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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
来てくれるのか? 外国人労働者 (上)
2023-06-01-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 制度改革案には問題が大あり = 外国人労働者を受け入れるための制度が、大きく変わる。自民党は先週、制度改革の政府案を了承。政府は来年の通常国会に改正法案を提出する方針だ。改革案の主柱は、外国人労働者の在留資格「特定技能」のうち在留期間に上限のない「2号」の対象を、現在の2分野から11分野に拡大すること。「2号」の資格を取った外国人は日本に永住できるほか、転職も自由。家族の同伴も許される。

日本で働いている外国人は、昨年10月末で282万2725人。その資格は技能実習生や特定技能など、さまざまだ。このうち28万人を数える技能実習生は、もともと「途上国の若者に技能を教え込み、自国に帰って自国の発展に寄与すること」が狙いだった。ところが単なる単純労働に使われるケースも少なくなく、きわめて評判が悪かった。今回の改革ではこの実習生制度を廃止、特定技能制度に移行させる。

現行の特定技能は「1号」と「2号」に分かれている。「1号」は特定の産業に相当の知識と経験を有する人と規定され、在留期間の上限は5年。対象は①建設②造船③ビル・クリーニング④製造業の一部⑤自動車整備⑥航空⑦宿泊⑧農業⑨漁業⑩飲食料品製造⑪外食⑫介護--の12業種。永住も転職もできない。これに対して「2号」は特定の産業に熟練した人で、永住も転職もできる。ただ対象業種は建設と造船だけ。それを今回は、介護を除く11業種に広げる。

日本の外国人労働者受け入れ体制は、これまでの“国際貢献”から“労働力不足対策”に変わる。これは実情に合わせた決断で、大いに結構だ。しかし現在、特定技能「2号」の試験に合格した外国人は、たったの11人しかいない。それほど試験が難しいわけだ。こんどの改革では試験を易しくして、みんな移行させる。まるで大学の入試を簡単にして、小学生も中高生も入れてしまおうとしているかのようだ。大きな問題点は、まだまだある。

                      (続きは明日)

        ≪31日の日経平均 = 下げ -440.28円≫

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

 
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来てくれるのか? 外国人労働者 (下)
2023-06-02-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 試験・大都市集中・賃金・・・不安だらけ = 「転職、永住できない。家族ダメ。そんな所で働けない」--外国人労働者の不満に応えて、それらが可能な特定技能2号を活用することにした。だが「2号」には、試験がある。試験を易しくすれば、熟練労働者と初心者が同じ待遇を受けることになってしまう。試験を難しくすれば、人が集まらない。この難しいサジ加減を、だれが決めるのか。きわめて不安だ。

転職が可能になる。すると外国人労働者は、大都市に集中してしまうのではないか。いま地方のサービス業や農業は、外国人の労働力でなんとか成り立っているところも少なくない。そういう場所から外国人が流出して、地方は外国人まで過疎になってしまう心配はないのか。きわめて不安だ。

さらに決定的なのは、日本の賃金水準が低いこと。多くの外国人労働者は、おそらく最低賃金に近い給与で働くことになるだろう。だが日本の最低賃金は、すでに台湾や韓国を下回っている。いま日本で働いている労働者は、ベトナム人が圧倒的に多い。そのベトナムでは、台湾や韓国を目指す若者が徐々に増えつつあるという。きわめて不安だ。

政策の目標を、はっきり“労働力不足の解消”に変更したことはいい。だが現在の制度にしがみついているから、多くの問題点が発生する。制度の改正というより、むしろ改悪だろう。自民党もこんな政府案を、よく了承したものだ。この際は外国人労働者の受け入れ制度について一から考え直し、新しい制度を作るべきだろう。

        ≪1日の日経平均 = 上げ +260.13円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ


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コロナが再び拡大 / 中国
2023-06-03-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本の実態は霧のなか = 中国で、コロナの感染が再拡大し始めた。政府はなにも発表していないが、北京や上海の病院では外来窓口が大混雑。こうした光景を見て、多くの国民がコロナの感染増加を知ったという。また一部の専門家は「再拡大は4月中旬に始まった。1週間の新規感染は5月末で4000万人、6月末には6500万人に増えるだろう」と予測している。

いま流行し始めたコロナ・ウイルスは、オミクロン型より感染力が強いXBB型。ただ症状は軽い人が多い。これは中国人の82%がことし2月までに感染し、ある程度の免疫を持っているためだと考えられている。しかし今後より強力な変異株が、出現する可能性もないではない。また中国から、他国に伝播される危険性も指摘されている。

こうしたなか、日本でもコロナ感染者が増えているようだ。だが状況は、きわめて捉えにくい。というのも政府はコロナの扱いを季節性インフルエンザ並みに格下げしたのに伴い、全数把握・即日集計を止めてしまったからだ。代わって全国5000の医療機関からの報告を待つ、定点把握に切り替えた。しかし1週間単位で、発表も遅れる。

その定点把握をみると、5月8-14日の1週間は感染者が1万2922人。次の15-21日の1週間は1万7489人だった。明らかに増加している。しかし、これではコロナの“現状”は知ることができない。もしコロナが加速度的に増えていれば、医療機関や個人の対応は遅れてしまう。なぜ全数把握まで止めてしまったのだろう。専門家もマスコミも、なぜ問題提起しないのだろう。

        ≪2日の日経平均 = 上げ +376.21円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   


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今週のポイント
2023-06-05-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日米ともに高値圏での足踏みか = ダウ平均は先週669ドルの値上がり。政府の債務上限問題が解決、市場には明るい空気が戻ってきた。ハイテク株が全体の上昇をリードした半面、小売り関連は消費の先行き見通しが暗く冴えなかった。また5月の雇用統計では非農業雇用者が予想以上に増えたが、失業率は上昇。市場への影響は小さかった。FRBが来週の会議で金利の0.25%引き上げを決めるのか、それとも据え置くのかが最大の焦点。

日経平均は先週608円の値上がり。これで8週連続の上昇となり、終り値は3万1500円台に。とにかく5月は2031円の上昇で、主要国でいちばんの株高となった。企業の好決算、円安の進行、自社株買いなどが原因。海外投資家は9週連続の買い越し、この間の買い越し合計は約4兆円にのぼる。東証プライムの売買代金も31日、6兆9552億円の過去最高を記録した。

ニューヨーク市場は来週のFOMC(公開市場委員会)を控えて、大きくは動けないだろう。また東京市場も好調な足取りのなかで、年初来安値の銘柄が増え始めた。銘柄の選別が強まってきたためで、高値圏で利益確定売りが増える前兆でもある。こうしたことから、今週は特に大きな材料が出現しない限り、日米ともに足踏み状態に陥る可能性が大きいと思われる。

今週は6日に、4月の家計調査、毎月勤労統計。7日に、4月の景気動向指数。8日に、1-3月期のGDP改定値、5月の景気ウオッチャー調査。アメリカでは5日に、5月のISM非製造業景況指数。7日に、4月の貿易統計。また中国が7日に、5月の貿易統計。9日に、5月の消費者物価と生産者物価を発表する。

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ


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大流行の 自社株買い
2023-06-06-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 5月は3兆2000億円の月間記録 = 東京市場の株価が高い。日経平均は5月中に2031円、率にして7%の大幅高となった。主要国のなかでは、最高の成績である。原因はコロナ規制の解除、企業の好決算、円安の進行などだが、企業による自社株買いもその一因。なにしろ5月中だけで、その総額は3兆2000億円を超えて過去最大。自社株買いをした企業の株価は、ほとんどが日経平均の上昇率を上回った。

自社株買いというのは、企業が自社の株式を市場から買い入れること。取得後に消却すれば発行済みの株式数が減り、その分だけ1株当たりの利益が増える。このため株価は上昇しやすく、配当と並ぶ株主還元の1方策となっている。世界的に大流行しており、英ヘンダーソン社の調査によると、昨年は世界で総額1兆3000億ドル(180兆円)の自社株買いが行われた。

発行済み株式数が減ると株主資本も減少するから、ROE(自己資本利益率)が高くなる。いま日本株を買いまくっている外国人投資家は、特にこのROE改善を重視しているようだ。結果として株価が上がれば会社のPRにも役立ち、経営者の評価もよくなる。また株式数が減るため、敵対的買収に対する防御策としても有効だ。

ただデメリットもある。自社株買いをすると、企業の手持ち資金が減少する。このため設備投資や賃上げに、資金が回りにくくなるかもしれない。これによって、企業は成長の機会を逸するかもしれない。また事前に株を買っておけば、儲けることができる。このためインサイダー取引を生みやすい。

        ≪5日の日経平均 = 上げ +693.21円≫

        ≪6日の日経平均は? 予想 = 下げ


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財源は選挙のあとで : 少子化対策 (上)
2023-06-07-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 内容は盛りだくさん、その効果は? = 政府は先週1日「こども未来戦略方針」の素案を公表した。その内容は多岐にわたり、実に盛りだくさん。最も注目される児童手当については、所得制限を撤廃。支給期間を高校卒業まで延長。第1子・第2子は0-3歳未満が月1万5000円、第3子以降は0歳から高校生までに月3万円を支給すると明記した。この改正は24年度中に実施する方針。

また育児休業の際の給付金は、手取りが10割になるよう引き上げる。親の就労を問わず1時間単位で保育施設を利用できる「こども誰でも通園制度」の創設。出産費用の保険適用を検討。授業料の減免と返済不要の「給付型奨学金」の対象を、多子世帯や理工農系の学生に拡大--などなど。これらの方針は政府が今月中に取りまとめる‟骨太の方針”に反映させる。

この素案が公表された次の日、厚生労働省は22年の人口動態統計を発表した。それによると、出生率は過去最低の1.26に低下、出生数は77万人と前年を5%も下回った。いかに政府の対策が、遅きに失したかを物語る結果となっている。さらに今回まとめた素案を実行することで、どの程度まで少子化の進行を抑えられるのか。疑問の声も少なくない。

専門家の多くは「ある程度の効果はあるだろう。しかし政府が目標とする出生率1.8の実現はムリ」と判定する。というのも対策は現金給付が中心で、若者が将来に希望を持てるような展望を示していないからだ。出生率を上昇させるためには、実質賃金が継続的に増加するような経済政策が欠かせないという主張である。

                       (続きは明日)

       ≪6日の日経平均 = 上げ +289.35円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ


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財源は選挙のあとで : 少子化対策 (下)
2023-06-08-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 3兆5000億円の財源はすべて先送り = 盛りだくさんの少子化対策だけに、経費も3兆5000億円ほど必要だ。後藤経済再生相の説明によると、経済支援の強化に1兆5000億円~1兆6000億円、子育て世代への支援に7000億円~8000億円、共働き・共育ての推進に7000億円~8000億円が割り当てられるという。しかし、この財源をどのようにして賄うかについて、素案は「年末までに結論を得る」と先延ばししてしまった。

岸田首相はかねがね、少子化対策の財源について「消費税など増税は行わない」と言明してきた。このため所得税や法人税の増税も出来ない。赤字国債に頼るのも安易すぎる。そこで政府が目を付けたのが、①社会保険制度の支払い削減②社会保険制度の保険料引き上げ③既定経費の節約--の3項目。これらで合計3兆円を確保する目算を立てていた。

さらに、これらの手段を実行するには時間がかかる。その一方、対策費はすぐに支出されるので、資金不足になるかもしれない。その場合は、つなぎに「子ども特別国債」を発行。これを含めて少子化対策に関するすべての収支を管理する「子ども金庫」を創設する構想だ。ここまで考えているのに、なぜ財源は年末まで先延ばししたのか。

理由は‟選挙”でしかない。社会保険制度の保険料引き上げは、たしかに増税ではない。しかし個人と企業の支出は増える。個人は1人当たり月340-470円の支出増という試算もある。選挙の前にこんな数字が出て、論戦の材料になっては困る。だから年末まで凍結。これが真相ではないか。だとすると、解散・総選挙は秋ということになるのだが。

        ≪7日の日経平均 = 下げ ー593.04円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ


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物価高に追い付けない 賃上げ
2023-06-09-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 実質賃金は13か月連続で減少 = 厚生労働省は6日、4月の毎月勤労統計を発表した。それによると、1人当たりの現金給与総額は28万5176円。前年同月比では1.0%の増加だった。ところが物価が4.1%も上昇したため、実質賃金は3.0%の減少となっている。これで実質賃金の減少は13か月連続。働く人の生活水準は、下がる一方だ。

就業形態別にみると、一般労働者の現金給与総額は36万9468円で1.1%の増加。パートタイム労働者は10万3140円で1.9%の増加。しかし実質賃金は一般労働者が2.9%の減少、パート労働者は2.2%の減少だった。ただ業種別にみると、不動産・物品賃貸業、複合サービス事業、運輸・郵便、飲食サービス、金融・保険の5業種は、給与の伸びが物価上昇率を上回って実質賃金が増加している。

厚労省はこうした結果について「30年ぶりの高さとなったことしの賃上げが、まだ十分に反映されていない」と解説した。だが5月も多くの商品が値上げされており、6月には電気料金もまた上がる。原油の国際価格も1バレル=70ドル以下には、なかなか下がらない。政府が言う「賃上げと消費増の好循環」は、実現がかなり難しそうだ。

それにしても、実質賃金の減少ぶりはひどすぎる。厚労省の資料によると、20年を100とした実質賃金の指数は、この4月に84.5となっている。ここ3年ほどの間に15%も減少したわけだ。これでは景気の本格的な回復は難しい。将来への不安感ばかりが増すから、若い人たちが安心して子どもを産めない。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -272.47円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ
  

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原油価格は 上がる? 下がる?
2023-06-10-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 産油国は100万バレルを追加減産 = OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国は4日、オーストリアのウイーンで閣僚級会合を開き、現在の減産体制を24年末まで継続することを決めた。またサウジアラビアは独自で、7月あるいはそれ以降も日量100万バレルを減産する。現行の減産量は366万バレル、サウジの新たな減産を加えると計466万バレル。世界消費量の4.6%に当たる。

こうした減産量の拡大は、言うまでもなく原油の国際価格を押し上げることが目的。たとえばニューヨーク市場のWTI〈テキサス産軽質油)先物価格は、ウクライナ戦争が始まった直後の昨年3月には1バレル=130ドルにまで高騰した。しかし、その後はずっと下げ基調で、最近は70ドルを割り込む場面もあった。今回の決定で75ドルまで上昇したが、すぐに70ドル近辺へ反落している。というのも今回の会合では減産に反対する国が多く、結局はサウジアラビアが独自の減産で体面を保った形になったからだ。

今後の原油価格は上がるのか、それとも下がるのか。まず供給面からみると、産油国側がこれ以上の減産をすることは、多くの国が反対していてかなり難しい。次に需要面での要因は、アメリカと中国の景気動向ということになる。そのアメリカは、これから景気後退に入るという見方が強い。また中国の景気回復も、いまの足取りはきわめて鈍い。

したがってWTI価格は、年内60-80ドル程度で推移する公算が大きい。日本にとっては、一息つける状況だろう。しかし電気料金やガソリン代に対する補助金は、間もなく終了する。政府はまた補助金の延長を考えるのだろうか。もっと根本的なエネルギー対策が必須だと考えられるが、決定したばかりの“骨太の方針”をみても、そんな影は見当たらない。

        ≪9日の日経平均 = 上げ +623.90円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】    


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今週のポイント
2023-06-12-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ FRBは利上げを見送るのか = ダウ平均は先週114ドルの値上がり。2週連騰で、終り値は5月1日の3万4000ドルに近付いた。地銀からの預金流出による金融不安、連邦政府の債務上限引き上げ問題が片付いて、市場の空気は急速に明るさを増した。残るは今週14日に発表されるFRBの金融政策。もし利上げが見送られれば、当面は雲ひとつない快晴に。ニューヨーク市場の株価は、新たな目標を探すことになるだろう。

日経平均は先週741円の値上がり。9週連騰で、この間の上げ幅は4747円に達した。外国人投資家による買い気はいぜん根強く、過去10週間の買い越し額は4兆5000億円を超えている。利益確定売りも大量に出ているが、買い気も強い。このため1日の値幅が大きく動く日が多かった。ただ、さすがに急速な上昇を心配する声も大きくなっている。

FRBは今週13-14日にFOMC(公開市場委員会)を開いて、金融政策を決める。市場では「利上げ見送り」説が広まっているが、実際どうなるかは不明。もし0.25%の利上げに踏み切ったら、市場は一時的にショックを受けるかもしれない。だが株価の反騰は早いだろう。もし金利を据え置いたら、市場は怖いものなし。ダウは3万5000ドルを目指して動き出すだろう。

今週は12日に、5月の企業物価。13日に、4-6月期の法人企業景気予測調査。15日に、5月の貿易統計、4月の機械受注、第3次産業活動指数。アメリカでは13日に、5月の消費者物価。14日に、5月の生産者物価。15日に、5月の小売り売上高、工業生産。16日に、6月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が15日に、5月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお14日に、パウエルFRB議長の記者会見。

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ


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迷うFRB  願う株式市場
2023-06-13-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 14日には判明する「利上げ」か「据え置き」か = FRBは13-14日にFOMC(公開市場委員会)を開いて、金融政策を決定する。現状で考えられる選択肢は①0.25%の政策金利引き上げ②金利を据え置くが、利上げを再開する可能性を示唆する③金利を据え置き、今後も利上げの可能性は小さいと示唆する--の3つ。金融政策の大きな転換点になるだけに、全世界から注目されている。しかしFOMCがどんな決定を下すのか、いまのところは全く不明だ。

というのもFRB内部でも、物価や景気に関する見方が真っ二つに分かれているからだ。たとえば5月の雇用統計で、非農業雇用者数は予想を大きく上回って増加した。ところが失業率は上昇、平均時給は伸びが縮小した。また高額商品の売れ行きはいいが、各種の業況調査では景気の下降を示す結果が多い。要するに、インフレと景気の先行きを判断しにくくなっているわけだ。

ほかにも短期金利が長期金利を上回るという異常な状態が、長期にわたって続いている。さらに不動産価格も下落してきた。これまでに実施した引き締め政策の効果を見るためにも、今回は利上げしないという意見も強まっている。その一方、カナダは利上げを休んだ結果、物価が再上昇。利上げの中断が危険なことを物語った。結局はパウエル議長が、裁定することになるのだろう。

市場では一時「ことし後半には利下げ」という観測が強まっていた。さすがに、こんな高望みは消えたが、「金利は据え置き」を待望する声はきわめて強い。したがって、仮に「0.25%の利上げ」となれば、市場は失望するだろう。もし「据え置き」となれば、株価は新たな上昇軌道に乗る可能性も小さくはない。だが、そこまで考えると、これはパウエル議長が「利上げは必要」と判断する1つの材料になってしまうかもしれない。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +168.83円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ


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物足りない 企業景気調査 
2023-06-14-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ いちばん知りたい点に触れず = 内閣府・財務省は13日、共同で実施した4-6月期の法人企業景気予測調査を発表した。それによると、自社の景況判断指数は大企業が2.7ポイント、中堅企業が1.9ポイントのプラス。中小企業は0.8ポイントのマイナスだった。業種別では食品製造業・化学・サービス業・運輸郵便業の景況感が大きく上昇している。

景況判断指数は「前期より上昇」と回答した企業の割合から「下降」と回答した企業の割合を差し引いた数字。全国1万1000を超える企業が回答した。調査では「景気の先行き見通し」も聞いているが、結果はきわめて強気。全産業ベースで7-9月期はプラス12.0ポイント、10-12月期はプラス8.6ポイントとなっている。

「自社の業績見通し」についても聞いた。景気の先行き見通しが明るいため、売り上げは順調に伸びると予想。全産業ベースで23年度の売上高は2.7ポイントのプラス。製造業は3.5ポイント、非製造業は2.4ポイントのプラスだった。ところが「経常利益の見通し」は製造業が9.9ポイントのマイナス、非製造業も2.4ポイントのマイナス。全産業では4.4ポイントのマイナスという結果になった。

景気の見通しがよく、自社の売り上げも伸びる。それなのに、どうして利益は鈍化する予想なのか。考えられることは、光熱費や燃料代、原材料費や人件費が上昇して利潤が減少してしまう。あるいは、ほかにも利益を抑制する原因があるのか。いちばん知りたい点だが、この調査では聞いていない。

        ≪13日の日経平均 = 上げ +584.65円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ


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3つの??? : 岸田首相の会見
2023-06-15-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 解散、財源、成長戦略 = 政府は13日の持ち回り閣議で「こども未来戦略方針」を決定。これに伴い岸田首相は同日夜、官邸で記者会見を行なった。この会見を聞いていて、ぽっかり浮かんだ疑問点が3つ。その1つは質問に答える形で述べた、衆議院の解散に関する考え方。これまでは「頭の中にない」の一点張りだったのが、「諸般の情勢を総合して判断して行く」に変化した。岸田首相は明かに解散を考えているが、それが6月中なのか7月以降なのか。これは単純な「?」である。

2つ目は、年間3兆5000億円を要する少子化対策の財源。選挙を考えて、財源探しは年末までお預け。だが会見で、岸田首相は「国民に追加負担が生じないよう歳出改革を徹底する」と言明した。さて、本当にそんなことが出来るのだろうか。早くも霞が関では「財務省が3兆円ほどの隠し財源を持っているようだ」といった憶測も流れ始めた。もしそうなら、いまから表に出しておいた方が、選挙も戦いやすいのでは。これは微妙な「?」である。

3つ目は、成長戦略とは何かという問題。岸田首相は少子化対策を実現するうえでの最大のポイントは「経済成長実現と少子化対策を車の両輪とした大きなパッケージを実行することだ」と力説した。だが、この言い方は論理的にきわめて不鮮明。‟車の両輪”という言葉の使い方がおかしいからだ。それでも若者が将来に希望を持てるよう、持続的な経済の成長が必要だという意味に解釈しておこう。

首相も具体的に「持続的で構造的な賃上げ」「民間投資増加の流れを加速化」などを挙げている。しかし、そのための政策については言及なし。政府があす16日に決定する予定の‟骨太の方針”をみても、明確な成長戦略は見当たらない。適齢期の若者だけではなく、多くの国民が期待をかける持続的な経済成長。それをどうやって実現するかの方策が示されないまま、解散・総選挙となりそうな雲行きだ。これは落胆の「?」である。

        ≪14日の日経平均 = 上げ +483.77円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ


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苦渋の 金融政策 : FRB
2023-06-16-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 利上げは見送り、重石を2つ置いた = FRBは13-14日に開いたFOMC(公開市場委員会)で、政策金利の引き上げを見送ることを決めた。昨年3月に金融政策を引き締めに転じてから、10回の会合すべてで利上げを決定してきたが、今回はじめて金利を5.25%に据え置いた。ところが今後の見通しとしては、年内に0.5%の引き上げもありうると示唆。このため発表を受けて、ダウ平均は230ドルほど下落した。

FRBが利上げ見送りを決めた最大の要因は、直前に発表された5月の消費者物価だったろう。前年比で4.0%上昇にまで落ち着き、昨年1月の記録9.1%上昇の半分以下に鈍化した。たとえば雇用統計では非農業雇用者が予想以上に増加する一方、失業率は上昇。景気の強さを測り切れなかった。だが物価がここまで落ち着けば、引き締めを強化する必要はない。しかし利上げを見送ると、株価は急騰するかもしれない。FRBとしては、株価バブルも好ましくない。

そこで考え出したのが「年内0.5%の利上げもありうる」という重石である。現状では1回0.5%の利上げはありえないから、0.25%の利上げが2回。FOMCは8月がお休みだから、7月と9月ということになる。こうして重石は2つになり、年内の利下げ期待にも水をかけた。なかなか巧妙な作戦であり、市場もびっくりしたことは確か。

だが量的引き締め政策がまだ不十分で、カネ余り状態は解消していない。したがって市場はすぐに元気を取り戻すに違いない。その証拠に14日のニューヨーク市場でナスダックは下落せず、15日の東京市場でも株価はほとんど下落していない。株価バブルは、物価上昇を促進する原因になりかねない。FRBと市場との駆け引きはまだ続く。

        ≪15日の日経平均 = 下げ -16.93円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ


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スタグフレーション突入 /  ユーロ圏
2023-06-17-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ ドイツの落ち込みが目立つ = ECB(ヨーロッパ中央銀行)は15日の理事会で、政策金利の0.25%引き上げを決定した。昨年7月からの引き締め政策で8回連続の利上げ、政策金利は4.0%になった。消費者物価は5月に前年比6.1%にまで上昇幅を縮小したが、まだインフレ圧力は強いと判断。ラガルド総裁は、今後も利上げを継続する姿勢を明らかにしている。

EU統計局は先週、ユーロ圏20か国の1-3月期GDP改定値を発表した。それによると年率換算の実質成長率はマイナス0.4%で、速報値のプラス0.1%から大きく下方修正された。その結果、ユーロ圏のGDPは昨年10-12月期に続いて2四半期連続のマイナス成長に。いわゆる理論上の景気後退に突入した。22年の成長率プラス3.5%に比べると、その落ち込み方がよく判る。

つまり現状は、インフレと不況が共存するスタグフレーション入り。政策的にインフレを抑制しようとすれば、景気が悪化。景気を刺激すると、物価が上昇してしまう。きわめて厄介な状態に陥った。それでもECBが利上げを続けたのは、まずインフレを退治しようという姿勢の表れだ、アメリカのFRBが利上げを見送った直後だけに、ECBの選択が目立つ。

ユーロ圏内でも、経済大国ドイツの悪化ぶりが著しい。1-3月期のGDPは、年率でマイナス1.2%。フランス・イタリア・スペインなどがプラス成長を維持したのに、主要国のなかではドイツだけが沈み込んだ。ロシアの天然ガスに依存し過ぎていたことが大きい。国民の間にインフレ・マインドが浸透してしまい、企業や商店による便乗値上がガ目立つという。シュルツ内閣は30兆円の財政支出をしたが、プラス成長を維持できなかった。

        ≪16日の日経平均 = 上げ +220.59円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】  


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今週のポイント
2023-06-19-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ バブルの様相を深める東京市場 = ダウ平均は先週422ドルの値上がり。3週間の連騰で、終り値は3万4300ドルへ。週央14日にはFRBが利上げの見送りを発表したが、株価は230ドルほど下落した。パウエル議長が年内2回の追加利上げを示唆したことに驚いたためである。しかし株価は、すぐに上昇軌道に戻ったようだ。このことは量的金融引き締めの効果がまだ小さく、カネ余りが続いていることを示している。

日経平均は先週1441円の大幅な値上がり。こちらは10週間の連騰で、この間の上げ幅は6188円に達した。10週間の連騰は過去4番目の記録。終り値も3万3700円を超し、33年ぶりの高値となった。堅調な企業業績、自社株買い、それに円安の進行が、主たる買い材料となっている。相変わらず海外投資家の勢いが強く、6月第1週までの11週間で計5兆8000億円を買い越した。

ニューヨーク市場は、7月の利上げはほぼ織り込み済み。9月は経済指標次第でまだ不明という見方。だから弱気にはなっていない。一方、東京市場はさすがに急ピッチの上昇には警戒感も。このところ先物の売り残が急増しており、個人が逆張りを始めた様子がうかがえる。全体として、バブルの匂いが強まっていることは確かなようだ。

今週は23日に、5月の消費者物価。アメリカでは19日に、6月のNAHB住宅市場指数。20日に、5月の住宅着工戸数。22日に、5月の中古住宅販売。23日に、製造業のPMIが発表される。

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ

 
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日銀は 緩和政策評価の公表を
2023-06-20-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 植田新総裁の公約ではなかったのか = 日銀は先週16日の政策決定会合で、大規模緩和政策の維持を決定した。植田新総裁になっても、いまのところは黒田時代と全く変わりがない。超緩和政策を継続した理由について、日銀は「賃上げの持続力を見極めるのに時間がかかる」「引き締めが遅れるリスクは、早すぎるリスクよりも小さい」と説明した。ただ植田総裁は記者会見で「政策の修正は、効果と副作用を比較して決める」とも言っている。

植田総裁は就任直後の記者会見でも「大規模緩和の効果と副作用を比較する形で評価したい」と語っていた。なにしろ黒田前総裁は「緩和政策が最良」の一点張り。副作用などは眼中になかった。それだけに植田総裁は経済学者だけあって、客観的に物事を評価しようとしていると注目された。だが就任から2か月半、いまだに政策評価の結果は公表されない。

一般の国民は、イールド・カーブがどうこうという難しい話は関心の外。だが円安で物価が高騰したり、銀行預金にほとんで利子が付かないなどのマイナス面は肌で感じている。また超低金利で借金をしている企業や住宅ローンを借りている個人が恩恵を受けていることは知っている。だが、こうしたプラス面とマイナス面のどちらが大きいのかは判らない。

日銀はすでに緩和政策に対する評価を終えているはずだ。それを公表しないのは、プラス面よりマイナス面の方が大きいという結果が出たからではないか。こんな憶測も流れ始めている。「賃上げの持続力を見極めるまで、政策の変更はない」などと頓珍漢なことは言わず、この際は現状での政策評価を発表すべきである。

        ≪19日の日経平均 = 下げ -335.66円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ


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失速する 中国経済 (上)
2023-06-21-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 回復力が弱すぎる = 中国経済の不調が目立ってきた。統計局が発表した5月の主要な経済指標をみると、鉱工業生産は前年比3.5%の増加。4月の5.6%増加から、大きく鈍化した。自動車は17.5%も増加したのに、鉄鋼やセメントなど建設関連の資材が減少している。また小売り売上高は12.7%の増加だったが、これも4月の18.4%増加から大きく縮小した。昨年5月はゼロ・コロナ政策の真っ最中で経済活動が抑制されていたことを考えると、この伸び率は異常に小さい。

固定資産投資額も、1-5月は前年比4.0%の増加。1-4月の4.7%増加に比べると鈍化した。政府がテコ入れするインフラ投資は7.5%の増加だったが、民間投資は0.1%の減少となった。特に不動産投資は7.2%の減少で、1-4月の6.2%減少よりも悪化している。たとえば1-5月の不動産販売面積は、前年比で0.9%減少した。主要都市での価格下落も目立ち始め、マンションなどの建設計画も消えている。

中国経済に占める不動産の比率は高く、GDPの3割に達するといわれる。その不動産業界が不況に陥ったため、鉄鋼やセメントなど建設資材が減産を余儀なくされた。また新築住宅の販売が増えないと、家具や電気などの耐久消費財も売れなくなる。その結果、広範な部門での失業者の増加も招いてしまう。不動産不況の影響は、きわめて大きい。

コロナの流行にもかかわらず、中国では不動産投資が活発化。一時はバブル状態になった。このため政府は融資を抑制するなどの対策を打ったが、その効果が出て不況になったとも言えないことはない。そこで政府は一転して不況対策に乗り出したが、いまのところは融資制限の解除や短期金利の引下げにとどまっている。次は財政対策という期待も高まっているが、それを阻害する大きな要因が、実は不動産不況にあるのだから、話はややこしい。

                        (続きは明日)

        ≪20日の日経平均 = 上げ +18.49円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ


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失速する 中国経済 (下)
2023-06-22-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 不動産不況で財源難に陥った地方政府 = 財政面から景気刺激策を実施する場合、中国では中央政府の指示に従い地方政府が実行する。そのときの財源は、地方債の発行・銀行借り入れ・土地使用権の売却など。このうち地方債と銀行借り入れの合計はすでに100兆元、GDPの8割に達している。そこで頼りは土地使用権の売却。中国の土地はすべて国有地なので、タネは尽きない。ところが不動産不況の影響で、使用権の需要がガタ減りしてしまった。1-4月の収入は昨年の55%に減少している。

このため財政面からの景気対策は遅れがち、もっぱら金融緩和に頼っているのが現状だ。しかし景気回復の足取りは重く、失業者の増大が政治的にも社会的にも大きな問題となっている。5月の失業率は5.2%で4月と変わらなかったが、16-24歳の若年層に限ってみると、なんと20.8%で過去最悪の水準に。昨年の大学卒業生は、文系の就職率がわずか12.4%。大卒 即 失業者となっている。

ユーロ圏の景気後退入りで、輸出も伸び悩んだ。5月の輸出はドル建てで前年比7.5%の減少。これも景気の足を引っ張った。一方、国内景気の回復鈍化で、輸入も7.9%の減少。その分だけ、日本を含む各国の中国向け輸出が伸び悩んだことになる。また産油国が減産しているにもかかわらず、原油の国際価格が上がらない。その最大の原因は、中国の需要が減退していることにある。

このように中国経済が不調に陥った影響は、世界経済に波及し始めている。しかも中国ではいま、コロナの大規模な再流行が起きているという報道もある。いずれにしても政府が目標とする「ことし5%」のGDP成長率は、達成が困難だろう。習政権は7月中に、本格的な景気対策を打ち出すという情報もある。それが、どんな内容で、どんな効果を挙げるのか。この夏の見どころである。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +186.23円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ
  

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「ペロブスカイト」は 最後の命綱 (上)
2023-06-23-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ これに負けたら、もうアトがない = このタイトルを見て理解できる読者は、かなりのエネルギー通だろう。名前が小難しいこともあって、まだ一般には浸透していない。しかし4月に日本で開催されたG7(主要7か国)気候・エネルギー・環境相会議で採択された共同声明には「ぺロブスカイト太陽電池などの革新的な技術の開発を促進する」と、わざわざ固有名詞が書き込まれた。世界でも、その覇権をめぐる競争が激化している。

いま普及している太陽光発電装置は、ほとんどがリチウム・イオン型。住宅の屋根に乗っている、あの形だ。これに対してぺロブスカイト太陽電池は、特殊な結晶構造を持つぺロブスカイトと呼ばれる物質を塗って乾かすだけ。きわめて薄く、重量はシリコン型の1割。自由に折り曲げられるので、建物の壁や車の屋根などにも簡単に張り付けられる。弱い光でも発電可能、製造コストもシリコン型の半分という、いいことずくめ。

しかも、このペロブスカイトは09年に、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した。日本発の新製品である。さらにこの物質の主原料はヨウ素だが、これは日本が世界で2番目の生産国。条件も全く整っている。ところが不思議なことに、日本のメーカーはぺロブスカイトの実用化・普及にはあまり熱心でない。政府の姿勢もぺロブスカイトに集中しているとは思えない。中国やポーランドの企業が、すでに大量生産を始めているというのに。

嫌な思い出は、シリコン電池の大失敗。日本は00年代に開発・実用化で先行、世界シェアは50%を超えていた。それが普及で失敗、現在は中国製品が世界の80%を占めている。ぺロブスカイト電池は日本のエネルギー事情を大幅に改善、日本経済に革命を起こす可能性がきわめて強い。これを逃せば、もうアトがないと考えるべきではないか。

                           (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 下げ -310.26円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ


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「ペロブスカイト」は 最後の命綱 (下)
2023-06-24-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 小池さん、もっと上を向いて! = 東京都はペロブスカイト型太陽光発電の実証実験を始めた。都庁内に5台の装置を設置し、来年5月まで発電効率や費用対効果を調べる。だが、この際は実証実験の範囲をもっと拡大したらどうだろうか。たとえば建物のカベ、さらに高速道路などにもペロブスカイトを張り付ける。それには何社かのメーカーと契約しなければならないが、箇所を限ればそんなに費用はかからないだろう。

もともと東京都は、太陽光発電の普及に熱心だ。昨年12月には条例を改正し、大手の建設会社が手掛ける一戸建てを含む新築の建物には、リチウム型発電装置を設置するよう義務付けた。補正予算を組み、計301億円を補助する。30年までに100万㌔㍗の発電を目指すが、これは原発1基分、都内の家庭が消費する電力の約6%に当たる。

太陽光発電とは別の話だが、東京都はいま銀座の街を囲むように走る「東京高速道路KK線」を、遊歩道に造り替える計画を進めている。ほかにも高速道路の改修計画は数多い。こうした道路や学校・病院など、ペロブスカイトを張り付けられるところには、どんどん張って行く。その結果100万㌔㍗の発電が出来れば、東京都は原発2基を所有することになる。

もちろん送電線や大型蓄電池の整備など、国の関与も必要だ。それを東京都が先導して行けば、他の都市にもペロブスカイト発電は広がって行くだろう。成功すれば、日本の燃料輸入量を大幅に減らすことが出来、ペロブスカイトを輸出の主柱に据えることも出来る。リチウム型のように普及段階で、海外勢に負けたらもうアトがない。小池さん、目を大きく開けて上を向いて走ろう!

         ≪23日の日経平均 = 下げ -483.34円≫

         【今週の日経平均予想 = 1勝4敗】     


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今週のポイント
2023-06-26-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 高値警戒感に押される = ダウ平均は先週572ドルの値下がり。終り値は3万4000ドルを割り込んだ。パウエルFRB議長が議会で「政策決定会議のメンバーは、大多数が年内2回の利上げが適切だと考えている」と証言したことで、売り物が多くなった。市場ではまだ「年内の利上げは1回だけ」という見方が強く、買い気も旺盛。だがパウエル議長の念押しのような発言で、利益確定売りの力が上回った。

日経平均は先週925円の値下がり。終り値は3万3000円を割り込んだ。外国人投資家を中心に物色買いの勢いも強いが、こちらも高値警戒感が広まっている。このため売買が交錯、1日の値動きが非常に大きくなっている。たとえば23日の値幅は957円で、ことし最大となった。円安の進行など大きな材料もあったが、全体としては利益確定売りの力が上回った形。

日米市場でのこうした状況は、今週も続くだろう。高値警戒で株価が下がれば、すかさず買いが入る。値上がりすれば、確定売りが増える。したがって株価は揉み合うが、結局は高値圏での変動になりそうだ。そして来週は、もう7月。ニューヨーク市場の関心は25-26日のFOMC(公開市場委員会)へ、東京市場の関心は解散・総選挙へと流れて行く。

今週は26日に、5月の企業向けサービス価格。29日に、5月の商業動態統計、消費動向調査。30日に、5月の労働力調査、鉱工業生産、住宅着工戸数。アメリカでは27日に、5月の新築住宅販売、FHFA住宅価格指数、カンファレンス・ボード消費者信頼感指数。29日に、1-3月期のGDP確定値、5月の中古住宅販売。また中国が30日に、製造業と非製造業のPMIを発表する。

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ


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自己矛盾に陥った NY市場
2023-06-27-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 景気後退は本当に来るのか = FRBと株式市場の不思議な綱引きが続いている。FRBのパウエル議長は先週、議会で「FRBの大勢は年内あと2回の利上げに傾いている」と証言した。ところが市場の大半は、この発言を疑って聞いている。理由は「夏の終わりから秋にかけて景気は後退期に入る。だから7月の利上げはあっても、9月はない。あとは年内に利下げがあるかどうかだ」という次第。

だが現状からみる限り、アメリカ経済がいつから後退を始めるかは判然としない。GDPの7割を占める個人消費は、まだ堅調。小売り売上高の推移をみても、ことし2-3月よりも4-5月の方が活発になっている。雇用の状態をみても、景気が下降に向かっている兆候は出ていない。ただ最近は先行きの業況判断調査で、下向きの結果が多く出ていることは確かなようだ。

にもかかわらず、市場では「景気後退がやってくる」という観測が圧倒的に多い。景気の悪化が確実になれば、FRBも金融引き締めの手綱を緩めるという期待が強いためかもしれない。もし本当に景気後退に陥ると予測するならば、株価はそれを予知してもっと下げなければならないはず。株価が高値圏から下がらないのは、市場が本当に不況が来るとは考えていないからだという専門家の説明さえ現われた。

株価がそれほど下がらなければ、そのこと自体が消費を押し上げる材料になる。だから株価が高値圏にある間は、FRBも引き締めを続けるのではないか。そこまで考えると、市場は全く自己矛盾に陥ってしまう。もっとも、こうした考え方は古き良き時代のもの。いまのようなカネ余り時代では、「景気後退でも株価は下がらない」というのなら話は別だが。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -82.73円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ


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気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (上)
2023-06-28-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本市場は海外メーカーの草刈り場 = 新車販売台数のなかで、最もEV(電気自動車)の比率が小さい国はどこか? そう、答えは日本だ。まだEVは100台に2台しか売れていない。最も比率が大きいノルウェーは、なんと100台に88台。ヨーロッパ主要国は20-25台、中国11台、アメリカ6台に比べても、断トツで比率が低い。その日本市場が、ことしは海外メーカーの草刈り場となってきた。

業界団体の集計によると、22年度に国内で販売された乗用車部門のEVは7万7238台。前年の3.1倍に増加したが、乗用車全体に占める割合はまだ2.1%にとどまっている。このうち排気量660CC以上の普通車は3万5559台、軽自動車は4万1679台だった。車種では日産の軽EV「さくら」が1位、同じく日産の「リーフ」が2位で、日産勢が健闘した。

輸入車も、大きく増加した。1万6430台を売り、前年比で64%も増えている。アメリカのテスラ、中国のBYD(比亜迪)、ドイツのベンツなどが続々と参入。日本で売り出した海外EVのモデルは、前年度の20種から22年度は79種に拡大した。こうした海外メーカーは、販売価格の高い高級車に力を集中している点が特徴。現状は海外メーカーの高級車と、日産の軽EVの争いといった観を呈している。

これらの海外メーカーは、アメリカやヨーロッパ、中国といった大市場で熾烈な競争を演じてきた。いまや値引き競争の段階にまで達している。そこで目を付けたのが、出遅れた日本市場。たとえばBYDはことし中に3車種を投入、25年までに店舗を100か所に増やす方針だ。こうしたなかで、日本メーカーのEVはどうみても影が薄い。上海で4月に開かれた自動車ショーでも、日本製EVへの関心は集まらなかった。どうして、こんなことになってしまったのか。

                    (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 下げ -160.48円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ


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気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (中)
2023-06-29-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ ハイブリッド車への固執が敗因 = 日本の自動車メーカーは、世界に先駆けてハイブリッド車の製造技術を完成させた。ハイブリッド車というのは、ガソリン・エンジンと電気モーターの両方を搭載した車。当然ながら部品の数は多くなり、製造工程は複雑になる。日本の自動車業界はこれで世界の競争に勝てると確信し、経済産業省もこれを支援した。

EVの動力は、電気モーターだけ。部品の数は半分以下となり、製造工程もきわめて簡単になる。それならEVを造ってみよう。海外ではこう考える企業家が続々と現れた。最初に頭角を現したアメリカのテスラも、あとからこれに追い付いた中国のBYDも、もともとは自動車メーカーではなかった。それがいまは、それぞれ年間130万台、180万台を売り上げる巨大メーカーに成長している。

こうした動向をみて、日本のメーカーもEVへの関心を高めたことは確か。だが完全なEVを目指すと、せっかく手にしたハイブリッド技術が無駄になってしまう。またガソリン・エンジン部門がなくなると、多数の関連した下請け企業をどうするか。こうした問題もからんで日本の自動車メーカーは決断が遅れ、世界のEV競争では周回遅れとなってしまった。

GMやフォードといったアメリカの大メーカーも、EV化の波に乗り遅れた。主力製品が大型車で、電池の容量に不安があったためである。それでもハイブリッドでは日本に敵わないため、EVには早くから関心を寄せてきた。世界競争では、半周遅れというところか。いずれにしても、日本はどん尻。ここから巻き返せる可能性は、あるのだろうか。

                       (続きは明日)

        ≪28日の日経平均 = 上げ +655.66円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ

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気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (下)
2023-06-30-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 出遅れの挽回は至難の業 = 海外のEVメーカーが急成長を遂げた背景には、各国政府の並々ならぬ支援がある。生産や消費に対する補助金や減税。それに加えてEUは「35年には排気ガスを出さない車しか販売できない」点で合意。またアメリカも「30年には新車の50%をEVにする」方針を決めた。これらは地球温暖化ガスの削減を目標とした政策だが、日本のハイブリッド車対策と考えられないこともない。

日本は周回遅れを取り戻せるのだろうか。結論から言えば、相当に難しいのではないか。たとえばEVの普及には、給電施設が欠かせない。その施設と車を結ぶ給電コード。これだけみても、テスラやBYDの方式が世界標準になってしまう確率が、きわめて高い。日本のメーカーは輸出しようとすれば、これを取り入れなければならなくなる。

EVの命はバッテリーだ。各社はその性能向上にシノギを削っているが、これも売れ行きがよくなければ大量生産できず、単価を安くできない。全固定電池など画期的な発明があれば状況は変わるだろうが、そうでなければ後発組は頭を出せない。出遅れてしまったことのマイナス面は、見た目よりもずっと大きい。

トヨタ自動車もこのマイナス面に気が付き、EV重視に方針転換した。社長を交代し、アメリカへの投資を増やしている。だがハイブリッドを完全に捨てる決断は出来ない。経産省もEV販売に補助金は付けたが、状況を見守るばかり。日本は「EVで完全に出遅れた」ことを、まず自覚しよう。さらに「日本の自動車産業は存亡の危機にある」という緊張感も必要だ。

        ≪29日の日経平均 = 上げ +40.15円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ


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