fc2ブログ
経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
中国人観光客の急増は 望み薄
2023-09-01-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 処理水の放出で悪化した対日感情 = この9月からは、中国人観光客が大幅に増加する--旅行・宿泊業の関係者は、こう信じて疑わなかった。まず中国政府が、これまで禁止してきた日本向けの団体旅行を解禁した。そして10月になると、国慶節の大型連休。外国人観光客が殺到して、動きがとれなくなるのではないか。人手不足なので、対応し切れるだろうか。こんなことが、真剣に心配されていた。

ところが情勢は一変した。福島原発の敷地内に溜まった処理水の海洋放出が始まると、中国政府はこれを激しく非難。国民も日本製品の不買運動を始めるなど、対日感情がいっぺんに悪化してしまった。これでは、とても団体旅行どころではない。一部の裕福な個人がビジネス目的と称して来日するかもしれないが、中国人観光客の殺到という期待はあえなく吹き飛んでしまった。

観光局の集計によると、7月の外国人客数は232万6000人。コロナ前の19年7月に比べ77.6%の水準にまで回復した。地域別では韓国、台湾、中国、香港、アメリカの順となっている。中国を除くと、訪日客数はコロナ前を3.4%上回っている。コロナ前、中国からの観光客は全体の約3割を占めていたから、ここで中国人観光客が急増すれば、ことしの観光客数はコロナ前に匹敵する水準にまで回復すると考えられたわけだ。

福島原発の処理水放出は、今後30年にわたって続くという。だからと言って、中国の反日感情が30年も続くというわけではない。では、どこまで続くのだろうか。専門家の分析によると、中国政府の反発は「国内経済の不振から、国民の目をそらすためだ」という。だとすれば最低1年間、場合によっては2-3年続くのかもしれない。状況の改善を予測するには、中国経済の動向をみるしかないと言うことになる。

        ≪31日の日経平均 = 上げ +285.88円≫

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ


   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
選挙バラマキ内閣の 真骨頂
2023-09-02-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 補助金ばかりで治療法なし = 古典落語に出てくる葛根湯医者。どんな病気の患者が来ても、葛根湯しか出さない。あるとき屋根から落っこちて怪我をした男が運び込まれると「もう手遅れじゃ。落ちる前に連れてこなければ」と喝破した。--岸田内閣の経済政策をみると、この噺が浮かんでしまう。いつも補助金ばかり。根本的な治療法がない。気付いたときには「もう手遅れ」になりはしないか。

ガソリン料金の高騰を抑えるため、政府は10月以降も石油元売り会社に補助金を出すことになった。岸田首相は「10月中には小売り価格を1リットル=175円程度に抑える」と述べている。資源エネルギー庁の発表によると、レギュラー・ガソリンの小売り価格は30日、全国平均で1リットル=185.6円に上昇。08年8月に付けた185.1円を上回り、過去最高となった。ガソリン補助は昨年1月から始まり、その総額は6兆円を突破する。

さらに政府は10月以降、電気・ガス料金についての補助金も延長する。その具体策は9月上旬に決定する方針だ。解散・総選挙は必至の情勢で、与党内からは規模の拡大を求める声が日増しに強まっている。いつまで延長するかにもよるが、必要な財源は数兆円にのぼるだろう。これらの補助金を中心とする補正予算は、10月の臨時国会に提出される見込み。

当初は急激なエネルギー価格の上昇に対処するための、臨時的な措置だった補助金。それが恒常的な対応策になってしまった。だが補助金対策は、当然ながら財政負担を増大させる。また脱炭素化にも逆行するし、市場メカニズムも破壊する。そして最大の問題点は、将来展望が全く改善しないことだ。少しでもエネルギーの輸入量を減らし、輸入価格を下げる努力を全くしていない。根本的な治療を忘れた葛根湯医者と同じである。

        ≪1日の日経平均 = 上げ +91.28円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
今週のポイント
2023-09-04-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ NY市場の9割が「9月は利上げナシ」 = ダウ平均は先週491ドルの値上がり。労働市場の緩和を示す経済指標が発表されて、長期金利が低下。市場の9割が「9月は利上げ見送り」と予想するようになった。たとえば7月の求人件数が3か月連続で減少。また8月の雇用統計でも、非農業雇用者の増加数が18万7000人と20万人を割り込んだ。注目された平均時給も前年比4.3%の増加で、前月を0.1ポイント下回っている。

日経平均は先週1086円の大幅な値上がり。5日間の連騰で、8月中の下落幅552円を一気に取り返した。アメリカの長期金利が低下し、中国経済に対する警戒心もやや薄らいだ。そこへ企業業績の上方修正が伝わり、買い気が膨らんだ。外国人投資家はむしろ腰が引けているようだが、国内の個人投資家が驚くべき勢いで買いを入れている。

FRBが政策決定会合を開くのは19-20日。市場の予想通り利上げを見送りかどうかは、まだ判らない。労働市場の緩和が、実際に物価の安定につながるかどうか。FRBは今後に発表される物価関係のデータをみて、最終的に決めることになるだろう。東京市場は、やはりニューヨークしだい。3万3000円を超えても買い気が続くかどうか、試されることになる。

今週は5日に、7月の家計調査。7日に、7月の景気動向指数。8日に、4-6月期のGDP改定値、7月の毎月勤労統計、8月の景気ウオッチャー調査。アメリカでは6日に、7月の貿易統計、8月のISM非製造業景況指数。また中国が7日に、8月の貿易統計。9日に、8月の消費者物価と生産者物価を発表する。

        ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
インフレは 終わるのか? / アメリカ
2023-09-05-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 労働需給が明らかに緩和 = アメリカでは「間もなくインフレは終息する」という見方が、急速に強まっている。というのも、物価上昇の最大の原因とみられている労働市場の需給逼迫が明らかに緩んだからだ。その変化は、労働省が1日発表した8月の雇用統計にはっきりと表れた。市場では「FRBは9月の利上げを見送る」という観測が圧倒的に強まり、同時に「経済は後退に陥ることなく、軟着陸する」との楽観論も広まっている。

雇用統計では、まず農業を除く雇用者の増加数が前月比で18万7000人にとどまった。さらに6月と7月の数字が大きく下方修正された結果、この3か月間の平均は15万人の増加となっている。非農業雇用者の増加数は20万人が適正と考えられているから、予想以上に低い数字が出たことになる。また失業率も3.8%で、前月より0.3ポイント上昇。さらに平均時給も前年比4.3%の増加で、前月より0.1ポイント低下した。

インフレは、モノとサービスの価格が上昇することによって進行する。アメリカではウクライナ戦争の勃発で、初めはエネルギーや資源、食料などモノのインフレが進行した。そのあと人手不足による賃金の上昇が引き金となって、各種サービスの価格が上がっている。労働需給の緩和は、このサービス・インフレの終息につながると期待されているわけだ。

ただし、この労働需給緩和がじっさい物価をどのくらい下げるかは不明。FRBは当然、これから発表される消費者物価など物価関連の指標をみてから金融政策を決めることになるだろう。また雇用者の増加数が鈍り、失業率が上昇することが、消費に悪影響を与えないかどうか。もし消費が委縮するようだと、経済の軟着陸は望めない。今後の物価と消費の動向には、注意が肝要だ。

        ≪4日の日経平均 = 上げ +228.56円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ
   

    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村




ページトップへ  トラックバック0 コメント0
「賃上げ>物価高」の好循環は 影もなし
2023-09-06-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 家計調査が語る市民生活の実態 = 総務省は5日、7月の家計調査を発表した。それによると、2人以上世帯の消費支出は28万1736円。前年比は名目でも1.3%の減少、物価上昇を勘案した実質では5.0%の大幅な減少となった。この実質値は昨年11月から、ことし2月を除いて前年比マイナスが続いている。政府は「物価上昇率を上回る賃上げが実現することで、経済に好循環が起こる」ことを期待しているが、この家計調査からみる限り、そんな兆候は全く見られない。

消費支出の調査は10項目に分かれているが、そのうち7項目で減少した。増加したのは光熱・水道、家具・家事用品、被服・履物の3項目だけ。家具・家事用品は7か月ぶり、被服・履物は4か月ぶりの増加。これに対して光熱・水道は8か月連続の増加となっている。人々は多くの項目で節約を志向しているが、光熱・水道は値上がりが大きく、支出を減らせなかったようだ。

一方、勤労者世帯の実収入は63万7866円。前年比は名目で3.0%、実質では6.6%の大幅な減少だった。昨年10月から、前年比マイナスが続いている。税金などを差し引いた可処分所得は51万3069円。実質値は前年比6.4%の減少。消費支出は30万6293円で、前年比7.2%の大幅な減少だった。勤労者世帯はやはり節約に徹し、貯蓄に努めているようだ。

2年前の21年7月、2人以上世帯の消費支出は27万6710円だった。したがって、この2年間で5000円ほど増えている。ところが内訳をみると、食料品への支出が8万0313円から8万7528円に増えている。こうした統計から言えることは、まず節約にもかかわらず食料品と光熱・水道に対する支出が、家計を大きく圧迫している。さらに大企業の段階で賃上げがあっても、経済全体では好循環など起こらないということか。

       ≪5日の日経平均 = 上げ +97.58円≫
   
       ≪6日の日経平均は? 予想 = 下げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村


ページトップへ  トラックバック0 コメント0
タガが外れた 予算編成
2023-09-07-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ どこまで膨張するのやら = 財務省は5日、来年度予算の概算要求が一般会計の総額で114兆3852億円になったと発表した。110兆円を超えるのは3年連続で、過去最大の規模となる。もちろん、これからの予算折衝で、財務省が不要不急の項目を切り捨てて行く。だが今回は金額を明示しない‟事項要求”が異常に多く、結果的に24年度予算案がどこまで膨れ上がるか判らない状態。タガが外れたままの予算編成になる危険性が、きわめて大きい。

概算要求額がいちばん大きいのは、厚生労働省の33兆7300億円。前年度比1.8%の増加で、社会保障費の自然増を反映している。また目立つのは防衛省の7兆7385億円で、前年度比1兆円の増加。国土交通省も7兆円、前年度比19%の増加を要求した。さらに財務省は28兆1400億円の国債費、前年度比10%の増加を要求したが、これは日銀の利上げを見込んだもの。長期金利の1.5%に対応する要求となっている。

異常なのは、‟事項要求”の多さ。‟事項要求”というのは、この時点では必要経費の計算が出来ないため、金額を書かずに政策事項だけを要求する方式。たとえば少子化対策。6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」の内容がまとまらず、財源についても未定なため、事項要求が認められた。ほかにも物価対策や公共事業など。日経新聞の調査によると、80項目にも及ぶというから大変だ。

公共事業や物価対策などは、これからの物価動向が不明なために金額を算定できないという。これも妙な話だが、財源について決着していない場合も多い。端的に言ってしまえば、選挙を控えて増税論など国民負担の増加は禁物。だから事項要求にしたというケースも少なくない。したがって選挙が終われば、一気呵成。予算案も、異常に膨張することになりはしないか。

        ≪6日の日経平均 = 上げ +204.26円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
出始めた 少子化の怖ろしい影響
2023-09-08-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 喜べない待機児童の大幅な減少 = 「保育園落ちた、日本死ね」のブログが、世間に衝撃を与えたのは16年2月のことだった。希望しても保育所に入れない待機児童が社会問題に。政府も自治体も努力した結果、問題は劇的に改善した。こども家庭庁が発表した4月1日時点の待機児童数は、全国で2680人。ピークだった17年4月と比べると、ほぼ10分の1に減少している。だが、この改善を喜んでばかりはいられない。少子化の影が、はっきりと表れ始めたからである。

関係者の努力が実ったことは確かである。保育所の定員は322万7771人となり、6年前より約39万人も増加した。全市区町村の86.7%に当たる1510の自治体で、待機児童がゼロになっている。しかし、これでもまだ地理的に遠すぎたり交通の便が悪かったりで、通えない児童も少なくない。だから今後も、利便性を上げる努力は必要だ。

ただ視点を変えてみると、この改善には少子化の進行が大きく貢献している。未就学児童の数は17年4月の600万9000人から、23年4月には518万5000人へと減少した。この6年間で82万4000人も減少している。保育所の定員増加数の2倍を超える大きさだ。これが待機児童の減少につながったことは、言うまでもない。

少子化の進行は、いぜんとして続いている。したがって、待機児童は今後も減って行くだろう。社会的にみて待機児童がなくなることは、非常に結構だ。しかし、それを喜ぶよりは、少子化の進行がここまで影響を及ぼし始めたことを心配すべきだろう。そして、この傾向は今後もっと上の年齢層に波及して行く。つまり保育所と同じ現象が、小中高校から大学、さらには労働力全般にまで及んで行くことを覚悟しなければならない。

        ≪7日の日経平均 = 下げ -249.94円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ
  

   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
またまた⇑ 原油の国際価格
2023-09-09-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 燃料の輸入額は増えるばかり = 原油の国際価格が、またまた上昇し始めている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は5日、1バレル=88ドル台に上昇。およそ10か月ぶりの高値を付けた。この春80ドル台前半まで上昇したあと値を下げ、夏には70ドルを割り込んでいた。今回は円安の効果が重なって、輸入価格が大幅に上昇する。するとガソリン価格はすぐ上昇、しばらくして電気・ガス料金も引き上げられる。インフレの再燃が心配される状況となってきた。

値上がりの原因は、サウジアラビアとロシアが歩調を合わせて「自主減産を年末まで延長する」と発表したこと。この両国は原油価格を下支えするため、それぞれ日量100万バレルと30万バレルの減産を続けている。期限は9月までだったが、それを12月まで延長した。仮にアメリカや中国の景気が好転すれば、100ドルを超える可能性も十分に考えられる。そのうえ日本の場合は、円安の効果で輸入価格が上がる。円相場は6日、一時147円後半まで下落した。

政府はガソリン料金の高騰を抑えるため、石油元売り会社に対する補助金の支給を7日から再開した。電気・ガスに対する補助金も、再び実施するに違いない。「原油価格の高騰+円相場の下落⇒補助金の支出」という政策決定プロセスが、完全に出来上がってしまった。国民の側からみれば「いつか来た道」である。だが、そんな繰り返しをしているうちに、事態はどんどん悪化している。

財務省が発表した貿易統計によると、ことし1-6月期に輸入した鉱物性燃料は13兆9420億円に達した。ウクライナ戦争が始まる前の21年1-6月期は6兆9466億円だったから、ほぼ2倍に増加している。それだけ日本人の資産が流出しているわけである。この間、原油や天然ガスの価格は上昇した。円安も大幅に進行した。さらに日本の消費量も増えている。つまり日本のエネルギー海外依存体質は全く改善されていないどころか、むしろ大きく悪化した。。補助金内閣、最大の弱点である。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -384.24円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
今週のポイント
2023-09-11-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 原油高で株安・ドル高に = ダウ平均は先週261ドルの値下がり。原油の国際価格が上昇したことが響いた。原油高で物価が上昇すると、FRBの金融引き締めが長引く。こうした懸念が強まって株価は下落。その一方で長期金利が上昇したため、ドルが買われた。また中国政府がiPHONEの使用を規制、アップルの株価が急落したことも市場の空気を暗くした。

日経平均は先週104円の値下がり。円安が進んだため輸出関連銘柄が買われ、業績を上方修正した企業も物色された。飲食・不動産・銀行など、物価や金利の上昇で業績が好転する銘柄に買いが集まっている。外国人投資家が資金を中国から日本へ移しているという情報もあるが、確証はない。それより国内投資家の物色買いが目立っている。ただ3万3000円を超えると、確定売りも多い。

FRBは来週19-20日、日銀は21-22日に政策決定会合を開く。ニューヨーク市場では①これが最後の利上げになる②今回は見送り、次回10月に利上げ--の2説が圧倒的。同時に物価や小売り関連の発表に注目が集まる。一方、東京市場では、日銀の政策変更を予想する人は皆無と言っていい。いずれにしても日米間の金利差は、さらに開く方向。円安はどこまで進行するのだろうか。

今週は13日に、7-9月期の法人企業景気予測調査、8月の企業物価。14日に、7月の機械受注。15日に、7月の第3次産業活動指数。アメリカでは13日に、8月の消費者物価。14日に、8月の生産者物価、小売り売上高。15日に、8月の工業生産、9月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が15日に、8月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
円の価値が 大暴落している (上)
2023-09-12-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 各国通貨と比べた実力は53年ぶりの低さ = 外国為替市場で、円の相場がじりじり下落している。先週も対ドル相場は1円50銭ほど下がり、週の終り値は147.77円となった。下落の発端はサウジアラビアとロシアが自主減産を年末まで延長すると発表、原油の国際価格が上昇したこと。アメリカの物価が上がり、FRBの利上げ継続は確実との見方が強まった。これで日米間の金利差がさらに拡大するため、円安が進行してしまった。

円の対ドル相場は、1995年4月に付けた79.75円が過去最高。それに比べれば、現在は半分近くに低落しているわけだ。その後2000年には、100円近くを上下している。分かりやすいように、そのときと比べてみよう。当時、日本人は1万円を支払えば100ドルのモノやサービスを買うことができた。それが現在は、150円近く出さなければ買えない。これが通貨の価値の下落である。

円相場の下落は、米ドルに対してだけではない。日本が経済取り引きをしている数多くの国の通貨に対しても、価値を下げている。個々の国との物価や貿易量を勘案して、その程度を算出したのが「実質実効レート」と呼ばれる指標。日銀が算出して発表している。それによると、2000年1月のレートは162.97だった。それがことし7月には74.31にまで落ち込んでいる。この水準は1970年と同じ、つまり53年ぶりの低さだ。

こうした通貨価値の低落は、経済の各方面に重大な影響を及ぼす。たとえば輸出企業は150万円の製品を100万円で売っても、1万ドルの収入を得られる。だから利益は増大し、株価も上がる。外国人観光客からみれば、日本の物価はとてつもなく安く見える。だが半面、日本人が外国へ行けば物価が高い。そしてモノやサービスの輸入価格も上昇する。日経新聞によると、これによる家計の負担増は20万円に達するという。

                     (続きは明日)

        ≪11日の日経平均 = 下げ -139.08円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
円の価値が 大暴落している (下)
2023-09-13-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 貿易の大赤字も大きな要因に = 円相場を低落させる最大の原因は、やはり金利差の問題。たとえばアメリカの長期金利は4.3%、日本は0.7%程度。政策金利はアメリカの5.25%に対して、日本はマイナス0.1%という状態だ。おカネは金利の高い方へ流れるから、どうしても円が売られドルが買われることになる。来週もしFRBが金利をさらに引き上げれば、日米の金利差はもっと拡大。円安がさらに進むことになるだろう。

貿易の大赤字も、円安の大きな原因となっている。たとえば輸出企業は海外で儲けた利益を日本に持ち込めば、ドルを売って円を買うことになる。逆に輸入企業は円を売ってドルを買い、支払わなければならない。そこで輸入額の方が大きいと、全体としては円売り・ドル買いの方が上回る。輸出企業は海外での利益を現地に置いたままにするケースも多いから、その差はさらに拡大してしまう。

ここで注目すべき点は、原油価格の影響だ。原油の国際価格が上昇すると、アメリカではインフレ圧力が強まり、FRBの政策は利上げに傾きやすい。すると金利が上昇して、日米間の金利差が拡大。ドル高・円安が進む。一方、原油価格の上昇は、日本の貿易赤字を増大させる。これもドル高・円安を生みやすい。このように原油価格の高騰は、2つの面から円安の促進要因となる。

円安は輸入価格の上昇を通じて、企業や家計の負担を増加させる。その負担分だけ、設備投資や消費が抑制されることになりかねない。政府はその負担分を軽減するため、補助金を出す。しかし原油の輸入量を少しでも減らすための政策はとらない。一方、日銀はゼロ金利に固執し、むしろ円安を助長している。なんとも理解に苦しむ財政・金融政策なのだ。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +308.61円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
「再生エネを30年までに3倍」 : G20宣言
2023-09-14-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本は目標を大幅に上げられるのか = インドで開いたG20(主要20か国首脳会議)は10日、首脳宣言を採択して閉幕した。ウクライナ戦争を巡って激しく対立する各国が、一堂に会したこの会議。にもかかわらず首脳宣言をまとめられたのは、議長を務めたインドのモディ首相の功績だという評価が高い。首脳宣言ではロシアや中国への批判を避け、気候変動・食料・エネルギーなど人類が直面する大問題を列挙。各国の結束を訴えた。これなら反対する国は出ない。

問題の列挙にとどまったかと思いきや、ただ1か所だけ重要な政策目標を具体的に明示した点があった。それは気候変動に関する部分で「2030年までに再生エネルギー容量を、世界全体で3倍にする取り組みを追求する」という内容。世界の現状から判断すれば、実現は不可能に近い。きわめて野心的な目標の設定だと言える。

たとえば脱炭素に最も熱心なEU。ことし3月「30年の再生エネルギー比率を42.5%に引き上げる」ことを決めた。現状と比べて2倍以上の引き上げとなるが、それでも3倍からは程遠い。日本政府の計画は「19年度の発電量1853キロワット時を、30年度に3130キロワット時に増やす」という内容。これも3倍には、とても届かない。

モディ首相は、この首脳宣言について「すべての参加国が100パーセント合意した」と明言した。文字通り解釈すれば、会議に出席した岸田首相も同意したことになる。でも岸田首相は帰国後、こんな大事な合意点について何も触れていない。「世界中の国が不可能だと考えているから」「モディ議長が勝手に書いたものだから」と考えているのかしら。

        ≪13日の日経平均 = 下げ -69.85円≫

        ≪14日の日経平均は? = 下げ≫ 

 
   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村



ページトップへ  トラックバック0 コメント0
人手不足がネックに : 企業業績
2023-09-15-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 企業景気予測調査が教える下半期の問題点 = 内閣府と財務省は13日、共同で実施した7-9月期の法人企業景気予測調査の結果を発表した。それによると、大企業の景況判断指数はプラス5.8で2四半期連続のプラス。このうち製造業はプラス5.4、自動車関連企業が大きく回復した。非製造業はプラス6.0、コロナ規制の解除を受けてサービス業が大きく伸びた。ただ中小企業は全産業でマイナス5.5と、不況を脱していない。

この調査は全国1万1000社の企業を対象に実施。自社の景況感が前4-6月期を上回ったかどうかを聞いている。判断指数は「上回った」という回答の割合から「下回った」の割合を差し引いた数値。この先10-12月期の予想について、大企業・全産業ではプラス7.3と好調が持続する見込み。製造業はプラス8.8、非製造業はプラス6.5という結果だった。中小企業もプラス0.7と、わずかではあるが水面上に顔を出す。

ところが23年度の経常利益については、全産業で3.9%の減少。製造業は10.7%、非製造業は1.4%の減益となる見通し。特に情報通信機械器具製造、化学、運輸・郵便、建設などの業種が大きく悪化する。アメリカや中国の景気動向、原材料価格の高騰などが利益を圧迫すると予想しているのだろう。そのうえ、この調査は人手不足がネックになるとも教えているようだ。

調査によると、現状の人手不足感は大企業・全産業でプラス24.0。それが10-12月期の予想でも20.5とやや下がるだけ。このうち製造業は16.4から14.8へ、非製造業は27.7から23.2へ。また中小企業は29.1から27.8へと下がることは下がる。しかし人手不足感はまだ続くわけで、これが利益を減少させる最大の原因になる可能性は大きい。

        ≪14日の日経平均 = 上げ +461.58円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村


  
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
過剰反応? ジャニーズCM排除
2023-09-16-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ イジメの臭いがする = 花王、サントリー、日産自動車・・・。有名企業がジャニーズ事務所に所属するタレントの広告起用を、次々と中止している。ジャニーズ側は防戦一方、とうとう「今後1年間、所属タレントが出演した際の出演料はすべて本人に支払い、事務所は報酬を受け取らない」と発表した。それでも企業側のジャニーズCM排除の勢いは止まらない。どうしてなのだろう。

周知のように、この問題はジャニー喜多川元社長による若手タレントに対する性加害が発端。だが、その加害者は19年に死去している。いま問題が改めて取り上げられ、被害者に対する補償や事務所の体質改善が進められることはいい。しかし事務所に所属する多くのタレントたちは、全く関係がない。その人たちの仕事を奪うことに、どんな意味があるというのだろう。なんだか「お前は犯罪者の息子だ」と因縁をつけるイジメを連想してしまう。

経済同友会代表幹事でサントリー社長でもある新浪剛史氏は記者会見で「所属タレントを広告などに起用することは、チャイルド・アビューズ(児童虐待)を認めることになる。国際的にも非難のもとになる」と、手厳しかった。だが、この論理は短絡的で理解しにくい。たとえば年末になっても補償問題や事務所の体質改善が実行されなかった場合に、こういう批判が出るのなら判る。

しかし事務所側が改革に手を付けたばかりのいま、新浪氏の批判は少々性急ではないのか。あるいはジャニーズ事務所には、いまなお性的な犯罪者が存在しているかのような言い方に聞こえる。そのことはまだ一般には知られていないが、広告関係者には衆知の事実なのか。そんな勘ぐりまで出かねない。とにかく無実のタレントの職を奪う行為には賛成できない。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +364.99円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】    


   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
今週のポイント
2023-09-18-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 消去法で強気に転じた東京市場 =  ダウ平均は先週42ドルの値上がり。3万4000ドル台後半で上下した。8月の消費者物価は3.7%上昇と加速したが、エネルギーと食料を除いたコア指数は4.3%の上昇で前月より鈍化。市場はこちらを重視して「9月の利上げはなし」の見方に傾いている。しかしECB(ヨーロッパ中央銀行)は利上げを継続、FRBがどんな決定を下すかは未定だ。このため株価は大きく動けなかった。

日経平均は先週926円の大幅な値上がり。ニューヨーク市場で「9月の利上げなし」説が強まったことを好感。日銀が長期金利の上昇を容認したことから、金融株などが買われた。また岸田改造内閣が発足、新しい経済政策への期待も高まっている。とにかくヨーロッパと中国は雨模様、アメリカもFRBの決定を前に曇り空。こうしたなかで東京市場だけに日が差している状態。消去法的に強気になったとも言えそうだ。

いよいよ今週は、日米ともに金融政策の決定会合が開かれる。仮にFRBが大方の予想に反して0.25%の利上げを決断したとしても、市場は「これで利上げは終了」と受け取り、大きな混乱はなさそうだ。一方、日銀は長期金利の上昇をどこまで許容するのか。もし1.0%までの上昇を認めるとなれば、次は短期のゼロ金利解除に焦点が移りそうだ。日銀総裁による20日の記者会見を注視したい。

今週は20日に、8月の貿易統計、訪日外国人客数。22日に、8月の消費者物価。アメリカでは18日に、9月のNAHB住宅市場指数。19日に、8月の住宅着工戸数。21日に、8月の中古住宅販売。なお20日にパウエルFRB議長、22日に植田日銀総裁が記者会見する。

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ


   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
バイデン大統領の困惑 : 自動車スト
2023-09-20-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 政策非難への発展が怖い = アメリカのUAW(全米自動車労組)が15日から、ビッグ3の工場でストライキに入った。GM、クライスラー、フォードから1工場ずつを選んでストに突入。今後は対象を拡大する戦術だという。かつては毎年のようにストを展開していたUAWだが、近年の大規模ストは珍しい。もしストが長引けば、アメリカ経済に大きな悪影響が及ぶことは確実。労使交渉の行く方に注目が集まっている。

UAWは4年間に36%の賃上げを要求。会社側は20%の賃上げを回答したが、折り合わなかった。またUAWは「EV(電気自動車)の製造が進んでも雇用を維持すること」を強く要求している。会社側にとっては36%の賃上げも呑みにくいが、それ以上に雇用の維持は難しい。というのもEVの製造に要する人員は、ガソリン車の7割以下にとどまるからだ。

バイデン大統領はストが始まるとすぐ「記録的な利益が労働者に公平に分配されていない」と発言、会社側に圧力をかけた。UAWの組合員は15万人、民主党の支持者が多い。来年の大統領選挙を考えると、ここで組合側を支援しておく必要があった。ところがバイデン氏の心配は尽きない。というのもバイデン政権は多額の補助金を使って、EV化の促進を図っているからだ。

労使の交渉がもつれた挙句、UAWの矛先がこのEV促進政策に向けられたら大変だ。さらにストが長期化して景気が悪化すると、大統領選挙では苦戦を強いられる。だからバイデン大統領としてはEV化を進めながら、UAWを支援する姿勢をとりつつ、ストを早急に終結させなければいけない。かなり苦しい道のりになるだろう。

        ≪19日の日経平均 = 下げ -290.50円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ

  
   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村

ページトップへ  トラックバック0 コメント0
100歳以上が 9万2000人に (上)
2023-09-21-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 島根と埼玉で大差がついた理由は? = 毎年のことだが‟敬老の日”が近づくと、厚生労働省と総務省が競うように人口統計を発表する。まず厚労省が15日、100歳以上の高齢者人口を発表した。それによると、9月15日時点で100歳以上の人口は9万2139人。前年を1613人上回った。このうち女性は8万1589人、男性は1万0550人で、圧倒的に女性が多い。また地域的に大きな差があることも特徴だ。

たとえば10万人当たりの100歳以上人口をみると、全国平均は73.74人。しかし都道府県別では、島根県が155.17人で11年連続のトップ。次いで高知県、鳥取県、鹿児島県の順となっている。逆に低い方は埼玉県が44.79人で、なんと34年連続の最下位。次いで愛知県、千葉県、大阪府の順となっている。島根と埼玉では、どうしてこんなに違うのか。厚労省は説明していない。

総務省も17日、同じ9月15日時点の推計人口を発表した。それによると、65歳以上の高齢人口は3623万人で前年より1万人減少した。コロナの影響かと思ったが、ベビーブーム世代が70歳代後半に入って死亡率が高まったためだと説明している。このうち女性は2051万人、男性は1572万人だった。また80歳以上は1259万人で、総人口に占める割合は10.1%に。10人に1人が80歳以上ということになる。

仕事についている高齢者は、19年連続で増加した。22年は912万人で、前年より3万人増えている。就業者全体に占める比率は13.6%で、7人に1人が高齢者ということになる。定年延長や継続雇用が広がったせいで、人手不足の緩和に役立っている。今後も高齢者の労働力に対する需要は強まるだろうが、問題は健康で働ける高齢者がどこまで増えるかという点。そういう観点からの人口統計が必要になってくる。

                     (続きは明日)

        ≪20日の日経平均 = 下げ -218.81円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ


   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
100歳以上が 9万2000人に (下)
2023-09-22-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 健常者の統計をなぜ出さない? = 厚生労働省の統計によると、老人福祉法が制定された1963年の100歳以上人口はわずか153人だった。だから当時はお祝いの意味で、100歳以上の人口を発表したのだろう。だが、いまや文字通り“人生100年時代”。高齢者が多いかどうかよりも、介護に頼らない高齢者、あるいは健康で働ける高齢者が多いかどうかが問われる時代となっている。この意味で高齢者の人口統計には、健常者の人口や比率をぜひ加えるべきである。

新しく厚生労働相に就任した武見敬三氏はテレビ番組で「元気な高齢者をたくさん増やし、働く意欲のある方は生産性の高い仕事を積極的にやってもらう」と述べ、労働力の確保に向けて高齢者支援に乗り出す考えを表明した。こうした政策を遂行するためにも、その土台となる健常高齢者、あるいは健康寿命などの人口統計は欠かせない。だが厚労省も総務省も、現状ではこの面を疎かにしている。

100歳以上の超高齢者が増えるのは、いいことだ。しかし、その大半が寝た切りや医療・介護保険の高額利用者になったら大変だ。逆に健康な高齢者が増加すれば、人手不足の解消に役立つだけでなく、社会保障費の節約にもつながる。武見厚労相は「元気な高齢者をたくさん増やす」と述べたが、「どうすれば元気な高齢者がたくさん増えるか」に全力を投入してもらいたい。

その第1歩として始めてほしいのは、現在は3年に1度しか集計しない“健康寿命”の統計を毎年公表すること。また人口統計に健康な高齢者の人数を示すこと。総務省と厚労省が似たような人口統計を作成するムダは止めて、こういう改革をしてほしい。武見さん、どうですか。

        ≪21日の日経平均 = 下げ -452.75円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ
 

   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
円安は どこまで進むのか?
2023-09-23-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ アメリカの高金利は長引く見通し = FRBは20日、政策金利を5.25%のまま据え置くことを決定した。これまでの引き締め政策が、景気や物価に及ぼす影響を見極めるためだという。ただ声明では、年内にもう1度の利上げを示唆。パウエル議長も会見で「適切であれば、さらに利上げする用意がある」と強調した。ここまでは市場の予想通りだったが、市場では「年内2回の利上げ」観測が急激に広まっている。というのも、物価高の再燃が警戒され始めたからだ。

消費者物価は8月に前年比3.7%の上昇とまだ高い。そうしたところへ、新たな上昇要因が2つも現れた。1つは原油価格の高騰。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は、1バレル=80ドル近辺から90ドル前後に上昇した。もう1つはUAW(全米自動車労組)や映画俳優組合など、ストライキの多発。賃金水準を全体的に押し上げる可能性が高まった。

このため「高金利は予想より長引く」という見方が一気に強まり、債券市場では長期金利が4.37%と15年10か月ぶりの水準まで上昇した。アメリカの金利が上昇すれば、円が売られドルが買われる。円の対ドル相場は、148円台にまで下落した。財務官が「断固たる措置を講ずる」と口先介入したので、なんとか相場が落ち着いているというのが現状である。

日本の大手銀行が、5-8%という高金利のドル建て預金を売り出した。もちろん円高になれば元本が目減りするが、いまの情勢だと円高にはなりにくい。こんな商品が発売されるほど、日米の金利差は拡大しているわけだ。一方で日銀がゼロ金利に固執し、円安を助長している。そんな状態で、介入など出来そうにない。そう遠くないうちに、円相場は150円台にまで下落するのではないか。

        ≪22日の日経平均 = 下げ -168.62円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝0敗】    


   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
今週のポイント
2023-09-25-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ‟利下げ”は来年夏以降? = ダウ平均は先週654ドルの値下がり。終り値は3万4000ドルを割り込んだ。FRBの金融政策発表をきっかけに、市場は黒雲に覆われた。利上げの見送りは予想通りだったが、年内あと2回の利上げ観測が有力に。さらに利下げの時期も遠のいて、来年夏以降になるという見方が広まってしまった。つれて長期金利も4.37%にまで上昇、株価はほぼ一本調子で下落している。

日経平均は1131円の大幅な値下がり。終り値は3万3000円を割り込んだ。半導体の供給過剰説が流れて、IT関連株が売られた。そこへニューヨーク株価の軟調が伝わって、4日間の続落。岸田首相が新経済対策の作成を発表したが、市場は反応せず。また日銀が週末にゼロ金利政策の継続を決めたが、株価は反騰しなかった。

ニューヨーク株式が、大幅に続落する可能性は小さい。株価が3万3000ドル台になれば、安値を狙った買い物が入るからだ。しかし金融緩和政策の終結が遠のいたため、上値は重いだろう。東京市場は新経済対策の発表待ち。円安がどこまで進行するかにも、注目が集まる。ただニューヨーク市場の軟調は続きそうだから、こちらの足取りも重くなる。

今週は26日に、8月の企業向けサービス価格。29日に、8月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数、9月の消費動向調査。アメリカでは26日に、7月のFHFA住宅価格指数、8月の新築住宅販売、9月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。28日に、4-6月期のGDP確定値、8月の中古住宅販売。また中国が30日に、9月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ

 
   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
植田総裁は 説明が下手すぎる
2023-09-26-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 国民には何も伝わらない = 日銀は先週20日に開いた政策決定会合で、ゼロ金利政策を中心とする金融緩和政策の継続を決定した。植田総裁は会合後の記者会見で、その理由を「企業の賃金・価格設定行動の一部に従来より積極的な動きが見られ始めているが、物価安定の目標の実現を見通せる状況には至っていない。だから粘り強く金融緩和を続けて行く」と説明した。だが、この説明を聞いて「なるほど、よく判った」と感じた人が何人いただろうか。

また「マイナス金利解除の条件は?」の質問には「物価目標の実現が見通せる状況になった場合には解除も視野に入るが、それがどういう変数とどうひもづいて短期金利がどのくらい動かなといけないのか。まだ決め打ちできる段階ではない」と、理解不能な答え。さらに「マイナス金利解除とYCC(イールドカーブ・コントロール)修正はどちらが先か?」については、あっさり「さまざまなオプションがある」と、はぐらかせた。

びっくりしたのは、為替市場の動向を聞かれたときの答え。「われわれの物価見通しにも影響を及ぼすものであるという観点から、常に注視している」と、まるで傍観者のような姿勢。日銀のゼロ金利政策と為替相場は、全く関係がないような口ぶりだった。いま円の対ドル相場が148円台に下落したことから輸入物価が再び高騰、庶民はガソリンや電気・ガス代の値上がりに苦しんでいることなど、気にかけていないようにも見受けられた。

日銀は「賃上げ率が物価上昇率を上回るような状態で、物価が2%程度の上昇に落ち着くこと」を目標にしている。だが、その達成は「まだ見込めない」という。そして足元では物価が3%以上も上昇、企業も個人も苦しんでいる。いまは物価の引き下げに全力を集中すべきなのではないか。物価が下がれば「賃上げ>物価」の状態も達成できる。そもそも中央銀行は物価を引き下げて、通貨価値の安定を図ることが最大の使命のはず。植田さんに、ここのところを聞いてみたい。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +276.21円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ


   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村





ページトップへ  トラックバック0 コメント0
どうする? 中国製EVの安売り (上)
2023-09-27-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 中国BYDが日本市場に本格参入 = 中国のEV(電気自動車)メーカーBYD(比亜廸)は先週20日、コンパクトEVのドルフィンを日本で発売し始めた。試乗した専門家によると、急発進の防止装置もついており品質はいいという。その大きな特徴は、フル充電した場合の航続距離が400㌔㍍と長いこと。また価格が363万円からと安いことだ。日本政府や東京都の補助金を使えば230万円台で購入できることになる。

BYDは深圳市に本拠を構える中国のEV専業メーカー。アメリカのテスラに続く世界第2位の販売台数を誇っている。日本へはことし1月に上陸、スポーツ車を売っていた。それが今回は小型普通車で参入。日本市場の本格的な開拓を目指す。専売店も増やし、24年3月までに1100台を販売する方針だという。迎え撃つのは日本の各メーカーだが、どうも準備万端とはいっていない。

先進国のなかでも、日本のEV普及率は際立って低い。乗用車に占める割合は、まだ1.7%程度。日本のメーカーはガソリンと電気を併用するハイブリッド車の生産体制を確立したため、EV生産への移行が遅れてしまった。このため外国メーカーがどっと参入、たとえばことし1-7月では計1万0561台を販売。前年比90%の増加となった。モデル数をみても海外メーカーは計95に及ぶが、日本車はまだ10モデルに過ぎない。

これらの車種は、高級車と軽自動車に分かれていた。テスラやベンツやトヨタなどは500万円以上の高級車、日産などは200万円台の軽自動車。この間隙を突いて、BYDは小型の普通車を投入してきたわけだ。その戦略が功を奏するかどうかは不明。日本にはなじみの薄いメーカーだから、浸透は難しい。いや、安いからけっこう売れるなど、専門家の意見も割れている。そして見落とせないのは、この参入が大きな政治問題に発展する可能性を秘めていることだろう。

                      (続きは明日)

        ≪26日の日経平均 = 下げ -363.57円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ

  
   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村



ページトップへ  トラックバック0 コメント0
どうする? 中国製EVの安売り (下)
2023-09-28-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ EUは中国政府の補助金を調査へ = EUは9月13日「中国のEVが不当に安い価格で販売されている可能性がある」という理由で、中国政府による補助金を調査する方針だと発表した。EUはかなりEV化が進んでいるが、なかで中国製のEVは全体の8%を占めている。調査の結果「不当に安い価格」と認定されれば、EUは中国製EVに対する輸入関税を引き上げることになりそうだ。もちろん、中国政府は強く抗議している。

いま世界最大のEVメーカーはアメリカのテスラ、次は中国のBYDである。しかし国という単位からみると、中国が圧倒的に世界一だ。たとえば22年のEV販売台数は中国が453万台だったのに対して、EUが156万台、アメリカは80万台、日本は5万4000台に過ぎない。そして中国のEV化ガ急伸した大きな理由が、政府による製造・販売両面での減税・補助金だったことは周知の事実と言えるだろう。

EUはやっと、この点を問題視し始めたわけだ。ところがEVに対する手厚い支援は、アメリカ政府も実施している。しかも減税や補助金の対象は、部品などを北米で調達し、アメリカ国内で組み立てたEVに限るという厳しさ。中国の産業保護と比べても、どっちもどっちという感じ。もっともアメリカの場合は、海外メーカーでもこの条件を満たせば支援を受けられるが。

日本も立場としては、EUと同じ。だがコトを荒立てれば、日中関係がさらに悪化してしまう。したがって当面、政府は黙認することになるだろう。しかし仮にBYDが得意の安売り戦術で急速に販売を伸ばしたとき、どう対処するのか。政府は難しい判断を迫られることになりそうだ。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +56.85円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ


   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
財源と実効性が 弱点 : 新経済対策
2023-09-29-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 成長政策を挙げたのは進歩だが = 岸田首相は26日の閣議で「新たな経済対策を10月末までにまとめるよう」関係閣僚に指示した。対策では①物価高対策②持続的な賃上げと地方の成長③国内投資の促進④人口減少を乗り越える社会変革⑤国民の安心・安全の確保--の5本柱を軸とする方針。物価対策などのバラマキだけでなく、投資の促進など成長戦略にも力を入れる点は一つの進歩。だが脱炭素に向けた項目がないのは、どういう訳だろうか。

物価高対策は、ガソリンや電気・ガス代の高騰を抑える補助金の支給。これまで計9兆3000億円の予算を組んだが、これをどこまで延長するのか。また賃上げ支援は、賃上げした企業への減税を考えているようだが、税金を払っていない企業をどうするのか。さらに人口減少を乗り越える変革に、少子化対策を含めるのか。含めるとしたら巨額の財源が必要になってくる。こうした問題点が数多い。

最大の問題は財源。具体策が固まっていないから算定できないが、過去の経験からすると少なくとも20兆円は必要だろう。政府は予備費の使い残しや税収増で、その半分ぐらいは埋めるつもり。あとはまた国債の増発に頼ることになる。いずれにしても、選挙を控えて物価対策などのバラマキは止められない。困ったことである。

国内投資の促進では、半導体や蓄電池あるいはバイオ関連を対象に、企業のコストを削減するための投資減税を考えているようだ。まずはこの部門に、いくらの財源が割り当てられるかに注目。それによって政府の真剣度が見えてくる。ただ半導体にしてもバイオにしても範囲は広い。どこに集中して支援するか。そこをはっきり決めないと、この分野でもバラマキが起こってしまう。要は実効性である。

        ≪28日の日経平均 = 下げ -499.38円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ

 
   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村

ページトップへ  トラックバック0 コメント0
バラマキ政策の 限界
2023-09-30-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ それでも内閣の支持率は上がらなくなった = 岸田内閣は10月末までに、新しい経済対策を作成することになった。総選挙に備えて、なんとか国民の支持率を上げようという意図が見え隠れしている。だが、この対策で内閣の支持率をどのくらい上げられるだろうか。おそらくは岸田首相が期待するほど、上がらないのではないか。その理由は国民がこの種のバラマキに慣れてしまい、あまり評価しなくなった。経済学でいう収穫逓減の法則が働き始めているためだ。

岸田首相は対策の大枠として、5つの柱を掲げた。そのトップが物価高対策。ガソリンや電気・ガス代の高騰を抑えるため、政府が補助金を支給する。当面の痛みを和らげることは出来るが、コトの本質はなにも改善しない。だからバラマキと評される。しかし消費者にとっては有難いことだから、内閣の支持率は上がる。だが何回もバラマキを実施したため、消費者は慣れてしまい、「もっと物価が下がってもいいのでは」とさえ思うようになってきている。

またガソリンを使わない人、補助金が出ないプロパンガスの利用者などからは、不公平だという不満も高まってくる。しかし財源の問題もあって、政府としてはこれ以上バラマキを広げられない。そこで今回は半導体や蓄電池などに対する投資減税なども、対策に追加した。これは歓迎すべきことだが、その具体策はまだ不明。

かつての自民党は、こうした成長投資を重視してきた。世帯への現金給付や補助金といった政策は、どちらかと言うと野党の専売特許。それが最近は自民党の常套手段に。このため野党は主張すべき政策を失い、元気がない。内閣に対する支持率が落ちても、自民党への支持率があまり変わらない原因だと言ったら、言い過ぎだろうか。

        ≪29日の日経平均 = 下げ -14.90円≫

        【今週の日経平均予想 = 1勝4敗】     

  
   ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村


  ☆ 「経済なんでも研究会」は、10月1日から18年目に入ります。ここまで続けられたのも、読者の皆さまのご支援・ご協力によるものです。厚く御礼申し上げます。今後とも、よろしくお願いします。

  ☆ 日経平均予想は過去17年間2946勝1236敗。勝率は7割4厘でした。やっと大きなカベになっていた7割を確実に上回るようになりました。

 ☆ お願い = 読んだら毎日     にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村にほんブログ村 経済ブログへ
 をクリックしてください。よろしく。池内


ページトップへ  トラックバック0 コメント0
<< 2023/09 >>
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30


余白 Copyright © 2005 経済なんでも研究会. all rights reserved.