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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
生産の「持ち直し」は 持続するのか
2011-03-01-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 原油価格の動向がカギ = 経済産業省は28日、1月の鉱工業生産指数を発表した。それによると、1月の生産は前月比2.4%の増加。これで3か月連続の増加となった。出荷は1.1%の増加、在庫は4.7%増加した。この結果を見て経済産業省は「生産は持ち直しの動きで推移している」という判断を変えていない。

生産が増加した原因は、自動車や鉄鋼の輸出が大幅に伸びたこと。輸送機械工業の生産は前月比7.5%、鉄鋼業は5.6%の増加だった。一般機械工業も4.6%増加したが、特に半導体製造装置は26.4%も伸びた。これもヨーロッパや台湾向けの輸出増が貢献している。その一方、液晶テレビの生産が激減したため、情報通信機械工業の生産は9.0%減少した。

予測調査をみると、2月は0.1%、3月も1.9%増加する見通しになっている。この予測通りになれば、1-3月期の生産指数は98前後にまで上昇するはずだ。この水準はリーマン・ショックで生産が落ち込み始めた08年秋ごろの水準に匹敵する。だが本当にそこまで戻るのかどうか。

カギは原油価格の動向にあるだろう。原油価格がさらに上昇すると、企業のコスト高は避けられない。国内の需要も圧迫される。海外諸国の景気が伸び悩むことになれば、日本の輸出も頭打ちになる。1月の生産統計をみても明らかなように、いまの生産増加を支えているのは輸出。その輸出が鈍化すれば、経済産業省の「持ち直しの動き」という判断は崩れることになってしまう。


    ≪28日の日経平均 = 上げ +97.33円≫

    ≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ

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国勢調査から 読み取れること (上)
2011-03-02-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ まだ人口減少の影響はない = 総務省が発表した昨年10月1日時点の国勢調査。まず外国人を含む日本の総人口は1億2805万6000人で、5年前の調査に比べて28万8000人とわずかに増加した。外国人の居住者が増えた影響が大きく、日本人の人口は07年から少しずつ減り始めている。たとえば日本人の昨年の自然減は12万人だった。

この日本人の自然減は、今後しだいに増大して行く。したがって日本経済の将来にとって、この問題が大きな影を投げかけていることに間違いはない。ただ最近は、この将来の問題と現在の状況を混同した議論が多く聞かれる。国会の質疑を聞いていても「人口の減少が不景気の原因」といった趣旨の発言が少なくない。

だが日本の総人口は5年前と変わっていない。人口が増加すれば経済にプラスなことは当然だが、減少していなければマイナス要因にはならない。しかし05年の名目GDPが501兆7000億円だったのに対して、10年のそれは479兆2000億円に縮小した。もちろん、この間にはリーマン・ショックもあったが、経済の委縮は歴代政府の経済政策にかなりの責任があるのではないだろうか。人口減に責任を転嫁するのはおかしい。

人口は減らなかったが、そのなかで地域間の格差が拡大したことは大問題だ。人口が増加したのは、東京、神奈川、千葉など9都府県だけ。あとの38道府県では、すべて減少した。市町村別にみても、全体の76%に当たる1321団体で減少。10%以上も減った市町村が150団体もあった。地方がもっと個人や法人を誘致できるような地方分権を、早急に実施する必要がある。


    ≪1日の日経平均 = 上げ +129.94円≫

    ≪2日の日経平均は? 予想 = 下げ

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国勢調査から 読み取れること (下)
2011-03-03-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 世帯平均人数は減る一方 = 日本の世帯数は5195万世帯だった。5年前に比べて4.8%増加し、はじめて5000万を超えている。人口は変わらないのに世帯数が増えたから、当然ながら1世帯当たりの平均人数は減ってしまう。全国平均は1世帯当たり2.46人で、これまでの最低になった。

戦後、1世帯当たりの平均人数が最も多かったのは1975年(昭和50年)で、3.32人だった。したがって、ごく大ざっぱに言えば、過去35年間で世帯の人数はほぼ1人減っている。今回の調査で1世帯当たりの人数が最も多かったのは山形県で3.01人。あとは福井県、佐賀県と続く。少ないのは東京都の2.06人を筆頭に、北海道、大阪府の順。

世帯の人数が減少したのは、若い人の晩婚化とお年寄りの一人暮らしで単身世帯数が増加したためだと思われる。人口が最も増えた東京都の世帯人数がいちばん少ないのは、単身世帯数の増加を反映している。総人口の減少よりは、こうした地域格差と単身世帯増の問題に対処する方が先だろう。

もう1つは経済問題ではないが、今回の調査で衆参両院での選挙区別人口が確定した。総務省の試算によると、衆院小選挙区では最も多い千葉4区と最も少ない高知3区の間で1票の格差が2.524倍。参院選挙区では格差が最大で5.126倍となった。区割りの見直しは急がなければならない。


    ≪2日の日経平均 = 下げ -261.65円≫

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小麦の値上げは、物価高のサイン
2011-03-04-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 3年前と酷似した状況 = 農林水産省は製粉会社などに売り渡す小麦の価格を、4月1日から平均18%引き上げると発表した。日本の輸入小麦は政府が商社などを通じて全量を買い付け、農業補助の費用を上乗せした価格で売り渡す仕組み。国際価格の変動に合わせて、毎年4月と10月に売り渡し価格を改定する。

今回も国際価格の急騰を受けて値上げするが、状況は3年前ときわめてよく似ている。08年2月、農林水産省はやはり4月からの30%値上げを発表した。その後も国際価格は高騰を続けたため、10月にはさらに8%値上げしている。この結果、08年はパンやパスタ、うどんなどの小売り価格が上昇。ちょっとした騒ぎを惹き起したことは記憶に新しい。

現在と同じように、当時も原油や鉄鋼、非鉄金属のほか大豆やトウモロコシなど食料品の国際価格が高騰した。ところが国内メーカーは競争が激しく、十分な価格転嫁ができない。そうしたなかで小麦製品だけは「政府が卸し値を上げた」という理由で、小売り価格の引き上げに走った感じが強い。結局、食料品の消費者物価は08年中に3.6%上昇している。

だが当時の物価上昇は、リーマン不況によって遮断された。今回はどうなるのだろう。不測の事態を別とすれば、考えられる道筋は2つ。まずは原油価格がさらに高騰して各国の景気が悪化、需要の減退で物価が下がるケース。もう1つは国際価格が高騰を続けたあげく、バブルがはじけるケース。いずれにしても有難くない話だが、小麦の値上げはその警戒信号だと考えておいた方がよさそうだ。


    ≪3日の日経平均 = 上げ +93.64円≫

    ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- TPP の基礎知識 ⑤
2011-03-05-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 弱い農業がアキレス腱に = FTA(自由貿易協定)を結んで工業製品の輸入関税が撤廃されれば、競争力のある日本の製品は輸出しやすくなる。だが同時に農業産品の関税が軽減されると、日本の農業は壊滅してしまうかもしれない。この点が心配で、日本は最近までFTAの締結に積極的ではなかった。これまでに結んだFTAの相手国は、いずれも農業産品の強力な輸出国ではない。

たしかに日本の農業は、国際的にみてかなり見劣りする。この50年間、耕地面積は減り続け、産出額も減った。農家1戸当たりの平均耕作面積は2.2ヘクタールで、アメリカの38分の1。生産性が極端に低いうえに、農業従事者の高齢化も進んだ。主として農業で収入を得ている基幹的農業従事者の平均年齢は、07年で64.6歳。アメリカの57.1歳、ドイツの48.8歳に比べると、際立って高い。

農畜産物の輸入関税を軽減すると、アメリカやカナダ、オーストラリアといった農業先進国からの輸入が急増することは明らかだ。だから、これまではこれらの国々とFTAを結ぶことは敬遠してきたが、TPPにはこれらの国々も参加する。農業産品だけは勘弁してほしいと言うわけにはいかない。

TPPに参加しなければ、安い農畜産物が大量に入ってくることは避けられる。その代わりに、TPP参加国間で工業製品の関税撤廃が行われても、日本はその恩恵に浴することができない。菅首相はTPPを“黒船”に見立てて、これを機に「平成の開国」をして農業も強くする方針を打ち出した。しかし反対の「攘夷派」も多く、議論はなかなか収斂しそうにない。

☆日本の農業については、昨年7-9月の毎週日曜日に連載した「農業の問題って、なんだろう?」を参照してください。


                          (続きは来週サタデー)

    ≪4日の日経平均 = 上げ +107.64円≫

    【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】  

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2011-03-06-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第2章 おカネって、なんだろう? ①

◇ おカネを作りたい = 南の島に流れ着いた4人のお話は、まだ続きます。4人はおたがいに助け合い、魚やけものの肉などをとりかえっこして、生活していました。このようにモノとモノとをとりかえっこすることを、物々交換というのでした。

魚3尾とウサギ1羽なら、交換は簡単です。ところが野菜やくだもの、さらに四郎さんの大工仕事まで交換するとなると、なかなか大変です。くだもの5個と魚1尾、野菜3たばと魚1尾を、とりかえっこすることにしていました。するとウサギ1羽で、くだものは15個。では野菜は? ああ、ややこしい。

そこで4人は取り引きを簡単にするため、おカネを作ろうということになりました。しかし南の島では、紙がないのでお札は作れません。金属もないので、コインもできません。すぐ手に入る木の葉っぱや石ころでは、おカネの役に立ちません。

4人は困ってしまいました。そのとき太郎さんが突然「いい考えがある」と言って、海にもぐりました。しばらくして太郎さんは、青く光る美しい貝がらを手に戻ってきました。太郎さんは、海の底に青い貝がらが沈んでいたことを思い出したのです。


                          (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2011-03-07-Mon  CATEGORY: 政治・経済
株価の振幅が大きくなった。ダウ平均も日経平均も、先週は大きく上げた日と大きく下げた日が混在した。ダウ平均は結局、週間で39ドルの上昇。日経平均は167円の値上がりだった。振幅の拡大は、好材料と悪材料が入り乱れたため。日米ともに国内経済と企業収益の改善が好材料に、原油価格の上昇が悪材料になった。

こうした傾向は、今週も続きそうだ。したがって、原油価格が大きく上昇すれば悪材料のウェートが増す。株価は原油の動向に左右される度合いが強いだろう。リビア情勢と、反体制活動がサウジアラビアなど重要な産油国に波及するかどうか。相変わらず、目を離せない。

原油の高騰は、物価高に悩む中国経済にも悪影響を及ぼす。先週の全国人民代表大会では、成長目標を従来の7.5%から7.0%に引き下げ、逆に物価の最低上昇率を3%から4%に引き上げた。その中国では今週、2月の物価指数を発表する。どの程度の上昇率になっているのか、きわめて興味深い。

今週は7日に、1月の景気動向指数。8日に、1月の国際収支と2月の景気ウォッチャー調査。9日には、1月の機械受注。10日には、昨年10-12月期のGDP改定値と2月の企業物価が発表になる。アメリカでは10日に1月の貿易統計。11日に、2月の小売り売上高とミシガン大学による3月の消費者信頼感指数。また中国は10日に、2月の貿易統計。11日には、2月の生産者物価、消費者物価、鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資を発表する。


    ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ

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元の切り上げ加速へ : 中国 (上)
2011-03-08-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 物価の抑制が最大の急務に = 中国はいま開催中の全国人民代表大会で、物価の抑制を経済政策の最重要課題とする方針を鮮明にした。温家宝首相は政府活動報告のなかで「今後5年間の成長率目標を7%に引き下げる一方、物価上昇率の許容限度を4%に引き上げる」と発表した。

中国は5か年計画を作って、経済政策を運営している。昨年終わった第11次計画では、成長率目標が7.5%、物価上昇率の限度が3%だった。ところが実際の経済成長率は年平均11.2%を達成したから、ことしから始まる計画では成長率目標を大幅に引き下げたことになる。

その一方で、物価については現在の状況からみて、上昇率を3%前後に下げることは不可能と判断した。その代わり、経済成長をかなり犠牲にしても、物価は4%以下に抑え込もうという強い決意を表明したものと受け取れる。その背景には、最近の物価高に対する国民の不満増大がある。

高い経済成長のもとで、中国のいわゆる経済格差は無視できないほどに膨れ上がった。人口の1割にも達しない富裕層と9割以上を占める低所得層。低所得層のなかでも、都市部の賃金は農村部の3倍を超えるアンバランス。そこへ物価高が押し寄せ、国民の不満は一気に増大した。この不満を解消できないと、共産党政府の存続も危うくなりかねない。政府にとっては、物価の抑制が最大の急務になったわけである。


                                (続きは明日)

    ≪7日の日経平均 = 下げ -188.64円≫

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元の切り上げ加速へ : 中国 (中)
2011-03-09-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 金融引き締めラッシュ = 中国の消費者物価上昇率は昨年7月に前年比3%を超え、11月には5.1%に達した。この間、政府・人民銀行は矢継ぎ早に金融引き締めを断行。昨年は政策金利を2回、預金準備率を7回も引き上げている。だが、ことし1月の消費者物価上昇率は、なお4.9%に高止まり。このため2月には、さらに利上げと預金準備率引き上げを追加した。

特に食料品の値上がりが大きい。1月の統計では前年比10.3%の上昇を記録、これが国民の不満をあおる原因となっている。食料品価格の上昇は干ばつや寒害といった異常気象にもよるが、需要の増大も大きい。また国際商品価格の高騰で、大豆など穀物類の輸入価格が上昇したことも影響した。

物価上昇とともに問題となっているのが、不動産価格の異常な騰貴。大都市やリゾート地の高級住宅やマンションの価格は、1年間で30%以上の値上がりも珍しくない。上海市や重慶市では、中国で初めてとなる不動産保有税を導入する騒ぎとなった。ごく一部の富裕層だけが購入できる超高級住宅、その価格が高騰する状況に、一般庶民が違和感を強めていることは想像に固くない。

不動産騰貴の元凶は海外から流入する投機資金だ、と中国政府は考えている。外資管理局の推計によると、海外からの短期資金流入は、昨年355億ドル(約3兆円)にのぼった。政府は実需を伴わない資金の流入を厳しく規制しているが、それでも網の目をくぐって流入してしまう。さらに元高を抑えるために実施している為替介入で国内に放出される巨額の元資金が、不動産騰貴の大きな原因になっていることは明らかだ。


                                   (続きは明日)

    ≪8日の日経平均 = 上げ +20.17円≫

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元の切り上げ加速へ : 中国 (下)
2011-03-10-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ もう奥の手を使うしかない = 中国政府はあす11日、2月の物価統計を発表する。その結果しだいでは、直ちに金利や準備率の引き上げなど金融引き締めのさらなる強化に動くかもしれない。しかし金融引き締め政策が、限界に近付きつつあることも確かなようだ。内外の金利差が拡大すると、投機資金の流入はますます増大するだろう。

そのうえ金利を上げすぎて景気の悪化を招いたのでは、元も子もない。国民の怒りを増幅することにもなりかねない。中国政府は成長率目標を7%に引き下げたが、このラインは死守しなければならない。このため新5か年計画でも、財政支出の削減は決めなかった。

残る手段は、為替レートの切り上げしかない。元を切り上げれば原材料や食料品の輸入価格が下がり、物価の上昇を抑えられる。その半面、輸出にとっては抑制力が働くから、景気にとってはマイナスになりかねない。しかし1月の輸出は前年比で37.7%も伸びているので、許容量はまだ十分にある。

中国が元の対ドル固定制を改め、管理しながらの切り上げを認めたのは05年7月だった。そのときから現在までに、元は対ドルで3.7%ほど上昇している。だがアメリカの批判に押されて切り上げることは、中国のメンツにもかかわる。したがって超スローにしか、切り上げを認めてこなかった。しかし中国自体が切り上げを必要とする事態に追い込まれた。元の切り上げスピードは速まるにちがいない。


    ≪9日の日経平均 = 上げ +64.31円≫

    ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ

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企業物価 : 大きくなった上昇の足音
2011-03-11-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 大きい円高のメリット = 物価高の足音が大きくなってきた。日銀が10日発表した2月の国内企業物価は、前年比1.7%の上昇。5か月連続の上昇で、その上げ幅も2年3か月ぶりの大きさだった。資源や食料品の値上がりが目立っている。

企業物価というのは、企業同士が出荷や卸売りの段階で取り引きするモノの価格。日銀が約5500品目について毎月調べている。この段階での物価変動は、しばらくしてから消費者物価に波及する場合が多い。今回の調査で値上がりが大きかったのは、非鉄金属、鉄鋼、石油・石炭製品などで、前年比はいずれも2ケタに。また加工食品も3.2%上昇した。

企業物価は、08年秋のリーマン・ショックから下げ基調を続けていた。それが昨年10月から上げ基調に転じ、ことしに入ってからは上げ足をやや速めている。これは中国など新興国の需要増大、アメリカなど先進国の景気回復に加えて、中東・北アフリカの政情不安、さらに投機資金の影響が原因だ。

したがって企業物価のなかでも、輸入物価の値上がりが大きい。2月の統計をみても、輸入物価は前年比で7.6%も上昇している。金属・同製品は30.8%、石油・石炭・天然ガスは13.0%の値上がり。食料品・飼料も11.2%上昇した。この1年間で円の対ドル相場は8.7%上昇したが、仮にこの円高がなければ輸入物価は16%程度の上昇になっているはず。円高のメリットである。


    ≪10日の日経平均 = 下げ -155.12円≫

    ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ

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サタデー自習室 -- TPP の基礎知識 ⑥
2011-03-12-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 決断した韓国が大きく先行 = 韓国はすでにアメリカ、EU(ヨーロッパ連合)とFTAを締結。中国とも交渉を開始する。また南アメリカや南アジア諸国とも、近く協議に入る予定だ。アメリカとのFTAは、95%以上の工業製品消費財の関税を5年以内に撤廃することが柱で、現在はアメリカ議会の批准待ち。ところが日本はアメリカ、EU、中国との間でFTAを締結するメドは全く立っていない。

日本が02年にシンガポールとの間で初めてのFTAを結んだとき、韓国はどこの国ともFTAを締結していなかった。それがこの10年間で形勢逆転。韓国は主要な貿易相手国とのFTA網を、ほとんど張り巡らせてしまった。たとえばEUとの協定が発効すると、韓国が輸出する乗用車や薄型テレビの輸入関税はゼロになるが、日本の輸出にはそれぞれ10%と14%の関税がかかってしまう。

韓国も日本と同様、自動車や電機の輸出が経済を支えている。だが日本より生産性の低い農業が、貿易自由化のアキレス腱だった。しかし韓国政府は、輸出が増大しなければ韓国経済の発展はないと判断。03年に貿易自由化の推進を決断した。そのとき政府は「いつ、どの国とFTAを締結して行くか」の工程表を作成している。

国内では、猛烈な反対論が湧き上がった。農民のデモが続き、抗議の焼身自殺まで起こっている。これに対して政府は全国で200回以上の公聴会を開いて説得する一方、強い農業を育成するため財政支援策を決定。ようやく国民の理解を得ることに成功した。李明博大統領は「45か国とFTAを結び、世界で最も広い市場を有する経済を実現するのだ」と豪語している。


                           (続きは来週サタデー)

    ≪11日の日経平均 = 下げ -179.95円≫

    【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】 

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2011-03-13-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第2章 おカネって、なんだろう? ②

◇ モノの値打ちが決まる = 4人は青く光る美しい貝がらを、おカネとして使うことにしました。青い貝がらを40枚とってきて、1枚1枚にしるしを付け、ひとりが10枚ずつ持つことにしたのです。そして魚は貝がら1枚、ウサギは3枚、野菜は3たばで1枚というふうに決めました。

四郎さんの大工仕事については、仕事の大きさによって貝がら何枚と決めることにしました。つまり物々交換だけではなく、モノとサービスを交換するときにも、おカネが使えるようになったわけです。これでおたがいの取り引きは、ずいぶん楽になりました。魚には貝がら1枚の値打ち、ウサギには3枚の値打ちがあることがはっきりしたからです。

また激しいあらしがやってきました。このため何日も魚がとれません。でも太郎さんは平気でした。青い貝がらを次郎さんや三郎さんのところへ持って行けば、肉や野菜を買うことができるからです。

青い貝がらをおカネにしたことで、いろいろな品物の1つ1つに値段が付きました。これを物価と言います。また魚1尾を貝がら1枚で「売る」ことや、逆に貝がら1枚で「買う」という経済活動が始まったとも言えます。物価や売買の取り引きは、物々交換のときにはなかったことでした。


                            (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2011-03-14-Mon  CATEGORY: 政治・経済
観測史上最大の地震に見舞われた。被害の全貌はまだ明らかでない。だが原子力発電所の損傷も大きい。11日に発生した東日本巨大地震は、近代の先進国が経験したことのない経済的被害をもたらした可能性がある。いま最も重要なことは、復旧に向けて政府が遅滞ない行動をとること。野党も政争を棚上げして、国民のために働くことである。

地震が発生した直後の15分間で、日経平均は100円以上も下げた。その前から中東・北アフリカ情勢や中国経済の減速不安などで下げていたため、週間では結局439円の大幅な値下がり。一方、ダウ平均も週間115ドルの値下がりだったが、地震発生後の11日は60ドル値上がりしている。これは前日228ドルも下げたことの反動によるところが大きい。

ところが同日のニューヨーク市場では、円がドルに対して1円以上も上昇した。地震に驚いた日本人が海外資産を売るだろうという予測、あるいは海外の再保険会社が日本に保険金を支払うために円を買うといった思惑からだというが、今週はどんな展開を見せるのか。

大震災の被害が明らかになるにつれて、株価はどこまで下がるのだろうか。今週の株価は、その程度を予測する材料になる。経済指標は14日に、2月の消費動向調査。16日に、1-3月期の法人企業景気予測調査。17日に、1月の第3次産業活動指数。アメリカでは16日に、2月の住宅着工と生産者物価。17日に、2月の消費者物価と工業生産、それにコンファレンスボードによる2月の景気先行指数が発表になる。


    ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ

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大震災と 株価・円相場 (上)
2011-03-15-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 株価は下げ基調に = マグニチュード9.0という巨大地震。専門家の予測をはるかに超えたエネルギーが東日本の大地を揺さぶり、すさまじい津波を発生させた。その被害はまだ算定できないが、おそらく史上最悪の結果をもたらすだろう。特に原発の損傷による電力の供給不足は、日本経済に大きな傷跡を残しそうだ。

思い起こせば1995年(平成7年)1月17日未明、阪神・淡路大震災が発生した。その前日の日経平均は終り値で1万9331円だった。17日の株価は90円安で、それほど下げてはいない。しかし被害の状況が明らかになるにつれて株価は下落、1週間後には1270円の値下がりとなっている。それから株価は下降局面に入り、再び1万9000円台を回復したのは、その年の12月になってからだった。

2007年(平成19年)7月16日には、新潟県中越地震沖が起きた。このとき直前の株価は1万8239円。あくる17日の株価は22円しか下げていない。だが1週間後は236円、1か月後は2964円安と下落の幅を広げている。それから株価は、やはり下降局面に入ってしまった。

断っておくが、過去2回の災害時と今日とでは、世界経済の情勢も日本経済の状況も全く異なっている。だから株価がこれから下降局面に入るとは断定できない。ただ阪神・淡路の9兆5000億円、新潟県中越沖の1兆5000億円に比べて、今回の被害額ははるかに大きい。放っておけば株は下がる。株が下がれば、景気はもっと悪くなる。政府・日銀は素早く株価対策を実行する必要があると思う。


                                  (続きは明日)

    ≪14日の日経平均 = 下げ -633.94円≫

    ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ

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大震災と 株価・円相場 (下)
2011-03-16-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 円相場は下げ基調に? = 巨大地震のニュースが全世界に伝えられた11日、ニューヨーク外為市場では円の対ドル相場が1円以上も跳ね上がった。大震災に驚いた日本人が、とりあえず海外の資産を売って円に換えるだろうという推測。それに海外の保険会社が日本に保険金を支払うため円資金を手当てするという予想が、円高の原因だったと解説されている。

この流れを受けて、14-15日の東京市場では円高が進んだ。だが過去の経験からすると、円高はしばらくしてから始まっている。まず1995年(平成7年)1月17日に発生した阪神・淡路大震災の場合。当日の円相場は1ドル=98~99円だったが、1月中はほとんど相場は動いていない。また2007年(平成19年)7月16日に起きた新潟県中越沖地震のときも、発生時に122円前後だった相場は7月中あまり動かなかった。

ところが阪神・淡路のケースでは、翌2月から円高が進行。4月19日には79円75銭の史上最高値を記録している。また新潟県中越沖の場合も翌8月にはやや円が上昇して、1か月後には6円程度の円高になった。こうした過去の経験からみるかぎり、少なくとも日本人の海外資産売り説は疑わしい。

経済に大きな被害を蒙った国の通貨は、本来なら売られるはず。それが過去2回の場合、しばらくしてから円高基調になった理由はよく判らない。また当時と今日とでは経済の状態が全く違うから、今回も同様の現象が起きるとは断定できない。むしろ今回は、しばらくして円安基調に進むような気がする。


    ≪15日の日経平均 = 下げ -1015.34円≫

    ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ

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非常事態宣言と 緊急経済対策を! (上)
2011-03-17-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 戦後最大の危機 = 東日本巨大地震は福島原発の壊滅をも惹き起し、日本は戦後最大の危機に陥った。こんなとき菅首相はなぜ非常事態を宣言しないのかと不思議に思っていたが、調べてみて驚いた。日本には「非常事態宣言」を発令するための法律がない。議論はしているが、ミサイルの飛来やテロを念頭に置いているため結論が出ていないのだという。

だが事態はきわめて深刻。菅さん、法律がなければ、総理大臣の権限で「非常事態声明」を出したらいい。仕事が山積するなかで、ヘリを飛ばして現地を視察し「海と陸の境界が判らなくなっている」とアホらしいことを言う。東京電力に乗り込んで、経営幹部を怒鳴りつける。原発の細かい状況をテレビで説明する。そんなパフォーマンスばかりしていないで、「非常事態声明」をもとに具体的な大仕事をすべきではないか。

具体的な大仕事は3つ。第1は、野党とも連携して「救国政治本部」を作ること。自民党や公明党などの野党党首は「11年度予算や災害復旧のための補正予算作りには協力する」と言っているが、さらに一歩を進めて災害復旧、原発への対応、景気対策について、与野党が完全に一致協力できる臨時の政治組織を立ち上げることが何よりも求められる。

第2は、官邸と関係各省と東京電力の責任者を集めて「原発と計画停電に関する最高会議」を作ること。計り知れない放射能の被害と停電による経済的な損失を、民間会社である東京電力に任せっきりではダメだ。「救国政治本部」が監督して、この「最高会議」にすべての決定権を与え、24時間体制で働かせることが必要だ。

第3は、災害復旧と景気対策を総合的に考えて実行する「経済復興会議」を、やはり関係各省と民間代表で構成すること。当面の復旧事業と中長期的な経済計画、もちろん財源問題も含めて検討する。この会議も野党が参加する「政治本部」のもとに置き、対策を素早く決められるようにしたい。非常事態なのだから、国会は事後承認でよいように「政治本部」が意思決定したらいい。


                                (続きは明日)

    ≪16日の日経平均 = 上げ +488.57円≫

    ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

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非常事態宣言と 緊急経済対策を! (下)
2011-03-18-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 放っておけば大不況に = 阪神・淡路大震災の被害総額は9兆5000億円だった。今回の被害は16兆円に達するという試算も出ているが、まだ精査できる段階ではない。被害が広範囲に及んだこともあって、最終的には20兆円を超える可能性も強い。さらに原発の破損による停電の影響は、経済的にもっと大きな損失をもたらしそうだ。

地震と停電の影響で、東北地方の工場では生産がほとんどストップした。このため部品などの調達ができなくなり、自動車や半導体メーカーは全国の工場でも操業を大幅に縮小している。また鉄道、小売り・飲食業なども営業の縮小に追い込まれている。この状態は時間とともに多少は改善するかもしれないが、肝心の電力供給はメドが立たない。少なくとも3-4月の工業生産は、極端に低下することを覚悟する必要がある。

電力の不足は、今後も数年にわたって続く可能性がある。そこまで考えると、ことし1年間の経済的な損失は30兆円に達するかもしれない。地震の直接的な被害と合わせれば50兆円、GDPのおよそ1割にもなる。この状態を放っておけば、日本経済が未曽有の大不況に陥ることは明らかだ。

いま家も食料も薬品もなく困っている被災者を救援することは、何よりも先に行わなければならない。次に被災地の復興も急がれる。そして、ここまでの対策については与野党の合意もできそうだ。だが大不況の危機に直面して、今後の日本経済をどのように立て直すのか。その財源をどうするのか。この問題についても、早急な計画の作成が必要だ。それがなければ、企業も国民も将来への展望を持つことができない。

菅首相をはじめ民主党はメンツを捨て、この際は思い切って子ども手当も高速料金の無料化も中断する。そのほかの財政支出も大胆に削減して、おそらくは必要になる30兆円-40兆円の災害復旧・景気対策予算を早急に編成してほしい。足りない財源は国債発行と臨時の増税によるほかないが、すでに国民はその“非常事態”を十分に認識している。


    ≪17日の日経平均 = 下げ -131.05円≫

    ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- TPP の基礎知識 ⑦
2011-03-19-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 11月には間に合わない? = 新しいTPPを構築するための準備作業は、いま着々と進んでいる。TPPの原加盟国4か国と、これに参加することを表明したアメリカなど5か国は昨年10月、第1回目のTPP拡大交渉会合を開催した。この会合では24の分野別作業部会を設置、その後の交渉日程を決定している。

分野別の作業部会は、モノ、サービス、金融サービス、電子取り引き、環境、労働から、政府調達、競争政策、知的所有権にいたるまで、きわめて幅広い。また日程ではことし11月までに10回の会合を開き、11月のハワイ最終会合で妥結する予定。すでに6回目までの会合を終了、順調に作業をこなしている。

一方、日本の対応は遅々として進んでいない。政府は昨年11月、TPPについて「関係国との協議を開始する基本方針」を閣議決定した。同時に「農業構造改革推進本部」を設置している。菅首相は“平成の開国”だと張り切ったが、その後の具体的な進展はほとんど見られない。民主党も自民党も、6月の統一地方選への影響を考えて発言を控えているように見受けられる。

TPP拡大交渉に参加している9か国は、11月になると協定の骨子を固めてしまう。その後に参加を決めると、その協定を丸飲みしなければならない。日本がコメを関税撤廃の例外にしてほしいと主張しても、おそらく認められないだろう。だが政府・与野党の動きをみていると、11月前にTPP参加を決めることはかなり難しそうだ。そこへ大震災、ますます11月前の決定は困難になってきた。 


                           (続きは来週サタデー)

    ≪18日の日経平均 = 上げ +244.08円≫

    【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】 

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2011-03-20-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第2章 おカネって、なんだろう? ③

◇ 貝がらを貯めておく = あらしの間、魚をとれなかった太郎さんは、貝がらを使って肉や野菜を買いました。おかげで食べ物には困りませんでしたが、持っている貝がらは4枚に減ってしまいました。次のあらしがやってくると、貝がらはなくなってしまうかもしれません。

心配になった太郎さんは海が静かになると一生懸命に魚をとり、これを次郎さんたちに売って貝がらを取り戻しました。でも貝がらは、もう少し多い方がいいなあ。太郎さんはこう考えて魚をたくさんとり、貝がらを14枚に増やしました。これなら安心だ!

このように将来の必要に備えて、おカネを貯めておくことを「貯金」あるいは「貯蓄」と言います。太郎さんは貯蓄の大切さに気が付いたわけですね。青い貝がらのおカネができたことで、南の島の経済生活には貯蓄という新しい行動が加わりました。

太郎さんはよく働いた結果を、貝がらという形で貯めておいたとも考えられます。みなさんのお父さんやお母さんも、銀行や郵便局に貯金をしているでしょう。これも働いた分の一部を、将来のために貯めているわけです。みなさんも、お小遣いの一部を貯金していますか。


                           (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2011-03-22-Tue  CATEGORY: 政治・経済
株価の下げ止まりと円相場の上げ止まりが確認できるか。この2点が今週のポイントになる。大震災のショックで、先週の日経平均は14-15の両日だけで1649円下げた。この下げによって、東証1部上場会社の時価総額は51兆5000億円減少している。結局、日経平均は週間1048円の値下がりとなった。ニューヨーク市場もこの地震で売られたが、ダウ平均は週間186ドルの下落で止まった。

大震災の株価に対する影響は、大きく2つに分けて考える必要がある。1つは地震・津波による被害と原発の事故。もう1つは、それが今後の日本経済に及ぼす影響。このうち前者は最悪の事態を通り抜けたようだから、株価にとっては反発の材料になる。だが後者はこれから影響の大きさが次第に意識され、株価には悪材料になりそうだ。

円相場は急騰した。特にニューヨーク市場では17日の取り引き終了間際に大量の買いが入り、円は1ドル=76円25銭の過去最高値を記録。G7(主要7か国)が協調介入に踏み切ったため18日には81ドル半ばまで下落したが、なお高水準に止まっている。今週も投機の買いと介入への警戒の綱引きが続くだろう。

今週の経済指標は22日に、1月の全産業活動指数。24日に、2月の貿易統計。25日に、2月の消費者物価と企業向けサービス価格。アメリカでは21日に、2月の中古住宅販売。22日に、1月の住宅価格指数。23日に、2月の新築住宅販売と住宅関連の数字が発表になる。そろそろ住宅関連の底入れが確認されてもいいころだ。そして25日には、昨年10-12月期のGDP確報値が明らかにされる。


    ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ

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非常時の投機者を 公表せよ (上)
2011-03-23-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ NYで76円25銭の過去最高値 = 東北関東大震災の直後から、円相場は上昇した。特に17日のニューヨーク市場では取り引き終了間際に大量の買い注文が入り、円は1ドル=76円25銭まで急騰した。これを受けて東京市場でも、17日の終り値は79円21銭の過去最高値を記録している。これまでの過去最高値は1995年4月に記録した1ドル=79円75銭。このときも同年1月に発生した阪神・淡路大震災のあとだった。

地震が発生した11日午後の円相場は82円75銭前後。それに比べると、17日のニューヨークは6円50銭も高い。常識的に考えれば、大震災は経済に多大の損失を与えるから、その国の通貨は安くなるはずだ。それが逆に買われた大きな原因は、いわゆる“風評”を利用した投機だった。

日本の企業は多額の復興資金が必要になるから、海外の資産を売って円に換えるだろう。保険会社は保険金の支払いに必要な円資金を調達するに違いない。――こうした風評が市場に飛び交い、ヘッジファンドや一部の金融機関が円を大量に買ったという。だが日本の企業が海外資産を売る形跡は全くない。保険会社も円建て債券を12兆円も持っており、外国の債券を売るつもりはないと言っている。

大災害に加えての風評被害。こうした状況に対してG7(先進7か国)が素早く対応した。G7の財務相・中央銀行総裁は日本時間の18日朝、電話で会談。直ちに協調介入を実施。この結果、円相場はいったん急落して81円-82円の水準に戻った。だが3連休の間にも円相場は上がり気味で、23日朝はまた80円台に上昇している。投機筋は再び仕掛けようとしているのだろうか。


                                (続きは明日)

    ≪22日の日経平均 = 上げ +401.57円≫

    ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ

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非常時の投機者を 公表せよ (下)
2011-03-24-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 異常な買い注文者は誰だったのか = 投機による円相場の高騰は、G7の協調介入でいったんは収まった。ところが政府による為替介入は、投機筋にとっては必ずしも脅威ではない。たしかに介入の直前に買った投機筋は、損失を蒙るかもしれない。だが早めに仕掛けた投機筋は、十分な利益を上げることができる。今回の場合も82円台で買った投機筋が76円で売り抜ければ、巨額の利益を手にしたはずである。

むしろ相場が80円を突破すれば介入があると予測できれば、投機筋は安心して仕掛けることができる。したがって介入は相場の行き過ぎを抑えることは可能だが、投機を封じ込めることはできない。だが他人の不幸をチャンスと考えて巨利を得ようとする者を、野放しにしておいていいものだろうか。

話はやや飛躍するが、国内でも今回の災害を利用してカネ儲けを企んだ事件があった。被災したからカネを送ってほしいというオレオレ詐欺まがいの電話。街頭での募金活動を装ったカネ集め。日本人の整然とした態度が海外から高く評価されたなかで、こうした事件が起こったことはまことに腹立たしい。

だがニューヨーク市場での為替投機は、こうした事件とは比べようもないほどの利益をあげた。しかも罰則もない。投機を規制する主張はフランス、ドイツなどから出ているが、アメリカやイギリスの反対で実現していない。日本も反対の姿勢を貫いてきた。これでいいのかどうか、政府は反省すべきだろう。少なくとも次のG7会議では、17日の市場で大量の円買い注文を出したヘッジファンドあるいは金融機関の名前を公表するよう強く主張してもらいたい。


    ≪23日の日経平均 = 下げ -158.85円≫

    ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ

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菅総理は私欲を捨てて 復興計画を作れ
2011-03-25-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 与野党で国家復興本部を = 菅首相はヘリで被災地を視察する予定だったが、雨で取りやめたという。この報道を聞いて、まったくがっかりした。もうパフォーマンスは結構だ。そんなことよりは、日本の将来をどう再構築するのか。その計画立案に全精力を注いでもらいたい。この最重要問題について、国民はあなたの考え方をまだ何も聞いていない。

1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災で、東京の街は壊滅した。その直後に帝都復興院総裁に就任した後藤新平は、5日間で将来の東京を見据えた世界でも最大規模の都市改造事業を立案。現在の皇居前や靖国通り、明治通り、山手通りなどを含む新しい東京の骨格を作り上げた。これがその後の東京、ひいては日本の発展に大きく寄与したことはよく知られている。

いま最も必要なことは、将来の日本を見据えた社会・経済の新しい復興計画ではないのか。まず被災地の復旧を急ぐことは当然だが、この困難を乗り越えたあとの日本をどんな国にしようとしているのか。そこまでを考えて復興計画を建てるのが、総理大臣の使命だろう。復旧や復興に必要な財源も、総力をあげて考えなければならない。

そのためには、野党の協力を仰ぐ必要がある。ところが菅首相は先日、自民党の谷垣総裁に入閣を要請して断られた。これは菅内閣の延命とねじれ国会の打開を狙ったことが、見え見えだったからである。あれでは野党も受け入れられない。

与野党が一致協力して戦後最大の国難を乗り切るためには、まず菅首相が一切の私欲を捨てなければいけない。民主党のメンツや内閣の支持率などに、こだわっていてはダメだ。辞を低くして、野党にお願いする姿勢が肝要だ。そして政界をあげて、ということは全国民の総力を結集する形で国家復興本部を作る。国会議員定数の削減、公務員人件費の2割削減を含めた緊縮と増税、国債増発によって財源を確保する。そのための第1歩が、マニフェストの完全停止であることは言うまでもない。メンツにこだわっていると、あなたは戦後最低の総理大臣になる。


    ≪24日の日経平均 = 下げ -14.46円≫

    ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- TPP の基礎知識 ⑧
2011-03-26-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 試金石はオーストラリアだが = TPPへの参加に結論を出せないまま、いま日本は3つの国とFTAを結ぼうとしている。1つ目はインドで、ことし2月に協定へ署名した。2つ目はオーストラリアで交渉中だが、難航している。3つ目はカナダで、近く交渉に入る見込み。このうち最も重要なのは、オーストラリアとの協定だ。

インドとのFTAは、この夏にも発効する予定。発効すれば、日本にとって12番目のFTAになる。しかし、このインドを含めてこれまでに発効したFTAは、すべて農畜産物の関税軽減に触れていない。インドとのFTAでも、貿易総額の94%に当たる品目について今後10年以内に関税を撤廃することになったが、コメや麦は例外となっている。

これまでにFTAを締結した12か国は、農畜産物の大輸出国ではない。だから農畜産物を例外にしても、協定が成立した。しかしオーストラリアとカナダは農畜産物の大輸出国だから、そうはいかない。オーストラリアとは07年から交渉を始めたが、牛肉・乳製品・小麦・砂糖の関税をめぐって対立が続いたまま。日本政府は「6月までに妥結したい」と言っているが、その見通しは暗い。

TPPに加盟することになれば、日本も農畜産物の関税軽減を避けて通るわけにはいかない。だがこの問題がネックになって、政府は加盟を決断できずにいる。だからオーストラリアとの交渉も進まない。そうしているうちに、韓国がオーストラリアとの交渉を始めた。焦った政府は中断していた交渉を再開したが、具体的な対応策を打ち出せない。相手側に対しても、まことに失礼な外交交渉になっている。


                           (続きは来週サタデー)

    ≪25日の日経平均 = 上げ +101.12円≫

    【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2011-03-27-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第2章 おカネって、なんだろう? ④

◇ 借りたら利息をつけて返す = 長い間、雨が降らなかったために、野菜やいもが全滅してしまいました。三郎さんははじめのうち、持っていた青い貝がらで魚や肉を買っていましたが、とうとう貝がらがなくなってしまいました。困った三郎さんは、太郎さんに頼みました。「貝がらを貸してください。雨が降って野菜やいもができたら、きっと返しますから」。

「ああ、いいですよ」と言って、太郎さんは三郎さんに貝がら5枚を貸すことにしました。その代わり、三郎さんは半年たったら、お礼として貝がらを1枚ふやして6枚を返す約束をしたのです。このようにモノやおカネを貸したり借りたりすることを、貸借(たいしゃく)関係と言います。南の島では、貸借関係という経済活動も始まりました。

おカネを返すときに、ふやして返す分が利息です。三郎さんは青い貝がらを5枚借りて6枚を返しますから、利息は1枚ということになりますね。またおカネを借りる場合の利息を、金利とも言います。金利はふつう1年間でいくらというように決められます。

みなさんの家でも、銀行や郵便局などからおカネを借りていませんか。そのときの金利が5%だとしましょう。もし100万円を借りていると、1年後には105万円を返すことになりますね。みなさんの家では、何%の金利で、いくら借りているのか。お父さんに聞いてみてください。金利はあなたが計算できますね。


                             (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2011-03-28-Mon  CATEGORY: 政治・経済
日経平均株価は先週、329円値上がりした。先々週の大幅安を3割強とり戻し、一応は下げ止まったように見受けられる。先々週は1048円も下げたが、そのなかで目立ったのが外国人投資家の買い姿勢。東証の集計によると、14-18日の一週間で外国人は9552億円の買い越し。その一方で国内の個人投資家は1998億円の売り越しだった。

先々週の大幅安で、東証1部全体のPBR(株価純資産倍率)は1倍を割り込んだ。全上場企業の時価総額が解散価値を下回ったことになる。外国人投資家はこれを買い時とみて、積極的に買いを入れた。先週のデータはまだ集計されていないが、この勢いは持続したとみられる。

今週もその傾向が続くかどうか。最大の材料は、やはり原発被害の動向だろう。もう1つの材料はアメリカの株価。ダウ平均は先週362ドル値上がりしたが、これは基本的にアメリカの景気回復を反映したもの。株価が高ければ、日本株への関心も持続する。この点でも、今週1日に発表される3月の雇用統計は注目のマトになる。

今週は29日に、2月の労働力調査、家計調査、商業販売統計。30日に、2月の鉱工業生産。31日に、2月の住宅着工戸数。1日には、日銀の短観と3月の新車販売台数。アメリカでは29日に、コンファレンスボードによる3月の消費者信頼感指数。そして1日に、3月の雇用統計と新車販売台数が発表になる。


    ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ

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復興財源は、みんなで負担するしかない (上)
2011-03-29-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 被害総額は16-25兆円 = 大災害の悲惨な状況を目のあたりにして、いま国民の間では「自分でも何か支援できることはないか」「被災者のことを思えば、このくらいのことは我慢を」という気持ちが高まっている。若い人たちにもこういう気持ちが広まっていることは、きわめて心強い。日本の社会・経済を復興させる最大の原動力は、こうした国民の緊張感と結束力に違いない。

東北関東大震災の被害総額は16兆円-25兆円。内閣府はこんな試算をまとめ公表した。住宅・民間企業の設備、電気・ガス・水道などの生活インフラ、それに道路・港湾・空港などの社会インフラについて、その毀損額を推計している。対象にした地域は北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の7道県。このうち特に被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県では、被害総額の合計が14兆円ー23兆円に達したと計算した。

1995年に発生した阪神・淡路大震災の被害総額は9兆6000億円だった。このとき政府は3回にわたって補正予算を組み、合計3兆4000億円の対策経費を支出した。さらに景気対策や円高対策を含めると、補正予算の歳出総額は9兆1000億円に達している。

この数字を参考にして今回の必要な補正予算額を計算してみると、直接的な対策費だけで8兆8000億円。景気対策費などまで含めると、23兆円を超えてしまう。おそらく20兆円程度の支出は覚悟する必要があるだろう。しかも、この数字には、原発事故による被害は含まれていない。


                                (続きは明日)

    ≪28日の日経平均 = 下げ -57.60円≫

    ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ

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復興財源は、みんなで負担するしかない (中)
2011-03-30-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 必要な財源は30兆円-50兆円? = 地震・津波による直接的は被害の総額は16兆円-25兆円。その復旧費は10兆円ー20兆円に達するかもしれない。そのうえ原発事故が惹き起した被害がある。住民の避難にかかわる費用、農水産物に対する補償。さらには計画停電による経済的な損失。しかも事故の影響が長引けば長引くほど、こちらの被害額は増大して行く。

このように原発事故の被害はまだ進行中だから、今回の大災害に関する被害総額や必要な財政支出の金額はいまの段階では算定が不可能だ。しかし今後2-3年間で30兆円-50兆円の臨時支出が必要になる可能性も、決して小さくはない。

大問題は、その財源である。常識的に考えれば、財源の捻出には ①10年度予算の使い残しと11年度予算の予備費②11年度予算の歳出見直しと減税の見送り③構造改革の推進④増税⑤国債発行の増加――をすべて使うしか方法がない。

このうち予備費などからは、最大で1兆5000億円程度。また11年度予算の修正では、最大6兆5000億円程度の財源が見込めるかもしれない。ただ予備費などを全額使ってしまうと、新たな災害には対応できなくなる。また予算の修正では、子ども手当や高速道路の無料化、あるいは農家に対する戸別所得補償など民主党の看板政策も全部ストップする必要がある。それでも財源はかなり足りない。


                                 (続きは明日)

    ≪29日の日経平均 = 下げ -19.45円≫

    ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ

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復興財源は、みんなで負担するしかない (下)
2011-03-31-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 政治家や官僚も負担を = 国民が背負う新たな負担は、判りやすいことが必要だ。たとえば増税は、消費税を3%引き上げて8%にしたらどうだろう。ただし考え方としては3%分を「復興税」と名付けて消費税から切り離し、2年間の臨時措置とする。いま日本の国民は、その程度の負担なら我慢しなければと考えていると思う。

ただ国民の多くが復興財源を分担するのには、前提条件がある。それは政治家や官僚が、率先して重荷を分担することだ。まず民主党はメンツを捨てて、子ども手当をはじめマニフェストで掲げたすべての政策を一時的に停止する。国会議員は歳費をカット、議員定数も削減する。懸案だった公務員の人件費2割カットも断行する。

これだけの努力をした結果、なお不足する財源は国債に頼らざるをえない。この国債も通常の赤字国債とは切り離し、借り換えができない「復興国債」とし、10年間での償還を与野党が確約する。政権が代わったら、方針が変更されるようでは困るからだ。

じっさいに財源がどれだけ必要になるかは、原発の動向を見ながら一段階ずつ決めて行くしかない。大切なことは、国民の間に「みんなで負担するしかない」という緊張感が持続しているうちに、おおよその道筋を決めてしまうことだ。そのためには与党と野党が早急に意見を一致させ、自分たちの“犠牲”についても国民に約束すべきである。


    ≪30日の日経平均 = 上げ +249.71円≫

    ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ

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