響で、その利子はゼロに等しい。仮にこの預貯金に3%の金利が付いていたら、その金額は年間26兆円。日銀が異次元緩和を始めてから4年半になるから、家計はその間の利子収入115兆円を奪われたことになる。
もし家計が利子収入分の半分程度を消費に向けていたら、それだけ景気はよくなっていたはずだ。ところが実態はサラリーマンも年金生活者もアテにしていた利子収入が消えてしまったため、生活設計の変更を余儀なくされた。その結果は節約志向の高まり。消費支出が伸び悩み、成長率は1%前後で低迷している。
(続きは明日)
≪31日の日経平均 = 下げ -34.66円≫
≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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7月20日時点で、日銀が保有する国債の総額は428兆円。国債の発行総額は935兆円だから、その45%を引き受けたことになる。この結果、市場で流通する国債は品薄に。日銀が買い続けるものだから、価格も利回りも動かなくなってしまった。一方、日銀が買い入れたETF(上場投資信託)の総額も17兆円に。日経平均は日銀が買い出動する2万円前後で膠着、自由市場の機能が損なわれつつある。
実体経済に対する副作用も、見逃せなくなってきた。たとえば個人の預貯金は、3月末時点で851兆円にのぼっている。しかしゼロ金利政策の影響で、その利子はゼロに等しい。仮にこの預貯金に3%の金利が付いていたら、その金額は年間26兆円。日銀が異次元緩和を始めてから4年半になるから、家計はその間の利子収入115兆円を奪われたことになる。
もし家計が利子収入分の半分程度を消費に向けていたら、それだけ景気はよくなっていたはずだ。ところが実態はサラリーマンも年金生活者もアテにしていた利子収入が消えてしまったため、生活設計の変更を余儀なくされた。その結果は節約志向の高まり。消費支出が伸び悩み、成長率は1%前後で低迷している。
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◇ 止める決断も選択肢に = 日銀が保有する国債などの買い入れ資産は、ついに500兆円を超えた。アメリカのFRBが保有する資産は4兆5000億ドル。1ドル=110円で換算すれば、ほぼ同じ大きさである。しかしアメリカのGDPは日本の3倍半以上。したがって経済規模を勘案すれば、日本はアメリカの3倍半以上の資産を購入したことになる。
こんなに巨額の資産を購入したのは、日銀が「おカネを放出すればするほど、景気はよくなる」と考えたからだ。しかし実際は、そうならなかった。金融機関には大量の現金が注入されたが、企業や個人は金融機関からの借り入れを増やさなかったからである。困った金融機関は不動産融資に活路を見出し、いま不動産バブルが心配され始めた。
こんな状況だが、日銀は“異次元緩和”を止めることができない。金利を上げれば、円相場が上昇してしまう。量的緩和を縮小すれば、長期金利が上がってしまう。いずれも景気にとっては、確実なマイナス要因になるだろう。だから日銀は超金融緩和を維持せざるをえないが、そうしているうちにも副作用は累積的に強まって行く。
アメリカはすでに一昨年末から、金融政策を引き締めに転じた。ヨーロッパ諸国も、間もなく引き締めに転換する姿勢をみせている。そうしたなかで、日本だけは超緩和政策の麻薬から逃れられない。緩和政策の停止も選択肢の1つだと思うが、政府も日銀もそんな検討は全くしていない。
≪1日の日経平均 = 上げ +60.61円≫
≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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こんなに巨額の資産を購入したのは、日銀が「おカネを放出すればするほど、景気はよくなる」と考えたからだ。しかし実際は、そうならなかった。金融機関には大量の現金が注入されたが、企業や個人は金融機関からの借り入れを増やさなかったからである。困った金融機関は不動産融資に活路を見出し、いま不動産バブルが心配され始めた。
こんな状況だが、日銀は“異次元緩和”を止めることができない。金利を上げれば、円相場が上昇してしまう。量的緩和を縮小すれば、長期金利が上がってしまう。いずれも景気にとっては、確実なマイナス要因になるだろう。だから日銀は超金融緩和を維持せざるをえないが、そうしているうちにも副作用は累積的に強まって行く。
アメリカはすでに一昨年末から、金融政策を引き締めに転じた。ヨーロッパ諸国も、間もなく引き締めに転換する姿勢をみせている。そうしたなかで、日本だけは超緩和政策の麻薬から逃れられない。緩和政策の停止も選択肢の1つだと思うが、政府も日銀もそんな検討は全くしていない。
≪1日の日経平均 = 上げ +60.61円≫
≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 平均寿命は世界第2位だけれど = 厚生労働省は先週、16年の平均寿命を発表した。それによると、女性は前年より0.15歳延びて87.14歳に。男性は0.23歳延びて80.98歳だった。終戦直後の1947年に比べると、女性は33.18歳、男性は30.92歳も寿命が延びている。国際的にみると、男女ともに香港が第1位。日本は男女ともに第2位だった。女性の第3位はスペイン、男性の第3位はキプロス。
また厚労省は6月に、15年の年齢調整死亡率を発表している。年齢調整死亡率というのは、都道府県ごとに異なる年齢構成を調整し、人口10万人当たりの年間死亡者数を計算した統計。男性は486人で、5年前より58人減少。女性は255人で20人減少した。都道府県別では、男女ともに長野県が最低。青森県が最高だった。
平均寿命は女性が4年連続、男性が5年連続で過去最高を更新した。医療技術の進歩や健康志向の高まりを反映したもので、大変喜ばしい。しかし長生きをしても、健康でなければ素直には喜べない。そこで最近は介護を必要としない年齢、つまり健康寿命の長さが重視されている。
介護を必要とせずに長生きできれば本人も助かるが、医療・介護費も減って国の財政にも貢献する。したがって、いま世間では「平均寿命より健康寿命」の風潮が高まっている。ところが厚労省は、平均寿命は毎年集計し発表するのに、健康寿命は3年に1度しか調査しない。世の中の変化について行けない、お役所仕事の典型である。
≪2日の日経平均 = 上げ +94.25円≫
≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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また厚労省は6月に、15年の年齢調整死亡率を発表している。年齢調整死亡率というのは、都道府県ごとに異なる年齢構成を調整し、人口10万人当たりの年間死亡者数を計算した統計。男性は486人で、5年前より58人減少。女性は255人で20人減少した。都道府県別では、男女ともに長野県が最低。青森県が最高だった。
平均寿命は女性が4年連続、男性が5年連続で過去最高を更新した。医療技術の進歩や健康志向の高まりを反映したもので、大変喜ばしい。しかし長生きをしても、健康でなければ素直には喜べない。そこで最近は介護を必要としない年齢、つまり健康寿命の長さが重視されている。
介護を必要とせずに長生きできれば本人も助かるが、医療・介護費も減って国の財政にも貢献する。したがって、いま世間では「平均寿命より健康寿命」の風潮が高まっている。ところが厚労省は、平均寿命は毎年集計し発表するのに、健康寿命は3年に1度しか調査しない。世の中の変化について行けない、お役所仕事の典型である。
≪2日の日経平均 = 上げ +94.25円≫
≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ 全国平均の支出額は8904円 = 総務省が家計調査から、アイスクリーム・シャーベット・氷菓子に対する家計の支出を抽出した。それによると、16年の1世帯当たり平均支出額は8904円。10年前に比べると、約15%増えている。温暖化の影響なのかもしれない。
当然ながら、アイスクリーム類に対する支出は夏場に多い。16年の場合、8月の支出額は1387円、2月の397円に比べると3倍以上だった。ところが、この10年間の増加率をみると、夏場より冬場の方が大きかった。暖房が普及したためなのか、それとも冬の気温が上昇したのだろうか。
都市別にみると、金沢市が全国一で年間の支出額は1万0822円。次いで富山市が1万0047円で、この2都市だけが1万円を超えている。北陸の人は、アイスクリームが好きなのだろうか。あとは川崎市、さいたま市、山形市と続いている。
夏の気温が高いことで有名な埼玉県熊谷市や岐阜県多治見市は、ここに登場しない。というのも、この結果を抽出した家計調査が全国の県庁所在地と政令指定都市しか対象にしていないからである。もしかすると、熊谷市民あたりが北陸人よりアイスクリームを食べているのかもしれない。
≪3日の日経平均 = 下げ -50.78円≫
≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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当然ながら、アイスクリーム類に対する支出は夏場に多い。16年の場合、8月の支出額は1387円、2月の397円に比べると3倍以上だった。ところが、この10年間の増加率をみると、夏場より冬場の方が大きかった。暖房が普及したためなのか、それとも冬の気温が上昇したのだろうか。
都市別にみると、金沢市が全国一で年間の支出額は1万0822円。次いで富山市が1万0047円で、この2都市だけが1万円を超えている。北陸の人は、アイスクリームが好きなのだろうか。あとは川崎市、さいたま市、山形市と続いている。
夏の気温が高いことで有名な埼玉県熊谷市や岐阜県多治見市は、ここに登場しない。というのも、この結果を抽出した家計調査が全国の県庁所在地と政令指定都市しか対象にしていないからである。もしかすると、熊谷市民あたりが北陸人よりアイスクリームを食べているのかもしれない。
≪3日の日経平均 = 下げ -50.78円≫
≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ 主戦場は中国 = 中国は世界第2位の経済大国。GDP成長率もまだ7%弱と高い。にもかかわらず、水インフラは低開発国並み。湖水や河川の汚染も著しい。国民の不満は大きく、政府も水対策には懸命となっている。25年のビジネス規模は12兆円に達するという試算もある。言い方を変えれば、水ビジネスの商機がこんなに豊富な国はない。
中国の水利用は、農業用水が70%、工業用水が20%、生活用水が10%を占めている。これらの水源である湖水や河川あるいはダムの汚染で、いずれも大きな悪影響を受けているのが現状。さらに大都市は人口の急増で、生活用水の不足が問題化している。また都市部でも、下水道の普及率は20%ほどしかない。政府は20年までの10年間に4兆元を投じて、水インフラの建設を急ぐ方針だ。
もともと中国には、水ビジネス企業が200社も存在する。そこへ各国の企業がどっと参入した。上海などの沿海部は、いち早く進出したフランスのメジャーが大半を抑えている。だが、その他の大都市や内陸部は手つかずのところも多く、各国の企業は独自の作戦を立てて攻め込んでいる最中。しかし意外に苦戦を強いられるケースも多そうだ。
というのも中国の場合、地方政府とのコネがないと入札も出来ないことが少なくない。このため日本の企業も、すでに実績を持つ海外企業と提携したり、有力な現地企業との合弁事業にするなど、いろいろチエを絞っている。このように中国はいま世界水ビジネスの主戦場となっているが、ここでも日本側の高コストは一つのネックになっているようだ。
(続きは来週サタデー)
≪4日の日経平均 = 下げ -76.93円≫
【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】
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中国の水利用は、農業用水が70%、工業用水が20%、生活用水が10%を占めている。これらの水源である湖水や河川あるいはダムの汚染で、いずれも大きな悪影響を受けているのが現状。さらに大都市は人口の急増で、生活用水の不足が問題化している。また都市部でも、下水道の普及率は20%ほどしかない。政府は20年までの10年間に4兆元を投じて、水インフラの建設を急ぐ方針だ。
もともと中国には、水ビジネス企業が200社も存在する。そこへ各国の企業がどっと参入した。上海などの沿海部は、いち早く進出したフランスのメジャーが大半を抑えている。だが、その他の大都市や内陸部は手つかずのところも多く、各国の企業は独自の作戦を立てて攻め込んでいる最中。しかし意外に苦戦を強いられるケースも多そうだ。
というのも中国の場合、地方政府とのコネがないと入札も出来ないことが少なくない。このため日本の企業も、すでに実績を持つ海外企業と提携したり、有力な現地企業との合弁事業にするなど、いろいろチエを絞っている。このように中国はいま世界水ビジネスの主戦場となっているが、ここでも日本側の高コストは一つのネックになっているようだ。
(続きは来週サタデー)
≪4日の日経平均 = 下げ -76.93円≫
【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】
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第14章 景気対策って、なんだろう? ⑭
◇ 困難なアベノミックスの評価 = 第2次安倍内閣は12年12月に発足すると、直ちに13兆円にのぼる大型の補正予算を編成。日銀も無制限の金融緩和政策を断行しました。当時の世界経済にはまだリーマン・ショックの後遺症が尾を引き、中国経済も減速し、日本経済は四苦八苦の状態に陥っていたのです。それがアベノミックスの出現で、急速に明るさを増したことは確かでした。
まず株価が急伸。安倍内閣が成立する直前の日経平均は1万0080円でしたが、ちょうど2年後の14年12月末には1万7451円まで回復しています。金利の低下で円相場も下落し、その影響で輸出も12年の63兆7000億円が14年には73兆1000億円にまで増加しました。名目GDPは11年の491兆5000億円が、14年には512兆9000億円に拡大しています。
このようにアベノミックスは、最初の2年間には大きな効果をあげたと言えるでしょう。しかし、その後の2年半はしだいに効力が薄れ、株価は現在2万円程度で推移。上昇のスピードは、目に見えて鈍化してしまいました。16年の輸出は70兆円で、むしろ2年半前より減っています。
アベノミックスは最初のうち、大きな威力を発揮しました。しかし時間が経つにつれて、財政と金融という第1と第2の矢は失速気味です。この間、第3の矢となるべき成長戦略は、まだ構築し切れていないという状況なのです。したがってアベノミックスに対する全体的な評価を下すのは、いまのところ困難と言うしかありません。
(続きは来週日曜日)
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◇ 困難なアベノミックスの評価 = 第2次安倍内閣は12年12月に発足すると、直ちに13兆円にのぼる大型の補正予算を編成。日銀も無制限の金融緩和政策を断行しました。当時の世界経済にはまだリーマン・ショックの後遺症が尾を引き、中国経済も減速し、日本経済は四苦八苦の状態に陥っていたのです。それがアベノミックスの出現で、急速に明るさを増したことは確かでした。
まず株価が急伸。安倍内閣が成立する直前の日経平均は1万0080円でしたが、ちょうど2年後の14年12月末には1万7451円まで回復しています。金利の低下で円相場も下落し、その影響で輸出も12年の63兆7000億円が14年には73兆1000億円にまで増加しました。名目GDPは11年の491兆5000億円が、14年には512兆9000億円に拡大しています。
このようにアベノミックスは、最初の2年間には大きな効果をあげたと言えるでしょう。しかし、その後の2年半はしだいに効力が薄れ、株価は現在2万円程度で推移。上昇のスピードは、目に見えて鈍化してしまいました。16年の輸出は70兆円で、むしろ2年半前より減っています。
アベノミックスは最初のうち、大きな威力を発揮しました。しかし時間が経つにつれて、財政と金融という第1と第2の矢は失速気味です。この間、第3の矢となるべき成長戦略は、まだ構築し切れていないという状況なのです。したがってアベノミックスに対する全体的な評価を下すのは、いまのところ困難と言うしかありません。
(続きは来週日曜日)
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◇ ニューヨークは速すぎ、東京は停滞中 = ダウ平均株価は先週末まで9日間の連騰。この間ずっと新高値を更新、2日には2万2000ドルを突破した。週間では263ドルの値上がり。4-6月期の決算発表が続くなかで、2ケタの増益が見込めるという予想が広がったことが強気の原動力。加えてFRBが利上げを急がない姿勢を鮮明にしたことが、市場の空気を明るくしている。
トランプ政権は、人事面でも政策面でもトラブル続き。選挙戦中に公約した景気対策などは、どこかへすっ飛んでしまった。だがウォール街は、その方が利上げが遅れて好都合だと余裕しゃくしゃく。それにしても株価の上昇は速すぎるから、今週あたりは調整の動きが出てきてもおかしくない。
日経平均は相変わらず、2万円をはさんで行ったり来たり。企業の決算は絶好調が続くが、株価は反応しない。内閣改造で第3次安倍内閣が発足、安倍首相は「経済政策を最優先する」と強調した。だが株価は、これにも無表情。その原因は、どこにあるのか。納得のいく説明は、どこからも聞こえてこない。
今週は7日に、6月の景気動向指数。8日に、6月の国際収支と7月の景気ウォッチャー調査。10日に、7月の企業物価と6月の機械受注、第3次産業活動指数。アメリカでは10日に、7月の生産者物価。11日に、7月の消費者物価。また中国が8日に、7月の貿易統計。9日に、7月の消費者物価と生産者物価を発表する。
≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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トランプ政権は、人事面でも政策面でもトラブル続き。選挙戦中に公約した景気対策などは、どこかへすっ飛んでしまった。だがウォール街は、その方が利上げが遅れて好都合だと余裕しゃくしゃく。それにしても株価の上昇は速すぎるから、今週あたりは調整の動きが出てきてもおかしくない。
日経平均は相変わらず、2万円をはさんで行ったり来たり。企業の決算は絶好調が続くが、株価は反応しない。内閣改造で第3次安倍内閣が発足、安倍首相は「経済政策を最優先する」と強調した。だが株価は、これにも無表情。その原因は、どこにあるのか。納得のいく説明は、どこからも聞こえてこない。
今週は7日に、6月の景気動向指数。8日に、6月の国際収支と7月の景気ウォッチャー調査。10日に、7月の企業物価と6月の機械受注、第3次産業活動指数。アメリカでは10日に、7月の生産者物価。11日に、7月の消費者物価。また中国が8日に、7月の貿易統計。9日に、7月の消費者物価と生産者物価を発表する。
≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 6月から2万円を軸に小動き = 日経平均株価を終り値ベースでみると、6月2日に2万円台を回復して以来、ほとんど動きを止めている。6月中の高値は2万0230円、安値は1万9832円だった。ところが7月から先週にかけて、株価の変動はすべてこの範囲内に収まっている。具体的には2万円を少し下回ると反発するが、2万円を少し上回ると下げてしまう。2か月以上にわたって、こんな状態が続くのは異常と言うしかない。
なぜ、こんな状態に陥ったのだろう。まず下値については、日銀のETF(上場投資信託)買い入れと密接な関連があることは確かだ。日経平均が2万円を割ると、日銀が買いに出てくる。だから投資家は2万円を割り込んだところで買えば、下げによる損失を回避できる公算が大きい。日銀が出なくても買うから、日経平均は上がりやすい。
一方、上値の方はちょっと難しい。2万円を超えれば、日銀は出動しない。だから投資家も買わないわけだが、それにしても材料がないわけではない。アメリカの景気は堅調だし、日本企業の業績も絶好調を維持している。第3次安倍内閣が発足して「経済を最優先」にすることになった。しかし投資家は動かなかった。
好材料があるのに、それ以上は買わない。もしかすると、投資家は“日銀依存症”にかかったのだろうか。その結果、株価は長いトンネルに入り、ときどき2万円という明るい地上にも顔を出す。まるで地下鉄のような相場になってしまった。この異常な相場は、いつまで続くのだろうか。
≪7日の日経平均 = 上げ +103.56円≫
≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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なぜ、こんな状態に陥ったのだろう。まず下値については、日銀のETF(上場投資信託)買い入れと密接な関連があることは確かだ。日経平均が2万円を割ると、日銀が買いに出てくる。だから投資家は2万円を割り込んだところで買えば、下げによる損失を回避できる公算が大きい。日銀が出なくても買うから、日経平均は上がりやすい。
一方、上値の方はちょっと難しい。2万円を超えれば、日銀は出動しない。だから投資家も買わないわけだが、それにしても材料がないわけではない。アメリカの景気は堅調だし、日本企業の業績も絶好調を維持している。第3次安倍内閣が発足して「経済を最優先」にすることになった。しかし投資家は動かなかった。
好材料があるのに、それ以上は買わない。もしかすると、投資家は“日銀依存症”にかかったのだろうか。その結果、株価は長いトンネルに入り、ときどき2万円という明るい地上にも顔を出す。まるで地下鉄のような相場になってしまった。この異常な相場は、いつまで続くのだろうか。
≪7日の日経平均 = 上げ +103.56円≫
≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 景気対策の手段はあるのか = 安倍首相は内閣改造後の記者会見で「最優先は経済再生だ」「アベノミックスはさらに加速させる」と強調した。世論調査でも「安倍内閣は経済問題に最優先で取り組んでいるとは思わない」という回答が過半数を占めており、安倍首相も経済の不調が支持率の低下につながったと認識したのだろう。
だが認識は正しいとしても、その実行はかなり難しい。まず金融政策はゼロ金利のうえに、発行額を上回る国債の買い入れ。これ以上に動きようがない。財政も16年度の税収は予算割れ。国債を増発すれば、財政再建などはすっ飛んでしまう状況だ。残るはアベノミックス第3の矢、つまり構造改革しかない。
ところが、この構造改革は遅々として進まない。規制緩和にしても1000件を超える提案があったが、実現したのは数えるほど。しかも民泊にしてもタクシー運賃にしても、小粒ばかり。とても経済再生の原動力には成りえない。最近はIT化やロボットで生産性を上げると宣伝しているが、成果が表れるまでには相当の時間がかかる。
要するにカネはないから、チエを出すしかない。そのチエを素早く集めて選択し、インパクトの大きいものを首相の力で実現する。たとえば医療や農業の規制緩和、水道業の民営化、地方分権の推進など。いずれも激しい抵抗が生じるだろう。その抵抗勢力と心中するくらいの覚悟がなければ、安倍内閣の支持率は回復しない。
≪8日の日経平均 = 下げ -59.88円≫
≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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だが認識は正しいとしても、その実行はかなり難しい。まず金融政策はゼロ金利のうえに、発行額を上回る国債の買い入れ。これ以上に動きようがない。財政も16年度の税収は予算割れ。国債を増発すれば、財政再建などはすっ飛んでしまう状況だ。残るはアベノミックス第3の矢、つまり構造改革しかない。
ところが、この構造改革は遅々として進まない。規制緩和にしても1000件を超える提案があったが、実現したのは数えるほど。しかも民泊にしてもタクシー運賃にしても、小粒ばかり。とても経済再生の原動力には成りえない。最近はIT化やロボットで生産性を上げると宣伝しているが、成果が表れるまでには相当の時間がかかる。
要するにカネはないから、チエを出すしかない。そのチエを素早く集めて選択し、インパクトの大きいものを首相の力で実現する。たとえば医療や農業の規制緩和、水道業の民営化、地方分権の推進など。いずれも激しい抵抗が生じるだろう。その抵抗勢力と心中するくらいの覚悟がなければ、安倍内閣の支持率は回復しない。
≪8日の日経平均 = 下げ -59.88円≫
≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ 東京の株価は反応せず = アメリカ企業の4-6月期決算発表が、ピークを過ぎた。トムソン・ロイター社の推計によると、主要500社の純利益は前年同期比で8.5%の増加になる見通し。4四半期連続の増益となって、利益の水準は過去最高。1株当たりの利益も140ドル近くに達するという。このためニューヨーク市場の株価は、連日のように史上最高値を更新している。
日本の決算発表は、ピークを迎えた段階。日経新聞がこれまでの発表分を集計したところ、売り上げは前年比7.7%増、純利益は43.3%の増加となった。また製造業を中心に、18年3月期の見通しを上方修正した企業も少なくない。これまでに決算を発表した企業の7.8%が上方修正。下方修正した企業は0.6%にとどまっている。
ニューヨーク株式市場はこの好決算を素直に受け入れ、ダウ平均は2万2000ドルを突破した。ところが日経平均は2万円を軸に、小浮動を繰り返すばかり。もちろん好決算を受けて急伸した銘柄もないではないが、全体としての株価はほとんど上昇しない。
数字のうえからみると、アメリカの増益率は前1-3月期の半分に縮小している。一方、日本企業の増益率はきわめて高い。加えて通期の見通しも好転している。それなのに株価が動かないのは、なぜなのだろう。その答えが出ないうちに、9日の東京市場は北朝鮮問題の緊迫化を受けて大きく下落した。
≪9日の日経平均 = 下げ -257.30円≫
≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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日本の決算発表は、ピークを迎えた段階。日経新聞がこれまでの発表分を集計したところ、売り上げは前年比7.7%増、純利益は43.3%の増加となった。また製造業を中心に、18年3月期の見通しを上方修正した企業も少なくない。これまでに決算を発表した企業の7.8%が上方修正。下方修正した企業は0.6%にとどまっている。
ニューヨーク株式市場はこの好決算を素直に受け入れ、ダウ平均は2万2000ドルを突破した。ところが日経平均は2万円を軸に、小浮動を繰り返すばかり。もちろん好決算を受けて急伸した銘柄もないではないが、全体としての株価はほとんど上昇しない。
数字のうえからみると、アメリカの増益率は前1-3月期の半分に縮小している。一方、日本企業の増益率はきわめて高い。加えて通期の見通しも好転している。それなのに株価が動かないのは、なぜなのだろう。その答えが出ないうちに、9日の東京市場は北朝鮮問題の緊迫化を受けて大きく下落した。
≪9日の日経平均 = 下げ -257.30円≫
≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 東南アジアでも激しい競争 = 世界の水ビジネス企業は、いま巨大な需要が見込める中国に殺到している。しかし沿海部の重要な都市には、フランスなどのメジャー企業がすでに進出。内陸部では地方政府の権限が強く、地元企業と連携しなければ入札にも参加しにくい。日本の企業も含めて、後発組は悪戦苦闘している例も少なくないようだ。
インドは水ビジネスの民営化が遅れており、需要はまだ大きくない。そこで各国の水ビジネス企業は、東南アジアに目をつけることになる。ところが東南アジア諸国の需要は、国や地域によって千差万別。きれいな上水、海水の淡水化、下水の処理、工業用水の確保から、水道水の漏水や盗難の防止まで。キメ細かい対応が要求される。
さらに財政的に苦しい国や自治体も多いから、コストの点でも要求はきつい。水質の完全性よりは、コストの安い方がいいという要求も少なくないという。またシンガポール、フィリピンなど地元の水ビジネス企業も力をつけてきた。こうしたなかで、日本の企業も東南アジア諸国にはいろいろな形で進出している。
だが経済産業省の資料によると、東南アジアの水ビジネスに占める日本の割合はまだ1.2%に過ぎない。北米の0.1%、中国の0.6%に比べれば多少は高い比率だが、出遅れてしまったことは間違いない。水ビジネスの将来性に気付くのが遅かったと言えるだろう。対照的にアジアのなかで、大成功したのがシンガポールである。
(続きは来週サタデー)
≪10日の日経平均 = 下げ -8.97円≫
【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】
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インドは水ビジネスの民営化が遅れており、需要はまだ大きくない。そこで各国の水ビジネス企業は、東南アジアに目をつけることになる。ところが東南アジア諸国の需要は、国や地域によって千差万別。きれいな上水、海水の淡水化、下水の処理、工業用水の確保から、水道水の漏水や盗難の防止まで。キメ細かい対応が要求される。
さらに財政的に苦しい国や自治体も多いから、コストの点でも要求はきつい。水質の完全性よりは、コストの安い方がいいという要求も少なくないという。またシンガポール、フィリピンなど地元の水ビジネス企業も力をつけてきた。こうしたなかで、日本の企業も東南アジア諸国にはいろいろな形で進出している。
だが経済産業省の資料によると、東南アジアの水ビジネスに占める日本の割合はまだ1.2%に過ぎない。北米の0.1%、中国の0.6%に比べれば多少は高い比率だが、出遅れてしまったことは間違いない。水ビジネスの将来性に気付くのが遅かったと言えるだろう。対照的にアジアのなかで、大成功したのがシンガポールである。
(続きは来週サタデー)
≪10日の日経平均 = 下げ -8.97円≫
【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】
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第14章 景気対策って、なんだろう? ⑮
◇ 新幹線と自転車 = 政府は「第2次安倍内閣が発足した12年12月以来、景気はずっと回復を続けている」と強調しています。内閣府の発表によると、その長さはことし2月で57か月。1990年前後のバブル経済期に作った51か月を抜いて戦後3番目の記録になりました。もし9月まで回復が続くと、1965-70年の“いざなぎ景気”を抜いて戦後2番目の長さになるそうです。
ところが現在「景気がいい」と感じている人は、そんなに多くありません。というのも今回の景気回復は、とても勢いが弱いからです。たとえばGDP成長率でみると、今回の回復期は年平均で1%にも達していません。これに対して“いざなぎ景気”のときは、年平均が10%を超えていたのです。
仮に年平均1%の成長が続いた場合、GDPの実額が2倍になるためには70年近くかかります。これに対して10%成長なら、GDPは7年ちょっとで2倍になってしまいます。いわば景気回復のスピードが、新幹線と自転車ほども違うのです。ですから、いまは景気回復と言われても、なかなか実感が湧きません。
もちろん一国の経済が成熟すると、成長率が低下することは避けられません。たとえば16年の場合、中国の成長率は6.7%、インドは6.8%でした。これに対して先進国と呼ばれるアメリカは1.6%、ドイツは1.8%です。日本の1.0%は、どうも低すぎる感じがしますね。本当なら景気対策を打ち出し、もう少し成長率をあげたいところですが、財源がないので我慢しているのが実状です。
(続きは来週日曜日)
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◇ 新幹線と自転車 = 政府は「第2次安倍内閣が発足した12年12月以来、景気はずっと回復を続けている」と強調しています。内閣府の発表によると、その長さはことし2月で57か月。1990年前後のバブル経済期に作った51か月を抜いて戦後3番目の記録になりました。もし9月まで回復が続くと、1965-70年の“いざなぎ景気”を抜いて戦後2番目の長さになるそうです。
ところが現在「景気がいい」と感じている人は、そんなに多くありません。というのも今回の景気回復は、とても勢いが弱いからです。たとえばGDP成長率でみると、今回の回復期は年平均で1%にも達していません。これに対して“いざなぎ景気”のときは、年平均が10%を超えていたのです。
仮に年平均1%の成長が続いた場合、GDPの実額が2倍になるためには70年近くかかります。これに対して10%成長なら、GDPは7年ちょっとで2倍になってしまいます。いわば景気回復のスピードが、新幹線と自転車ほども違うのです。ですから、いまは景気回復と言われても、なかなか実感が湧きません。
もちろん一国の経済が成熟すると、成長率が低下することは避けられません。たとえば16年の場合、中国の成長率は6.7%、インドは6.8%でした。これに対して先進国と呼ばれるアメリカは1.6%、ドイツは1.8%です。日本の1.0%は、どうも低すぎる感じがしますね。本当なら景気対策を打ち出し、もう少し成長率をあげたいところですが、財源がないので我慢しているのが実状です。
(続きは来週日曜日)
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◇ 北朝鮮の脅威で株価が急落 = 2か月以上も膠着状態を続けていた日経平均が、先週9日に257円も急落した。北朝鮮がグアム島をICBM(大陸間弾道弾)の標的にすると発表したためである。北京や香港、ソウル市場などの株価も大幅に下げ、さらにロンドンやフランクフルトなどヨーロッパ市場にも株安は波及した。日経平均は週間223円の値下がり。
ニューヨーク市場の株価も10日になって急落した。ダウ平均は先週月曜日まで10日間の連騰、新高値を切り上げていた。北朝鮮による日本海に向けたICBMの発射などは、無視してきたわけである。ところが今回はグアムが標的として名指しされたため、市場も深刻に受け止めたようだ。ダウ平均は週間234ドルの値下がり。
この緊張状態は、どこまで続くのか。その見通しは、極めて困難だ。北朝鮮は本当にICBMをグアムに向けて発射するのか。アメリカはどう対応するのか。正確に予想できる人はいないだろう。また緊張状態が長引いた場合、円相場は上昇し続けるのか。ニューヨークの株価は、これをきっかけに下降局面に入るのではないか。こうした疑問に答えることも、きわめて難しい。
今週は14日に、4-6月期のGDP速報。16日に、7月の訪日外国人客数。17日に、7月の貿易統計。アメリカでは15日に、7月の小売り売上高と8月のNAHB住宅市場指数。16日に、7月の住宅着工戸数。17日に、7月の工業生産とカンファレンス・ボード景気先行指数。18日に、8月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、7月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額。EUが16日に、4-6月期のGDP速報を発表する。
≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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ニューヨーク市場の株価も10日になって急落した。ダウ平均は先週月曜日まで10日間の連騰、新高値を切り上げていた。北朝鮮による日本海に向けたICBMの発射などは、無視してきたわけである。ところが今回はグアムが標的として名指しされたため、市場も深刻に受け止めたようだ。ダウ平均は週間234ドルの値下がり。
この緊張状態は、どこまで続くのか。その見通しは、極めて困難だ。北朝鮮は本当にICBMをグアムに向けて発射するのか。アメリカはどう対応するのか。正確に予想できる人はいないだろう。また緊張状態が長引いた場合、円相場は上昇し続けるのか。ニューヨークの株価は、これをきっかけに下降局面に入るのではないか。こうした疑問に答えることも、きわめて難しい。
今週は14日に、4-6月期のGDP速報。16日に、7月の訪日外国人客数。17日に、7月の貿易統計。アメリカでは15日に、7月の小売り売上高と8月のNAHB住宅市場指数。16日に、7月の住宅着工戸数。17日に、7月の工業生産とカンファレンス・ボード景気先行指数。18日に、8月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が14日に、7月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額。EUが16日に、4-6月期のGDP速報を発表する。
≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ 恐怖指数が倍近くに上昇 = 北朝鮮がグアム島を標的にICBM(大陸間弾道弾)を発射すると発表したため、先週10日のダウ平均は200ドル以上も急落した。特に“恐怖指数”と呼ばれるVIX(予想変動率)が急上昇して注目を集めている。7月末には8台だった指数が、10日には16台にまで2倍近くの水準に跳ね上がった。
VIXというのは、SP500のオプション取り引きを基に算出される指数。3か月後の株価がどのくらい変動するかを予測するもので、市場の将来に対する不透明感が拡大すると、指数は上昇する。恐怖指数と言っても戦争の脅威だけではなく、たとえばリーマン・ショックやイギリスがEU離脱を決めた国民投票などのときにも、指数は上昇した。
ウォール街では今回のVIX上昇に関連して、ある著名な証券ストラテジストが「こんどの事態と比較できるのはキューバ危機だけだ」と論評して、大きな話題となっている。キューバ危機というのは冷戦のさなかの1962年に、当時のソ連がキューバに核兵器を持ち込もうとして、米ソが一瞬即発の状態に追い込まれた事件。そのとき以来の緊張感だというわけだ。
北朝鮮リスクが長引けば長引くほど、VIXは上昇する可能性が大きい。当然ながら株式は売られやすくなり、経済全体にも悪影響が及ぶ。そこで最も警戒されるのが、アメリカ経済の景気後退入りである。すでに8年間も回復を持続してきたアメリカ経済には、自動車の販売不振など異常な面も散見され始めた。VIXのさらなる上昇が、アメリカの景気にどんな影響を及ぼすのか。ニューヨーク市場の関心は、そこに集中しそうだ。
≪14日の日経平均 = 下げ -192.64円≫
≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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VIXというのは、SP500のオプション取り引きを基に算出される指数。3か月後の株価がどのくらい変動するかを予測するもので、市場の将来に対する不透明感が拡大すると、指数は上昇する。恐怖指数と言っても戦争の脅威だけではなく、たとえばリーマン・ショックやイギリスがEU離脱を決めた国民投票などのときにも、指数は上昇した。
ウォール街では今回のVIX上昇に関連して、ある著名な証券ストラテジストが「こんどの事態と比較できるのはキューバ危機だけだ」と論評して、大きな話題となっている。キューバ危機というのは冷戦のさなかの1962年に、当時のソ連がキューバに核兵器を持ち込もうとして、米ソが一瞬即発の状態に追い込まれた事件。そのとき以来の緊張感だというわけだ。
北朝鮮リスクが長引けば長引くほど、VIXは上昇する可能性が大きい。当然ながら株式は売られやすくなり、経済全体にも悪影響が及ぶ。そこで最も警戒されるのが、アメリカ経済の景気後退入りである。すでに8年間も回復を持続してきたアメリカ経済には、自動車の販売不振など異常な面も散見され始めた。VIXのさらなる上昇が、アメリカの景気にどんな影響を及ぼすのか。ニューヨーク市場の関心は、そこに集中しそうだ。
≪14日の日経平均 = 下げ -192.64円≫
≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 立ちはだかる北朝鮮リスク = 内閣府は14日、4-6月期のGDP速報を発表した。それによると、実質成長率は前期比で1.0%、年率換算では4.0%の高い伸びとなった。事前に民間の調査機関が算出した2.5%前後の予測を大きく上回っている。四半期の実質成長率が4%台になったのは、15年1-3月期以来のこと。名目成長率は年率4.6%だった。
成長率が跳ね上がった理由は、個人消費と企業の設備投資、それに政府の公共投資という内需の3本柱がそろって増大したため。GDPの6割以上を占める個人消費は年率3.7%と、久しぶりに大きく増加した。設備投資も9.9%増加した。人手不足に対処するための省力化投資も、目立ってきたようだ。また公共投資は21.9%増えている。
日本の経済成長率は、このところ平均すると1%にも達しない。アメリカやヨーロッパ諸国と比べても、元気のなさが目立っていた。それが4%成長に飛び上がったのだから、ある意味では驚きである。仮にこの調子がもう少し続けば、経済の好循環が始まる可能性も出てくるだろう。最も喜んでいるのは安倍首相かもしれない。
だが4%成長が発表された14日の株価は、大幅に下げた。北朝鮮リスクが、いぜん尾を引いているからである。このリスクが長引くと、個人消費や設備投資は再び引っ込んでしまうかもしれない。4-6月期の4%成長が一瞬のアダ花に終わってしまう危険性は、どうしても否定できない。
≪15日の日経平均 = 上げ +216.21円≫
≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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成長率が跳ね上がった理由は、個人消費と企業の設備投資、それに政府の公共投資という内需の3本柱がそろって増大したため。GDPの6割以上を占める個人消費は年率3.7%と、久しぶりに大きく増加した。設備投資も9.9%増加した。人手不足に対処するための省力化投資も、目立ってきたようだ。また公共投資は21.9%増えている。
日本の経済成長率は、このところ平均すると1%にも達しない。アメリカやヨーロッパ諸国と比べても、元気のなさが目立っていた。それが4%成長に飛び上がったのだから、ある意味では驚きである。仮にこの調子がもう少し続けば、経済の好循環が始まる可能性も出てくるだろう。最も喜んでいるのは安倍首相かもしれない。
だが4%成長が発表された14日の株価は、大幅に下げた。北朝鮮リスクが、いぜん尾を引いているからである。このリスクが長引くと、個人消費や設備投資は再び引っ込んでしまうかもしれない。4-6月期の4%成長が一瞬のアダ花に終わってしまう危険性は、どうしても否定できない。
≪15日の日経平均 = 上げ +216.21円≫
≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ 外国企業の脱出も始まる = イギリスが国民投票でEU離脱を決めてから1年2か月。その悪影響が明白に現われてきた。この1年2か月の間に英ポンドの為替レートは1割以上も下落、このため物価が上昇して消費が抑制されている。たとえば5-7月の消費者物価は前年比2.6-2.9%と、4年ぶりの上昇率に。7月の小売り売上高は前月比0.9%増まで鈍化している。製造業の生産高は、このところ全く増えていない。
4-6月期のGDP成長率は0.3%に落ち込んでいる。昨年同期のちょうど半分に減速した。物価上昇率が賃金の上昇率を上回りつつあるから、国民の不満も高まり始めた。そうしたなかで特に注目されるのは、これまで上げ基調だったロンドンの不動産価格が上げ止まったこと。これは外国企業がロンドンから撤退し始めた影響だとみられている。
英大手会計事務所が7月に行った調査によると、イギリスで業務する大手金融機関のうちアイルランドのダブリンに本拠を移したところが19、フランクフルトが18、ルクセンブルクが11となっている。日本の金融機関も、三菱UFJ証券がアムステルダム。野村ホールディングス、三井住友銀行、みずほ証券などは、フランクフルトに業務の中核を移す方針だ。
その一方で、7月17日から始まったイギリスとEUの本格的な離脱交渉は難航している。今後の交渉を離脱の条件と離脱後の関係に分けて行うことでは一致したが、イギリスがEU分担金600億ユーロを支払うかどうかで大揉め。なかなか本題には入れそうにない。この交渉に進展がみられないと、それだけポンド相場の下落や外国企業の脱出に拍車がかかる可能性がある。
(続きは明日)
≪16日の日経平均 = 下げ -24.03円≫
≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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4-6月期のGDP成長率は0.3%に落ち込んでいる。昨年同期のちょうど半分に減速した。物価上昇率が賃金の上昇率を上回りつつあるから、国民の不満も高まり始めた。そうしたなかで特に注目されるのは、これまで上げ基調だったロンドンの不動産価格が上げ止まったこと。これは外国企業がロンドンから撤退し始めた影響だとみられている。
英大手会計事務所が7月に行った調査によると、イギリスで業務する大手金融機関のうちアイルランドのダブリンに本拠を移したところが19、フランクフルトが18、ルクセンブルクが11となっている。日本の金融機関も、三菱UFJ証券がアムステルダム。野村ホールディングス、三井住友銀行、みずほ証券などは、フランクフルトに業務の中核を移す方針だ。
その一方で、7月17日から始まったイギリスとEUの本格的な離脱交渉は難航している。今後の交渉を離脱の条件と離脱後の関係に分けて行うことでは一致したが、イギリスがEU分担金600億ユーロを支払うかどうかで大揉め。なかなか本題には入れそうにない。この交渉に進展がみられないと、それだけポンド相場の下落や外国企業の脱出に拍車がかかる可能性がある。
(続きは明日)
≪16日の日経平均 = 下げ -24.03円≫
≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ メイ首相が30日に初来日 = ポンド安⇒物価高⇒景気下降の悪循環は、今後も進行する可能性が大きい。イングランド銀行はポンド安を阻止するため金利の引き上げを検討したようだが、利上げは景気をいっそう悪化させる心配があって決断し切れない。そうこうしているうちに成長率がマイナスに落ち込めば“インフレ下の不況”になって、国民の不満は高まる危険性がある。
イギリスのEU離脱は19年3月に実現する。EU側に本拠を移そうと計画する企業は、営業権の獲得などの準備に1年はかかるだろう。したがって逆算すると、ことしの年末から来年春にかけて最終的な決断を下さなければならない。つまりイギリスからの脱出は、これから本格化することになるだろう。
離脱交渉もこれから本格化するが、イギリス政府が望む「過渡的な関税引き下げ協定」が結べる可能性は決して大きくない。EU側とこの協定が結べないと、イギリスのEUに対する輸出は激減する恐れがある。そこでイギリス政府は、アメリカや中国などEU以外の主要国との間でFTA(自由貿易協定)を締結したい考えだ。
こうした数多くの難題を抱えて、メイ首相が30日に日本を訪れる。安倍首相は「北朝鮮に対する制裁の強化で結束」などを話し合うなどと言っているが、メイ首相はそれどころではない心境だろう。この際は日本政府も2国間FTAの締結に向けて“思いやり外交”を展開したら、どうだろうか。
≪17日の日経平均 = 下げ -26.65円≫
≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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イギリスのEU離脱は19年3月に実現する。EU側に本拠を移そうと計画する企業は、営業権の獲得などの準備に1年はかかるだろう。したがって逆算すると、ことしの年末から来年春にかけて最終的な決断を下さなければならない。つまりイギリスからの脱出は、これから本格化することになるだろう。
離脱交渉もこれから本格化するが、イギリス政府が望む「過渡的な関税引き下げ協定」が結べる可能性は決して大きくない。EU側とこの協定が結べないと、イギリスのEUに対する輸出は激減する恐れがある。そこでイギリス政府は、アメリカや中国などEU以外の主要国との間でFTA(自由貿易協定)を締結したい考えだ。
こうした数多くの難題を抱えて、メイ首相が30日に日本を訪れる。安倍首相は「北朝鮮に対する制裁の強化で結束」などを話し合うなどと言っているが、メイ首相はそれどころではない心境だろう。この際は日本政府も2国間FTAの締結に向けて“思いやり外交”を展開したら、どうだろうか。
≪17日の日経平均 = 下げ -26.65円≫
≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ 国家事業に育てたシンガポール = シンガポールは水ビジネスの重要性と将来性に、いち早く気付いた国である。01年には公益事業庁を水の総合官庁とし、04年には水研究特区を立ち上げた。公益事業庁は水ビジネスを一体化して、戦略的に海外に売り込む。研究特区には海外からも研究員を集め、技術的な問題はもちろん、浄水施設のテロ対策まで研究を重ねている。
シンガポールは1965年に独立したが、東京23区ほどしかない島国のため雨水が貯まらない。このためマレーシアから水を買う始末だった。この窮状が、水問題を考えるきっかけになったと言える。最初は汚水の浄化や海水の淡水化を始めたが、ついに水ビジネスを国家事業として推進することになった。
わずか15年前には、必要な水のほとんどを輸入に頼っていた。それが現在は再生水で30%、海水の淡水化で10%を賄い、あとの60%を降水と輸入に依存している。政府は30年に、この比率を50%、20%、30%にする計画だ。輸出産業としても成功しつつあり、中東や中国など世界各国に進出しているという。
シンガポール政府が狙っているのは、水ビジネスに関して世界の中核となること。ドイツやオランダ政府も、最近は似たような構想を描いているらしい。日本には最も欠落している視点だろう。水で悩んだシンガポールが成功し、水が豊富な日本が後れてしまったことは皮肉な話である。
(続きは来週サタデー)
≪18日の日経平均 = 下げ -232.22円≫
【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】
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シンガポールは1965年に独立したが、東京23区ほどしかない島国のため雨水が貯まらない。このためマレーシアから水を買う始末だった。この窮状が、水問題を考えるきっかけになったと言える。最初は汚水の浄化や海水の淡水化を始めたが、ついに水ビジネスを国家事業として推進することになった。
わずか15年前には、必要な水のほとんどを輸入に頼っていた。それが現在は再生水で30%、海水の淡水化で10%を賄い、あとの60%を降水と輸入に依存している。政府は30年に、この比率を50%、20%、30%にする計画だ。輸出産業としても成功しつつあり、中東や中国など世界各国に進出しているという。
シンガポール政府が狙っているのは、水ビジネスに関して世界の中核となること。ドイツやオランダ政府も、最近は似たような構想を描いているらしい。日本には最も欠落している視点だろう。水で悩んだシンガポールが成功し、水が豊富な日本が後れてしまったことは皮肉な話である。
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≪18日の日経平均 = 下げ -232.22円≫
【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】
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第14章 景気対策って、なんだろう? ⑯
◇ アベノミックスの評価は不明 = こんどはアベノミックスが始まる直前と現在の経済状況を比較してみましょう。安倍内閣の経済対策に、すぐ反応したのは株価でした。第2次安倍内閣が発足する前日の日経平均は1万0080円でしたが、15年4月には2万円台を回復しています。ただし株価は現在も2万円前後ですから、この2年間は横ばいになってしまいました。
円相場もすぐに動きました。当時の対ドル相場は85円前後、それが110円前後にまで急速に下がっています。このため輸出が伸びて、企業の業績も絶好調に。雇用の状態も大幅に改善され、失業率は当時の4.3%から2.8%にまで低下しています。ただ名目GDPは12年10-12月期が517兆円。16年10-12月期は540兆円で、この間に23兆円しか増えていません。
一方、改善が遅れたのは個人の所得です。勤労者世帯の実収入は13年2月が46万6256円、それが17年2月では48万4038円。収入の伸びが鈍いために、個人消費もなかなか増加しないのが現状です。この個人消費の弱さが、成長率が年平均1%しか上がらない最大の原因だと考えられています。
企業も個人も貯蓄の積み上げに懸命で、なかなかおカネを使おうとはしません。企業はリーマン・ショックのような突然の不況に備え、個人は老後の生活資金を確保しようとしています。言い換えれば日本経済の先行きが不透明なことに、大きな不安を感じているからでしょう。こうみてくると最近の景気は「いいのか、悪いのか」判定はかなり難しい。したがって、アベノミックスの評価も不明と言うしかありません。
(続きは来週日曜日)
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◇ アベノミックスの評価は不明 = こんどはアベノミックスが始まる直前と現在の経済状況を比較してみましょう。安倍内閣の経済対策に、すぐ反応したのは株価でした。第2次安倍内閣が発足する前日の日経平均は1万0080円でしたが、15年4月には2万円台を回復しています。ただし株価は現在も2万円前後ですから、この2年間は横ばいになってしまいました。
円相場もすぐに動きました。当時の対ドル相場は85円前後、それが110円前後にまで急速に下がっています。このため輸出が伸びて、企業の業績も絶好調に。雇用の状態も大幅に改善され、失業率は当時の4.3%から2.8%にまで低下しています。ただ名目GDPは12年10-12月期が517兆円。16年10-12月期は540兆円で、この間に23兆円しか増えていません。
一方、改善が遅れたのは個人の所得です。勤労者世帯の実収入は13年2月が46万6256円、それが17年2月では48万4038円。収入の伸びが鈍いために、個人消費もなかなか増加しないのが現状です。この個人消費の弱さが、成長率が年平均1%しか上がらない最大の原因だと考えられています。
企業も個人も貯蓄の積み上げに懸命で、なかなかおカネを使おうとはしません。企業はリーマン・ショックのような突然の不況に備え、個人は老後の生活資金を確保しようとしています。言い換えれば日本経済の先行きが不透明なことに、大きな不安を感じているからでしょう。こうみてくると最近の景気は「いいのか、悪いのか」判定はかなり難しい。したがって、アベノミックスの評価も不明と言うしかありません。
(続きは来週日曜日)
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◇ 株価の流れに本質的な変化? = ダウ平均は先週184ドルの値下がり。終り値は2万2000ドルを割り込んだ。トランプ政権内で側近といわれる人たちが続々と辞任、スペインでのテロ事件発生が株価下落の原因になった、と解説されている。しかし市場の空気には、もっと本質的な変化が現われ始めたような感じも生じてきた。アメリカの景気先行きに対する不安感の高まりである。
トランプ大統領の景気対策について、市場はもう期待していない。だが9年目に入ったアメリカの景気回復は、いつ途切れてもおかしくない状態になっている。雇用はまだ堅調だが、小売りには暗雲が広がり始めた。もし景気が下降に転じた場合、トランプ政権に対応する力があるのかどうか。市場はこの点を心配し始めたように思われる。
日経平均は先週259円の値下がり。2万円を大きく割り込んでしまった。相変わらず続く北朝鮮リスクとニューヨークの軟調が、株価の足を引っ張っている。もう1つ、東京市場の難敵は円高の進行である。市場では、今週も円高が進むという見方が強い。しかし北朝鮮を巡る緊張が高まると、どうして円が買われるのだろうか。その辺の仕組みは、もう少し研究する必要がある。
今週は21日に、6月の全産業活動指数。25日に、7月の消費者物価。アメリカでは22日に、6月のFHFA住宅価格。23日に、7月の新築住宅販売戸数。24日に、7月の中古住宅販売戸数が発表される。
≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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トランプ大統領の景気対策について、市場はもう期待していない。だが9年目に入ったアメリカの景気回復は、いつ途切れてもおかしくない状態になっている。雇用はまだ堅調だが、小売りには暗雲が広がり始めた。もし景気が下降に転じた場合、トランプ政権に対応する力があるのかどうか。市場はこの点を心配し始めたように思われる。
日経平均は先週259円の値下がり。2万円を大きく割り込んでしまった。相変わらず続く北朝鮮リスクとニューヨークの軟調が、株価の足を引っ張っている。もう1つ、東京市場の難敵は円高の進行である。市場では、今週も円高が進むという見方が強い。しかし北朝鮮を巡る緊張が高まると、どうして円が買われるのだろうか。その辺の仕組みは、もう少し研究する必要がある。
今週は21日に、6月の全産業活動指数。25日に、7月の消費者物価。アメリカでは22日に、6月のFHFA住宅価格。23日に、7月の新築住宅販売戸数。24日に、7月の中古住宅販売戸数が発表される。
≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 北朝鮮リスクで108円台にまで上昇 = 北朝鮮がグアム島の周辺をICBM(大陸間弾道弾)の標的にすると発表したのが、先々週9日のこと。それから先週末までの間に、円の対ドル相場は1円20銭ほど上昇。一時は108円台を記録した。日経平均は500円以上も値下がりしている。新聞やテレビの解説によると、円高が進んだのは極東情勢の緊迫化で“安全資産”と目される日本円が買われたためだという。
でも地理的には北朝鮮に近い日本の通貨が、どうして安全なのだろう。かつてアメリカのドルが「有事のドル」と呼ばれて、国際緊張が高まると買われたことがあった。これは戦争が起きてもアメリカは最も被害が少ないと考えられたからで、納得のゆく話である。しかし残念ながら、いまの日本にそんな安心感は全くない。
そこで為替の専門家に、理由を尋ねてみた。その答えのなかで、唯一なるほどと思ったのは「日本の企業は海外に莫大な資産を持っている。有事の際、企業はそれを国内に還流させるから円の需要が増える」というもの。ただ、この場合も“有事”ではあるが、“安全”とは無関係のように思われる。
専門家によると、円高はまだ進みそうだという。それが現実らしいが、海外資産の還流だけでそれを説明するのは難しい。結局は、為替の投資家がそう思い込んでいるためと理解するしかないようだ。新聞やテレビの“安全資産”という解説が、投資家の誤解を助長しているのかもしれない。
≪21日の日経平均 = 下げ -77.28円≫
≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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でも地理的には北朝鮮に近い日本の通貨が、どうして安全なのだろう。かつてアメリカのドルが「有事のドル」と呼ばれて、国際緊張が高まると買われたことがあった。これは戦争が起きてもアメリカは最も被害が少ないと考えられたからで、納得のゆく話である。しかし残念ながら、いまの日本にそんな安心感は全くない。
そこで為替の専門家に、理由を尋ねてみた。その答えのなかで、唯一なるほどと思ったのは「日本の企業は海外に莫大な資産を持っている。有事の際、企業はそれを国内に還流させるから円の需要が増える」というもの。ただ、この場合も“有事”ではあるが、“安全”とは無関係のように思われる。
専門家によると、円高はまだ進みそうだという。それが現実らしいが、海外資産の還流だけでそれを説明するのは難しい。結局は、為替の投資家がそう思い込んでいるためと理解するしかないようだ。新聞やテレビの“安全資産”という解説が、投資家の誤解を助長しているのかもしれない。
≪21日の日経平均 = 下げ -77.28円≫
≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 崩壊した料金体系 = 大手電力会社の競争が激化し、料金体系が滅茶苦茶になってしまった。競争を激化させた原因は、昨年春に実施された電力小売りの全面自由化。新電力の参入に加えて、大手電力会社同士が続々と相手の地域に殴り込みをかけている。最大の修羅場となっているのは大阪周辺。このため関西電力は、捨て身の料金値下げに打って出た。
関西電力は8月から家庭向け電力を3.15%、企業向け電力を4.9%引き下げた。標準世帯でみると月額料金は6721円、前月より180円安くなっている。これまで電力会社は、原油や石炭などの輸入価格が変動すると、それに応じて毎月の料金を上げ下げしてきた。この原燃料費調整制度によらない料金の引き下げは、こんどの関西電力による値下げが初めてである。
電力小売りの自由化で、関西地方ではまず大阪ガスが電力業に参入した。続いて東京電力や中部電力も進出している。電力には品質の差がないから、顧客獲得の決め手は価格以外にはない。そこで東京電力は、関西電力が8月に引き下げた料金よりさらに5%安いプランを提供すると発表。大阪ガスも料金引き下げを決めている。
消費者にとっては、電気料金が下がることは有難い。だが料金体系が崩壊したことによって、新たな矛盾も生まれている。たとえば東京電力の関東地方における料金は、標準家庭用で月6687円だ。ところが関西地方では6385円程度で売ることになる。つまり古くからのお客よりも、新しいお客に安く売るわけだ。これはどう考えても、おかしいと言わざるをえないだろう。
(続きは明日)
≪22日の日経平均 = 下げ -9.29円≫
≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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関西電力は8月から家庭向け電力を3.15%、企業向け電力を4.9%引き下げた。標準世帯でみると月額料金は6721円、前月より180円安くなっている。これまで電力会社は、原油や石炭などの輸入価格が変動すると、それに応じて毎月の料金を上げ下げしてきた。この原燃料費調整制度によらない料金の引き下げは、こんどの関西電力による値下げが初めてである。
電力小売りの自由化で、関西地方ではまず大阪ガスが電力業に参入した。続いて東京電力や中部電力も進出している。電力には品質の差がないから、顧客獲得の決め手は価格以外にはない。そこで東京電力は、関西電力が8月に引き下げた料金よりさらに5%安いプランを提供すると発表。大阪ガスも料金引き下げを決めている。
消費者にとっては、電気料金が下がることは有難い。だが料金体系が崩壊したことによって、新たな矛盾も生まれている。たとえば東京電力の関東地方における料金は、標準家庭用で月6687円だ。ところが関西地方では6385円程度で売ることになる。つまり古くからのお客よりも、新しいお客に安く売るわけだ。これはどう考えても、おかしいと言わざるをえないだろう。
(続きは明日)
≪22日の日経平均 = 下げ -9.29円≫
≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 電気料金は上がる一方 = 関西電力が8月から料金を引き下げたことには、高浜原発の再稼働が大きく貢献している。だが再稼働によるコストの削減は年間410億円。値下げによる減収分877億円の半分にも満たない。その不足分は、修繕費や経費の圧縮で補っている。競争に負けないための苦渋の策だが、こうした傾向が強まると安全確保の点で心配はないのだろうか。
自由化による競争の激化で、電気料金の値下げが大きな話題になっている。消費者にとっては歓迎すべきことに違いない。しかし実態をみると、電気料金は上がりっぱなしだ。たとえば関西電力の場合、標準家庭の9月の料金は6747円。10年前の9月は6394円だった。この値上がり分の大半は輸入燃料費の増加によるものだが、太陽光発電の買い取り負担額が上乗せされていることも見逃せない。
太陽光発電の強制買い取り制度は、経済産業省が12年に導入した。ところが再生エネルギーの普及を急ぐあまり、買い取り価格を高く設定したのが大失敗。ことしの3月までに、太陽光発電の買い取り総額だけで4兆2000億円に達している。この金額はすべて電気料金に上乗せされるから、電気料金は上がる一方になった。
この調子で電気料金が上昇して行けば、いずれ大問題になる。だから少しでも料金は下げておきたい。経産省はこう考えて、電力小売りの全面自由化を強行した。その結果、料金の上昇をある程度は抑えられたと言える。だが、こうして勃発した電力会社の死闘は、今後も続くに違いない。電力会社の体力低下は目に見えている。そのとき何が起こるのだろうか。
≪23日の日経平均 = 上げ +50.80円≫
≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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自由化による競争の激化で、電気料金の値下げが大きな話題になっている。消費者にとっては歓迎すべきことに違いない。しかし実態をみると、電気料金は上がりっぱなしだ。たとえば関西電力の場合、標準家庭の9月の料金は6747円。10年前の9月は6394円だった。この値上がり分の大半は輸入燃料費の増加によるものだが、太陽光発電の買い取り負担額が上乗せされていることも見逃せない。
太陽光発電の強制買い取り制度は、経済産業省が12年に導入した。ところが再生エネルギーの普及を急ぐあまり、買い取り価格を高く設定したのが大失敗。ことしの3月までに、太陽光発電の買い取り総額だけで4兆2000億円に達している。この金額はすべて電気料金に上乗せされるから、電気料金は上がる一方になった。
この調子で電気料金が上昇して行けば、いずれ大問題になる。だから少しでも料金は下げておきたい。経産省はこう考えて、電力小売りの全面自由化を強行した。その結果、料金の上昇をある程度は抑えられたと言える。だが、こうして勃発した電力会社の死闘は、今後も続くに違いない。電力会社の体力低下は目に見えている。そのとき何が起こるのだろうか。
≪23日の日経平均 = 上げ +50.80円≫
≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ 「働きやすさ認定」と同時に = 「うちの職場は93点だが、君のところはどう?」--サラリーマン同士のこんな情報交換も始まりそうだ。国土交通省が、オフィスビルの“働きやすさ”を数値化する。換気や採光など100項目について調査し、基準を満たせば認証する。年内に調査項目や基準値などを決め、来年度から実施するという。日経新聞が伝えた。
そこで国交省に、やってもらいたいことがある。働きやすさの認定と合わせて、ビルの入り口などに「耐震マーク」を大きく掲示すること。ビルについては、各種の耐震基準が設定されている。だが個々のビルが基準を満たしているかどうか、ふつう出入りしている人たちには判らない。基準を満たしているビルには、耐震マークの設置を義務付ける。
場所は正面玄関の外。通行人にもよく見えるようにしてほしい。というのも、普段はそのビルに入らないが、そのビルの前を通行する人はきわめて多い。そういう人たちがマークを覚えておけば、地震が起きたときに迷わず逃げ込めるからだ。通勤途中のどこに安全なビルがあるのか、知っておけば心強い。
ビルに「働きやすさ認定」と「耐震マーク」が並んで掲示されれば、そのビルの評価は上がるだろう。また最近は外国人旅行者も多いから、そういう人たちにも理解できるマークが望ましい。もちろん、耐震マークはオフィスビルだけではない。まずは官公庁のビルが率先し、駅や小売り店舗にも広げてもらいたい。
≪24日の日経平均 = 下げ -80.87円≫
≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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そこで国交省に、やってもらいたいことがある。働きやすさの認定と合わせて、ビルの入り口などに「耐震マーク」を大きく掲示すること。ビルについては、各種の耐震基準が設定されている。だが個々のビルが基準を満たしているかどうか、ふつう出入りしている人たちには判らない。基準を満たしているビルには、耐震マークの設置を義務付ける。
場所は正面玄関の外。通行人にもよく見えるようにしてほしい。というのも、普段はそのビルに入らないが、そのビルの前を通行する人はきわめて多い。そういう人たちがマークを覚えておけば、地震が起きたときに迷わず逃げ込めるからだ。通勤途中のどこに安全なビルがあるのか、知っておけば心強い。
ビルに「働きやすさ認定」と「耐震マーク」が並んで掲示されれば、そのビルの評価は上がるだろう。また最近は外国人旅行者も多いから、そういう人たちにも理解できるマークが望ましい。もちろん、耐震マークはオフィスビルだけではない。まずは官公庁のビルが率先し、駅や小売り店舗にも広げてもらいたい。
≪24日の日経平均 = 下げ -80.87円≫
≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 出遅れた日本勢は苦戦中 = 水メジャーと呼ばれるフランスのヴェオリア社などは古くから世界各国に進出、00年には中国市場にも参入した。その後の数年間で、イギリスやポルトガル、シンガポールや韓国などが一斉に追いかける。日本が本格的に海外進出したのは10年。この遅れのために、いま日本の企業は悪戦苦闘している。
後発で実績がないから、各国の入札にもなかなか参加できない。そこで実績のある海外企業との合弁事業、あるいは海外企業を買収する方法をとるしかない。たとえば合弁事業では、日立が10年にモルディブ水道会社の株式を20%取得。また三菱商事が15年にカタール財団と合弁で、海水淡水化プラントの建設を受注したなどの例がある。
一方、企業買収では東芝が14年に、インド国内の水処理会社株式を80%取得。また丸紅が10年にチリ第3位の水道事業会社を買収した。三菱商事も同年、産業革新機構などと共同でオーストラリアの現地会社を買収した。このほか水プラント・メーカーや総合商社が、この分野ではかなり積極的に動いている。
ただ水プラントの建設から上下水道の管理・運営までを行う大型プロジェクトの一括受注には、なかなか手が届かない。日本側に一括受注する体制が整っていないからである。この結果、事業規模はみなやや小ぶり。1社あたり何人分の水を供給しているかでみると、メジャーの仏ヴェオリア社やスエズ社は各1億5000万人程度。日本の企業は、まだ1000万人を超えたところがない。
(続きは来週サタデー)
≪25日の日経平均 = 上げ +98.84円≫
【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】
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後発で実績がないから、各国の入札にもなかなか参加できない。そこで実績のある海外企業との合弁事業、あるいは海外企業を買収する方法をとるしかない。たとえば合弁事業では、日立が10年にモルディブ水道会社の株式を20%取得。また三菱商事が15年にカタール財団と合弁で、海水淡水化プラントの建設を受注したなどの例がある。
一方、企業買収では東芝が14年に、インド国内の水処理会社株式を80%取得。また丸紅が10年にチリ第3位の水道事業会社を買収した。三菱商事も同年、産業革新機構などと共同でオーストラリアの現地会社を買収した。このほか水プラント・メーカーや総合商社が、この分野ではかなり積極的に動いている。
ただ水プラントの建設から上下水道の管理・運営までを行う大型プロジェクトの一括受注には、なかなか手が届かない。日本側に一括受注する体制が整っていないからである。この結果、事業規模はみなやや小ぶり。1社あたり何人分の水を供給しているかでみると、メジャーの仏ヴェオリア社やスエズ社は各1億5000万人程度。日本の企業は、まだ1000万人を超えたところがない。
(続きは来週サタデー)
≪25日の日経平均 = 上げ +98.84円≫
【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】
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第14章 景気対策って、なんだろう? ⑰
◇ 公約は守られていない = 日本の大企業は最近、史上最大級の利益を出し続けています。この利益を従業員の賃上げに使えば、家計の所得が増え消費支出の増大が見込めます。消費が増えれば企業の売り上げが伸び、また賃上げへ。安倍首相はこうした“経済の好循環”が起きることを期待して、企業側に大幅な賃上げを実施するよう要請しました。しかし現実には“好循環”は発生していません。
アベノミックスが効果をあげ、名目GDP成長率は13年が1.8%、14年が2.2%、15年が3.2%と、順調に拡大しました。当時、安倍首相は「成長率を3%に引き上げ、20年ごろまでにGDPの規模を600兆円に拡大する」と胸を張ったのです。しかし成長率は16年に1.3%に縮小、17年も1.4%程度と見込まれています。600兆円の話は、立ち消えになってしまいました。
日銀もアベノミックスが始まった当時「1年以内に物価を2%まで上昇させる」と公約しました。しかし4年半が経過した今日でも、その公約は達成されていません。それどころか、日銀は物価の将来見通しを少しずつ引き下げているのが現実です。景気はごくゆっくりと回復はしていますが、政府や日銀が4年半前に想定した姿とはかなり違ったものになってしまいました。
アベノミックスは最初の2年間、景気浮揚効果を発揮したことは確かでしょう。しかし、その後は第1と第2の矢が失速、第3の矢を発射できなかったために、浮揚効果もなくなったと言えます。こうした経過からみても、アベノミックスは成功とも失敗とも断定しにくい結果となっています。
(続きは来週日曜日)
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◇ 公約は守られていない = 日本の大企業は最近、史上最大級の利益を出し続けています。この利益を従業員の賃上げに使えば、家計の所得が増え消費支出の増大が見込めます。消費が増えれば企業の売り上げが伸び、また賃上げへ。安倍首相はこうした“経済の好循環”が起きることを期待して、企業側に大幅な賃上げを実施するよう要請しました。しかし現実には“好循環”は発生していません。
アベノミックスが効果をあげ、名目GDP成長率は13年が1.8%、14年が2.2%、15年が3.2%と、順調に拡大しました。当時、安倍首相は「成長率を3%に引き上げ、20年ごろまでにGDPの規模を600兆円に拡大する」と胸を張ったのです。しかし成長率は16年に1.3%に縮小、17年も1.4%程度と見込まれています。600兆円の話は、立ち消えになってしまいました。
日銀もアベノミックスが始まった当時「1年以内に物価を2%まで上昇させる」と公約しました。しかし4年半が経過した今日でも、その公約は達成されていません。それどころか、日銀は物価の将来見通しを少しずつ引き下げているのが現実です。景気はごくゆっくりと回復はしていますが、政府や日銀が4年半前に想定した姿とはかなり違ったものになってしまいました。
アベノミックスは最初の2年間、景気浮揚効果を発揮したことは確かでしょう。しかし、その後は第1と第2の矢が失速、第3の矢を発射できなかったために、浮揚効果もなくなったと言えます。こうした経過からみても、アベノミックスは成功とも失敗とも断定しにくい結果となっています。
(続きは来週日曜日)
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◇ 夏バテになった東京市場 = 日経平均株価は先週火曜日まで、5日にわたって続落した。5日間の続落は1年4か月ぶり。その後はやや持ち直したが、週間では18円の値下がりとなっている。東証1部の売買代金は1兆7000億円台に落ち込む日もあった。北朝鮮リスクやアメリカ政府部内のごたごたを嫌気した投資家が、株式市場を敬遠。このため市場は夏休みというより、夏バテ状態に陥っている。
それでも株価が大幅に下落しないのは、企業の業績が好調なこと。それに日銀による買い入れの影響が大きい。たとえば年初から8月20日までの売買状況をみると、外国人投資家は累計で3016億円の買い越し。これに対して、日銀のETF(上場投資信託)購入総額は3兆5876億円にのぼっている。
ダウ平均は先週139ドルの値上がり。こちらも議会が政府の債務上限引き上げを承認するかどうかの問題が、心理的な重しとなってきた。しかし好調な企業の決算とFRBによる金融引き締めの後退感が、株価を支えている。今週は9月入りを迎えて、市場の夏バテ・ムードが変わるかどうか。変わらないと、先行き判断も暗くなるだろう。
今週は29日に、7月の労働力調査と家計調査。30日に、7月の商業動態統計。31日に、7月の鉱工業生産と住宅着工戸数。1日に、4-6月期の法人企業統計、消費動向調査、新車販売台数。アメリカでは29日に、8月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。30日に、4-6月期のGDP改定値。31日に、7月の中古住宅販売。1日に、8月の雇用統計、ISM製造業景況指数、新車販売台数。また中国が31日に、8月の製造業と非製造業のPMIを発表する。
≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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それでも株価が大幅に下落しないのは、企業の業績が好調なこと。それに日銀による買い入れの影響が大きい。たとえば年初から8月20日までの売買状況をみると、外国人投資家は累計で3016億円の買い越し。これに対して、日銀のETF(上場投資信託)購入総額は3兆5876億円にのぼっている。
ダウ平均は先週139ドルの値上がり。こちらも議会が政府の債務上限引き上げを承認するかどうかの問題が、心理的な重しとなってきた。しかし好調な企業の決算とFRBによる金融引き締めの後退感が、株価を支えている。今週は9月入りを迎えて、市場の夏バテ・ムードが変わるかどうか。変わらないと、先行き判断も暗くなるだろう。
今週は29日に、7月の労働力調査と家計調査。30日に、7月の商業動態統計。31日に、7月の鉱工業生産と住宅着工戸数。1日に、4-6月期の法人企業統計、消費動向調査、新車販売台数。アメリカでは29日に、8月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。30日に、4-6月期のGDP改定値。31日に、7月の中古住宅販売。1日に、8月の雇用統計、ISM製造業景況指数、新車販売台数。また中国が31日に、8月の製造業と非製造業のPMIを発表する。
≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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◇ 政府機関の閉鎖は避けられない? = アメリカでは、トランプ大統領と議会の対立問題が急浮上してきた。夏休みを終えた議会は、9月5日に再開。来年度予算と政府の債務限度引き上げについて、最終的な審議に入るからだ。ところが、この2つの財政案件がすんなりと可決・成立する見通しは全くない。成立しない場合は、政府機関が閉鎖されたり、アメリカ国債が格下げされる可能性が高く、経済全体に深刻な影響を及ぼす危険性がある。
アメリカの18会計年度は10月から始まる。このため9月中に来年度予算が成立しないと、政府は1ドルのおカネも使えない。そこで10月半ばごろには、政府機関を閉鎖せざるをえなくなる。こうした事態は過去に何度も起きており、1990年代には最長21日間も政府が業務を停止した。また最近では13年に、オバマケア(医療保険制度改革法)を巡って与野党が対立。政府機関が数日にわたって閉鎖された。
政府機関が閉鎖されれば市民の生活に悪影響が出て、国民の不満は議会に向けられる。与野党の議員もそれを承知しているから、そう長くは予算に反対できない。短期間の“つなぎ予算”を認めることも、しばしばあった。ところが今回は、様相がかなり違う。この予算のなかに「メキシコ国境のカベ建設」費16億ドルが含まれているからだ。
メキシコ国境のカベ建設については、民主党だけでなく共和党内にも反対の意見が強い。そこで議員のなかからは「カベの建設費を除外したら」という提案も出たが、トランプ大統領はこれをきっぱり拒絶してしまった。いわく「政府機関を閉鎖しなければならなくなっても、カベは建設する」と。この一言で、状況はさらに悪化している。
(続きは明日)
≪28日の日経平均 = 下げ -2.71円≫
≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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アメリカの18会計年度は10月から始まる。このため9月中に来年度予算が成立しないと、政府は1ドルのおカネも使えない。そこで10月半ばごろには、政府機関を閉鎖せざるをえなくなる。こうした事態は過去に何度も起きており、1990年代には最長21日間も政府が業務を停止した。また最近では13年に、オバマケア(医療保険制度改革法)を巡って与野党が対立。政府機関が数日にわたって閉鎖された。
政府機関が閉鎖されれば市民の生活に悪影響が出て、国民の不満は議会に向けられる。与野党の議員もそれを承知しているから、そう長くは予算に反対できない。短期間の“つなぎ予算”を認めることも、しばしばあった。ところが今回は、様相がかなり違う。この予算のなかに「メキシコ国境のカベ建設」費16億ドルが含まれているからだ。
メキシコ国境のカベ建設については、民主党だけでなく共和党内にも反対の意見が強い。そこで議員のなかからは「カベの建設費を除外したら」という提案も出たが、トランプ大統領はこれをきっぱり拒絶してしまった。いわく「政府機関を閉鎖しなければならなくなっても、カベは建設する」と。この一言で、状況はさらに悪化している。
(続きは明日)
≪28日の日経平均 = 下げ -2.71円≫
≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ 国債が格下げされる? = アメリカでは、国債の発行総額が法律によって決められている。したがって政府が国債を増発するときには、議会で法律を改正してもらわなければならない。現在の政府債務総額は19兆8087億ドルで、すでに限度いっぱい。この限度引き上げも10月半ばまでに決まらないと、政府は新年度に国債を発行できなくなる。すると公共事業がストップするだけではなく、既発国債に対する利払いも不能に。そうなれば国債の格下げは避けられない。
満期がきた国債の償還も不可能になり、アメリカ政府はデフォルト(債務不履行)の状態に陥る。金融市場は大混乱となり、経済に大きな悪影響が及ぶ。実は11年にデフォルト寸前にまで追い詰められたことがあり、国債は格下げ。市場は大騒ぎになった。今回は議会内部に、この債務限度引き上げ問題と新年度予算を一括審議しようという動きが広まっている。
アメリカ議会は、上下両院とも共和党が過半数を制している。しかし共和党内にも、債務上限の引き上げには反対する声が強い。さらにメキシコ国境のカベ建設費を含む新年度予算がからんでくると、議会の動向は全く予断を許さなくなってきた。株式市場も先週あたりから問題を重視、大きな不安材料として認識するようになっている。
さらに問題をこじらせているのは、議会の態度に業を煮やしたトランプ大統領が、共和党の幹部を名指しで非難したこと。得意のツィッターで、ライアン下院議長とマコネル院内総務に不満をぶちまけた。こうしてメキシコとの国境にカベを作ろうとするトランプ大統領にとっては、議会が分厚いカベになりつつある。
≪29日の日経平均 = 下げ -87.35円≫
≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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満期がきた国債の償還も不可能になり、アメリカ政府はデフォルト(債務不履行)の状態に陥る。金融市場は大混乱となり、経済に大きな悪影響が及ぶ。実は11年にデフォルト寸前にまで追い詰められたことがあり、国債は格下げ。市場は大騒ぎになった。今回は議会内部に、この債務限度引き上げ問題と新年度予算を一括審議しようという動きが広まっている。
アメリカ議会は、上下両院とも共和党が過半数を制している。しかし共和党内にも、債務上限の引き上げには反対する声が強い。さらにメキシコ国境のカベ建設費を含む新年度予算がからんでくると、議会の動向は全く予断を許さなくなってきた。株式市場も先週あたりから問題を重視、大きな不安材料として認識するようになっている。
さらに問題をこじらせているのは、議会の態度に業を煮やしたトランプ大統領が、共和党の幹部を名指しで非難したこと。得意のツィッターで、ライアン下院議長とマコネル院内総務に不満をぶちまけた。こうしてメキシコとの国境にカベを作ろうとするトランプ大統領にとっては、議会が分厚いカベになりつつある。
≪29日の日経平均 = 下げ -87.35円≫
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◇ 減らせない社会保障・防衛・公共事業 = 財務省はきょう31日で、各省庁が提出する概算要求の受付けを締め切る。ここからは18年度予算の本格的な編成作業が始まるわけだ。これまでに集まった概算要求総額は、101兆円台にのぼった模様。だが昨年の概算要求も101兆4700億円に達しており、特にことしの要求額が突出しているわけではない。しかし、ことしは社会保障関係費、防衛費、公共事業費など、圧縮しにくい要求がずらりと並ぶ。例年にも増して、編成作業は難航しそうだ。
いま執行中の17年度予算は、一般会計の総額が97兆4547億円。これに対して、政府は18年度予算を98兆円台に収めたい考えだ。すると概算要求から、約3兆円をカットしなければならない。ところが予算総額の3分の1を占める社会保障関係費は、高齢化の進展で医療費や介護費が膨らむばかり。厚生労働省が見込んだ6300億円の増加を、5000億円程度に圧縮できるかどうか。
防衛省も過去最大の5兆2000億円を要求しているが、これも北朝鮮リスクが高まっている現在、なかなか切れそうにない。また公共事業費も、災害復旧やオリンピックを控えたインフラの老朽化対策で、要求の6兆円を削るのは難しそうだ。ほかにも大学の授業料減免、FTA(自由貿易協定)もからんだ農業対策など、与党の公約も絡んだ案件が目白押しだ。
しかも解散・総選挙がちらつくなど、政治的な環境も悪い。たとえば社会保障費では、予算を圧縮するために診療報酬や介護報酬の改定が計画されているが、選挙ともなれば実施は難しくなるだろう。財務省からみればたかが3兆円の攻防だが、ことしはかなり苦戦するかもしれない。結局、予算総額は100兆円に近づくのではないか。
≪30日の日経平均 = 上げ +143.99円≫
≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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いま執行中の17年度予算は、一般会計の総額が97兆4547億円。これに対して、政府は18年度予算を98兆円台に収めたい考えだ。すると概算要求から、約3兆円をカットしなければならない。ところが予算総額の3分の1を占める社会保障関係費は、高齢化の進展で医療費や介護費が膨らむばかり。厚生労働省が見込んだ6300億円の増加を、5000億円程度に圧縮できるかどうか。
防衛省も過去最大の5兆2000億円を要求しているが、これも北朝鮮リスクが高まっている現在、なかなか切れそうにない。また公共事業費も、災害復旧やオリンピックを控えたインフラの老朽化対策で、要求の6兆円を削るのは難しそうだ。ほかにも大学の授業料減免、FTA(自由貿易協定)もからんだ農業対策など、与党の公約も絡んだ案件が目白押しだ。
しかも解散・総選挙がちらつくなど、政治的な環境も悪い。たとえば社会保障費では、予算を圧縮するために診療報酬や介護報酬の改定が計画されているが、選挙ともなれば実施は難しくなるだろう。財務省からみればたかが3兆円の攻防だが、ことしはかなり苦戦するかもしれない。結局、予算総額は100兆円に近づくのではないか。
≪30日の日経平均 = 上げ +143.99円≫
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