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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑤
2012-09-01-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 幹線道路 : 沿道ビルの耐震化も重要 = 道路は自動車専用の高速道路から歩行者用の小道まで、文字通り津々浦々に延びている。国土交通省によると、市町村道までを含めた道路の総延長は約121万㌔㍍。地球と月の距離の3倍を超える。この道路も毎日のように、陥没やヒビ割れなどの損傷を生じている。幹線道路の陥没事故だけでも、年間4000件に達するという。

道路そのものも、地震や洪水への対策を急がなければならない。しかし大都会を走る幹線道路については、もう1つ厄介な問題を抱えている。それは沿道に建つビルが倒壊して道路を塞ぐと、道路としての役割を果たせなくなってしまうという問題だ。特に震災時に消防車や救急車が動けなくなってしまう。

たとえば東京都の場合。緊急輸送道路2000㌔㍍の沿道に建つビルで、81年以前に建設され、高さが道幅の半分以上あるものは5000棟ある。阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて、東京都はこれらのビルに耐震診断を義務付けた。しかし応じたのは1300棟にすぎない。費用の問題がネックになっているからだ。

耐震診断には1000万円近くかかる。東京都は延べ面積1万平方㍍以下のビルと分譲マンションに対しては、全額を補助することにした。それでも耐震性が低いと診断された場合、所有者が耐震化工事を実施しなければならなくなる。大阪府や名古屋市も同様の問題を抱えているが、診断費用を補助する財源が手当てできず進展はない。


                           (続きは来週サタデー)

    ≪31日の日経平均 = 下げ -143.87円≫

    【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-09-02-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑤

◇ 企業の利益と株価 = お母さんたちが、うわさ話をしていた景気のいい家。その家のお父さんがサラリーマンだったとしたら、勤めている会社から給料やボーナスをたくさんもらっているに違いありません。ということは、その会社は景気がいい。つまり利益を、たくさん出していることになりますね。

多くの会社がたくさんの利益を出している状態は、国全体の景気もいいということになるでしょう。ですから日本中の会社がどのくらいの利益を出しているのかを調べれば、景気の状態がわかります。その状態を3か月前とか1年前と比べれば、景気がどのくらい良くなったか、あるいは悪くなったかを知ることができるのです。

大きな会社はたいがい、株式市場に上場(じょうじょう)しています。その株式は毎日、売ったり買ったりされて、その需給によって値段が上下することは、すでに勉強しましたね。そして利益が増えている会社の株価は上がるし、利益が減っている会社の株価は下がります。

上場している会社全体の株価を示す物差しが、株価指数です。TOPIXとか日経平均とかが、その代表的なもの。ですから、こうした株価指数が上がっているか下がっているかを見ていれば、全体として会社の景気がいいかどうかを判断することができます。全体としての会社の景気がいいときは、国全体の景気もいいと言えるでしょう。みなさんも毎日の新聞で、TOPIXや日経平均の動きを見る習慣をつけてください。おもしろいですよ。
                               

                              (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-09-03-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 視界不良の世界経済 = 9月に入ったが、世界経済の先行きはきわめて読みにくくなっている。株式市場はこれを嫌気して、委縮してしまったようだ。先週は新興国を含めて世界の市場で株価が低落、出来高も軒並み縮小した。先行きが見通しにくく、投資家がリスクを回避したためである。ダウ平均は先週67ドルの値下がり。日経平均も231円下げた。

今週だけをみても、6日にはECB(ヨーロッパ中央銀行)理事会。12日にはドイツの憲法裁判所が、EMS(ヨーロッパ安定メカニズム)への参加が合憲かどうかの判定を下す。さらに12-13日には、アメリカのFRBがFOMC(公開市場委員会)を開催する。これらの結果が市場を安心させるものになるか、不安に陥れるものになるか。予想は付けにくい。

加えて景気の見通しも、不透明感を増している。7日にはアメリカの雇用統計が発表されるが、その内容はどうか。“財政の崖”(8月30日付け記事参照)は回避されるのか。EUや中国、それにインドやブラジルの景気下降は止まるのか。また日本の政治情勢は。こう見てくると、たしかに9月は大変な月になる。下手をすると、“苦月”になりかねない。

今週は3日に、4-6月期の法人企業統計と8月の新車販売。4日に、7月の毎月勤労統計。7日に、7月の景気動向指数が発表される。アメリカでは4日に、8月の新車販売とISM製造業景況指数。6日に、8月のISM非製造業景況指数。7日には、8月の雇用統計が発表になる。


    ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ

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完全に自滅した 自民党
2012-09-04-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 谷垣降ろしのワナ? = 政治の世界では、往々にして非条理・非常識なことがまかり通る。だがそれにしても、今回の出来事はひどい。自民党が少数野党7会派の首相問責決議案に、あっさり同調した事件である。国民はびっくり仰天して声も出ない。この愚挙によって、自民党は国民の間に多くの疑問を植え付けてしまった。

問責決議案は、野党7会派が「消費増税に反対」する目的で参議院に提出したもの。消費増税に賛成した民主・自民・公明のいわゆる3党合意についても「きびしく批判」する内容を明確に打ち出している。このため公明党は採決を欠席したが、自民党は自分を批判する決議案に賛成するという前代未聞の“怪挙”を歴史に残してしまった。

谷垣総裁は「いまの政治の打破に重点を置いた」と説明したが、それは政策よりも政局を重視したと言うに他ならない。早く衆議院を解散させて、選挙に勝ちたい。つまり自民党のエゴだけが、むき出しになったわけだ。その結果、1票の格差も議員定数の削減も、公務員の削減も特例公債法案もすっ飛んでしまった。

多くの国民は考え込んでしまう。いったい自民党は、財政再建や日本の将来について本気で考えているのだろうか。消費増税に賛成なのか反対なのか。目的のためには手段を選ばない自己中心的な政党、それとも今回の茶番劇は谷垣降ろしのワナだったのか。いずれにしても、自民党は自滅の道を選んでしまった。選挙になっても、勝てるはずがない。


    ≪3日の日経平均 = 下げ -56.02円≫

    ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ

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海外へ逃げる自動車 / 空洞化 (上)
2012-09-05-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 世界生産台数は過去最高に = 自動車業界の推計によると、国内・海外を合計した12年度の生産台数は2600万台を超えて、過去最高を記録することが確実となった。世界市場に占めるシェアは3割に達する見込み。特に中国やインド、タイ、メキシコなど新興国での現地生産が急増している。

国内メーカーによる世界生産台数は、07年度の2319万台がこれまでの最高だった。その後はリーマン不況や大震災、タイの洪水などの影響で減少したが、その後遺症がなくなったために復旧した。また原油価格の高騰で、世界的に小型車やエコカーへの需要が強まったことが追い風となっている。

各社別に12年度の計画をみても、トヨタは870万台、日産が538万台、ホンダも430万台の生産を予定している。いずれも前年度に比べると大幅な増産となるが、その中心は海外での現地生産。たとえばトヨタは中国でカローラの生産を開始。日産は国内の生産能力を減らし、タイなどの工場を増強する方針。

ただ全体として小型車の生産比率が高まっており、利益率は低くなった。このため12年度のメーカー各社の利益は07年度には及ばないと、業界ではみている。この利益率を底上げするためにも、各社は国内の生産体制をさらに見直し、海外生産の比重を高める必要に迫られていると言えそうだ。


                                   (続きは明日)

    ≪4日の日経平均 = 下げ -8.31円≫

    ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ

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海外へ逃げる自動車 / 空洞化 (下)
2012-09-06-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 海外比率が6割を超す = 日本自動車工業会の集計によると、ことし1-6月期の海外生産台数は795万台。前年に比べて27.9%増えた。一方、国内生産台数は499万台。前年比では53%の大幅増加だったが、これは昨年の生産が震災の影響で激減していたため。海外生産の方は一貫して大きく伸びており、生産台数全体に占める海外の比率はついに61.4%に達した。

ちょうど10年前の02年1-6月期を調べてみると、海外生産台数は372万台だった。この10年間で2倍以上になったわけだ。特に最近は加速度的に増加している。原因は日本国内で生産し輸出しても、利益が出なくなったこと。その要因は円高、人件費、電力料金、法人税率、貿易自由化の遅れなど、きわめて多岐に及んでいる。

こうした傾向が続けば、そう遠くないうちに自動車は日本の基幹産業ではなくなる可能性がある。国内の需要も、現地生産の車を逆輸入して満たすことになるだろう。その場合、メーカーは海外で儲けるからいい。しかし国内では、関連部門も含めると500万人もの職が失われる。輸出が減少して、景気は悪化する。税収が減って、財政はもっと苦しくなる。

日本経済にとっては、実に大変なことが進行中なのだ。しかし不思議なことに、政府や与野党からは問題視する声があまり聞こえてこない。マスコミも“空洞化”について警鐘は鳴らしているが、半面ではグローバル化を美化するような論調もあって迫力に欠ける。日本から自動車産業が消えたときに、後悔しても遅いと思うのだが。 


    ≪5日の日経平均 = 下げ -95.69円≫

    ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ

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みんなでサボれば 怖くない / TPP
2012-09-07-Fri  CATEGORY: 政治・経済
維新の会だけが賛成表明 = 政争に明け暮れて、国会は開店休業。重要な問題はみな先送りになってしまった。そのなかの1つに、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加を決められなかったことがある。これで年末までに参加を表明し、日本がTPPのルール作りに参画する可能性は消えてしまった。

TPPというのは、アメリカやオーストラリアなど太平洋を取り巻く9か国が設立準備を進めている経済自由化協定。最近になって、カナダとメキシコも参加を表明した。協定ができると、これら諸国間の輸入関税が徐々に引き下げられるなどして巨大な自由経済圏が出現する。これに加わらなければ、日本はこの経済圏からハジキ出された格好になってしまう。

だが周知のように、最大のネックは国内の農業問題。与党も野党も、この問題では初めから腰が引けていた。民主党はプロジェクト・チームを作ったが、いまだに農業問題の議論を避けている。自民党をはじめとする野党も、党内の意見をまとめられない。唯一、維新の会だけがTPP参加を公約として打ち出した。

経済圏が始動してから参加すれば、すでに決まっているルールに従わなければならない。先送りしてしまった代償は、きわめて大きい。だが与野党の国会議員は、それを口にしない。むしろ“政治の空転”でTPP問題が先送りされ、ホッとしているように思われる。多くの議員の心中は「みんなでサボれば怖くない」なのではないか。


    ≪6日の日経平均 = 上げ +0.75円≫

    ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑥
2012-09-08-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 学校:公立小中校は1万8500棟が危ない = 文部科学省によると、公立の小中学校は全国で約3万1000校。校舎や体育館というように分けると、建築物は12万2000棟にのぼる。これらの建物の耐震化率は、ことし4月の時点で84.8%になった。前年より4.5ポイント上昇している。10年前は44.5%だったから、2倍近くに改善した。

だが安心はできない。耐震性が不足していたり、耐震診断をしていないものが1万8508棟もある。そのうち3545棟は、震度6強の地震で倒壊する恐れがあるという。この問題は耐震化率が高くなったからいい、というものではない。最も安全であるべき小中学校は、すべてに100%の耐震性がなくてはならない。

地域による差も大きい。静岡県は98.8%、宮城県と愛知県は98.0%だが、広島県は62.5%、山口県も69.0%にとどまっている。文科省によると、この差は地方自治体の財政事情によるものではない。むしろ首長や議会が持っている災害に対する関心度によって生じたもののようだ。

文科省は、小中学校の100%耐震化率を15年度までに達成しようと考えている。しかも災害時の避難所として活用するために、貯水槽・備蓄倉庫・自家発電なども併せて整備する方針。国はこれらの事業費の3分の2を補助しているが、それに必要な予算は7000億円。つまり地方の負担分を入れて1兆円あれば、すぐにでも達成できることになる。


                           (続きは来週サタデー)

    ≪7日の日経平均 = 上げ +191.08円≫

    【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-09-09-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑥

◇ 外国人が払うおカネ = 外国人からのおカネは、いろいろなルートで入ってきます。たとえば観光旅行で日本にきた外国人が、ホテル代や食事代、おみやげを買って使うおカネ。日本人が買った外国の株式から支払われる配当。外国人が日本の技術を使ったときの使用料。でも、いちばん大きいのは日本が輸出した製品に対して支払われる代金です。

外国へ行ったり来たりする船が立ち寄る港や国際線の飛行機が発着する空港には、必ず税関(ぜいかん)という役所があって、人や荷物の出入りを調べています。このうち製品の輸出と輸入を、数量と金額で集計したものが貿易統計と呼ばれる経済指標です。

12年7月分の貿易統計でみると、輸出の総額は5兆3131億円でした。輸出先の国をみると、いちばん多いのが中国で、金額は1兆円あまり。続いてアメリカが9400億円弱となっています。また品目では、自動車が8000億円あまりで第1位。鉄鋼は3000億円あまりとなっています。

7月の輸出総額は、前年の7月に比べて8%ほど減っています。これはアメリカやヨーロッパ諸国の景気が悪くなったためです。このように輸出の伸びが鈍ると、日本の景気も悪くなってしまいます。個人や会社が使うおカネが増えないときに、外国人の使うおカネが減ってくると景気が悪くなる理由は、もうわかりましたね。
                               

                            (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-09-10-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウはリーマン後の高値更新 = 9月になってヨーロッパから届いた第1報は、予想外の吉報だった。ECB理事会が南ヨーロッパ諸国の国債を無制限で購入することを決めた、というニュースである。この吉報で6日のダウ平均は235ドルの急騰、終り値は1万3292ドルに。リーマン後の高値を更新し、4年8か月ぶりの高水準を取り戻した。週間では216ドルの値上がり。

アメリカから届いた第1報は、芳しいものとは言えない。8月の失業率は8.1%で前月より0.2ポイント改善したが、注目された非農業雇用者は9万6000人しか増加しなかった。景気回復の遅さが再び立証された形だが、市場ではこれでFRBによる金融緩和が近づいたと受け取る向きも多い。そのFRBは今週12-13日にFOMC(公開市場委員会)を開いて、金融政策を討議する。

日経平均もECBの発表を受けて、7日は191円の上昇となった。週間では32円の値上がり。アメリカの雇用統計は、いつも金曜日の東京市場が終わったあと入ってくる。このニュースでダウ平均は下げなかったので、日経平均にも大きな影響はなさそうだ。ただアメリカで金融緩和の期待が高まると、円相場は上昇しがち。週初は為替相場に注目する必要がある。

今週は10日に、4-6月期のGDP改定値と7月の国際収支、8月の消費動向指数と景気ウォッチャー調査。11日に、7-9月期の法人企業景気予測調査。12日に、7月の機械受注、第3次産業活動指数、8月の企業物価が発表になる。アメリカでは11日に、7月の貿易統計。12-13日に、FRBのFOMC。14日に、8月の消費者物価、工業生産、小売り売上高、ミシガン大学の消費者信頼感指数が発表される。また10日に、中国が8月の貿易統計。12日には、ドイツ憲法裁判所がESMの違憲問題に判断を示す。


    ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ

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国債購入は イバラの道 / ECB
2012-09-11-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ ドイツが握るカギ = ECBは先週6日の理事会で、南ヨーロッパ諸国の国債を購入することを決めた。この決定で、スペインやイタリアの長期国債が買われ、利回りはともに0.5%ほど低下した。これによりユーロ圏の信用不安に対する警戒感が薄まり、ダウ平均株価は大幅に上昇してリーマン不況後の高値を更新している。だがECBが実際に南ヨーロッパ諸国の国債を買い入れるまでには、多くの障害をクリアーしなければならない。

ECBは98年に設立されたユーロ圏17か国の中央銀行。その金融政策は、6人の役員と17か国の中央銀行総裁で構成する理事会で決定される。現在の総裁はイタリアの経済学者であるマリオ・ドラギ氏。今回の国債買い入れは、ドラギ総裁が強力に主張して決定に持ち込んだと伝えられる。だが理事会のなかでドイツのウェイドマン連銀総裁だけは、最後まで反対を押し通した。

ECBは国債買い入れの条件として、購入を求める国は厳しい財政再建策を実行すること。またESM(ヨーロッパ安定メカニズム)に対しても支援を要請することの2点を挙げている。ここから問題は複雑化してしまう。第1にユーロ財務相会議は、厳しい財政再建策の程度を決める必要がある。これが厳しすぎると、たとえばスペインなどは国債買い取りの要請をためらうだろう。第2にユーロ各国は、ESMの設立を急がねばならない。

ところがドイツは、これまでも援助を受ける国の財政再建策については厳しい姿勢をとり続けてきた。またESMの設立についても、国内には強い反対論がある。ドイツの税金でESMを創るのは憲法違反だという提訴を受けて、ドイツ憲法裁判所はあす12日に判決を下す予定。仮に合憲の判決が出ても、ドイツ政府がすんなりとESMの創設に手を貸すかどうかは疑わしい。いずれにしても、ドイツがすべてのカギを握っている。


    ≪10日の日経平均 = 下げ -2.28円≫

    ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ

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背水の金融緩和へ / アメリカ
2012-09-12-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 量的緩和に踏み切る公算 = アメリカ労働省が発表した8月の雇用統計は、きわめて不満足な内容だった。失業率は8.1%で前月を0.2ポイント下回ったが、これは景気の悪化で求職者が減少したため。最も注目された非農業雇用者数は9万6000人しか増えなかった。人口増加が続いているアメリカでは、月平均15万人以上の雇用増加がないと失業者が増えるとみられている。

こうした雇用情勢の改善の遅れは、アメリカの景気回復力が弱まっていることを示している。このためニューヨーク市場では、FRBがさらなる金融緩和に踏み切るだろうという期待が急速に高まった。取りざたされている追加の政策手段は、超低金利政策を現行の「14年末まで」から「15年末」に延長する。あるいは国債や住宅担保ローン証券の購入を増やすの2通り。

折しも大統領選挙戦は終盤に入り、雇用の問題が大きな争点に浮き上がってきた。FRBとしては、緩和に踏み切れば現職のオバマ大統領を応援したと非難されるかもしれない。このため国債などの買い入れ増加は見送り、超低利金融政策の1年延長にとどめるのではないかという見方も強まっている。また買い入れ増加まで実施してしまうと、FRBに残される緩和の手段はほとんどなくなってしまう。

だが一方で、いわゆる“財政の崖”が現実の問題として目前に迫ってきた。来年1月から大型減税などの期限切れで、実質的に6000億ドルの増税になってしまう問題である。議会が機能を停止しているから、その解決はかなり難しい。FRBはこうした状況を勘案して、国債などの購入増加を決断するのではないだろうか。その決定は12-13日のFOMC(公開市場委員会)で下される。


    ≪11日の日経平均 = 下げ -61.99円≫

    ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ

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景気は上がる? 下がる? / 2つの予測調査
2012-09-13-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ どちらが当たるのか? = 内閣府が実施した2つの景気予測調査。1つは10月以降、景気は緩やかに上昇するという見通しに。もう1つは、逆に下降するという予測になった。ほぼ同時に発表された2つの調査結果。調査のやり方が違うと言ってしまえばそれまでだが、一般人はどちらを信頼したらいいのだろうか。

内閣府と財務省は11日、共同で実施した7-9月期の法人企業景気予測調査を発表した。全国の企業を対象に、「上昇」と答えた企業の割合から「下降」と答えた企業の割合を引いて指数化している。この調査のなかの「国内の景況」について聞いた結果をみると、7-9月期はマイナス1.0で前期より「下降する」という判断。しかし10-12月期はプラス1.2、来年1-3月期はプラス2.8で、景気は緩やかに上昇する形を描いている。

その前日の10日、内閣府は8月の景気ウォッチャー調査を発表した。こちらの方はスーパーの店員やタクシーの運転手などを対象に集計、いわば街角の景気調査だ。その結果は、現状判断が前月よりも0.6ポイント悪化した。さらに2-3か月先を予測する指数も1.3ポイント低下した。景気はゆっくりと下降する見通しとなっている。

法人企業調査は1万社を超える企業が対象で、文書で回答を集めている。一方、ウォッチャーの方は2000人ほどの個人を対象にした聞き取り調査。なんとなく企業調査の方がしっかりしているようにも思われるのだが、どうも景気が上昇する根拠がよく判らない。海外の情勢や国内の状況から判断すると、今回はウォッチャー調査に軍配を上げたい。


    ≪12日の日経平均 = 上げ +152.58円≫

    ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ

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関門を突破 : 南ヨーロッパ支援対策
2012-09-14-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ ESMの創設が本決まり = ドイツ憲法裁判所は12日「ESM(ヨーロッパ安定メカニズム)への参加は合憲」という判断を下した。これによってドイツはESMへの出資が可能になり、ESMは10月8日にも創立総会を開く段取りとなった。ユーロ圏による南ヨーロッパ諸国を支援するための体制が、ようやく整うことになる。

ESMというのは、資金繰りが困難になった国を救済するための常設的な金融機構。支援ワクは7000億ユーロ、そのうちの1900億ユーロをドイツが拠出する。しかしドイツ国内で「ドイツ国民の税金を南の支援に使うのは憲法違反」との訴訟が起こり、政府も裁判所の判決待ちで動きがとれなかった。

すでにECB(ヨーロッパ中央銀行)は、財政難に陥った国がESMの支援を仰ぐことを条件に、その国の国債を購入することを決めている。したがってギリシャやスペインがESMから資金援助を受け、ECBに国債を買い取ってもらえば、ユーロ圏の財政・金融不安にも、やっと解決の道筋が明瞭に示されることになる。

ところが最後に難関が1つ残っている。ESMの支援にしてもECBの国債購入にしても、援助される国が厳しい財政再建策を実行することを条件にしている点だ。厳しい再建策の実行は、その国の政権を崩壊させかねない。その一方で再建策の緩和を認めると、こんどはドイツなど支援する側の国民が収まらない。両者の調和点をどこに求めるかが、政治的にもきわめて難しい次の難関になる。


    ≪13日の日経平均 = 上げ +35.19円≫

    ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑦
2012-09-15-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 学校 : 私立の耐震化率は72.5% = 公立小中学校の耐震化率は84.8%になったが、ほかにも幼稚園・高校・特別支援学校・専門学校・大学など、さまざまな学校がある。また私立の学校も多い。文部科学省の調査によると、昨年4月時点で私立の幼稚園から高校までの耐震化率は72.5%にとどまっている。

建物の耐震化工事は終えても、天井や照明器具、窓ガラスなどに対策を講じていない例も多い。文科省の調査によると、公立小中学校で対策を終えたのは32.0%。点検もしていない学校が52.5%あった。費用や人手の不足が最大の理由になっている。

それでも東日本大地震をきっかけに、耐震化に対する学校や自治体の関心は急速に高まった。公立小中学校の耐震化率が全国で最低だった広島県は、27年度までとのんびり考えていた県立学校の耐震化完了を15年度に繰り上げることにした。また北九州市も、15年度に90%実施としていた目標を100%に修正している。

ことし5月現在で、幼稚園から高校までに通う子どもは1544万人いる。これら子どもたちの一部でも、震度6強の地震で倒壊するような建物で勉強させてはならない。学校が避難所としての機能を持てば、周辺の住民も安心感が増す。教員や保護者がもっと関心を高めれば、学校の完全耐震化は早く進捗するだろう。財源もひねり出せるはずだ。


                               (続きは来週サタデー)

    ≪14日の日経平均 = 上げ +164.24円≫

    【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-09-16-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑦

◇ 余裕がなくなった財政支出 = 政府が支出するおカネは、予算を見ればわかります。たとえば12年度(12年4月-13年3月)の予算は、総額で90兆円あまり。前年度の予算に比べて、2兆円減っています。これは大震災の復興費用を別に計上したため、通常の予算を節約しました。

個人や会社、あるいは外国人によるおカネの使い方が鈍ると、景気が悪くなることはもう勉強しましたね。そんなときには、政府がうんとおカネを使えば景気はよくなるはず。というわけで、かつては景気が悪くなると政府が公共事業を増やしたり、減税を実施して景気を持ち上げようとしたのです。

ところが最近は高齢化が進んで社会福祉関係の支出がふくらんだため、国の財政は大赤字の状態。このため景気対策としてのおカネを増やすことがむずかしくなっています。12年度の予算を前年度より減らしたのもこのためで、復興関係を除けば、政府の支出が景気を押し上げる力はまったくないと言ってもいいでしょう。

ただ景気が悪くなってくると、財政状態が苦しいからとばかりも言っていられません。そういうときに、政府は補正(ほせい)予算といって、年度の途中に予算を追加します。こうして景気の回復を図るわけですが、財政状態はそれだけ悪化してしまいます。

                                                 
                                  (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-09-18-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 好材料が出揃う = 中国が1兆元規模の景気対策、EUではESM(ヨーロッパ安定メカニズム)の創設が本決まり、そしてアメリカで金融の量的緩和。好材料の3連発で、株価は世界的に大きく上昇した。ダウ平均は先週287ドルの値上がり。4年9か月ぶりの水準を取り戻している。日経平均も288円の値上がり。9100円台を回復した。

今週もその余韻は残りそうだ。だが余韻が薄れると、市場の関心は実体経済の動きに集中する。特に企業の収益見通しが重要視されるだろう。好材料が出揃ったことは、出尽くしたことでもある。景気対策や金融緩和の効果が現れて、中国やアメリカの経済見通しが少しでも好転するかどうか。

東京市場については、アメリカの金融緩和で円の対ドル相場がどこまで上昇するか。国内の政治動向。さらに尖閣諸島をめぐる日中間の緊張などからも目を離せない。市場では、円高を防ぐために日銀が新しい措置を講じる期待も高まっている。しかし今週18-19日の金融政策決定会合で、日銀が何らかの対策を打ち出す可能性は小さいだろう。

今週は20日に、8月の貿易統計と7月の全産業活動指数が発表になる。また18-19日は日銀の金融政策決定会合。19日には日航が東証1部に再上場する。21日は民主党の代表選挙。アメリカでは19日に、8月の新築住宅着工と中古住宅販売。20日に、コンファレンスボードによる8月の景気先行指数が発表される。


    ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ

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古典的な 景気対策 / 中国
2012-09-19-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 障害は不動産バブル = 中国政府は総額1兆元(約12兆円)の公共投資を実行する。景気のこれ以上の悪化を防ぐことが目的だ。しかし国内では不動産バブルが再燃し始めており、金融はもう緩和できない。そこで財政支出という古典的手段で景気を刺激しようというわけだが、問題は不動産バブルを加速せずに内需を増やせるのかどうかである。

中国は激しい物価上昇を抑えるため、09年から厳しい金融引き締めを実施した。この効果が現れて、最近の消費者物価は前年比2%の上昇にまで沈静している。ところがEUの不況などで輸出が激減、引き締めと重なって景気が予想以上に悪化してしまった。このため、ことし春からは金融緩和政策に転換したが、全国的に不動産に対する投資熱だけは収まらない。

たとえば4-6月期のGDP成長率は8.9%で、3年3か月ぶりの低い伸びに。8月の鋼材生産量は前年比1.4%増、発電量は2.7%増というように低成長に陥っている。その一方で、都市部の住宅価格は8月の統計でみると、70都市のうち36都市で上昇。北京の宅地は1平方㍍=4万元(約48万円)の過去最高値で取り引きされた。

今回の景気対策は、地方自治体が鉄道、港湾、高速道路などのインフラ建設を促進する形で実施される。したがって鉄鋼やセメントなどの需要増につながり、景気の底上げには効果があると思われる。だが、その副次効果として不動産バブルを加速させてしまう心配はないのだろうか。いちばん心配しているのは、共産党の幹部だろう。


    ≪18日の日経平均 = 下げ -35.62円≫

    ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ

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もの足りない 高齢人口調査
2012-09-20-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 5万人を超えた100歳以上 = 「敬老の日」にちなんで、高齢者人口に関する2つの調査が発表された。1つは総務省による9月15日時点の推計人口。それによると、65歳以上の人口は3074万人で、初めて3000万人台に達した。1年前に比べて102万人も増えたが、これは団塊の世代のうち1947年生まれの人たちが65歳になりつつあるため。

総人口に占める65歳以上の人の割合は24.1%に。ほぼ4人に1人が高齢者というわけだ。男女別にみると、男性が1315万人。女性が1759万人で、その差は444万人もある。また75歳以上の人は1517万人、85歳以上の人は430万人となった。75歳以上は前年に比べて48万人、85歳以上は24万人増えている。

もう1つの調査は、厚生労働省が集計した100歳以上の人口。それによると、9月15日時点で100歳を超えた人は5万1376人。前年より3620人増えて、初めて5万人を超えた。女性が4万4842人で圧倒的に多く、男性は6534人にとどまっている。人口10万人当たりでみると、第1位は高知県の78.5人。全国平均の2倍に近い。最下位は埼玉県の23.09人だった。

こうした調査は、毎年この時期にきちんと行われている。それはそれで結構だが、内容的には全く進歩がない。たとえば100歳以上の分布率が、高知県と埼玉県で3倍以上も違うのはなぜなのか。また65歳以上の人たちで、介護の必要もなく自立している人たちは何人ぐらいいるのか。調査の手をそこまで広げれば、各方面で調査の結果を活用できるのではないだろうか。


    ≪19日の日経平均 = 上げ +108.44円≫

    ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ

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「原発ゼロ」への反応 : 朝日vs読売
2012-09-21-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 全く対照的な論調 = 政府のエネルギー環境会議は先週14日「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という目標を設定した。具体的には①40年運転規制を厳格に適用②規制委員会が安全を確認した原発のみ再稼働③新設・増設は不可――などの原則を打ち出している。いわゆる「原発ゼロ」戦略だ。

この戦略に対して、朝日新聞は15日の社説(東京版)で「原発ゼロを確かなものに」と題して、賛成のエールを贈った。そのなかで「原発が抱える問題の大きさを多くの人が深刻に受け止めていることを踏まえての決断」だと評価。そこへの道は「簡単ではないが、努力と工夫を重ね、脱原発の道筋を確かなものにしよう」と結んでいる。

片や、同じ日の読売新聞の社説。見出しからして「『原発ゼロ』は戦略に値しない」と全否定した。なかでは「原発の代替電源を確保する方策の中身も詰めずに、約20年先の『原発ゼロ』だけを決めるのは乱暴だ」と主張。さらに「次期衆院選を前に『脱原発』の旗印を鮮明にした方が民主党に有利になる、と計算したに過ぎないのではないか」と手厳しい。

努力を重ねて理想を追求するか、それとも現実を重視するか。多くの国民の考え方も、その間で揺れ動いているのだろう。ところが反響の大きさに驚いた政府は、戦略の閣議決定を実にあっさりと諦めてしまった。これで、この戦略の重みは散逸した。朝日や読売だけでなく、国民も拍子抜け?


    ≪20日の日経平均 = 下げ -145.23円≫

    ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑧
2012-09-22-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 病院 : 意外に低い耐震化率 = 厚生労働省が最近まとめた集計によると、病院の耐震化率は10年10月時点で56.7%にすぎなかった。しかも前年より0.5ポイントしか改善していない。調査の対象は全国の8690病院。このうち回答があった8541病院で、すべての建物に耐震性があるのは4846病院。すべての建物に耐震性がない病院は279、不明な病院は875もあった。

このうち、地震が発生したときに医療拠点となる病院と救急救命センターは630か所。すべての建物に耐震性がある病院は417で、耐震化率は66.2%だった。驚くべきことは、すべての建物に耐震性がない病院が7、不明が3もあること。建物の一部だけ耐震性があるケースを含めると、震度6強の地震で倒壊の恐れがある建物は64か所にのぼった。

災害時に救援活動の拠点となるべき病院でさえ、まだこうした状態にある。これでは入院患者も、安心して療養できない。政府は国公立病院を中心に、特例交付金などによる補助で耐震化を進めようとしている。だが実態はなかなか改善されない。たとえば災害拠点病院の耐震化率は、09年から10年にかけて3.8ポイントしか上昇しなかった。

病院の耐震化が進まないのは、費用の問題だけではない。工事中に入院患者をどこに移すか。建て替えが必要な場合にも、臨時で診療する場所が見つからないなど、病院に特有の問題が付いて回る。政府や地方自治体は、こうした問題を解決するために広域的な連携体制を構築するなど、新しい政策を考える必要がある。


                               (続きは来週サタデー)

    ≪21日の日経平均 = 上げ +23.02円≫

    【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-09-23-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑧

◇ モノの生産量と景気 = 日本は、世界でもトップクラスの工業国です。自動車や家電製品、カメラや食料品・・・。実にたくさんのモノを作っています。これらのモノの生産高を調べた経済指標が、鉱工業生産の統計。景気がよくてモノが売れれば、生産は増えますね。逆に景気が悪くモノが売れないと、生産は減ってしまいます。だから生産の動きを見れば、景気の状態がわかるのです。

この統計は、経済産業省という役所が毎月、500品目近くの製品について調べています。その結果は、05年を100とする指数の形で発表されます。たとえば12年7月の場合は、この指数が91.7となりました。つまり7月の生産水準は、05年の年間平均より8.3%低かったことになります。

また、この水準は前月より1.0%低下しています。これは6月から7月にかけて、国内でモノの売れ行きが鈍ったうえに、輸出も伸び悩み状態になってきたためです。こうした生産統計からみるかぎり、いまの景気は長期的にみても短期的にみても、あまりよくないと言えるでしょう。

もっとも生産高はいちど減ると、次の月にはその反動で増えることがよくあります。このため景気の状態を知るためには、3か月間とか6か月間に生産の水準がどう変わったかを見る必要があります。なお、この統計は「鉱工業生産指数」と呼ばれていますが、この「鉱」はむかし石炭などの生産が盛んだったころの名残り。いまは「工業生産指数」と考えていいでしょう。
                                 

                               (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-09-24-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 株式市場はひと休み = 待望の量的金融緩和が実施されて、ニューヨーク市場は当面の目標を見失った。ダウ平均は小幅の変動に終始し、週間では14ドルの値下がり。4年9か月ぶりの高値圏に入っただけに、利益確定売りも目立つ。こうしたなかで、ナスダック市場でアップルの高値更新だけが際立っていた。

いわば株式市場はひと休みの形だが、今週は強気に動くのか弱気に落ち込むのか。FRBの金融緩和で住宅ローン担保証券が買い入れられることもあって、このところ明るさが出てきた住宅関連に注目が集まる可能性はある。その一方、またまたスペインの国債が売られる危険性もある。

日経平均は先週49円の値下がり。日銀の金融緩和で買われたものの、すぐに売られてしまった。こちらも9200円に接近すると、利益確定売りがどっと出てくる。円相場も再びもとの円高水準に戻ってしまった。FRBの金融緩和はある程度の影響力を維持したが、日銀の政策はほとんど効果がなかったと言えるだろう。

今週は25日に、8月の企業向けサービス価格。28日に、8月の鉱工業生産、消費者物価、雇用統計、家計調査が発表される。26日には自民党総裁選挙。アメリカでは25日に、7月のSPケースシラー住宅価格とコンファレンスボードによる9月の消費者信頼感指数。26日に、8月の新築住宅販売。27日に、4-6月期のGDP確定値。28日に、ミシガン大学の9月・消費者信頼感指数が発表になる。


    ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ

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だれのための 金融緩和か (上)
2012-09-25-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 景気浮揚の効果なし = 日銀は先週19日、量的金融緩和の拡大を決定した。資産買い入れ基金の総額を70兆円から80兆円に増やす、というのがその内容。増えた10兆円で、市場から国債を買い取る方針だ。事前の予想は5兆円の増額だったから、安住財務相は「サプライズだ」と称賛。日経平均は100円以上も値上がりし、円相場は大きく下落した。

ところが明くる20日に株価は145円の反落、円相場も上昇してしまった。市場が政策の効果に疑問を持ったからである。じっさい、市中には資金がダブ付いている。ここで国債の買い入れを増やし市中におカネをバラ撒いても、企業の設備投資や在庫投資が増える環境ではない。

日銀が量的緩和の拡大を決定したのは、国内景気の動向に不安感が生じたためである。特にアメリカが3度目の金融緩和に踏み切り、これが円相場の上昇につながると懸念した。したがって今回の量的緩和で円相場が下落し、それを好感して株価が上昇すれば、政策は成功だったと評価されただろう。

しかし結果から見て、円相場や株価に対する効果は“1日限り”に終わった。資金需要を増やす効果もない。10兆円の量的緩和は、少なくとも景気浮揚という観点から言う限り、効果はなかったと断定せざるをえない。ただ今回の量的緩和によって、副次的に大きな利益を得るものがいる。それは財務省と銀行だ。


                                     (続きは明日)

    ≪24日の日経平均 = 下げ -40.71円≫

    ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ

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だれのための 金融緩和か (下)
2012-09-26-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 国債の売買で巨額の利益 = 日銀は10兆円の国債買い入れを、来年末までに実行する予定。すでに日銀はことし6月末時点で96兆円の国債を保有しているから、来年末時点では少なくとも106兆円の国債を保有することになる。日本の国債発行額は11年度、12年度ともに44兆円。比べてみれば、その大きさは異常と言えるほどだ。

この日銀の買い支えによって、日本の国債は市場価格が下がらない。利回りは0.8%程度の低い水準に抑えられている。こうした状況をみて外国人投資家の買い入れも増え、6月末の海外保有残高は82兆円。前年比20%も増加した。財務省にとっては低い利率で国債を発行できるから、日銀さまさまということになる。

日銀が市場から国債を買い入れる場合、売り手となるのはほとんどが金融機関だ。少しでも価格が下がったとき大量に買い込んでおけば、日銀が価格を上げたうえに買い取ってくれる。年利0.025%の定期預金を原資に国債を売買すれば、巨額の利益をあげられる。金融庁によると、12年3月期決算で主要行の純利益は1兆7500億円。そのうち国債の売買益は6900億円もあった。

実は日銀による国債の直接買い取りは、財政法第5条によって厳しく禁じられている。最近の買い入れは市場経由なので、“直接”ではない。しかし実質的には同じことだ。日銀がそこまでして国債を買う理由は、景気浮揚は単なる口実。初めから財務省の支援にあったのではないか。銀行はそこに寄生して甘い汁を吸っている?


    ≪25日の日経平均 = 上げ +22.25円≫

    ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ

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ひっそりと 環境新税 : 10月スタート
2012-09-27-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 家庭の負担は年1200円程度 = 10月1日から、地球温暖化対策税が導入される。この環境税は既存の石油石炭税に上乗せされる形で実施されるが、新しい法律によって作られた新税だ。税率は16年4月まで3段階に分けて引き上げられ、最終的な税収は2623億円。つまり、それだけの増税ということになる。

すべての化石燃料にかけられる新税は、原油やLNG(液化天然ガス)の輸入業者が納入する。輸入業者はこの増税分を卸売り業者に転嫁するが、問題はそのあと値上げ分をだれが負担するかだ。たとえばガソリンの場合、10月からの増税分は1㍑当たり0.25円。街のガソリン・スタンドは1円刻みの価格表示で売っているために、消費者への転嫁は困難だ。もし転嫁できなければ、スタンドの利益は年間143億円減少する。

ところが電力会社やガス会社は、消費者に転嫁する方向だ。東京電力などは、すでに9月からの料金値上げに織り込み済み。他の電力会社やガス会社も、近く値上げする方針だといわれる。東電の場合、標準家庭で月14.5円の負担になるという。

メーカーの負担は大きい。化学業界は最終的に年130億円、鉄鋼業界は100億円の負担になる。これらのコスト増が消費者にどこまで転嫁されるかは、まだ判らない。しかし環境省では、標準家庭で最終的には年1200円程度の支出増加になると試算している。それにしても大事故を起こした東電が、真っ先に消費者へ転嫁したことには引っ掛かるなあ。


    ≪26日の日経平均 = 下げ -184.84円≫

    ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ

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首すくめる 日銀 : 安部氏の登場で
2012-09-28-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 最強の金融緩和論者 = 安部晋三元首相が、自民党の総裁に返り咲いた。父君の故晋太郎氏とともに名前に頂く“晋”は、高杉晋作に由来したものと言われる。一見すると温和そうだが、言い出したら聞かないタカ派。その安部新総栽の持論の1つが、日銀による徹底的な金融緩和だ。

安部氏の経済哲学は、常に経済成長に重点を置いている。たとえば消費増税についても、デフレが解消しなければ実施すべきでないというのが持論。このデフレ解消のためには、日銀がもっと積極的に金融緩和を推進する必要があるという主張になる。日銀が決断しなければ「日銀法を改正することも辞さない」と公言してはばからない。

日銀としては、金利はゼロにまで引き下げた。量的緩和も資産買い入れ基金を設けて、国債などの債券を目いっぱい買っている。これ以上の買い入れは、日銀に対する信用の低下を招きかねない。だが日銀法を改正されて、政府に命令権のようなものが与えられるのはもっと困る。

安部氏が次期首相と決まったわけではない。だが、その公算は大きい。野党のままだとしても、国会での追求は厳しさを増すと覚悟しなければならない。この最強とも言える金融緩和論者の登場に、どう対処したらいいのか。白川総栽はじめ日銀の幹部は、頭を痛めているに違いない。


    ≪27日の日経平均 = 上げ +43.17円≫

    ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑨
2012-09-29-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 水道管 :3万8000㌔㍍が老朽化 = 国土交通省によると、上水道の総延長は末端の排水管までを含めると約56万㌔㍍に達する。普及率は全国平均で97.5%だから、ほぼ完全に近い。ちなみに100%普及しているのは、東京・大阪・沖縄の3都府県だけ。他のインフラと同様に上水道の整備も1970年代に進んだので、老朽化も急速に進行する見通しだ。

日本水道協会の調査によると、全国の水道管のうち3万8000㌔㍍が法定耐用年数の40年を超えている。このため最近は漏水や道路を破壊する事故も増えてきた。大規模な漏水事故は、年間20か所以上で発生しているという。しかし多くの地方自治体は財政難で、十分な手当てができない。

このままだと10年後には2割、20年後には4割の水道管が耐用年数を超えてしまう。だが現状では、新しい水道管への更新率は年間1%程度にすぎない。今後20年間で2割を更新したとしても、全体の2割に当たる約11万㌔㍍の管路が老朽化してしまう計算だ。

アメリカでは水道管の老朽化が、以前から社会問題になっている。09年には全米で20万回を超える漏水を記録した。日本も同じ道を歩む公算が大きい。それを防ぐには、毎年7500億円の投資が必要だという試算もある。水道料金の値上げをせずに、そのおカネをひねり出す方策はあるのだろうか。


                                (続きは来週サタデー)

    ≪28日の日経平均 = 下げ -79.71円≫

    【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-09-30-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑨

◇ 個人と景気の関係 = 個人が使うおカネは、人びとの収入や働く人の数と大きな関係があります。このうち個人の収入は、会社からもらう給料、銀行預金の利子や株式の配当、家を貸している場合に入ってくる家賃収入、年金など・・・。これらの収入が増えると、人びとはおカネをたくさん使うようになるのです。

家庭の支出を調べている統計に、家計調査というのがありましたね。じつは、この家計調査では家庭の収入もいっしょに調べています。たとえば12年7月の調査では、サラリーマン世帯の平均収入は55万7000円。前年の7月に比べると2.7%減っています。

また働く人のことを調べている統計は、労働力調査と言います。これも12年7月の結果でみると、職について働いている人の数は6277万人。1年前に比べると9万人減っています。また働きたいけれども仕事が見つからない人、つまり失業者の数は288万人でした。

働いている人の数が増えたり、1家庭あたりの収入が増加すれば、個人が全体として受け取るおカネも増えますね。そういうときには、個人が使うおカネも増えるので、景気はよくなります。12年7月の場合は収入が減ったうえに、働く人の数も減ってしまいました。この結果からみても、景気の状態はあまりよくないと言えるでしょう。
                                
                                  (続きは来週日曜日)

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